はいすくーるDxD 平穏(笑)な日常   作:鶏唐

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小ネタ 疑問


「ライジングタックル!」

「・・・なぁロック」

「ん?どうした虎徹」

「その技、パンチなのかキックなのか?」

「え?あ、いや・・・タックルって言うぐらいだから体当たりじゃないのか」

「何で技使ってるお前が分からないんだよ」

「俺だって教わっただけだっ!」


本当、どういった攻撃方法なんでしょうね。





第30話

 

「嫌でござる!嫌でござるーっ!」

 

「もうここまで来たんだから観念しろって半蔵」

 

「そうだよ服部君。逆にそうやって騒ぐと目立っちゃうよ」

 

 

場所は俺達の母校である駒王第二中学校。

その校門に半蔵がしがみついて駄々をこねている。

俺と結城が宥めてはいるが効果は無かった。

 

 

「高藤先輩。服部先輩は何故あんなに嫌がっているんですか?」

 

「・・・まぁ、誰にでも苦手な相手はいると言う事だ」

 

「ハンゾーの苦手な相手ねぇ」

 

 

あのストーカーの事を知るはずもない連中は首をかしげて半蔵の駄々を見ている。

と、半蔵がピクリと反応したかと思うとガタガタと震えだした。

 

 

「来やがったな。結城、琢磨。手はず通りに行くぞ」

 

「任せて!」

 

「了解だ」

 

 

二人に声をかけると同時に奴が物凄い勢いでこちらへとかけてくるのが見えた。

腰まで届く黒く綺麗な髪、その端正な顔立ちに薄く染まった赤い頬。

まぁ胸が壊滅的に無いがここまで見れば美少女だ。

だが今の奴は鼻息荒く、涎を垂らしながら迫っていてどう見ても変態、こいつこそ天野夕麻だ。

 

 

「半蔵せんぱ~い!ついに決心してくれたんですね!私に捧げるどうて」

 

「どりゃあっ!」

 

「服部君こっち!」

 

「行け、ホウオウ!」

 

 

相変わらずな元後輩の腹へと向けて渾身の右ストレートを放つ。

結城が震えて動けない半蔵を引き寄せ後ろに匿う。

同時によろけた天野へと向けて琢磨の指示を受けたホウオウがアッパーで打ち上げる。

 

 

べしゃっ

 

 

そんな潰れた音を経てて地に伏せる天野。

だがすぐにガバッと起き上がる。

こいつ、以前よりも耐久力が上がってやがる・・・

 

 

「何するんですか八代先輩達!はっ!もしかして私を好きだって言うんじゃないでしょうね!」

 

「心配するな。そんな気持ちは微塵もねぇよ」

 

「駄目ですよ。私の身も心も半蔵先輩のものなんですから・・・きゃっ」

 

 

駄目だこいつ、早く何とか・・・いや、もう手遅れだな。

半蔵は更に後方にいるグレモリー達の背後に隠れてしまった。

 

 

「っつーか幾ら何でも気づくのが速すぎじゃねぇのか天野」

 

「当たり前です。今日半蔵先輩が中学校に来るのは事前にリサーチ済みです!」

 

 

そんな鼻息荒くして自信満々に言うな。

見てみろ、後ろの奴ら唖然とした顔しているじゃないか。

 

 

「ちなみに半蔵先輩の今日のパンツは白のふんどしですっ!」

 

「ななな、何故そんな事を知っているでござるか!?」

 

「乙女の嗜みです、えへへ」

 

 

いや、仕草は可愛いかもしれないが台詞が全てを台無しにしている。

どうやら卒業後も変わらずに半蔵のストーキングをしていたようだ。

半蔵が気づかなかったって事は相当遠くから観察していたんだろう。

夕飯の支度があるからと帰っていくお袋をを引き止めていけばよかったぜ。

お袋が見ればお得意のお節介で天野を真人間に戻してくれるだろうに。

 

 

「さぁ半蔵先輩。そのふんどしを私にくださいっ!」

 

「嫌でござる!」

 

「えーっと・・・この子が半蔵が苦手にしている子なの?」

 

「うん。でも暫く会っていなかったけどココまで酷かったかな」

 

「変態度が増している気がするな」

 

「失礼な、乙女度が増していると言ってください!」

 

