超次元ゲイムネプテューヌ 夢のヒーローを目指して 作:ホタチ丸
いよいよこの章も大詰め、今回は一気に動きます。
それでは、 再就職 はじまります
『……触って……早く』
「……触って、って何を……」
俺は恐る恐る光ってる石とディスクに近づく。
いきなり光だしたと思ったら、今度は声まで聞こえてきた。
こんなの普通じゃありえない。
いったいなんだって言うんだよ。
『……早く……触って』
「声は……石から聞こえてる?」
近づくと声が石から聞こえていることがわかった。
じゃあ、石に触ればいいのかな?
『……こっちじゃないよ……そっちだよ』
「え? ディスクの方?」
俺が手を伸ばして石に触れようとすると、何故か石からダメだしされてしまった。
この石、もしかして見えてる?
こっちを見てるのか?
光ってるだけでただの石とは思えなかったけど、どこかに目でもついてるのか?
俺は言われた通り、ディスクに触れた。
『……プログラム……修復開始』
……瞬間、俺の頭の中に何かが入り込んでくる感覚が生まれた。
これって……
* * *
「とーうちゃーく! っと、如何にも秘密基地ですって雰囲気だね」
ここまでの道に残っていた足跡とタイヤの跡を辿ってきたネプテューヌ達だが、辿り着いた先に見えたノーコネディメンションの入り口を見て、少しだけ呆れてしまった。
ご丁寧に近くに駐車してあるトラックには、怪しい資材が載せられており、それを運んでいるのは帽子とマスクで顔を隠している怪しい人達。
運んでいる資材には、これまた丁寧にマジェコンのマークがついていた。
極めつけに黒いネズミ、ワレチューが資材を運ぶ人達に指示を出していたのだ。
「早く運ぶっちゅ。アルバイト代はしっかりと働いてもらうっちゅよ」
『オッス!!』
「……アルバイトなんだ、あの人達」
「……なんか、犯罪組織の見てはいけない裏の顔を見た気がするわ」
ネプテューヌとアイエフは、構成員だと思っていた人達がただのアルバイトだと知って呆れてしまった。
そこまで人材不足なのかと思うと同時に、犯罪組織でアルバイトをする人達がいることに……
しかしただ1人、その光景を見て辛そうに顔を歪める人物がいた。
「……アルバイト」
「ネプギア? どうしたの?」
ネプテューヌは、自分の横で辛そうに顔を歪めながら胸を押さえるネプギアを心配して声をかけた。
「……ううん、何でもないよ」
「無理しないでね……それじゃ、一気に行っちゃいますか!」
「そうね、さっさと終わらせるわよ!」
無理して笑うネプギアために、2人は早く基地を破壊しようと、隠れて覗いていた茂みから飛び出した。
「な、なんで女神達が!?」
「先制攻撃だ! おりゃあああ!!」
「ちゅっ!?」
ワレチューは、突然茂みから飛び出してきた2人に驚いて動きを止めてしまい、その隙をつかれてネプテューヌの木刀で頭を強打されてしまった。
頭を強打されたワレチューはそのまま気絶して倒れてしまい、アルバイト達は雇い主が倒れたことで慌てて逃げ出した。
アイエフは逃げて行ったアルバイト達を見てため息をつきながら、トラックに載せられていた資材を確認した。
「まったく、逃げ出すんならこんなことするなっての……中身は何かの部品みたいね。まあ、十中八九マジェコンの部品なんだろうけど」
「おー、あいちゃん、そんなことわかるの?」
「普通に考えたらそれしかないでしょ? こんなマーク付けてんのに、他の部品でした、なんて冗談じゃないわよ」
「それもそうだよね」
アイエフのおどけた様に言う言葉に、ネプテューヌはほほ笑みながら応え、気絶したワレチューが起き上がってこないかどうか、木刀でつつきだした。
「……うん、こっちも起きないみたいだし、大丈夫だね」
「お、お姉ちゃん、アイエフさん」
1人出遅れたネプギアは、2人が全部終わらせた後に茂みから出て2人に近づいた。
「ボーっとしてんじゃないわよ」
「す、すいません」
「まあまあ、あいちゃんもその辺にして置いて、さっさと中に入ろう」
そう言って、気絶したワレチューをその場に放置して、3人はダンジョンの中に入って行った。
* * *
「中はまだ工事中、って感じかな? そこら辺に変なのが置いてあるし」
