超次元ゲイムネプテューヌ 夢のヒーローを目指して 作:ホタチ丸
ちょっと寒さにやられて鼻水が自然とたれてしまいそうになる私ですが、今日も投稿していきますよ。
それでは、 雨のち晴れ はじまります
「お会いできて光栄ですわ、犯罪神さん」
『……何故、貴様がいる』
「おかしなことを言うわね。私は生まれたてのぴちぴちのほやほやよ? あなた、誰かと勘違いしてない?」
黒ロリファッションの少女は、石像から聞こえてくる声に眉をひそめながら言った。
だが、すぐに笑みを浮かべて、石像の全体を地面から引き抜いた。
「まあ、そんなことはどうでもいいわ。私、今とーっても怒ってるの。あなたは私を器にして復活したかったみたいだけど、そんなこと本当にできると思ってるの?」
『当然だ。おとなしく我の器になれ』
石造の言葉に少女は、目を大きく開き口角を上げて笑った。
「できるわけないでしょ。ざーんねーんでした! あなたみたいな怨霊が私を乗っ取れるとでも思ってるの?」
石像は少女の言葉に怒りを感じたのか、全体から赤黒い光を少女へと流していく。
しかし、少女はその光を受けながらも笑い続けた。
「いくらやっても無駄よ、無駄。いくら流して来ても、私には無意味よ」
『黙れ!! おとなしく……』
「私、怒ってるって言ったわよね? 勝手に利用されそうになったこと、とーっても怒ってるのよ。だからね……」
少女は石像を掴む腕と反対の手を顔の近くまで上げ、小指からゆっくりと折りたたんでいく。
「あなたが私を利用しようとしたのなら、私も利用してやるわ」
『な、何を……!?』
「あなたの全部、ちょうだい」
そう言って、少女は笑ったまま、その手で石像を貫いた。
* * *
「夢人の…………バカーッ!!」
「えっ……むぎゅっ!?」
それは俺がベール達、リーンボックス組と話し終え、次に誰と話そうかと周りを見回していた時だった。
自分の名前を呼ばれて振り向いた時、顔面に強い衝撃を受けた。
俺は何が起こったのかまったくわからず、頭から床に倒れてしまった。
衝撃はそれだけに収まらず、首を支点に俺の体は一回転してしまい、俺は今床の冷たさを頬で感じている。
い、いったい何事だ?
「夢人のバカ!! そりゃ、ヒーローがいなくなってまた帰ってくるって言うのはお決まりかもしれないけど、あんな風にいなくなるなんて!!」
「そうですの。勝手にあんなものを残して消えるだなんて、絶対許さないですの」
「……に、日本一、がすと」
俺が痛む鼻先を押さえて起き上がると、目の前に日本一とがすとがいた。
おそらく先ほどの衝撃は、日本一が俺の顔を蹴り飛ばしたのだろう。
「アタシ達、すっごーく悲しんだんだからね!! いっぱい泣いちゃったし、どうしてくれるの!!」
「……だ、だからって、いきなり蹴り飛ばすのは……」
「当然の罰ですの。がすと達の怒りは、あんなものじゃ収まらないですの」
お前らと言い、アイエフと言い、何故再会してすぐに俺に攻撃するんだよ。
さっきのリーンボックス組を見てみろ、あんなに平和だったんだぞ。
「……ごめん、俺が悪かった。謝ることしかできないけど……」
「うん、いいよ。許してあげる」
「俺には……って、許すの早!?」
おいおい、いくらなんでも早すぎないか!?