 

変態=乙女なんて図式はお前しか当てはまらねぇよ。

とにかく天野に会いにここまで来たわけじゃない。

天野を琢磨に任せておく事にする。

俺の意図を察した琢磨は黒いロボット、ワーロックだったか?に担がせた。

 

 

「離してくださいよ!せめて半蔵先輩と一緒に縛ってください!」

 

「・・・うわぁ」

 

 

微妙な視線を集めるのにも気にせず騒ぐ天野を放って俺達は駒王第二中学校を進んでいく。

そしてグラウンドに出ると歓声が待っていた。

校舎の窓やグラウンドの端には観客に称した在学生達がいた。

あ、そういえば木場や塔城の学校とは違って通常授業だったな。

そしてお祭り好きなあいつらが黙って授業を受けるはずが無い。

 

 

「来たぞ!駒二の台風が!」

 

「忍者ー!分身してくれ!」

 

「博士ー!改造してくれー!」

 

「結城せんぱーい!結婚してくれー!」

 

 

ゴスッ、バキッ!グシャッ!ブチッ!

 

 

「あそこにいるのはティナ先輩!?」

 

「と言うことは知的探求部の全盛期メンバーが勢ぞろいという事か・・・」

 

 

俺達のことを知っているって事は2、3年生だな。

ティナ先輩を知ってる奴は3年生だろう。

一方で戸惑った表情をしている生徒達は1年生ってところか。

そして結城に求婚をした奴の安否が気になる。

 

 

「皆さん、凄い人気ですね!」

 

「いやー、アレであいつらもノリがいいからな」

 

「学校を5回ほど全壊させたのも良き思い出でござる」

 

「違うな半蔵、7回だ」

 

「一体何をしたんですの・・・」

 

「やっぱり八代先輩の周りの人は異常と言うことがよく分かりました」

 

 

何故か知らんが馬鹿にされた事は分かるぞ塔城。

その呆れたような視線を俺に突き刺すのは止めろ。

 

 

「うふふふ、皆さん私と半蔵先輩を祝福しているんですね。ありがとうございますっ!」

 

「誰も祝福してないデス」

 

 

見当違いも甚だしい天野は放っておくとして、だ。

グラウンドのコートへと視線をやれば既に対戦するはずだった相手、ガーネット達と俺達のチームの先輩達がいるのが見えた。

ウィンドや他の生徒も違う学校の生徒だからかこの空気に戸惑っているのが遠目から見ても分かる。

そしてガーネットは元在校生と言う事もあってか気にしていない様子で似た顔の奴と話をしている。

あれは妹の方か。こちらに気づいたようで手を控えめに振ってくるので振り返してやる。

・・・・何故姉が反応して睨んでくる。

 

 

「さて、それじゃあ俺達も行くぞ半蔵。お前達応援よろしくなー」

 

「承知!」

 

 

琢磨達に言って俺は半蔵を引き連れて先輩達の元へと向かう。

先輩達も歓声に戸惑った様子ながらも俺達に気づくと気を引き締めた顔つきになった。

 

 

「ここの学生達は一先ず置いておきましょう。二人とも準備はいいわね?」

 

「もちろんグリフォン先輩」

 

「準備万端でござる!」

 

「突然の変更とは言えやる事はそう変化は無い。相手の妨害を避けて点を取るのだ」

 

 

3年のグリフォン先輩、2年のトッキー先輩がそれぞれ確認を取る。

俺達の勇者グリフォンマスクの名を冠した投げが得意技なグリフォンネイル先輩、改めグリフォン先輩。

やたらと堅苦しい言葉を話し天然ボケなところがある凶器になりそうなポニーテールをしたトッキー先輩。

 

 

「美味しくご飯を食べるために頑張っちゃいますよー」

 

 

剣の腕は俺並みの癖に最近賞金首を始めたらしいハイゼン先輩。

何か電気を身体から出す特技があるらしいので感電池先輩と呼んだ事がある。

本人いわく可愛くないと怒られてしまったので仕方なくそのまま呼んでいる。

 

 

「うおおおぉっ!アタシの風雲拳を見てやるぜ!」

 

 

