はいすくーるDxD 平穏(笑)な日常   作:鶏唐

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第37話

先輩が去ってからつまらない授業は聞き流して昼休み。

いつものように学食で飯を食い終わり教室に戻ってきた。

 

 

「次は何の授業だっけ?」

 

「えっと・・・!つ、次は英語だよ」

 

「げっ、マジか。サボろっかな」

 

「え?確か次はか・・・もごっ!?」

 

 

結城の言葉に屋上でサボろうかと算段を立てる。

グレモリーが何故か結城に両手を使って口を塞がれていた。

・・・何してんだこいつら?

 

 

「と、殿!よろしければ拙者もお供いたしますぞ!」

 

「あぁ、そうだな。半蔵も連れて行ったらどうだ虎徹」

 

「うん、それがいいよ!」

 

 

半蔵と琢磨、結城の言葉に俺は疑問がわいた。

確かに半蔵は英語が苦手だが授業を自らサボるほど不真面目じゃない。

それに普段は小言を言う結城まで勧めてくるとは怪しい。

・・・さてはこいつら何か隠してるな。

それも面白そうな事と見た!

 

 

「いや、たまには英語の授業を受けてみたくなってきた」

 

「コテツさんから出てくる言葉とは思えませんわね」

 

「やかましい。えっと英語の教科書はっと」

 

 

俺は教室の後ろにあるロッカーから英語の教科書を探す。

あれ?無いな、ここに教科書の類は全部仕舞ってあるはずなんだが。

・・・んん?そういえば1時間目の授業って英語じゃなかったか?

自分の席に戻り机の中を見ると英語の教科書があった。

 

 

「一日に同じ科目の授業ってあったっけ?」

 

「っぷはっ!何するのよアスナ」

 

「あ、ご、ごめんねリアス」

 

 

俺が疑問に思っていると結城の拘束から逃れたグレモリーが声を荒げる。

結城も咄嗟の事だったのだろう、直ぐに謝った。

しかし結城のやつ、何考えてんだ?

そこへデス様が俺の机の上に飛び乗ってきた。

 

 

「次は調理実習デスネ、何を作るのか楽しみデス!」

 

「あーあ・・・」

 

「ふっ、短い平穏だったな」

 

「拙者、胃薬を貰ってくるでござる」

 

 

デス様の期待の篭った言葉と共に結城、琢磨、半蔵が言葉を漏らす。

調理実習?そういえばこれまで家庭科の授業に出た記憶が無いな。

と、言うかあったのか。いや、それよりもだ・・・

 

 

「調理実習か、それは俺も腕が鳴るってもんだぜ」

 

「コテツは料理の自信があるデスカ?」

 

「おうよ!おふくろから、あんたに教える事はもう無い、って言われるくらいだぜ」

 

「それは楽しみデス!」

 

 

そういえばこの学園で料理の腕を振るうのは初めてだな。

よし、気合を入れて行くか。

 

 

ガラッ!

 

 

「虎徹!」

 

「ん?」

 

 

気合を入れていたところへ勢い良く扉が開き名前を叫ばれる。

そこにいたのはガーネットの奴だった。

何でそんなに怒ってんだ、あいつは。

 

 

「よぅ、ガーネット。どうした」

 

「どうしたじゃないわよ!これ、アンタの知り合いでしょ何とかしなさいよ!」

 

「はぁ?」

 

 

扉の後ろ側を指差して怒鳴るガーネット。

はて、ガーネットのクラスで知り合いなんてウィンドぐらいしかいねーぞ。

そう思っているとガーネットの奴が扉の後ろに隠れていた奴を引きずりだして教室の中に入れた。

桃のついた青い帽子に青い髪、まな板の如くぺったんな胸・・・あれ、こいつは。

 

 

「あははは!いいわよ、もっと私を楽しませなさい!今度は誰が私の相手になってくれるのかしら!」

 

 

随分とご機嫌な様子だが、こいつは昨日の転入生か。

なるほど、ガーネットのクラスに転入してきたのか。

俺が納得した様子で頷いていると結城達があからさまに顔を顰めた。

あれ、知り合いだったのか?

