はいすくーるDxD 平穏(笑)な日常   作:鶏唐

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ifシリーズ~英雄派の日常

「曹操様大変です!」

「・・・俺に安寧の日は無いのか」

「曹操様(恋姫)がアーサー様(Fate)を勧誘しようとして」

「闘技場が壊れたか?」

「それがギルガメッシュ様が乱入してしまい・・・」

「・・・建物半壊か」

「その騒ぎを聞きつけたシャントット様とストーム1様が皆様を止めるため・・・」

「すまんがこれから休暇を取る」

「見捨てないでください曹操様!」

「ええい離せ!」


曹操に平穏が訪れる日は無い。




第40話

「ほら、八代君。早く行こうよ」

 

「・・・あぁ」

 

 

おかしい、何故こんな事になった。

日曜日の昼前、俺と結城は二人で市街地にあるリーアデパートに来ていた。

確かに約束はした。が、俺は半蔵や琢磨、先輩も一緒に来るものだと思っていた。

だが何故か3人とも用事があると言い出して結果、俺と結城二人だけになっていた。

悪戯のネタを買うと言う目的は変わっていないがこれじゃあ・・・デートじゃねぇか!

 

 

「どうしたの?」

 

「あー、いや、何でもねーよ」

 

 

せめてもの救いは結城が天然鈍感だって事だ。

おかげで俺が内心慌てるだけで済んでいる。

さすがは中学時代に数々の告白されたにも関わらず笑顔で見当違いの回答をして粉砕した奴だ。

・・・いやいや、おかしいだろ。

何で俺と結城がデートしなくちゃならねぇんだ!

お、落ち着け俺・・・そう、これはデートじゃない。

ただ友人と買い物に来ただけだ。そう思え、いや思い込め!

 

 

「・・・よし、行くぞ結城!」

 

「え?うん。何で急に張り切ったの?」

 

「やかましい!いいから行くぞ」

 

「ちょ、ちょっと待ってよ八代君」

 

 

恐るべし結城。

だが俺はこんな事じゃ動じないぜ。

小走りで着いて来る結城が隣に並ぶと俺は入り口にある案内板の前で立ち止まる。

 

 

「で、カーテンって何処に売ってるんだ?」

 

「えっと・・・8階みたい」

 

「じゃあエレベータで向かうか」

 

 

入り口からエレベータ乗り場へと向かう。

丁度、1階で停止していたようで直ぐに乗り込めた。

途中で止まるというアクシデントがあるはずもなく、無事に8階へと辿り着く。

 

 

「さーて、カーテンは・・・あっちか」

 

「あ、可愛い小物もあるね」

 

 

インテリア用品が並ぶフロアで壁にかかっているカーテンが奥に見えた。

そちらへと向かう途中で結城が色々と目移りしているのを見て俺も色々と見ながら歩く。

あんまりこの辺って立ち寄らないからな。

ライザーさんが本格的に居候する事になって以来だから3年振りだろうか。

 

 

「うーん、私も何か買って行こうかな」

 

「まぁ今のところはカーテンくらいしか買う予定無いしいいんじゃねーの?お、この置物変な形してる」

 

「あ、本当だ。全身真っ黒、でも猫耳がついているから猫さんじゃないかな」

 

「いや、この白い丸は目じゃないか?一つ目って事は猫じゃねーよ」

 

 

お洒落な小物が並ぶ中で変わった形の置物を手にとって楽しむ。

買いたいがカーテンの値段も分からないしお袋に無駄遣いするなと怒られそうなので元の場所に戻した。

その後、幾つか賞品を見ては結城と感想を言い合いながらカーテン売り場に到着した。

 

 

「やっぱ色々と種類があるな」

 

「うん、ヨハン先生に似合うカーテンってどれだろう?」

 

 

壁にかかっているものから商品棚にあるものまで揃っている。

ヨハン先生のカーテンは職員室にかける一部だ。

まずは他の先生達用のカーテン、キャラ物のカーテンを探さなくては。

と、俺と結城がきょろきょろとしていたからか店員が話しかけてきた。

 

 

「いらっしゃいませ。どのようなものをお探しですか?」

 

