超次元ゲイムネプテューヌ 夢のヒーローを目指して   作:ホタチ丸

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はい、皆さんこんばんわ!
今回は区切りとして、ちょっといつもより短いですけど、楽しんでもらえるとうれしいです。
それでは、 会いたい はじまります


会いたい

〔この映像を皆が見る頃には、俺はおそらくそこにいないだろう〕

 

 モニターに映っている夢人さんは申し訳なさそうにしながらほほ笑んで言う。

 

〔まず皆に謝らなければいけないことがある。逃げ出して、ごめん〕

 

 頭を下げて謝る夢人さんの姿に、私は思わず目を見開いて驚いてしまった。

 

 ……何で夢人さんが謝るんですか。

 

 ……あの時、私が勝手に夢人さんを逃がしたんです。

 

〔俺は死ぬことが怖かった。記憶を失うことが、皆のことを忘れてしまうことが怖かった〕

 

 当たり前です。

 

 誰だって怖いです。

 

 だから……

 

〔皆が女神達の救出のために全力を出していたのに、俺は全力を出せなかった。だから、ごめん〕

 

 ……そんな泣きそうな笑顔でほほ笑まないでください。

 

〔これを見ていると言うことは、女神達を無事に救出して、勇者のことについても聞いた後だと思う。でも、皆に言っておきたいことがある〕

 

 そう言った夢人さんの顔は、先ほどまでの泣きそうな笑顔ではなく、真剣だった。

 

〔俺は自分で勇者であることを選んだ。誰からの強制でもなく、偶然『シェアクリスタル』に選ばれたわけじゃない。俺が勇者であろうとしたんだ〕

 

「……何でそんな真似したのよ」

 

「……ユニ、落ち着きなさい」

 

「何で全部知っても、勇者なんかであろうとしたのよ!!」

 

 ユニちゃんがノワールさんの制止を聞かないで、モニターに映る夢人さんに向かって叫んだ。

 

 その言葉は届かないとわかっていても叫ばずにはいられなかったんだと思う。

 

 ……私だってそうだ。

 

 何で勇者であろうとしたんですか。

 

 あなたは怖いって言っていたじゃないですか。

 

 なのに、何で……

 

〔俺は自分が死ぬことよりも、怖いことがあることに気付いた〕

 

「……なんなの、それ」

 

〔俺はこのゲイムギョウ界の明日がなくなることが一番怖かった〕

 

「……この世界の、明日?」

 

 ……なんですか、それ。

 

〔この世界が壊れてしまうことの方が怖かったんだ。だから、俺はこれから戦いに行く。『シェアクリスタル』を、女神の卵を砕くために〕

 

「……じゃあ、夢人は最初から……」

 

〔そうすれば、新しい女神、『再誕』の女神が生まれるはずだ。後は、彼女がこの世界を崩壊から救ってくれる〕

 

 ……なんで。

 

〔それが俺にできる、最後の皆への恩返しだ〕

 

「……死ぬつもりだったの」

 

 ……どうしてっ!

 

「ママ?」

 

 私は抱いているアカリちゃんを強く抱きしめて俯いた。

 

 これ以上、モニターの夢人さんを見たくなかったからだ。

 

〔大切な皆が明日を迎えられるように、俺は俺のできることをする。例え、それで自分が消えてしまうことになっても、俺はもう逃げない。一度逃げてしまったからこそ、もう二度と逃げないと決めたんだ〕

 

 ……そんな明日いらないです。

 

 そんな決意なんてして欲しくありませんでした。

 

〔俺は大切な皆がいるこの世界が大好きだった。最初は、勝手にこの世界に呼び出されて憎んでいたはずだったのに、皆がいたから俺はこの世界を好きになることができた〕

 

 ……憎んでいて欲しかった。

 

 好きにならないで欲しかった。

 

〔アイエフ、最初からお前には世話になってばっかりだった。お前が俺に戦い方を教えてくれたおかげで、俺はこの世界で戦えるようになった。ありがとう〕

 

「……バカ」

 

〔コンパ、いつも怪我の治療してもらってばっかりだったな。俺が無茶できたのは、お前が支えてくれたおかげだ。ありがとう〕

 

「……お礼……なんて……いらないですぅ」

 

 私は俯いていて2人の顔は見ていないが、2人とも泣いているようで声が震えていた。

 

〔日本一、お前の誰かを助けたいと言う強い前向きな気持ちにいつも励まされた。後ろを向いてしまいそうになった俺の気持ちをいつも前に向けてくれた。ありがとう〕

 

「ぐすっ……夢……ぐすっ……人」

 

〔がすと、お前のおかげでここまで俺は生きていられた。お前の造ったB.H.C.のおかげで、生まれてくる女神にも心を生むことができたんだ。ありがとう〕

 

「……がすとは……そんな……つもりじゃ」

 

〔5pb.、お前の歌声はいつも心に響いて俺に力をくれた。本当は人見知りなのに、この世界のために戦うことを決意した強い心が俺に勇気をくれた。ありがとう〕

 

