はいすくーるDxD 平穏(笑)な日常   作:鶏唐

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ifシリーズ~対戦前会話っぽい何か~

ジル(MARVEL VS. CAPCOM 2) VS 両津勘吉(Jスターズビクトリーバーサス)

「その生命力、まさかアンブレラの手先!?」

「何だ貴様、わしはこの先のパチンコ屋に用があるのだ。どけっ!」

「あれが警官なんて世も末だわ」

「ロケットランチャー構えてる方も警官みたいだぞ」



第34話

「ここ、ですか?」

 

「あぁ。ここが俺の通う駒王学園だ」

 

「棲みかとしては申し分無いな」

 

「いや、与作が棲みかとするなら、あっちの飼育小屋だからな」

 

 

俺とカイ、与作の二人と一頭は何事も無く学園に辿り着いた。

正確には何か邪魔してくる奴がいたみたいだがカイと与作が蹴散らしていた。

道中が暗くて結局正体は分からずじまいだ。

 

 

「それで何の用事があるのですか?」

 

「うーん、そうだな」

 

 

今日はどんな悪戯をしようか。

職員室にはこの間忍び込んだしな。

校長室か?いや、あそこは俺でもかなりの難易度を誇る場所だ。

卒業までには何とかして忍び込みたいが今は止めておこう。

 

 

「では私は新居訪問と行こう」

 

「飼育小屋ですか。うさぎとか可愛い動物がいるんですか?」

 

「うさぎはいないな」

 

 

飼育小屋で飼っている動物を思い出しながら質問に答える。

白いゴリラや紫色の変な動物ならいるが。

 

 

「よし、プールだな」

 

「まだ少し早いのでは?」

 

「だからいいんじゃないか。掃除に来る奴らを驚かせる仕掛けをしよう」

 

「ふむ、では別行動だな。用事が済んだら来るといい」

 

「おう、じゃあな与作」

 

 

与作と別れて俺達はプールを目指す。

校門からだとグラウンドを突っ切って行った方が早いな。

 

 

カッ!

 

 

「うお眩しっ!」

 

「な、何ですか一体!?」

 

 

突然、校舎のライトが一斉に光り、目が眩む。

腕で防ぎながら辺りを見回すと・・・

 

 

『ふっふっふ。ようやっと餌に飛びつきおったな』

 

「だ、誰だっ!」

 

『日中の悪戯が減っているから深夜に待っておれば案の定じゃ』

 

『会長、考えたのはウチや』

 

 

だから誰だよ。

啖呵を切るのはいいんだが眩しくて誰が喋ってるか分からないっての。

マイクを使っている事は分かるが、それだけだ。

 

 

『ふふふ、驚きのあまり声も出ぬようじゃな』

 

「いや、眩しいのと誰か分からないから声の出しようもないんだが」

 

『む、それもそうじゃな』

 

『照明さん、ウチらの周囲以外消しといて』

 

 

パチンッと音がして幾つかのライトを残して暗くなる。

さて、会長とか言っていたがどんな奴だ?

グラウンドにある朝礼台の上にソイツは立っていた。

銀髪をお団子にして背の小さい女生徒だ。

隣には水色の髪をポニーテールにしている変な髪飾りをつけた女生徒がいた。

 

 

「・・・あれ?見覚えないな」

 

『八代虎徹と言ったか。1年じゃから入学式以来と言うことになるのぅ』

 

 

入学式?あぁ、サボって色々と探索していたからな。

通りで生徒会長って言われて顔が思い浮かばないわけだ。

 

 

『まぁ先日の球技大会でも姿はちらっと確認しておるんじゃがの』

 

 

はて、いたっけな。

あの時は場所を転々としていたからな。

 

 

「まぁ、確認はその辺でいいやろ」

 

「それもそうじゃな」

 

 

マイクを降ろしてこちらへとやってくる。

結局、こいつら何がしたかったんだ?

どうやら俺を待っていたようだが・・・まさか俺のファンか?

