はいすくーるDxD 平穏(笑)な日常   作:鶏唐

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第44話

 

『さぁなんやかんやあり、いよいよ決勝戦!解説はこの学園の理事であるサッちゃんです!』

 

『どうも、理事のサーゼクスです』

 

 

時刻は19:00、夏だからようやく日も落ちてきたな。

やれやれ、何とか花火の設置も間に合ったぜ。

しかし、決勝は予想通り校長が勝ち上がってきているな。

対戦相手はカイン・R・ハインラインか・・・へぇ、ロックの叔父さんなのか。

 

 

『とりあえずここまでの結果を見てみましょう!』

 

 

第1回戦 結城晶 VS ミランダ謝華

結城晶:超必殺技のヒット、または必殺技のカウンターヒットで星一つ減少。

    七つ減らした状態で必殺技を当てれば勝利

ミランダ謝華:スピード2倍、飛び道具のATK-50

勝者 結城晶

勝因 ミランダ謝華の弱体化と星7つによる一撃

 

第2回戦 比那名居天子 VS カイン・R・ハインライン

比那名居天子:攻撃を受けるとダメージの1/2回復

カイン・R・ハインライン:飛び道具3倍、ATK-60

勝者 カイン・R・ハインライン 

勝因 圧倒的な弾幕による面制圧、ただし今大会最長時間がかかる

 

第3回戦イングリッド  VS シェン・ウー

イングリッド:コードホルダー1P、英語を話すと爆発する

シェン・ウー:ゲージ自動上昇(小)、5F毎に5%の確率で超必殺技が暴発

勝者 シェン・ウー

勝因 調子に乗ったイングリッドが挑発をして英語を話して爆発

 

第4回戦 美猴 VS ジェネラル

美猴:ATK+50、3秒毎に場外から攻撃を受ける

ジェネラル:CCジェネラル、時間毎にライフ減少

勝者 ジェネラル

勝因 秒殺

 

準決勝1回戦 結城晶 VS カイン・R・ハインライン

勝者 カイン・R・ハインライン

勝因 堅実な防御をする結城晶に対して多彩な飛び道具で寄せ付けなかった。

 

準決勝2回戦 シェン・ウー VS ジェネラル

勝者 ジェネラル

勝因 秒殺

 

 

『まぁ一言、試合シーンが全然無かった生徒会長はざまぁみろと言いたい』

 

「なんじゃとー!おぬし、後で覚えておれー!」

 

 

ははは、ナウなヤングとか意味の分からない事を言って爆発したくせに。

あれは屋上から見ていて笑い転げてしまったぜ。

さぁ負け犬の遠吠えは聞き流すとしてさっさと進めるか。

 

 

『さて早速選手入場と行こう!まずは無数の飛び道具で相手を苦しめてきたカイン・R・ハインライン選手!』

 

 

ちくしょう、俺にも飛び道具一つ分けてくれよ。

そんな事を思いながらロックの叔父さんが入ってきた。

と、観客席の一角で一際大きな声が聞こえてきた。

 

 

「いいぞカイン!そのまま優勝だっ!ほら、ロックも叔父さんに応援してあげなさい!あ、どうもこれは私の自慢の息子のロックです」

 

「恥ずかしいから止めろよ親父!」

 

「あの親子は・・・」

 

 

『カイン選手、頭を抱えております。さぁ続いてはご存知!我らがチートなジェネラル校長のご登場です!』

 

 

カァンッ

 

 

「ふむ、生徒達と闘えないのは残念だが・・・保護者の方たちの実力を見るいい機会ですな」

 

「校長、よろしくお願いします」

 

「えぇ、よき闘いにしましょう」

 

 

『片方が瞬間移動してきたとは思えないほど紳士的な会話だね』

 

『あのカァンって音が聞こえてきただけで思わず身構えてしまう俺は悪くない』

 

『それだけ校長先生が出てくるほどの悪戯をしてきたというわけか』

 

『そんなことは置いて早速試合開始と行こう!』

 

 

サッちゃんの鋭い指摘は無視して宣言する。

同時に選手二人も距離を取り、各々が構えを取った。

 

 

『では決勝戦、開始!』

 