 

 

「あら、アンタ達もいたのね・・・それに、八代虎徹だったわね」

 

「何で俺の名前知ってんだ」

 

「そこのニンゲン達から聞いたのよ。まぁ、アンタには礼を言ってあげる。感謝しなさい」

 

「どういうこった?」

 

「こんな面白い学園を教えてくれるなんてね、退屈しなくて済みそうだわ」

 

 

って事は職員室に突っ込んできたのか。

よく無事だったな。

っつーか制服とかボロボロなんだが元気だな。

 

 

「アンタのせいで今朝から付きまとわれて大変なのよ!」

 

「まぁ、落ち着いてアルティ。何で付きまとわれてるの?」

 

「こっちが聞きたいわよ明日奈。何度ぶっ飛ばしても懲りずに付いて来るのよ」

 

 

ガーネットがぶっ飛ばしてもって・・・こいつかなり強くなかったっけ?

中学時代に開いた格闘大会で妹とタッグを組んで猛威を奮っていたのを思い出す。

 

 

「そういうわけだから何とかしなさいよ虎徹」

 

「しゃーねーな・・・おい、転入生」

 

「何よ。私は比那名居 天子(ひなない てんし)って名前があるのよ、覚えておきなさいニンゲン」

 

「ひななないか。もう一歩前に出てくれ」

 

「?これでいいわけ?後、"な"が一個多いわよ」

 

 

疑問に思いながらも一歩足を踏み出す。

俺はズボンのポケットに入れているボタンを押した。

 

 

ガコンッ

 

 

「へ?ちょ、ちょ、何よこれーーーーっ!?」

 

「昨日作ったばかりの落とし穴だ。これでいいかガーネット」

 

「いいけど・・・これ、どこに繋がってるの?」

 

 

落とし穴を覗き込むガーネット。

未だに転入生の叫び声が聞こえる。

 

 

「何処って・・・今日はゴンザレス先生のところだな」

 

「へ?」

 

「大竜巻落とし!」

 

 

島津先生だったら手加減してくれるだろうが、残念だったな。

さて、家庭科室に急がねーとな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「大将、ごちそうさん」

 

「毎度あり」

 

 

昼休憩の合間、俺はいつものように寿司屋"瀬流万手寿"で天玉うどんを食べ学校に戻ろうとしていた。

裏路地を通りもう少しで大通りに出るといったところで足を止める。

目の前に誰かが倒れているのが見える。

猫耳のついたフード付きコートを目深に被り顔が見えないがこいつは・・・

 

 

「おい、タオ。オメェ、何でこんなとこにいやがる」

 

「ん、んぅ・・・おぉ、いい人!助けて欲しいニャス」

 

「あ?」

 

「タオは・・・タオは・・・おなかが空いたニャス!」

 

「・・・はぁ、腹空かしてるだけかよ」

 

 

ったく、こんな裏路地で倒れているから怪我でもしてんのかと思ったぜ。

カカ族のタオ、階層都市の知り合いと日本で会うとは思ってもみなかった。

 

 

「もう一歩も動けないニャス!いい人、何か奢ってくれニャス!」

 

「ちっ、しょうがねぇ。コンビニで何か奢ってやるよ」

 

「おぉ、さすがいい人!早く行くニャスよ!」

 

 

先ほどまで倒れていたくせに飛び起きて我先に大通りへと向かうタオ。

ったく、現金な奴・・・

俺は頭をガシガシとかきながらタオを追って大通りへと出る。

何でコイツが日本にいるか気にはなったが飯の後でいいか。

 

 

「あら、ラグナ君。こんにちは」

 

「あ、こんにちは」

 

「ふん・・・」

 

「・・・おぉ、アンタ等か。買い物か?」

 

 

話しかけられて振り向くと見覚えのある二人と見覚えの無い男がいた。

虎徹の母親と確か、ディズィーとか言ったか?後一人、黒い露出の激しい衣装に身を包んだ男がいた。

前半二人はともかく、この男・・・肩にカラスが止まっているが何者だ?明らかに人間の気配じゃねぇ。

それぞれ、両手には買い物袋を持っている。

 

 

「そうなのよ。特売日だったから張り切っちゃったわ。ディズィーちゃんとテスタメント君がいてくれて助かったわ」

 

