超次元ゲイムネプテューヌ 夢のヒーローを目指して   作:ホタチ丸

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はい、皆さんこんばんわ!
皆さんはノワルンの活躍を期待していたかと思いますが、今回はそんなに登場しなかったよ。
それでは、 浸食 はじまります


浸食

「……それで、集まったのはこれっぽっちなわけ?」

 

 玉座と言ってもいいほど立派な椅子に座っているフィーナは頬づえをつきながら自分の手のひらに乗せられている女神の卵の欠片を見ていた。

 

 手のひらに乗せられている欠片は8つ。

 

 欠片自体小さく、どこに散らばったのかすらわからない状況で、一週間の内に集めてきた数としては充分であるかもしれない。

 

 しかし、フィーナの顔には不満がありありと見てとれた。

 

「私があなた達に欠片を探すように命じて一週間……それでこれっぽっちしか集まらなかったわけ?」

 

「そ、そうは言いますが、何分小さくてどこにあるのかもわからない代物なわけで……」

 

「言い訳はいいのよ。そんなことする暇があったら、さっさとまた探しに行きなさいよ」

 

 集めてきた1人、トリックの言い分を無視して、フィーナはさらに欠片を集めて来いと命じた。

 

 しかし、トリックを含めた集められた人物達はフィーナの命令に不満を感じていた。

 

 その表情を読み取り、フィーナは自分の命令を聞かない、彼女いわくお人形さん達にため息をついてしまう。

 

「なに、オバサン? 言いたいことがあるなら言えばいいじゃない?」

 

 特に自分を今すぐにでも射殺さんとばかりに、きつく睨みつけてくるマジックの姿にフィーナは呆れてしまった。

 

「まったく、あなた達はもう私のお人形さんなんだから、ちゃんと命令を聞きなさいよね」

 

「……貴様の人形になった覚えなど……っ!?」

 

「や、やめい!? し、失礼しました、フィーナ様!?」

 

 マジックが我慢の限界に来て、今にも鎌を取り出してフィーナに斬りかかろうとした時、隣にいたトリックが慌ててマジックを押さえた。

 

 マジックは悔しそうに顔を歪め、トリックの拘束を振り解こうとする姿を見て、フィーナは口の端を吊り上げて面白いものを見たと笑みを浮かべた。

 

「ぺろぺろちゃんはわかってるわね。あなた達のご主人様が誰なのかを」

 

「そ、それはもちろんフィーナ様です!? では、これにて失礼させていただきます!?」

 

「離せ、トリック!! 私は!!」

 

「暴れるでないわ!! し、失礼しました!?」

 

 そう言って、トリックは暴れるマジックを連れて部屋の外へと出て行ってしまった。

 

 その姿をにやけながら眺めていたフィーナに、残っていた人物の内の1人、ブレイブが尋ねた。

 

「……聞いてもよろしいでしょうか?」

 

「うん? なにかな?」

 

「何故俺達を利用しているのでしょうか?」

 

 ブレイブには理解できなかった。

 

 フィーナが女神の卵の欠片を集める理由は、彼女が『再誕』の女神であるからだ。

 

 元々彼女の体の一部であった欠片を集めることは不思議に思わない。

 

 むしろ、当然のことであろう。

 

 しかし、何故自分達マジェコンヌを利用しているのかがわからない。

 

 普通に考えれば、女神と敵対している自分達を利用することにメリットなんて存在しないはずだ。

 

 彼女は女神なのだ、ならばなぜ勇者達に味方しないのだろうか。

 

「教えて欲しいのかしら?」

 

「……できれば、知りたいと思います」

 

「謙虚ね。いいわ、特別に教えてあげる」

 

 フィーナは手のひらに乗せられていた欠片の1つを手に取り、指先で弄りながら目を細めた。

 

「これが私の体の一部ってことはもう知ってるわよね? これを吸収すれば、私はそれだけ力を増すことができる」

 