 

俺の言葉で真っ先に動いたのはカイン選手だった。

これまでの試合のように無数の飛び道具で校長の動きを封じ込めるつもりだろう。

校長は相手の動きを見るつもりなのか身を固めている。

 

 

『怒涛の弾幕だカイン選手!一方で防御するしかないジェネラル選手!』

 

『絶対何かたくらんでいるね』

 

『さすが理事、校長の事をよく知っているな』

 

『少なくとも彼は黙ってやられる男ではないのは、これまでの試合結果と経験から分かるよ』

 

 

そりゃ今までの試合は秒殺だったからな。

何でスラインディングにあんな威力があるのかわからない。

 

 

『止まらないカイン選手!一方でジェネラル選手の方に動きがあるか!?』

 

『おや、どうやら動くようだよ』

 

 

サッちゃんの言葉に校長に注目する。

身を固めていたのを解いたかと思うとその場からカァンッと甲高い音と共に消えた。

現れたのはカイン選手の背後。

 

 

『出たーっ!瞬間移動でいともたやすくカイン選手の背後を取った!カイン選手万事休すか!?』

 

「ヒムリッシュアーテム!」

 

「ほぅ、見事ですな」

 

 

『なんとカイン選手!上空からの飛び道具でジェネラル選手の反撃を止めたっ!』

 

『一撃でも受けると負けると分かっているからこその動きだね』

 

『さぁ再び上段下段へと揺さぶりをかけて飛び道具の乱射だっ!』

 

『しかしコテツ君。どうやってこんなルールを再現したのか興味があるんだが。いくら気の使い手とはいえこれだけの数だと疲労は避けられないよ?』

 

『俺も知らない。大会スタッフの誰かか、おろちんが何かやったんじゃねぇの?』

 

 

大体、最初の方しか実況していなかった俺が分かるわけがない。

そうこうしている内に再び校長がカイン選手の背後に瞬間移動した。

 

 

カァンッ

 

 

「少しはやるようだが・・・まだまだ」

 

「ぐっ!」

 

 

『ジェネラル選手がカイン選手を踏みつける!これは早く起き上がらないと危険だ!』

 

『そうだね、あれは心が折れそうになるからね・・・』

 

『お、おいサッちゃん、どうした?何か目が虚ろだぜ?』

 

『ははは、いや気にしないでくれたまえ』

 

 

校長の踏みつけ攻撃を見た途端にサッちゃんの様子がおかしくなった。

以前に闘った事があるとか言っていたし、よっぽどトラウマになったんだろう。

 

 

『カイン選手!起き上がりざまの分身攻撃に気を付けるんだ!』

 

『おいぃっ!サッちゃん、気持ちは分かるが片方の選手の応援するなよ』

 

『そう!次はワープで背後に回る!そこを先手を打って攻撃・・・あぁ、危ない!』

 

『えー、サッちゃんはどうやら他人事じゃなくなったみたいだが実況を続けるぜ』

 

 

実況席の机をバンバンと叩きながら声援を飛ばすサッちゃん。

背後で控えていたメイドさんがどうしようかと俺に視線を飛ばしてきたんで放っておくように言った。

 

 

『カイン選手も防御していますがダメージは受けています・・・おっと、何やらカイン選手の体が光ったぞ?』

 

『あれは一部の方が持つ能力でタクティカル・オフェンシブ・パワー。略してT.O.Pと言います』

 

『おぅ、メイドさん。詳しいな』

 

『皆さま初めまして。グレイフィアと申します。サーゼクス様が解説役を放棄しましたので代理で解説を致します』

 

 

なんだか初めてまともな解説役が来た気がする。

サッちゃんは既に観客席の最前列に陣取っていた。

 

 

『で、そのT.O.Pってのはどうなるんだ?』

 

『はい。攻撃力1.2倍、体力の回復、ゲージ増加量の増加そして何よりもTOPアタックが使用可能になります』

 

『???えーと、じゃあカイン選手がジェネラル選手に勝てる見込みもあるって事か?』

 

『そうですね、所謂ワンチャンあれば勝てるという奴です』

 

『わ、わんちゃん?』

 

 

物凄く冷静に解説しているが専門用語なのか分からない言葉が幾つか出てきた。

しかしメイドさんはそんな俺を置いてけぼりにして解説を続けている。

わんちゃんって何で犬の話が出てくるんだ?

