超次元ゲイムネプテューヌ 夢のヒーローを目指して   作:ホタチ丸

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はい、皆さんこんばんわ!
今回はケイブ視点での章の振り返りです。
それでは、 特命課活動記録(ギョウカイ墓場編) はじまります


特命課活動記録(ギョウカイ墓場編)

 女神様達の救出作戦。

 

 私達が絶対に成功させなくてはいけない、大事な作戦だった。

 

 確かに、女神様達は救出することができた。

 

 ……でも、私達はかけがえのない仲間を失ってしまった。

 

 今回の記録は、リーンボックスでネプギア達のライブが終わった後からの話になるわ。

 

 それじゃ、 特命課活動記録 ギョウカイ墓場編 始めるわね。

 

 

*     *     *

 

 

「申し訳ございません!!」

 

 私は目の前の状況が理解できなかった。

 

 おそらく初対面であろう男性からいきなり土下座と謝罪をされて混乱しない人物はいないと思う。

 

「……ごめんなさい、あなたが誰なのかわからないんだけど」

 

「……俺、ユメ子です。本当は男だったんです」

 

 ……え?

 

 ユメ子は、一時期特命課に所属していた同僚の女性であったはずだ。

 

 目の前の彼が本当にユメ子?

 

 私は頭が痛くなってきた。

 

 彼の言葉が本当なら、私はずっと気付かなかったことになる。

 

 いくら自分が人の機微に疎いと言っても、限度があるのではないかと自分でも思ってしまう。

 

 ……まあ、彼がウソをつく理由なんてないのよね。

 

 彼がわざわざウソをつく理由なんてあるわけないのだから、彼が言っていることは本当なのだろう。

 

「顔をよく見せてちょうだい」

 

「……はい」

 

 私は土下座している彼の顔をよく見た。

 

 ……ああ、そうなのか。

 

 私は彼の瞳に注目して納得がいった。

 

 この瞳は、あの時のユメ子と同じだ。

 

 ユメ子と同じように、強くなろうとしている思いがこもっているように見えた。

 

「名前は?」

 

「御波夢人です」

 

 ……御波夢人?

 

 ああ、ナナハが告白したって言う男性は彼だったのか。

 

 私は彼がナナハを変えてくれたんだと理解した。

 

 あの子が今のようになれたのは、きっと彼の影響だろう。

 

「ありがとう、夢人。ナナハを救ってくれて、ありがとう」

 

 私にはナナハを救うことはできなかった。

 

 私にできたことは、彼女を見守ることだけだった。

 

 彼女の心に踏み込む覚悟がなかったのかもしれない。

 

 以前、彼女が事務所で寝ていた時、私は偶然目撃してしまった。

 

 ……彼女が寝ながら涙を流していたところを。

 

 私には彼女の涙の理由がわからなかった。

 

 ただ彼女の寝顔は、触れれば壊れてしまうのではないかと思うくらい儚く見えた。

 

 ……私にはどう接すればいいのかわからなかった。

 

 彼女はここを逃げ場所にしていることは知っていた。

 

 もしも私が彼女を傷つけてしまえば、彼女は唯一の逃げ場所を失ってしまう。

 

 そうなれば、彼女は頼るものがいなくなり、一人ぼっちになってしまう。

 

 ……言い訳でしかない。

 

 本当は、私も逃げていたのだろう。

 

 ナナハを救いたいと願いながらも、問題を先送りにして逃げていたんだ。

 

 下手に触れて、自分まで傷つきたくないと言う理由で……

 

「お礼なんて必要ないです。俺がナナハを助けたかったんですから」

 

 そう言った夢人の瞳はまっすぐだった。

 

 だからこそ、ナナハの本当の姿が見えたのかもしれない。

 

 私達は才能があり、周りに馴染めないせいで人の心がわからないと勘違いしていた。

 

 でも、本当は人と接することに憶病になっていた普通の女の子と同じであった。

 

「いいえ、言わせて欲しいの。あなたがいたから、今のナナハがいるんだから」

 

 きっと彼がいなければ、ナナハはずっと私達に心を開くことはなかっただろう。

 

 当然だ。

 

 私達がナナハに心を開いていなかったんだから。

 

「……はい、ケイブさん」

 

「ケイブでいいわ。これからもよろしく頼むわね」

 

 これが私と彼の本当の出会いだった。

 

 ナナハのことを救ってくれた彼なら信頼できると、私は確信していた。

 

 ……この時、私は彼が何かを決意していたことに気付くことができなかった。

 

 女神様達の救出作戦が始まる前日まで……

 