俺が悪いことは自覚してるから、謝る位じゃ許してもらえないと思っていたのに。
「蹴り飛ばしたことと、今の謝罪で許してあげる。夢人だって好きでいなくなったわけじゃないんでしょ?」
「……そ、それはそうだけどさ」
「だったら、これでお終い! ずっと怒ってるのもおかしいし、こうして帰ってきてくれたんだから」
「まったく、日本一は甘いですの……まあ、がすとも同じ気持ちですの。おかえりですの、夢人」
「……ただいま、日本一、がすと」
……許してくれてありがとう、2人とも。
* * *
今、日本一とがすとが夢人をわたし達がいるテーブルへと案内してくるのが見える。
「……ロムちゃん、少しお願いしていい?」
「どうしたの?」
「……少しだけ、夢人と2人だけで話して来ていいかな?」
ロムちゃんも早く夢人と話したいことはわかってる。
でも、わたしはちょっとだけ2人で話したい。
「うん、いいよ(にこっ)」
「……え? いいの?」
「うん」
……断られると思ってた。
だって、これはわたしのわがままだもん。
本当なら、2人で一緒に夢人と話した方がいいと思うのに。
「……ありがとう、ロムちゃん」
「頑張ってね、ラムちゃん」
今はロムちゃんの優しさに甘えよう。
ごめんね、ちょっとだけ待っててね。
わたしはこちらに歩いてくる夢人の手を握って、部屋の外へ連れ出そうとした。
「夢人、来て!」
「ら、ラム? ど、どうした?」
「いいから! 来て!」
夢人は慌てていたが、わたしに引きずられながら一緒に部屋の外へと出てくれた。
……ちゃんといるんだよね。
握った手の温かさに泣きそうになった。
夢人がここにちゃんといるって、本当にわかったから。
「急に部屋から出て、どうしたんだ、ラム?」
夢人がわたしがどうして部屋の外に連れ出したのか尋ねてくるが、わたしは応えない。
だって、皆がいるところだと、今からすることはできないから。
わたしは夢人の胸に跳び込んだ。
「ら、ラム? いったいどう……」
「ちょっとだけ……ちょっとだけでいいから、このままでいさせて」
夢人は驚いていたが、わたしは夢人の胸に顔を押し付けたまま言った。
……泣き顔なんて見せたくない。
本当は笑って、おかえりって言ってあげたかったのに、夢人がちゃんといるってわかると涙を我慢できなかった。
……涙なんて、もう出ないと思っていたのに。
夢人が残した映像記録を見た時も、わたしはずっと泣いていた。
夢人にもう会えないと思っていた。
わたしとロムちゃんを助けてくれた大切な人で、わたしが初めて好きになった男の人。
泣くことしかできなかったわたしをいつも助けてくれた夢人に会えないと思うと、わたしは言葉もまともに喋れないほど泣いていた。
夢人に会ってから、わたしは泣きっぽくなった気がする。
それよりも前のわたしは、ロムちゃんを守るんだと、ずっと意地を張っていた。
ロムちゃんが悲しまないように、わたしはずっと泣くことを我慢していたんだ。
……でも、今はそれでいいと思う。
わたしの涙を受け止めてくれる相手がちゃんと側にいてくれる。
我慢せずに、甘えられる相手がいてくれる。
お姉ちゃんやロムちゃん、ミナちゃんとは違う、わたしが甘えたくなる相手がちゃんとここにいてくれる。
お姉ちゃん達に抱きつくのとは違って、顔を押し付ける胸は硬いけど、温かくて離れたくないと思ってしまう。
……夢人、もう少しだけこのままでいさせてね。
わたしの思いが通じたのか、夢人はわたしの頭を優しくなでてくれる。
……もう少しで、ちゃんと言えるようになるから。
この温かさをもう少しだけ感じさせて。
「夢人」
「どうした?」
わたしは顔を上げて、優しくほほ笑んでいた夢人に笑顔で言う。
「おかえりなさい」
目の端に涙がまた溜まってきたけど、大丈夫だよ。
これは嬉しいから流す涙なんだから。
