はいすくーるDxD 平穏(笑)な日常   作:鶏唐

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どうもお久しぶりです。

前回の更新から半年が経ってしまうとはすみませんでした。
遅れた理由としてはまぁ仕事です。
出張→転勤命令→引継ぎ、引越し→転勤先でも海外出張
ようやく身の回りが落ち着いてきました。

これからは以前のように毎週更新を目標に頑張ります。



第36話

 

 

ガキンッガキンッ

 

 

「ほれ、キリキリ動かんか」

 

「ちくしょーっ!」

 

 

放課後、俺は部活にも出ずにツルハシ片手にセメントを破壊していた。

校長に滅茶苦茶痛いお説教を喰らった後、セメントを片付けるまで部活禁止を言い渡されたためだ。

ちくちょう。生徒のお茶目な悪戯じゃないか。

 

 

「全く、悪戯をするなとは言わんがせめて可愛げのあるものにせんか」

 

「可愛げのある?」

 

 

見張りとしているイングリッド会長に言われて考える。

ただ見張っているだけでなく手には大量の書類を抱えて確認しながらだから恐れ入る。

別に生徒会の方を優先してくれても俺は一向に構わないんだがな。

それにしても可愛げのある悪戯か・・・

 

 

「校長の髭を剃り落とすとかどうだ?」

 

「・・・別に止めはせぬが、お主死にたいのか?」

 

「あれ?」

 

 

何故か真面目な顔でこちらを見て聞き返されてしまった。

おかしいな、俺としては可愛げのある悪戯のつもりだったんだけど。

じゃあ落とし穴を仕掛けてそこにサイダーを大量に仕込んでおくか。

きっとべとべとになって着替えざるを得ないだろう。

あの校長いつも緑色の軍服を着ているからな。他にどういった服を持っているのか気になっていたところだ。

 

 

「どりゃあっ!」

 

 

ガキンッ

 

 

「うむ、今日はこの辺でよいじゃろう。このペースなら来週には終わるじゃろう」

 

「うへー、マジかよ。バイトも探さなくちゃ行けないってのに」

 

「バイトじゃと?まぁ別に禁止はしてはおらんが勉学に影響が出ないようにするのじゃな」

 

「はっはっは、これ以上影響は出ないから大丈夫だ」

 

「そこは誇るところでは無かろう・・・しかし意外じゃな」

 

 

意外?どういう事だ?

 

 

「悪戯する癖にこういった後始末をきちんとするとは思わなかったぞ」

 

「あー、まぁ、な」

 

 

本来ならこんな面倒な事は琢磨にでも頼んで片付けてもらうはず、だったんだがなぁ。

グラウンドに敷き詰められたセメント、その下のグラウンドには俺が仕掛けた罠が大量に埋まっている。

下手に弄れば罠ごと壊してしまうからな。こうしてこまめにやっていくしかない。

 

 

「まぁ反省するのは良い事じゃ。砕いたセメントは一箇所に固めて置くように。では先に帰るぞ」

 

「あぁ、じゃあな会長」

 

 

会長を見送って砕いたセメントを言われた通り一箇所に固める。

しかし・・・簡単に片付ける方法はないものかね。

火薬を使って爆破するか?でもそれだと罠がなぁ・・・

 

 

スタッ

 

 

「何だか変な事になってるわね。てっきり倒壊しているものと思ったのだけど」

 

「ん?」

 

 

後ろから聞こえてきた声に振り返る。

そこにいたのは桃のついた帽子を被った青髪の少女だった。

いや、少女・・・?天野並に洗濯が捗りそうな胸をしているし少年の可能性もある。

 

 

「あんた、今失礼な事考えてなかった?」

 

「考えてない。洗濯が捗りそうな胸をしていると考えていただけだ」

 

「それが失礼な事って言ってんのよ!」

 

 

何やらパールみたいなものを振り回して抗議してきた。

何でそんなもの持ってるんだ。

七不思議の開かずの扉でもこじ開けに行くんだろうか?

 

 

「で、生徒じゃ無いみたいだけど誰かに用事か?」

 

 

制服を着ていないところから誰かの妹だろうな。

青髪って言うと・・・廿楽か?

