はいすくーるDxD 平穏(笑)な日常   作:鶏唐

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ifシリーズ~対戦前会話っぽい何か~

里中千枝(P4U2) VS ゼノン・ゼシフィード(タイトル未定 DS)

「女を捨てた肉食獣。美少女なのにもったいない事をしますわね」

「何でその事知ってるの!?」

「花村殿、肉食獣とはどういう意味でござろうか」

「あー、何てーの?普段から肉ばっかり食ってるからじゃね?」

「外野は黙ってて!」

>落ち着け



第33話

「虎徹、できたぞ」

 

「は?」

 

 

梅雨がまだまだ続く6月、3時限目が終わり休憩時間に琢磨が開口一番言ってきた。

俺と一緒にいた半蔵も何の事か分からず首を傾げている。

できたって琢磨に何か頼んでいたっけ?

 

 

「できたって何がだ?」

 

「あぁ。ビームサーベルだ」

 

 

そう言って何か短い棒を俺に差し出す。

とりあえず受け取ってみる。

拳二つ分ぐらいの長さの棒だ。

 

 

「底の部分にスイッチがある。押してみるといい」

 

「スイッチ、これか。どれどれ」

 

 

ポチッ

 

 

ブゥンッ

 

 

「おぉっ!すげぇっ!」

 

「光の剣でござったか。どれどれ・・・痛いでござるっ!」

 

 

馬鹿だな半蔵。

ビームサーベルを手で触ろうとするからだ。

・・・でも実際触ったらどうなんだろう?

試しに俺も触ってみよう。

 

 

バチッ

 

 

「いてっ!触る前に痛かったぞ」

 

「プラズマカッターだからな。周囲の大気に自由電子が漂っているから当然だ」

 

「つまり・・・どういう事でござるか?」

 

「もっと分かりやすく頼む」

 

「・・・はぁ。要するに静電気の凄い版が周囲に漂っていると思えばいい」

 

「なるほど、あのビリッとくる感覚は確かに似ているでござるな」

 

 

なんだよ、それならそうと早く言えばいいのに。

軽くビームサーベルを振って感覚を確かめる。

うん、いい感じだ・・・よく分からんが。

とにかく面白い事になって来たことは分かる。

 

 

「よし、半蔵・・・試し斬りに行くぞ!」

 

「承知でござる」

 

「虎徹の腕ならば被害も出ないだろう。それで、誰にするんだ?」

 

 

そうだな、誰にしようか。

よく考えればこのクラスって剣士がいねーな。

この学園で俺の知っている剣士といえばトッキー先輩と・・・大自然も一応剣士になるのか?

他に誰がいたっけな・・・

 

 

ガラガラッ

 

 

「ほら、授業始めるぞ。とっとと席に着けよ」

 

「ちぇすとーっ!」

 

 

ギンッ

 

 

「な、何しがる虎徹!」

 

 

とりあえず斬りかかってみたがあっさりと防御されてしまった。

・・・あれ、プラズマって普通に防げるのか。

入ってきたのは臨時教師となった地理を担当するラグナさんだ。

 

 

「だってラグナさん、剣士じゃん」

 

「はぁ?それと斬りかかってくる事に何の関係が・・・」

 

「斬れば分かるって誰かが言ってた!」

 

「辻斬りかお前は!」

 

 

そう言いつつもデカイ剣を構えるラグナさん。

うん、やっぱりなんだかんだで付き合いがいいよな、ラグナさんって。

 

 

「ったく。ほら、お前の腕じゃ無駄だろうがかかって来いよ」

 

「ふふん、確かに剣の腕はへっぽこだがビームサーベルの力を侮るなよ」

 

 

当然、次の授業が始まる時間なのでクラスメイト達は全員揃っている。

まぁ野次やら応援などが飛び交っているので特に問題は無いな。

 

 

「どりゃーーっ!」

 

 

