超次元ゲイムネプテューヌ 夢のヒーローを目指して   作:ホタチ丸

87 / 184
はい、皆さんこんばんわ!
今日は遅くなってしまってごめんなさい。
ちょっとプライベートの方で忙しくて……
っと、そんなことよりも、今回でこの章もおしまいです。
それでは、 おかえりなさい はじまります


おかえりなさい

 夢人が再びゲイムギョウ界に来る少し前……

 

「……すぴー……」

 

 プラネテューヌ教会の一室、ベットの上ではアカリが眠っていた。

 

 ずっと抱いているわけにもいかないので、コンパは自分がイストワ―ルの手伝いをしている間、ベットに横にさせていたのだ。

 

「……うにゅ? ……ママ?」

 

 アカリは眠そうに瞼をこすりながら起きだし、ネプギアを探すように辺りを見回した。

 

 しかし、ネプギアの姿が見つからず、アカリは首をかしげた。

 

「ママ、まだないてる? パパ、こっちきてない?」

 

 なぜかアカリは知らないはずの、ネプギアが泣いていることと夢人がまだゲイムギョウ界に戻ってきていないことを知っていた。

 

「わたし、がんばる! パパ、ママ、いっしょいたい!」

 

 そう言うと、アカリは思いっきり目をつぶり、全身をぷるぷると震わせて力を込めた。

 

 すると、次第にアカリの体が輝き始めた。

 

「……みつけた!! おいで、パパ!!」

 

 喜びを表すように目を見開いたアカリは、次の瞬間、光となって消えてしまった。

 

「アカリちゃーん、そろそろ起きないと……アカリ、ちゃん?」

 

 手伝いが一段落したコンパがアカリが眠っていた部屋に入ると、そこには彼女の姿はなく、彼女が寝ていたベットのシーツに眠っていた跡だけが残されていた。

 

 

*     *     *

 

 

「ちっ、テメェもしつけぇな!!」

 

「それは、お互い様でしょ!!」

 

 私は下っ端が振り下ろしてくる刀を右腕に持っているカタールで弾き、左腕のカタールで下っ端を斬りつけようとした。

 

 しかし、下っ端は体をそらすことでカタールを避け、後ろに跳ぶことで距離が開いてしまった。

 

 ……こんなことしてる暇なんてないのに!

 

 私は焦っていた。

 

 理由は、先ほど下っ端に吹き飛ばされたネプギアだ。

 

 彼女がまだ夢人がいなくなった悲しみを振りきっていないことは気付いていた。

 

 私だってまだ完全に振り切っているわけではないが、彼女は別だ。

 

 彼女は戦えない。

 

 それがわかっていながら、私とネプ子は彼女を一緒に連れてきた。

 

 今、彼女をこのままにしておくわけにはいかない。

 

 このままじゃ取り返しのつかないことになってしまうかもしれない。

 

 そんな不安がある。

 

 だからこそ、早く下っ端なんて倒さないと……

 

「……っ!? ネプギア!? あいちゃん!?」

 

 突然、後ろでリュウオウと戦っているネプ子の叫びが聞こえてきた。

 

 慌てて振り向くと、リュウオウはネプギアに向かって炎の塊を吐き出そうとしているのに、彼女はそれをただ呆然と見つめていた。

 

 ……何やってのよ!?

 

 私は急いで彼女を救おうと走り出そうとした瞬間、後ろから殺気を感じて左前方に転がった。

 

 膝立ちの状態で先ほどまで自分がいた位置をみると、下っ端の刀が地面に突き刺さっているのが見えた。

 

「おいおい、余所見なんてしてんじゃねぇよ!!」

 

「くっ、今はアンタ何かに……!?」

 

 今は急いでネプギアを助けないといけないのに。

 

 これじゃ、彼女を……

 

 そう思った時には、もう遅かった。

 

 リュウオウが炎の塊を吐き出す音と、それが空気を裂いて彼女に近づいているであろう音が聞こえてきた。

 

 こうなったら、斬られてでも……!?