「えっと幾つか探しているんですが・・・」

 

 

キャラクター物、赤と言ったカーテンを探している事を伝える。

赤は橘先生用だ。赤い装飾品とかは身につけてはいないのでイメージには合わないと思う。

が、あの先生は気づいたら血を吐いている気がするからピッタリな気もする。

しかしこの店員、無表情で聞いてくるなよ。もうちょっと愛想よくしてもいいと思う。

 

 

「キャラクター物のカーテンはこちらになります」

 

「あ、アテナだ。可愛い」

 

「麻宮じゃねーか」

 

 

メガネを押し上げて探しているカーテンを教えると直ぐに歩き出すので追いかけた。

そこには俺達のクラスメイトであるアイドルの麻宮アテナがプリントされたカーテンがあった。

デフォルメされていて色んな表情や動きをしている麻宮が散りばめられている。

誰がこんなものを部屋に飾るんだろうか。

しかしこれが職員室にあると考えると面白いな。

 

 

「よし、これにしよう」

 

「これをヨハン先生に?大丈夫かな」

 

 

これはヨハン先生用じゃないんだが、まぁ訂正するのも面倒だしいいか。

値段は5000円、痛い出費だが仕方ない。

次は赤いカーテンだな。

俺が商品を手に取ったのを見て店員が再び歩き出す。

 

 

「赤いカーテンはこちら」

 

 

何か段々と接客が雑になってきた気がする。

店員が持ってきたカーテンを受け取ると赤い、としかいえない普通のカーテンだった。

うーん、確かに赤いけどもうちょっとインパクトのあるものは無いだろうか。

 

 

「ワインレッドよりも鮮やかな方がいいと思うよ」

 

「これワインレッドって色なのか。赤なんて同じだろ」

 

「違うって。ほら店員さんの髪の色と全然違うでしょ」

 

 

色に対して拘りの無い俺が言うと結城は店員の髪を指して言った。

んー、確かに違うけど・・・どうでもいいや。

結城に指を指されている店員は俺と同じように興味無さそうに俺達のやり取りを見ていた。

 

 

「あーじゃあ鮮やかな色の方があればそっちをお願いします」

 

「全く・・・こんな事に時間を費やしたくはないのだが」

 

 

完全に接客と言うものを放り投げた眼鏡店員はあからさまにため息を吐きやがった。

やれやれ、と首を横に振るたびにパイナップルみたいな髪が一緒に揺れる。

何でこんな奴を雇った。

 

 

「ほら、これでどうだ」

 

「あ、これならいいと思う」

 

「んじゃこれでいいな」

 

 

接客を忘れ去った眼鏡店員がぽいっと俺達にカーテンを放り投げる。

結城は気にした様子も無くカーテンの色を俺が先ほどから持っているカーテンと見比べて頷く。

値段は3000円か、さっきのと合計で8000円・・・高い。

 

 

「じゃこれも決まりっと。後一つだが、ヨハン先生に似合う色って決まったか?」

 

「え?これじゃないの?」

 

「バカだな結城。どれが合うか分からないんだから種類は多い方がいいだろ」

 

「それもそうだね。じゃあ次は・・・」

 

 

あっさりと信じる結城に俺は心の中でガッツポーズを取る。

今まで選んできたカーテンがヨハン先生じゃないと知れば悪戯のためだとバレてしまうかもしれない。

そうなれば結城の事だ、警戒して俺の企みがバレてしまう。

天然だから騙した状態なら一緒に悪戯もできるが頭がいいからか警戒しているときは悪戯ができなくなってしまう。

結城と初めて会った時は誰に対しても警戒して冷たい奴、と言う印象を持っていた。

しかし人間、変わるもんだな。まぁ大半はお袋の影響だろうが。

 

 

「ほら、八代君。次の場所行こう?」

 

「ん、あぁ分かった」

 

「時間の無駄だ。早く来い、投げ飛ばすぞ」

 

 

結城に言われて俺は後を追う。

そして眼鏡店員、完全に俺達を客として扱ってねーだろ。

胸元にある名札、そこに書かれている名前はしっかり覚えたからな。

す、す、すぴねる?おのれ、英語で俺を騙そうとは何処までも接客のなってない女だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「むむ、動いたでござるよ」

