超次元ゲイムネプテューヌ 夢のヒーローを目指して   作:ホタチ丸

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はい、皆さんこんばんわ!
パーティーはそれぞれの国ごとに絡ませていきますよ!
今回最初の国はここだ!
それでは、 あなたといる幸せ はじまります


あなたといる幸せ

「みーつーけた」

 

 ギョウカイ墓場を歩く黒ロリファッションの少女は、目的のものを見つけて頬を緩ませた。

 

 彼女の探していたもの、それは赤く光る女神の卵の欠片であった。

 

 欠片はまるで地面から何かを吸い取っているようで、赤い輝きを段々と増していく。

 

「やっぱりね、ここら辺にあると思っていたのよ」

 

 少女は欠片の近くまで歩くと、欠片ではなく地面にその手を伸ばした。

 

「さあ、出て来なさいよ。そんなところに隠れていないでさ」

 

 少女の手が地面をすり抜けるように消えると、その手が何かを掴み上げた。

 

 その手ごたえに彼女は満足そうに笑みを浮かべると、ゆっくりと持ち上げて行く。

 

 やがて、地面から完全に彼女の手が抜けると、その手にはあるものが握られていた。

 

「うふふふ、ようやく会えたわね…………犯罪神さん」

 

 その手にはとある女性をモデルにした石像が握られていたのだ。

 

 

*     *     *

 

 

 さて、パーティーは始まったのはいいが、どうしたものか。

 

 パーティーの準備は昨日のうちに用意してあったらしくて、今はネプギア達がそれをこの部屋に持ってくるらしい。

 

 この部屋に残っているのは、ネプテューヌ達、女神達と俺ぐらいだ。

 

 俺も手伝おうとしたのだが、ネプギアに断られてしまった。

 

 曰く、夢人さんは皆さんにしっかりと謝ってください、だそうだ。

 

 ……まあ、自覚がある分、罪悪感もすごいんだけど。

 

 そんなわけで、まずは誰と話すか……

 

「夢人」

 

「ナナハ?」

 

 振り向くとそこにはナナハが立っていた。

 

 候補生は皆手伝っているのかと思っていたので、少し驚いてしまった。

 

「ナナハは準備はいいのか?」

 

「うん、後で交代しようって話してたんだ。夢人もこっちおいでよ」

 

「お、おい」

 

 俺はナナハに手を引かれるまま、とあるテーブルに案内された。

 

「おかえり、夢人くん」

 

「無事に帰ってきてくれて嬉しいわ、夢人」

 

「5pb.、ケイブ」

 

 そのテーブルには、5pb.とケイブ、そして金髪を腰のあたりまで伸ばした女性がいた。

 

 この人がナナハのお姉さんの……確か、ベールさん?

 

「初めまして、わたくし、リーンボックスの女神でナナハの姉のベールと申しますわ」

 

「ご、ご丁寧にどうも。御波夢人です」

 

「そんなに緊張なさらなくてもいいですわ。わたくしも堅苦しいのは苦手ですの」

 

 な、何かすっごいお嬢様って雰囲気がする人だなあ。

 

 そう言えば、チカさんにベールお姉さまって言われているくらいだし、お上品って言うか、気品があるって言うか……

 

「ナナハの恩人であるあなたが無事でいてくれてよかったですわ。ナナハったら、あなたがいなくなってからずっと泣いていたんですのよ」

 

「べ、ベール姉さん!? そ、その……恥ずかしいよ」

 

「いいではありませんか。ナナハもこうして無事な夢人さんの姿を見れて嬉しいんでしょ?」

 

「……うん、嬉しいよ。またこうして夢人と会えて」

 

 ベールさんの言葉に恥ずかしそうに俯いていたナナハだったが、未だに握っていた俺の手を持ち上げてほほ笑んだ。

 

 その顔はほのかに赤く染まっており、瞳は潤んで見えた。

 

「もう会えないと思っていたんだよ? あんな映像記録残して、私がどれだけ泣いたと思ってるの?」

 

「……ごめん、アレしか方法がなかったとは言え、皆を悲しませたんだよな」

 

「……そこはナナハを、って言って欲しかったな」

 

 そう言って、ナナハは少し困ったようにほほ笑んだ後、俺の手を離し、テーブルの上に置いてあった紙コップを俺に手渡した。

 