 

 

「ふん、天人の私が誰かのためにこうして出向くわけないでしょ」

 

 

無い胸を踏ん反り返って言われてもな。

テンニンって何だよ・・・転任?

あぁ、転入生か。

 

 

「職員室なら校舎に入って右に進めばあるぞ」

 

「しょくいんしつ?何で私が行かなくちゃいけないのよ」

 

「いや、多分先生がお前の事待ってると思うぞ」

 

 

放課後まで来ない転校生なんて聞いた事ない。

いや、今日来る事になっているかは知らないが。

 

 

「そう。誰だかは知らないけれど私を持て成そうとは良い心がけね」

 

「この時間だと誰がいたっけな?まぁ2、3人はいるから大丈夫だろう」

 

 

ここから職員室の窓越しに何人か先生がいるのが見える。

あれは教頭とルシア先生とサイキカル先生か。

 

 

「少ないわね。私を持て成すならもっと大勢で持て成しなさいよ」

 

 

転校生なら先生一人でも十分だろう。

目の前のこいつが何処のクラスになるのかは分からないが。

お、閃いた。

 

 

「いいか。この学園に新しく来たら、やらなくちゃいけないルールがあるんだ」

 

「ルール?何よそれ」

 

「職員室に着いたら扉を思いっきり開けて名前を名乗って決闘を申し込むってルールだ」

 

「決闘?へぇ、面白そうじゃない。所詮はニンゲン、天人との格の違いってものを見せてやるわ」

 

 

これはまた随分と自信家だな。

もしかして本当に強いのか?見た感じは気の強い少女って感じなんだが・・・

・・・まぁいいか。

 

 

「おー、頑張れよー」

 

 

ずんずんと校舎に向かっていく転入生を見送る。

さて、じゃあ俺も帰るとしますかね。

そうだ、ゲーセンで新作が出てたな、寄ってみるか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あら、あれは?」

 

 

部活が終わり家に帰る途中でコテツさんが歩いているのを見かけました。

駒王学園のグラウンドをセメントで固めた罰として片づけを命じられていたはずですが・・・

それに見たことの無い女の子と一緒ですわね。

 

 

「そうか。お前もまだか。先は遠いな」

 

「はい。でも私は諦めないわ!先輩だってそうでしょ!」

 

「当たり前だ!」

 

 

な、何やら白熱しているようですわね。

思わず声をかけるのを躊躇ってしまいましたわ。

それにしてもあの女の子・・・赤くて長い髪、いえ長すぎですわ。

地面に着くか着かないかぐらいの長さですもの。

 

 

「あの、コテツさん?」

 

「ん?おぉ、姫島じゃないか」

 

「先輩の知り合い?」

 

「あぁ。俺のクラスメイトで友人だ」

 

「初めまして、恵曇 愁子(えとも しゅうこ)って言います」

 

「あら、ご丁寧に。姫島朱乃ですわ。よろしくお願いしますわね」

 

「は、はい」

 

 

コテツさんの知り合いにしては礼儀正しくてよい子ではありませんの。

と、思っていたら私に勢いよく背を向けてコテツさんと何やら話している。

コテツさんは彼女が急に振り返ったため髪の毛が顔面にヒットして悶えていますが。

 

 

「先輩、何か絵に描いたような大和撫子って感じじゃないですか」

 

「ぐおぉ、テメェ髪を凶器に使うとは考えたな・・・目に入っちまったじゃねぇか」

 

「さすが元お嬢様学園である駒王学園だね!」

 

「バカヤロウ、あれはお前を騙そうと面の厚い猫を被っているんだよ。後、髪切らせろ」

 

 

・・・聞こえてますわよ。

悪魔は耳は良い事が今回役に立ちましたわね。

私はスカートのポケットから糸を取り出す。

そのままコテツさんに向けてクイッと手のひらを返すようにすれば・・・

 

 

ガシッ、キュッ

 

 

このように、あっという間にコテツさんの両手両足を縛る事ができますわ。

これもグスタフさんの教えの賜物ですわね。

 

 

「どわっ!?な、何だコリャ!?」

 

「うふふふ、コ・テ・ツ・さ・ん?」

 

「どうした姫島、目が笑ってねーぞ」

 

