超次元ゲイムネプテューヌ 夢のヒーローを目指して 作:ホタチ丸
今日は遅くなりましたが、何とか投稿できた。
それでは、 探し物は娘の欠片 はじまります
ギョウカイ墓場、赤黒い靄に包まれていた黒ロリファッションの少女であったが、次第に靄が少女の体に吸収されていき、その姿を現した。
空を仰ぐような態勢で姿を現した少女であったが、全ての靄を吸収し終えると、ゆっくりと首を回しながら正面を向いて目を開けた。
「……うふふ、ごちそうさま。味は最悪だったけど、多少は満足したわ。後は、デザートだけね、チュッ……いただきます」
上唇を舐めながら満足そうに笑みを浮かべた後、地面に落ちていた赤い光を放つ欠片を拾い上げた。
少女は欠片に軽く口づけすると、自分の口の中に放り込んだ。
味を確かめるかのように口の中で欠片を舐めまわしているのだろうか、再び目を閉じて口をもごもごと動かしていた。
やがて、味に満足したようで喉を鳴らして欠片を飲み込んだ。
「ごちそうさま……そして、おかえりなさい」
少女はうっとりと目を細め頬を赤らめながら口の端を大きく吊り上げて笑みを浮かべた。
余韻に浸るように片手を頬に当て、もう片方の手で自分の体を抱きしめながら小さく左右に体を揺らしている。
「うふふふふ、早く全部集めなきゃね。そのために……」
少女が細めていた目を開くと、前方にフードをかぶった緑髪の女性と黒いネズミが歩いている姿が見えた。
「役に立ってもらうわ、お人形さん達に」
* * *
「……え、えっと、力が使えないって本当なのか?」
「うん! ぜーんぶつかっちゃった!」
……どうやら俺の聞き間違いじゃないみたいだ。
アカリは俺をゲイムギョウ界に連れ戻すために、力を全部使っちゃったと……
どうするんだよ!?
アカリが『再誕』の力を使えなくちゃ、世界の修復ができないじゃないか!?
歪んでしまったこの世界を修復するために、女神の卵から生まれた『再誕』の女神、アカリの力が必要なのに!?
し、しかも、俺なんかを戻すために……
あ、なんか目の前が真っ暗に……
「ちょ、ちょっと夢人!? しっかりしなさいよ!?」
「……悪い、ちょっと目眩が」
後ろからアイエフが支えてくれなかったら、きっと倒れてしまっていただろう。
でも、ちょっとこのままでいさせてくれ。
ショックで足に上手く力が入りそうにないんだ。
「パパ、どうしたの?」
アカリもそんな無邪気な顔で俺を見ないでくれ。
パパのせいで世界崩壊の危機再来なんですよ。
しかも、娘の力を失くさせた張本人が自分だなんて……
「いったいどうすりゃいいんだよ!?」
「お、落ち着いてください、夢人さん!?」
「気をしっかり持つです!?」
ネプギアとコンパはそう言ってくれるが、俺は頭の中がぐちゃぐちゃになったみたいに混乱している。
もうどうすればいいんだか、本当にわからない。
でも、全部俺が悪いんだよな。
俺がアカリの力を使って記憶を戻したり、ゲイムギョウ界に帰って来なければ……
「夢人さん!!」
「は、はい!?」
俺が自分の行動に後悔していると、ネプギアが俺の手を握ってまっすぐに俺を見つめてきた。
その顔は怒っているように見えた。
「夢人さんは今、後悔していますか? アカリちゃんの力を使って記憶を戻したり、ゲイムギョウ界に帰ってきたことを」
「……ああ、俺は」
「ふざけないでください!! 私はまた夢人さんに会えて嬉しかったんです!! 名前を呼ばれて、抱きしめられて……すごく嬉しかったんです!! 夢人さんは違うんですか!!」
「違わないさ!! 俺だって、ネプギアや皆にまた会えて嬉しいよ。でも……」
「でも、じゃありません!! だったら……」
ネプギアから先ほどまでの勢いが消え、目尻に涙を浮かべながら俺に訴えてくる。
「後悔なんて……そんな悲しいこと、考えないでください」
俯いてしまったネプギアの姿を見て、俺はようやく落ちつけた気がする。
……また泣かせちゃってごめん、ネプギア。
そうだ、俺はネプギア達に再会したことを後悔なんてしていない。
「ありがとう、ネプギア。俺、弱気になってた。ゲイムギョウ界に帰ってきたことを後悔しそうになってた」
後悔することは悪いことじゃない。
後悔して立ち止まってしまうことが悪いんだ。
だから、俺は前に進まなければいけない。
俺のために、皆のために、ゲイムギョウ界のために。
「俺のせいでゲイムギョウ界が壊れてしまうなら、それを防ぐために立ち止まったままじゃダメなんだよな。ゲイムギョウ界を救う方法を必ず見つけ出そう」
アカリの力を取り戻す方法が見つからなくても、他の方法でこの世界を救う方法を見つけ出さなければいけない。
俺はこの世界を壊したくはない。
大好きな皆が生きる、俺の大好きなこの世界を壊してたまるか!