「感謝するのだなニンゲン、ディズィーがいなければどうして私がこのような・・・」

 

「そんな、小母様にはいつもお料理を教えていただいて私のほうが助かってます」

 

「いいのよ、それくらい。おかげで一人限定の卵と牛乳が安く買えたんだもの・・・あら?」

 

「いい人~!何してるニャス、タオはおなかぺこぺこで死にそうニャスよ~」

 

 

そこまで言って虎徹の母親は俺を見る。

正確には俺の背中に張り付いてきたタオだが。

 

 

「ラグナ君のお友達?」

 

「あ?あぁ・・・駒王町に来る前の知り合いだ」

 

「タオは~タオって言うニャス」

 

「あらあら、可愛い子ね」

 

 

可愛いって・・・フードで顔は見えねーはずだが。

まぁ細かい事に突っ込むのは野暮か。

 

 

「いい人、何か変なのがいるニャス」

 

「はぁ?・・・何だソレ」

 

 

タオが背中に張り付いたまま指差された方を見る。

ディズィーの背後に緑色のフードを被った髑髏と水色の半透明な女の姿があった。

術式、いや事象兵器(アークエネミー)か?

そいつらは俺達、いや正確には俺を見て睨みつけている。

ディズィーも俺達の視線に気づいたのだろう。首を傾げていたが背後の存在に気づいたようだ。

 

 

「え?・・・あ、だ、駄目!今は出てこないで」

 

「二人が警戒しているだと?おいニンゲン、キサマは何者だ!」

 

「うざってぇ、そりゃこっちの台詞だ」

 

 

警戒?まさか蒼の魔道書に警戒していやがるのか?

ディズィーの背中の二人から力が集まるのが分かる。

コイツは、ソルと同じ?法力って奴か!

 

 

「あらあら、どうなってるのかしらこれ」

 

「あ、あの小母様?きゃ、さ、触らないでください」

 

「・・・おい、アンタ。今の状況理解してんのか」

 

 

虎徹の母親が一触即発の空気を一切合財無視してディズィーの背中にある二人に触れている。

テスタメントもギロリと睨みつけるようにしているが全く気づいていねぇ。

 

 

「ん?あら、そうだったわね。ディズィーちゃん」

 

「は、はい・・・」

 

 

虎徹の母親の真剣な表情をした呼びかけにビクリと震えるディズィー。

今まで隠してきたって事は何らかの事情があるんだろうが・・・

俺としても虎徹の家には厄介になってきた身だ。

こいつらが危険な目に合わせるなら俺が相手になろうと腰の剣に手をかける。

 

 

「その子達は苦手な食べ物って無いかしら?」

 

「・・・はい?」

 

 

だからか全く見当はずれな事を聞き出した虎徹の母親に俺達の空気が一瞬止まった。

・・・な、何言ってんだコイツは。

 

 

「ちょっと変わってる子達だけど私達と同じ食べ物は食べる事が出来るのかしら?」

 

「え、あ、はい。それは大丈夫ですけど・・・小母様?」

 

「よしっ!それじゃあ存分に腕を奮うわよ。食材も買い足さないと・・・」

 

「待て待て!何でそうなるんだ!」

 

「あら、どうしたのラグナ君?」

 

「どうしたじゃねぇ!あんたはこいつらが危険な事に気づいてねぇのかよ!」

 

「危険って・・・この子達が何かしたの?」

 

「それは・・・」

 

 

確かに法力を集めてはいるようだが特別何かをしたわけじゃねぇ。

だがこの力、放たれたらタダじゃ済まねぇぞ。

かと言って一般人に言うわけにもいかない。

 

 

「その小母様、この子達は私の身を案じてくれているだけで・・・」

 

「うーん、よく分からないのだけど、確かなのは食い扶持が増えたって事よね」

 

「料理作るニャスか?タオもおなか空いたニャス」

 

「あらあら。じゃあ、おばさん一杯作るからタオちゃんもいらっしゃいな」

 

「本当ニャスか!?いい人、この人のごはんは美味しいニャスか?」

 

「え、あぁ、そりゃ美味いが」

 

「楽しみニャス!ごはんの人、早く行くニャスよ!」

 

「ふふっ、じゃあ行きましょう。ほらディズィーちゃんも、ね?」

 