剣の技術なんてさっぱりなので思いっきり上に振りかぶって振り下ろす。

しかしそれはラグナさんが一歩下がるだけで簡単に避けられてしまった。

 

 

ギャリッ

 

 

「・・・何て危ねぇ武器を持ってんだお前は」

 

 

おぉ、床に結構深い斬り傷ができたぞ。

改めてビームサーベルの威力を思い知った。

 

 

「よし、これならいける!」

 

「はぁ、こんな事なら安請け合いするんじゃなかったぜ」

 

「このビームサーベルで天下を目指すぜ!」

 

「お前って本当にバカだな虎徹」

 

 

ブォンッ!

 

 

「お前じゃ無理だ虎徹」

 

 

今度はラグナさんから斬りかかってきた。

避けれない速さじゃないが、ここはビームサーベルで防いでみよう。

ラグナさんの剣とバツの字になるように合わせる。

 

 

「バーカ」

 

「教師がバカバカ言うなっ」

 

 

キィンッ!

 

 

しかしラグナさんの剣の方向が下から上にすくい上げるように変化した。

ビームサーベルの柄の底の部分を的確に狙われて俺の手からすっぽ抜ける。

しかも柄の底にあるスイッチを狙われたので自然とビームサーベルのプラズマが消えてしまった。

 

 

「ったく、さっさと授業始めるぞ。席に着けバカ」

 

「えー、もう一回やろうぜラグナさん」

 

「断る。その危ねぇ武器も片付けとけよ」

 

 

うーん、やっぱり俺には無理だったか。

まぁちゃんとしたビームサーベルになってたし俺としては満足だ。

しかしこのビームサーベルどうするかな。

どうするか考えながら席に着く。

 

 

「コテツ、本当に下手ね」

 

「うっせぇ、分かってんだよ・・・あ、そうだグレモリーの知り合いに剣を使う奴はいないか?」

 

「剣?祐斗が使うけど。まさか今度は祐斗と闘うなんて言わないでしょうね」

 

「んな事言わねーよ。んじゃコレを木場に渡してやってくれ」

 

 

俺はグレモリーにビームサーベルを渡した。

先ほどの闘いと呼べない闘いを見ていたグレモリーは頷くと受け取った。

 

 

「えぇ、渡しておくわね」

 

 

今度木場に会ったら黒い覆面とマントをプレゼントしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

昼、私は会社に戻って食堂で昼食を取っていた。

今日の営業は社長が着いてこなかったおかげで随分とスムーズに進める事ができた。

 

 

『尚、被害は大多数に渡りアメリカ政府はシャドルーとの徹底抗戦の構えをみせるとの事です』

 

 

ニュースを見てまたか、と思う。

シャドルーと呼ばれる昔から存在するテロ組織。

今度はアメリカでテロ活動を行ったようだ。

 

 

「八代さん。相席いいですかな」

 

「えぇ、構いませんよ」

 

 

そう言って私の向かいに座ってきたのはアルバイトの男性だ。

髪をオールバックにしていて年齢は私よりも上のように見える。

本来は別の仕事をしているのだが、不況の煽りを受けて夜間の仕事のほかに日中もアルバイトをしているそうだ。

 

 

「ニュース、ですか」

 

「えぇ、シャドルーがまたテロ活動をしたようですね」

 

「ふむ。日本でも動きが活発と聞きますからな。八代さんも気をつけてください」

 

「そうですね」

 

 

とは言え、どう気をつければよいのだろう?