「誰が面の厚い猫を被っているのか教えて欲しいですわね」

 

「はっはっは。そりゃ姫島の事に決まってるじゃ・・・」

 

「えいっ」

 

「どわっ!?」

 

 

糸をこちらに引く。

身動きの取れないコテツさんは簡単にこちらへと倒れこんできます。

・・・あら、力加減を間違えましたわね。

 

 

ぽふっ

 

 

「もがっ!」

 

「コテツさん、こんな公衆の面前でなんて・・・大胆ですのね」

 

 

私の胸に倒れこむコテツさんを抱える。

もがいていたコテツさんが顔を上げて恨めしそうな目で私を見てくる。

ふふっ、その目つき堪りませんわ。

 

 

「姫島、俺の両手がふさがってよかったな。空いていたら揉みしだいてやるところだったぞ」

 

「あらあら、それは残念ですわね」

 

 

コテツさんはこういったことが苦手と思っていたのですが、違うみたいですわね。

色仕掛けに弱いのではないとしたら何でしょうか?

でも顔は赤くしていらっしゃいますし、全く効かないというわけでもなさそうです。

 

 

「す、凄い。あっという間に先輩を無力化するなんて・・・」

 

「ふふふ、それほどでもありませんわ」

 

「だから騙されるな恵曇。こいつは・・・俺達の敵だぞ!」

 

「っ!?」

 

 

ザッと距離を取り構える恵曇さん。

俺達の敵、と仰いましたか。

今度は一体何を吹き込んだんですのコテツさんは。

 

 

「ま、まさか先輩・・・この人は」

 

「あぁ、そうだ。こいつは修行をしなくても飛び道具が使える」

 

「っ!!」

 

「・・・あぁ、そういう事ですのね」

 

 

コテツさんが日頃から仰っている飛び道具。

魔力や気など超常的な力で成し遂げているはずが、何故かポピュラーな技となっている。

しかしコテツさんは神具を持っているとは言え、それ以外は一般人。

当然そんな技が使えるはずもありません。そしてそれは恵曇さんも同様なのでしょう。

 

 

「くっ、ありがとう先輩。危うく騙されるところだったわ」

 

「任せておけ。俺達の絆はこんな程度じゃ壊れないさ。いつか共に飛び道具を撃てるようになろうと誓っただろ」

 

「先輩!」

 

 

私も修行は積んでいますわよ。

それはそれとして、感動的なところ悪いのですが・・・

 

 

「コテツさん?私の胸に埋もれていては、とても格好がつかないですわ」

 

「だったらさっさと解放しろよ!」

 

「嫌ですわ」

 

「即答!?」

 

「そういえばコテツさんは頭を撫でると喜んでいましたわね」

 

「はっ?ちょ、バカやめろ!」

 

 

そう、その表情が見たかったのですわ。

うふふ、今日は存分に堪能させてもらいますわね。

 

 

「ぎゃーっ!やめろーーっ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はっ!殿の助けを呼ぶ声がするでござる!」

 

「そんな事より早く逃げるわよっ!」

 

「服部君、呆けてる場合じゃないよ!」

 

「ぜぇぜぇ、こ、こんな事なら移動系の補助具を開発しておくべきだった」

 

「もう疲れたデスカ、軟弱デスネ」

 

 

気のせい、でござろうか?

いや、これは間違いないでござる!

とは言え、さすがにこの状況では困難と言わざるをえないでござるな。

何故なら先の会話で分かるように拙者達は現在逃走中でござる。校門が遠いでござるよ。

 

 

「待ちなさい!逃げるんじゃないわよっ!」

 

 

後方から飛び交う光の弾幕。

拙者は琢磨、結城嬢、グレモリー嬢、デス様を先導しつつ、当たりそうな弾は手裏剣で相殺していく。

 

 

「ぬぅ、しかし何故、拙者等は追われているのでござろうか。

 

 

殿とバティン嬢もおらぬ故、早々に部活を切り上げた。

途中でグレモリー嬢とも合流し、姫島嬢は買い物のため先に帰ったと聞いた時でござった。

校舎からやけにボロボロな姿の娘と出会ったのは。

それから幾つか会話をしていたら突然プルプルと体を震わせて襲い掛かってきたのでござる。

 

