はいすくーるDxD 平穏(笑)な日常   作:鶏唐

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第48話 紅き魔の館 訪問

「ふふん、ここだな吸血鬼がいる仔馬館ってのは」

 

「紅魔館だ虎徹」

 

 

先輩からミッションを受けた翌日、俺達は結城が住む高級住宅街に来ていた。

そして問題の館へと来たわけだが・・・

 

 

「赤いな」

 

「赤いね」

 

「赤いでござる」

 

 

赤い壁に赤い屋根、何故か少ない窓の中から見える壁紙も赤い。

早くも目がチカチカしてきたぜ。

吸血鬼ってのは趣味が悪いんだなぁ。

 

 

「それで、この人どうするの?」

 

「むぅ、さっきから身動き取らないでござるな」

 

 

俺達がこうして騒がしくしても全く変わらない姿勢の女性がいた。

門の前にいる事から守衛なのかもしれない。

チャイナドレスを着た守衛ってのがいるか分からねーけど。

 

 

「あのーすみませーん」

 

「瞑想しているのでござろうか」

 

「気絶しているのではないか?」

 

「寝てんじゃねーの?」

 

 

結城が声をかけてみるが全く反応が無い。

眼を瞑っているんで寝てんじゃねーかな。

まぁ立ったまま寝る事ができるのか知らないけど。

結城は更に一歩踏み込んで女性へと近づき耳を澄ませる。

そして何かに気づいたのかこちらへと戻ってきた。

 

 

「皆、あの人寝てるよ」

 

「マジでか」

 

 

冗談で言ったのにまさか本当だったとは。

しかしこんな炎天下の中で立ったまま寝るなんてな。

よく見れば頬に薄っすらと汗が流れている。

今日はあの元テニスプレイヤーも日本にいるからな、まだまだ暑くなるだろうし。

 

 

「よし琢磨。簡易ベッドがあったろ、あれに寝かせて上げようぜ」

 

「そうだな。ちょっと待て」

 

 

琢磨がパイプベッドを門の横に転送させる。

ご丁寧に冷感の敷きパッドも用意していた。

俺と半蔵で彼女を起こさないようにベッドへ寝かせて結城がタオルケットをかぶせた。

守衛の女性は先ほどよりも心地よいのかすやすやと眠ったままだ。

 

 

「後は日除け用にビーチパラソルでも立てれば問題ないだろう」

 

「日射病は怖いからね」

 

「うむ。これで安心でござるな」

 

 

琢磨の出したビーチパラソルでベッドを日陰に入れて完成だ。

俺たちはよく分からない達成感に気分よくしていると後ろから声をかけられた。

 

 

「・・・何をしているの貴方達」

 

「ん?」

 

 

振り返れば買い物袋を持ったメイドさんがいた。

眉を顰めて困惑した表情をしている。

この館で働いているメイドさんだろうか?

 

 

「あれ、咲夜?」

 

「明日菜まで何をしているの」

 

「なんだ結城、知り合いか?」

 

 

結城が知っていそうなので聞いてみると何故か呆れた顔をされてしまった。

半蔵は何か思い出そうと、うんうんと唸っている。

琢磨の方を見ると結城と同じく知っているのか俺と半蔵を呆れた様子で見ていた。

 

 

「僕たちと同じクラスの十六夜咲夜さんだろう」

 

「同じクラス?」

 

「そうよ。本を出す問題児の八代虎徹君」

 

 

どうやら俺の事を知っているって事はそうなんだろう。

しかし十六夜咲夜なんてクラスメイトいたっけ?

だが脳裏に入学初日の親睦会で手品を披露している彼女の姿が浮かんだ。

って事は本当なんだろう。どこか腑に落ちないが。

 

 

「いやー悪い悪い。それで十六茶だっけ」

 

「十六夜よ」

 

「お前、この館のメイドなのか?」

 

「そうだけど貴方達、紅魔館に何か用かしら?」

 

「あぁ。できれば館の主人と話をさせて欲しい」

 

「・・・まぁ、いいでしょう。少し待っていてちょうだい」

 

 

買い物袋を持って十六茶が館の中へと入っていく。

吸血鬼を探しに来たんだから館の主人に話を通さなくちゃいけないのは当然だ。

別に勝手に入っても構わないとは思うが主人の許可が出るなら、そっちの方がいいしな。

 

 

ガチャッ

 

 

「お待たせしました。どうぞこちらへ」

 

 

1分も経たない内に戻ってきた十六茶。

早くね?