 

 

『カイン選手が勝つには小足でもいいのでジェネラル選手に当てる事が大事です』

 

『お、おう』

 

『しかい相手は小足の速度で通常技を出してきますので生半可な覚悟では勝てません』

 

 

誰だまともな解説役が来たって言ったのは。

今までで一番わけのわからない解説だぜ。

 

 

『投げの間合いも広く、油断していると吸われますよ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・まぁ、その何だ美猴。お前もあれくらい粘ればマシだっただろうに」

 

「うるせい。俺っちが油断したのは敗因だってのは分かってるっての」

 

 

背後の観客席の声を聴きながらヴァーリと歩いていく。

格闘大会って言うから勇んで出たのはいいが1回戦負けなんてみっともなくて泣けてくるぜ。

大体何だよあのおっさん。絶対人間じゃねぇよ。

 

 

「ヴァーリだったらどう戦うよ?」

 

「見たところあの転移も短距離限定のようだから距離を取って戦うか。いや転移のラグが無いようだから連続で使えば意味がないか」

 

白龍皇の力を使うにしても10秒持つか怪しいものだしな。

運がよくないと勝てないってどんな奴だよ。

 

 

「まぁそれも全てはまともに戦えたら、の話だよな」

 

「さすがにアレはどうかと思ったぞ」

 

 

げんなりしながらも試合の事を思い出す。

試合前に食べた肉まんの味は美味かったが全て吹き飛んだ。

試合開始と同時に背後に転移され、分身攻撃をくらって吹き飛ばされたので起き上がろうとした時だった。

 

 

『では美猴選手の条件、場外から攻撃を受けてもらいましょう!バレッタの姐さんよろしく!』

 

「報酬分は働いてやるよ。どっかーん!」

 

「え、ちょ、おい!?」

 

 

場外から乱れ飛ぶバズーカやミサイルにマシンガン。

それを掻い潜って襲い掛かる対戦相手。

あれは試合じゃない、思い返してもひどいもんだった。

 

 

「で、何処に向かうんだ?決勝まで待てばいいじゃないか」

 

「俺もそうしたかったんだが相手が指定した時間だからな。この奥だ」

 

 

そういってヴァーリが言ったのは学園の奥にある森林だった。

未だに誰と会うかも知らないまま着いて来たんだが・・・さて誰が待っているのやら。

まぁ口振りからして知り合いじゃないのは確かだな。

っていうか早く神の子を見張る者(グリゴリ)を抜ければいいのによ。

 

 

「・・・これから彼を仲間に入れようと思っている」

 

「ほぅ、強いんだろうな?」

 

「間違いなく強い。少なくとも今の俺よりもな」

 

 

ヴァーリの言葉に俺っちは驚くと同時に興味を持った。

こいつにここまで言わせるとは一体どんな奴なんだろうか。

森の中だろうか、ヴァーリの表情はどこか暗く落ち込んでいるようにも見える。

 

 

「おいおい、何をそんなに落ち込んでいるんだ。仲間になったら勝負を挑めばいいだけだろう?」

 

「そうなんだが・・・見た目のギャップでショックが大きくてな」

 

 

見た目のギャップって事は弱そうな外見をしているって事か。

しかしヴァーリがそれぐらいの事で落ち込むか?

強いと分かれば相応に接して積極的に勝負を挑みそうなものだが・・・

 

 

「着いたぞ、美猴。気を抜くなよ」

 

 

あれから10分ほど歩いただろうか。

終始、落ち込みながら緊張しているという貴重なヴァーリを見ていたのであっという間だった。

着いたのは周囲を森に囲まれた開けた場所だった。

日も落ちてきたので暗いが月の明かりで何とか見える程度だ。

 

 

「で、相手って言うのは何処だ?」

 

 

周囲を見渡してもそれらしき人影はない。

自分で時間を指定しておきながらどういうことだ。

 

 

「何を言っている、目の前にいるぞ」

 

「目の前?」

 

 

