はいすくーるDxD 平穏(笑)な日常   作:鶏唐

40 / 52
ifシリーズ~駒王小学校の日常

「ドラえも~ん」

「もう今度はどうしたのさ、のび太君」

「ゼノンちゃんと、なのはちゃんが喧嘩してるんだ!止めてよ」

「全力全壊で行くの!」

「オーッホッホッホ!全ての美少女は私に跪くのですわ!」

「君はバカだなぁ。まだマシだよ、未来はもっと酷い事になっているよ」

「アレよりも!?」


何て恐ろしい小学校だ。
と言うかメンツ的にハイスクールDxDである必要性が全く無いですね。


第39話

「あー、痛ってーな」

 

 

1時限目の授業をサボり俺は自分の頬を撫でつつ3年生の教室から出てきた。

自分の教室に着いて草薙にルガール社長のことを話したまではよかった。

だが何故か余計な事するなと殴られてしまった。わけがわからん。

咄嗟に俺も拳を出したがあっさりと避けられてしまったし。

 

 

「とにかく、こっちは完成したし・・・次はどうするかな」

 

先ほどまでいた3年生の教室を振り返る。

丁度、体育だったのか誰もいなかったので、ついやってしまった。

机を積み立ててピラミッドにしてみた。

途中でバランスが崩れそうだったが瞬間接着剤で何とかなったぜ。

きっと戻ってきた3年生は供物を捧げるに違いない。

 

 

「あら?」

 

「お?」

 

 

階段に差し掛かったところでモリガン先生に出会った。

教材を持っているところから美術室に向かうみたいだな。

 

 

「あら、授業をサボるなんてイケない子ね」

 

「まぁまぁ、今更じゃないっすか」

 

「それもそうね。それで今度はどんな悪戯をするのかしら?」

 

「んー、ラグナさんの机を段ボール箱にするって言うのはどうっすか」

 

「駄目よ、それは私が先週やったもの」

 

 

何てこった。先を越されてしまっていたとは。

さすがモリガン先生だ。

堅物の多い先生達とは違って話の分かる先生だけはある。

 

 

「校長の髭を剃りたいんだけどどうしたらいいと思う?」

 

「そうね、命が100個あれば出来るんじゃないかしら」

 

「ぐぬぬ、仕方ない。今()諦めるとするか」

 

 

さすが俺の天敵だ。隙が無いぜ。

悔しいが今のところは勝ちを譲ってやる。

だが何時か絶対に一泡吹かせてやるからな。

っと、その前に次の悪戯の話だったな。

 

 

「じゃあ職員室のカーテンを変えよう」

 

「いいわね、どういったデザインにするの?」

 

「この前は照明をピンクにしたから・・・キャラクター物にしよう!後、ヨハン先生の席は目立つように金ぴかだな」

 

「ふふふ、私の席は廊下側だから構わないわよ。それじゃあ楽しみにしておくわね」

 

「ういーっす」

 

 

モリガン先生と別れて階段を降りていく。

今度の土曜日にでもカーテンを用意しておかなくては。

確か窓際の席はヨハン先生、タバサ先生、橘先生、壬無月先生、サイキカル先生か。

あー、橘先生は直ぐに血を吐くから赤いカーテンの方がいいか?

 

 

ガラッ

 

 

「では失礼するよ」

 

 

丁度階段を降りて角を曲がったところで誰かが部屋から出てきた。

あれは校長室?先生かと思ったけど見覚えないな。

真っ赤な髪をしたイケメンだ。

 

 

「おや?君はここの生徒だね」

 

「え?あ、はい。そうですけど・・・どちら様?」

 

「あぁ、私は理事をしているサーゼクスと言うものだ」

 

「はぁ、サージェクスさんですか」

 

「・・・サーゼクスだよ」

 

「サーゼクシュ」

 

「・・・サーゼクス」

 

「サッちゃんだな、おっけー」

 

「サッちゃん!?」

 

 

えーい!ややこしい名前をしやがって。

それにしても理事って言ったかこの人。

駒王学園のパンフレットなんてほとんど見てなかったし入学式もほとんど寝てたしな。

 

 

「そうだ、サッちゃん。今、暇?」

 

「一気にフランクになったね。まぁ丁度打ち合わせも終わった事だし暇だね」

 

「じゃあちょっと手伝ってくれ。人手がいるんだ」

 

「構わないが何をするんだい?」

 

 

