超次元ゲイムネプテューヌ 夢のヒーローを目指して   作:ホタチ丸

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はい、皆さんこんばんわ!
今回から新章突入!
それでは、 胎動 はじまります


子連れ勇者、悩みは娘の欠片?
胎動


 ギョウカイ墓場にあるゴミ山の1つ、いくつものゴミが積み重なり黒くなっているその中で赤い光が輝いていた。

 

『うふふ、ようやく戻ってきてくれたのね』

 

 ゴミ山の中から声が聞こえてくる。

 

 辺りには人の影はなく、モンスターすらこの付近には存在していない。

 

 しかし、声は静かに響いていく。

 

『まずは体かしら? 自由に動ける体を造らないとね』

 

 赤い光がこれまで以上に輝きだした。

 

 光はやがて人の形へと姿を変えていく。

 

 それはまるで夢人が召喚された時やアカリが現れた時と同じであった。

 

 

*     *     *

 

 

「……あ、あのー、ネプギア、さん?」

 

「ぷーっ」

 

 え、えっと、いったいどうすればいいんだろう。

 

 さっきまで感動再会って感じで抱き合っていたのに、それが終わった途端にこれだよ。

 

 ネプギアが急に離れたと思うと、眉を吊り上げて頬を膨らませながら俺を見つめている。

 

 如何にも、私怒ってますよ、って感じで俺を見ている。

 

 その仕草が怒っていると言うより、拗ねてるって言うか、とりあえず可愛くて困る。

 

 じゃなくて! この状況をどうにかしないと……

 

「な、なにゆえそのような態度を取られておるのでしょうか?」

 

「……私怒ってるんです」

 

 いや、それはわかってるんですけど、あなたの態度が可愛らしすぎて、俺にはどうしたらいいかわからないんです。

 

「夢人さんはウソつきです。約束、絶対に破らないって言ってくれていたのに破ったじゃないですか」

 

「あ、いや、それは、その……」

 

「確かに最初に破ったのは私ですよ。でも、あんなふうに破られるなんて酷いです」

 

 あ、あの時は、こんな風に戻ってくるだなんて思ってもいなかったし……

 

 で、でも、確かに俺が悪いんだし……

 

 俺がどう応えたらいいのかわからず慌てていると、ネプギアはクスリと笑い、俺に右手の小指を差し出してきた。

 

「だから、もう一度約束してください。それで許してあげます」

 

「え? でも、いいのか?」

 

「いいんです。それとも、ずっと怒られていたいんですか?」

 

「喜んで約束させてください!」

 

 怒っている仕草も可愛いが、ネプギアにはずっと笑顔でいて欲しい。

 

 怒られたままじゃ、ネプギアの笑顔が見れないじゃないか!

 

 そんなの嫌だ!

 

 俺が大きな声で言ったのがおかしかったのか、ネプギアは笑いながら差し出した小指を俺の小指と絡ませていく。

 

「もう2度と勝手にいなくなったりしないでくださいね、夢人さん」

 

「ああ、約束するよ」

 

「はい」

 

 そう言って離した小指を大切そうに胸に抱くネプギアの顔はとびっきりの笑顔だった。

 

 それも今まで見たことがないほど綺麗な笑顔だ。

 

 ……ああ、幸せだなあ。

 

 ネプギアの笑顔を見るだけで、俺はこんなに幸せな気分になるんだなあ。

 

 頬がにやけてくるが、別にいいか……

 

「アンタらは、いつまで2人の世界に入ってんのよ!!」

 

「げふっ!?」

 

 俺が幸せな気持ちに浸っていると、アイエフが俺の鳩尾を殴り上げてきた。

 

 こ、これ、マジで洒落にならないぞ?

 

 俺が両手で腹を抱えて苦しんでいると、アイエフに両肩を強く掴まれて激しく揺すられた。

 

「この、バカ夢人! アンタは、なんで、勝手に、いなくなってんのよ! しかも、あんな、ものまで、残して! 私達が、どれだけ、心配したと、思ってんのよ!!」

 

「アイ、エフ、そんな、激しく、揺すらない、でくれ、ないか」

 

 ヤバい、少し気持ち悪くなってきた。

 

 あ、何か見えてくるよ……

 

 アレは……なんだろう、綺麗な光が見えてくるよ……

 

「何とか、言いな、さいよ!」

 

「あいちゃん、あいちゃん、その辺にしといてあげなよ。」

 

「ネプ子は、黙ってて! こいつには、ガツンと、言ってやんないと!」

 

「でも、彼顔が真っ青だよ?」

 

「え……って、夢人!? ご、ごめん、大丈夫!?」

 

 なんだか危ないものが見えてたような気がするが、何のとか戻ってこれたみたいだ。

 

 せっかく帰ってこれたのに、危うく変な世界に行っちゃいそうだったよ。

 

 とりあえず、助かった。

 

「うぷっ、何とか大丈夫だ」

 

「もー、あいちゃんったらやり過ぎなんだから。本当に大丈夫? まだ顔真っ青だよ?」

 

「とりあえず旅立たずにすんだよ……って言うか、誰?」

 

 俺を助けてくれたのは見知らぬ少女だった。

 

 紫色の髪に、ネプギアと同じ髪飾りを2つ付けている。

 

 この子、本当に誰?