ヴァーリの言葉で視線を前に向けるが人影はない。

こんな時にヴァーリが冗談を言うわけもないので意識を集中させる。

すると視界に何かが動いたのが分かった。

更に目を凝らして確認すれば・・・

 

 

「黒い・・・線?」

 

「こんな時間に悪かったね」

 

「いや、それは構わない。それより良い返事がもらえると期待してもいいんだな?」

 

「ふむ、そうだな・・・」

 

「いや待て待て!」

 

 

平然と話すヴァーリと黒い線で描かれた、まるで子供の落書きのような何か。

悪魔、じゃないし妖怪・・・でもない当然人間でもない、天使・・・いやいや、一番ありえない。

 

 

「連れが騒がしくてすまないナナーマン」

 

「いや構わないが彼は?」

 

「俺の仲間の美猴だ。俺と同じく今の実力では貴方には叶わないだろう」

 

「ほぅ、その向上心。いい心構えだ、以前に戦った時よりも強くなっているね」

 

 

何で俺が悪いみたいな感じで進んでるんだ。

ナナーマンって名前は分かったが結局何なんだよ、この存在は。

っていうかヴァーリの奴、こんな変な奴に負けたって言うのか?

 

 

「悪いが仲間になるって言うならその前に俺っちと一勝負してもらおうか!」

 

「む?よく見れば先ほど試合に出ていた君か」

 

「見てたのかよちくしょう、とにかく戦ってもらうぜ!」

 

 

こんな歩く棒人間を仲間に入れるなんてヴァーリの奴、頭がおかしくなっちまったのか。

やっぱり神の子を見張る者(グリゴリ)禍の団(カオス・ブリゲード)の二重苦でストレス溜まってたんだな。

後で信長の旦那に雷を使ったマッサージをお願いしてもらおう。

 

 

ドーンッ

 

 

「ん?花火?」

 

「じゃあ次の花火が打ちあがったら開始って事でいいな?」

 

「いいだろう。かかってきなさい」

 

 

 

 

 

 

☆ナナーマンがヴァーリの仲間になった!

 

 

「おいっ!俺の戦闘カットかよ!?」

 

「先の見えた戦いほどつまらないものはない」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやぁ、惜しいところだった」

 

「いえ、差は歴然としていましたので、粘ったほう、というのがよい言い方だったかと」

 

 

試合は惜しくも(・・・・)ジェネラル校長の勝利となった。

私は感想を漏らしながら席に戻るとグレイフィアが辛口なコメントを漏らしていた。

背後の方で彼女が解説をしていたのは知っていたが、あそこまで詳細に解説するとは私も知らなかった。

やはり血が騒いだんだろうか。しかし1フレが勝敗分けるとか言葉の意味が分からなかったな。

 

 

「おや、コテツ君は何処に?」

 

「さきほどマイクを持って校舎へと入っていかれました」

 

 

実況席に実況がいないとなるとどうやって締めるのだろう。

もう暗くなってきたことだし皆も帰りたくなっているはずだ。

そんな事を思っていると校舎に取り付けられているスピーカーからコテツ君の声が聞こえてきた。

 

 

『さぁ、白熱した試合も終わりました。しかーし!最後の仕上げが残っています!』

 

 

「最後の仕上げ?はて、何だろうか」

 

「おや校長。お疲れ様です」

 

「あぁ。サーゼクス理事はこの後の事は?」

 

「いえ、私も聞いていません。何をするのか楽しみですね」

 

「・・・まぁ、若気の至りで済むことを祈っているよ」

 

『みなさん、上空をご覧ください!』

 

 

ジェネラル校長の最後のつぶやきが気になったがコテツ君の声に私を含めた皆が一斉に上空を見る。

暫く見ていると視界の端から何かが昇ってきているのが分かる。

 

 

ひゅるるるるる・・・どーんっ!