俺達と同じクラスの疾風、名前みたいな苗字のブーメランを使った格闘技が得意な奴だ。あと声がデカい。

と、まぁ以上が俺達のチームメンバーだ。

 

 

「お、相手チームのお出ましだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とにかく今は天野嬢の事は気にしない事にしたでござる。

さすがに天野嬢とは言えどもコートの中に乱入はしないと思いたいでござる。

 

 

「ん?知らない先生ばかりだな」

 

「しかし殿。いずれも手強い相手のようでござるよ」

 

 

教師方を殿が見渡した感想を漏らすも拙者からは強者特有の重圧に耐えていた。

先輩方も同様に自然と構える姿勢へとなる中、さすがは殿。平然としておられる。

拙者の知っている教師は体育教師の空手殿ぐらいしかいないでござる。

 

 

「あら?」

 

「どうしたんすかグリフォン先輩」

 

 

ふと、教師陣を見ていた殿がグリフォン先輩と呼んでいる謝華嬢が怪訝な表情を浮かべた。

見ているのは長髪を弁髪にしている顔色の悪い男性教師。と似た顔をしている同じく顔色の悪い裾の長い胴衣を着た男性教師

ふむ、体調が悪いのでござろうか?

 

 

「確か片方は今年入った新任の教師ね。もう一人は分からないけれど」

 

「ふむ。似た顔立ちということは親戚だろうか、いやそれよりも・・・」

 

「トッキー先輩も知り合いがいるのか?」

 

「知り合いと言うか・・・まぁ、そのようなもので構わない」

 

 

誰でござろう?

生憎と朱鷺宮嬢が視線を閉じて考え込んでしまったので分からぬでござる。

そうこうしている内に教師陣がそれぞれのコートに別れていく。

拙者達のコートにやってきたのは5人。

謝華嬢の言っていた顔色の悪い男教師が2名、赤い縁の眼鏡をかけた褐色肌の白衣を着た女教師。

額にVの字の傷のある眼鏡をかけた黒いコートを羽織った男教師。

そして緑色の軍服を着た初老の男性・・・む?

 

 

「あれは校長ではござらぬか?」

 

「あぁ、やっぱり出やがったな。悉く俺の邪魔をしやがって・・・」

 

 

殿の悪戯を防いでいたのはヨハン殿だけではなかったか。

ぬぅ、校長は入学式や全校集会でしか見た事が無かった故、盲点でござった。

 

 

「あれ?一人足りないですよー」

 

「本当だな。相手は5人で余裕っていいたいのか?」

 

「誰が相手だろうとアタシが一番だっ!!」

 

 

疾風嬢、すまぬがもう少し声量を落として欲しいでござる。

しかしハイゼン嬢や殿の言う通り一人足りぬ。

むむむ、これは挑発でござるな?

拙者達が勝てないと余裕の表れでござるな!?

 

 

「殿、これは拙者達舐められているに違いないでござるよ」

 

「そうだな。今に見ていやがれ、俺達が勝って鼻で笑ってやる!」

 

「何処をどう見たら5人に見えるんだ。八代、服部」

 

 

拙者達が憤っていると呆れた声が耳に入ったでござる。

声の方向に視線をやれば何と!

ヨハン殿がいるではござらんか。

 

 

「い、何時の間に・・・」

 

「私が気配を見落とす、だと?」

 

「わわっ、びっくりしました」

 

 

先輩方も今気づいたようで驚愕しているでござる。

それは拙者と殿、疾風嬢も同様。

相変わらず気配の読めぬ御仁でござる。

 

 

「八代。職員室の蛍光灯を全て換えた事について後で話がある」

 

「おいおい、善良な生徒を疑うのは教師としてはどうよ?」

 

「あんな事をするのはお前しかいないからな。全く、職員室を赤一色にしてどうするつもりだ」

 

「赤?俺が換えたのはピンク・・・はっ!」

 

「語るに落ちたな。嘘でごまかそうとした事も踏まえて覚えておくがいい」

 

「は、図ったな!?」

 

 

語るに落ちるのが速すぎでござるよ殿。

そして先ほどから重圧が増してきているのがひしひしと分かるでござる。

これは・・・校長からでござるか!