シャドルーは各国政府が調べているとは思うが私達一般市民には情報が渡ってきていない。

何度か日本にも現れたとニュースで知っている程度だ。

まぁ、私のような一般市民をわざわざシャドルーのようなテロ組織が狙うことは無いだろう。

 

 

「そういえば・・・夜間の仕事の方はどうなんですか?」

 

「えぇ、部下もよくやってくれています。先日、大仕事が片付いたところでしてな」

 

「それはおめでとうございます」

 

 

こうして会話するのは初めてではないが彼は結構な上級職のようだ。

私も営業の課長をしているが自ら営業に出ていて平社員の頃と変化は余り無い。

まぁ書類の判子を押してもらう立場から押す立場になったぐらいだろうか。

しかしそんな彼でも不況の波には逆らえないとはままならないものだ。

 

 

「八代君!どうして私を置いて行ってしまったのだね!」

 

「社長が来ると話しがまとまらないからです」

 

「はっはっは、八代君は冗談が好きだね」

 

 

昼食の乗ったトレイを机にダンッと置きながら社長が現れた。

何かにつけて運送について語ったり自爆の魅力について語ったりと困った人だ。

社長は席に着くと私の正面にいた彼に視線を向ける。

彼は社長に向けてぺこりと会釈をすると再び私に話しかけてきた。

 

 

「そういえば以前に小耳に挟んだのですが、八代さんは殺意の波動をお持ちだとか」

 

 

ピクリッ

 

 

「ほぅ、そうなのかね八代君」

 

 

彼と社長が何故か私を凝視している。

サツイノハドウか。随分と懐かしい名前が出たものだ。

 

 

「ははは、お恥ずかしい。下手の横好きですがね」

 

 

私の野球観戦以外の数少ない趣味は競馬だ。

そして、とある事情から私はサツイノハドウと言う馬の馬主になったのだ。

さすがに個人ではなく何百人と集まってできた組合の馬主だが。

だがサツイノハドウは10数年も前に引退したのだが、何故知っているのだろう?

 

 

「いや、さすが八代君だ。やはり私の目に狂いは無かったようだ」

 

「は、はぁ・・・」

 

「ちなみにそれは完全に制御下に置いているんですか?」

 

「え?いえ、結構な暴れん坊ですからね」

 

 

サツイノハドウは気性の荒い馬だったのは覚えている。

レース中に騎手を何度落としたか分からない。

まだ虎徹が小さかった頃にレースを見せに行った事がある。

しかしレースよりも馬が暴れているのを見て喜んでいた記憶がある。

 

 

「ふむ。それで今こうしていられるのは殺意の波動の力をモノにした結果、と言うことですか」

 

「まぁ、そうですね」

 

 

例え気性の荒い馬だったとしてもサツイノハドウの実力は確かだったのだ。

私も馬主として、競馬ファンとしてサツイノハドウには数少ない小遣いを賭けて小遣いを増やそうとしたものだ。

尤も、そう簡単に上手くいかないのが競馬だ。

的中させた数なら私よりも・・・

 

 

「そういう事は私よりも虎徹の方が才能はありますよ」

 

「何とっ!虎徹君がかね!」

 

「ほぅ、八代さんの息子さんですか」

 

 

虎徹が小学生の頃、妻には内緒で何度も競馬場に連れて行ったことがある。

試しに虎徹に好きな馬券を購入させたところ6、7割の確立で的中させていたのだ。

中には万馬券を当てた事もある。

その日は虎徹に好きなおもちゃを幾つも買ってあげたのも懐かしい思い出だ。

 

 

「なるほど。色々と教えていただき、ありがとうございました。私はこれで」

 

「いえいえ」

 

 

最後に頭を下げて彼は席を立った。

それを見送って彼の姿が見えなくなった頃、社長が彼が去った方を見て呟いた。

 

 

「・・・八代君、ところで彼は一体誰かね」

 

「誰ってまぁ、社長がご存知なわけないですね。アルバイトのベガさんですよ」

 

 

しかし社長にベガさんも競馬好きだったとは知らなかった。

うーん、久しぶりに虎徹を誘ってみるか。

近々、私達の保有している馬がレースにでるはず。

確か名前は・・・ゲオルグ14世だったか。

名前は馬主の一人が決めているはずだけど今回は誰が名づけたんだろう?