 フィーナは話の途中で、指で弄っていた欠片を無造作に口の中に放り込んだ。

 

 味わうかのように口を動かし、その顔を綻ばせた。

 

「……んっ、でもね、それ以外にも理由があるのよ。それがあなた達を利用する理由ね」

 

「……それはいったい?」

 

 ブレイブの問いにフィーナは満面の笑顔で、まるで当然であるかのように胸を張って応えた。

 

「このゲイムギョウ界を救うためよ」

 

 

*     *     *

 

 

 ……夢なら早く覚めて欲しい。

 

 きっとお姉ちゃん達を助けたことと、夢人が帰ってきたことで疲れがどっと出たのであろう。

 

 まったく、なんでこんなに現実感のある夢見てるのかしら?

 

 こんな夢見るくらいなら、もっと幸せな夢を見たかったなあ。

 

 しかし、アタシが現実逃避をしている間も、目の前には夢にしてしまいたい現実が広がっていた。

 

「ユニ? 急に叫んでどうし……」

 

 アタシの叫びを聞いてきたらしいケイがお姉ちゃんの執務室を見て固まってしまった。

 

 当然だろう。

 

 それ程直視したくない現実が目の前に存在しているんだから……

 

「2人とも、そんなところでなにしてるの?」

 

「それはこちらのセリフだよ……なにをしているんだい、ノワール」

 

 お姉ちゃんが心配そうに眉根を下げてアタシ達に尋ねてきたけど、アタシが尋ね返したい。

 

 お姉ちゃん、いったい何があったの!?

 

「なにを言ってるの? 今の私は愛と正義のマジカルヴィーナス、ノワルンよ。ケイちゃん」

 

「ノワ!? ケイちゃん!?」

 

 お姉ちゃんがケイのことをちゃんづけで呼んだ!?

 

 おかしな格好だけなら、まだしも自分のことをノワルンだなんて言ってるし!?

 

「お姉ちゃん!? いったいどうしたの!?」

 

「私はいつも通りよ、ユニちゃん。むしろ、調子がいいくらいだわ」

 

 わ、私のこともちゃんづけで呼んだし……

 

 いつも通りなわけないじゃない!?

 

 本当にどうしちゃったの!?

 

「ユニお姉さん、何が……」

 

「叫び声が外まで聞こえ……」

 

「あら? フェル君とファルちゃんも来たのね」

 

 ……ああ、フェルは君付けで、ファルコムはファルちゃんなんだ。

 

 2人ともアタシの叫び声を聞いて、駆けつけてくれたのだろうけど、やはりアタシ達と同じように固まってしまってる。

 

「こ、これは……」

 

「ケイさん、ノワールにいったい何があったんですか」

 

「僕にもどうしてこうなったのか……」

 

 アタシはお姉ちゃんがどうして変になっちゃったのかを考えた。

 

 少し前に、アタシがこの部屋を訪れた時はちょっと挙動不審だったが、概ねいつも通りだった。

 

 アタシがいなくなってから、わずか数分でお姉ちゃんはおかしくなった。

 

 あの時のことを思いだすと、1つだけ気になることがあったことに気付いた。

 

 あの時のコーヒー!!

 

 アタシにはコーヒーだと言った謎の黒い飲み物、あれが原因かもしれない!!

 

 アタシは部屋を見渡してカップを探した。

 

 それが床に空っぽの状態で転がっているのを見つけた。

 

 アタシはカップを拾い上げ、未だに混乱している3人に見せた。

 

「これが原因かもしれない」

 

「カップ? それになにが入っていたんだい?」

 

「……中身はわからないけど、すごく黒くて怪しい液体が入ってたの」

 

 今の状況だと、手掛かりはこれしかないが、いったいこれには何が入っていたんだろう。

 

 確か、お姉ちゃんはネプテューヌさんから……!?