こいつ、どんだけ足が早いんだ。

 

 

「ところで・・・」

 

 

俺たちが門を潜ろうとしたところで十六茶の奴が視線をずらす。

その視線へと向けると未だにベッドですやすやと寝ている守衛さんがいた。

 

 

「貴方達がこの現状を造り出したの?」

 

「そうだけど何か?」

 

「このような日差しで眠るのも体力を使うでござるよ」

 

「はぁ・・・甘やかさないで頂戴」

 

 

溜息一つ吐いて何処からか取り出したナイフが寝ている女性の額へと突き刺さった。

そして何事もなかったかのように館の中へと入っていく。

 

 

「すげーな。まだ寝てるぜ」

 

「あわわ、ぬ、抜いてげないと」

 

「まて結城さん。下手に抜けば血が噴き出すぞ」

 

「気づいておらぬからそのままにしておくでござるよ」

 

 

人体の神秘を垣間見た俺たちは十六茶に続いて館の中へと入った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うわぁ」

 

「すげーな」

 

 

館の中へと入るとその広さに思わず声が漏れる。

八代君もきょろきょろと辺りを見回して驚いていた。

エントランスにしてはやけに広い。また奥に続く道や左右へと繋がる道も先が見えない程に続いている。

あれ?そこで疑問に思う。

外から見える敷地の広さと目の前に続く通路の先が見えない状況に。

 

 

「どうなっている?空間を歪ませているのか?いや、しかしそんな装置も見当たらないが・・・」

 

 

高藤君も私と同じ事を思ったのか眉根を顰めて周囲を観察していた。

そうだよね、幾らなんでもこの状況が普通じゃない事は分かる。

 

 

「殿!これだけ広ければ運動会もできるでござるよ!」

 

「バカだな半蔵。家の中で遊ぶならかくれんぼだろ、ここなら隠れるところに悩みそうにないぜ」

 

 

私と高藤君の悩みも知った事かとばかりにはしゃぐ二人。

うーん、考えすぎなのかなぁ。

 

 

「そろそろいいかしら?」

 

「あ、ごめんね咲夜」

 

 

先ほどと同じ呆れた表情の咲夜が私たちを先に促す。

メイドさんの姿をしているって事はここで働いているのかな?

学校もあるのに大変そうだと思わず感心してしまう。

 

 

「貴方達なら危害を加えられないだろうけれど、お嬢様に粗相のないようにね」

 

「お嬢様?」

 

「この紅魔館の主人であるレミリア・スカーレット様よ」

 

 

咲夜の案内で奥へと進みながら注意を促される。

どうやらこの館の主人は女性らしい。

 

 

「なぁ十六茶」

 

「十六夜よ」

 

 

八代君の間違った名前に即座に返す咲夜。

あ、これはもう変えられないな。ナコルルの例があるため私は即座に悟った。

八代君のニックネームのセンスの無さはどうしようもない。

しかも止めさせるなら本当に強くしつこく言わないと止めてもらえない。

咲夜にもアレぐらいじゃあ八代君は止めないって言った方がいいのかな。

 

 

「最近変な事とか無かったか?」

 

「変な事?」

 

「そうそう、化け物がうろついたりとか」

 

「別に今に始まった事じゃないでしょう」

 

「んー、それもそうか」

 

 

咲夜の言葉に八代君も納得して引き下がる。

今、こうしている間にも駒王市郊外でスペースゴジラが出現しているしね。

 

 

「さぁ、この扉の向こうにお嬢様がおられます」

 

「よし、任せておけ」

 

「あ、ちょっと!」

 

 

ずいっと八代君が咲夜の前に出て扉を思いっきり開け放った。

 

 

「犯人はこの中にいる!」

 

「あら、随分と元気のいいお客様ね」

 

「あれ?」

 

 

部屋に入れば小さな女の子がいた。

まるでお城の謁見の場みたいになっていて奥の椅子に腰かけて私たちを見下ろしている。

椅子に座っていながら彼女の背中から蝙蝠の羽みたいなのが見えている。

あ、もしかして蝙蝠の妖怪なのかも。

 

 

「ようこそ紅魔館へ。それで咲夜のクラスメイトとの事だけど私に何の用かしら」

 

「お、おう。あれ?おっかしーな」

 

「殿、殿。まずは説明をせねば」

 

「おっとそうだった。実はな・・・」

 

 

何故か首を傾げて不思議そうにしている八代君が服部君に促されてここに来た目的を説明する。

もしかして吸血鬼が館の主人と思ったのかも。

私も最初はそう思ったけど、さすがにそれは違うんじゃないかな。

 

