はいすくーるDxD 平穏(笑)な日常   作:鶏唐

32 / 52
ifシリーズ~MUGENキャラで本編が進んでいたら~

俺達の対戦相手である教師陣がやってきた。
ただ、一つだけおかしいのがいる。
全体的に丸いフォルムの人間サイズのロボットだった。
そしてそいつは俺達を見渡すと声を張り上げた。

「小生らに勝つことが出来れば我が隊に入れてやろう」

「は?」

「だができるかな?小生は今、絶好調である!」

「知らんがな」


10/20 無界の口調を修正しました。



第31話

 

「う・・・ぐっ・・・はっ!?」

 

 

目を覚ませばそこは駒王第二中学校のグラウンド。

俺は・・・そうか!あの緑軍人め!

思い出した途端に怒りが沸いてきたが自分の現状を確認して疑問が浮かぶ。

 

 

「あれ?何か動けない・・って言うか立ってる?」

 

 

首から下の感覚が無いが視点の高さから俺が立っていることが分かる。

うーん、何か大きな怪我でもしたのか?やっぱりあの緑軍人のせいか?

 

 

「メがサめたかヤシロ」

 

 

ビクッ

 

 

直ぐ傍から聞こえてきた声に思わず震えてしまった。

こ、この久しぶりに聞く声は・・・

ギギギと錆付いた機械のように首を横に向けて見た。

そこには想像通りの人物が腕を組んで立っていた。

 

 

「げぇっ!ガングロ教師!!」

 

 

ゴスッ

 

 

「おマエはマッタくセイチョウのキザしがミられんなヤシロよ」

 

 

無防備な俺の頭に拳骨を落とした人物。

中学時代に幾度となく俺のイタズラを邪魔してきた元担任のムカイ先生だった。

くっ、後輩達の情報だと今日は出張でいないはずだったのに!

 

 

「ハヤくヨウジがオわったのでカエってきてみれば、このバカサワぎだ。どうせおマエがミナをソソノカしたのだろう」

 

「あぁ、そうだが?」

 

 

ゴスッ

 

 

「ヒラきナオるな」

 

 

二度目の拳骨に視界に星が見えたぜ・・・

しかしこれで首から下の感覚が無いのが理解できた。

視線を下げれば思いっきり石化している俺の身体があった。

他にも校庭や校舎にも俺と同じようになっている生徒達がちらほらと見える。

逃げ遅れた奴らか。幾世やガーネット達など俺のイタズラに慣れている奴らの姿は見えないって事は逃げたな。

 

 

「そ、それよりも試合はどうなったんだ!?」

 

 

ボールが地面に着いたとこまでは覚えているが審判の結果は聞いていない。

俺が知らないルールで無効になった可能性だってある。

知っていそうな奴がいないか首を限界まで捻って確認するとガーネットとウィンドの姿があった。

 

 

「ふふっ。虎徹達の勝ちよ、おめでとう」

 

「よっしゃああっ!ざまぁみやがれってんだ!」

 

「ホントウにおマエはハンセイのイロがミえんな」

 

 

ガシッ

 

 

「あだだだだだっ!」

 

 

アイアンクローを受け締め付けられて思わず痛みが声に出る。

 

 

「ふんっ、調子に乗るからこうなるのよ虎徹」

 

「ガ、ガーネット、お前よく無事だったな」

 

「無事じゃないわよ!」

 

 

確かによく見ればあちこち服が焦げたりしている。

そこまで火力の高い罠じゃなかったんだがな。

そこまで散々な状態って事は相当な数の罠を踏んだんだろう。

 

 

「わはは、調子に乗るからこうなるんだだだだっ!ギブギブッ!」

 

「もっとやって頂戴ムカイ先生!」

 

「やれやれ。おマエもカわらんな・・・」

 

 

ガーネットにそっくりそのまま返してやろうとするがアイアンクローの激痛が再び走る。

ぐぅっ、暴力教師め。

ん?そういえば半蔵達は何処に行ったんだ?