 

そう言って虎徹の母親はディズィーとタオを連れて歩いていく。

残されたのは俺とテスタメントとか言うカラスヤローだけ。

 

 

「・・・ふん、ニンゲン。命拾いしたな。だが今度ディズィーに手を出すようならばコロス」

 

「そーかよ、それはこっちの台詞だカラスヤロー。正義面なんて柄じゃねぇが虎徹の母親に手を出してみろ。相手になるぜ」

 

 

一睨みしてから3人の後を追っていくカラスヤロー。

法力、か。確かソルはまだこの町にいたはずだな。

探して聞いてみるか。あいつも八代家には世話になった事があるから協力はしてくれんだろ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・リアス、ごめんね。何も出来ない私は無力だよ」

 

「えっと、アスナ?よく分からないのだけど・・・」

 

「グレモリー嬢、これを。特製の胃薬でござる。気休めにはなるでござろう」

 

「ハンゾー?どうしてこれが必要なのかしら」

 

「グレモリーさん。君と言う友人がいた事を僕は忘れない。だから安らかに眠ってくれ」

 

「タクマ?何で私が死ぬ事前提で話しているのかしら」

 

 

授業開始直前にそんな3人とのやり取りがあった。

確かコテツは料理が苦手と聞いた事はあるけれど、この反応は苦手ってレベルじゃなさそうね。

でも所詮は調理実習。決められた食材で決められた料理を作るだけ。

作る料理もクッキーだしね。そんなに酷い事にはならないわよ。

 

 

「よし、それじゃ頑張ろうぜ」

 

「うん、お菓子作りは任せてよコテッちゃん」

 

「私も得意ですので任せてください」

 

 

他の二人は料理が得意なのかしら。

桃色の髪のハート型にぴょこんと出ている髪の毛をしたはぁと。

同じく桃色の髪で両サイドに青いリボンをつけているユキナ。

髪の色以外共通点は無いけど・・・と、言うよりもこの班分けは一体何かしら?

二人に加えて私とコテツ。名前順でもないし・・・まぁ、あの先生のやる事だから気にしても無駄そうね。

どうせその場のノリで決めたに違いないわ。

 

 

「はぁい、それじゃ皆準備は出来たかしら?」

 

 

家庭科室の前でエプロンをつけて生徒達に聞いているのがルナ姫木先生。

モリガン先生といい、露出の激しい先生が多い気がするわね。

 

 

「作り方は黒板に書いてあるから分からないところがあったら見て頂戴ね」

 

「じゃあ始めましょうか」

 

「うん、まずはバターを溶かさないと」

 

「湯煎しながら溶かしましょう。私がやりますね」

 

「んじゃ準備しておきますかね」

 

 

ユキナにヘラを渡してバターを溶かしてもらう。

その間に私達はグラニュー糖、卵、砂糖、薄力粉と基本的なものを揃える。

 

 

「さて、クッキーと言っても色々あるのだけれど、どういったものにしようかしら?」

 

「そりゃお前、面白いクッキーに決まってるだろ」

 

「愛があればどんなクッキーでも美味しいよ」

 

 

うん、まぁ二人からまともな答えが返って来ることは期待していないわ。

そうね、アスナ達の懸念もあるし簡単にチョコチップクッキーにしておきましょう。

追加でチョコチップを用意したところでユキナがバターを溶かし終えたみたい。

 

 

「じゃあ今度は私がやるね」

 

 

はぁとが溶かしたバターの入ったボウルを受け取り泡だて器でクリーム状にしていく。

そしてグラニュー糖を分けては混ぜを数度繰り返す。

うん、ここまでは順調よね。

じゃあ次は卵黄を用意しましょう。

 

 

コンコンッカパッ

 

 

「しっかし、これを片手でやるのは難しいよな。出来たら格好いいんだが」

 

「まぁ、プロの人なら出来るんじゃないかしら?」

 

 

私は卵を割って卵の黄身と白身を分けながら横で見ているコテツに答える。

クリーム状となったバターに卵黄を混ぜ合わせる。

よく混ぜ合わせたら薄力粉を加える。

そこで、はぁとがボウルをコテツに渡した。

 

 