* * *
「ロム、本当によかったの? 一緒におかえりって言うんじゃなかったの?」
「うん、大丈夫。今はラムちゃんの時間だから」
心配そうに尋ねてくるお姉ちゃんに大丈夫って応えたけど、わたしは少しだけそわそわしている。
わたしも早く夢人お兄ちゃんと話したい。
でも、今はラムちゃんの番。
わたしは次でいいの。
ラムちゃんは、わたしがいると夢人お兄ちゃんに素直に甘えられないと思う。
ラムちゃん、少し意地っ張りだから。
わたしのことを優先させちゃうかもしれないと思っていた。
ラムちゃんだって夢人お兄ちゃんと話したいのに、わたしに合わせて本当に話したいことを話せないかもしれないから。
……だから、ラムちゃんがお願いしてきた時、わたしは嬉しかった。
ラムちゃんがわたしにわがまま言うなんて珍しかったから。
お姉ちゃんやミナちゃんにはよくわがまま言うけど、わたしにはわがままを言うことがあまりなかった。
それはそれで、わたしがラムちゃんに大切に思われてると思って嬉しいけど、今はそれじゃダメ。
……だって、ラムちゃんはずっと泣いてたから。
夢人お兄ちゃんが残した映像記録を見てから、ずっと泣いてた。
わたしも悲しくて泣いてたけど、ラムちゃんはわたしよりも悲しんでたように見えた。
ラムちゃんのあの姿をわたしは見たことがあった。
わたしが裏切り者って言った時や記憶を失った時も、ラムちゃんは同じように泣いていた。
その姿が本当のラムちゃんなんだと思う。
いつもはわたしを守ってくれようと、本当は泣くのを我慢して強気でいるラムちゃん。
我慢なんてしなくていいんだよ。
今度はわたしも守るから。
ラムちゃんがわたしを守ってくれるのと同じように、わたしもラムちゃんを守るよ。
だから、今はラムちゃんの番。
多分、思いっきり夢人お兄ちゃんに甘えているんじゃないかな?
ずっと一緒にいたし、同じ気持ちを持ってるからわかるよ。
好きな相手に甘えたくなる気持ちは……
「あ、帰ってきた。おーい! こっちこっち!」
日本一さんが部屋に入ってきた夢人お兄ちゃんとラムちゃんに手を振ってる。
ラムちゃんは夢人お兄ちゃんと手をつないでこっちに歩いてきた。
その顔は俯いていて見えないけど、きっとちゃんと甘えられたと思う。
だって、ラムちゃんの顔、少しだけ赤いもん。
「ロムちゃん、ありがとう」
「うん、よかったね。ラムちゃん」
テーブルの近くまで来たラムちゃんは、少しだけ顔を上げてわたしにお礼を言うと、右手を上げた。
わたしはそれの意味がわかると、同じように右手を上げた。
そして、互いの右手をぶつけて言う。
「「タッチ」」
交代の時間。
今度はわたしが夢人お兄ちゃんに甘える番だ。
「夢人お兄ちゃん」
「ロム、ただいま」
「おかえりなさい(にこっ)」
笑顔でおかえりを言ったわたしは、夢人お兄ちゃんの腕に抱きついた。
夢人お兄ちゃんも優しくわたしの頭をなでてくれる。
「えへへ」
わたしは余計に嬉しくなった。
こうして抱きつけるだけで嬉しいのに、頭をなでる手の温かさも嬉しい。
「夢人お兄ちゃんになでられるの好き、もっとなでて」
「ああ、いいよ」
なでる手が、より優しくなった気がする。
……夢人お兄ちゃん、もっと甘えさせてね。
ちゃんとここにいるってわかるまで、もうちょっとだけこのままでいさせてね。
抱きついた腕と、頭をなでる手の温かさ、わたしの悲しかった気持ちがなくなるまでこのままでいさせてね。
夢人お兄ちゃん、大好きだよ。
* * *
「えへへ、あったかいね」
ロムが彼の腕に抱きついて笑っている。
その顔は本当に嬉しそうだ。
先ほど部屋を出て行ったラムも、目元は赤くなっているが、その姿を嬉しそうに見ている。
以前までのラムなら、自分もと言って一緒に抱きついていたんじゃないかしら?