 

 

「ほぅ、花火か」

 

 

一発が打ちあがると暫し待って次々と花火が打ちあがっていく。

色とりどりの綺麗な花火に見惚れていると同時に学園内にて魔力が高まっている場所を感知する。

グレイフィアが動こうとするのを手で押さえる。

大方、格闘大会の熱気にやられた観客の誰かが闘っているのだろう。

実際、花火そっちのけで炎や氷、雷などが飛び交っている。

 

 

「素晴らしいですね。最後の締めにはぴったりじゃないですか」

 

「う、うむ。そうだね、夏の風物詩というだけはある」

 

 

顔を上げていたのを戻してジェネラル校長の顔を見る。

見ればジェネラル校長だけではなく周囲の先生方もどこか腑に落ちない表情をしていた。

 

 

「あの八代が普通に花火をあげるだけで済むのか?」

 

「確かに盛り上がっているが・・・いや、待て。この花火は誰が上げているんだ?」

 

「それは普通は花火師が・・・そうだった、普通じゃない奴が企画しているんだった!」

 

 

何故か別の意味で大盛り上がりだった。

それにしても随分と多く打ち上げている。

かれこれ20分は続いているが一向に花火が止む気配はない。

そういえば校舎の隠し地下室に火薬がいっぱい置いてあったな。

それも花火を作るためのものだったのか。何だ問題児というより皆の事を考えているいい生徒じゃないか。

リアスもいい友人を持ったみたいだ。

 

 

「どうもサーゼクスさん。まさかこの学園の理事だったとは驚きました」

 

「八代さん。いえ、隠すつもりはなかったんですよ」

 

 

騒ぎだした先生方は無理やり気にしない事にして再度、花火を見上げているとコテツ君のお父さんがやってきた。

保護者達で飲酒していたためか、やや顔が赤い。

 

 

「はい、これをどうぞ。あ、メイドさんも」

 

「え?これは・・・ヘルメット?」

 

 

渡されたヘルメットに一瞬どうすればいいのか迷う。

八代さんを見れば頭にヘルメットをして腰を落としていた。

 

 

「あの、いったいどうされたのですか?」

 

「虎徹が花火を打ち上げるってことは爆発するって事ですからね。何が起こってもいいようにしないと」

 

「八代様、それはさすがに親としてどうなのでしょうか?」

 

「親だから、誰よりも虎徹の事を分かっているからこうしているんですよ」

 

 

そういうものなのだろうか。

幾らなんでも爆発なんて、気負いすぎな気がするが・・・

 

 

『え、ちょ、おまっ!こっちくんな!?』

 

『きゃっ、トラちゃん。火がついちゃってるわよ!?』

 

『こっちよティナ。コテツが入ってきた場所に落としなさい!』

 

『あーっ!待つでござる!その下は火薬庫・・・』

 

 

そんな矢先に不穏な声がスピーカー越しに聞こえてきた。

えっと思う間もなく大きく鈍い爆発音が響く。

続けて何かが崩れる音が響き渡る。

 

 

「・・・・・・・・・」

 

「ね?言ったでしょう?」

 

 

八代さんの声もまともに聞けず、目の前の光景に開いた口が塞がらない。

先ほどまであった校舎が見事に倒壊している。

校舎にあった地震がこようと崩れない結界を張ってあったにも関わらずだ。

リアスが通うと知って、文字通り耐神構造にしたというのにどうしてだ?

 

 

「・・・あ」

 

「どうされました?」

 

「あの秘密通路か・・・」

 

 

以前にコテツ君に案内された校舎の壁と壁の間にできた秘密通路。

魔法陣や結界の要などが設置されていると以前に報告で読んでいたのを今更思い出してしまった。

その状態で更に建物の地下に部屋を作るなどの大改造を施しては崩れるのも当然だった。

 

 

「そ、それよりリーアちゃんは無事なのか!?」

 

 

幾ら悪魔でもあれほどの爆発と倒壊をして心配になる。

他の方たちもようやく事態を理解したようで私は先生方と崩れた校舎へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「げほげほっ!ったく、何て事しやがる!」

 

「何よ!あんた達が花火を上げさせてくれないのが悪いんでしょ!?」

 

 