 

「はぁ・・・もう帰ってもいいですか?」

 

「駄目よタクマちゃん。ほら追いかけるわよ」

 

 

何故僕はこんな事をしているのだろうか。

考えたところで原因は横にいるバティン先輩しかありえないのだが。

虎徹と結城さんが買い物をしているのを僕達は隠れて尾行している。

本来ならば虎徹の買い物に僕と半蔵も付き合う予定ではあった。

しかしバティン先輩が止めたので何事かと思えば・・・

 

 

「今回は一体何を考えているんですか」

 

「失礼ね。可愛い後輩を助けようと思うお姉さんの優しさが分からないの?」

 

「どういう意味でござるか?」

 

「アスナちゃんの鈍感さを克服させるためにトラちゃんと二人っきりにしたに決まっているじゃない」

 

「むむむ、と言う事は結城嬢は殿のことを?」

 

「うーん、そこまでは分からないけれど。男の子と二人っきりならアスナちゃんの鈍さも治るかなって」

 

 

確かに結城さんの鈍感レベルは尋常ではない。

中学時代に告白して玉砕された数は山ほどいる。

虎徹達と出会うまではクールな印象な社長令嬢と言う事で高嶺の花として人気を博していた。

そして虎徹、いや虎徹の母親と何かがあった時から彼女は変わった。

明るい笑顔が増え、虎徹の悪戯に巻き込まれ、時には虎徹を驚かせる悪戯に発展した事もあった。

人付き合いのしやすい性格になったからか人気は高まり告白するものが耐えなかった。

しかし、彼女の恐ろしさは恋に対する鈍さにあった。

付き合ってくれと言えば買い物に付き合うと勘違い。

二人で遊びに行こうと誘われると虎徹や僕達を誘って皆で行こうとする等、挙げればキリが無い。

 

 

「今までその鈍感さを見て笑っていた人の言葉とは思えませんよ」

 

「こういうのは面白・・げふん、数々の犠牲を生み出したから必要だと思ったのよ」

 

「しかし相手が殿であるのは何故でござるか?」

 

「ふふっ、分かってないわねハンゾーちゃん。それはトラちゃんの弱点だからよ」

 

「何と!殿に弱点があろうとは!」

 

 

胸を張って言うバティン先輩に僕は納得した。

要するに面白いから結城さんの鈍感脱出計画を実行したと。

そしてその相手役に虎徹を選んだのもまた面白いから、と言う事だろう。

 

 

「そう、それを見て楽し・・・じゃなくて一緒に克服するのよ」

 

 

虎徹の弱点。まぁ弱点と言えるのかは微妙なところだが。

恋人同士がやるような甘い状況に酷く弱いという事だ。

姫島さんが隙あらばやろうとしている虎徹の頭を撫でる行為。

恋人同士がやるかは微妙だが虎徹が狼狽するのを見る限り、その範囲に含まれるのだろう。

以前に虎徹が例の力で本を枕にして眠っている時にバティン先輩が膝枕をした事がある。

目が覚めた虎徹は顔を真っ赤にしてゴロゴロと転がりわけのわからない言葉を発して逃げ出した。

まぁ逆に欲情する方向に持っていこうとすると嬉々としてやる辺り虎徹の線引きは僕でもよく分かっていない。

 

 

「そういえば球技大会でガーネット姉と面白い空気になっていましたね」

 

「何それ、私聞いてないわよタクマちゃん!どうして呼んでくれなかったの!」

 

「僕も遠目に見ただけでしたからね」

 

 

まぁこうして何だかんだ話しているが。

僕も虎徹の狼狽する姿を見るのは面白いという事だ。

ならばバティン先輩の行動に協力するのも吝かではない。

 

 

「ぬぅ。しかし殿にも黙って加担するのは・・・」

 

「ハンゾーちゃん。これもトラちゃんのためなのよ」

 

「殿のため、でござるか?」

 

「あぁ、そうだ。虎徹が弱点を克服すれば怖いものなしだろう?」

 

 