「無駄口叩いてると置いてくわよ」
「あ、待ってよ、あいちゃん」
ネプテューヌがダンジョンの通路に置いてある資材や組み立て途中だと思われる機械の塊を横目に見ながら歩いていると、横からアイエフがネプテューヌを追い抜いて先に歩いて行ってしまう。
ネプテューヌも置いて行かれないように少し小走りでアイエフに並んで歩こうとするが、後ろにいるネプギアのことがどうしても気になってしまう。
「ネプギアも、早く早く」
「……うん」
ネプテューヌは俯きながら応えたネプギアを見て、やはり連れてくるべきじゃなかったかと思ってしまう。
ここに来るまでは何とか大丈夫そうだったが、ダンジョンの入口に着いた途端に、ネプギアの様子がおかしくなった。
いったい何があったのかと不安そうにネプギアを見るネプテューヌだったが、悩んでいた顔から真剣な顔になり、一度頷くとネプギアの近くに寄り、その手を握った。
「……お姉ちゃん?」
「ネプギアが何で急にそんな顔になったのかわからないけどさ、無理なら戻ってもいいんだよ?」
ネプギアのことを心配するネプテューヌは、俯いているネプギアの顔を覗き込みながら尋ねた。
「正直、今のネプギアは戦えないでしょ? だったら……」
「……ごめん、お姉ちゃん。それでも連れて行って欲しいの」
「……ネプギア」
自分を心配するネプテューヌの気持ちは嬉しいが、ネプギアはそれでも辛そうに顔を歪ませて一緒に行くことをやめようとしなかった。
「わがままだってわかってるよ。でも、立ち止まったままじゃいられないの」
「……うん、じゃあこのまま行こうか?」
「……ありがとう」
ついてくる意思を変えないネプギアを悲しそうに見つめた後、ネプテューヌはネプギアの手を引きながらアイエフが待っている先まで歩きだした。
先を歩いていたアイエフは、2人を心配そうに見つめながら待っていた。
「ごめんねー、あいちゃん」
「いいわよ、別に。さあ、行くわよ」
「それじゃ、気を取り直して、レッツゴー!」
ネプギアとつないでいない手を振り上げて、ネプテューヌが明るく叫んだ。
……しかし、ネプギアの顔は暗いままであった。
* * *
「父さん! 母さん!」
「ど、どうした急に?」
居間で休んでいた夢人の父親と母親は、自室で休んでいたはずの息子が急にやってきたことに驚いてしまった。
夢人が記憶を失って以降、自分達はどう彼に向き合っていいのかわからず、避けるように接していた。
それが今は彼の方から自分達に近づいてきていることに驚きを隠せない。
「俺、今から行かなきゃいけないところがあるんだ」
「……こんな時間にどこに行くって言うの?」
窓の外はすでに暗くなっており、彼が外出する理由なんてないように思えた。
言外に母親は彼に外出は控えるようにと、心配そうに視線を向けた。
「それは言えない。でも、どうしてもそこに行ってやらなきゃいけないことがあるんだ」
母親が自分を心配しているとわかるが、夢人はそれをほほ笑みながら否定した。
そんな様子を見て、父親は真剣な表情で彼に尋ねた。
「……それは、お前がやりたいことなのか?」
「ああ、俺がやりたいことなんだ」
夢人は父親の真剣な表情を正面から見つめながら応える。
「やり遂げたいことがある。そのために、今から行かなきゃいけない。父さんと母さんには心配ばかりかけてるけど、これは絶対に譲れないんだ」
「……そうか、わかった」
父親は夢人の真剣な言葉を聞き、ほほ笑みながら頷いた。
「お前が本当にやりたいことなら、私達は反対しない。親が子に望むことは自分たちの世話じゃない。子が本当にやりたいことをやることだ」
「……父さん」
「お前が何を隠しているのかはわからない。ただ、お前の真剣な思いだけはわかった。私達はそれを信じる。だが、絶対に中途半端な真似だけはするな。男ならやりたいことをやり抜いて来い」
「……ありがとう、行ってきます」
『行ってらっしゃい』
ほほ笑んで居間を去っていく夢人の後姿を見て、両親はほほ笑みながら互いに顔を見合わせた。
息子の成長が2人には嬉しく思えた。
記憶を失っていても、大切な息子である彼の成長が……
* * *
俺は両親と話した後、家から飛び出して、ある場所を目指した。
……思い出した。思い出したぞ!
