今日は普通の平日ですけどなにか?(白目
はやてを病院に放り込み、って言うと聞こえが悪いな。なんでだろう。
「なんででしょうね」
「君はあれだね。僕を怖がるわりには話しかけてくるね」
そりゃ怖いけど、視界に入ってなかったらもっと怖いし。
もちろん、良心的な人であることはわかってる。だから奇襲の警戒もしてないわけで、この辺りがギリギリ限界だから許してください。
あとは慣れってことでひとつ。
「とりあえず、予約してたケーキを受け取りに来ました」
「ああ、桃子から聞いてるよ。ちょっと待っていてくれ」
奥に引っ込んでいく店員さんを見送りつつ、そうかあの人は桃子さんって名前なのかぁ、なんて思ってたら即行で戻ってきて変な声が出そうになった。
はっやーい!
例え保管庫が近かったとしても、今の速度はおかしいだろ。
どうなってんの、ホントに人間でいいんだよね?
「うちの桃子が作ったケーキは美味しいからね。きっといい誕生日になるよ」
「よし、とりあえず情報ダダ漏れとかは置いとこうか。え、うちの? もしかして夫婦だったりとか」
「そうだよ。僕が高町士郎で、妻の高町桃子。ここは家族経営なんだ」
ヴェーイ!
そりゃ人妻だとは思ってたけどさ。もう少し夢を見させてくれたっていいじゃないか。
こちとら花も恥らう20代だぞ。綺麗な店員さんがいたら、お近づきになりたいなとか考えちゃう世代なんだよ察しろ!!
「美人な嫁さん持っててオシアワセソウデスネ」
「え? あ、うん。そうだね?」
くそう、これが勝者の余裕か……いや、流石になんか違う気がするな。
というかなんの話しだっけ。
確かに桃子さんは美人だけど、別に愛をささやくつもりなんてないし。こういうときは、とりあえずリア充爆発しろって言うんだったか?
ん? 爆破するためにここへ来たわけじゃなかったような。
「えっと、ケーキはいいのかい?」
「ああっ!」
それだ!
ということで、さっさとお金を払ってしまう。
それにしても懐が厳しい。ただでさえ薄い財布が、そろそろ透けてきそうだ。
昨日のプレゼントも含め、どうしてこうなった。
別に必要経費だから、散財だとは思わないけどさ。こうして借金に借金を重ねながら買い物してると、自分に甲斐性がなさすぎて笑えてくるよね。
「目から汗だって出るんだぜ……」
「君は、なんだかいつも忙しそうだね」
いやあ、それほどでも。
「とりあえず、ありがとうございました。桃子さん? にもお礼を伝えておいてください」
「わかった。いい誕生日になるといいね」
軽く頭をさげ、いつも通り後ずさるスタイルで店を出る。
まだ、ちょっと背中がガラ空きは怖いんだ。許してくだちい。
「ふぅ、今日もなんとか生き残れた。今はデバイスもないし、本気でこられると負けるかもなあ」
今のままでも魔法は使えるけど、戦闘になったら流石にね。
ホント頼むから、もうちょっとしっかり人間やってくれないかな。
‡
ガチャリと玄関を開けると、ちょっと荒んだ目の黒尽くめ4人が待ち構えている。
え、なんなのこいつら。ずっと立ってたの? くつろいでてくれってはやても言ってたジャン!
「ただいまー。あっ、これ食いかけだけどお前らの分ね。美味いケーキだから楽しみに……すいません、なんかリアクションくれませんか? そんな駆逐してやる! みたいな目で見られても困るんだけど」
「どこンシナ区出身や」
「思ったより語感が似ててびっくりしたわ」
あははは、と2人で笑ってみるが苦しい。
守護騎士たちとネタの共有ができてないせいかな。
「いやまあ、俺のせいってのはわかってるんですけどね?」
「私の誕生日やからとか言って、ごり押すからこうなるんやろ」
あの時点で深夜0時超えてたし、子供は寝る時間だろうが常考。
まあ、そりゃはやてが寝たあとに少し話はしてたんだけどさ。
『結局、貴様は何者だ』
『管理外世界出身、ヤクモ・ナナミ、ジャン!』
語尾もちゃんと上げたのに、なにが悪かったんだろうか。
全部ですね。知ってた……
「俺の持ってる情報開示するんで許してください」
流れるような動作で土下座したのが功を奏したらしく、とりあえず全員でリビングまで移動する。
はやてを含む女性4人が着席し、テーブルの上には問題の本が一冊。残りの野郎組はフローリングへ……あれ、なんで犬?
「この身は守護獣だからな。狼の姿にもなれる」
キェェェェェェアァァァァァァシャァベッ、まあ二度ネタは置いとこう。
とりあえず、使い魔みたいなものという認識でいいのだろうか。
前衛は2人いるし、後衛も1人いる。その繋ぎとして、中盤を支える縁の下の力持ち的な立ち位置を担っているのだろう。
そんな立派な守護獣様にこういうのはアレなんだけど、俺は犬と同じ場所ですかそうですか。
「昨日はどたばたしてしまいました。改めて、私はシグナムといいます。順にヴィータ、シャマル、ザフィーラ。我ら守護騎士は、闇の書の収集を行い、主を守る存在です」
「うーん、つまりどういうことなん?」
「はやての命令があれば、犯罪にも手を染める危ないしゅうだ――ごめんなさい許してください命ばかりはお助けを!」
じょ、冗談の1つくらい許してよ!?
なんだか、最近シリアスなこと多すぎて耐えられないんだよこっちは!!