実際、虎徹の弱点など山のようにあるが。

例えば校長であったり虎徹の母親であったり、中学の教師達であったり。

人物以外で言えば勉強であったり簡単に考え付く。

 

 

「確かに、殿の弱点が何かは分からぬが無敵となれば拙者も嬉しいでござる!」

 

「そうよ。だから私達は二人の行方を見守る義務があるのよ!」

 

「拙者、鱗から目が落ちた気分でござる!」

 

「目から鱗だ」

 

 

あっさりと騙されて陥落する半蔵。

しかしこれが半蔵のいいところでもあるし僕としても文句は無い。

半蔵が協力すれば監視がしやすい。

忍びだけあって暗躍する術については僕よりも詳しいからな。

 

 

「そうと決まればお二人とも行くでござる。その前に先行させておくでござる」

 

 

隠れていた物陰から出て分身体を1体出現させると二人の後を追った。

相変わらず良く分からない技術だ。

ホログラムでもない実体を持った自分の分身。

忍者だから、では説明が出来ないのだが・・・

ん?半蔵のポケットから何かが落ちたな。

 

 

「半蔵。何か落としたぞ」

 

「おぉ、すまぬ琢磨」

 

 

落ちたものを拾って見れば一枚のチラシだった。

妙な文様が描かれており、困った時に念じて下さい、と書かれていた。

これでは何のチラシかさっぱり分からないな。

 

 

「これは何だ?」

 

「うむ、ココに向かう途中で貰ったのでござる」

 

「へぇ、どれどれ・・・って、あらら」

 

「何か知っているんですか?」

 

 

バティン先輩が僕の持っている紙を見て笑みを浮かべる。

その様子から何か知っているようだが彼女は首を横に振って紙を奪った。

まぁ僕の物ではないから構わないのだが。

 

 

「半蔵ちゃん、ちょっとこれ貰うわね」

 

「うむ。構わぬでござるよ」

 

「じゃあちょっと待ってて。直ぐに戻るわ」

 

 

そう言って先ほどまでいた物陰に向かった。

僕と半蔵は何の事か分からず首をかしげるしかない。

 

 

「どうしたのでござろうか」

 

「分からん。虎徹と結城さんは?」

 

「ふむ、17階のレストラン街に向かったようでござる」

 

「そういえばお昼か」

 

 

腕時計を見て頷く。

僕達も何処かで食事をした方がいいだろう。

 

 

「はーい、お待たせー」

 

「うむ。では早速向かうでござ・・?」

 

 

大して時間もかけずバティン先輩は戻ってきた。

それに半蔵が声をかけるが不思議そうな顔をしている。

その気持ちは僕も同じだ。

 

 

「何故グレモリーさんがいる?」

 

「そんなの私が知りたいわよ・・・」

 

 

どこか疲れた表情のグレモリーさんがバティン先輩に手を引かれていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

休日に悪魔の勤めを果たそうとしたのがいけなかったのかしら・・・

私は家にいながら使い魔に命令して街中で契約の魔法が込められたチラシを配っていたはず。

途中でハンゾーに出会い、迷ったけれど渡すように命令したのも覚えている。

けれど実際に召喚されてみればティナだったなんて誰が思うのよ。

結果的に、ティナと契約をして内容は一緒について来い、なんて曖昧なもの。

はぁ、悪魔と悪魔が契約をかわすなんて思いもしなかったわ。

 

 

「で、何でこんな事しているの」

 

「おぉ、この牛肉は味が染みて美味いでござるな」

 

「うん。パスタも悪く無いな」

 

「ハンゾーちゃんのすき焼き御膳も美味しそうね。私のと一口交換しましょう?」

 

「・・・話を聞きなさいよ」

 

 

私を完全に無視してお昼を食べる3人に私はうな垂れながらカルボナーラを食べた。

あら、美味しいじゃない。

レストラン街にあるとは言え、チェーン店のファミレスなのに。

大方お兄様が力を入れているから美味しくなったのでしょうけど。

何せ私がいる場所はリーアデパート。オーナーが誰かなど簡単に想像できるのが悲しいわね。

 

 

「ふむ、グレモリー嬢は事情を知らぬのでござるか?」

 

「そういえばリアスちゃんには何も説明してなかったわね」

 

 

一体何の事かしら?

