超次元ゲイムネプテューヌ 夢のヒーローを目指して 作:ホタチ丸
今日から新章突入!
気分も新しく、頑張って行きますね!
それでは、 魔法少女? 現る はじまります
魔法少女? 現る
「喰らえ、フレイム!!」
俺は手のひらに炎の球体を造り出し、目の前のモンスターに投げつけた。
モンスターは自身に迫っている炎の球体を避けることはしない。
いや、正確にはできないでいた。
モンスターの反応スピードよりも早い炎の球体は吸い込まれるようにモンスターへと炸裂した。
よし、これなら!
俺は自分の魔法が当たった手ごたえをしっかりと感じた。
この前のリュウオウとか言うドラゴンは、きっと炎に耐性があったに違いない。
だが、今目の前にいたモンスターは明らかに火に弱いはずだ。
きっと一撃で倒して……
「ぬら~?」
……倒せていませんでしたよ。
フレイムが直撃したはずのスライヌは何が起こったのかわからないと言った表情で俺を見上げてくる。
その顔は、今何かした? とでも言いたげであり、すごくバカにされた気分になった。
「ちくしょう!! 喰らえ、喰らえ、喰らえ!!」
さすがに俺もスライヌにバカにされているのに腹が立ち、何発もフレイムをスライヌに放った。
その様はきっと遠目から見れば、ギョウカイ墓場でレイヴィスが俺に何発もフレイムを放っていた光景にそっくりであっただろう。
何が言いたいのかと言うと……
「ぬら?」
……喰らってる本人はまったく応えていないですよ。
なんでだよ!?
前にリーンボックスでスライヌを燃やし尽くしたことがあるのに!?
あの時はネプギアを守るために無我夢中で魔法を使ったが、確かにスライヌは倒した。
でも、なんで今度はダメなんだよ!?
あれか!? あれは奇跡だとでも言う気なのか!?
それか、愛の力とでも言う気なのか!?
「ぬううぅぅぅ、らあああぁぁぁ!!」
「ぐえっつ!?」
スライヌはフレイムを喰らいながらも、俺に向かって勢いよく跳び込んできた。
その青いぷるぷるボディが俺の顔面に炸裂したところで、俺の意識は闇へと沈んでしまった。
……また黒星かよ。
* * *
「……アンタは本当に成長しないわね。なんでスライヌに勝てないのよ」
「……面目ない」
バーチャフォレスト、そこでは先ほどスライヌにやられて転がっていた夢人をアイエフが呆れながら治療していた。
パーティーが終了した後、各国の女神達やメーカーキャラ達はそれぞれの国でアカリの欠片を探している。
その日から一週間、プラネテューヌに残った夢人は魔法の練習をしていたのだ。
「でも、本当におかしいわね? 私が見た限りだと、魔法の術式にも何の問題もなく発動しているのに、なんでスライヌも倒せないのかしら?」
理由は、夢人の魔法である。
この世界に帰ってきた夢人は、今まで失敗してばかりいた魔法を成功させることが可能になっていた。
それは、アカリが生まれたからである。
今までは女神の卵の中で魔法が発動していたため、その発動範囲が限定されていたのである。
体から一定範囲内の距離でしか発動することができなかったのである。
それがアカリが目覚めたことにより、アカリの魔力を使って魔法を使う夢人も自身で魔法を発動させることができるようになった。
今までは夢人が女神の卵にイメージを送ることで魔法をアカリが発動させていたのだが、今は夢人がイメージすることでアカリの魔力を使って夢人自身が発動することが可能である……はずだった。
しかし、現実は成功することができた正統派魔法、自分を傷つけないで発動する魔法の威力が皆無であった。
威力も何もない、すっからかんの見せかけ魔法しか発動することができないでいた。
このままでは戦う手段がなくなってしまうと考えた夢人は、連日バーチャフォレストで魔法の練習をしていたのだが、成果を上げることはできずにいた。
「失敗魔法の時は倒せたんだよな。本当、どうして威力がないんだよ」
「考えられるのは、やっぱりアンタに魔法の才能がなかったってこと。もしくは、アカリのせいかもね」
「アカリの?」
「そう、体の中にアカリって言う別の存在がいるのよ。そのせいで魔法が上手くイメージできていないんじゃないかしら?」
体の中に別の意識があることにより、魔法のイメージにノイズが走っているのではないかと推測した。