 

「大体コテツのせいだと思うデス」

 

「うん、八代君の事聞いて目の色が変わったもん」

 

「いてもいなくても迷惑をかけるわね、コテツは・・・」

 

「えーい!ちょこまかと逃げる、なぁっ!」

 

 

ドゴンッ

 

 

「何と!?」

 

 

追って来ている娘が剣を地面に突き立てると拙者等の目の前の地面が隆起する。

地面を蹴り跳躍、娘の方へと振り返り懐から煙球を投げ、同じ軌道で分銅付き投げ縄を投げる。

 

 

ぼふんっ

 

 

「あいつのせいで・・・あいつのせいで」

 

 

煙球をその手にした剣で切り裂かれ煙が周囲を覆う。

二投目は同じ軌道故、気づかれず娘を拘束したでござる。

が、娘は俯いた表情でその場から動かないでござる。

 

 

「やっと・・・終わり、か?」

 

「どうかしら、あれだけの実力を持っていながら簡単に捕まったのが怪しいけど」

 

 

琢磨もこれ以上は動けそうにないでござるな。

今にも座り込みそうでござる。

拙者達も足を止めて娘に注視する。

ぶつぶつと何かを呟いていた娘は顔を上げて叫ぶ。

 

 

「こんな面白い場所に通う羽目になっちゃったじゃない!」

 

『・・・え?』

 

 

目をキラキラと輝かせ、興奮からか頬を赤らめて叫ぶ娘。

む?怒っていたわけではござらぬのか?

 

 

「面白い弾幕を使う紫色の妖怪や脂肪の塊をぶら下げた錬金術師に見えない弾幕を使う魔法使い、こんな面白い奴等がいたなんてね!」

 

「は、はぁ・・・」

 

「それにあの緑色のヒゲよ!あの踏み付けは一朝一夕では出来ないわ。相当踏みなれているわね」

 

「えっと・・・」

 

「聞けば他にも一杯いるそうじゃない!あぁ、何でもっと早くここに訪れなかったのかしら」

 

「どういうことデス?」

 

「怒っていたわけでは無いのなら何故、拙者達を追いかけてきたのでござるか?」

 

 

興奮冷めやらぬ様子の娘に思わず疑問が声を出る。

それに娘は簡単な事だと言わんばかりに胸を張り声を上げた。

 

 

「そんなの当然でしょ、この私が話しかけてきたのよ。大人しく聞くのが礼儀ってものでしょ」

 

「そんな礼儀、ドブにでも投げ捨ててしまえ。無駄な体力を使わされた・・・」

 

「ふん、この天人である私に話しかけられたのだから光栄に思いなさいよ」

 

「先ほどは突然の奇襲で準備する暇も無かったが今は別だ・・・ホウオウ、ワーロック、テムジン」

 

 

琢磨も相当怒りが溜まっている様子でござる。

普段から体を鍛えていないからこうなるのでござるよ。

ともあれ、琢磨の周囲が光り、3機が現れる。

む?1機は初めて見るでござるな。何よりも巨大でござる。

 

 

「何よ、アンタも面白いもの持ってるじゃない!いいわ、相手になってあげる!」

 

「威勢はいいようだが、あの教師陣からリンチを受けてボロボロのお前にこいつらが倒せるとは思えんがな」

 

「ふん、耐久力には自信があるのよ」

 

 

確かに話に聞けばあの校長や教師陣を相手にまだ動けると言うだけで奇跡でござる。

そこで隣で難しい顔をしているグレモリー殿に気づく。

 

 

「どうしたでござるか?」

 

「いえ、あの子・・・さっき天人って言っていたわよね」

 

「そういえば・・・何でござろうか?」

 

 

てんにん・・・天忍?何処かの忍びでござるか。

あのような忍びがいたとは、どこの里の者でござろう。

 

 

「天界の者が何故この学園に・・・余程の世間知らずでもない限り悪魔の領域を知らないはずは無いのだけど・・・」

 

「アスナ、ボクも参加してきていいデスカ?」

 

「え?うーん、程ほどにしてねフェルちゃん」

 

「やったデス!デッスーン!」

 