 

「ああ、そうか。自己紹介がまだだったね。わたしはネプテューヌ」

 

「俺は御波夢人……って、え?」

 

 ……今この少女はなんて言った?

 

 俺の聞き間違いでなければ、ネプテューヌって言わなかったか?

 

 ネプテューヌって名前はネプギアのお姉さんの名前で、あの大人の女性だったはず……

 

「どうしたの? まだ気分悪い?」

 

「……どうやら眼鏡を新しくする必要があるみたいだ」

 

「……眼鏡かけてないよね?」

 

 心の眼鏡です。

 

 ちょっと眼科行って今の視力測ってこないと。

 

 あ、この場合精神科なのかな?

 

「……信じられないかもしれないけど、コイツがネプテューヌ。ネプギアの姉よ」

 

「その言い方はひどいよ、あいちゃん。それじゃ、まるでわたしが偽物みたいじゃん」

 

「アンタがあんな詐欺まがいの『変身』するからでしょ? 前と後じゃまるで違うじゃない」

 

「そんなことないもーん。どっちも素敵なわたしなんだから」

 

 どうやら本当にこの子がネプテューヌさんらしい……

 

「って、えええええ!?」

 

「ねぷっ!? いきなり叫び出してどうしたの!?」

 

「ありえない!? ありえないだろ!? どう見ても別人だろ!?」

 

「まさかのわたし全否定!? こっちもひどい!?」

 

 こんなの絶対におかしいよ!?

 

 あの大人って雰囲気が似合う女性と思っていたネプテューヌさんの『変身』前の姿がこんなに少女だなんて。

 

 ネプギアが成長したら、こんな風になるんだって思っていたのに。

 

 俺がネプテューヌさんとネプギアを見比べようと、ネプギアに視線を向けると、彼女は顔を真っ赤にさせていた。

 

「あ、あ、あ、あの、も、も、もしかして、ぜ、ぜ、ぜぜぜ全部見てました?」

 

「うん、最初っからバッチリ見てたよ。まさかネプギアがあんな大胆なことするなんて思わなかったけどね」

 

「って言うか、ここどこだと思ってんのよ。あんた達2人だけの空間じゃないのよ?」

 

「あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ、あううううぅぅぅぅぅ」

 

 白い湯気が出るんじゃないかって思うくらいに顔を真っ赤にさせたネプギアは、2人の言葉を聞くと目をグルグルと回して両手で顔を押さえて座り込んでしまった。

 

 そ、そう言えば、俺もネプギアにき、き、キス、されたんだよな。

 

 俺はネプギアに口づけされた頬を手で押さえ、あの感触を思いだす。

 

 ……女の子の唇って、あんなに柔らかいんだなあ。

 

『パパ、しあわせ?』

 

 うん、幸せだ。

 

 あんな経験したことなかったし、まさかネプギアにされるなんて夢にも思ってなかった。

 

『パパ、ママ、なかよしでわたしもうれしい! わたしもちゅーしてほしい!』

 

 はいはい、今度ね……って、俺は誰と会話してんだ?

 

『ちゅー! ちゅー! ちゅーして!』

 

 俺が辺りを見回しても、顔を真っ赤にしてうずくまるネプギア、それをからかっているように見えるネプテューヌさん、遠巻きに見てため息をついているアイエフしかいない。

 

 俺達以外の人なんてここにはいないはず。

 

 それに、俺が言葉にしていないのに会話が成立する相手なんて……

 

『もー、パパ!!』

 

「うわっ!?」

 

 声が一際大きく叫ぶと同時に、俺の腕に光が発生した。

 

 俺の腕に収まるように光が消えていくと、そこには……

 

「パパ、ちゅーしてよ!!」

 

 見知らぬ赤ちゃんが俺を指さしていた。

 

 この子誰!?

 

 

*     *     *

 

 

「……そうだったんですか。いきなりアカリちゃんが消えてしまい、慌てて探していたのですが、無事でよかったです」

 

「私達も驚いちゃったんですけどね」

 

 今、プラネテューヌの教会に戻ってきた俺達はイストワ―ルさんとコンパに報告をしている。

 

 ……あのー、お2人さん。そんな苦笑しながらこちらを見ないでくれます?