 

 

「どうやら虎徹君と同じこの学園の生徒のようですね」

 

「む?そちらは・・・うーむ、どこかで見た気がするのぅ」

 

「会長はおばあちゃんやからな。忘れとるだけやって」

 

「誰がおばあちゃんじゃ!こんなにピチピチしておるわっ!」

 

「うわ、もうその言い方で年がバレるで」

 

 

生徒会長と言い合いをしている奴も生徒会っぽいな。

そうか、何か会長の喋り方に違和感があると思ったが田舎のばあちゃんみたいなんだ。

 

 

「ともかく、わしが駒王学園生徒会長のイングリッドじゃ。こちらは会計のラビリスじゃ」

 

「で、結局何の用だ?」

 

「おっと、忘れるとこじゃった。お主に頼みたい事があってな」

 

「頼みたい事?」

 

「キミには生徒会公認でイベント実行委員をして欲しいんや」

 

 

イベント実行委員、言葉だけ聞くと何とも惹かれる役職だ。

つまりは俺のやりたいようにやっても構わないって事だろ?

 

 

「最近はマンネリ化してきて、つまらんからのぅ。そこで1年にして駒王学園の問題児であるお主に白羽の矢が立ったのじゃ」

 

「別にいいけど、それだったら夜中に待ち伏せする必要無くね?」

 

「だってキミ、放送で呼んでも素直に来るとは思えへんもん」

 

「まさかそこまで読まれているとは・・・」

 

 

確かに放送で呼ばれても生徒会からの呼び出しなんて行こうとは思わない。

中学校では風紀委員と並んで敵対組織の一つだったからな。

どうやら俺のリサーチをかなりしてきたみたいだ。

 

 

「よし、じゃあ俺に全て任せておけ!まずは授業を全て撤廃だ」

 

「それイベントちゃうから無理やで」

 

「そんなっ!それじゃあ何のためのイベント実行委員だっ!」

 

「せやからイベントを考えて欲しいんやけど。あ、風紀に違反するものは駄目やで」

 

 

俺に頼むくせに注文が多いな。

うーん、こうなったら生徒会を騙しつつ楽しめるものを考えないと駄目だな。

 

 

「うむ。期待しておるぞ・・・む?」

 

 

グラッ

 

 

「うおっ、地震か!?」

 

「いえ、これは・・・あちらの方です!」

 

 

どんなイベントにするか考えていると突如地面が揺れた。

カイが指摘する方向を見てみれば旧校舎の前に変なのができていた。

あれは・・・門?

 

 

「何と!何故ここにあの門が!」

 

「会長は何か知っとるん?」

 

「禍々しい気配を感じますね」

 

 

会長が驚くと難しい顔をする。

何だろう、ヤバイ類のものなのか?

はっ、もしや夢の国に繋がっているんじゃないだろうな。

 

 

「あれは地獄門。現世と常世を繋ぐ忌まわしき門じゃ」

 

 

言っている意味がさっぱり分からないんだが・・・

よし、ここは困った時の琢磨頼みだ。

俺はスマホを操作して電話をかけた。

 

 

「・・・あ、もしもし琢磨か?」

 

『こんな時間にどうした虎徹・・・学園にいるようだが』

 

 

何で琢磨も俺の居場所が分かるんだよ。

例のGPSは他にもあるって事か。

 

 

「琢磨、地獄門って知ってるか?」

 

『?・・・時代劇の映画のようだな。だが僕達が生まれる前の話だぞ』

 

「あれ、そうなのか。何か地獄門って門が出たみたいなんだけど」

 

『もしかするとリメイク版のロケかもしれないな』

 

「よし、じゃあエキストラとして出演できないか交渉してみるぜ」

 

『エキストラか。剣の才能が無いお前には無理じゃないか?』

 

 

ぐっ、そうだった。

この間もラグナさんに言われたばっかりだったな。

殺陣って奴を一度でいいからやってみたかったが諦めるか。

 

 

「はぁ、何か面白そうだけど俺は帰るとするか」

 

「うむ、それがいいじゃろう。危険じゃからな」

 

「では、帰りも私が送りましょう」

 

 

やっぱり素人がやると危険なのか。

あ、そういえば与作を忘れていたな。

帰る前に飼育小屋に寄っていこう。

 

 

「おう、じゃあな二人とも」

 

「気をつけてなー」

 

「後の事はワシ等に任せておくがいい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「小猫、朱乃!今よ!」

 

「やあぁっ!」

 

「そこですわっ!」

 

「11011・11100」

 

 

ドサッ

 

 

「部長、こっちも終わりましたよ」

 

「えぇ、皆お疲れ様。それにしても妙ね」

 

 

最近増えてきたはぐれ悪魔。

しかし今日は悪魔ではない存在が私達を襲ってきていた。

白い人型で手足を鋭く変化さたり空を滑空してきたり妙な言葉を話してくる。

強さはそこまででも無いけれど数が多かったわね。

 