見える範囲にはいないみたいだが・・・

俺がきょろきょろとしていたのを見てかムカイ先生が教えてくれた。

 

 

「ハットリタチならコウナイのワナをテッキョさせている。イッショにキていたモノもレンタイセキニンでな」

 

「ちぇっ、まだ面白いトラップが一杯あったのによ」

 

「逆によくそんなに仕掛ける事ができたわね」

 

 

呆れたように言ってくるウィンドに俺は誇らしい気持ちで言い返す。

 

 

「当然だ。伊達に中学3年間、授業も放って思いつく限りの罠を仕掛けてきてないぜ!」

 

「ムカイ先生、やっちゃって」

 

 

ガシッ

 

 

「いだだだだだっ!」

 

「そんなコトでホコるな。このイタズラコゾウめが」

 

 

ちくしょう、普段なら走って逃げるって言うのに・・・

ガーネットもそれを分かっているからか、ここぞとばかりに挑発するような笑みを浮かべている。

ぐぅっ、何だあの笑顔は!何てムカつく笑顔だ!

 

 

「ふっふっふ、どうしたのかしら虎徹?」

 

「あ、あのシルヴィ?その辺にしたらどうかしら」

 

「甘いわよウィンド。こいつは直ぐ調子に乗るんだから」

 

「けっ、調子に乗ってるのはどっちだよシスコンが」

 

「ふん、何とでも言いなさい。妹を可愛がって何が悪いって言うの」

 

「へっ、ちょっと可愛くてスタイルがよくて頭がよくて運動神経がよくて・・・あれ?こいつ弱点無くね?」

 

 

自分で言っていて気づいたが、こいつ弱点が存在するんだろうか?

あ、そうだ性格が悪いってのがあったな。

改めて言おうとするとガーネットの奴が顔を真っ赤にして俯いてしまった。

今まで見た事のないガーネットの反応に俺も動揺してしまう。

 

 

「え、あ、そ、その・・・あ、ありがとう」

 

「お、おう」

 

「やれやれ、せめてザイガクチュウにそのようにナカヨくしてくれればワタシのフタンもヘったのだがな」

 

「ふふっ、喧嘩するほど仲がいいって事ね」

 

 

ぐああぁっ!首から下の感覚が無いはずなのに胸がもやもやする!

大体お前そんなキャラじゃねーだろ。もっと食らいついて来いよ!

外野も生暖かい目で見るんじゃねーっ!

いや、待てよ。こいつが顔を赤らめる理由について考えて見る。

ガーネットの奴が俺を好きだなんて事はまず無い。

俺は恋なんてしたことないから分からないが、こいつとは喧嘩ばかりではなく普通に話したりもするのだ。

もしこいつが俺の事を好きなら今までに何らかのアプローチがあったはず。

そこまで考えてある事に思い当たり俺はニヤリと笑みを浮かべた。

 

 

「な、何よ。その笑みは」

 

「へぇ、ふーん、ほぉ。なるほどなぁ」

 

「だから何よ!」

 

「いやいや、ガーネット家の長女は褒められるのに弱いとは知らなかったなぁ」

 

「んなっ!」

 

 

図星のようで驚きと共に固まる。

かと思えば顔を俯かせてプルプルと身体が震えているのが見えた。

 

 

「あぅ、えと、その・・・お、覚えてなさいよーーっ!」

 

「あ、シルヴィ!じゃあね虎徹。先生も失礼します」

 

 

負け犬の常套句を叫んで逃げていくガーネット。

そして礼儀正しく頭を下げてその後を追うウィンド。

はははっ!これはいい弱点を見つけたぜ。

今度盛大に弄ってやろう。

 

 

「ヤシロ、あまりからかいスぎると・・・いや、こいつはナンドもイタいメをミたホウがいいな」

 

「何だよムカイ先生。っつーかいい加減解放してくれ」

 

「おマエはスデにここのセイトではないからな。このアト、コマオウガクエンにツれてイきそこでセンセイガタにみっちりとシカってもらう」

 

「ぐぬぬぬ」

 

 

さすがに逃げようとしても石化した状態だから逃げようが無い。

仕方ない、今回は潔く負けを認めてやる。

だが!このままで済むと思うなよ!必ず復讐と言う名のイタズラをしに戻ってくるからな!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「結城さん、そこでストップだ」

 

「ここにも仕掛けてあったの?」

 

