超次元ゲイムネプテューヌ 夢のヒーローを目指して   作:ホタチ丸

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はい、皆さんこんばんわ!
今年最後の投稿になります!
それでは、 命、燃やして はじまります


命、燃やして

 ……あれ、私どうして……

 

 私は気を抜けば眠ってしまいそうになる意識を少しずつ覚醒させていった。

 

 ……何してたんだっけ。

 

 体を動かそうとしても指一本動かせない。

 

 足が地面についてないみたいで、この奇妙な浮遊感が気持ち悪い。

 

 重い瞼を開けてみると、私の体には黒い紐が何重にも巻かれており、私の体を拘束していた。

 

 ……これって、確か……っ!?

 

 そうだ。

 

 この紐はお姉ちゃん達やユニちゃん達を拘束していた紐だ。

 

 私も3年前にこの紐に拘束されていたからわかる。

 

 この紐は、私達女神の体内からシェアエナジーを奪っていく。

 

 ……そっか、私負けちゃったんだ。

 

 全部思い出した。

 

 夢人さんをギョウカイ墓場から脱出させた後、私は急いでアイエフさん達の所まで戻った。

 

 でも、私が戻った時には、もうアイエフさん達はレイヴィスにやられていた。

 

 私はそれでも1人でレイヴィスに挑んで……手も足も出ずに負けちゃったんだ。

 

 ……ごめんなさい。

 

 私がもっと強ければ、皆を助けられたかもしれないのに……

 

「チッ、何で生まれないんだ」

 

 ……誰かの声が聞こえてきた。

 

 私は何とか俯いていた頭を上げると、レイヴィスが夢人さんから奪った『シェアクリスタル』を忌々しそうに見ていた。

 

「何が足りないって言うんだ。シェアエナジーは充分に送り込んでいるはずなのに……」

 

 レイヴィスが何をしようとしているのかは、私にはわからない。

 

 でも、レイヴィスが持っている『シェアクリスタル』が不気味に赤く光っているのを見て、私はなぜか恐怖した。

 

 ……アレはなんなの?

 

 アレが夢人さんの体の中に入っていた『シェアクリスタル』なの?

 

 私が最初に見た『シェアクリスタル』の光はもっと温かい光を放っていた。

 

 でも、今は暗くて冷たい、見ているだけで体が震えてしまうほどの恐怖を感じる光だ。

 

 拘束されて満足に動けない私の体も震えている。

 

「……ん? 何でお前は目覚めているんだ?」

 

 私が体を震わせていることに気付いたレイヴィスが不思議そうに尋ねてきた。

 

「この拘束具をつけられている間は、お前達女神は体内のシェアエナジーを奪われ続けているはずだ。それなのに、何故お前一人だけ目覚めているんだ?」

 

 ……そう言えば、何で私は目覚めることできたんだろう。

 

 3年前に拘束されていた時は、アイエフさんとコンパさんに助けてもらうまで、一度も意識が戻ることがなかったのに……

 

「……まあいい。どうせすぐに関係なくなる」

 

 関係なくなる?

 

「もうすぐ、このゲイムギョウ界は崩壊する。これによってな」

 

 そう言って、レイヴィスは私に見せつけるように『シェアクリスタル』を私の顔に近づけた。

 

 ……なんだろう、悲しんでる?

 

 私は近くで見る『シェアクリスタル』の光が、どこかさびしそうに見えた。

 

 さっきは遠くて恐怖しかわかなかったが、今は悲しい気持ちが溢れてくる。

 

「お前達は知らなかったようだが、これは勇者の証なんてものじゃない。これは悪魔の証だ」

 

 ……悪魔?

 

 そんなことない。

 

 それは勇者の証だ。

 

「これは卵だ。卵にシェアエナジーが満ちた瞬間、中から悪魔が現れる……『再誕』の悪魔がな」

 

 ……『再誕』の悪魔。

 

 そんな存在、私達は知らない。

 

「かつて古の女神の時代、世界を破滅させる寸前まで追い込みながらも、当時の女神達と勇者に滅ぼされてしまった悪魔。それを俺は復活させる」

 

「……そんなこと……したら……ゲイ……ムギョウ界が……」

 

 私は口を開けることさえ上手くできなかったが、レイヴィスに尋ねなければならない。

 

 そんな悪魔を復活させたら、ゲイムギョウ界が滅んでしまう。

 

 何でそんなことをするのかを……

 