 

「パパー、ひまー、あそんでー」

 

「あひょにししゃしゃい。あひょ、ひょひょをつみゃみゃにゃいで」

 

「はーい」

 

 俺が抱いている赤ちゃん、アカリが俺の頬を引っ張っていたかるからと言って、そんな目でこっちを見ないでくださいよ。

 

「それにしても、ゆっくんも心当たりないの?」

 

「ああ、ない……ってか、ゆっくんに言うな」

 

「ええー! いいじゃん、女の子からあだ名で呼ばれるなんて、かなりレベルの高い恋愛フラグイベントだよ。これを逃しちゃ男が廃るよ」

 

「……別にお前に恋愛フラグを立てる気はないんだが」

 

「パリーン! 今の言葉でわたしのガラスのハートが割れちゃったよ! どうしてくれんの!」

 

「……アンタは少し黙ってて。頭痛くなるから」

 

 ここまで帰ってくる前に呼び捨てで呼ぶようになったネプテューヌがわざとらしく擬音を使って俺に怒ってくる。

 

 ほとんど初対面の俺でもわかる、お前のハートはガラスじゃないはずだ。

 

 この人が本当にネプギアの姉なのか?

 

 俺は何度思ったのかわからないほど、頭の中で答えの出ない疑問を浮かべては消していく。

 

「でも、夢人さんも心当たりがないとなると、アカリちゃんはどうして夢人さんとギアちゃんをパパ、ママって呼んだり、赤ちゃんの姿なんでしょうか?」

 

「そんなにおかしいことなのか?」

 

「ええ、ゲイムキャラの話ですと、夢人さんの影響を受けて今の姿になったと聞いています……本当に何かお心当たりはないのですか?」

 

 うーん、そう言われても、赤ちゃんになんて心当たりがあるわけ……

 

 俺は抱いているアカリの脇を持ち上げて、全身を見てみる。

 

 俺やネプギアをパパ、ママと呼ぶ赤ちゃん……

 

 ……あれ? 何だろう、何か引っかかるような……

 

「何か心当たりがあるんですか?」

 

「い、いや、ちょっと気になったことが……」

 

 ま、まさかな……

 

 そんなことあるわけ……

 

 でも、ものは試しだし、聞いてみるしかないか。

 

「アカリ、1つ聞いていいか?」

 

「なーに?」

 

「……誕生日プレゼント、何が欲しい?」

 

「おとうとかいもうとがほしい!」

 

 目を輝かせながら応えるアカリの姿に俺は確信した。

 

 この子、俺の妄想から生まれた子だ!?

 

 なんで!? なんで妄想から生まれてくるの!?

 

 あのルウィーで妄想した内容から生まれた子だよ、この子!?

 

「ゆ、夢人さん、どうかしたんですか?」

 

「そうよ、急に変な質問したと思ったら、今度は急にそんなに汗をかきだすんだから」

 

 言えない! 絶対に言えない!!

 

 この子、実は俺の妄想がモデルの赤ちゃんなんだよねって。

 

 恥ずかしすぎて絶対に言えない!!

 

「どこかお身体の具合が悪いんですか?」

 

「え? そうなの、ゆっくん? なら早くコンパに診てもらいなよ」

 

「そうですよ、無理なさらないでください」

 

 やめて! やめてください!!

 

 今は優しくしないで!! 

 

 その優しさがすっごい心に痛いの!

 

 アカリがこんな姿になってるのは、俺の妄想のせいだなんて恥ずかしくて言えないけど、これじゃもう、口が裂けても言えない状況になってしまった。

 

 ど、どうしたらいいんだよ!?

 

「ねえ、パパ?」

 

「な、なんだいアカリ。パパは今、すごく……」

 

「きょうはさんにんでねよ?」

 

「ああ、うん。わかったわかっ……た?」

 

 ……3人?

 

 俺とアカリの2人じゃなくて?

 

「きょうはぱぱとままといっしょにねむるの!」

 

 ママと、ネプギアと一緒に眠る、だと?

 

 

*      *     *

 

 

「パパ、こっちこっち! ママはこっちね!」

 

 アカリちゃんがベットの上で、私と夢人さんを呼びながらベットを叩いている。

 

 ど、どうしてこんなことになったんだろう。

 

 アカリちゃんが3人で寝たいって言いだした時には驚いたけど、私はそれを了承した。

 

 え、ええと、その、これから3人で一緒に同じベットの上で寝ます。

 

 鏡を見ないでもわかるほど、私は自分の顔が真っ赤になっていることがわかる。

 

 い、い、い、いくらなんでもこれは無理だよ!?