 

結城嬢の許可を得てデス様も戦闘へと参加していく。

うむ、拙者も他所の里の術を知るいい機会でござる。

 

 

「では拙者も行くでござるよ」

 

「あれ、服部君も?珍しいね」

 

「あの身のこなしから中忍以上と見たゆえ、勉強するでござる」

 

「ちゅうにん?よく分からないけど怪我をしない程度に頑張ってね」

 

「これは・・・一応お兄様に報告しておいた方がいいのかしら」

 

 

まだ悩んでいるグレモリー嬢を置いて拙者は戦闘の場に向かった。

 

 

「あはははっ!いいわ、その調子よ!どんどん来なさい!」

 

 

な、何だか笑顔で攻撃を受けているでござるよ、この娘。

末恐ろしい忍びでござる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「トラちゃーん!」

 

「よぉ先輩。帰って・・・ってどうしたんだ!?」

 

 

梅雨が明けだして数日、

先輩が休憩中の教室に入ってきた。

今回はやけに遠出だったなと思いながら先輩の姿を見て驚く。

 

 

「ミイラのコスプレか?」

 

「おぉ、本格的でござるな」

 

「うぅ、これ全部怪我なのよ」

 

 

よよよ、と泣き崩れる先輩。

全然痛そうには見えないぞ。

しかしここまで包帯まみれとは一体何があったんだろうか?

 

 

「うん、ちょっとデス様のお兄様のお怒りに触れちゃってね。まぁこの程度で済んだだけでもラッキーよ」

 

「ティ、ティナ。本当によく無事だったわね」

 

「もう駄目かと思いましたわ」

 

 

何故か顔を引きつらせているグレモリーと姫島。

何だ、デス様の兄貴ってそんなに強いのか?

・・・ん?デス様の兄貴?

 

 

「・・・デス様って兄弟がいたのか!?」

 

「初耳でござる!?」

 

「と言う事は一体ぐらい実験に使っても問題ないという事だな」

 

「どうしていつも怖いコトしか言わないデスカ!?」

 

 

怯えながら結城に抱きつくデス様。

うぅむ、デス様の兄貴って言うぐらいだから愉快な奴なんだろうな。

見てみたいぞ。

 

 

「先輩、写真とか無いのか?」

 

「うむ。拙者も見たいでござるよ」

 

「何処で捕獲できますか?」

 

「あ、写真ならあるわよ。タクマちゃん、捕獲は諦めてね」

 

「何で写真があるのよ!?」

 

「うふふ、それがデス様の可愛さ談義で1週間は盛り上がっちゃって仲良くなっちゃったのよ」

 

 

さすがは先輩だ。

例え闘った相手でもすぐに仲良くなるのは本当に得意だよな。

いや、そんな事よりもまずは写真だな。

 

 

「私も見せてください。フェルちゃんのお兄さんか・・・どんな子なんだろう。きっと可愛いんだろうなぁ」

 

「あー・・・アスナちゃんの想像しているような姿じゃないから気をしっかり持ってね。はい、これ」

 

 

先輩がスマホを操作して写真を俺達に見せた。

・・・何かパンツ一丁で腕を組んでいて頭に聖火台を載せている変態がいた。

え?これ?これがデス様の兄貴?

 

 

「・・・・・・・」

 

「アスナ!しっかり気を持って!」

 

「はっ!何か眩暈がしたんだけど何があったの?」

 

「アスナさん、現実を直視し過ぎたのですわね・・・」

 

「つまりデス様も成長すれば将来こうなると」

 

「嫌ーーっ!フェルちゃんはこのままの姿なの!」

 

 

結城が絶賛混乱中だ。

まぁ気持ちは分からないでもない。

幾つ年が離れているか分からないが兄弟って事は将来こうなるって事だもんな。

 

 

「拙者、生命の神秘を知ったでござる」

 

「あぁ。僕も世の中知らないことがあるものだと思い知った」

 

「二人ともバカにしているデスネ?」

 

「ちょっと地球から離れた惑星を破壊したけどいいお兄さんだったわよ」

 

「ははは。相変わらず先輩の話す冗談は面白いな」

 

 