まぁいいから、とお茶を濁して俺は先を行く。

サッちゃんも大人しく俺の後に着いて来ていた。

その後世間話を兼ねて話を振ったら驚くべき事が分かった。

ゴールデンウィークに行ったリーアランド、そのオーナーがサッちゃんだったのだ。

 

 

「すげぇなサッちゃん。何処の大富豪だよ」

 

「いや、大したことではないさ。あのテーマパークも元々はリーアたんのために作ったのだからね」

 

「リーアたん?」

 

「そう!年の離れた妹なんだがね。これがもう可愛くて仕方ないのさ!」

 

 

と、先ほどまでの落ち着いたそぶりからは考えられないほどに興奮した様子で話し出す。

なるほど、シスコンか。

生憎とガーネットと言う前例がいるので対処は慣れている。

同時に先ほどの話に納得がいった。

リーアって言う妹がいるからリーアランドって名づけたのか・・・ん?待てよ。

 

 

「もしかして駒王駅近くにあるリーアホテルも?」

 

「あぁ、それも私だよ」

 

「じゃ、じゃあ市街地にあるリーアデパートも・・・」

 

「それも私だね」

 

「もうすぐテストがあったり俺が悪戯しても直ぐにバレるのも・・・」

 

「それも私だ」

 

 

何てこった。俺が思った以上に凄い人だった。恐るべしサッちゃん。

だが、同時にノリがいいようで安心した。

一先ずサッちゃんの凄さが分かったところで目的の場所に着いた。

 

 

「こんなところに来て何の用があるんだい?」

 

 

サッちゃんが言うのも尤もな話だ。

屋上に繋がる扉の前で俺は立ち止まった。

このまま屋上で昼寝をしてもいいんだが今は違う。

 

 

「まぁ見てな」

 

 

サッちゃんに言って俺は屋上の扉、ではなく壁に向かって手を当てる。

ガコンと言う音と共に壁が外れた。

そしてその中に体を潜り込ませるとサッちゃんに入ってくるように言った。

中は空洞になっており人が一人通れる程の広さしかない。

サッちゃんも入ったのを確認して壁をはめ込み真っ暗になる。えっとスイッチは・・・ココだったかな。

 

 

カチッ

 

 

「お、点いた点いた」

 

「いやはや驚いた。こんな事になっているとは」

 

「いいかサッちゃん。俺達がいるのは今ここだ」

 

「・・・何故君が駒王学園の見取り図を持っているかは聞かない方がいいみたいだね」

 

「察しがよくて助かるぜ」

 

 

見取り図には既に俺と半蔵、琢磨、先輩による手が加えられている箇所が書かれている。

校内で罠を仕掛けたり追いかけられた際の逃げ道を作っているわけだ。

結城とグレモリーと姫島は邪魔をすると簡単に予想されるので教えていない。

 

 

「今日は地下室の拡張をするかね。サッちゃん、力仕事はできるか?」

 

「あぁ問題ないよ。何だか年甲斐も無くわくわくしてきたさ」

 

「ふっ、さすがだサッちゃん。俺の目に狂いは無かった」

 

 

本来なら他の悪戯を手伝わせようと思っていたが変更した。

妹一人のためにあそこまでやるサッちゃんならこのノリに着いて来れると思っていたぜ。

よし、それじゃあ中学同様にとことん改造してやろうじゃないか。

 

 

「コテツ君。リーアたん用の監視カメラを仕掛けてもいいかな?」

 

「え?まぁ、いいんじゃないか?」

 

 

サッちゃんの妹ってここの生徒だったのか。

どんな奴か見てみたいもんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「つまりだ。トッピングとサイドメニュー、この二つを組み合わせる事で天玉うどんは更に美味くなるわけだ」

 

 

そう言って黒板に『天玉うどんを美味く食するためには!』と言うお題目で語った内容を僕は聞き流した。

何故、統制機構に追われている犯罪者ラグナ・ザ・ブラッドエッジが地理の教師をしているのか。

何故、地理の教師が天玉うどんについて熱く語っているのか。

色々と考えさせられる事もあるが、虎徹風に言えば面白ければどうでもいい、と言う結論に至った。

地理の教師をしている理由については虎徹の母親が原因だろう。

あの人には僕も逆らいがたい何かを感じる。

 

 

「下々の料理と思ってはいましたが奥が深いのですわね」

 

「何だか私も天玉うどん食べたくなってきちゃった。今日のお昼は天玉うどんにしようかな」

 