「これで一体何個目デスカ・・・」

 

「ぬぅ、拙者は覚えてはおらぬ」

 

「ここが皆さんが通っていた中学校なんですね」

 

「ふん、くだらんな」

 

 

僕、結城さん、デス様、半蔵、ディズィーさん、テスタメントで駒王第二中学校3階の罠を撤去していた。

未だに忌々しい薬の効果で僕一人では行動ができずティセに支えてもらっている。

残りのメンバーはバティン先輩主導で1階の罠の撤去に当たってもらっている。2階は在校生達の担当だ。

罠の撤去なので全ての罠は現在起動中、トリガーを元にそれぞれ発動するだろう。

その前に、何故ギアのテスタメントがいるのか疑問だ。ソルとライザーさんが連れてきたようだが・・・

 

 

「博士、解除終わりました」

 

「これでようやく全体の20%か」

 

「そんなに仕掛けてあるんですか!?」

 

「少なくとも僕が知る限りではな。虎徹が一人で仕掛けたのもあるから実際はもっとあるだろう」

 

 

僕の家から色々と持って行っては学校中に仕掛けていたようだからな。

火薬など危ないものは僕が監視の下に仕掛けたので危険な罠は無いはずだ。

 

 

グイッ

 

 

「きゃっ!」

 

「な、何ですかーっ!」

 

 

後方を歩いていた結城さんとディズィーさんの悲鳴が上がる。

振り返ってみると片足に縄がついており吊り上げられている二人の姿があった。

二人とも必死でスカートを抑えて抵抗していた。

 

 

「大丈夫でござるか結城嬢?」

 

「大丈夫から早く降ろしてよー!み、見えちゃう!」

 

「わわ、だ、駄目ですー!」

 

「ディズィー!今助けるぞ!」

 

 

半蔵の手裏剣とテスタメントの鎌が二人を吊り上げている縄を断ち切る。

どさっと共に結城さんとディズィーさんは床に落ちた。

 

 

「うぅ、八代君のバカ」

 

「あぅ、お尻が痛いです」

 

「コテツは一度痛い目を見た方がイイデス!」

 

 

心配しなくても既に何度も痛い目にあっている。

虎徹が罠をしかけたり悪戯をする度に当時の担任であるムカイ先生が指導していたからな。

それに今頃二人は感動の再会をしていることだろう。

 

 

「ふむ、次はここだな」

 

「アスナ、ココは何の部屋デスカ?」

 

「あいたたた。えっとねフェルちゃん、ここは音楽室だよ」

 

 

僕達が部屋に入ると壁に描かれている音楽家達の視線が一斉にこちらへと向く。

ただの絵にも関わらず僕を支えているティセが短く悲鳴を上げる。

だが僕はそれよりも部屋に入って違和感に気づく。

やけに熱いなこの部屋は・・・窓を閉め切っているとは言え、まるで暖房器具でも使用しているような・・・

 

 

「は、博士怖いです・・・」

 

「ただの絵だ。別にこちらを見ているだけで何かをするわけでは・・・」

 

 

ピシュンッ!

 

 

一先ずティセを落ち着かせようとしたがそれは途中で止まる。

僕の足元を見れば焦げた跡の床。

そして先ほどの音と共に放たれたのはレーザーだ。

そこまで考えて僕はティセと共に音楽室から出て半蔵を前に押し出す。

 

 

「どうしたでござるか琢磨?」

 

「いや、少し時間をくれ。他の皆は音楽室に入らないように」

 

 

ピシュンッ!

 

 

「なんと!?肖像画が攻撃してきたでござるっ!」

 

 

驚きながらも多数の目から放たれるレーザーを前に飛ぶようにしてかわしていく半蔵。

さすがは忍者、軽快な動きだ。

いや、それよりもここに仕掛けられている罠だ。

僕は手にしているノートパソコンから罠の仕掛けられたリストを確認する。

音楽室に仕掛けられた罠は入った相手を数秒間ロックしてレーザーを放つ肖像画と・・・

 

 

「水風船が落ちてきたでござる!」

 

 

バシャッ!