 

 私が背中から斬られてでも、ネプギアを救おうと駆け出そうとした時だった。

 

 彼女と炎の塊の間に強烈な光が発生した。

 

 その光を私は二度見ている。

 

 ……この光は、アイツとアカリが現れた時と同じ。

 

 光は炎の塊を消し去り、ネプギアの前で人の形を造った。

 

「……間に合ったみたいだな」

 

 ……え?

 

 光が収まり、現れた人物の姿と声に驚いてしまった。

 

 だって、その人物は……

 

「遅れてごめん、ネプギア。今度は必ず守る!!」

 

 消えたはずの夢人だった。

 

 やばい……こんな時だってのに、目頭が熱くなってきた。

 

 涙が出てきてしまう。

 

「勇者、復活!! 喰らえ、フレイム!!」

 

 そう言った夢人の手からリュウオウに炎の球体が発射された。

 

 ……って、夢人が魔法を使えてる!?

 

 

*     *     *

 

 

 俺は今、炎の球体を目の前のドラゴンに向けて放った。

 

 ギョウカイ墓場でレイヴィスが俺に対して放っていた炎の球体を、俺も造り出すことができた。

 

 それもこれも、アカリのおかげだ。

 

 彼女が覚醒したおかげで、俺も普通に魔法を使えるようになったようだ。

 

 これが念願の正統派魔法!!

 

 今までの失敗魔法じゃない、本当の魔法!!

 

 よし、この力があれば、ネプギアを……

 

『……ぜんぜんきいてないみたいだよ?』

 

「……へ?」

 

 俺は頭の中に聞こえてきた声が信じられず、奴を見上げた。

 

 奴の腹には確かにフレイムが直撃した。

 

 ……だが、奴はフレイムが当たった腹をポリポリと爪で掻いていた。

 

 まるで痒いと言わんばかりのその仕草に、俺は呆然としてしまう。

 

 な、なんでだ!?

 

 俺は確かに魔法を成功させたはずだぞ!?

 

「も、もう一度だ!!」

 

 俺はもう一度フレイムを今度は奴の頭に向かって放った。

 

 いくら奴が丈夫だと言っても、傷が付いている鼻先に当たれば!!

 

 ……しかし、俺のその考えも虚しく、奴は鼻息だけでフレイムをかき消してしまった。

 

 ……俺の魔法って、鼻息以下なのか。

 

 思わず体が崩れ落ちてしまい、地面に両手をついてうなだれてしまった。

 

「……プッ、アハハハハハハ!! なんだよ、そりゃ!! 威力が全然ないじゃないか!!」

 

 後ろではリンダが俺を笑う声が聞こえてくるが、俺には反論することができない。

 

 俺だってかっこよく登場しておいて、こんな結果になるなんて思わなかったよ!?

 

 せっかく正統派魔法を使えるようになったのに!?

 

 悔しさのあまり涙が出てきた。

 

 ……ちくしょう。

 

「何やってのよ、バカ夢人!! 真面目にやりなさいよ!!」

 

「……い、いやな、アイエフ。これでも真面目に……」

 

「危ない!?」

 

 アイエフの叫びを聞いて、慌ててドラゴンを見上げると、奴は再び炎の塊を吐き出そうと準備をしていた。

 

 って、のんきに構えてる暇なんてない!?

 

 今からじゃ逃げられない!? なら!!

 

「ごめん、ネプギア!!」

 

「きゃあっ!?」

 

 俺はネプギアを押し倒して、炎の塊から庇おうとした。

 

 ネプギアだけは何があっても守る!!

 

「デュアルアーツ!!」

 

「ン!? ギャオオオオ!?」

 

 来るであろう身を焼くような痛みを覚悟していたが、それは訪れることはなかった。

 

 上空から女性の声とドラゴンの悲鳴が聞こえてきた。

 

「……お姉ちゃん」

 

 俺の肩越しからドラゴンを見たネプギアがそうつぶやいた。

 

 お姉ちゃんって、ネプテューヌさんが助けてくれたのか?