「……うーん、でも、ロムとラムは合体しても普通に魔法を使えてたぞ? しかも、違う魔法を同時に発動することもできてたし……」
「あの子達とアンタを一緒にするんじゃないわよ。あの子達はそれこそ魔法のエキスパートよ。今まで失敗しかしてなかったへっぽこ勇者とは違いすぎるわ」
「うっ、それもそうだよな」
この一週間、解決することができず、同じような問答を繰り返しているが、答えの出ないことに2人はため息をついた。
仕方なく、2人は魔法の練習を切り上げてプラネテューヌの教会へと帰ることを決め、バーチャフォレストから街へと歩いて行った。
「ありがとうな、アイエフ」
「急になによ?」
帰り道、夢人はやや照れながら隣を歩くアイエフにお礼を言った。
「いやさ、こうして魔法の練習に付き合ってくれるだけじゃなくて、どうしたらいいのか相談に乗ってくれて」
「別に私だけじゃないでしょうよ。ネプ子やネプギア、コンパにイストワ―ル様も、皆でどうすればアンタの魔法が成功するか考えてるじゃない」
「それはそうだけど……アイエフも忙しいのに毎回付き合ってくれるじゃないか」
何故夢人とアイエフの2人だけで魔法の練習をしていたのかは、ネプテューヌ達が忙しかったからである。
イストワ―ルはもちろん教祖としての仕事があるから、教会を離れることはできない。
ネプテューヌとネプギアは、ネプテューヌが捕まっていた間に溜まっていた仕事を処理しなければいけない。
加えて、やらなければいけないことは欠片探しだけではない。
散発的に発生する犯罪組織による事件も解決しなければいけない。
コンパは2人のサポートのため、3人でこの1週間、欠片探しと事件の解決を並行して行っていた。
本来ならば、そこにアイエフも加えて4人で活動するはずだったのだが、彼女は自ら夢人の魔法の練習に付き合うと言いだしたのだ。
彼女いわく、今プラネテューヌにいるメンバーの中で魔法が使えて夢人と親しいのは自分だけだから、らしい。
「欠片探しも事件の解決も、ネプ子達に任せっぱなしだけだから、そんなんでもないわよ」
「でも、諜報部の仕事はしてるんだろ?」
「まあね、そっちが私の本業だし」
アイエフもただネプテューヌ達に全てを任しているわけではない。
各地に散らばっているプラネテューヌ諜報部エージェントから送られてくる情報を整理している。
「アンタが気にすることじゃないわよ」
「……でも、俺がちゃんと魔法を成功させていれば……」
「こーら」
本当なら自分もネプテューヌ達と一緒に欠片探しと事件解決をしなければいけない。
でも、戦う力がない夢人は彼女達の足手まといになってしまう。
彼が自分の無力に嘆き俯くと、アイエフが彼のおでこを軽く人差指で突いた。
「別に私達はアンタのことを迷惑だなんて思ってないわよ」
「でも、今の俺じゃ……」
「なーに言ってんのよ。アンタは自分がいなくちゃ、私達が何にもできないとでも思ってるの?」
アイエフが目元を優しく緩め、夢人に諭すように語りかけた。
「勇者だからと言って、全部一人で背負い込むんじゃないわよ。もっと私達を頼りなさい」
「……アイエフ」
「アンタが消えた時と今は違うわ。アンタの側にはちゃんと私達がいる。この世界だってすぐには壊れはしないわよ」
ギョウカイ墓場で夢人が消えた時、彼は1人だった。
ワンダーに諭されるまで、彼は1人孤独に記憶を失ってしまう恐怖と戦っていた。
でも、今はそんなことはない。
彼の側にはちゃんと彼を支えることができる人が、仲間がいることをアイエフは知ってもらいたかった。
「だから、もっと私達を頼りなさいよね。アンタが弱いことなんて皆知ってんだから。スタートが遅れたのなら、私達を追い越す勢いで強くなんなさいよね」
「……ありがとう、アイエフ」
夢人はアイエフの言葉に隠された彼女の優しさに感謝した。
そして、絶対に強くなろうと決意を新たに拳を強く握ったのであった。
「お礼はいいって言ってんでしょ。私に感謝してるなら、さっさと魔法を成功させなさいよ」
「ああ、必ず成功させてみせるさ」
「その意気よ」
その後、2人は帰る道中、どうすれば魔法が成功するのかを話し合った。
しかし、その顔はバーチャフォレストで話しあった時の暗い顔ではなく、明るく顔を綻ばせながら話して歩いていた。