「はい、コテッちゃん。愛情を持って混ぜるんだよ」

 

「ふふん。任せな、料理の鉄人と呼ばれたい俺の実力を見せてやるぜ」

 

「呼ばれたいんだ」

 

 

ヘラで掻き混ぜる手つきは危なっかしい事も無く普通に混ぜている。

まぁ、ただ混ぜるだけだしアスナ達の心配も無用よね。

 

 

「ユキナも家では料理するの?」

 

「はい。事情があってお屋敷でメイドしてますから」

 

「あら、そうなの。大変なのね」

 

「そんな事無いですよ」

 

 

その後、何事もなくチョコチップも混ぜ終えたボウルを受け取り皆で生地を乗せた。

オーブンに入れて暫く待てばキツネ色のチョコチップクッキーが完成していた。

うん、まぁ簡単だからいいのだけど・・・何か拍子抜けね。

 

 

「お、いい感じに出来上がったな」

 

「はい。やっぱりお菓子作りは楽しいですね」

 

「うんうん、やっぱりそうだよね」

 

 

そこへデス様がこちらに来て私達の作ったクッキーを見る。

 

 

「出来たデスカ?もう食べていいデス?」

 

「今から食べるところです。じゃあ皆食べてみましょう」

 

「ふふん、美味くて腰を抜かすなよデス様・・・腰どこだ?」

 

 

それぞれクッキーを手に取る。

何か急に幾つかの視線を感じるわね。

これは・・・アスナ、タクマ、ハンゾーの3人ね。

そんなに心配しなくても、たかがクッキーじゃない。

そう思いながら私達はクッキーを一つ食べた。

 

 

「もぐもぐ。うん、中々いけるんじゃないか?」

 

「はい、成功みたい・・・で、す?」

 

「本当、美味し・・・い、ね?」

 

「言うだけの事はあるデス・・ね」

 

 

美味しそうに食べるコテツ。

ただ、ユキナとはぁと、デス様、そして私は違和感を感じていた。

確かに味はいい。だけど身体から沸々と湧き上がってくる力は何かしら?

ドーピング的な要素は一切無かったのだけど?

自身の魔力が際限なく高まる・・・ってこれまさか魔力の暴走!?

 

 

「あ、あ・・・ちょ、ちょっと待って!」

 

「これは・・・まずいです。力が・・・!」

 

「無性に暴れたいデス!」

 

「くっ、皆同じみたいね。とにかくここじゃ危険だわ。外に出るわよ!」

 

「ん?おいおい何処に行くつもりだ、お前ら?」

 

「うぅ、何だか魔力が暴走してます」

 

「こっちもパルちゃんが暴れそうだよ」

 

「あーもう!どうしてこうなるのよ!コテツ!後で話しは聞かせてもらうからね!」

 

「何故俺!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

放課後、セメントの破壊と言う今日のノルマも終えて俺は帰宅していた。

しっかし調理実習のあいつらの行動は何だったんだろうか。

授業そっちのけで外に出たかと思うとひたすら飛び道具をぶっ放していた。

デス様に至ってはでかくなってゴロゴロと転がっていた。何人か轢いていたな。

帰って来た時に聞こうかと思ったが疲れた様子で体が動かないようで早退してしまった。

結城は何故か俺を責めるような目で見るし。

うん、よく分からん・・・っと家に着いたな。

 

 

ガチャッ

 

 

「ただいまー」

 

 

自分の部屋に戻り着替えてリビングに入る。

お袋は台所で夕飯の支度をしているみたいでライザーさんは何やら手紙を見ていたようだ。

 

 

「お、コテツ。帰ったのか」

 

「おー、何ソレ?」

 

「あぁ。実家からの手紙だ。早く嫁さん見つけろだとよ」

 

「ふーん」

 

 

ライザーさんの向かいのソファに腰を下ろしてテレビをつける。

嫁って、ライザーさんの場合は先輩に普通に話せるようになるのが先決だろ。

今のままじゃ告白なんてまだ先だろうしな。結婚となると何時になることやら・・・

 

 

「そう言えば親父は?」

 

「親父さんならまだ帰ってないぞ」

 

 

大体同じくらいの時間に帰って来るのに珍しいな。

残業でもしているんだろうか。

 