 

「ネプテューヌさん!! ネプテューヌさんからもらったコーヒーだってお姉ちゃんが言ってた!!」

 

「……なら、彼女に聞いてみるしかないね」

 

 アタシ達は全てを知っているであろうネプテューヌさんを頼るしかない。

 

 お願いします! どうかお姉ちゃんを元に戻す方法を……

 

「もう私を無視しないでよ、ぷんぷん」

 

 いつもはしないような仕草、両手を顔の近くで軽く握って唇を尖らせているお姉ちゃんを見て、アタシは切に願った。

 

 

*     *     *

 

 

「……いい? 今回は無事に帰ってきたから許してあげるけど、次はないわよ。今度ナナハを悲しませたら、本気であなたをリーンボックスの電力の一部にしてやるわ。わかった?」

 

「い、イエス、マム」

 

 リーンボックスの教会に到着して早々、夢人はチカに首を絞めあげられていた。

 

「なら、いいわ。付いてきなさい。ワンダーのいる場所まで案内するわ」

 

「けほっ、けほっ」

 

「ゆっくん、大丈夫?」

 

「だ、大丈夫、じゃないかも」

 

 チカは夢人の返事を聞いて満足したのか、すぐに彼を解放して、1人だけ先に歩いて行ってしまった。

 

 苦しそうにその場で呼吸を整えようとしていた夢人を心配そうにネプテューヌは背中をなでてあげていた。

 

 そんな2人をアイエフは呆れた目で見ていた。

 

「夢人の方は自業自得でしょ、心配かけたのは事実なんだから。そして、なんでネプ子まで付いてきてんのよ? アンタ仕事はどうしたのよ?」

 

「……な、何のことかなあ~? わ、わたし、わかんないや」

 

「……後で覚えておきなさいよ」

 

「……はい」

 

 ネプテューヌが夢人達に付いてきた理由は、書類仕事から逃げ出してきたからである。

 

 実はプラネテューヌの教会で彼女がイストワ―ルと一緒にいた理由は、書類仕事をさぼろうとした彼女へのお説教の真っ最中であったのだ。

 

 いつ帰ってくるかわからない夢人達との擦れ違いを防ぐため、イストワ―ルは教会の入り口付近でお説教をしていたのである。

 

 そして、夢人達がリーンボックスに行くと聞いて、ネプテューヌは慌てて夢人とアイエフの手を引いて教会を抜けだしたのであった。

 

 全ては、自分が仕事とお説教を回避するために。

 

「でもでも、わたし苦手なんだよね、こうジッとしているより体動かしてた方が性に合ってるって言うか」

 

「言い訳しないの。今更帰れとは言わないけど、帰ったらちゃんと仕事しなさいよね」

 

「……うー、優しさがもう一声欲しいよぉ」

 

 ネプテューヌは帰ってから自分を待つであろう、仕事とイストワ―ルに加えてアイエフからのお説教のことを考えて顔をしかめた。

 

 もしかしたら、ネプギアとコンパまでそのお説教に加わるかもしれないと考えると、余計に憂鬱になる彼女であった。

 

「いつまで話してるのよ、さっさと付いてきなさい」

 

「すみません、今行きます。ほら、行くわよ」

 

「……は~い、行こう、ゆっくん」

 

「……おう」

 

 夢人は気分が悪いのか、少しだけ顔を青くして短く返事をした。

 

 そして、2名ほど暗い顔をしていたが、4人はワンダーがいる場所へと向かっていった。

 

 

*     *     *

 

 

 ワンダーがいる場所、それは教会の近くに設立されていた研究施設である。

 

 ここはワンダーだけでなく、シェアエナジー増幅装置を開発した施設でもある。

 

 チカの案内によって、夢人達はワンダーがいる部屋に案内された。

 

〔久しぶりだな、夢人〕

 

「ああ、ようやく完成したんだってな」

 

 夢人はワンダーの車体に触れながら再会の喜びに口元を緩めた。

 