 

「姿が消えた時は焦りました」

 

「しかし今のは悪魔では無かったみたいですわ」

 

「この後どうしますか?はぐれ悪魔を探しますか?」

 

「そうね、今日に限って現れていないというのも不自然だし探しましょう」

 

 

魔力を探れば大体は見つかるものなのだけど・・・

案の定、小さな魔力反応が多数見つかった。

ただ、何故か全てが一箇所に集まろうとしている。

これは・・・駒王学園?はぐれ悪魔達にとって魅力的な価値があるとは思えないけど。

 

 

「あら、あれは・・・」

 

「どうしたの朱乃?」

 

「いえ、先ほどロックさんが見えましたので」

 

「駒王学園の方に向かったみたいですね」

 

 

ロック、確か隣のクラスにいる男子生徒の一人だったわね。

隣のクラスにはもう一人男子生徒がいたと思うけど・・・どっちがロックだったかしら?

 

 

「金髪でしたのでロックさんだと思いますわ」

 

「他にも二人ほど一緒にいましたけど、どうしますか部長?」

 

「彼らの向かう方向には、はぐれ悪魔が集まっているわ。心配だから追いかけましょう」

 

「10011・10100・01111・10000・11011」

 

「・・・また現れましたね」

 

 

本当に次から次へとキリが無いわね・・・

数はざっと5体、時間をかければ倒せるだろうけど。

 

 

「やれやれ、様子を見に来てみれば・・・こっちもか」

 

「またこいつらが相手か」

 

「ライザーッ!それにソルまで」

 

 

現れたのはライザーにソル、そして知らない男の人だった。

いいタイミングで現れてくれたものだわ。

初めて見た人がいるけど二人と一緒なら戦力になるわよね。

 

 

「旦那、何時の間にこんな可愛い子達と知り合いになったのか詳しく知りたいねぇ」

 

「メンドクセェ、さっさと片付けるぞ」

 

「あらら、旦那は相変わらずお堅い性格なんだから。それじゃサクッと行きますか!」

 

 

大剣を構えたソルと鎖鎌を持った男が白い人型に立ちはだかる。

その間にライザーがこちらにやってきた。

 

 

「はぐれ悪魔が駒王学園に集まっているみたいだが、そっちに向かうのか?」

 

「えぇ。ニンゲンが数人ほど学園に向かったみたいだから追いかけるわ」

 

「そうか。じゃあこっちは任せて・・・って、また増えたな」

 

 

見れば白い人型が更に10人増えていた。

本当、何処から湧いて出てくるのかしら。

 

 

「おい、ライザー。一匹につき報酬上乗せ忘れるんじゃねぇぞ」

 

「マジでっ!俺様も張り切っちゃうよ」

 

「ちょ、ちょっと待て!それは、はぐれ悪魔の話だっ!えーい話を聞けっ!」

 

 

なるほど、何故ソルがいるのか不思議だったけど雇ったみたいね。

もう一人の方もソルと同じ賞金稼ぎかしら?

 

 

「くそっ、こうなったら・・・出でよ!我が眷属達!」

 

 

ライザーが腕を振るうと炎が飛び散り幾つもの魔法陣を形成していく。

そして魔法陣から多数の悪魔が転移してきた。

あれがライザーの眷属なのね。

 

 

「どうされましたライザー様?」

 

「いきなりで悪いがあいつらが相手だ。全員いけるな?」

 

「もちろん、我らライザー様のお声があればいかなる時でも戦い勝利して見せましょう」

 

「頼むぞお前達。後輩が見ているからな、下手なところは見せられないぞ」

 

「リアス・グレモリー様とその眷属ですか。では張り切って行くとするか」

 

「修行の成果を見せてやるにゃっ!」

 

 

まさか報酬を支払いたくないから呼ばれたとは思わないでしょうね。

それにしても数が多いわね。14人か。

質より量を取ったのかしら?

 

 

カランッ

 

 

ライザー達の戦い方を見るべきか追いかけるべきか考えていたところで集中を邪魔する音が響く。

それはタクマからもらったコテツの居場所を知らせるGPSだった。

コテツは暗示をかけて家で大人しくしているから今は必要な・・・い?

・・・何故コテツの居場所を知らせる光が駒王学園で点灯しているの?