「はい、夢人の分。何をして欲しいか、わかるよね?」

 

「ああ」

 

 俺はほほ笑みながら、受け取った紙カップをナナハの紙カップに軽くぶつけた。

 

「ただいま、ナナハ」

 

「おかえり、夢人」

 

 

*     *     *

 

 

 夢人が残した映像を記録を見た後、私とベール姉さん、チカ姉さん、5pb.、ケイブ、ユピテルの皆はリーンボックスへと帰った。

 

 ……夢人がいなくなった、その事実を受け入れたくなかった。

 

 今の私がいるのは、夢人が本当の私の手を握ってくれたからだ。

 

 自分の殻に閉じこもっていた私を外に連れ出してくれた。

 

 そんな温かい手を持つ夢人がいなくなった。

 

 ……私はリーンボックスに帰ってからもずっと泣いていた。

 

 本当だったら、ベール姉さん達を助け出して嬉しいはずだったのに、悲しい気持ちでいっぱいだった。

 

 ベール姉さんといっぱい話して、本当の私を知ってもらって、ベール姉さんのこともいっぱい知って、本当の姉妹になりたかったはずなのに……

 

 夢人に私の家族をちゃんと紹介したいと思っていたのに……

 

「……何で消えちゃうの」

 

 なんで私が大切に思う人は、私から遠ざかっていってしまうんだろう。

 

 前世の両親とは私が死んでしまって別れた。

 

 今生の両親には捨てられた。

 

 ベール姉さんだって3年も長い間離れ離れになってしまっていた。

 

 それがやっと一緒にいられると、これから本当の私の時間が始まると思っていたのに……

 

 ……今度は、私の一番好きな人がいなくなってしまった。

 

「私は……やっぱり、悪魔なのかな」

 

 かつてレイヴィスに言われた言葉が脳裏によぎる。

 

 私が望む望まないにかかわらず、周りの人が不幸になっていく。

 

 夢人とネプギアのおかげで乗り越えられたと思っていた。

 

 ……でも、私は絶対に不幸にしたくないと思っていた相手を不幸にしてしまったんだ。

 

 今でも記録映像に向かって泣き叫ぶネプギアの姿が、私を苦しめる。

 

 私はいつまで経っても誰かを不幸にする悪魔なんだって……

 

「ナナハ、まだ起きていますか?」

 

「……うん」

 

「失礼しますわ……少し、話しましょ?」

 

 私が自室のベットの上にうつ伏せになって泣いていると、ベール姉さんがティーセットを持って部屋に入ってきた。

 

 ……その姿を見るのも久しぶりだ。

 

 捕まる前は、私に何かと構おうとよくお茶に誘われた。

 

 その時の私は、ただわずらわしく思うだけだったが、今は違う。

 

「……ありがとう、ベール姉さん」

 

「わたくしにはこれくらいしかできませんもの。さあ、温かいうちに召し上がれ」

 

 私はベットから起き上がり、カップを受け取って一口飲んだ。

 

 ……温かい。

 

 悲しいことばかりで凍っているように冷たかった体が、段々と温かくなる気がする。

 

「ナナハに聞きたいことがありますわ」

 

 ベール姉さんは私に優しくほほ笑みながら尋ねてきた。

 

「御波夢人さんについて、話を聞かせてもらえないかしら?」

 

「……夢人の?」

 

「そう、ナナハにとってあの殿方がどのような人だったか、教えて欲しいですわ」

 

 ベール姉さんは私の隣に座り、優しく肩を抱き寄せた。

 

「ナナハには、辛いことをお話しさせるかもしれませんが……」

 

「ううん、大丈夫だよ。私も、夢人のことをベール姉さんに知ってもらいたいんだ」

 

 ……私の大好きになった人のことを。

 

 

*     *     *

 

 

「本当に、こうしてまた会えて嬉しいよ」

 

 今、目の前に私の大好きな人が、私にほほ笑んでいる。

 

 昨日の夜、プラネテューヌの教会から連絡をもらうまで、ずっと悲しかったはずなのに、今はその笑顔を見るだけで嬉しくなる。

 

「俺も、ナナハにまた会えて嬉しいよ」

 

「本当は皆、のくせに」

 

「そ、それはな」

 

「ふふ、冗談だよ。夢人は皆に優しいもんね」

 