それが今では、お互いに1人ずつ彼に甘えている。
……2人にとって、彼は特別な人なのね。
「ロム、彼と話してもいいかしら?」
「あ、うん、いいよ」
「ありがとう……わたしはロムとラムの姉のブランよ。御波夢人、で合ってるわよね?」
「はい、合ってます。ブランさん」
「ブランでいいわ。わたしも夢人って呼ぶから」
ロムには少し悪いけど、わたしも夢人に言いたいことがある。
「妹達が世話になったわ、ありがとう」
今のロムとラムの姿を見れば、よくわかる。
2人とも夢人に心を許してる。
特に、ロムは人見知りが激しい子で、他人のよからぬ思いを敏感に感じ取ってしまう。
そのロムが今、笑みを浮かべながら彼に甘えている姿を見れば、2人がどれだけ彼のことを思っているのかがよくわかる。
「いや、俺の方がロムとラムに世話になってるよ。いつも助けてもらってばっかりだからな」
「そんなことないよ。わたしもラムちゃんも、夢人お兄ちゃんに助けてもらってばかりだよ」
「ロムちゃんの言う通りよ。夢人はいつもわたし達を助けてくれるもん」
彼が謙遜して言うが、2人にすぐに否定されている。
2人の言葉を聞いて、照れくさそうに笑う彼の姿を見て2人も嬉しそうにしている。
……本当に、彼が好きなのね。
映像記録を見て泣いていた2人が彼を慕っていたのはわかっていたが、実際に彼に甘えている姿を見てほほ笑ましくなる。
わたしやミナ以外で、2人が甘えられる人ができたことが嬉しい。
それは、2人が成長した証拠だ。
狭い世界、ルウィーの限られた場所しか知らなかった2人が、広い世界、たくさんの人と出会えたことで成長してくれた。
わたしは2人にはまだ早いと言って外に出すことはしなかったが、それは間違いだったかもしれない。
ネプギアやユニ、ナナハ、同じ女神候補生と出会うことで、女神として成長した。
アイエフやコンパ達、他の国に住んでいる人間と出会うことで、人として成長した。
どちらも2人にはまだ早いと思っていた、心を成長させてくれた。
わたしは過保護だったのね。
2人を守っているつもりで、外の世界のことに触れさせなかった。
でも、2人は外の世界に触れたことで強く成長してくれた。
2人が成長した理由の1つが、わたし達が捕まったせいだと考えると情けなくなるが、嬉しさの方が強い。
「あはは、何か恥ずかしいな」
「恥ずかしがることないわ。あなたはそれだけこの子達に慕われているんだから」
わたしがいない間に2人が成長した最大の理由、それが彼なんだ。
彼との出会いが、2人に大きな意味を持っているのは間違いない。
今の2人の様子が、それを証明している。
……いい人と出会えてよかった。
わたしは2人がいい出会いをしたことが嬉しい。
偶然か必然かわからないが、この出会いをくれた彼に感謝する。
成長した2人との出会いをくれた彼に……
「そう言えば、ロムとラムはもう渡したのか?」
「ううん、まだ」
「でも、ちゃんとここにあるよ」
ん? わたしが夢人に感謝していると、2人が何か箱を持ってきた。
その箱はいったい……
「はい、お姉ちゃんに」
「……わたしに?」
「うん、開けてみてよ」
2人から手渡された箱を開けると、そこには1本のペンが入っていた。
「これは……」
なんでペンが?
「お姉ちゃんに謝らなきゃいけないことがあるの」
「わたし、お姉ちゃんからもらったペン、壊しちゃったの」
「「ごめんなさい」」
「ペンって……わたしがお揃いで渡したペン?」
わたしが前に物を大切にするように教えるために渡したペンを壊したことと、このペンがどう関係するんだろう?
わたしがその意味がわからず戸惑っていると、2人はポケットからペンを取り出した。
そのペンは、今わたしが持っているペンと一緒のペンだった。
「これね、夢人お兄ちゃんからもらったの」
「これから3人で一緒に新しい思い出を造れるようにって」
……ああ、本当にいい出会いをしたんだ。
わたしは2人の言葉に目頭が熱くなってきた。
その姿を2人に見せるのは少し恥ずかしいので、わたしは2人を優しく抱きしめた。
……ありがとう、夢人。
3人でこれから新しい思い出を造っていくわ。
あなたからもらった、このおそろいのペンと一緒に……
という訳で、今回はここまで!
やはり、2人を1話で甘えさせるのはちょっと無理がありますね。
本当なら1人ずつ甘えさせたかった。
それはまた今度ということで、やはり今回も最後のブランが持って行ったよ。
さて、次回は残っているラステイション組ですね。
それでは、 次回 「シークレットハート」 をお楽しみに!