 

 

「部長?僕達も加勢しますか?」

 

「っ!すぐに駒王学園に向かうわよっ!」

 

「とは言っても簡単に行かせてもらえそうには無いみたいですけど」

 

 

気づけば回りこまれてしまっている。

くっ。こっちは急いでいるって言うのに邪魔な奴らね!

 

 

「何かあったんですか?」

 

「コテツが学園にいるのよ。急がないと!」

 

「コテツさんがっ!?」

 

「はぁ!?何でコテツが?」

 

「そんなの私が知りたいわよっ!皆、急ぐわよっ!」

 

「ちっ、カーラマイン!雪蘭!リアス達の道を切り拓け!」

 

 

ライザーの眷属が行く手を阻む白い人型へと攻撃する。

今がチャンス!

 

 

「皆、行くわよっ!」

 

 

何故暗示をかけたはずのコテツが駒王学園にいるのか。

疑問が湧き上がるけれど一つだけ言える事がある。

本当にいつも私の予想を裏切ってくれるわねコテツは!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いいですか虎徹君。私は貴方の年上なのですから少しは敬意を持ってですね・・・」

 

「あーはいはい。ほら、飼育小屋に着いたぜ」

 

「全く君と言う人は・・・・虎徹君」

 

 

深夜、妙な気配を感じて出歩いたところで出会った少年、八代虎徹君。

そんな彼が学校に向かうというので護衛をかって出たのはよかった。

ただ道中に喋る熊や、ギアとも異なる異形の生物がいたのは驚いた。

いや、異形の生物は以前に聖騎士団のデータベースで見覚えがある。

確か・・・アクマだったか。

そんな驚きがあったにも関わらず私は今日一番の驚きを体験していた。

 

 

「どうした?」

 

「何故飼育小屋にビッグフットやエイリアン?がいるのですか」

 

「サスカッチとFinalだろ。珍しいよな、何て言う種類の動物なんだろうな」

 

 

駄目だ、虎徹君には私の常識が通用しない。

未だ驚きから立ち直れていない私を置いて虎徹君は飼育小屋へと入っていく。

危険だから止めるべきだろうか?

いや、しかし仮にも飼育小屋で飼っているのだから危険ではないのでは?

 

 

「おいおい、血塗れだな。与作が暴れたのか?」

 

「ふむ。新参者への礼儀だそうだ。皆、手強い相手ばかりで心が躍ったぞ」

 

 

また喋る熊ですか。

それよりも血塗れ?虎徹君が危ない!

飼育小屋に入り虎徹君の無事を確かめると・・・

 

 

「大丈夫ですか!?」

 

「何が?」

 

 

虎徹君は紫色のエイリアンの触手を蝶々結びして遊んでいました。

おかしい、私が聖騎士団に入ってICPOの長官となったのはこんな光景をみるためでは無いのに。

何故、こんな場所で異様な生物達と戯れているのだろうか。

身体も女性へと姿を変えられてしまったし。

 

 

「どうだ与作。面白い奴らばかりだろ?」

 

「あぁ。今の棲みかに勝るとも劣らぬ強者ばかりで心が躍る」

 

 

まずは優先事項としては私の姿を変えた者を探し元の姿に戻してもらう。

次にICPOに連絡を取り私がいなかった間の雑務処理ですね。

もちろんソルを見つけた場合はそれが最優先事項です。

 

 

「あれ?布団があるな」

 

「・・・確かに布団ですね」

 

 

今後の考えを新たにしたところで虎徹君の言葉に意識を戻す。

布団自体はありふれた物だ。

ただ、それが飼育小屋にあるというだけで途轍も無い違和感を感じる。

じっと見ていると布団がもぞもぞと動く。

誰か寝ているのだろうか?

 

 

「うるさいなぁ、静かに寝かせてよ」

 

「ミヅマん!ミヅマんじゃないか!」

 

 

ドゴォッ!

 

 

「静かにして」

 

「ぬおぉぉっ、あ、頭が揺れる」

 

 

何処から取り出したのか巨大なライターで虎徹君の頭を殴る彼女。

どうやら虎徹君の知り合いのようですが何故こんなところに?