 

 

「ぬおっ!?血?いや、とにかく赤いでござる!げほっ!の、喉が!目が痛いでござるっ!」

 

 

天井が回転してそこから落ちてくるタバスコ入りの水風船。

床は暖房となっていて時間をかけずに気化していく。

溜まらず半蔵は窓を開けようと鍵を外し一気に開け放つ。

 

 

「はぁはぁっ!た、助かったでござああぁぁっ!?」

 

 

窓を開けたと同時に上からゾンビの顔をした人形が半蔵の目の前に降って来る。

あれは僕が試作した簡易バルーンだな。尤も、あんなゾンビの顔などはしていなかったはずだが。

大方、虎徹がゾンビの顔をしたマスクを被せたのだろう。

 

 

「し、心臓に悪いでござる・・・よ!?」

 

 

ガコンッ、とした音と共に後ろによろめいた半蔵は落とし穴へと落ちていく。

この下は確か・・・僕達が過ごした教室か。一番危険な場所だな・・・

 

 

ヒュンッ・・・ガッ

 

 

半蔵の冥福を祈ろうとしたところで床に鉤縄がひっかっかる。

さすがは忍者、咄嗟とは言えよく使えたものだ。

 

 

「だ、大丈夫ですか半蔵さん?」

 

「も、問題ないでござるよ・・・ぬぅ!壁が滑って昇りにくいでござる」

 

「油を塗っているんだろう。それなら残り一つをテスタメント。音楽準備室の扉を開けてもらえるか」

 

「ふん、何故私がニンゲンの命令を聞かねばならんのだ」

 

 

僕の頼みを突っぱねるテスタメント、と言うよりも先ほどからの態度にイラッと来るものがある。

僕はノートパソコンにテスタメントの手配書を映し出して本人に見せる。

 

 

「日本円にして1000万。僕の研究費の足しにしてくれると言うのなら構わんが?」

 

「キサマッ!」

 

「どうしたんですか?」

 

「い、いやディズィーには関係の無い話だ・・・クッ、扉を開ければいいのだろう!」

 

 

後ろにいるディズィーさん達にはテスタメントが見た画像が何なのか分からず首を傾げている。

ギアの討伐はまだ根強く残っており当然手配書もICPO経由で世界各地に渡っている。

どういった理由で駒王町にいるのかは分からんが今ここでは都合がいい。

音楽準備室に仕掛けられているのは僕達では荷が重いからな。

 

 

「これだからニンゲンは信用が出来ない。ふんっ、これを開ければいいのだろう」

 

「あぁ、その通りだ」

 

 

半蔵はまだ時間がかかるようだ。

仕方ない、いざとなれば後ろの球体を突っ込ませるとしよう。

強さは先ほどの試合でも見せてもらった。

何、万が一があれば僕が有効活用してみせる。

 

 

ビクッ

 

 

「どうしたのフェルちゃん?」

 

「何か不穏な気配を感じたデス」

 

 

さて、後方の事は置いておくとしてテスタメントが扉のノブに手をかける。

これまでのトラップの数々を見ていたからか、ゆっくりと慎重にドアノブを回す。

 

 

ガチャリッ

 

 

「なっ!?」

 

 

扉を開けた途端に大量の水が押し寄せる。

あっという間に音楽室は水浸しだ。

水圧によりテスタメントが教室の中央まで押し流される。

こんな仕掛けを施した覚えは無い・・・と言う事は虎徹の仕業か。

 

 

「がぼがぼがぼっ!?」

 

 

水浸しとなった教室はすぐに半蔵の落ちている穴へと流れていく。

・・・まぁ半蔵だし死ぬ事は無いだろう。

 

 

「・・・それで、アレは何なの高藤君」

 

「それは僕が聞きたいな。どちらにせよあれを退治なり何なりするしか無いようだ」

 

「ボクがやるデス!」

 

「フェルちゃんが暴れちゃうと教室が滅茶苦茶になるから駄目!」

 

「ウゥ、酷いデス、アスナ」

 

 

水の球体、とでも言えばいいのだろうか。

黄色い丸が二つほど中心からやや上に存在している・・・あれは目か?