ガラガラと崩れる瓦礫を押しのけて身体を起こすと騒動の原因につかみ掛かる。

転校生にして先ほどの格闘大会にも出ていた、ひななないてんこ、とか言う奴だ。

こいつが大きな石に乗って現れたかと思うと私にもやらせろと言ってきた。

ちょうど、花火を打ち上げるところだったので待っていろと言ったのが運の尽きだった。

突然癇癪を起したコイツが飛び道具で打ち上げるために火をつけた花火の筒を倒してしまったのだ。

そうなってからは慌ててグレモリーが俺が使っていた隠し通路に蹴り落して地下室の火薬室に引火して大爆発。

 

「けほっ、み、皆大丈夫?」

 

「うぅ、ひどい目に会ったでござる」

 

「ぜぇぜぇ、朱乃、ティナ。生きてる?防御壁は間に合ったみたいね」

 

「つ、疲れましたわ。瞬間的に大量の魔力が持っていかれましたもの・・・」

 

「こんな大事になるとは思わなかったわ。お姉さんくたくたよ」

 

「ボクも封印のせいで魔力が少ないから疲れたデス」

 

 

どうやら飛び道具持ち3人+1匹が何かして俺達を守ってくれたらしい。

まぁ皆無事だからこっちはいいとして、だ。

 

 

「飛び入りで来たんだからちょっと待つぐらいできねーのかよ」

 

「ふん、この私が来てあげたんだから優先するのは私以外に何があるのよ」

 

「お前どんだけ偉そうなんだ」

 

 

前はあんまり話さなかったがこれ程の傍若無人っぷりとは。

まぁ過ぎた事は仕方ない。

確かポケットに入れてあったはず・・・

 

 

「お、これだこれだ」

 

「何よそれ」

 

「これも花火だ。俺は地味だからあんまり好きじゃないんだけどな」

 

 

転校生にソレを持たせて先に火をつける。

火のついたそれは小さな火の玉となって静かに弾け出した。

うーん、やっぱり線香花火って地味だな。

幾つも束ねて大きな火の玉を作ってみるか。

 

 

「綺麗、だけどパッとしないわね」

 

「我儘な奴だな」

 

「って何を呑気に遊んでるのよ!」

 

「なんだグレモリー、混ざりたいなら言えよ」

 

「そうじゃなくって。コレどうするの八代君」

 

 

結城に言われて転校生で現実逃避をするのをやめる。

転校生は気づけば両手に線香花火を同時につけて遊んでいた。

こちらは放っておくとして、だ。

 

 

「どうするって・・・どうにかできるかコレ?」

 

 

さすがに学校を半壊させたことはあっても全壊させたことはない。

琢磨なら何とか・・・できないか。

 

 

「さすがに拙者の忍法でも時間は戻せないでござるよ」

 

「これは何とかできるレベルを超えていますわ」

 

「大丈夫よ朱乃ちゃん。それでもデス様なら・・・デス様ならきっと」

 

「ボクは壊す専門デス」

 

 

やっぱ無理だよな。

さすがに知り合いに大工はいねーな。

後は困ったときの俺の本ぐらいだが・・・肝心なところで役に立たないからな。

 

 

「まぁ、全員無事だったんだし良かったって事で・・・痛いっ!」

 

「何が良かっただ八代っ!」

 

「げぇっ、ヨハン先生!?」

 

 

誰かに後頭部を叩かれて後ろを振り返ればヨハン先生が仁王立ちしていた。

いつの間にいたんだ。まるで気が付かなかったぞ。

 

 

「今日と言う今日はタダでは済まさんぞ」

 

 

ぐいっと首元を持ち上げられて宙吊りになる。

く、苦しい。やばい、ヨハン先生の目が完全に本気だ。

何か普段は出ない黒いオーラみたいなのが身体中から吹き出てるし。

 

 

「さすがに今回ばかりは八代だけではなく、この場にいる他の者も全員だ」

 

「ま、待ってくれ。俺今回は悪くなくね!?」

 

「往生際が悪いぞ八代」

 

 

引火させたのは転校生だし、火薬庫に花火を突っ込んだのはグレモリー。

ほら、俺は悪くないじゃないか。

俺が首元を絞められながら言うと分かってくれたのか力を若干緩めてくれた。

 

 

「ほぅ、そうなると一つ疑問が残るな」

 

「疑問?」

 

「うちの学校にはいつから火薬庫なんてものが出来たのか、だ」

 