誰かを追っているというのは、これまでの話の流れで推測は付くのだけれど。

 

 

「虎徹と結城さんだ」

 

「コテツとアスナ?」

 

「そう、ほらあそこの席にいるでしょ?」

 

 

そう言ってティナが指差した箇所へと視線を動かす。

そこにはテーブル席に座るティナの言った二人の姿があった。

コテツが身振りで何かを話していて、それをアスナが楽しそうに笑みを浮かべている。

・・・何かしら。何だか楽しくないわね。

胸の奥に痛みのような言葉に表しづらい感覚。

それを知ってか知らずかティナが説明をしてくれた。

 

 

「つまり、アスナが鈍いのを治すのとコテツの弱みを見て楽しもうって事?」

 

「平たく言えばそういう事だな」

 

 

アスナが鈍いというのはイマイチ分からない。

コテツ達以外の男の子と話しているのを見たことが無いし。

でもコテツの弱みを聞いて思わず笑みを浮かべてしまう。

なるほど、ね。コテツも可愛いところがあるじゃない。

ふふふ、これまで散々振り回された借りを返すのにいい考えが浮かんだわ。

これ以上コテツの好き勝手にはさせないわよ。

 

 

「機嫌が悪くなったと思えば機嫌がよくなったな」

 

「ぬぅ、この短い時間で何があったのでござろうか」

 

「二人とも。女心は複雑なのよ」

 

 

愛に関しては一家言も二家言もあるグレモリー家にとっては格好の獲物でしかないわ。

あはは、考えるだけでコテツが羞恥で真っ赤な顔をしているのが目に浮かぶわね。

 

 

「あ、出て行くわよ」

 

「追いかけるでござる」

 

「グレモリーさん。行くぞ」

 

「え?あぁ、そうね。行きましょう」

 

 

タクマの言葉で我に返り慌てて皆を追いかける。

コテツとアスナを後方から見て付かず離れずの距離を保つ。

二人は3階の婦人服売り場に来ていた。

 

 

「・・・居辛いな」

 

「女性達の視線を感じるでござる」

 

「気にしたら負けよタクマちゃん、ハンゾーちゃん」

 

「ティナの言う通りよ。もっと堂々としていなさい」

 

「尾行しているのに堂々としてもまずいだろう」

 

 

タクマとハンゾーが居心地悪そうにしているけれど関係ないわ。

見ればコテツも居心地悪そうにしながらアスナの問いかけに答えている。

うーん、距離があるから悪魔とは言え、声が聞こえ辛いわね。

 

 

「ティナ。二人の会話とか聞こえない?」

 

「そうね。タクマちゃん、どうせトラちゃんに盗聴器付けているんでしょ?」

 

「まぁ付けていますが・・・」

 

 

そういって私達にイヤホンを渡してくる。

それを耳につければコテツとアスナの会話が聞こえてきた。

 

 

「・・・何だかんだ言ってノリノリだなグレモリーさん」

 

「伯母上が女性は勢いで何とかなるって言っていたでござるよ」

 

 

何か言っている二人は置いて耳を澄ませる。

そう、これはコテツがアスナに迷惑をかけないか心配しているだけ。

別に疚しい事なんてこれっぽっちも無いわ。

 

 

『これなんてどう?』

 

『知らねーよ』

 

『もぅ、ちゃんと考えてよ』

 

『男の俺に女物の服の意見を求めているのが間違いだっての』

 

 

コテツをからかうのはこういった路線で行くのがいいのかしら?