教会に辿り着いても結論は出なかったが、互いに満足そうに笑って話していた2人をネプテューヌとイストワ―ルが出迎えた。
「お2人とも、おかえりなさい」
「おっかえりー、2人とも」
「ただいま、イストワ―ルさん」
「ただいま戻りました。でも、どうかなされたんですか? わざわざイストワ―ル様が出迎えるなんて」
「あ、あれ? わたしのことは無視? 無視なの? うわあああん、いーすん、2人がわたしのこと無視するよぉ」
ネプテューヌが自分の存在を無視して、イストワ―ルにだけ挨拶する2人に自分の存在をアピールするため声を大きくするが、2人はそれでも彼女を無視した。
そんな彼女よりも、アイエフはイストワ―ルが自分達を出迎えたことに疑問を感じていた。
イストワ―ルもこの時間は教祖としての仕事をしているはずなのに、なんでわざわざ自分達を出迎えたのかと。
「実は、夢人さんにチカさんから連絡が来たんですよ」
「チカさんから?」
「いーすんまで!? うううぅ、わたしには味方はいないのか」
イストワ―ルに泣きつこうとしたネプテューヌであるが、イストワ―ルは華麗に避けて、ネプテューヌを無視して話を続けた。
ネプテューヌの相手をしていては話がいつまで経っても進みそうにないと言うのが、この場の3人の共通認識であった。
「はい、ワンダーさんがようやく完成したそうなので、夢人さんに取りに来てほしいそうです」
「ワンダーが? そうか、ようやく完成したのか」
「よかったじゃない。これで魔法じゃない戦う方法が手に入るわね」
ワンダーが完成したことで、夢人は嬉しそうに目を細めて笑みを浮かべた。
これで、自分もネプテューヌ達と一緒に戦う手段が手に入ると。
* * *
「ふぅー、やっぱり、ネプテューヌの言う通り疲れが溜まってるのかしら」
私はラステイションの教会の自室で、書類を片付けている。
先ほどまで、郊外で暴れていたモンスター達をユニ達と一緒に退治してきたばかりだが、休んでなんていられない。
すぐに報告書を作成して、今後の防衛課題にしなければいけない。
いくら私達が女神と言っても、体は1つだけだ。
複数の場所で事件が起こった場合、解決できないこともある。
そんなことがないようにするため、普段から警備隊の人達との連携が大事だ。
今私が作成している報告書には、どんなモンスターが出現したのか、特徴や弱点などを記載している。
こうした情報を共有することで、警備隊の人達でも安全にモンスターを退治することができるようにしているのだ。
さらに、これは何も警備達の人達だけに向けたものではない。
この情報を冒険者ギルドに送り、この情報が正しいかどうかを冒険者に依頼することもある。
これは教会から正式な依頼として報酬も出るので、冒険者にもメリットがしっかりある。
そうして、正確性を増した情報が国の防衛能力向上に役立っていくと言うわけだ。
だからこそ、私は休んでなんていられない。
先ほど倒したモンスターはそんなに強いモンスターではなかったが、小型であり、すばしっこく群れで行動をしていた。
大型のモンスターよりも広範囲で被害を広げる可能性がある。
早く報告書を書いて、ギルドに確認を取ってもらわないと……
「でも、あんなモンスターがラステイションの近くにいたなんて」
私が捕まっている間にモンスターの生態が変わったのかしら?
先ほど倒したモンスターは3年前は、ラステイションにはいなかったはずなのに。
後で、ユニに聞いておこうかしら?
私はそんなことを考えながら書類を作成していくが、どうにも肩が凝っているのか、妙に体が重く感じる。
別に風邪を引いているわけでもないのに、どうしても疲れを感じてしまう。
「……うーん、これもネプテューヌの言葉を聞いたせいかしら?」
疲れが残ってると聞くと、不思議と体が重く感じてしまう。
やっぱり、自覚してなかっただけで疲れは残っているのかもしれない。
「仕方ない、ネプテューヌからもらった栄養剤でも飲みましょうか」
私は席を立ち、栄養剤を飲む準備をし始めた。
えっと、確か1粒じゃ効果があり過ぎるから、砕いて飲むのよね?
でも、それならどうして錠剤タイプにしたのかしら?
もしかして、お湯に溶かして飲むとか?