 

*     *     *

 

 

「……ここは?」

 

 私は目覚めると、自分が横に転がっていたことに気付いた。

 

 私は確か、ギョウカイ墓場に女神様達を救出するために突入して……

 

「ケイブも起きたみたいだね」

 

「ファルコム? ここはどこなのかしら?」

 

「ごみ山の端の方にある牢屋みたいなところかな」

 

 私が上半身を起こして辺りを見ると、ファルコムの言葉の意味がよくわかった。

 

 鉄格子で阻まれた一角から見える風景に、私達がギョウカイ墓場に突入した時に見えた黒い塔が見えた。

 

 それが私の感覚だが、小さく見える。

 

 どうやら、私達はスタートラインからさらに後ろへと送られてしまったようだ。

 

 しかも、捕まえられていると言う最悪の状況でだ。

 

「私達、あのレイヴィスっていう奴にやられてしまったのね」

 

「……ええ、そうよ。まったく、自分が情けないわ」

 

 壁に寄り掛かるように座っていたアイエフが悔しそうに顔を歪めながら言った。

 

「いくら夢人の『シェアクリスタル』の力を使われたからって、一歩も動けずに潰されちゃったのが悔しいよ」

 

「重力操作なんてめちゃくちゃな魔法、聞いたことなかったですの」

 

「そうだね。夢人くんはあんな使い方したことなかったし……」

 

 そうね。私も夢人の魔法のことは知っていた。

 

 なにせ短い期間ではあるが、戦闘訓練に付き合っていたのだから。

 

 しかし、彼はあんなことはできなかった。

 

 それどころか、魔法を成功させた姿を見たことがない。

 

「……でも、どうしてレイヴィスは『シェアクリスタル』の力を使えたんでしょうね」

 

「そうです。『シェアクリスタル』は、勇者である夢人さんしか使えないんじゃなかったんでしょうか」

 

 どうしてレイヴィスは『シェアクリスタル』を扱えたのか。

 

 彼が自分で魔法を使ったのなら、こんな疑問はわかなかった。

 

 しかし、彼の魔法は『シェアクリスタル』の力を使ったものだとわかっている。

 

 何故なら、魔法を使う度に彼の手に持っていた『シェアクリスタル』が赤く輝いていたからだ。

 

「……疑問なら、まだあるわ。何でアイツは『シェアクリスタル』を赤く染められたのか」

 

「どういうこと? 元からあの色じゃなかったの?」

 

 私もシェアクリスタルには詳しくないが、ライブの時に造られたシェアクリスタルは見ていた。

 

 それは角度によって様々な色を見せる綺麗な輝きを放っていた。

 

 私はギョウカイ墓場の空の色が赤いから、あの色をしているのではないかと考えていたが、どうにも違うらしい。

 

「違うわ。あの『シェアクリスタル』は、元は透明な色をしていたのよ。それに、シェアクリスタルに干渉できる力なんて1つしかないのよ」

 

「……もしかして、シェアエナジーですか?」

 

 それが本当なら、レイヴィスはいったい何者なのだろう。

 

 女神でない存在がシェアエナジーを操る。

 

 前例がないわけではない。

 

 実際に私達は夢人がシェアエナジーをフェルに送るところを見ている。

 

 しかし、それは『シェアクリスタル』に選ばれた勇者だからだ。

 

 だったら、何故……

 

「しっ、静かに。誰か近づいてくるよ」

 

 その言葉を聞いて、私達は鉄格子の外を警戒するように見つめた。

 

 犯罪組織の人間なら捕まっている私達に用があるはずがない。

 

 もしかして、救援かと考えた私であったが、それは当たった。

 

「リン子! それに、パンチュー!」

 

 牢屋に近づいてきているのは、元特命課の仲間であった。

 

 何故彼女達が……

 

「……あのさ、ケイブ。言いたくないけど、もうちょっと観察力つけた方がいいんじゃないかな?」

 

「……さすがにそろそろ気づいてもいいと思うですの」

 

 ……何で皆して私を呆れた目で見つめているのかしら。

 

 それに、ファルコムも失礼なことを言わないで欲しい。

 

 それは鋭意勉強中なのだ。

 

 私だってどうにかしたいと思っているところだ。

 

「ハッ、情けねぇな、テメェら」

 

「……何しに来たのよ。もしかして、今までのお礼参りってわけ?」

 

 お礼参り?

 

 どういうことかしら?

 

 彼女達は知り合いだったのかしら?