「言ったはずだ。俺はこの悪魔の力を奪って、ゲイムギョウ界を破壊する。生まれたばかりなら、いくら悪魔といえども簡単に殺せるだろうからな」

 

 私の言葉を鼻で笑いながら、レイヴィスは『シェアクリスタル』を握る手に力を入れたように見えた。

 

「女神とその仲間はすべて捕まえた。俺を邪魔する奴はもういない。これで俺はようやく……」

 

 ……無駄、だったのかな。

 

 私達が今までしてきたことは……

 

 ゲイムギョウ界を救うために旅をしてきたことは……

 

 全部無駄だったのかな。

 

「せっかくだ、お前に教えてやるよ。勇者の秘密を」

 

 私が無力感を感じ俯いていると、レイヴィスは楽しそうに勇者の秘密を話した。

 

 それは、私にとって信じたくないことだった。

 

 でも、私は同時に納得してしまっていた。

 

 ……夢人さんが死んでしまうということに。

 

 

*     *     *

 

 

 突如、ギョウカイ墓場の一画で空間が歪み、歪みによって空中に穴が発生した。

 

 その穴から青いバイク、マシンワンダーに乗った夢人が飛び出し、着地するとハンドルを左に切り停止した。

 

「何とか無事に来れたな」

 

 夢人は中央にそびえる塔を睨みながら、ブレーキに掛けている手に力を込めた。

 

〔当然だ。私は元々、ラステイションの教祖がプラネテューヌの力を借りずにギョウカイ墓場に突入するために設計したマシンなのだからな〕

 

「……前にケイさんが言っていた独自の計画ってやつか」

 

 夢人はラステイションに初めて行った時に、ケイが言っていた言葉を思い出し、ワンダーの機能に納得した。

 

「さて、のんびりしてられないな。早く皆を助けに……」

 

〔ちょっと待ちなさい〕

 

「ふぇ?」

 

 夢人は突然ワンダーから聞こえてきたチカの声に驚き、変な声をあげてしまった。

 

〔聞こえているのかしら?〕

 

「ち、チカさん? 何で?」

 

〔チカさんだけではありませんよ〕

 

〔無事に到着したみたいでよかったよ〕

 

〔はい、正常に動いてくれてよかったです〕

 

 チカだけでなく、イストワ―ル、ケイ、ミナの声が続いてワンダーから聞こえてきた。

 

 夢人は何でここにいないはずの教祖達の声が聞こえてくるのかわからず混乱していると、ワンダーが言う。

 

〔私に内蔵されている通信機からの音声だ。おそらく、私のカメラアイからの映像もあちらに送信されているはずだな〕

 

〔はい、バッチリ届けられています〕

 

 ワンダーは車体の前部に付けられているライトの上部にある二つの窪み、カメラアイを光らせると、通信機からイストワ―ルの肯定する声が聞こえてきた。

 

〔ワンダーはまだ未完成だからね。こちらでフォローするよ〕

 

〔こちらにある専用の機械で、ある程度ワンダーの問題も解決できます〕

 

「ケイさん、ミナさん」

 

 夢人は通信機から聞こえてくるケイとミナの言葉に目を見開いてしまう。

 

〔アナタ1人を戦わせないってことよ〕

 

〔そうだぜ。オレ達だってこっちからできることをしていくぜ〕

 

〔だから、忘れないでください。あなた達2人で戦っているわけではないと〕

 

〔僕達だってゲイムギョウ界を救うためにできることをするからさ〕

 

「チカさん、シュンヤ、エースケ、カケル」

 

 姿は見えないが、声だけで勇気が貰えそうだと夢人は感じた。

 

 口元は緩み、力が入っていた肩から余分な力抜けたような気がした。

 

〔私達にできることは、お2人の戦いをフォローするだけです〕

 

「イストワ―ルさん」

 

〔だから、お願いします。ネプギアさん達と一緒に無事で帰ってきてください〕

 

 夢人はイストワ―ル達の言葉を胸に大事にしまいこむかのように目をつぶった。

 

〔記憶の事でしたら、私達が何とかします。ですから夢人さん、絶望しないでください。私達が必ずあなたの記憶を戻す方法を見つけてみせます〕

 

「……ありがとうございます。今の俺の心に絶望はありません。皆から貰った希望、必ずつないでみせます」

 

 夢人はそう言うと目を開き、ワンダーのハンドルを強く握りしめた。

 