 

隣に座る我がクラス委員長であり神月財閥のご令嬢、神月かりん。

その後ろに座る何故か洗濯棒の扱いが得意なリリィ・カーン。

二人が授業と言っていいものか分からない内容に真剣な表情で頷くのを横目で見て視線を下に移す。

スマートフォンのコミュニケーションアプリ『LINK』で虎徹が連絡を取ってきたのだ。

 

 

『やべぇ、サッちゃんが有能すぎてやべぇよ』

 

 

さて、どう回答したものだろうか。

この連絡をしてきたのはグレモリーさん達を含めたいつものメンツだ。

ちらっと窓際の後ろの席を見てみるがグレモリーさんと結城さんの姿は確認できるが虎徹はいない。

授業が始まる前にサボって出て行ったのだから当然だ。

グレモリーさんと結城さんも虎徹のLINKに気づいた様子は無い。

まぁ授業中だから真面目な彼女達の事だ、すぐに見るような真似はしないのだろう。

続いて廊下側の前の席へと視線を移す。

半蔵と姫島さんが律儀に教師の話を聞いている。

こちらも同様に虎徹のLINKに気づいた様子は無い。

 

 

「ふぅ、やれやれ」

 

「どうしたタクマ。今ので分からない箇所があったか?」

 

「いえ、薬味はどうなのかと思いまして」

 

「あぁ、心配すんな。それについてはこれから説明してやる」

 

 

運悪く僕のため息を聞きとがめられてしまったが矛先を逸らす事で逃げた。

さて、LINKの内容に戻るとしよう。

まず、サッちゃんとは誰か?大方虎徹が勝手に名づけたのだろう事は分かる。

頭が"サ"で始まる人物、しかもこのクラスではない。

簡単に思いつくのは球技大会で出会ったサイキカル教諭だ。

しかしそこまで話していた記憶は無いな・・・

 

 

『サッちゃんて誰かしら?』

 

『また面倒ごとでも起こしたんですか?』

 

 

どうやら僕が質問する前にバティン先輩が質問したようだ。

搭城さんも段々と虎徹に対する遠慮がなくなってきたようだ。

そこで再度周囲を確認すると半蔵、結城さん、グレモリーさん、姫島さんの4人も気づいたようで視線を下に向けていた。

 

 

『何か理事の人らしくてさ、校舎前のセメントの大半があっという間に消えちまった』

 

 

ガタッ!

 

 

「どうした?」

 

「あ、いえ何でもありません」

 

 

突然立ち上がったグレモリーさんに犯罪者教師が怪訝な顔を向ける。

しかし直ぐに席に座ったためか興味を無くしたようで薬味とうどんについてのご高説が再開された。

僕がグレモリーさんの不審な挙動に眉を潜めて考えようとするとメッセージが流れた。

 

 

『理事でござるか。殿!ぜひとも食堂に"でざーと"を増やすようお願いしてくだされ』

 

『あ、それいいね。八代君、私からもお願い』

 

 

半蔵と結城さんか。二人は何をお願いしているんだ・・・

それにしても理事、か。

虎徹とは違い僕はパンフレットは熟読済みだし入学式でも挨拶をしていた男の顔と名前を思い出した。

サーゼクス、だったか?

短い時間で大量のセメントの大半を消すとは一体どんな手品を使ったのだろうか。

轟音も特に聞こえはしなかった事から爆発物ではないと推測できるが・・・

 

 

『デザートの件、オッケーだってよ』

 

 

ガタガタッ!

 

 

「・・・今度は何だ?」

 

「あ、あはは。何でも無いです」

 

「うむ。つい興奮してしまったでござる」

 

「そうか。お前達も天玉うどんに惹かれちまったか。まぁ無理もねぇな」

 

 

教壇に立ち頷く、うどん愛好家と化した犯罪者。どんなB級コメディだ。

半蔵と結城さんが座ったのを見て再び話し始めるのを聞き流す。

しかし、それ以降は皆だんまりを決め込んでいるな。

グレモリーさん、姫島さん、バティン先輩、塔城さん、木場、あとはライザーさんもいたな。

誰もが何故か沈黙したままだ。他にも興味は尽きないだろうに。

そう思いながら僕はスマホを操作して内容を打ち込んだ。

 

 

『それでサーゼクス理事と一緒のようだが今は何処にいるんだ?』

 

 

打ち込んだメッセージが表示されると同時にスタンプが張られる。

苦笑とも取れる表情のスタンプを張ったのはバティン先輩、木場の二人。

ジト目の表情をした猫のスタンプを張ったのは搭城さんだ。

木場と塔城さんは相手が理事だからだろう。

だがバティン先輩はどういった意味だろうか?