「ねえねえ、君がワンダー?」

 

〔その通りだ、プラネテューヌの女神よ〕

 

「ネプテューヌでいいよ。わたしもワンちゃんって呼ぶから」

 

〔わ、ワンちゃん!?〕

 

 夢人の横から興味津津な様子で眺めていたネプテューヌだったが、我慢しきれなくなったのか、夢人と同じようにワンダーの車体に触れながら笑顔で言った。

 

 まさか自分がワンちゃんなんて呼ばれるとは思わなかったワンダーはネプテューヌの言葉に慌ててしまった。

 

〔す、すまないが、それはやめてくれないだろうか〕

 

「えー、いいでしょ、ワンちゃん。可愛くていいと思うんだけどな」

 

「……俺もそれはやめて欲しい。ワンちゃんて聞くだけで、ちょっとトラウマが発動しそうになる」

 

 ワンちゃんって言葉から犬を連想した夢人は顔を手で覆いながらネプテューヌに訴えた。

 

 それでも、彼女は納得がいかなそうに唇を尖らせて勢いよく右手を振り上げた。

 

「むー、じゃあ、多数決! ワンちゃんがいいと思う人!」

 

「わたしもワンちゃんがいい!!」

 

「アカリ!? 急に出てくるなよ!?」

 

 ネプテューヌの言葉に反応して、夢人の体からアカリが飛び出してきた。

 

 急に現れた彼女に驚きながらも、夢人は何とか落とさないようにしっかりと抱くことに成功した。

 

 その本人はと言うと、ネプテューヌの案に賛成を表すようにとびっきりの笑顔で右手を上げていた。

 

「はい、アカリちゃんとわたしで2人! 後は……」

 

「そんな目で見ても、手なんて上げないわよ」

 

「あいちゃんのケチ! じゃあ、チカさんは……」

 

「アタクシもそんな犬みたいな名前は嫌よ」

 

「ガガーン、まさかの2対3で、ワンちゃん却下」

 

 アイエフとチカも自分の案に賛成してくれなかったことで、ネプテューヌは落ち込むように擬音と共に残念そうな顔で俯いてしまった。

 

 ワンダーはその様子を見て、ほっとしてしまった。

 

 彼もそんな犬ような名前で呼ばれるのは勘弁願いたいと思っていたからである。

 

「……まあ、そんなどうでもいいことはほっといて、夢人には説明しとくわね」

 

「どうでもいいことじゃないよ!? ニックネームは大事なんだよ!? 絆と絆の証なんだから!?」

 

「ワンダーは確かに完成したわ。でも、注意してもらいたいことがあるの」

 

「こっちでも無視された!?」

 

 チカはネプテューヌの相手をしていては、一向に説明できないと判断して夢人にワンダーの説明を始めた。

 

「以前は冷却装置の問題で、10分間しかアーマーモードになれなかったけど、何とか3倍の30分に伸ばすことに成功したわ」

 

「……時間制限ありは変わらないんですか」

 

「そのことについては申し訳ないけど、こればっかりは無理なのよ。いくら丈夫な装甲や高濃度のエネルギーがあっても、支える骨組みが耐えられないの」

 

 これはワンダーが高性能すぎるが故の欠陥である。

 

 アーマーモードは確かに強力だが、その分ワンダー自身にも負荷がかかる。

 

「本当なら、キラーマシンを溶かして作った金属で全部造ってあげたかったんだけど、さすがに全部は無理だったのよね。どうしても外部装甲に優先して使ったら、他の場所は既存の金属でつくるしかないわけ。パーツの耐久度を考えると、どうしても30分が限界なのよ。加えて、1度使ったら6時間は再使用ができないわ」

 

「……30分、それに6時間か」

 

「一応、限界時間になったら強制的にモードを解除するようにプログラムは入れてあるわ。でも、そんなの無意味かもしれないけどね」

 

 チカはギョウカイ墓場で限界以上にアーマーモードを使った夢人の姿を思いだして苦笑した。

 