「……ボクなんて……強くないよ」

 

 夢人さんが皆に次々と言葉を残していく。

 

 でも、私はそんなの聞きたくない。

 

 だって、これじゃ、まるで……

 

〔ファルコム、お前の言葉が俺に大切なことを思い出させてくれた。勇者の力だけが俺じゃないって気付かせてくれたのは、お前の言葉のおかげだ。ありがとう〕

 

「……そんなこと……ないよ」

 

〔ケイブ、強くなれるって言ってくれたお前の言葉を信じてよかった。それを信じて、俺は強くなろうと頑張れたんだ。ありがとう〕

 

「……違うわ……それはあなたの」

 

 嫌だ、聞きたくない。

 

 ここにいたくない。

 

〔フェル、お前にお兄さんって言われて嬉しかった。俺みたいな奴を兄って呼んでくれるお前がいたから、俺はお前の兄貴分として恥ずかしくないように頑張ろうとした。ありがとう〕

 

「……ボクは……お兄さんがいたから」

 

〔……あ、アハハ、これ結構やばいな。ただ言葉を並べてるだけなのに、涙が出ちまう〕

 

 ……じゃあ、なんでそんなさびしそうな笑い声なんですか。

 

 泣きたいなら泣いてください。

 

 あの夜みたいに、思いっきり泣いてくださいよ。

 

〔本当は全員に、1人ずつ言葉を残したかったんだけど、このままじゃ決心が揺らいじまう〕

 

 そんな決心固めないで欲しかった。

 

 壊れて欲しかった。

 

〔イストワ―ルさん、ケイさん、ミナさん、チカさん、俺のためにゲイムキャラ達に向かって怒鳴っていた声、実は聞こえていたんです。俺のことを心配してくれてありがとうございました〕

 

「……でも、私達は何も」

 

「……君を送り出してしまったのは僕達だ」

 

「……結局、あなたは」

 

「……勝手に消えてんじゃないわよ」

 

〔シュンヤ、エースケ、カケル、本当のスタートを切ったお前達の歌声と姿、強く輝いていた。お前達のその姿を見るだけで、俺は自分のやったことが間違いじゃないと思えた。ありがとう〕

 

「……なんだよ、クソッ」

 

「……俺達はあなたのおかげでスタートできたんですよ」

 

「……感謝してんのはこっちの方だったのに」

 

〔ハードブレイカー、いや、ワンダー、こんなことに付き合わせてすまないな。未完成なのに、ここで壊れてしまうかもしれないが、最後まで付き合ってもらうぞ〕

 

〔……元よりそのつもりだ〕

 

〔ありがとう。あともう少しだけ、付き合ってくれ〕

 

 あと少しって……

 

〔ロム、お前がラムと喧嘩したり、記憶を失っても、大事なことを見失わなかった姿、その姿が今の俺に力をくれる。俺も大事なことを見失わずに済んだんだから。ありがとう〕

 

「……夢人、お兄ちゃん(ぐすっ)」

 

〔ラム、自分のことを卑怯だとか臆病だとか言っていたが、そんなことはない。お前の勇気を出して前に進んだ姿、その姿に負けないように俺も前に進もうと頑張れた。ありがとう〕

 

「……ぐすっ……えぐっ……」

 

 ……嫌だ、嫌だ、嫌だ。

 

〔ユニ、何度迷っても最後には立ち上がるお前の強さに俺は救われた。そのおかげで、俺もお前のように何度傷ついても強く立ち上がろうとしたんだ。ありがとう〕

 

「……強くなんて……ないわよ」

 

〔ナナハ、せっかく告白してくれたのに返事ができなくてごめん。お前の輝きに照らされていたから、俺は強く輝けたんだ。こんなバカな俺のことを好きになってくれて、ありがとう〕

 

「……そんな返事……あんまりだよ」

 

〔最後に、ネプギア〕

 

 聞きたくない。聞きたくない! 聞きたくない!!

 

 私は一度体を大きく震わせて、アカリちゃんにすがりつくように体を丸めた。

 

 夢人さんの言葉を聞きたくない。

 

 だって、聞いてしまったら……

 

〔……ああ、どうしてだろな。ネプギアにはいっぱい言わなきゃいけないことがあったはずなのに、いざとなると言葉が出ないや〕

 

 じゃあ、言わないでください。

 

 言葉にしないでください。

 

 こんな映像記録なんかじゃなくて、直接私に言ってください!

 

〔俺が変われたのは、ネプギアのおかげだ。初めてこの世界に来た時の夜に聞いた叫び、俺を憎しみから救ってくれた〕

 

 やめて! そんな優しい声で、それ以上言わないで!