虎徹が今更、理事如きに態度を変えない事など分かりきっているだろうに。

 

 

『飼育小屋。サッちゃんVS動物達って感じ』

 

 

虎徹のメッセージと共に写真が添付されている。

それをタッチして拡大してみる。

そこに映っていたのは飼育小屋で飼われている動物達相手に物騒なエネルギーを放つ赤髪の男がいた。

さすがは駒王学園の理事を務めるだけあって戦闘は可能なようだ。

 

 

ガタガタッ・・・ガタッ

 

 

「ったく、いい加減にしろよテメェ等。後、上の階でも誰か立ち上がらなかったか?」

 

「え?あ、えーとほら、アレよ。ね、朱乃!」

 

「そ、そうですわ。もうすぐチャイムが鳴りますわよラグナ先生」

 

「あ?もうこんな時間か。話してたら腹減ってきたな。今日は終わるか、日直」

 

 

グレモリーさんと姫島さんの言葉にようやく授業が終わる。

日直の号令と同時に二人は直ぐに教室を飛び出して行った。

十中八九、飼育小屋に行ったのだとは分かるが問題は誰を心配していったのかだな。

虎徹か、理事か動物達か。

僕としては動物達の中にはデス様と同じくらい興味深い動物もいるため、そちらを心配してしまう。

理事については他人だし虎徹に関しては面白がっている相手に心配など無駄でしかない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あーらよっと!」

 

 

ガキンッ

 

 

放課後、八代君がツルハシをグラウンドのセメント部分に向けて振り下ろすのを私はベンチに座って見ていた。

何故かと言うと部活に行こうとしたところでイングリッド会長に八代君の見張りを頼まれちゃったから。

でも午前中に理事の人が手伝ってくれたみたいで残りも今日中に終わりそう。

 

 

「でさ、私のことはいいから先に行きたまえって見事な台詞を言うもんだから思わず従っちまったぜ」

 

「あはは、ノリがいい人だったんだね」

 

 

作業を進めながら笑顔で飼育小屋であった事を話す八代君に私も笑顔で返す。

飼育小屋の動物達も変わった姿の子もいるけど危険なんて無いのに。

 

 

「でも何でリアスと朱乃は飛び出して行ったんだろ?」

 

「さぁ?俺が教室に戻って暫くしたら帰って来たけど疲れた表情してたな」

 

「うーん、二人に聞いても教えてくれないし。気になるなぁ」

 

「・・・お前、何かうちのお袋に似てきてねぇか」

 

「え?そうかな」

 

「首を突っ込もうとするところが、な」

 

 

そういって八代君はセメントを破壊していく。

リアスと朱乃の反応にそこまで興味は無いみたい。

本当に興味ないことにはとことん反応を示さないよね八代君は。

でも確かに小母様なら遠慮なく踏み込んで聞いてくるんだろうな。

そのおかげで当時は知り合いでもない私とお母さんの問題も解決されちゃったし十分に想像できた。

 

 

「よっし、これで最後だな」

 

 

ふと意識を戻すとグラウンドにはセメントの欠片だけが残されていた。

傍にあった荷車にセメントの破片を載せていく八代君。

やがて全ての欠片を荷車に載せると大きく伸びをしてこちらに近づいてくる。

私は鞄から水筒を出してコップにお茶を注いで八代君に渡した。

 

 

「はい、お疲れ様」

 

「おー、サンキュ」

 

 

私の隣に座って中身を一気に飲み干す八代君を見て苦笑を浮かべる。

そもそも八代君がグラウンドにセメントに流し込むなんて事をしなければこんな事はならなかったのに。

でもそれが八代君なんだと理解してしまっているだけに諭そうとしても無駄だと分かってしまう。

本当にしょうがないなぁ。

 

 

「ん?何だよその笑みは。何かイラッとするんだが」

 

「ううん、なんでもないよ。お代わりいる?」

 

「おう、じゃあもらおうか」

 

 

八代君からコップを受け取って注ぎなおして渡す。

今度は一気に飲まずにチビチビと飲んでいる。

 

 

「そういえばデス様はどうした?今日は見てないんだけど」

 

「フェルちゃんなら今日は家にいるよ。お兄ちゃんと稽古してるの」

 