 

 

「学生の身分で我々に勝とうとは、感心しませんな。近頃の子供はやんちゃで困る」

 

 

ゾクリッ

 

 

投げかけられた言葉に思わず懐からクナイを取り出し構えてしまったでござる。

見れば他の者も同様で各々いつでも闘えるように構えておった。

 

 

「へっ、子供は昔からやんちゃって相場が決まっているんだよ」

 

「と、殿・・・」

 

「ふっ、それもそうだ。この後はティータイムなのでね、余り時間はかけたくない。始めるとしようか」

 

 

如何様な苦難にも笑って立ち向かっていく。

それでこそ拙者が忠誠を誓った殿でござる。

拙者も張り切ってクナイから棒手裏剣に持ち替えて先制すべく狙いを定める。

しかし殿は何故か異能の力を用いて本を取り出していたでござる。

 

 

「殿?間も無く試合が始まるでござるよ?」

 

「ん、あぁそうなんだが・・・あれ?どれに書いたっけな」

 

「何をしている八代。始まるぞ」

 

 

ピピーーーッ!

 

 

そうこうしている内に審判の試合開始を告げる笛の音が響き渡る。

しかし殿は複数ある本を取ってペラペラと捲っては投げ捨ててを繰り返す。

 

 

「無いぞ、トラップの場所を去年書いておいたはずなんだが・・・」

 

「・・・殿、その本は確か初期化されるとバティン嬢が言っていた気がするでござる」

 

「・・・・あ」

 

「隙だらけだな!」

 

 

パァンッ!

 

 

乾いた銃声と共に殿の本が打ち落とされる。

拙者はすぐに殿の前を陣取り手にした棒手裏剣を投擲。

しかし相手は恐ろしいまでの早撃ちで悉くを撃ち落す。

な、何と!この距離で全てを撃ち落すとは只者ではござらんな。

 

 

「うおおおおおぉっ!負けてられるかよぉぉっ!」

 

「八代早く立ちなさい!はぁっ!」

 

 

疾風嬢と謝華嬢が相手陣営へと攻撃を加える。

ソレを見て殿が即座に立ち上がり打ち上がったボールへとスパイクを叩き込んだでござる。

 

 

「おりゃあぁっ!半蔵やれ!」

 

「承知!」

 

 

殿の命を受けて懐から煙玉を相手陣営へと転がし手裏剣で打ち抜き破裂させる。

瞬く間に広がる煙に再度先輩方の奇襲攻撃が展開されたでござる。

 

 

「ふんっ!」

 

 

ゴウッ

 

 

ヨハン殿の声が聞こえたと同時に煙幕が一気に晴らされる。

くっ、これは気柱!?

 

 

「甘い」

 

 

ドドドドドッ!

 

 

さらには先輩方の攻撃も気柱の向こうから表れた校長の姿をした気の分身によって撃ち落される。

 

 

「消えろ」

 

 

「ぬおおぉっ!?何でござるか気持ち悪いでござる!?」

 

 

人の顔をした気弾?が拙者を狙ってきたでござる!?

何とか後方に飛び去り避けるが・・い、一体なんだったのでござろうか。

 

 

「そこか」

 

 

ピシュンッ!

 

 

「わわっ!」

 

 

ハイゼン嬢へと今度は光線が襲い掛かる。

しかし剣で何とか弾くも後退せざるを得ない様子。

そしていつの間にか高く飛び上がっていた・・・誰でござるか?

銀髪で褐色の肌をした布一枚を前面に張り付かせたような破廉恥な女性がスパイクをしているでござる。

後ろはマントで隠しているようでござるが裸も同然ではござらんか!?

 

 

「何て眼福、じゃなくてけしからん!」

 

「八代、お前を狙ってるぞ!」

 

「殿、見惚れている場合ではござらん!」

 

 

朱鷺宮嬢と拙者が声をかけると同時に殿に向けてボールと氷の矢が降り注ぐ!

こ、これはまずいでござる!

 

 

「殿っ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

うっわぁ、トラちゃん達もトンデモ無い先生達と当たっちゃったものね。

ハンゾーちゃんの煙幕が晴れた向こうには全員無事な姿の先生達。

一方で反対側は苦戦を強いられているトラちゃん達の姿があった。

最初の一手で躓いちゃったわね。これは厳しいかしら?