 

 

「もう夜中ですよ。家に帰って寝てはどうですか?」

 

「帰るのが面倒臭い。雨が降った後で地面がぐちゃぐちゃだし」

 

「じゃあしょうがないな」

 

「いやいや。しょうがない、で済ませては駄目ですよ」

 

 

こうなったら彼女も家まで送らないと。

先ほどの地獄門と言い今夜は異常だ。

私も身体が変化しており本調子ではない。

せめて封雷剣が使えれば多少はマシになるのだが・・・

 

 

「とは言ってもな。寝ちまったぞ?」

 

「ZZZ・・・」

 

「困りましたね」

 

「俺にいい考えがある」

 

「・・・普通に起こすのでは駄目ですか?」

 

「普通なんて面白くないだろ」

 

 

そう言って先ほどと同じように何処かへと電話をかける。

あぁ、出来れば平穏無事な起こし方でありますように。

 

 

「あ、タクマ?あのさ、この間大量に仕入れたって言っていたアレまだあるか?」

 

 

話し声は聞こえないながらも虎徹君がわくわくと楽しそうに話している。

先ほどのイングリッドさんの話と言い彼は悪戯の常習犯のようだ。

まぁ学生の悪戯ぐらいなら可愛いものだろう。

 

 

「ニンゲン、そこのバナナとってくれよ」

 

「え?あ、はい。これですか」

 

 

私は白い毛皮で覆われたビッグフットに言われてバナナを取り渡す。

それを大きな手を使い器用に皮をめくって食べる。

美味しそうに食べる姿は心が和む。

ビッグフット族は好戦的な種族ではないとは言え飼育小屋に入れられるような扱いでいいのだろうか?

以前に見たデータベースでは数も少なく友人として扱うように記載されていたのだが・・・

 

 

「モグモグ」

 

「・・・・・・」

 

 

うん、まぁ今はそのような些事に拘る必要は無いですね。

この光景を見ることが出来ただけでも良しとしないと。

 

 

「よし、後は準備するだけだな。カイ、屋上に行くぞ!」

 

「え?何ですか突然。彼女は起こさなくてもいいのですか?」

 

「そのために屋上に行くんだよ。与作はどうする?」

 

「今の棲みかから荷物を取ってくる。二人で問題ないな?」

 

「おう、じゃあ気をつけて帰れよ。カイ、行くぞ」

 

「仕方ありませんね・・・虎徹君!まだ危険は去っていないのですから勝手に行かない!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

絶好の見晴らしじゃないか・・・昼間だったらな。

夜中なのでグラウンドの方は何も見えやしない。

残っているライトの下には誰もいないようだ。

何か金属音がするけど会長と書記の二人だろうか?

うっすらと旧校舎の前に門が見えるって事はロケはまだ続いているようだ。

 

 

「それで屋上に来ましたけど何をするつもりですか?」

 

「まぁ落ち着け。まだ慌てるような時間じゃない」

 

 

まずは準備をしないとな。

俺は三度、琢磨へと電話をかけた。

 

 

「おーい琢磨。転送よろしく」

 

『あぁ。すぐに送ろう』

 

 

返事と共に屋上に7台のミキサー車が現れた。

おぉ、これだけの数があると迫力あるな。

 

 

『転送完了。配置については問題無いか?』

 

「うーん、多分大丈夫だろう。やっちゃってくれ」

 

『了解だ』

 

 

7台のミキサー車の後ろにあるミキサーが動き始める。

やがてミキサー車の背後からドロッとしたものがグラウンドに向けて流れ出した。

 

 

「・・・虎徹君、何をしているんですか」

 

「何ってセメントを流し込んでいるんだけど?」

 

「いえ、そうではなく。それと彼女を起こす事と何の関係が?」

 

「いいかカイ。ミヅマんは雨でぬかるんだ地面を歩くのが嫌で飼育小屋で寝ていたんだ」

 

「まぁ、そうですね」

 

 

つまり、ただ起こせばいいってもんじゃあない。

そこでグラウンドをセメントで固めてしまえばミヅマんも大人しく帰るって事だ。

ミヅマん自身は琢磨に考えがあるって言うから任せるとしよう。

 

 

「どうだ、完璧だろ?」

 

「完璧におかしいですよ!何故、一人を起こして帰すだけでこんな事になるんですか!」

 

「なるほど、つまりはもっと派手に行こうぜ、って事だな?」

 

「違いますっ!規模が大きすぎると言っているんです!」

 

 

やれやれ、注文の多い奴だな。

俺なんてシャドルーとかに比べれば大した規模じゃないだろうに。

 

 

『さすがにグラウンドだけあって範囲が広いな。このままだと斜面になってしまうぞ』

 