先ほどから伸びては縮みと伸縮を繰り返している。

あのような面白、いや奇怪な生物を虎徹が用意していたとはな。

 

 

「私も手を貸しますテスタメントさんっ!」

 

「待て来るなディズィー!」

 

 

一瞬で姿がワンピースからボンテージ姿といった露出の激しい姿へと変わるディズィーさん。

早着替えでも得意なのだろうか、それとも予め下に着込んでいたのか。

ただ、その両肩の緑の外套を被った骸骨と全身水色の女性はなんだ。

 

 

「は、博士!ディズィーさんとあの2体からギア反応が!」

 

「何?」

 

 

以前虎徹から聞いた話から彼女が魔の森に潜むギアだと考えてはいた。

しかしギア反応が無い事、現れたテスタメントからギアとはテスタメントのことだと思っていた。

だが現にこうして彼女からギア反応が出ているとは・・・一体どうやって隠していたんだ。

疑問は尽きないが半蔵は落とし穴の中、ティセも防水加工をしているとは言え油断はできない。

となると二人に頼るしか無さそうだ。

 

 

「やれやれ・・・虎徹に聞きたい事が山ほどできたな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

お、おおおおお落ち着くんだライザー・フェニックス!

い、いい幾らティナがと、隣を歩いているからって動揺などみ、見苦しいぞ!

 

 

「うーん、この辺りはこれでお終いかしら」

 

「・・・・・・・」

 

「どうしたのライザー君。さっきから?」

 

「はっ!い、いや何でもないさ。さ、さぁ早くコテツの仕掛けたトラップを見つけよう!」

 

「?うん、そうね」

 

「なるほど。二人にするとああなるのね」

 

「ふふっ、プレイボーイも形無しですわね」

 

「・・・ヘタレ」

 

 

後ろにリアスとその眷属達がいるとは言え、まさかティナと二人でこうして歩けるとは夢みたいだ。

俺の胸にすら届かない身長から自然とティナは俺と会話するときには上目遣いになり、それが反則級に可愛い。

抱きしめたいなティナ!あぁ、だが突然抱きしめて嫌われてしまったらどうする。いかん、我慢だ。

 

 

「あ、ここが怪しいわね・・・ライザー君。ちょっとそこの床を思いっきり踏んで欲しいんだけど」

 

「あぁっ!任せておけ!」

 

 

ティナに頼られていると言うだけでもやる気は100%を突破している。

例えコテツやタクマが作ったトラップだろうとフェニックスである俺には無意味だ。

ティナの指差している床をダンッと思いっきり踏む。

 

 

ガコンッ!

 

 

「え?」

 

 

天井から透明な壁が落ちてきて俺を囲う。

コンコンと叩いてみるが、これは・・・ガラスか?

多少の身動きはできるが狭い。

 

 

「確かに落ちてきたときは驚いたがこんなものか?」

 

「何だか拍子抜けしたわね」

 

「いえ、まだ続きがあるみたいです」

 

「小猫ちゃん?何を言って・・・」

 

 

リアスの戦車である小猫が何やら俺の上を見ながら言うを見てつられて俺は見上げる。

そこには天井が開いていて何かの大きな袋が見える。

そしてその袋が下に向けて口を開いて中のものが落ちてこようとしていた。

袋に書かれていた文字、小麦粉が俺に降りかかった。

 

 

ばさぁっ

 

 

「ぷっ。ライザー君、一気にお爺ちゃんになっちゃったわね」

 

 

視界一杯に広がる白い粉。

それは当然密室となった俺に全て降りかかり上から下まで全身真っ白となってしまった。

そしてそれを見て噴出して笑うティナ。

 

 

「・・・・・・・ぐっ」

 

 

いや、笑うティナは悪くない。寧ろ可愛いのでもっと笑っていてくれ。

全てはこんな仕掛けをした犯人だ。そしてその犯人は当然分かっている。

そいつの後始末で俺達は中学校の廊下を歩いているのだから・・・

 

 

「こ~て~つ~っ!!」

 

 

ボワッ!

 

 

ドガンッ!!