 

「そう、吸血鬼をね。それでその吸血鬼を見つけたらどうするの?」

 

「どうって・・・考えて無かったな」

 

「僕としては生態に興味があるがな」

 

「なるほど、貴方達がここへ来た目的は理解したわ」

 

 

顎に手を置いて考えるような仕草をするレミリアちゃん。

暫くの間そうしていたかと思うとニヤリと子供が悪戯を思い浮かべたような顔をした。

そして悩まし気に溜息を吐く。

 

 

「隠そうとしていたけど貴方達ならいいわね。実はこの館は吸血鬼に支配されているの」

 

「何と!」

 

「毎夜、どこからともなく現れては館の住人が血を吸われているのよ」

 

 

そんな!それって大変な事だよ。

私たちが驚きながらレミリアちゃんの話を聞く。

 

 

「現在、この館には私の客人も数名滞在しているのだけど・・・」

 

「もしや、その中に吸血鬼がいるかもしれないと?」

 

「えぇ、彼らは私の旧くからの友人だから疑いたくはないのだけど」

 

「で、でも!その人たちとは全く関係ない人が吸血鬼かも」

 

「そうね、別に吸血鬼がいてこの館に入り込んでいる可能性も否定できないわ」

 

 

悲観そうな顔をしながら口元を手で押さえ、肩を震わせるレミリアちゃん。

こんな小さな子が主人だと言うだけでも大変そうなのに吸血鬼に支配されるなんて。

 

 

「よし、それなら俺たちで吸血鬼を捕まえてやろうぜ!」

 

「うんそうだね!」

 

「拙者も微弱ながら力を貸すでござるよ!」

 

「そういう事なら僕も力を貸そう」

 

「いいの?見たところ貴方達は一般人。吸血鬼にかかれば一溜りも無いわよ?」

 

「細かい事は気にするな!俺たちに任せな!」

 

 

八代君が胸を叩いて宣言する。

やっぱり吸血鬼がいるという事に恐怖していたのか、レミリアちゃんの目元に涙が浮かんでいる。

小さな女の子を泣かせるなんて吸血鬼は何としても捕まえないと!

こんな事ならフェルちゃんも連れてくるべきだったかも。

 

 

「・・・お嬢様、本当によろしいので?」

 

「あら、咲夜。彼らの心意気は立派よ。私も笑い転・・・じゃなくて心を打たれたわ」

 

 

これまで黙っていた咲夜が神妙な面持ちで言うのに対して、

バンバンと椅子のひじ掛けを叩きながらレミリアちゃんが言ってくる。

 

 

「咲夜。早速だけど、この館の住人全員に彼らと顔合わせをしてあげなさい」

 

「はぁ。分かりましたお嬢様」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これは・・・凄い蔵書の数だな」

 

 

拙者達が十六夜嬢に通されたのは図書館のような場所でござる。

うぅ、本を見ていると眠くなるので苦手でござるよ。

 

 

「こちらに2名程、お嬢様のご友人が滞在しておられれます」

 

「なるほど、容疑者ってわけだな」

 

 

殿の言葉に拙者も気を引き締めなおす。

いたいけな少女であるスカーレット嬢を苦しめる吸血鬼め。

拙者達が成敗してやるでござる!

 

 

「パチュリー様。少しよろしいでしょうか」

 

「えぇ、レミィの使い魔から事情は聴いているわ。小悪魔、休憩しましょう」

 

「はい。あ、咲夜さん手伝います」

 

 

十六夜嬢と話しているのは二人。

一人は拙者達に礼をして十六夜嬢と奥へと向かっていた赤髪の女性。

スカーレット嬢と同じ蝙蝠の妖怪でござろうか?

そしてもう一人は寝間着のような服を着ている紫髪の女性。

ぬぅ、拙者ふぁっしょんには疎いでござるが一般的な服装なのでござろうか。

 

 

「私はパチュリー・ノーレッジ。基本的にはココで本を読んでいるわ。お茶を汲みにいったのは司書の小悪魔よ」

 

「パチュリーさん。幾つか質問があるんだけどいいかな」

 

「えぇ、どうぞ。レミィの言う吸血鬼を早く捉えてくれるのなら協力も吝かではないわ」

 

 

結城嬢が幾つか質問していく中で拙者は気になる事があった。

ノーレッジ嬢の肌は白い。それはまるで日陰に出たことがないまでに。

吸血鬼は日の光の下を歩くと太陽の光で肌が焼けただれるという。

もしや、ノーレッジ嬢は吸血鬼なのでは?