 

 

*     *     *

 

 

 私は夢人さんの肩越しから、お姉ちゃんがリュウオウにデュアルアーツを炸裂させるところを見ていた。

 

 リュウオウは連続で鼻先を斬り裂かれたことで、炎の塊を維持することができずに無散させた。

 

「って、ごめん、ネプギア。いきなり押し倒したりして」

 

 そう言って、私の上から夢人さんが退き、手を差し出してきた。

 

 私はその手を強く握りしめた。

 

 ……本当にここにいるんだ。

 

 握った手の温かさが、私に夢人さんが幻でないことを教えてくれる。

 

「……あっ」

 

 気が付けば頬に熱い涙が流れていた。

 

 夢人さんがいることが嬉しくて、涙を我慢することができない。

 

「ど、ど、どうした!? どこか痛いのか!?」

 

 夢人さんは慌てて心配してくれるが、この痛みは嬉しい痛みなんです。

 

 ……傷ついた心が治っていく痛み。

 

 冷たくなっていた心が急に温かい気持ちで満たされていく。

 

 またあなたが私の名前を呼んでくれたことが、こんなにも嬉しい!

 

「……大丈夫です、夢人さん」

 

 あなたの名前を呼ぶだけで、私は嬉しくなる。

 

 あなたがちゃんとここにいると頭ではなく、心が理解していくようだ。

 

「よかった……でも、ごめんな、ネプギア。俺、守るって言っておきながら、いつも傷つけてばかりで」

 

「……夢人さん」

 

「今も守るって言っておきながら、何にもできなかった。でも、俺は君を守りたい!」

 

 夢人さんはそう言って、お姉ちゃんと戦っているリュウオウをまっすぐに見つめて言う。

 

「俺だって囮ぐらいはしてみせる。だから、ネプギアはここで……」

 

「いやです!!」

 

 私は夢人さんの言葉をすぐに否定した。

 

 そうやって勝手なことばっかりしないでください!!

 

 勘違いばっかりしないでください!!

 

「夢人さんはちゃんと私を守ってくれています!! さっきだってそうです!!」

 

 そう、だから今度は私の番だ。

 

 夢人さんはいつも私を守ってくれている。

 

 でも、私だって守られているばかりじゃ嫌だ。

 

 私も夢人さんを守ります!!

 

 だから夢人さん、勇気をください。

 

 あなたがここにいると、私にもっと感じさせてください。

 

 また前に歩きだせるように……

 

 

*     *     *

 

 

 ネプギアはそう言うと、夢人の腕を引っ張り頭を下げさせた。

 

「……え」

 

 その時、夢人は何をされたのか理解できなかった。

 

 気が付けば、ネプギアの顔が自分の真横にある。

 

 目を閉じたまま、自分の頬に唇をくっつけているネプギアの横顔が……

 

「……ん、夢人さん、勇気、もらっちゃいました」

 

「……へ、あ、ああ」

 

「あなたの勇気と一緒に戦ってきます。だから、見ててくださいね」

 

 そう言ってほほ笑むネプギアの頬はほんのりと赤く染まっており、夢人はその笑顔に見惚れてしまった。

 

「あなたと私の、この力を!!」

 

 ネプギアの体を『変身』の光が包み込んだ。

 

 しかし、それは以前までの彼女の『変身』と異なるものだった。

 

 白いレオタードのようだったプロセッサユニットは、姉であるネプテューヌと似た形の黒と紫のプロセッサユニット《ライラックMK2》へと変化していた。

 

 その変化に戸惑うことなく、ネプギアはM.P.B.L.を構えてリュウオウに向かって飛び上がった。

 

「お姉ちゃん!!」

 

「ネプギア!? その姿は!?」

 

 ネプテューヌは、以前までとは違うネプギアのプロセッサユニットに戸惑い驚きの声をあげてしまう。

 