 

 

俺の怒りに応じて魔力が高まり炎を纏う。

瞬間、轟音と共に爆発が起こった。

突然の衝撃に俺の意識が一瞬途切れる。

囲っていたガラスも破壊され破片となり床に散らばる。

 

 

「ちょっと大丈夫なのライザー?」

 

「あ、あぁ。完全に俺のミスだ」

 

 

怒りで我を忘れていたとは言え、自ら粉塵爆発をしてしまうとは。

傷は再生されるとは言え痛いものは痛い。

 

 

「でも変ね。この辺にはトラップなんて無いけど」

 

「タクマさんのリストに洩れでもあったのでしょうか?」

 

 

リアス達が予めタクマから渡されていたトラップのリストを見ながら首をかしげる。

いや、あのタクマがそんなミスをするとは思えない。

となるとコテツが一人で仕掛けた可能性が高いな。

そう思い再度コテツへの怒りが湧き起ころうとしたがティナが無邪気に笑った。

 

 

「あはは。それ私が1年生の時に仕掛けたのよ。タクマちゃんが知らないのも無理はないわ」

 

「ティナ先輩・・・さすがにライザーさんが可哀相ですよ」

 

「うっ、ごめんねライザー君。騙すつもりは無かったのよ、ただライザー君がどんな反応してくれるか期待しちゃったの」

 

 

ティナが俺に・・・期待?

ふらつく頭だったがその言葉が耳から入り脳に刻み込まれる。

 

 

「はっはっは!この程度どうって事ないさ、可愛い悪戯じゃないか!」

 

「さすがライザー君、フェニックス家の耐久力は凄いわね!」

 

「軽い脳震盪を起こして言う台詞ではありませんわ」

 

「あれを可愛いで済ませるとは恋とは恐ろしいですね」

 

 

外野が何と言おうが構わない。

コテツへの怒りも何処かへ吹き飛んでしまっていた。

そんな身体はともかく心は有頂天な俺へと声が降りかかる。

 

 

「あ、ちょっとそっちは駄目!そこの人たち!逃げてください!」

 

 

やけに切羽詰った声に視線を向ければそこにいたのは学校にいるはずのない生物だった。

牛と熊が廊下を疾走してこちらへと向かってきている。

・・・うん、ちょっと待とうか。

牛が二本足でボディビルダーのようなポーズを取ったり、

熊がアッパーカットやローリングソバットで学生達をなぎ倒しながら来ているのは普通じゃない。

 

 

「え、何?またコテツのせいなの?」

 

「部長、さすがに何でも八代先輩のせいにするのはどうかと思いますよ」

 

 

そうだよな、せいぜいが小屋から逃げ出したとかだろう。

学校であんなアグレッシブな牛と熊を飼っているのかは知らないが。

 

 

「こら2匹とも!トラ先輩はそっちにはいないってば!」

 

「ネコさん・・・と言う事は八代先輩のせいですね」

 

 

頭にネコ耳を生やした子が追いかけながら言った言葉にやっぱりコテツが悪いと判断する。

とにかく俺が前に出て止めるか、と思ったが2匹は華麗に俺を避けて背後へと襲い掛かった。

 

 

「なっ!何なのよっ!」

 

「おっと」

 

 

牛はリアスへ、熊はリアスの騎士、ユウトへと襲い掛かる。

・・・あぁ、リアスの髪は赤いからな。

しかしユウトの方は何故だ?

 

 

「その構え、格闘をするのかい?」

 

「貴様に誠の一文字を背負う覚悟があるか試してやろう」

 

「熊が喋りましたわ!?」

 

「!?・・・分かった。相手になろう」

 

「祐斗先輩、本気ですか?」

 

「あぁ。どんな因縁か知らないけれど、誠の一文字を問われれば闘わないわけには行かない!」

 

「お姉さんにも分かるように言ってちょうだい祐斗ちゃん」

 

 

俺達を置いてけぼりにして熊と向かい合うユウト

その手には神器である魔剣が握られている。

相手も熊なのに2本足でしっかりと立ち何かの構えを見せる。

熊が喋るのは以前ニュースで見た事があるが格闘の心得がある熊は初めてだな。

 

 

「ちょっとこっちを助けなさいよっ!」

 

「心配しないでください部長。僕は負けませんから」

 

「あぁ、リアス。魔力弾を撃つなよ、校舎が壊れるからな」

 

「こっちの心配をしてっ!」

 

 