 

「違うっての、これは命令だ、命令」

 

「そうっちゅ。別に独断専行しているわけじゃないっちゅよ」

 

 ……それはむしろ違うって言っているようなものじゃないのかしら?

 

「ほれ、これを渡しに来たんだよ」

 

「これって、パープルディスク!? どうして!?」

 

 パープルディスクは夢人が持っていたはず。

 

 それがどうしてここに……

 

「ごみ山に落ちてやがったんだよ。それがねえと困るんだろ?」

 

「何考えてんの?」

 

「だからこれは命令で仕方なく、お前達に届けただけだっちゅ。おいら達だって命令じゃなきゃ、こんなもの……」

 

「何をしている貴様ら」

 

 リン子とワレチューが言い訳がましく、命令だと言っていると、2人に大きな影が落ちてきた。

 

「ぶ、ブレイブ・ザ・ハード様!?」

 

「貴様ら、何をしていると聞いているんだ」

 

 鉄格子は一角だけなので、私達からは見えないが、どうやらブレイブ・ザ・ハードと言う奴がいるらしい。

 

「こ、これは、下っ端が勝手にやったことだっちゅ!? おいらは無理やり付き合わされただけだっちゅ!?」

 

「アッ、テメェふざけんなよ!? アレを見つけたのはテメェじゃねえかよ!?」

 

 リン子とパンチューは、ブレイブ・ザ・ハードと言う存在が恐ろしいらしく、互いに責任の押し付け合いをしていた。

 

 ……その姿が少し情けないと思ったのはしょうがないことだと思う。

 

「別に俺は貴様らを罰しようとは思っていない。ただこの牢屋の連中に用があるだけだ」

 

 そう言って、そのブレイブ・ザ・ハードは鉄格子の前にやってきた。

 

 ようやく見えたその姿は、巨大なロボットと言ったところだった。

 

 牢屋の私達に話しかけようとするために、片膝をついてこちらを見つめた。

 

「お前達に聞きたいことがある」

 

「……マジェコンヌの幹部が何を聞きたいって言うのよ」

 

「何故あの男、勇者を逃がした?」

 

 ブレイブ・ザ・ハードの問いは、どうして私達が夢人を逃がしたのかと言うものだった。

 

「勇者を犠牲にした方がよかったのではないか? 勇者を逃がしたからこそ、お前達はあの男にやられ、こうして捕まってしまったのだからな」

 

 確かに、効率を考えるのならば、私達は夢人を囮にして逃げた方がよかったのかもしれない。

 

 非情だと思われるかもしれないが、それ程、女神様達の救出とは成功させなければいけなかったのだ。

 

 夢人1人を犠牲にして、私達が全員で体勢を立て直して、再度作戦を実行した方が成功確率は高かっただろう。

 

「勇者はお前達の誰よりも弱い。俺は今までのデータでそう判断した。なのに、何故勇者を逃がすと言う選択をしたのだ?」

 

 ブレイブ・ザ・ハードの言葉は事実だろう。

 

 夢人はここにいる誰よりも弱い。

 

 それに、頼みの綱である『シェアクリスタル』を失った夢人はただの一般人と同じだ。

 

「俺には理解できない。お前達は女神達を助けるために、ここに乗り込んできたのだろう? それならば、勇者よりもお前達の内の1人でも逃がした方がよかったのではないのか?」

 

「……アンタ、1つだけ勘違いしてるわよ」

 

「なに?」

 

 アイエフが矢継ぎ早に疑問を投げかけるブレイブ・ザ・ハードににやりと笑いながら応えた。

 

「夢人はね、確かに弱いわ。でも、アイツはこのままじゃ終わらない。必ずここに戻ってくるわ」

 

「……何故そう言い切れる。弱いなら逃げ出してしまうのではないか?」

 

「アンタ、一度夢人と戦ったはずなのに、そんなこともわかんないの?」

 

「なんだと?」

 

 アイエフは優しく微笑みながら言葉を続ける。

 

 その顔には夢人への信頼が見てとれる。

 

「アイツが強いのは心よ。今はなに悩んでんのか知らないけど、きっと立ち上がってくれる」

 

 ここにいる全員が知っている夢人の強さ。

 

 力は強くないかもしれないけど、心の強さを持っている夢人ならきっと立ち上がってくれると皆信じている。

 

 言葉にしないだけで、皆アイエフと同じ気持ちだ。

 

「……心、か」

 

 アイエフの言葉を聞いて、ブレイブ・ザ・ハードは立ち上がって私達に背を向けた。

 

「おい、貴様ら」

 

「は、はい!? 何でしょうか!?」

 