 今回組み込んだプログラムも、ワンダーの側で意識すれば解除できるものである。

 

 無茶をするであろう夢人とそれに付き合うワンダーは、プログラムを解除してしまうかもしれない。

 

「まあ、これだけは覚えておきなさい。あなたが無茶をして悲しむ人がいるのを無視してまで、無茶をする覚悟があるのだったらね」

 

「うっ、それを言われると辛い」

 

「だったら、ちゃんと制限時間を守りなさい。アタクシだって、もうあなたに無茶をして欲しくないんですから」

 

 無理やり抑え込むよりも、誰かが悲しむと言った方が夢人に有効だと考えたチカの考えに夢人は気まずそうに視線をさまよわせた。

 

 無茶をしようとした証拠である。

 

「まったく、そんなに電力になりたいのかしら?」

 

「い、いいえ、そんなことは……」

 

「わかってるわよ。そんなことしたら、アタクシがナナハを悲しませちゃうからね」

 

 チカもナナハが夢人のことを本気で好きなことは知っている。

 

 だからこそ、夢人が無茶をして、ナナハが悲しい思いをしないようにくぎを刺しておく必要があったのだ。

 

 もちろん、夢人本人のことも大事なのは当然である。

 

 彼がいたからベール達が帰ってくることができたのだから。

 

「後の詳しいことはワンダー本人に聞きなさい。仕様書の方も渡しておくし、何かあれば連絡を入れてちょうだい」

 

「ありがとうございます、チカさん」

 

 夢人が柔らかくほほ笑むのを見て、側で見守っていたアイエフも安堵した。

 

 夢人のことだから無茶をするかもしれないと考えていたが、どうやらその心配はなさそうだとわかったからである。

 

 それは、彼女も夢人が無茶をして悲しむ人の1人だからである。

 

「でも、本当に苦労したわよ。なにせアーマーモードなんて、本来のワンダーには搭載してなかったんだから」

 

「そうなんですか?」

 

「ええ、そうよ。ラステイションの教祖からもらった設計図には、アーマーモードなんて最初はなかったのよ。元々ユピテルの連中が使った擬似プロセッサユニットとジャッジ・ザ・ハードが残していったパワードスーツのデータで造ったモードだから」

 

「そうだったんですか」

 

 夢人はアーマーモードの開発秘話に驚いてしまった。

 

 まさか自分が関わった事件がきっかけで生まれることになったとは思わなかったのである。

 

「ええ、本来のワンダーは……」

 

 チカが説明しようとした時、ネプテューヌのポケットから電子音が響いてきた。

 

 説明を中断させられてしまったチカは、慌ててポケットからNギアを取り出して愛想笑いをするネプテューヌをジト目で見つめため息をついた。

 

「あ、アハハ、だ、誰なんだろうな? はいはい、もしもーし?」

 

〔ネプテューヌさんですか!?〕

 

「ねぷっ!? 声が大きいよ!? えっと、ユニちゃん、どうしたの?」

 

 突然大声で自分に呼びかけるユニに驚いてしまい、そんなに慌ててどうしたのかとネプテューヌは尋ねた。

 

〔お姉ちゃんが大変なんです!! ネプテューヌさんからもらったって言っていたコーヒーを飲んで、おかしくなっちゃったんです!!〕

 

「コーヒー? わたし、そんなの渡した覚えないよ?」

 

〔で、でも、お姉ちゃんが言ってたんです!! ネプテューヌさんからもらったって!!〕

 

 ネプテューヌはノワールに渡したものを考えた。

 

 自分はコーヒーなんて渡していない。

 

 渡したのは、素直になれるようにがすとからもらった……

 

「も、もしかして、黒い錠剤?」

 

〔え、えっと、お姉ちゃんが全部お湯に溶かしちゃったからわからないですけど、お湯が黒かったから多分それだと思います。すぐ側で空の瓶も持っていましたから〕

 