その前にアスナ、コテツに聞こうって時点で間違いだって気づきなさいよ。

そんな会話をいているとまるで・・・

 

 

『あ、カップル用のTシャツだって』

 

『・・・アホか。誰が買うんだこんなの』

 

『だよねー。あ、こっちの服可愛い』

 

『はぁ・・・つ、疲れる。結城の奴、まさか狙って言ってんじゃねーだろうな』

 

『何か言った?』

 

『何でもねーよ』

 

 

・・・やっぱりイラッと来るわね。

イマイチ、自分でも分からない感情を持て余してしまう。

 

 

「服なんてある程度、動きやすければどうでもいいだろうに」

 

「拙者としては懐にたくさん入るのが望ましいでござる」

 

 

コテツと言いどうして私の知り合いにはこんな男の子しかいないのかしら。

いえ、祐斗はまだマシね。

 

 

『あ、殿様だー!』

 

『あん?お前は・・・どっかで会ったっけ?』

 

『あ、球技大会であった子だ』

 

 

イヤホンから聞こえてきた声に視線をコテツ達に向けると女の子がいた。

あれは・・・小学校にいた子だったかしら?

 

 

『殿様、今日は忍者はいないの?』

 

『忍者?半蔵か・・・おーい、半蔵ー』

 

 

シュタッ

 

 

『お呼びでござるか殿!』

 

「え?」

 

「はぁ・・・」

 

「あーあ、やっちゃったわね」

 

 

イヤホンから聞こえてきた半蔵の声に思わず隣を見る。

ため息を吐くタクマと苦笑するティナ。

話題に出てきたハンゾーの姿が無く、コテツ達の傍にいた。

何やってるのよハンゾーは・・・

 

 

『おー、忍者の兄ちゃんだ』

 

『むむむ、お主はいつぞやの・・・誰でござったか?』

 

『レヴィ!レヴィ・ザ・スラッシャーだよ!』

 

『服部君も買い物に来てたの?』

 

『いや?拙者は皆と一緒でござるよ』

 

「仕方ない、行くとするか」

 

「そうね、今日は作戦失敗みたいだし。行きましょうかリアスちゃんも」

 

 

いや、何でハンゾーがあの場にいるのか説明しなさいよ。

空間転移?それとも高速移動?ギャスパーみたいに時間を止めたの?

もう出会って4ヶ月になるけど全然分からないわ。

 

 

「まぁいいわ、早速コテツに借りを返すときが来たと思いましょう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

やれやれ、今日は何か疲れたぜ。

家に帰って来た俺はリビングで寛いでいた。

結城と悪戯のネタであるカーテンを買いに行って昼飯を食ったまでは良かった。

カーテン代は思いのほか高かったが諦めた。

しかし付き合ったお礼にと結城の買い物に付き合ったのは間違いだった。

女の子の服なんてさっぱりな俺は居辛くてしょうがない。

女性客の視線が飛んできて正に敵地に挑む兵隊のような気持ちだった。

 

 

「へぇ、それでデートは楽しんだのか?」

 

「デートじゃねぇよ。結局その後は皆と合流してゲーセンとカラオケに寄って遊んできたからな」

 

 

何故かレヴィとか言うチビッ子も混ざっていたが。

あのチビッ子、やけに歌が上手かったな。

 

 

「おいおい、こういう時は男性がリードしてあげなきゃ駄目だろ」

 

「んな事言われてもな。服のセンスなんて本人が満足してればそれでいいだろ」

 

「女心が分かって無いな。こういうのは一緒に選ぶだけでも楽しいもんなんだよ」

 

「大体、先輩をデートに誘えないようなライザーさんに女心をとやかく言われたくは無いぜ」

 

「ぐっ、それを言うなよ・・・」

 

 

ニヤニヤと俺の話を聞いているライザーさんにジト目で返す。

あっさりとへこんでしまうライザーさん。

何てヘタレなんだ。

 

 

「で、でもリアスが積極的になったとは面白い事になったな」

 

「面白くねぇよ。くっ、グレモリーの奴め。姫島に続いて俺の敵になるとはな」

 

 

何故か来ていたグレモリー。

まぁ、遊んでいて合流でもしたんだろう。

問題はやたらと俺に絡んできた事だ。

腕を絡んでこようとしたりとスキンシップにしては度が過ぎている。

その度に俺は慌てて距離を取ったりと翻弄されっぱなしだった。

ぐぬぬ、まさかグレモリーに手玉に取られるとは一生の不覚!