惑星を壊すとかスケールがでかいぜ。

とりあえずは結城を落ち着かせる事が先決だな。

俺は未だ取り乱している結城の肩に手を置く。

 

 

「安心しろ結城」

 

「八代君・・・何を安心しろって言うの?」

 

「確かにデス様と写真の変態は兄弟かもしれない」

 

「お兄ちゃんのことを悪く言うなデス!」

 

「シャラップ!いいか結城、兄弟とは言え・・・血が繋がっていない可能性がある!」

 

「っ!?」

 

 

そう。さすがにこんな球体から変態へとクラスチェンジするとは思えない。

つまりデス様と変態兄貴は血が繋がっていないって事だ。

 

 

「そ、そうだよね!フェルちゃんと血が繋がっていれば、もっと可愛いよね!」

 

「うぅ・・・アスナまで酷いデス」

 

「やはりあのような白い人型よりもデス様の生態の方が魅力的だな」

 

「白い人型って何でござるか?」

 

「いや、気にするな半蔵。ティセが焼いたクッキーをやるから忘れろ」

 

「わーい、でござる!」

 

 

ふぅ、何とか結城は落ち着きを取り戻したようだぜ。

それにしても半蔵、クッキーぐらいではしゃぐなよ。

あ、琢磨。後で俺にもクッキーくれ。

 

 

「コテツさんも十分子供ですわよ」

 

「同感ね」

 

「ふふっ。やっぱり皆を見ていると飽きないわね。あら、トラちゃん。これは?」

 

「ん?あぁ、これか」

 

 

俺は机の上に広げていた雑誌を先輩に見せる。

バイトの求人誌だ。

何せナーヴギアを買うにはお金が必要だからな。

小遣いを前借しても買えないからバイトするしかないだろう。

俺が事情を知らない先輩や琢磨達へと説明すると感想が二つに分かれた。

 

 

「あら、トラちゃんがバイトなんて面白そうじゃない」

 

「ほぅ。何処で働くか決まったら教えてくれ。ぜひとも見学に行こう」

 

「え・・・コテツが?冗談でしょう」

 

「えっと・・・止めておいたほうがよろしいのでは?」

 

「コテツがまともに働けるワケが無いデス」

 

 

これは俺は怒るべきなんだろうか?

結城といい、どうも俺を危険人物と見ている節があるよな。

 

 

「でも面白そうね。そうだ!皆で買って遊びましょう。私も買おうと思っていたのよ」

 

「ぬぅ、そうなると拙者も勤労せねばならぬでござるな」

 

「私はお兄ちゃんのを借りるからいいけど・・・」

 

「小猫達の分も必要だからまとめて買おうかしら」

 

「私は既に持っていますわ」

 

「僕も一応持ってはいるな」

 

 

どうやらナーヴギアを持っていないのは俺以外には先輩、半蔵、グレモリーのようだ。

しかし琢磨が持っているのは不思議でもないが姫島も持っているとは意外だ。

 

 

「オロチ様が毎日遊んでいますわ」

 

「おろちんが?あぁ、好きそうだもんな。ああいうの」

 

「ボクも遊べるデスカ?」

 

「うーん、デス様は難しいわねぇ。タクマちゃん、何とかならないかしら」

 

「・・・そうですね。特注で作る事は可能ですよ。ただ、色々と計測する必要があるので2日、いえ3日はデス様を預かりますが」

 

「やっぱりいいデス!」

 

 

身の危険を感じたのか他のクラスメイト達へと逃げていくデス様。

まぁ計測と言って何をされるか分かったもんじゃないもんな。

 

 

「そうだ。私がいない間に何か面白い事はなかったかしら?トラちゃんと朱乃ちゃん以外はやけに疲れているみたいだけど?」

 

「えーっとそうですね・・・」

 

「色々ありすぎて何処から話したものやら・・・」

 

 

キーンコーンカーンコーン

 

 

「あら、それじゃあ放課後に部室で聞こうかしら。リアスちゃんに朱乃ちゃんもいらっしゃいな」

 

 

そういって教室を出て行く先輩。

あー、俺は今日もセメント撤去しなくちゃいけないんだよな。

バイトも探さなくちゃいけないし、何処かに面白いバイトは転がってないものかね。

 


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