 

〔俺を勇者として召喚してくれて、かけがえのない出会いをくれてありがとう。俺は幸せだったよ〕

 

「……待って!! 待ってください!!」

 

 私は丸めていた体を勢いよく起き上がらせると、モニターに映る夢人さんに叫んだ。

 

〔勝手に消えようとしている俺を許してくれとは言わない。結局、俺はこの身勝手な思いを貫くんだからさ。でも、悲しまないで欲しい〕

 

「言わないで!! それ以上、言わないで!!」

 

「ね、ネプギア!? 落ち着い……」

 

「夢人さん!!」

 

 後ろから押さえようとしてくるお姉ちゃんの言葉を振り切って私は叫び続ける。

 

 嫌だ! 嫌だよ!!

 

 それ以上、言わないで!!

 

〔バカな男が勝手に消えたことだけ覚えておいてくれればいい。大事なのは、過去じゃなくて未来なんだ〕

 

 私がいくらこれ以上、夢人さんの言葉を聞きたくないと思っても、映像記録でしかない夢人さんは止まらない。

 

〔未来で笑えないなら、忘れてもらっても構わない。ただ、思い出として、この世界を救おうとしたバカな男がいたと、いつか思いだすぐらいはして欲しいと思う〕

 

 ……バカ。

 

 バカです。

 

 何が忘れてもいいんですか。

 

 何が思い出なんですか。

 

〔……これ以上はダメだな。もう言葉を続けることができそうにないよ。だから、最後に一言だけ言っておく〕

 

「嫌!! 言わないでください!!」

 

 最後なんて言わないでください!!

 

 私は、私達はもっと、夢人さんと……

 

〔大好きな皆へ、ありがとう。そして、さようなら〕

 

 ……モニターはその言葉を残して、光を失い消えてしまった。

 

 最後に見えた夢人さんの顔は、泣きながら笑っていた。

 

 

*     *     *

 

 

 ……それから、ユニちゃん達はそれぞれの国へと帰って行った。

 

 皆、これ以上ここにいたくなかったのかもしれない。

 

 ここにいれば、ずっと悲しんでしまうから。

 

 プラネテューヌの教会に残ったのは、私とお姉ちゃん、アイエフさんとコンパさんだけだ。

 

 フェル君とファルコムさんはラステイションへ。

 

 日本一さんとがすとさんはルウィーへ。

 

 5pb.さんとケイブさんはリーンボックスへ、それぞれ向かって行った。

 

 夢人さんがいなくなったことは悲しいけど、まだ全部終わったわけじゃない。

 

 犯罪組織は健在だし、犯罪神だっている。

 

 ユニちゃん達は、夢人さんの言っていたように未来に向かって歩こうとしているのかもしれない。

 

 このゲイムギョウ界を守るために、ずっと泣いているだけじゃダメなんだ。

 

 いなくなった夢人さんの気持ちを思うなら、立ち上がらなければいけないはずなんだ。

 

 ……でも、できないよぉ。

 

「ママ、また泣いてる?」

 

 私はアカリちゃんを抱きしめてベットに横になっている。

 

 私の頬をぺちぺちと叩いて心配そうな顔を浮かべている。

 

 ……私は皆のように立ち上がることができない。

 

 前を向くことなんてできない。

 

 あんな遺言みたいな映像記録を見せられたら、余計に悲しんじゃいます。

 

 未来は確かに大事です。

 

 でも、あなたがいない未来なんて、私は嫌です……

 

 ……あなたがいないから未来で笑えないです。

 

 ……あなたを思い出にしたくないから笑えないです。

 

 ……あなたと離れたくなんてなかった!!

 

 私だって、まだあなたに言いたいことがいっぱいあったんです。

 

 それを自分だけ言って消えないでください。

 

 ……何がさよならなんですか!!

 

「……夢人さん」

 

 私は涙を流しながらアカリちゃんを強く抱きしめた。

 

 誰かの温かさを感じていなきゃ、心が壊れてしまうのではないかと思うくらい、心が痛いんです。

 

 ……会いたい。

 

 会いたいよぉ、夢人さん。

 

「……ママは、パパにあいたい?」

 

「……うん、私は、夢人さんに会いたいよぉ」

 

 私がそう言うと、アカリちゃんは私の腕から抜け出して、私の顔を覗き込んできた。

 

「うん、わかった。ちょっと、まってて」

 

 アカリちゃんは思いっきり目を閉じて、両手を顔の近くで握りしめて体を震わせ始めた。

 

「うにゅにゅにゅにゅっ! うんにゃっ!!」

 

 そして、可愛らしい気合いの声とともに、私の額をそのぷにぷにした手で叩いた。

 

「……あ……れ……」

 

 ……なんだか急に……眠くなって……

 

 私は急な眠気に襲われてしまい、意識を失ってしまった。

 

 最後に見たのは、満足そうに私を見つめるアカリちゃんの笑顔だった。

 

『……パパに……よろしくね』




という訳で、今回はここまで!
ようやく次回からもっと物語を動かすことができます。
今まではあんまり動かなくて退屈でしたでしょうが、次回から動きますので楽しみにしておいてくださいね。
それでは、 次回 「空っぽな彼」 をお楽しみに!

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