 

 

「虎徹、明日来て行く服だけど。これでどうかしらー」

 

「あー、いいんじゃねーの」

 

「いや、お袋さん。派手過ぎやしませんかね」

 

「そう?じゃあ別のにしようかしら」

 

 

やたらキラキラしたラメの入った服を持って俺に感想を求めてくるお袋。

それに俺は適当に返し、ライザーさんがまともに感想を言った。

明日は授業参観日だからって気合入れすぎだろお袋。

普段どおりの服でいいんだよ。

 

 

「親父はやっぱ無理なのか?」

 

「一日中やっているみたいだから何処かで合間を縫って行くつもりだ」

 

「親父さん、注ぎますよ」

 

「お、悪いねライザー君」

 

 

ビールジョッキ片手にバラエティー番組を見ている親父に聞く。

まぁ小学校、中学校とは違い今回は一日中授業参観だもんな。

親父も来る事が出来るのは嬉しいやら恥ずかしいやら。

 

 

「そういえば結局ライザーさんも来るのか?」

 

「もちろん!」

 

「やれやれ、この間言っていた妹さんの方を気にしろよ」

 

「え、レイヴェルか?あの子はコテツと違って優秀だからな」

 

 

ライザーさんには二人の兄と一人の妹がいるらしい事は聞いている。

妹のほうは搭城と同い年の中学2年らしい。

以前に写真を見せてもらった事があるが見事なまでのドリルだった。

まさかあんな髪型をした奴がいるとは・・・いや、良く考えたら結構いるな。

 

 

「あ、そうそう虎徹。ディズィーちゃんとソル君も連れていくからね」

 

「はぁ?何で?」

 

「今日二人と会った時に誘ったのよ」

 

 

いや、そんな気軽に言うなよ。

元が付くが名門女学園だぜ?

警備的に家族以外が入って大丈夫なんだろうか。

 

 

「ディズィーはまぁ分かるとして何でソルさんが?」

 

「よく分からないけれどディズィーちゃんが行くと知って着いて来るって言ってたわよ」

 

「何かソルの奴様子がおかしかったな。ディズィーの事を聞いて考え込んでいたし」

 

 

まさかソルさん・・・ディズィーの事が好きなんじゃないだろうか。

思えば球技大会の時もやけにディズィーの事を見ていたような気がする。

保護者であるテスタメントさんと仲が悪そうだったのも気になるな。

俺も合間を見ては大自然と一緒に遊びに行っているがソルさんについては話題も上がらなかったら気づかなかったぜ。

 

 

「ほぅ、虎徹が欲しがっているのはこれか」

 

「え?あぁ、そうそう。親父買ってくれ」

 

「高すぎる。自分でバイトして買いなさい」

 

 

親父の声にテレビを見ればナーヴギアのニュースが流れていた。

この人、最近よくテレビや雑誌で見かけるな。

か、かやば、だっけ?

そしてさりげなく強請ってみたが流されてしまった。

 

 

「これが欲しいのか?」

 

「そう。ナーヴギアのソフト、ソードアートオンラインってゲームが欲しいんだ」

 

「ふーん、ジャンルは?」

 

「RPGで実際に身体を動かせるみたいなんだよ」

 

「んー、まぁ俺は最近忙しくなって来たし無理かな」

 

 

残念、ライザーさんも誘ってゲームの中で野球をしようと思っていたんだが。

しかし忙しくなってきたってライザーさん、仕事してんの?

大学生じゃなかったっけ?あれ、でも何処の大学か知らないな。

 

 

「レーティングゲームも近々日程が組まれたからな」

 

「って事はゲーセンか。プロゲーマになるのか?」

 

「・・・まぁ、大きく外れてはいないな」

 

 

そんな、ゲームしているだけで金がもらえるなんて最高じゃないか。

格闘ゲームのプロは聞いた事あるがレーシングゲームのプロっているんだな。

初めて聞いたが日程が組まれているって事は結構いるんだろう。

 

 

「3人とも、これなんてどうかしら?」

 

「紅白にでも出場する気かお袋」

 

「お袋さん、そんな衣装持ってたんですか」

 

「止めておきなさい」

 

 

服よりも背中の羽やら飾りが大半を占める衣装を持ち出したお袋に俺達は全力で止めた。

 

 


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