「お姉ちゃん、後は私達に任せて」

 

「私達って……」

 

「この力は、私1人の力じゃない。私を守ってくれる夢人さんの力も一緒なの。だから、絶対に負けない!」

 

 ネプギアの言葉を聞いたネプテューヌはほほ笑みながら頷き、ネプギアの前で刀剣をリュウオウに向かって構えた。

 

「わかったわ。なら、わたしが先に斬り込んで、あなたのために道を造るわ」

 

「お姉ちゃん」

 

「わたしも一緒に戦っていることを忘れないで」

 

「……ありがとう」

 

 そう言って互いにほほ笑み合うと、ネプテューヌは刀剣を振りかぶりながらリュウオウに向かって飛翔した。

 

 リュウオウは自分に向かって飛んでくるネプテューヌに向かって炎の塊を吐き出し迎撃しようとする。

 

「はあああああああ!!」

 

 自身に向かってくる炎の塊をネプテューヌは刀剣を振るうことでかき消し、その勢いのまま一回転して上段からリュウオウの頭めがけて勢いよく刀剣を振り下ろした。

 

「デュアルエッジ!!」

 

 振り下ろした刀剣はリュウオウの左目を完全に斬り裂き、リュウオウは堪らず左目を押さえながら後ずさってしまった。

 

 その姿を見たネプギアはM.P.B.L.を強く握りしめて横に払うと、自分の中にある魔力を解放した。

 

「M.P.B.L.オーバードライブ!! 行きます!!」

 

 M.P.B.L.から巨大な光の刃が発生し、ネプギアはそれをリュウオウへと振るう。

 

 リュウオウの腹を左上へ斜めに斬り裂くと、今度は斬り返す勢いで右上へ斬り裂きリュウオウを上空へと吹き飛ばした。

 

 中に浮かび上がったリュウオウに向かって、ネプギアはM.P.B.L.の銃口を向け、次々と光の球を発射した。

 

 頭、翼、腕、足と次々と光の球が命中していく。

 

 それに伴い、リュウオウの体がさらに浮き上がっていった。

 

「全力で撃ち抜きます!!」

 

 M.P.B.L.を両手で構え、銃口に魔力を収束していく。

 

「これが私と夢人さんの力!! プラネティックディーバ!!」

 

 M.P.B.L.から発射された光の波はリュウオウに直撃すると、リュウオウを包み込むように広がり強烈な光の閃光が発生した。

 

 リュウオウはその一撃によって光の粒子となり消滅してしまった。

 

 ネプギアはそれを確認すると、すぐに夢人に向かって飛んで行く。

 

「夢人さん!!」

 

「って、ネプギア!?」

 

 M.P.B.L.を放り投げ、ネプギアは夢人の胸の中へと飛びこんで行った。

 

 夢人はいきなり飛んできたネプギアに驚きながらも、しっかりと受け止め抱きしめた。

 

「……まだ言ってませんでしたね」

 

 夢人の胸から顔をあげて、ネプギアはほほ笑みながら言う。

 

「おかえりなさい、夢人さん!!」

 

 一瞬何を言われたのかわからなかった夢人であったが、すぐにネプギアの言葉を理解し、ほほ笑みながら返した。

 

「……ただいま、ネプギア」

 

 ネプギアは頬を赤く染めたまま笑顔で夢人の胸へと再び顔を埋めた。

 

 夢人はそんなネプギアを強く抱きしめた。

 

 ネプギアもそれに応えるように、夢人の背中に腕をまわして強く抱きしめ返した。

 

 ……2人が二度と離れてしまわないように。




という訳で、今回はここまで!
いやあ、長かった。長かったぞ!
何が長かったのかは本編を読んでくださった皆様ならわかってくれるはず!
後は、おまけの女神通信R(ネプギア編)でこの章も本当におしまいです。
それでは、 次回 「女神通信R(ネプギア編)」 をお楽しみに!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。