叫ぶリアスを他所に緊迫した闘いが今、幕を開けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ムカイ先生に石化した状態で駒王学園に連行され先生方から説教を受ける事数時間。

ようやく家に帰ることができるぜ・・・

結局試合は俺達が勝ち、総合得点でも俺達A組が優勝となった。

後片付けはしなくて助かったが教室には既に誰もいないため一緒に喜ぶやつらがいなくて若干寂しい。

半蔵達も疲れた様子で帰ったと最後まで残っていた委員長である神月に聞いた。

当の本人は相変わらず高笑いをしながらリムジンで帰宅していったが。

 

 

「そういえば一人で帰るのって久しぶりだな」

 

 

家が近所の半蔵もそうだし分かれ道につくまでは誰かと一緒に帰っていたからな。

夕飯までは時間もあるし商店街に寄り道でもしていくか。

さすがに平日だから面白いイベントはやってないだろうが漫画の新刊が発売していたはず。

 

 

「ヘイ!そこのボーイ!」

 

「んあ?」

 

 

商店街に辿り着き、本屋に向かおうとしていたときだった。

やたらと明るい声に俺は足を止めた。

声の主は店と店の間にある細道、そこの奥にいた。

易占い師の格好をしている外国人の中年のおっさんだった。

外国人のおっさんが何故、日本の占い師の格好をしているのか突っ込みたかったがよく見れば知り合いだった。

 

 

「おー、おっさん。久しぶりだな」

 

「ハハハ!ユーも元気そうで何よりダヨ!」

 

 

薄暗い路地へと向かえばたどたどしい日本語でしわがれた声で話すおっさん。

お前は何処の大柴だよ、と突っ込みたいが本人は元ネタを知らないだろうから止めて置こう。

 

 

「しかしボーイも水臭いネ、ミーが教えたサモンをユーズしたなら見せてくれなくチャッ!」

 

「・・・ん?サモン?」

 

 

馬鹿な俺でも分かるレベルの英語を話してくれるおっさんだったが知らない単語に首をかしげる。

サモン、さもん、査問?ニュースとかで聞いた事があるが多分違うだろう。

おっさんとは俺が小学校の頃からの知り合いで悪戯の相談にも乗ってもらっている。

だから多分相談した悪戯の事だろうが、どれの事だろうか?

 

 

「ウォターンをサモンしたダロ?魔力でスグに分かったヨ」

 

「うぉたーん?まりょく?」

 

「オー、ソーリー。ボーイにも分かりやすく説明するヨ」

 

 

おっさんは昔から俺には分からないような専門用語を話すので困る。

まぁ、その後に分かりやすいように説明してくれるからいいんだけど。

 

 

「以前ユーがライトしたコレを覚えているカイ?」

 

 

そういって見せたのは古臭い紙だった。

そしてそこには変な模様の絵が描かれている。

丸い外枠の中に五芒星っぽい形の奴だ。

そういえば以前、おっさんに言われて書いた事があったな。

 

 

「このペンタクルが発動したんだヨ」

 

「何!?そうだったのか!」

 

 

おっさんからは面白い事が起こる、としか教えてもらっていない。

確か中学校のどこかの扉に貼り付けておいた気がする。

一応他のポスターで隠していたが何処だったかな。

 

 

「はっ!そういえば・・・」

 

 

そこでムカイ先生が半蔵達が罠を解除してまわっていたことを思い出した。

試合中に俺が駒王第二中学校にある全ての罠を発動させた事もだ。

きっと誰かが、その面白いはずの罠を発動させたんだろう。

 

 

「くっ、おっさん。俺もその面白い罠を見れなかったんだ・・・」

 

「オー!残念ネ・・・それならワンモア教えてアゲルヨ!」

 

「本当か!サンキュ、おっさん」

 

「オーケー!それならこんなペンタクルを見つけてミテヨ」

 

 

先ほどと同じ古臭い紙にかかれた模様を出す。

俺はその絵を見ながら自身の能力である本を取り出した。

ドサドサッと地面に落ちた本の一冊を取ってペラペラとめくる。

おっさんの書いた絵に似たようなものを探す。

 

 

「おっ、これか・・・いや、何か違うな」

 

「やっぱりボーイにしかルックできないネ・・・」

 