 

 私は自分で了承したくせに、いざその時になると急に恥ずかしさが込み上げてきた。

 

 ……了承する時もすごく恥ずかしかったんだけど。

 

 で、で、でも、今は夢人さんと離れたくないし……

 

 もしかしたら今が夢の中にいるのではないかと思ってしまう。

 

 目を覚ますと、夢人さんがいない朝を迎えてしまうのではないかと不安になってしまう。

 

「あ、あのさ、アカリ? やっぱり、やめないか?」

 

「やーなの! いっしょにねむるの!」

 

「で、でもな」

 

「夢人さん」

 

 隣で私と同じように恥ずかしそうに頬を掻いている夢人さんのパジャマの裾を掴んで、私は上目遣いで夢人さんに言った。

 

「私も、今日は離れたくないです……だから、一緒に寝ましょ?」

 

「……わ、わかった」

 

 覚悟を決めた顔で頷く夢人さんを見て、私は安心した。

 

 ……よかった。

 

 で、でも、このパジャマ、おかしくないかな?

 

 今までお姉ちゃんといーすんさんくらいしか見る人がいなかったから、あんまり気にしていなかったけど……

 

 ちょっと子どもっぽいかもしれない。

 

 ピンク色の上着とズボンなんて。

 

 は、は、恥ずかしい!

 

 こんなことになるんだったら、もっと大人っぽいのを買っておけばよかった。

 

 おかしく見えてないかな。

 

 私はこれ以上、パジャマ姿を見られるのが恥ずかしくなったので、急いでベットの上に横になり、毛布を口の近くまでかけた。

 

 ……うぅぅ、恥ずかしいよぉ。

 

 すぐ隣で横になっているアカリちゃんは笑顔で私を見てくるけど、私はこのまま隠れてしまいたい。

 

「それじゃ、電気消すぞ」

 

 夢人さんがそう言って、電気を消してから私の反対側に横になった。

 

 アカリちゃんを挟んで、私は今夢人さんと一緒のベットの中に……

 

 か、考えちゃダメ!?

 

 今だって心臓が壊れちゃうんじゃないかと思うくらいドキドキしてるのに、これ以上考えちゃうと止まっちゃうよ!?

 

「パパ、ママ、いっしょしあわせ。ずっといっしょに……」

 

「アカリ?」

 

「……すぴー……」

 

「寝ちゃったか、それも無理ないよな」

 

 夢人さんは眠ってしまったアカリちゃんを優しくなでている。

 

 ……夢人さんは恥ずかしくないのかな?

 

 私はこんなに緊張しているのに。

 

 も、も、もしかして!?

 

 私夢人さんに意識されてないの!?

 

 ど、ど、どうしよう!?

 

 恋愛のことなんて全然わからないけど、こんな状況で自然でいられるなんて……

 

 うぅぅ、どうしたらいいんだろう。

 

 夢人さんに私を好きになってもらうには……

 

 私が悩んでいると、夢人さんが真剣な顔で私に声をかけてきた。

 

「ネプギア、お願いがあるんだ」

 

「ひゃ、ひゃい!? にゃ、にゃにゃんでしゅか!?」

 

 あうぅ、舌噛んじゃったよ。

 

 余計に恥ずかしい思いをした私だったが、夢人さんは真剣な顔のままだった。

 

「頼む、ネプギア」

 

 お願い、頼むって……

 

 そ、そ、そ、そんなことまだ早いですよ!?

 

 そ、そ、そ、それに、アカリちゃんも寝てるんですよ!?

 

 い、い、い、いくら夢人さんのお願いでも……

 

 私は今まで悩んでいたことなんてとっくに吹き飛んでしまっていた。

 

「ネプギア」

 

「……あっ」

 

 ……ダメ、流されちゃう。

 

 夢人さんだって男の人だもんね。

 

 そ、その、女の人と寝ていたら、その……我慢、できなくなっちゃっても仕方がないですよね?

 

 で、でも、そう言うのは恋人同士でやるものだし……

 

 ま、ましてや、私なんて……

 

「ネプギアにしか頼めないだ」

 

 ……ああ、ダメだ。

 

 断れないよぉ。

 

 そ、その、夢人さん、私、まだ、その、未経験ですから……

 

 ……や、優しくお願いします。




という訳で、今回はここまで!
さあ、これからしばらくイチャラブを書けると思うと気持ちまでうれしくなってきますね。
足先は寒いのに、心は温かいですよ。
それでは、次回 「パーティー」 をお楽しみに!

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