俺は、ゲイムギョウ界を救う勇者なんだからな。
「……はい、一緒に見つけましょう」
ネプギアは俯いていた顔を起こし、涙で潤んでいる瞳で柔らかくほほ笑んだ。
ああ、今度こそ一緒にゲイムギョウ界を救おう。
俺が迷った時、いつも君の言葉が俺の心に響く。
君の言葉はいつも俺の進む道を明るく照らしてくれる。
……ありがとう、ネプギア。
「ネプギアだけじゃないよ、わたし達だって一緒に探すよ」
「……ネプテューヌ」
「勝手に2人だけで盛り上がらないで欲しいわね。私達だって、ゲイムギョウ界を救いたいんだから」
「……ノワール」
ネプテューヌとノワールは俺とネプギアがつないでいる手に自分の手を重ねてきた。
皆も2人の言葉に同意のようで、力強く口元に笑みを浮かべながら頷いていた。
「わたし達も夢人に会えて後悔なんてしていないわ。むしろ、会わせてくれたアカリに感謝しているもの」
「そうですわ。皆さんも同じ気持ちですわよ」
ブランとベールもネプテューヌ達と同じように手を重ねた。
「まったく、うじうじ悩んじゃって、どうしようかと思ったわよ」
……ユニ。
「アンタは1人じゃないでしょ。アタシ達がついているんだから」
「皆一緒だから、大丈夫」
……ロム。
「わたしも頑張る」
「もちろん、わたしもよ。ぜーったいにゲイムギョウ界を救うんだから」
……ラム。
「2人だけで勝手に決めないでよね」
「私も同じ気持ちだよ」
……ナナハ。
「今夢人が抱えている不安は、前まで私が抱えていたものだよ。だから、私も一緒に背負うよ」
「なら、ボクも一緒に背負わせてください」
……フェル。
「ボクもナナお姉さんも、お兄さんが『再誕』の力を使ってくれたおかげで、この世界を壊す『歪み』じゃなくなりました。だから、今は皆と同じ、この世界を守る存在です」
「そんなこと、言わなくても皆わかってるわよ」
……アイエフ。
「ここにいる全員がゲイムギョウ界のことが好きで、守りたいと思ってるんだから」
「ですです。わたしだってお手伝いしますよ」
……コンパ。
「わたしに何ができるかなんて、まだ全然わからないですけど、皆と一緒なら何とかなるです」
「ヒーローは助け合いでしょ。互いに支え合うから、最後に笑っていられるんだよ」
……日本一。
「女神様達だけじゃなくて、アタシ達だってついてるんだから」
「がすとも微力ながらお手伝いさせていただきますの」
……がすと。
「また勝手に消えられたりしたら、堪ったものじゃありませんの」
「ふふ、無茶をしちゃう夢人くんならありえるかな」
……5pb.。
「正直、ゲイムギョウ界が壊れちゃうって言うのは怖いよ。でもね、それで誰かがいなくなる方がもっと怖いんだ」
「5pb.の言う通りだよ」
……ファルコム。
「あたし達は皆で笑っていられる未来を造らなきゃね」
「それが目指すべき理想の未来でしょ」
……ケイブ。
「私達はあなたを含めた皆がいる未来が大事なのよ」
皆の手が重なるにつれて、俺は目頭が熱くなってきた。
それはネプギアも同じようで、ネプギアの目にも再び涙が溢れていた。
「もう、なんで泣いているのよ」
「だ、だって……」
「あーっ! なにネプギアを泣かせてるの、ノワール」
「わ、私のせいじゃないでしょ!?」
じゃれ合うネプテューヌとノワールを見て、ネプギアは涙を指で拭って小さく笑った。
「ありがとうございます、皆さん」
「お礼は必要ないわ」
「ですが、ここは夢人さんから一言欲しいところですわね」
横目で俺に催促するベールの言葉の意図はわかる。
でも、それは本当に俺が言っていいのか?