 

 

「しかし八代虎徹君か。やはり、ぜひとも私の力としたいものだ」

 

「だから虎徹はまだ未成年ですよ社長」

 

 

ルガール運送の力にしたいというのは分かるが虎徹に運送業が勤まるだろうか・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「チャンピオンさん、一緒に相撲やりませんか?」

 

「えー。四条、強すぎるから俺じゃ相手にならねーよ」

 

「ちゃんと教えますから大丈夫ですわ」

 

「俺が教えて欲しいのは飛び道具の出し方だ」

 

 

午後の授業、先生がお休みのため現在は自習中。

前に座る八代君は雛子ちゃんとおしゃべりをしているみたい。

まぁ他の皆も五月蝿くならない程度におしゃべりをしているから別にいいんだけど。

何だか胸がもやもやするような・・・なんだろう?

 

 

「モグモグ・・・アスナ、ティナはまだ戻らないデスカ」

 

「え、ティナ先輩?うーん、どうだろう。まだ帰ってないんじゃないかな」

 

 

お菓子を食べながらフェルちゃんが質問してくる。

ティナ先輩は何処かに旅に出ているらしく最近は部活も休みがち。

でもそれは中学時代でも同じなので特に心配はしていなかった。

 

 

「フェルちゃん、ティナ先輩に何か用事があるの?」

 

「ゴクン。ティナにお兄ちゃんへの手紙を届けるよう頼んだデス」

 

 

一瞬、フェルちゃんが何を言っているのか理解できなかった。

でもそれが理解できた瞬間、思わず大声を出してしまっていた。

 

 

「フェルちゃんお兄ちゃんいたの!?」

 

「あれ?言ってなかったデスカ?」

 

「う、うん。そうだよね、フェルちゃんも向こうでの生活があったんだもんね」

 

「2ヶ月も経ってるデスカラ、きっと心配しているデス」

 

「うーん、そっか。ごめんねフェルちゃん」

 

「アスナのせいじゃないデス」

 

 

フェルちゃんの頭を撫でながら考える。

フェルちゃんがこんなに可愛いって事はフェルちゃんのお兄さんもきっと可愛いよね?

うーん、どんな子なんだろう。

 

 

「・・・まずいわ、すっかり忘れていたわね」

 

「えぇ、どうしますのリアス。下手したら冥界が壊滅していますわよ」

 

「だ、大丈夫よ。お兄様達、魔王様方がいるもの」

 

 

何だか横でリアスと朱乃が顔を青褪めさせているけど、どうしたのかな?

フェルちゃんは私に撫でられて気持ちよさそうな顔をしている。

 

 

「お兄ちゃんなら優しいからきっとコテツを許してくれるデス」

 

「そっか。でも八代君も謝ると思う・・・うぅん、謝らせるから」

 

「ボクとしてはタクマに謝って欲しいデス」

 

 

八代君の不思議な力、普通じゃ起こりえない事を起こす本。

八代君は面白いからいいや、って言ってるけどやっぱり変だよね?

今回みたいに誰かを無理やり呼び出しても悪い事をしたとは思ってないみたいだし。

うん、やっぱり八代君はフェルちゃんのお兄さんに謝ってもらわなくちゃ。

きっと心配して怒ってもゲンコツ一つくらいで許してくれるよね。

 

 

「ですがリアス、最近冥界と連絡がつかないですが知りませんでしたの?」

 

「え・・・」

 

「それに最近はぐれ悪魔が多く冥界から流出しているようですし・・・」

 

「ま、まさか・・・ね」

 

「リアスどうしたの?さっきから顔が青いけど」

 

「な、何でもないわっ!えぇ、何でも無いのよ」

 

 

心配して声をかけても全然落ち着いた様子は無い。

まるで故郷で怪物が暴れまわっているような顔をしているみたい。

 

 

「時々アスナの直感が恐ろしい時があるデス」

 