 

 

「わわっ!や、八代君の頭から血が!?」

 

「虎徹さん!?た、大変ですっ!」

 

「落ち着け結城さん、ディズィーさん。心配しなくても衛星砲の発射準備を急がせている」

 

「は、博士も落ち着いてくださいぃ。掠った事で裂傷を起こしているだけですぅ」

 

「全くあの程度で怪我とはニンゲンは何と脆い」

 

 

アスナちゃんにディズィーちゃんもそうだけどタクマちゃんも落ち着きなさい。

私が見込んだトラちゃんとハンゾーちゃんだもの。こんなところで死にはしないわよ。

・・・・大丈夫よね?あの先生達を見ていると若干不安が残るけど。

 

 

「リアス、わたくし・・・駒王学園をまだ侮っていたようですわ」

 

「朱乃!正気に戻って!お願い、私を一人にしないで!」

 

「ニンゲンの癖に中々やるデスネ」

 

 

何処か悟った表情をしている朱乃ちゃんの両肩を掴んで前後に揺さぶるリアスちゃん。

まぁ魔界で教わった人間界の常識なんて何十年も前のものだものね。

あと、デス様?デス様の基準でされると私達の立つ瀬が無いので止めてもらいたいわ。

私だって今のところレーティングゲーム無敗なんて記録があるけどあの先生達に勝てるとは到底思えないもの。

 

 

「うへぇ、悪魔の俺達よりも悪魔みたいな強さだな」

 

「僕もあの人たちのような強さを身に付けられるだろうか」

 

「祐斗先輩、アレを人と定義するのはニンゲンの方に失礼だと思います」

 

 

うん、それは私もそう思うわ小猫ちゃん。

と、言うかニンゲンじゃないのも混じっているみたいだしね。

あとライザー君。いたのね。

 

 

「くっ、これほどとは!」

 

「あんな攻撃避けられませんよー」

 

「まだだっ!まだアタシの風雲拳は破れちゃいない!」

 

「試合はまだ始まったばかり。諦めるには速いわよ」

 

「と、殿大丈夫でござるか!?このチョキ何本に見えるか分かるでござるか!?」

 

 

トラちゃん達のチームはまだやる気十分みたいね。

そして怪我しているトラちゃんよりも顔面蒼白なハンゾーちゃんの方がお姉さん心配だわ。

その心配されているトラちゃんだけど先ほどから俯いたまま動かないわね。

・・・これは、もしかすると

 

 

「タクマちゃん、準備をした方がいいかもね」

 

「既に虎徹の指示に合わせて指定場所のトラップを順次発動できるよう手段は整っています」

 

「うん、でもトラちゃんの事だからもっと楽しくしてくれるはずよ」

 

「・・・嫌な予感しかしないんですが」

 

 

そう言いつつも笑顔を浮かべるタクマちゃん。

トラちゃんのしでかす事に期待しているのが良く分かるわ。

タクマちゃんも私と同じくトラちゃんのする事に期待して近づいた一人だものね。

ふふふ、さぁトラちゃん。どんな事をしでかしてくれるのかしら?

 

 

「くくく、はっはっはっ!琢磨!学校中のトラップを全て発動だ!」

 

「・・・何?おい待て。それだとお前のいる場所にも」

 

「えーい知った事か!って言うか発動場所忘れたんだよ!何が何でも勝ってやる!」

 

 

高笑いをしながらタクマちゃんに指示を出すトラちゃん。

まさか自分で仕掛けた場所を忘れるなんてトラちゃんらしいわ。

でも笑顔を浮かべて叫んでいるところからしてまだ何か隠し玉があるみたいね。

 

 

「くくっ、仕方ないな。せいぜい自分で罠にかからないよう気をつけることだ」

 

 

そう言ってタクマちゃんが抱えていたノートパソコンで操作をしていく。

これで全ての仕掛けが作動したみたいね。

去年は私は卒業していたからどうなっているのか分からないけれど・・・どんな罠があるのかしら。

 

 

ちゅどーんっ

 

 

あら、早速発動したみたい。

でもそれは隣のコート、見ればシルヴィちゃんが空中に打ち上げられている。

あらら、災難ね。

 

 

「きゃあっ!こ、こんな事をするのはアンタね虎徹!」

 

「わははは!ざまぁ無いなシルト!」

 