今からまた真面目な話ししないとだめなんだしさ。
「闇の書ってのは、管理局でロストロギア扱いになってる魔道書のことだな。古代ベルカって文明があったらしいんだけど、その頃に作られたものらしい。因みにベルカ文明そのものはとっくの昔に滅んでるから、俺もあんまり知らないんだよね。そっち関係の知り合いが1人いるから、今度聞いとこうとは思うけど」
うーんと思案顔のはやてに、シグナムが闇の書に関する取り扱いを喋り始める。
そこに適時、俺の知っている範囲のことを差し込むわけだが。これちょっと情報量が多いかもしれない。
「つまり、闇の書のページを埋めると願いが叶うけど、人様に迷惑かけるってことでええん?」
「はやてさんマジぱねぇ!」
今ので理解できたのか。これは脱帽もんですわ。
「そのリンカーコアっていうんは、魔道師の生命線なんやろ? それ引っこ抜くんやから、大変なことになるんとちゃうん?」
「まあ、大変ってか最悪死にますね」
お腹から臓器引き抜くのと同じことだから。
足を治して欲しいとか、叶えたいことはあるだろうに。結局、はやてが出した結論は「収集活動禁止!」の一言だった。
かっこいいね。
「ああ、ついでに。必要ないかなと思って言わなかったんだけど、こうなったからには仕方ない。昨日、ランクの話はしたよな? はやてにもリンカーコアがあるんだけど、軽くオーバーSランクなんでよろしく」
「なん、やと」
はやてさんTUEEE! が見れる日も遠くないな。
いやあ、楽しみ楽しみ。
しばらく中二病という言葉に打ちひしがれるはやてだったが、咳払い1つで立ち直ってシグナムたちを順に見回していく。
最後に視線を俺へ向けて、にっこり笑って見せた。
あ、この顔知ってる。俺のときと同じやつだ。
「まあ、私のリンカーコア辺りの話は今度聞くわ。それより、みんなの衣食住なんとかするんが先やしな!」
まあ、このまま黒尽くめだと不審者として通報されそうだしね。
実ははやてが着せ替え人形を手に入れただけ、なんて思ってない。きっと気のせい。
「ほらヤクモさんメジャー!」
「いやちょっと野球ボールは今ないかな」
顔面をジャイロ回転さすよ? と笑顔で脅され、思わずダッシュで裁縫箱を取りに行く。
首が凶ルなんてもんじゃねえよそれ!?
「最近、はやての発想がとんでもない方向にぶっとんでないかな」
「くだらんことばっか言うからちゃう?」
あれ、おかしいなあ。否定の言葉がみあたらないよ?
「いつまでおるんや。はよ出ていき。みんなのサイズ測るんやから」
「え、俺は別に気にしな――あっ待てはやて。冗談! 冗談だから車輪はやめアーッ!!」
ザフィーラに引きずられ、敢え無く廊下へと退場させられました。
乱暴に放り投げられたので、フローリングにヘッドバッドしてしまい散々です。
「少しは自重したらどうだ」
「お前らがもうちょい気安かったら、端っこで大人しく三角座りしてたんだけどね」
ひんやり気持ちいい廊下に寝転んだまま、軽く肩をすくめて見せる。
僅かに守護獣様の表情がかげったのは、きっと気のせいじゃないだろう。
俺が知っているだけでも、闇の書はこれまで戦って戦って戦いぬいたロストロギアだ。ここにきて、環境ががらりと変わったんだから戸惑うのも仕方ない。
まあ、その辺はおいおい慣れていけばいいんじゃないかな。
むしろ、今はそんなことよりもその太すぎる眉が気になる。
え、なにそれどういう感じで生えてるの? 私気になります。
「まあ、暮らしてるうちに心情くらい変化するだろ。とりあえず、ちょっとその眉毛触らせてくれない?」
一瞬でザフィーラの視線が冷たくなった気がする。アルェ?
「いやほら、ちょっと構造的に気になるじゃん? 触ってみればなにかわかる気が、げふっ」
「わけのわからんやつだ」
後頭部の方からため息らしきものが聞こえる。
というか、足どけてもらえませんかね? 廊下と熱い口付けを交わして、愛を語る趣味は持ってないんですが。
ほら、いい子だから。お手は後頭部じゃないくて、掌にするものだからね?
アフルにやり忘れたジャーキーもあげるし、ちょっとその開放してくださいお願いします。
「あと、ここは定番的にこっそり覗くところだと思うんだ。ほら、男同士の友情とか深めようぜ痛い痛い痛い!!」
割れる! いや違うこれ潰れる方が先だ!!
「おい、ちょお前。マジか! マジでかっ!?」
「一瞬でも感心した自分が嫌になる」
ちくしょう、リビングからは楽しげな声が漏れてくるというのに。なにが悲しくて、頭を力いっぱい犬に踏まれなくちゃいけないんだ。
男たるもの「え? シグナムの魔乳が重すぎて計りづらいだって? じゃあ俺が支えててやんよ」くらいの紳士的な行動を痛い! これ痛すぎて冗談も考えてられないんですけど!?
これあかんやつ!!
あばばばと暴れてみたところで、ザフィーラはびくともしない。
危うくなにか目覚めそうなので早く解放して欲しいんだけど、よく考えたらはやてに誕生日プレゼント渡すのも忘れてる。
どうしてこうなった!
いや、自業自得なんですけどね。知ってた知ってた。
バレンタイン話の更新だと思った? 残念、通常更新でした!!
いや、もうホント泣きたくなるわ……
(ぶっちゃけ、これを言いたいが為だけに大慌てで続き書いてたとか内緒な)
書けば書くほど面白いのかわからなくなる病気が発症中。頑張れ私!!