「うん?何かいったフェルちゃん?」

 

「何も言ってないデス」

 

 

そういえば夏休みまで後1ヶ月。

と言うことは夏休み前のテストが迫っているわけで・・・

うん、八代君と服部君が泣きついてくるだろうからノートをもう少し分かりやすく書いておこうかな。

あの二人が土壇場で私と高藤君を頼ってくるのは恒例だしね。

本当に仕方がないなぁ。

 

 

「違うよ、こう愛を込めて撃つんだよコテッちゃん!」

 

「愛って何だっ!」

 

「いいか八代。うっとおしい八神を思い浮かべて薙ぎ払う感じでいいんだ」

 

「八神って誰だよ!」

 

「自分が最も格好いい姿、それを体現したのが幻影ハリケーンよ。さぁ八代もやってみなさい」

 

「だからそのやり方を教えろよっ!」

 

 

・・・うん、あの様子じゃ完全にテストの事は忘れてるね。

昨日、ヨハン先生から連絡があったんだけどなぁ。

 

 

「春日野、搭城に教えたお前ならできる!」

 

「教えたけど駄目だったよね。私の友達に通信教育で炎が出た子がいるけど・・・」

 

「それだっ!」

 

 

幾らなんでも怪しいと思うけど・・・

そこは八代君、形振り構わないね。

飛び道具が出せるようになったとしてどうするつもりなんだろう?

まぁ八代君の事だから面白そうだから、って理由だと思う。

 

 

「と、とにかく帰ったらグレイフィアに連絡してみましょう」

 

「それがいいですわね」

 

 

それにしてもリアスたちは何の話をしているのかな。

困っているようだし力にはなりたいけど・・・

 

 

「多分、アスナが心配しても仕方が無いデス」

 

「そうなの?」

 

「それよりもお菓子の袋を開けて欲しいデス」

 

「ふふっ、うん。ちょっと待っててね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ふっ、全く甘いぜ。グレモリーに結城!

確かに夜中には出歩かないと約束はした・・・だがなっ!

 

 

チリンチリンッ

 

 

誰も自転車で走り回らないとは言っていないぜ。

深夜、俺は自転車を漕いで駒王学園に向かっていた。

さすがにこの時間帯は誰もいないのかひっそりとしている。

 

 

ピタッ

 

 

自転車にブレーキをかけて停止する。

耳を済ませても静かな夜だ。

まるで俺以外誰もいないような静寂が広がっている。

・・・何だかわくわくするな!

 

 

「よし、違う道から行ってみるか」

 

 

普段通学路として使っている道ではなく細い路地へと入り込む。

街灯の数も少なく、より一層暗い道になっているようだ。

何だか知らない街に来たみたいで俺の冒険心がくすぐられるぜ。

 

 

「そこの貴方!止まりなさい!」

 

「ん?」

 

 

折角のわくわく感に水を差したのは誰だ?

目の前で剣をぷるぷると震えながら持っている金髪の女性だった。

はて、俺よりは年上だとは思うが何の用だろうか。

とにかく知らない人なんで言うことを聞く必要も無いだろう。

 

 

チリンチリンッ

 

 

「ほら、危ないぞー」

 

「だから・・・止まりなさい!」

 

「だから危ないってっ!」

 

 

両手を横に開くようにして立ちふさがってきた。

仕方なくブレーキをかけて止まる。

 

 

「で、どちらさん?」

 

「コホンッ、私はICPO所属のカイと言うものです」

 

「俺は八代虎徹。それにしてもICPO?警察なのか」

 

「そうです。これが証拠です」

 

 

手帳みたいなのを差し出してきた。

そこには顔写真があるが写っているのは金髪のイケメンだった。

え、違うじゃねーか。もしかして偽者か?