「だから略すなっ!」

 

 

カチッ

 

 

「どわっ!?」

 

 

爆笑するトラちゃんが一歩下がった途端に右足がふとももまで地面へと埋もれる。

しかも片足だけと言う事で抜け出すのに苦労しているみたい。

 

 

「ぐぬぬぬっ!」

 

「全く、何をしているの貴方は・・・始めるわよ」

 

「ちょっ、まだ抜け出せてないんですけど!?」

 

 

トラちゃんの制止の言葉も待たずに試合を再開する先輩。

確か・・・レイミ先輩だったかしらね。

そして当然トラちゃんを狙おうとする銃を構えた先生。

額にV字の傷がある金髪の眼鏡をかけたのはヴァーミリオン先生ね。

 

 

「まずは一人・・・」

 

「今だ!無敵弓ガンタイダー!」

 

「私はロボか!まぁいいわ、任せなさい八代っち!それそれそれ!」

 

「ちっ」

 

 

観客の子達の中からヴァーミリオン先生へ目掛けて多数の弓が降りかかる。

それをちらっと見て横に飛んでかわす先生。

あれは・・・あやねちゃんじゃない。確かにここの卒業生だけど何故ここにいるのかしら?

よく見れば他にも駒王第二中学校の制服を着た卒業生が見える。

 

 

「さぁお前らゲーム開始だ!ルールは簡単、先生を倒した奴が勝ちだ!見事先生を倒した奴には賞品も出るぞ!」

 

 

トラちゃんの声に響き渡る歓声。

同時に無数の攻撃が先生達に注がれる。

あはは、さすがトラちゃん。勝負事となれば形振り構わないわね。

私もこれは予想しなかっただけに笑顔でトラちゃんへエールを送る。

 

 

「トラちゃん!言ったからには有言実行よ!」

 

「ういっす!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カオス、正にその一言に尽きるだろう。

試合が始まって結構経った。

あちこちから飛んでくる攻撃に教師チームは何とかかわしている。

俺達も何とか食らいついてはいる。

っつーかまだ一人も倒れないのもどうよ?

特に校長、カァンッと言う音と共に一瞬姿消えてね?

 

 

「いきますよー。それ、ブルーレイン!」

 

 

ちゅどーんっ

 

 

ハイゼン先輩がボールを打ち上げる。

と、同時に青く細長い雷を放ち更にもう一発とばかりに相手コートに青い光が張り付く。

それに続くように疾風も飛び上がりブーメランでボールを相手コートに叩き落す。

もう何でもありだな、ブーメラン。

 

 

「おりゃあああっ!」

 

「油断はしない」

 

 

ちゅどーーんっ

 

 

ロンゲの先生がこちらに背を向ける。

そんな隙だらけで何を・・・ってうおっ!?

何か幽霊みたいな人魂が出てきたぞ!?

人魂みたいなのが雷を弾きボールを打ち上げる。

おまけに周りからの攻撃も防いでいるみたいだ。

 

 

「図に乗るな」

 

「うおっ!?」

 

 

ちゅどーーーんっ

 

 

ロンゲの先生その2が青いレーザーを放ってきた。

それも前からと俺達の後ろからに幾重ものレーザーをだ。

その場に寝そべって何とか避ける。

あ、危ねぇ。あんなの食らったら一溜まりもねぇぞ。

 

 

「ふふっ、元気があってよろしい。八代虎徹、と言ったかしら?その生命の輝きもっと見せてみなさい」

 

「なにそれこわい」

 

 

ちゅどーーーーんっ

 

 

生命の輝きって・・・命をかけろって事か?

冗談じゃない、あんな塗れたタオルを前面に貼り付けたような痴女に命をかけれるか。

それにしても空中にいるのによくあれだけの攻撃を避けれるな。

今もすぐ横で赤頭巾のぶっといビームサーベルが通過したぞ。

 

 

「ぜぇぜぇ、しつこい教師達だな」

 

「それはこちらの台詞だがね。その勝利に貪欲な点は評価しよう」

 

「あっそ。はぁはぁ、じゃあさっさと俺達に勝ちを譲れ・・・って言うかカァンカァンうるせぇよっ!」

 

 

ちゅどーーーーーんっ!