 先ほど私が言ったせいなのか、今度は皆じゃなくてナナハって言ってくれた夢人を少しからかった。

 

 でも、本当は嬉しいんだよ。

 

 ナナハに、って言われて。

 

 夢人の中の特別になれた気分だよ。

 

「体とかは大丈夫なの?」

 

「ああ、今回は前みたいな精神体、だっけ? とにかく、体ごとこっちの世界に来ているだ。健康そのものだよ」

 

「……よかった。もう、いなくなったりしないよね?」

 

 また夢人が消えてしまうんじゃないかって不安だった。

 

 でも、今回は記憶だけの存在じゃないんだね。

 

「ああ、もう勝手にいなくなったりしないよ。俺は自分の意思でこの世界に来たんだから」

 

 それだけ聞ければ充分だ。

 

 勝手にいなくなったりしないとわかっただけで、この胸の不安は消えた。

 

 じゃあ、夢人には少しお説教しないとね。

 

「じゃあ、夢人には宿題の再提出を要求します」

 

「しゅ、宿題? 再提出?」

 

 夢人は突然何のことを言われたのか、意味がわからず慌てているが、私もアレは納得できないし、怒ってるんだよ。

 

「前回は0点、赤点、追試ものだったけど、今度はちゃんと答えてね」

 

 あんなのノーカウントだよ。

 

 夢人にはちゃんと答えてもらわないとね。

 

「告白の返事、今度は満点の答えにしてみせるからね」

 

 そう、あんな告白の返事なんて認めない。

 

 頑張るのは私で、採点者は夢人だけど、これは夢人への宿題なの。

 

「しっかりと見ててね、私の輝き。今度は絶対離れたくないと思わせてみせるから」

 

 2度とあなたを見失わないように、強く輝くから。

 

 夢人も失くしたり、勝手に手を離したりしちゃダメだよ。

 

 ……だって、また心の手がつながったんだもん。

 

 今度は絶対に離さない。

 

 この温かい手を……

 

 大好きな夢人の手を……

 

「……わかった。今度はちゃんと返事をするよ」

 

「うん、それじゃ、今度デートしよ?」

 

「で、デート!? な、なんで急にデートの話になるんだ!?」

 

「当然でしょ? 夢人は私のこと、まだ知らないことがいっぱいあるんだから」

 

 これが私なりの頑張り方。

 

 夢人は私のことが知れて、私は夢人と一緒にいられる。

 

 どっちにもいいことしかない、最高の頑張り方。

 

「ふふ、楽しみにしとくよ、デート。しっかりとエスコートしてね」

 

 どこに行こうかな?

 

 時間はあるし、行きたい場所もいっぱいあるけど……

 

 夢人と一緒なら、どこでも大丈夫。

 

 一緒にいられるだけで、どこに行っても幸せな気持ちになれるから……

 

 

*     *     *

 

 

「それじゃ、私そろそろ交代してくるね」

 

「ちょ、ナナハ!? ま、待って……」

 

「デート、楽しみにしとくね」

 

 ナナハが夢人さんの制止の声を聞かずに行ってしまいましたわ。

 

 あの子にあんな一面があったなんて……

 

「行っちゃったね。それで、どうするの、夢人くん?」

 

「どうって?」

 

「デートだよ。夢人くんは嫌なの?」

 

「いや、嫌じゃないけど……」

 

 夢人さんは恥ずかしそうに視線を上に向けて頬を掻いて応えた。

 

「ナナハに悪いって思ってさ。デートって男から誘った方がよかっただろ? 俺、ちゃんとナナハに向き合うって決めたのに、行動に移せなかったからさ」

 

「……そうだったの。でも、大丈夫よ。あの子はただ待っているのが嫌なだけ。夢人はそれにちゃんと応えてあげればいいわ」

 

「うん、わかってるよ」

 

 ……この人がナナハの好きな相手なのですのね。

 

「少し話をさせてもらってもよろしいかしら?」

 

「は、はい、何ですか、ベールさん?」

 

「敬語は必要ありませんわ。先ほども言ったように、わたくしは堅苦しいのは苦手ですので……ただ、お礼を言いたいんですの。ナナハを救ってくれてありがとうございます」

 

 わたくしは、ナナハのあんな姿知らなかった。

 

 わたくしの知ってるナナハは、いつも周りに対して無関心でいる女の子でした。

 