「ん?どういうことだ?」

 

 

琢磨の話では使用しているセメントは直ぐに固まる物を使っているそうだ。

そのためセメントを流し込んで暫くすれば固まり先へとセメントが流れ込み固まりの繰り返しを行う。

結果的に校舎側のセメントは高く、グラウンドの端の方は低くなるとの事だった。

 

 

『もう少し時間をかけて固まるものにすればよかったか』

 

「まぁ滑らかな地面になるならいいんじゃないか?」

 

 

それに巨大な滑り台が出来たと思えば、こっちの方が都合がいい。

駒王学園が巨大なアスレチックに、なんてニュースが明日流れたら面白いな。

 

 

ぐらっ

 

 

「おっと」

 

『どうした虎徹』

 

「また地面が揺れたな」

 

「地獄門の方で動きがあったようですね。門が消えていきます」

 

 

どうやらロケは終わったのでセットを片付けているようだ。

その割には音も立てたりしないなんて、さすがプロだな。

 

 

「こ、虎徹君っ!」

 

「今度は何だよ、そんなに慌てて」

 

「あ、足元見てくださいっ!」

 

「足元?・・・うおっ!?」

 

 

足元にはセメントが流れ込んでいる。

慌ててミキサー車を見る。

一番奥のミキサー車の位置が悪いようでグラウンドに流れ込むと同時にこちらにも流れ込んでいた。

 

 

「やべぇっ!もう動けないぞっ!」

 

『ふむ。転送に失敗したか?いや、何か障害物でもあったか。どちらにせよ僕にはどうしようもないな』

 

「こうなったら法術で壊すしかありませんね」

 

「琢磨!ドリルでもハンマーでもいいから転送してくれっ!」

 

 

ぴちゃっ

 

 

「騒いでいるところ失礼します」

 

 

セメントが流し込まれている屋上に誰かがやってきた。

黒い帽子を被ってひらひらした布をまとった女性だ。

服のサイズが合っていないのかぱっつんぱっつんだな。

 

 

「間も無く地震が・・・」

 

「いいから助けてくれ!」

 

「と言うよりも貴女も直ぐに離れてください」

 

「はい?・・・こ、これは!」

 

 

時既に遅しとはこういう事を言うんだな。

いや、ミイラ取りがミイラにだったか?

どちらにせよ俺とカイに続いて被害者が増えただけだった。

何て役に立たない助っ人だ。

 

 

「・・・壊す時間もありませんか。すみません、一言だけ構わないでしょうか?」

 

「別に構いませんが。こうなっては動く事もできませんし」

 

「ありがとうございます。では・・・数秒後に局所的な地震が起こります」

 

「はぁ?」

 

 

突然何を言い出すんだこのお姉さんは。

何でそんな事が分かるんだよ。

天気予報師なのか?

 

 

ぐらっぐらぐらっ!

 

 

「お、おぉっ!ほ、本当にきやがったっ!」

 

「これは大きいですよっ!?」

 

「後は総領娘様のご機嫌次第です。天に祈るとしましょう」

 

『ふむ。こちらでは地震は起きてはいないが、大丈夫なのか?』

 

「大丈夫なわけ、ねぇだろ!」

 

『ふむ。グラウンドのセメントも固まった。次のフェイズに移行するぞ』

 

「と、とにかくやってくれ!」

 

 

さすがに地震でミヅマんも起きているだろうがな。

万が一の事を考えて次の手を打っておこう。

 

 

『では、ソーラ○イを起動する。グラウンドに人がいるが・・・まぁいいだろう』

 

「おい、今何て言った?」

 

『研究には犠牲が付き物だと言っただけだ』

 

 

今更だが琢磨に頼ってよかったんだろうか?

何か今日は裏目に出る事が多い気がするな。

さすがに殺すような真似はしないと信じたい。

 

 

『安心しろ。衛星から太陽光エネルギーを吸収、圧縮した光線を放つだけだ。死にはしない』

 

 

なんだ、じゃあ眩しいだけって事か?

日焼けサロンみたいなもんだろう。

 

 

「二人ともこれから眩しくなるから目を覆っていろ」

 

「え、はい。分かりました」

 

「空気を呼んだ方が良さそうですね。分かりました」

 

『カウント5秒前。5、4、3、2、1・・・発射』

 

 

カッ!

 

 




タイトルに偽り無し(マテ。
虎徹にとっては多少騒がしい日常です。

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