 

俺と同じようにおっさんが地面に落ちた本を拾い上げてページをめくる。

相変わらず謎だが俺以外が見ると白紙だ。

それから2冊、3冊と探していき、ようやく同じ絵柄を見つける事ができた。

 

 

「見つけたぜ、おっさん」

 

「ネクストはそこにライトされているワードをここに写してネ」

 

「よし来た」

 

 

おっさんが差し出した古臭い紙に鞄からシャーペンを取り出して写していく。

当然、日本語じゃない文字なので意味はさっぱりだがおっさんは分かるらしいので問題ない。

俺が苦戦して写していく中、対面にいる爺さんは俺の書いた文字を真剣な表情で読み取っていた。

こうしていると変な威厳と言うか、こっちも畏まっちまう。

まるで厳しい先生を目の前にしているような気分だ。

まぁ実際は得たいの知れないエセ占い師だが。

 

 

「こんなもんかな」

 

「フムフム。トゥナイト、午後11時にこのペンタクルにトカゲの尻尾、蝙蝠の羽を置けばイイヨ!」

 

「そんなもん持ってねーよ」

 

「ムム、それなら2つで1000円でイイヨ!」

 

 

そういって、おっさんは机の下でがさごそとした後に取り出した。

何で占い師がトカゲの尻尾と蝙蝠の羽を持ってるんだ。

いや、それよりもだ。

 

 

「高い!そんなの10円で十分だ!」

 

「オー、これでもサプライズな値段ネ。ボーイは我がままヨ」

 

 

むむむ、とはいえ先日のリーアランドでの出費で小遣いも残り少ない。

おっさんの事だから本当に面白い事が起こるんだろうが1000円は高いぜ。

 

 

「あら、また悪巧みでもしているのコテツ?」

 

「へ?グリ子さん?」

 

 

俺が悩んでいると後ろから声をかけられる。

そこにいたのはグレモリーに似た容姿を持つ女性、グリ子さんだった。

いつも会うのは夜中だったから夕方に出会うとは珍しい。

 

 

「グリ子さん!1000円くれ!」

 

「この子はいきなり何を言い出すの・・・」

 

 

借りるくらいなら初めからもらった方がいい。

そう思ってグリ子さんに頼むと呆れた顔をされてしまった。

そしておっさんがココまで至った経緯を説明する。

あれ?この二人知り合いだったのか。

 

 

「・・・そうね、面白い未来も視えるし。コテツ、いいわよ」

 

「マジで?」

 

 

いや、言ってみるもんだな。

俺はグリ子さんにもらった1000円札をおっさんに渡した。

そしてトカゲの尻尾、蝙蝠の羽を小さな巾着みたいな袋に入れて受け取る。

 

 

「完成したらセンターにホールを空けたら発動するヨ!」

 

「で、どんな面白い事が起こるんだ?」

 

「それは実際に起きてからの楽しみダヨ!ノープロブレム!ハウザーを見ればボーイもエキサイティングするヨ!」

 

 

おっさんがそこまで言うって事は相当なんだろう。

仕方ない、駒王学園のどこかに仕掛けて楽しむ事にしよう。

中心に穴を開けたらいいって事は針で開けれるようにしないとな。

 

 

「っつーかグリ子さん。何でこんなところにいるんだ?」

 

「ふふっ、それは貴方に会いに来たからよ」

 

 

そう言って俺の頭を撫でるグリ子さん。

えーい!無駄に恥ずかしいんだから止めろっ

頭を振るって撫でていた手を跳ね除ける。

グリ子さんは笑みを止めずに、あら残念、と言って手を下ろした。

 

 

「昔は可愛かったのに・・・反抗期かしら」

 

「ボーイも難しい年頃ヨ、気を落とさない事ネ」

 

「あんたらは俺の親か!」

 

 

結局、その後弄られつつも家に帰った。

ただ、そこで終わっていれば楽しく騒がしい日だったのだが・・・

 

 

「虎徹!あんたはまた先生方に迷惑かけてっ!」

 

 

学園から電話があったのかお袋から厳しい説教と小遣い減額が言い渡されてしまったのだった。

おのれ、緑軍人に影の薄い先生めっ!

 

 

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。