 

 

「分かって頂けたようですね」

 

「いや、顔写真ちげーし」

 

「え?・・・あ、こ、これは理由がありまして」

 

 

挙動不審に手を横に振って言い訳をする女性。

ますます怪しい。

そうだ、ICPOと言う事はクラスメイトの鬼子母神に聞けば分かるな。

 

 

「ちょっと失礼」

 

 

カシャッ

 

 

「な、何を・・・」

 

「俺の知り合いにICPOの鬼子母神ってのがいてな。本物か聞いてみる」

 

 

目の前の女性の写真を取りメールで聞いてみようとする。

が、素早い動きで俺の携帯を取り上げられてしまった。

 

 

「おいおい、返せよ」

 

「そ、そんな事をしなくても大丈夫です」

 

「んー、まぁいいか。で、何の用?」

 

 

もう既に俺の中ではICPOに成りすました女性と結論付けて話を聞くことにした。

俺が話を進めた事でほっと胸を撫で下ろしたのか剣を抱えた状態で口を開いた。

そんなに重たいなら降ろせばいいのに・・・

 

 

「最近、この辺りは物騒ですから大通りを歩いてください」

 

「物騒?そんなの今更だろ」

 

 

この辺りには鳴鏡館と呼ばれる人殺しの剣術道場がある。

平気で人をバッサバッサと斬り殺している事で有名だ。

 

 

「強盗など貴方が想像しているよりも遥かに物騒なのです」

 

 

うん、それも知ってるよ。

以前にも強盗犯が鳴鏡館に押し入った時も嬉々としてで斬り殺したって話だしな。

おふくろや先生達も近寄るなって言っているしな。

 

 

「とは言ってもな、俺はこの先にある駒王学園に用があるんだよ」

 

「学校ですか・・・分かりました。私が護衛を兼ねて行きましょう」

 

「え、アンタが?」

 

「はい。ですから用事を済ませたら直ぐに家に帰ると約束してください」

 

 

どう見ても弱そうなんだが・・・

剣すら持てないような女性を護衛にしてもなぁ。

しかしここで頷かないと先に進めないみたいだし。

 

 

「はぁ、分かったよ。とりあえずその剣、捨てたらどうだ?邪魔じゃねーの?」

 

「これは神器ですよ、そんな事ができますか!」

 

「いや、知らないし。じゃあどうするんだ」

 

「当然、このまま行きますとも!」

 

 

ズリズリと引きずるようにして歩き出すカイとか言う女性。

えーい、じれったいな!

 

 

「っ!下がってください!何かが近づいてきています」

 

「ん?」

 

 

薄暗い道へ目を凝らしてみる。

のし、のし、と確かに何かが近づいてきている。

やがて少ない街灯に照らされてその正体が姿を現した。

 

 

「く、熊!?どうしてこんな街中に・・・」

 

「与作!与作じゃないか!」

 

「うむ、やはり虎徹の匂いだったか」

 

「熊が喋った!?」

 

 

中学時代、俺が飼育小屋で世話をしていた熊の与作だった。

結城はクマちゃんなんて可愛らしい名前を付けていたが・・・

 

 

「与作、また小屋を抜け出したな」

 

「人は襲っていないので問題は無かろう」

 

「え、あの・・・虎徹君。この熊と知り合いなのですか?」

 

「そんなところかな。これから駒王学園に向かうけど与作も来るか?」

 

「ほぅ、虎徹の新たな学び舎か。いいだろう」

 

「あの、何で熊が喋っているんでしょうか」

 

「知らねーよ。面白いから別にいいだろ」

 

 

与作に重たそうな剣を持ってもらい俺達は学園を目指した。

途中、何か変なのが出たらしいがカイの飛び道具と与作の豪腕で蹴散らしていく。

暗くて見えないんだけど何だったんだろう?野犬とかか?

っつーか、コイツも飛び道具を出せるのか。何て羨ましい・・・

 

 

 




色んな死亡フラグを立てた気がしますが気のせいですね。

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