「……え? 空っぽ? もしかして、全部飲んじゃった?」

 

 ネプテューヌは背中に冷たい汗が流れたのを感じた。

 

 背中だけじゃない、額からも冷や汗が流れている。

 

〔そうです!! 何でもいいからお姉ちゃんを助けてください!! ネプテューヌさんだけが頼りなんです!!〕

 

「わ、わかったよ。すぐに行くね」

 

〔急いでくだ……お姉ちゃん!? なにしてるの!?〕

 

〔決まってるでしょ? ユニちゃんもおそろいのマジカルスーツに着替えてもらうために準備してるのよ〕

 

〔や、やめてー!?〕

 

 ユニの叫びと共に通信が切れ、夢人達にも何とも言えない重い空気が漂った。

 

 いったいノワールになにがあったのか。

 

「……ネプ子、アンタなにを渡したのよ?」

 

「……え、えっとね、ノワールに素直になってもらうようにがすとからもらったB.H.C.を渡したんだけど」

 

「アンタ何してんのよ!?」

 

「そうだ!? なんてもんを渡してるんだよ!?」

 

 B.H.C.の恐怖を知っている2人はネプテューヌの言葉と、ユニの通信によって大体の事情を把握した。

 

 きっとノワールはB.H.C.を飲んでしまって、黒歴史が発動してしまっているのだと。

 

「とりあえず、ラステイションに向かうぞ。どうにもさっきの様子だと、普通の黒歴史じゃなさそうだしな」

 

「そうね、早く向かいましょう」

 

「……本当なら、ナナハに会っていってもらいたかったんだけど、仕方ないわね」

 

〔早速私の出番と言わけだな〕

 

「パパ、いそごう!!」

 

 夢人達は状況を確認するためにも、いそいでラステイションへと向かった。

 

「よし、皆行くよ!! わたし達の手で必ずノワールを助け……」

 

「アンタが言うんじゃないわよ!!」

 

「ねぷっ!?」

 

 自分が原因であるにもかかわらず、まったく反省した様子の見えないネプテューヌにアイエフの拳が振り下ろされたのであった。

 

 

*     *     *

 

 

「ゲイムギョウ界を……救う、ですか」

 

 ブレイブはフィーナから出た言葉に驚きを隠せない。

 

 どうして欠片を集めることが、ゲイムギョウ界を救うことにつながるのであろうか。

 

 欠片を集めるだけなら、わざわざ自分達を利用する必要なんてないはずなのに。

 

「その顔じゃ、納得してないみたいね」

 

「い、いえ、そんなことは……」

 

「いいわよ、別に理解する必要なんてないわ。あなた達はただ欠片を集めてくればいいの。それだけで、このゲイムギョウ界を救うことになるんだから」

 

 フィーナはブレイブが自分の考えを理解しようとしまいと関係ない。

 

 ただ欠片を早く集めることが重要なのである。

 

 それでも自分の言葉に悩んでいるブレイブを見て、フィーナはスナック菓子を食べるように欠片を口に放り込み、少しだけ説明することを決めた。

 

「例えばね、白い部分に不自然な紫色があったら、どう思う?」

 

「……どういう意味でしょうか?」

 

「もうわっかんないかな? そんなものがあったら、白の部分が目立たなくなっちゃうでしょ」

 

 フィーナは口元を緩め、欠片を指で宙に弾き上げた。

 

「……そして、誰も白には目を向けなくなってしまう。後に残るのは不自然な紫色だけよ」

 

 弾き上げられた欠片を自然とフィーナの口へと吸い込まれるように落ちていった。

 

 ……その欠片はわずかに紫色の光を放っていた。




という訳で、今回はここまで!
次回からノワルンが本領発揮する予定です。
作品タイトルが変わらないよう、夢人君には頑張ってもらわないと。
それでは、 次回 「なりきり」 をお楽しみに!

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