「早く言いなさいよ」
「早く、早く(わくわく)」
「ほら、わかってるでしょ、夢人」
「私もちゃんと言葉にして欲しいな」
ユニ達の方に視線を向けると、今か今かと楽しみにするように顔を綻ばせて催促していた。
「言っちゃってくださいよ、お兄さん」
「遠慮なんてしてんじゃないわよ」
「これは夢人さんのお仕事ですよ」
「夢人は勇者で、ゲイムギョウ界のヒーローなんだから」
「しっかりと言葉にして欲しいですの」
「ボク達の新しいスタートを」
「あたし達が造る未来を始めるために」
「さあ、夢人、お願い」
フェル達もユニ達と同じで俺に催促してきた。
俺達の新しい始まりを告げる言葉を……
「必ず皆でゲイムギョウ界を救うぞ!!」
『おう!!』
『はい!!』
必ず皆で笑っていられる未来を造るために、ゲイムギョウ界を救って……
俺が言葉とともに決意を新たにしていると、間抜けにも電子音が部屋に響いてきた。
「あ、わたしだ」
「……ネプテューヌ、アンタねぇ」
「……せっかくの始まりが台無し」
「……もう少し空気を読んでくださりませんか」
「わ、わたしのせいじゃないでしょ!? 相手、相手が悪いんだよ!?」
何とも間の悪いことにネプテューヌのNギアに通信が入ったらしく、皆も苦笑してしまった。
せっかく、こうして気合い入れてたのに。
「もー、誰? こっちは今忙しいんだけど……」
〔ネプテューヌさんですか? 私です、イストワ―ルです〕
「いーすん? なんで通信で話してるの? いーすんもこっちに来ればよかったのに」
どうやら相手はイストワ―ルさんだったらしいが、それならおかしい。
彼女はパーティー会場にはいないが、今も教会の一室にいるはずだ。
それなのに、わざわざ通信を送る理由なんて……
〔実は先ほど緊急の報告とあるものが届けられたんです〕
「報告とあるもの? お中元? こう、元気してますかって?」
〔違います! どうしてお中元の報告で緊急になるんですか!〕
そもそもなんでお中元が届けられたと考えるだよ。
おかしいだろ、時期的に。
ここは、普通に考えてお見舞い品だろ。
ネプテューヌ達は今まで捕まっていたんだから、ゲイムギョウ界中の人達から一気にお見舞いメールと共にいろいろなものが届けられたに違いない。
「えー、じゃあ、なに? わたし心当たりないんだけど?」
〔少しは黙って、私の話を聞いてください! 本当に緊急の報告なんですから!〕
「だから、何なの? その緊急の報告って」
〔……今日、プラネテューヌの警備隊の人があるものを発見して届けてくれました。それは、今もシェアエナジーを発している宝石の欠片〕
それって、まさか!?
〔女神の卵の欠片が発見されました〕
* * *
「ったく、また失敗しちまったな」
「……その割には頬が緩んでるっちゅよ」
ワレチューの指摘の通り、リンダは言葉とは裏腹にだらしなく頬が緩んでいた。
「あー、マジック様にどう報告すりゃいいのか、わっかんねぇなぁ」
「……無視っちゅか? 下っ端のくせに」
「下っ端って言うんじゃねぇ!!」
「聞こえてるなら最初から反応するっちゅ!!」
下っ端と言う単語に素早く反応したリンダに、ワレチューは呆れてしまう。
ワレチューもリンダが浮かれている気持ちもわかる。
「……そんなにあの勇者が帰ってきたことが嬉しいっちゅか?」
「べ、別にそんなんじゃねぇよ。ただ、アイツがいないと女神どもとの戦いも張り合いがねぇからな」
突然の問いにどもってしまうリンダだったが、すぐに目を閉じて頬を緩めてしまった。
「ほら、アレだ。こう、ライバルが登場して嬉しいって言うか、なんて言うか……」
「ライバルと書いて宿敵、宿敵と書いて友と呼ぶと言う奴っちゅか?」
「ちっげぇよ!? なんでアタイとアイツが友達なんだよ!?」
リンダは顔を真っ赤にさせてワレチューに言うが、その顔には説得力がない。
未だに頬の筋肉は弛緩しているリンダを見たワレチューはため息をついて思った。
素直に帰って来て嬉しいと言えばいいのに。
確かに立場上、敵同士なのはわかるが、一緒にリーンボックス特命課で働いた仲だ。
情が移ったと言うわけではないが、多少なりとも袖振り合った夢人が帰ってきたことはワレチューにとって嬉しい報告である。
「なんだよ、その顔!? 疑ってんのか!?」
「別に疑ってるわけじゃ……」
「じゃあ、何なんだよ!?」
ワレチューが何も言わなくても、勝手に暴走していくリンダを見て、どうしたものかと考えていた時だった。
「……もし、お二方」
突然、横から声をかけられ、2人は慌てて声をした方を振り向いた。
ここはギョウカイ墓場、犯罪組織マジェコンヌの本拠地である。
ここには、自分達と同じ構成員とマジック達の様な幹部ぐらいしかいないはずだった。
しかし、2人にかけられた声は今まで聞いたことがない声だった。
それだけでも驚くことだったのに、2人は声の主の顔を見て、さらに驚いてしまった。
「お、お前!?」
「な、何でここにいるっちゅか!?」
それはここには本来いるはずのない人物とそっくりだった。
「うふふ、私はあなた達とは初対面よ? まあ、この体のオリジナルには何度も会ってるみたいだけどね」
声の主は、2人の反応を見て面白そうに笑うが、2人はそれどころではない。
「あの塔まで案内してくださらない? あそこにいるものに用があるのよ」
声の主、黒ロリファッションの少女を見て2人が驚愕した理由は……
「しっかりエスコートしてくださいな」
……その顔がネプギアとよく似ていたからである。
という訳で、今回はここまで!
次回でこの章はおしまいかな?
そしたら、今回はネプテューヌ視点のおまけで締めて、次章につなぎますね。
それでは、 次回 「真なる主」 をお楽しみに!