 周りを拒絶していたとでも言いましょうか、孤独な女の子でした。

 

 わたくしはそれを何とかしたくて、妹にしたり、いろいろと構ったりしたのですが、どうやらそれは逆効果だったらしく、彼女はわたくしのことを鬱陶しく思っていたのでしょう。

 

 それ以降、わたくしは彼女の心に踏み込むのが怖くなってしまいました。

 

 大切にしようと思うあまり、少し離れた位置に置いていたんです。

 

 踏み込まなければいけない心の距離と同じように、体の距離も取ってしまった。

 

 だから、わたくしは3年前、彼女をリーンボックスに置いて行った。

 

 決して彼女のことを足手まといと思ったわけではない。

 

 ただ、一緒にいれば、わたくしは戦えなくなってしまう。

 

 彼女を守ることを優先させてしまう。

 

 女神として犯罪組織を打倒しなければいけないのに、姉として妹を守ろうとしてしまう。

 

 ……だからこそ、ナナハが自分からわたくしに近づいてきたことが嬉しかった。

 

 ギョウカイ墓場でおかしなモンスター達と戦った時に見た彼女の姿は、わたくしの知っている姿とはまったく違っていた。

 

 あんな力強い姿の彼女を今まで知らなかった。

 

 何事にも無関心で、いつかふらっと消えてしまうんじゃないかと言うくらい儚い姿だった彼女。

 

 それが、瞳に力を漲らせて、しっかりと地に足を付けている姿を見たわたくしは本当に嬉しかった。

 

 わたくしが今までできなかったこと、それをしてくれた夢人さんだからこそ、お礼を言いたい。

 

「わたくしは、ナナハの姉と言っておきながら、あの子の何にも知りませんでしたわ。本当の家族になれていなかったんです。あの子が悩み、傷ついていることを知っておきながら、わたくしは何もできなかったんです」

 

 今更後悔しても遅いが、わたくしは彼に言っておかなければいけないことがある。

 

 ナナハを救ってくれた彼だからこそ、わたくしは今告白しなければいけない。

 

「あの子の心に踏み込むのが怖かった。いつか消えてしまうんじゃないかと思うくらい弱かった彼女の心を傷つけてしまうんじゃないかと思ってしまいましたわ」

 

「ベール様、それは私も一緒です。だから……」

 

「いいえ、わたくしはケイブと違って、ナナハの姉ですわ。姉として、怖がってはいけなかったんですわ」

 

 むしろ、ケイブはナナハを救ってくれた1人だ。

 

 彼女の逃げ道を造ってくれたおかげで、彼女は心を壊さずに済んでいたのだから。

 

「だから、本当に夢人さんには感謝しているんですわ。あなたがナナハの心に踏み込んで救ってくれたおかげで、今ナナハが笑っている姿が見れるんですもの。お礼を申し上げることしかできませんが、本当にありがとうございます」

 

「……お礼は必要ないよ。俺がナナハを助けたかったから助けたんだ。今のナナハがいるのだって、ベールのおかげだ」

 

「わたくしの?」

 

「ベールが最初にナナハを救ったんだ。ナナハがベールの妹だからこそ、俺はナナハに出会えた。だから、俺もありがとう。俺をナナハに出会わせてくれて」

 

 ……ああ、本当によかったですわ。

 

 夢人さんがナナハのことをちゃんと考えてくれている殿方で。

 

 だからこそ、ナナハも救われたんですのね。

 

「ナナハ、言ってましたよ。これからちゃんとベールとチカさんと本当の家族になりたいって」

 

「……ええ、聞きましたわ。これから本当の家族になるために、一緒に進んでいきますわ」

 

 裏路地であの子を見つけてから、今まで動いていなかった時間をゆっくりと進ませていきますわ。

 

 遅くてもわたくし達ならきっと進めますわ。

 

 だって、ナナハはわたくしとチカの自慢の妹なんですもの。

 

 これからも、わたくし達家族のこと、よろしくお願いしますわ、夢人さん。




という訳で、今回はここまで!
なんとなく、最後のベールに全部持って行かれた感がある。
やっぱり、初顔合わせだから女神達の視点が長くなるかも。
甘さは今後しばらく続く予定なので、そこで補充しましょう。
それでは、 次回 「雨のち晴れ」 をお楽しみに!

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