「俺はここであったことは何も知らない。俺はただここで女神の仲間達と話しただけだ」

 

「え、えっと、それって……」

 

「俺はここで貴様らと会わなかった。それだけだ」

 

 ブレイブ・ザ・ハードはそれだけ言うと、そのまま黒い塔へ向かって歩いて行った。

 

「……なんだっけ、あれ」

 

「……新手のツンデレですの」

 

 ……日本一とがすとの言葉でちょっと微妙な気持ちになったが、私達を見逃してくれると言うのだからいいと思うわ。

 

 

*     *     *

 

 

 それから私達はリン子とパンチューのおかげで、牢屋から抜け出すことができた。

 

 急いで女神様達が捕まっている所まで走っていると、空から輝く何かが舞っていることに気付いた。

 

 それは『シェアクリスタル』だったらしく、夢人が破壊したそうだ。

 

 夢人は私達が信じたとおり、ギョウカイ墓場に1人でも私達を助けに来てくれていた。

 

 未完成だったはずのマシンワンダーで、戦ってくれたのだろう。

 

 その体の傷と、ネプギア達が解放されている姿を見て、私達は信じてよかったと思った。

 

 そして、私達がワレモノモンスター達と戦っている時、夢人は1人でレイヴィスと戦っていた。

 

 2人の叫びを上げながらの殴り合いは、どこか悲しいものに見えた。

 

 特に、レイヴィスの叫びは私の心に衝撃を与えた。

 

 彼もナナハと同じように『転生者』と言う生まれのせいで、苦しんでいたと知ったからだ。

 

 そんなレイヴィスに夢人が叫んだ言葉は、私達の気持ちだろう。

 

「お前がどんな存在だろうと関係ない。お前が助けを求めれば、必ず助けてくれる奴がここにはちゃんといてくれるだ!!」

 

 確かに、彼に恨みがないと言えばウソになる。

 

 ナナハを操り、リーンボックスを混乱させた罪は重いだろう。

 

 でも、少なくとも私は彼を助けたいと思う。

 

 彼もナナハと同じように、人と接するのに臆病になっていたんだろう。

 

 誰にも言えない孤独を抱えていたからこそ、彼は泣きながら叫んでいるんだ。

 

 ナナハの時はできなかったが、今度は間違えない。

 

 私は彼に手を差し伸べよう。

 

 その手を掴んでくれることを信じて……

 

 

*     *     *

 

 

 そして、ワレモノモンスター達を全滅させた私達の目に映ったのは、何かを抱えて泣いていたネプギアの姿であった。

 

「……夢人さん……夢人さん!!」

 

 彼女は泣きながら夢人の名前を言っていた。

 

 抱えていたものは、夢人が着ていた服であった。

 

「……ネプギア、夢人はどこに行ったのよ」

 

「……夢人さんは……消えちゃいました……勇者は……死ぬ運命だったんです!!」

 

 ネプギアの言葉に、全員が衝撃を受けた。

 

 ……勇者は死ぬ運命だった?

 

 どういうことだ?

 

「……私……止められなかった!! ……夢人さん……目の前で……」

 

「もういいわ、ネプギア。今は思いっきり泣きなさい」

 

 ネプテューヌ様がネプギアを抱きしめて言った。

 

「悲しい気持ちを我慢しないで」

 

「……お姉……ちゃん……うわあああああああああああん!!」

 

 抱きしめられたネプギアは大声をあげて泣いた。

 

 女神様達の救出に成功したが、私達の胸には悲しみが溢れていた。

 

 かけがえのない仲間を失ってしまった悲しみが……

 

 

 ……

 

 

 ……今回はここまでね。

 

 フェルもご苦労様。あなたも辛いのに、付き合ってくれてありがとう。

 

 ネプギアの様子はどう?

 

 ……そう、わかったわ。

 

 次回はネプギアの予定だったけど、無理そうね。

 

 無理もないわね。

 

 ……夢人。

 

 私達には、まだどうしてあなたが消えてしまったのかわからない。

 

 あなたは本当にどうなってしまったの?




という訳で、今回は以上!
ネプギア視点も考えていたんですが、皆さん先の展開が気になるでしょ?
この章は結構ネプギア視点も入れたから、次の章でまとめて女神通信Rとして出すということで、次回から新章に突入させていただきます。
それと、修正作業が全然終わらない……
予定よりも難航しています。
皆さんには悪いんですが、少しずつ進めさせてもらってもいいですか?
一日三話ぐらいずつ進めれば、来週中には終わると思うんですけど。
それでは、 次回 「メッセージ」 をお楽しみに!

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