 

 

俺の愚痴に返す校長。

しかし先ほどから甲高い音と共に点滅しながら返答するんで気になって仕方が無い。

って今度はガラの悪いメガネ教師が銃を向けてきた!?

 

 

キィンッ!

 

 

「そう何度も殿は狙わせぬでござる!」

 

「た、助かったぜ半蔵」

 

 

ちゅどーーーーーーんっ!!

 

 

銃を向けたと同時に銃弾を弾く音が聞こえて半蔵が叫ぶ。

い、命拾いした・・・あの先生の銃弾速過ぎで見えねーよ。

・・・それはそれとしてだ。

 

 

「さっきからうるせぇなぁ!」

 

「あんたの仕掛けた罠のせいでしょうがあぁっ!」

 

「きゃあぁっ!」

 

 

さっきから何の音かと思えば隣のコートからだった。

今度はガーネットとウィンドが吹き飛ばされていた。

あー、そういえばあの辺りは地雷地帯にしたんだっけ?

卒業式で随分使ったと思ったがまだ残っていたとは。

ガーネット達の相手の教師陣も吹き飛ばされたりしているが・・・まぁいいか。

 

 

「ほんっとうに後で覚えておきなさいよ虎徹!」

 

「よし、ガーネットから逃げるためにもさっさと勝つぞ」

 

「承知!」

 

「随分勝つ理由が弱気になって来たな」

 

 

トッキー先輩のツッコミを華麗にスルーしておく。

点数を確認すればデュース。ここから2連続で点を取ったチームの勝ちとなる。

相手も段々と周囲の攻撃に慣れてきている、と言うよりも周囲が疲れてきている。

さすがに長い間攻撃ばかりしていると疲れるか。

だがおかげで勝機が見えてきたぜ。誰も先生を倒していないから賞品を出す必要も無い。

 

 

「ほら八代、ボールが来たわよ。ぼーっとしているとグリフォンネイルかけるわよ!」

 

「おおっと、そいつは簡便だ、なっと!」

 

 

バシィッ!

 

 

ラインギリギリのところを狙って放たれたスパイクを横っ飛びで食らいつく。

ふわりと上空に浮き上がったボールをハイゼン先輩が更に高くトスをする。

 

 

「頼みましたよー」

 

「うむ、任せるがいい」

 

 

トッキー先輩が男前に頷いて飛翔する。

何もない空中を踏みつけてさらに舞い上がる。

同じクラスの愛乃とか錨娘もやっていたがアレ、どうやってるんだろうか。

 

 

「オン・アヴィラ・ウンケン・・・アヌトゥパーダ!」

 

 

キィンッ

 

 

「・・・はっ!?」

 

 

トッキー先輩が何か呟いたかと思った瞬間にはボールが相手コートの地面に落ちていた。

点を取って喜ぶ前に言っておくッ!俺は今トッキー先輩の能力をほんのちょっぴりだが体験した。

い・・・いや・・・体験したというよりはまったく理解を超えていたのだが・・・

あ・・・ありのまま今起こった事を話すぜ!

 

 

「俺はトッキー先輩を見上げていたと思ったらいつのまにかボールが落ちていた」

 

 

な・・・何を言っているのかわからねーと思うが俺も何をされたのかわからなかった。

頭がどうにかなりそうだった・・・

催眠術とか超スピードだとかそんなチャチなもんじゃあ断じてねぇ。

もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ・・・

 

 

「殿、何を言っているでござるか?」

 

「いや、正直俺もよく分かってない」

 

 

何故か言わなくちゃいけない気分になったが周囲の歓声で我を取り戻す。

とにかくこれで後1点取れば俺達の勝ちだ。

 

 

「朱鷺宮神依、そういえば時のアルカナと契約していましたね」

 

 

あ、あるかな?

よくわかんねぇがトッキー先輩が何かしたんだろう。

 

 

「とにかく後1点だ」

 

「えぇ、この調子で行くわよ」

 

「がんばりましょー」

 

 

意気込む俺達に比べて教師チームは相変わらずのようだった。

瞬間移動をして攻撃をかわす教師もいればバリアみたいなので身を守る先生もいる。

・・・っつーか銃弾を防御で耐えるなんて真似できねーよ。

 

 

「いくでござるよ!」

 

 

半蔵のサーブに即座に反応したのは宙に浮いている痴女が反応する。

しかし甘い!罠の位置は全ては覚えてないとはいえ少しは把握しているさ!