なんで忘れていたんだと、自分を怒鳴りたい気持ちを抑えながら俺は走り続けた。
本当に泣かせてばかりでごめん。
君を守ると言いながら、ずっと君を傷つけていてごめん。
でも、今度は必ず守るよ。
そのために、今から君の所に行く。
「着いた!」
俺はディスクを拾った公園に辿り着いた。
『……イメージして』
握っている石の欠片から声が聞こえてきた。
『強く……イメージして』
何を、とは考えない。
イメージするものは決まってる。
俺がイメージするのは、ここで泣いていたあの子なんだから。
『……聞いていい?』
……何を?
『……会いたい?』
……会いたいよ。
今すぐに会いたい。
俺は目を閉じて、石の欠片を握る力を強めた。
今、会いに行く。
待っててくれ、ネプギア!!
『……おいで……パパ』
* * *
「チッ、何やってやがんだ、あのネズミは」
リンダはいつまで経っても資材を運んで来ないワレチューとアルバイト達に苛立っていた。
マジックからの命令で、ノーコネディメンションを前線基地として改造しなくてはいけないのに、これではいつまで経っても終わらない。
「仕方ねぇ、ちょっくら行ってみ……」
「わー! 広いところに出たね」
リンダが入口にいるであろうワレチューに文句を言うため動きだそうとした時、リンダがいる広い空間にネプテューヌ達がやってきた。
「ここってコントロールルームとか指令室なのかな? それにしては広いけど、なんとなくゴールっぽいよね?」
「アンタはそんなことしか考えられないの? どっちでも関係ないでしょうよ。ここは壊すしかないんだから」
「それもそっか。でも、お決まりだよね。こう言う場所を破壊するのってさ。それじゃ、早速……」
「って、テメェ等はなにしようとしてやがんだ!?」
リンダが自分を無視して、この場所を破壊しようとしているネプテューヌ達に向かって慌てて叫んだ。
「あら、いたの?」
「テメェは気付いてただろ!? 明らかにこっちを見たよな!?」
リンダはこの空間に入った時、アイエフが自分を見たのを見逃がさなかった。
それにもかかわらず、自分を無視してここを破壊しようとするアイエフに怒りがわいてきた。
「テメェ等がどうしてここに居んのかは知らねぇが、ここを破壊されるわけにはいかねぇンだよ」
「でも、アンタ1人で何ができるって言うのよ。今なら見逃してあげるから、さっさと出て行っちゃいなさい」
「ふざけんな!! マジック様からの命令を途中で放棄するわけにはいかねぇンだよ!!」
リンダはそう言って、ポケットからモンスターディスクを1枚取り出して宙に投げた。
モンスターディスクからは、エンシェントドラゴンによく似たモンスターが光とともに出現した。
「やれ、リュウオウ!! アイツらなんてやっつけちまえ!!」
「ギャオオオオオオン!!」
エンシェントドラゴンによく似ているドラゴン、リュウオウは雄叫びを上げながら、その血走った目でネプテューヌ達を見下ろした。
「リュウオウね、どうせなら第1形態から出てくればよかったのに」
「……油断すんじゃないわよ、ネプ子」
「大丈夫大丈夫、そっちが第2形態で行くなら、こっちだって『変身』しちゃうもんね!」
そう言って、ネプテューヌは両手をリュウオウに向けて叫んだ。
「久々の『変身』シーン、刮目せよ!!」
ネプテューヌを中心に光の柱が発生し、彼女の姿が変わっていく。
髪は三つ網を2つ造るほど伸び、やや幼さが残っていた体は出るところは出て、引っ込むところは引っ込む大人の女性の体になった。
体に纏う黒と紫のプロセッサユニット《パープル》の感触を確かめるように、手を握る青く輝く瞳を持つ彼女。
女神、パープルハートの登場である。
「アイツの相手はわたしがするわ。その間に、ネプギアとあいちゃんはあの子を」
「わかってるわ、行くわよ、ネプギア!」
「は、はい!」
ネプテューヌが手に持つ刀剣の切っ先をリュウオウに向けながら、ネプギア達に指示を出した。
「行くわよ!! はああああああ!!」
「ギャオオオオオオ!!」
プロセッサユニットの力により、ネプテューヌは宙に浮き上がり、リュウオウに向けて飛翔した。
それを迎え撃とうと、リュウオウはその太い腕をネプテューヌの上から振り下ろそうとした。
「甘い!」
ネプテューヌは振り下ろされた腕を避け、一気に上昇し、リュウオウの鼻先めがけて刀剣を振り下ろした。
「ブレイクラッシュ!!」