 

 

「琢磨、お主どう思う?」

 

「・・・半蔵にしてはまともな推理じゃないか」

 

「そうでござろう?」

 

「しかし、吸血鬼は夜まで眠るものじゃないのか?まぁ噂なので本当かは知らないが」

 

「そうなのでござるか」

 

 

となると今起きている館の住人は吸血鬼では無いのでござろうか。

 

 

「なぁ、俺からも一つ質問があるんだけど」

 

「何かしら?」

 

「アンタ達、普段ココにいるなら知識もあるんだろ?結局吸血鬼の特徴って何なんだ?」

 

 

確かに殿の言われる通りでござるな。

拙者達が知っているのは噂程度の情報ばかり。

正しき情報と言えばこの館を吸血鬼が支配しているという事のみ。

 

 

「概ね貴方達の考える吸血鬼像であっていると思うわよ」

 

「ではやはり日中は出歩いたりしないでござるか」

 

「但し、日の光を克服したハイ・デイライトウォーカーと言ったタイプもいるから注意ね」

 

「そうなんだ。じゃあこうしている間にも出かけているかもしれないね」

 

 

むむむ、逆に言えば目の前のパチュリー嬢も吸血鬼の可能性があるでござるか。

と、子亜隈嬢と十六夜嬢が紅茶を持って戻ってきた。

 

 

「お待たせしました。お茶請けにマドレーヌもご用意しましたよ」

 

「おぉ!かたじけない!」

 

 

子亜隈嬢は吸血鬼ではござらんな!

斯様な親切な娘がこの館を支配するなど考えられぬでござる!

 

 

「一先ずお茶会としましょう」

 

 

ふむ。そういえばココに来る前に放った分身はどうしているでござろうか。

意識を分身へと飛ばしてみる。

どうやら何処かの部屋にいるようでござるな。

 

 

「あ、半蔵!お前俺より一個多く食いすぎたぞ!」

 

「何の!殿といえども譲れぬでござる!」

 

「二人とも!もぅ恥ずかしいなぁ」

 

「まだ必要でしたら追加でご用意しますが?」

 

「あのペースだとすぐに無くなるから申し訳ないが用意してもらえると助かる」

 

 

殿と、まどれーぬの熾烈な奪い合いをしつつも分身から送られてくる情報に意識を傾ける。

部屋の壁にかけられていたのは駒王学園の女性用の制服。

となれば十六夜嬢の部屋でござろうか?

 

 

「なぁなぁ。アンタの羽って空飛べるのか?」

 

「確かによく見ればデス様の耳にある羽と同じだな。少し解剖させてくれないか?」

 

「ダメに決まってるじゃないですか!」

 

 

ベッドの横に置かれている紙袋から何か出ているでござるな。

丸み帯びた形状のものが2つ、ビニールで封をされており、商品名が書かれている。

むむ、何者かが部屋に近づいてきているでござるな。探索を打ち切り拙者は分身を消す。

しかし先ほど書かれていた商品は何でござろうか?ぴーえーでぃー?

後で誰かに聞いてみるでござる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

図書館から退室した俺達は十六茶の案内で次の場所へと進んでいく。

図書館の奥に下へと続く階段があったので十六茶に聞いてみたところ。

 

 

「そちらは長らく使っていないし暗いから近づかない方がいいわよ」

 

 

との事で別の場所へと向かっていた。

何でも他の友人たちは丁度一か所に集まっているらしい。

 

 

「さぁ、ここよ」

 

 

ここに来るまで何度か道を曲がったりしたので帰り道がさっぱり分からない。

おっと、そんな事より吸血鬼を早いところ見つけないとな。

十六茶が扉をノックして声をかけて中へと入る。

俺たちもそれに続いて入れば全部で6人ほどいた。

 

 

「おや、彼らがレミリアの言った子達かね」

 

「えぇ。お手を煩わせて申し訳ありませんがお嬢様のお遊びにお付き合いください」

 

「ふん、別に構わんがな」

 

「いいわよー。私もちょうど暇してたところだし」

 

 

こうしてみれば全員が怪しく思えるから困ったもんだ。

とりあえずお互いに自己紹介をする。

容疑者である6人はそれぞれ、スレイヤー、シャロン、ディオ、アルクェイド、アーカード、ギャスパーと名乗った。

んー、吸血鬼のイメージって黒いマントとか身に着けてそうなんだけど誰もいないな。

 

 

「少年、吸血鬼を見つけたとして抗う手段はあるのかね」

 

「え?ニンニクが嫌いらしいからニンニクラーメンとか出してやれば一発じゃね?」

 

「あ、私ニンニクラーメン食べたーい」

 

 

アーカードとかいう赤ずくめの男が聞いて来たので素直に答える。

するとアルクェイドとかいう女が呑気に手を挙げてきた。

アーカードにアルクェイド、何か似たような名前だな。兄妹だろうか?