「・・・さ、さぁ何でだろうなぁ」

 

「ヨハン先生、火薬庫を作ろうと言い出したのは虎徹が原因です」

 

「琢磨!?」

 

 

格闘大会のサポートを行っていた琢磨からのまさかの裏切り。

琢磨は頭を抱えながらも瓦礫の上を歩いて近寄りながら話を続けた。

 

 

「虎徹、さすがにこの騒動は僕には許容できないな」

 

「お、おいどうしたって言うんだよ」

 

「地下室に作っていた新作の機体、AngleDrawSphere・・・通称ADSの開発が全てパーだ。そして何よりも」

 

 

いつもの琢磨とは違い珍しく怒りの表情を浮かべていた。

よほど大切なものを作っていたんだろうか。

 

 

「秘密裏に作っていたデス様専用解剖兼解析室まで壊すとはどういうことだ!」

 

「・・・あれ?もしかしてボク知らない内にコテツに助けられていたデス?」

 

「くっ、折角ホルマリン漬けにする準備も整っていたというのに!」

 

「コテツありがとうデス!」

 

 

よく分からないが俺はデス様を助けたらしい。

 

 

「ほ、ほら人助け?もしたんだからヨハン先生、ここは温情に!な?」

 

「いや、駄目だね」

 

「サッちゃん!?」

 

 

今度はサッちゃんまで現れて助けを拒否してきた。

何だよ、秘密通路に入れた仲じゃないか。

更には続けて武闘派の先生たちまでやってきた。

・・・あれ?この学園って武闘派じゃない先生って誰がいるんだろうか。

 

「八代虎徹。君に聞きたい事がある」

 

「右京先生、その前に口元の血を拭ってくださいよ」

 

「すまない・・・けほっ、君たちがいる場所はどこか分かるかね」

 

「何処って・・・」

 

 

それよりもヨハン先生を何とかしてほしいんだけど。

宙ぶらりな状態で周囲を確認する。

見事なまでの瓦礫、座り込んでいる半蔵達、線香花火を束ねて遊んでいる転校生。

ド派手なカーテン、散乱した机、俺達を取り囲んでいる教師陣。

特におかしなところは無いな。

 

 

「ここは職員室があったと思うのだが見覚えのないカーテンを見つけてね」

 

「・・・あ」

 

 

し、しまった。折角悪戯で仕掛けたのにお披露目の機会がこんな状態なんて誰が思うだろうか。

もっと自然な感じで朝、学校に来たときに見つけてもらおうとしたというのに!

 

 

「こんな事なら格闘大会が終わった後、職員室に誘導するようにすればよかった・・・」

 

「反省の色、無しと・・・」

 

「小童がそこに直れい!叩き斬ってくれるわ!」

 

「さすがに悪戯じゃ済むことと済まない事がありますからね」

 

「ふむ、どうしますかジェネラル校長」

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

 

先ほどから、じっと俺を見据えて喋らなかった校長が口を開く。

 

 

「君達は明日から30分早く学校に来るように」

 

「・・・え?それだけ?」

 

 

校長にしては随分と温情な罰だ。

前の学校で校舎を半壊した時なんて半年雑用係にされたぐらいなのに。

・・・が、当然そう上手くいく話じゃなかった。

 

 

「その30分間、私達教師陣と闘ってもらおうか」

 

「・・・はい?」

 

「君は以前から飛び道具になりたい(・・・・)と言っているそうじゃないか。その気分を味合わせてあげよう」

 

「い、いや、俺は飛び道具を出せるようになりたいって言ってるだけで」

 

「それはいい提案ですな」

 

「最近、体が鈍ってきているからいい運動になりそうだわ」

 

 

ちょっ、何でそんなにやる気なんだ先生達!

もっと博愛の精神を持って生きていこうぜ!

 

 

「あぁ、ヨハン先生。もういいですよ、やってください」

 

「え?」

 

「分かりました。仕置きレベルだ、強めに行くぞ。黒龍の力をとくと味わえ!ふんっ!」

 

「ぎゃーーーーーっ!」

 

 




次回か次々回から制限解除となります。
よりカオスな虎徹の学園生活をお楽しみください。

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