「ギャオオオ!?」
斬り裂かれた鼻先から勢いよく血が噴き出し、リュウオウは堪らず後ずさり、腕で鼻先を押さえてしまった。
「まだ行くわよ!」
「ガアアアアアア!!」
「なっ!? くっ!?」
追撃をしようと飛翔するネプテューヌだったが、リュウオウは後ずさると同時に体を回転させて尻尾で彼女を叩き落とそうとした。
彼女はそれに気づくのが遅れ、刀剣で尻尾を受け流すが、吹き飛ばされてしまった。
「……一筋縄ではいかないみたいね。でも、負けるわけにはいかないわ」
空中で回転することで、何とかバランスを取り戻したネプテューヌは再び刀剣を構えてリュウオウを睨んだ。
しかし、リュウオウは吹き飛ばしたネプテューヌから視線を外し、ある1点を見つめた。
「……っ!? ネプギア!? あいちゃん!?」
リュウオウの視線の先には、ネプギアとアイエフがリンダと戦っていた。
リンダの刀とアイエフのカタールが激しく火花を散らしながらぶつかり合っている後方で、ネプギアだけが呆然と立ち尽くしていた。
リュウオウは、そんなネプギアに向けて顔を仰け反らせて口元に炎の塊を収束させ始めた。
「ネプギア!? くっ!?」
ネプテューヌはリュウオウが炎の塊を吐き出すのを阻止しようと全力でリュウオウの口元に飛翔した。
……しかし、無情にもそれは間に合わず、ネプギアに向けて炎の塊が吐き出されてしまった。
* * *
……私は一体何をしているんだろう。
「きゃっ!?」
「ネプギア!? くっ、よくもやってくれたわね!!」
私は下っ端さんの攻撃を受けとめることができず、吹き飛ばされてしまった。
手に持っていたはずのビームソードもどこに飛んで行ってしまい、私は無様にも床に転がってしまっていた。
……何をやっているんだろう。
私も夢人さんがいなくなったことを受け入れて、前に進もうとしたのに……
夢の中で出会った夢人さんは、記憶を失っていても何も変わらなかった。
あの映像記録の様な事を言う夢人さんに私は自分の感情を爆発させてしまった。
……なんで思いだそうとしないですか。
忘れたままでいいなんて、悲しいこと言わないでください。
夢の中でまで消えないでください!!
夢なら、ちゃんと私のことを守って欲しかった……
私の名前を呼んで、涙を止めて欲しかった……
……そうすれば、私はまた前に進めるようになったのに。
ここに来てからも、夢の中のあなたの影がちらつく度に、私はまたあなたに会いたくなってしまう。
前に進めないんです。
ユニちゃん達のように、夢の中のあなたのように、私も前に進もうとしたのに……
私は立ち上がりはしたが、これ以上戦う力が残っていない。
……だって、私は今も前に進めず、立ち止まっているんだから。
私が呆然とアイエフさんと下っ端さんの戦いを見ていると……
「ネプギア!?」
突然、お姉ちゃんが私を呼ぶ声が聞こえた。
私が上を見上げると、リュウオウが私に向かって炎の塊を吐き出そうとしていた。
……早く逃げなきゃ。
私はそう考えたが、体が動かない。
逃げなきゃいけないのに、足がまったく動かなかった。
……ごめんね、お姉ちゃん、アイエフさん。
無理やりついてきたのに、ただの足手まといになっちゃって……
でも、私はもう戦えないよ……
リュウオウから吐き出されて近づいてくる炎の塊を私は呆然と見つめることしかできない。
……死んじゃうのかな、私。
近づいてくる炎の塊がゆっくりに見える。
これが走馬灯なのだろうか?
今までの思い出が次々と私の頭の中に浮かんでは消えていく。
そして、最後に見えたあの人の笑顔……
「……夢人さん」
……もう一度、あなたに会いたかった。
私は目を閉じて、最後の瞬間を待った。
……しかし、いつまでも炎に焼かれる痛みは来ない。
それどころか、目を閉じていてもわかるほどの光が目の前で発生した。
「……間に合ったみたいだな」
……え?
私は突然聞こえてきたその声に驚いてしまう。
だって、その声は……
「遅れてごめん、ネプギア」
私が目を開けると、そこには私が会いたかった人がいた。
涙が溢れて来て、視界がぼやけてもわかるその人は……
「今度は必ず守る!!」
……夢人さん!!
「勇者、復活!!」
という訳で、今回はここまで!
ようやく夢人君を再登場させることができた!
そして、この章も次の話でおしまいです。
それでは、 次回 「おかえりなさい」 をお楽しみに!