 

「そうだ、調理実習で作ったクッキーがあるんだけど。ライザーさんいる?」

 

「え!?あ、あぁいや。ほ、ほらもうすぐ夕飯だろ?遠慮しておく」

 

「そうか?まぁいいか」

 

 

何故か慌てた様子のライザーさん。

後で適当に摘むか。

 

 

「あら、お帰り。もうすぐでご飯できるわよ」

 

「うーい・・・あ、そうだお袋。これ学校からのプリントな」

 

「・・・授業参観ね。お洋服用意しないといけないわね」

 

 

ピクリ

 

 

「お袋さん、俺にも見せてもらっていいですか?」

 

「いいわよ、はい」

 

「・・・・・・・・・」

 

 

真剣な表情でお袋から手渡されたプリントを見るライザーさん。

あー・・・もしかして来る気だろうか?

駒王学園の授業参観は何と一日中あるらしい。

何でも理事長が子供の普段の姿を見るためと言う理由らしいが・・・

噂じゃ自分の子供だか妹だかガ入学した時のためとか出回っているしな。

ん?そういえば理事長って俺見たことないな。誰だろう?

 

 

「よし、親父さんは仕事だろうし俺が行ってやるよコテツ!」

 

「ははーん、なるほどね。先輩の授業風景を見るつもりだろうライザーさん」

 

「ななな、何を言うかなお前。俺はただコテツがちゃんと授業を受けているかをだな」

 

「この子がちゃんと授業を受けているわけないでしょライザー君」

 

 

さすがはお袋、俺の事をよく分かっている。

そしてライザーさん、バレバレだから。

授業参観は来週から。その頃にはセメントの撤去も終わっているだろうし・・・

後はいかにお袋にバレないように悪戯をするかだな。

お袋の脅威度は凄まじいからな、家の中で悪戯をしようとする前にバレてしまう。

 

 

「これ一日中ってなってるけどお昼は持ち込んでもいいのかしら」

 

「食堂や中庭があるからいいんじゃねぇの?」

 

「そう、それならいいわ。どうせアンタのことだから先生達に迷惑かけているんでしょ」

 

「ハハハ、何を馬鹿な」

 

「馬鹿なのはアンタよ。全く」

 

 

そういえば、当然他の親も来るんだよな。

琢磨は一人暮らしだが、ティセでも連れてくるんだろうか。いや、でも普段から部室にいるしな。

半蔵は天然な両親が来るだろう。会うのは久々だ。

結城は・・・来れてお袋さんくらいか。親父さんは社長で忙しそうだし。

グレモリーと姫島はどうだろう?

グレモリーの両親は知らないが姫島の方は母親のほうは知っている。

おろちんとグスタフさんは来ないだろうか。

 

 

「虎徹、この日は何をするんだ?」

 

「ん?水曜日か・・・知らね」

 

 

教科書なんて全部机とロッカーの中だ。

何の授業があるかは周囲に聞けば分かるからな。

後は大体サボったりしているし。

 

 

「あ、でも体育はあったな」

 

「体育ね。球技大会を見る限り大変な事になりそうだな」

 

 

何処か遠い目をして話すライザーさん。

そうか?結構面白いけどな。

体を動かすのは好きだし。

 

 

ガチャッ

 

 

「ただいま・・・はぁ」

 

 

と、そこへ親父が帰って来たようだ。

お袋が玄関へと向かう。

何か疲れてるみたいだな、そんなに仕事が辛かったんだろうか?

 

 

「あら?あらあら、お久しぶりです」

 

 

ん?親父の他に誰か来ているのか?

ライザーさんも気になるのか席を立った。

俺とライザーさんでリビングから玄関へと顔を出すとそこにいたのは・・・

 

 

「いや奥さんもお変わりなく。今日は八代君から夕飯のご招待を受けましてね」

 

「社長が勝手についてきたんでしょう・・・そういうわけなんで一人分追加してもらえるか?」

 

「えぇ構いませんよ。さぁ狭い家ですけどどうぞ」

 

 

地元のCMでも顔を出しており駒王町では知らない者は殆どいない。

親父の勤めているルガール運送のルガール社長がいた。

 

 

 




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