 

 

「ならば銀や法儀済みの道具があれば傷をつけられる、とでも言っておこうか」

 

「銀、後何だって?ほーぎずみ?琢磨、分かるか?」

 

「後半は知らないな。しかし銀製か、弾丸にするにしても若干効率が悪いな」

 

 

いっそ銀の杭なんて作ってしまえばいいんじゃないだろうか。

でも大きいと振り回すのに苦労しそうだな。

いざとなれば琢磨の衛星からの太陽ビームで何とかなるだろう。

 

 

「ところで皆さん吸血鬼を見かけた人はいますか?」

 

「いや、知らんな」

 

「み、見た事ないです・・・」

 

「ドンナヤツナンダロー」

 

 

結城が聞いても誰も吸血鬼を見たことが無いようだ。

ハートマークのついた服を着ているディオって人を始め、口々に知らないと言ってくる。

やっぱり夜中に皆が寝静まった時に現れるのかもしれない。

 

 

バチンっ

 

 

突如、そんな音と共に周囲が真っ暗になる。

何だ?ブレーカーでも落ちたのか?

この部屋には窓は無いようで日中にも拘わらず全く周囲が分からない。

 

 

「何だ、どうした?」

 

 

ガサッ

 

 

「きゃっ!」

 

「わわわ、今の声はシャロンさん!?」

 

「ちょっとは落ち着けギャスパー」

 

「ふふふ、面白い展開ではないか」

 

 

真っ暗闇の中で物音と声だけが反響する。

暗視ゴーグルでも持ってくればよかったな。

 

 

バタンッ

 

 

パッ

 

 

そんな事を考えていると復旧したのか部屋に光が灯る。

全く、何だったんだろうか。

 

 

「シャロン!どうした!?」

 

 

一目見ただけでわかるナイスミドルな紳士、スレイヤーさんがシャロンさんに駆け寄る。

見れば青白い顔をして倒れていた。

俺たちも駆け寄り気づいた。

 

 

「あ、首のところに小さな穴が!」

 

「こ、これはもしや吸血鬼!?」

 

 

そう、シャロンさんの首元に小さな穴が開いていて血が流れていた。

シャロンさんを抱えているスレイヤーさんの口元からは悔しさからか血が零れ落ちていた。

はっ、こうしちゃいられない!

俺はすぐさま開いている扉を抜けて通路へと出る。

 

 

「ちっ、何処に行った?」

 

「この通路では足音も消されてしまうでござるな」

 

 

俺の後を追ってきた半蔵が屈んで説明する。

高級っぽいカーペットが敷かれていて足を踏み鳴らしても音が聞こえない。

 

 

「八代君!見つかったの!?」

 

「いや、どっちに逃げたかも分からないな」

 

「ちっ、ナインボールでも先に配置しておくべきだったか」

 

 

続けて結城と琢磨も追いかけてきた。

こうなっては一刻も早く吸血鬼を見つけないとな。

 

 

「よし、手分けして探すぞ。琢磨、通信機を」

 

「あぁ、人数分用意しよう。使い方は分かるな」

 

「うん、大丈夫」

 

「拙者も問題ないでござる」

 

「貴方達、何かあったの?」

 

 

そこへ十六茶が通路からやってきた。

そういえばコイツ気づいたら部屋にいなかったな。

まぁいいや。

 

 

「俺達は吸血鬼を追う。部屋の中にシャロンさんが血を吸われたみたいだから後は頼んだぜ」

 

「あ、ちょっと」

 

「ごめん咲夜。急いでるから!」

 

「やれやれ、もう少し情報を得たかったのだがな」

 

「しからば御免!」

 

 

後の事は十六茶に任せて俺たちは吸血鬼を探し求めて長い通路を走って行った。

 

 

「・・はぁ、館を壊さないか心配だわ」

 

 




ハンニンッテ、ダレダロー

容疑者リスト(虎徹視点)
容疑者A:パチュリー・ノーレッジ
容疑者B:小悪魔
容疑者C:スレイヤー
容疑者D:シャロン  ×:被害者
容疑者E:ディオ・ブランドー
容疑者F:アルクェイド
容疑者G:アーカード
容疑者H:ギャスパー・ヴラディ

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