 

 

「ネコ、やっちまえ!」

 

 

飛び道具を持っていないため屋上に待機させていたネコへと合図を送る。

すると屋上から何かが射出されるのが見えた。

当然、痴女先生はそれを防ごうと周囲に浮いているクリスタルに身を守らせようとするが・・・

 

 

パァンッ

 

 

「きゃっ!こ、これは!?」

 

 

クリスタルに当たると同時に破裂し周囲にトリモチをぶちまける。

大量の取り持ちを頭から被り地面に落下していく。

・・・白いトリモチがまとわりついているのを見ると益々エロく見えるな、さすが痴女。

 

 

「くっ、埒が明かない。まずは周囲を止める!」

 

「私も力を貸そう」

 

 

ヨハン先生が何か巨大なコンタクトレンズみたいなのを左右に向けて飛ばす。

たまらず左右にいた学生達は避ける。

続けてロンゲ先生その2が両手をだらりと下げたかと思うと紫色の雷の柱が周囲に降り注ぐ。

うげっ、そんなのアリかよ!?

 

 

「そらっ」

 

 

その間にロンゲ先生その1がボールを拾う。

校長が分身を使って高く打ち上げる。

・・・分身を使う意味があったのか?

 

 

「死ねぇッ!!」

 

 

飛び上がったガラの悪いメガネ教師がボールをこちらに叩きつけると同時に銃を撃ってきた。

しかしそれは今までの銃弾とは違い・・・レーザー!?アンタもか!?

 

 

「させぬっ!ぐぅっ!」

 

 

トッキー先輩が上空からのレーザーを防ぐ。

グリフォン先輩がすぐさまボールを拾い疾風が思いっきり高くボールを上げた。

・・・って高すぎだろ!?こうなれば・・・

 

 

「半蔵!」

 

「承知!」

 

 

声をかければ直ぐに返事をしてネット際に寄り俺に向けて屈む半蔵。

その半蔵目掛けて走り出す。

 

 

「頼んだでござるよ殿ぉっ!」

 

 

半蔵の組んだ腕を足場にする。

半蔵を思いっきり腕を振り上げると同時に俺は跳躍する。

ボールに追いつき相手コートを確認するがヨハン先生とロンゲの先生、校長が既に動き出せる状態だ。

くっ、どこかに隙は無いか!?

 

 

「虎徹君、アレを狙ってくださいー!」

 

 

ハイゼン先輩の言葉にすぐに校長目掛けてスパイクを放つ。

あのやたらと目立つワープをやめてどっしりと迎え撃つ姿勢の校長。

そしてボールと校長の距離が近づいたその時、校長の足元から青い光が纏わりつく。

 

 

「むっ、これは・・・」

 

 

それはハイゼン先輩が放った青い光。

なるほど、トラップってわけだなっ!

となれば校長も今はワープができない・・・

 

 

「ちゃーんすっ!くたばれ校長!主に俺の愉快な学園生活のために!」

 

 

能力を使い本を取り出すと校長に向けて数冊投げつける。

下にいる半蔵たちも好機と見たのか攻撃を開始した。

 

 

「む・・・ふむ、どうやら熱くなりすぎたようだ」

 

 

何か構えを見せた校長だったが息を吐く。

ふっ、どうやら諦めたみたいだな。これで俺達の・・・

 

 

「だが、教師に暴言を吐く生徒にはおしおきが必要ですな」

 

 

アレ?目の前に落ちていくボールに目もくれず俺を注視する校長。

・・・空中で身動きのできない俺、何かすっげー嫌な予感がするんだが。

 

 

「ふんっ!」

 

 

ボールが地面に着いたのを確認したと同時に校長の分身があっという間に俺の目の前まで迫っていた。

ちょっ!何で俺だけ!?って言うか・・・

 

 

「大人げないぞこんちくしょーー!!ぶべらっ!?」

 

 

まるでトラックに轢かれたような衝撃を受けて俺の意識は暗転していった。

 

 

 




天野夕麻はとある一部で分かるとは思いますがレイナーレとは異なる別人です。


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