「・・・あのデス様と稽古ってスゲェな」

 

 

お兄ちゃんもフェルちゃんも楽しそうに家の道場で稽古をしていた。

フェルちゃんも思いっきり体を動かしたいって言っていたし稽古なら危なくないよね。

 

 

「そうだ結城。今度の日曜って空いてるか?」

 

「え?うん、空いているけど・・・どうしたの?」

 

「ちょっと買い物に付き合ってくれ」

 

「買い物?いいよ。何を買うの?」

 

「カーテンだ。後、ヨハン先生が目立つ色だって何だと思う?」

 

「え?ヨハン先生に?うーん」

 

 

カーテンと聞いて八代君のお部屋の模様替えをするのかと思ったけど違うみたい。

ヨハン先生にプレゼントするのかも。

うんうん、普段ヨハン先生には苦労をかけているんだからお詫びの意味で贈り物をしようとしたんだね。

でもヨハン先生か。髪が赤だったから・・・あれ、青だっけ?茶色だっけ?

ぼんやりとした姿は頭に浮かぶけど詳細が全く頭に入ってこない。

 

 

「八代君。ヨハン先生の髪の色って何色だか覚えてる?」

 

「は?おいおい、薄情な生徒だな結城。そんなの・・・アレ?」

 

 

思わずジト目で八代君を見てしまう。

確かに私も担任の先生の容姿を覚えてないのは悪いとは思うけど八代君だって一緒でしょ。

そう思って八代君を見ていると、うーんと唸ってポンと手を鳴らして私の方を見た。

 

 

「そうだ、紫って事にしよう」

 

「事にしよう、って思いつきでしょソレ」

 

「どうでもいいじゃないか。ヨハン先生の髪の色なんて」

 

「髪の色の反対色のカーテンなら目立つかなって思ったんだけどね」

 

「なるほどな。けど覚えてないのはしょうがない。いっそスケルトンにしたらどうだろう」

 

「ただでさえ存在感の無いヨハン先生がまずます薄くなっちゃうよ?」

 

「・・・結城、さらっと酷い事言うなよ」

 

 

うん?何で八代君は呆れた顔をしているんだろう?

ともかく日曜日はヨハン先生にプレゼントするカーテンを買いに行くんだね。

となると場所はリーアデパートかな。あそこなら品揃えも多いだろうし。

 

 

「殿ー!結城嬢ー!」

 

「お、半蔵。部活は終わったのか」

 

「あ、忘れてた」

 

 

服部君がこちらに向かってくるのを見て部活の事を思い出す。

後ろからは高藤君とティナ先輩も向かってきた。

 

 

「うむ。今日はティセ嬢の作った"たると"を頂いたでござる」

 

「え、そうだったの?いいなぁ」

 

「おいずるいぞ、俺が汗水垂らして頑張っていたのに」

 

「そういうと思って切り分けておいた。帰って食べるといい」

 

「ありがと高藤君」

 

 

高藤君からケーキの入った箱を受け取る。

ティセちゃんもお菓子作りは上手だから楽しみ。

 

 

「ふふっ、トラちゃんとアスナちゃんったら。こんなところで逢引なんてお姉さん妬いちゃうわ」

 

「合挽き?」

 

 

ハンバーグでも作るのかな?

こちらを見て笑うティナ先輩に首をかしげる。

八代君は分かっているのかため息を吐いた。

 

 

「いやいや、見張りですって」

 

「そうだ、明日のお弁当はハンバーグにしよう」

 

『・・・・・・・』

 

「あれ?どうしたの皆?」

 

「バティン先輩。結城さんにその反応を求めるのは時期尚早にも程があります」

 

「えぇ、そうね。アスナちゃん、ごめんなさいね」

 

「いや、まぁ弁当作り、頑張れよ結城」

 

「拙者も明日は食堂で"はんばーぐ"食べるでござる!」

 

 

何で謝罪と励ましを受けているんだろう?