私はそう考え、ポットに入っていたお湯をカップに入れて、栄養剤を溶かす準備をした。
後はこの中に栄養剤を入れるだけ……
「……お姉ちゃん? 今、入っていい?」
「ユニ? ええ、いいわよ」
「これ、お姉ちゃんが捕まっていた間にあった報告書なんだけど、どこに置いておけばいいかな?」
突然、ノックとともに大量の書類を持ったユニが入ってきた。
どうやらユニも私が捕まっていた間の報告書をちゃんと書いていたようだ。
さすが私の妹。
「そこに置いておいてくれるかしら? スペースが足りなかったら、こっちに持って来てちょうだい」
「うん……でも、お姉ちゃん、それ、いいの?」
「それ? なんのこ……って、あああ!?」
私は突然のユニの来訪で、自分が今まで何をしていたのかを忘れていた。
栄養剤をお湯に入れるために、瓶のふたを開けて斜めにしていたことが災いした。
瓶の中に入っていた中身は全てお湯の中に入ってしまって、お湯が真っ黒になっていたのである。
や、やっちゃった!?
これ、本当に大丈夫なの!?
見るだけで飲むのをためらってしまうほど黒くなってしまったお湯を見て、私は自分がやってしまったのに引いてしまった。
「何かのクスリを飲もうとしてたのなら、アタシが新しいの買ってこようか?」
「だ、大丈夫よ!? こ、これはネプテューヌからもらった珍しいコーヒーなの!?」
こ、これはマズイ!?
ユニには絶対に栄養剤を飲もうとしていたことをばらすわけにはいかない。
そんなものに頼る私を見たら、きっとユニは失望してしまう!?
そんなことは絶対に嫌だ!?
「……本当にコーヒーなの? なんかすごく黒いような……」
「こ、こう言う品種らしいわ!? だから、別に大丈夫なのよ!?」
「……お姉ちゃんがそう言うなら」
ユニが渋々だが納得してくれたが、その顔は不満がありありと見てとれる。
でも、私はこのウソをつき通さなければいけない。
姉の威厳を保つためにも。
「それじゃ、まだ報告書あるから取ってくるね」
そう言って、ユニが部屋を出て行ってくれたことで、私は安心して息をついた。
危ない危ない。
ユニが戻ってくる前にひと口だけ飲んじゃわないと。
せっかく、ネプテューヌからもらった栄養剤だし、早く疲れを取りたいしね。
少しくらい効果が辛くても、きっと頭痛程度で済むだろう。
私はそう思ってカップに入っていた黒いお湯を飲んだ。
……瞬間、私の中にある鎖が弾けるような衝撃と共に私は意識を失った。
* * *
ユニは大量の書類を持って、姉であるノワールの執務室に向かった。
先ほど慌ててコーヒーだと言っていたが、絶対にウソであることはすでにわかっていた。
きっと自分に心配をかけまいと、何かのクスリを飲もうとしていたのではないかと思っている。
「アタシもお姉ちゃんの負担を減らせるよう、頑張らないとね」
いつか自分の誇れる強さで姉と並び立つ日を夢見て、ユニは執務室に向かった。
「お姉ちゃん? ……あれ?」
ノックして呼びかけても返事がない。
さっきは返事をしてくれたし、自分がまたこの部屋に来ることが分かっているのなら、別の部屋に行くなんてことは考えられない。
「入るよ? お姉ちゃ……ん?」
ユニは不審に思いながらも、扉を開けて部屋へと入った。
そして、目の前に広がる光景を見て持っていた書類を全て落としてしまった。
その目の前の光景とは……
「きゅるるるるるるん! 愛と正義のマジカルヴィーナス、ノワルン!! ゲイムギョウ界の平和を守るため、華麗に降臨!! キラッ!」
『変身』して白くなった髪を2つに縛り、いつもの黒いプロセッサユニット《ブラック》ではなく、全体的にピンク色のワンピースの裾をひらひらとはためかせて、鏡に向かって決めポーズをとっていた姉の姿があった。
ピンクのワンピースの腰のあたりには、レースの大きめのリボンが付けられており、まるでアニメに出てくる魔法少女の様な恰好であった。
「……お、お、お姉ちゃんが……お姉ちゃんが……!?」
ユニはまるでこの世の終わりだと思ってしまうくらい、顔を真っ青にして口元に手を当てて、もう片方の手で震えながらノワールを指さして叫んだ。
「お姉ちゃんが…………お姉ちゃんが壊れた!?」
……ノワールが飲んだであろう、カップの中身は空っぽになり床に転がっていた。
床に染みを1つも作ることなく……
という訳で、今回はここまで!
まずはラステイション編ということで、やっちゃいました。
久しぶりにB.H.C.が仕事をしてくれましたよ。
いったいノワールはどうなってしまうのか?
それでは、 次回 「浸食」 をお楽しみに!