高藤君、ティナ先輩、八代君が生暖かい目で見てくるのが気になる。

服部君と私だけ分かってないのかな?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

セメント破壊と言う作業がサッちゃんのおかげで思ったよりも早く終わった。

部活の皆と合流して一緒に帰っている時、先輩が俺に思い出したように言った。

 

 

「そういえばトラちゃん」

 

「ん?」

 

「授業参観が終わるとテスト週間だけど調子はどうなの?」

 

「愚問だな先輩。既にテスト用紙の奪還計画は進めているぜ」

 

「さすがねトラちゃん。早々に勉強する手段を捨てるなんて」

 

 

残り2週間でテスト対策なんて無理に決まっている。

それなら本番に使われるテスト用紙を奪って丸暗記に当てた方が賢い選択って奴だ。

問題は誰を仲間に引き入れるかだが・・・

草薙を引き入れようと思ったが朝に社長の事を話したら殴られたしな。

 

 

「さすがじゃないでしょ!こうなったら受験の時みたいに勉強あるのみ。高藤君も手伝って」

 

「まぁ仕方ないな」

 

「殿、頑張ってくだされ」

 

「服部君も対象者だよ」

 

「何と!?」

 

「げっ、もう勉強なんて嫌だ!俺は自由に生きるんだ」

 

 

おのれ、結城め。琢磨もあっさりと承諾するんじゃねー!

半蔵が道連れなのは当然だ。成績は俺と同等レベルだからな。

 

 

「虎徹、いいのか?このままだと夏休みが補修で潰れるぞ」

 

「だからテスト用紙をだな」

 

「無理だな」

 

「何?」

 

 

琢磨の断定する言葉に俺は眉を寄せる。

琢磨が無理と言う事は相当厳しいって事か。

確かに先生達は一筋縄じゃいかないような先生達だが諦めるには早いんじゃないだろうか。

 

 

「テスト用紙はね、金庫で保管しているのよトラちゃん」

 

「金庫ぐらい楽勝じゃないか」

 

「番号は校長しか知らないのよ」

 

「解析してみたが球技大会で使われたバレーボールと同じ材質らしい」

 

「って言うかすでに確認していたのか」

 

「虎徹の事だから予想はついていたからな」

 

 

先輩と琢磨の説明を聞いて納得が言った。

校長から聞き出すのは無理。破壊するのも無理となると開ける手段が無い。

オノレ、やはり校長が俺にとって一番の障害か。

このままだと補修で夏休みが・・・

 

 

「くっ、やはり勉強するしかないのか」

 

「だからそう言ってるでしょ。リアスや朱乃にも手伝ってもらえば分かりやすいと思うよ?」

 

「そうだな。複数の意見を取り入れていけば虎徹と半蔵にも分かりやすく教える事ができるかもしれない」

 

「そうね。私も去年のテスト範囲でよければ教えてあげるわよ?」

 

「ぬぅ・・・どうするでござるか殿?」

 

 

くっ、もう諦めるしか無いのか?

受験したときの勉強すら忘れている。

普段の授業さえサボるか寝てるか悪戯のプランを考えている。

そんな俺が勉強したところでテストを乗り切れるだろうか?いや無理だ!

せめてテストの代わりになるようなものがあれば・・・

 

 

「はっ!こ、これだ!」

 

「殿!もしや名案が!?」

 

「あぁ、安心しろ半蔵。そうだ、閃いたぜ」

 

「さすが殿でござる!」

 

「うわぁ、嫌な予感しかしないよ」

 

「ふふふ、面白そうな予感がするわね。いいわ、やってみなさいトラちゃん」

 

「えっ、いいんですかティナ先輩?」

 

「真面目に勉強するよりは楽しそうだもの」

 

「あぁ、それについては僕も同感だな」

 

「高藤君まで・・・」

 

 

よし、帰ったら計画の詳細を考えるとするか。

ふぅ、とりあえずの危機は乗り越えれそうだ。

安心したら小腹が空いたな。ケーキはあるが今食べるわけには行かないし。

 

 

「小腹が空いたから屋台で食べようぜ」

 

「賛成でござる!」

 

「私も賛成」

 

「いいわね、最近食べてなかったし」

 

「僕は遠慮しておこう」

 

 

相変わらず琢磨は少食だな。

一先ず皆で屋台のたい焼き屋へ向かう。

確かこの辺りに・・・あった。

商店街の外れ、そこに去年から出来た屋台がある。

毎日、売るものが変わるが今日はたい焼きを売っているみたいだ。

 

 

「男のたい焼き屋へよく来たな。どれにする」

 

 

その後、粒あんを食べて帰宅した。

男のたい焼き、さすがに外れが無いな。美味かった。

男の焼き傍、男のたこ焼き、男のお好み焼き、男のクレープと熱い食べ物ばかりだけど・・・

とにかく計画を考えて明日、校長室に乗り込むとしよう。

 

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。