「必ずネプギア達を助けます……行くぞ、ワンダー!」

 

〔了解!〕

 

 夢人はネプギア達が捕まっているであろう場所、女神達が捕まっていた場所に向かってワンダーを勢いよく走らせた。

 

 

*     *     *

 

 

 私はレイヴィスの話をどこか他人事のように感じてしまった。

 

 ……勇者とはゲイムギョウ界を救うための生贄。

 

 その言葉に、私は現実感が持てなかった。

 

 認めたくないと思い、現実逃避をしていたんだ。

 

 それを認めてしまうと、私は取り返しのつかないことをしてしまったことになる。

 

 私のせいで1人の人間が死んでしまう。

 

 いつも私を支えてくれた大切な人が……

 

 夢人さんが死んでしまう。

 

【……怖いよ】

 

 ……何で。

 

【……っ! ごめん……ごめん!】

 

 ……どうして。

 

【よしっ! 皆で絶対に女神達を助けるぞ!!】

 

 何でなんですか!!

 

 私は突然、思い出したかのように胸の中で感情を爆発させた。

 

 何で黙っていたんですか!

 

 ……違う。

 

 何で話してくれなかったんですか!

 

 ……違う。

 

 何で笑っていたんですか!

 

 ……違う!!

 

 全部違う!

 

 私が1番許せないのは……

 

 ……何で私は気付けなかったの!!

 

 夢人さんは私に怖いと言っていたではないか……

 

 夢人さんは私に涙を流しながら謝っていたではないか……

 

 夢人さんの笑顔の違和感に気付いていたではないか!

 

 あの笑顔は見たことがあったじゃないか。

 

 あの笑顔はあの夜の笑顔と同じだ。

 

 私は知っていたのに……

 

「……どうやら話している間に鼠が入り込んだらしいな」

 

 レイヴィスは私から離れて、懐からモンスターディスクを取り出した。

 

 そのモンスターディスクからは体の一部がなくなっている危険種、ワレモノモンスター達が出現し、次第に数を増やしていった。

 

「鼠を生かしておくつもりはない。殺してこい」

 

 レイヴィスがそう言うと、ワレモノモンスター達は空を飛び、宙を泳ぎ、地を蹴りながら、レイヴィスが言った鼠の場所まで向かって行った。

 

「よかったな。お前らを助けようと、戦う力をなくした勇者が来てくれたぞ」

 

 ……夢人さんが?

 

 どうして……

 

「すぐにお前達の前に転がしてやるよ……その無様な死体をな」

 

 私はレイヴィスの言葉を聞いて、涙を流して俯くことしかできない。

 

 ……夢人さん。

 

 あなたが助けに来てくれたことは、すごく嬉しいです。

 

 あなたを見捨てた私を助けに来てくれたと思うだけで、私は胸が温かくなってきます。

 

 ……でも、来ないでください。

 

 私はあなたを死なせたくありません。

 

 あなたが死ぬと思うと、私のこの胸は張り裂けそうなほど痛むんです。

 

 ……来ないでください。

 

 

*     *     *

 

 

 俺達がネプギア達の所に急いで向かっていると、目の前に黒い影が見えた。

 

「……出てきたな、偽物モンスターども」

 

 最初に見えたのは、空を飛んでこちらに向かってきていたワレモノモンスターである、エンシェントドラゴンもどき。

 

 エンシェントドラゴンもどき達は俺達の進行を阻むように、その巨体で道を塞いだ。

 

 俺がどうにかして隙間から通り抜けられないかと考えていると、すでに周りは囲まれていた。

 

 俺達の後ろからフェンリルもどき達やドルフィンもどき達もやって来ていて、俺達は完全に包囲されてしまっていた。

 

 ワレモノモンスター達は今にも俺達に襲いかかってくるのではないかと思うほど、低いうなり声をあげたり、地面を踏み締める音が聞こえてくる。

 

「囲まれたな」

 

〔そのようだな〕

 

〔……なにアナタ達はのんきにしているのよ!〕

 

 チカさんが叫ぶように状況は絶望的だろうな。

 

 でも、俺の心は自然と穏やかだった。

 

 ……コイツらぐらい軽く倒していかなきゃ、ネプギア達を助けることなんてできるわけがない!

 

〔どうやら早速私の出番のようだ。夢人、ハンドルの横についている青いスイッチを入れてくれ〕

 

 俺が覚悟を決めて、ワンダーから降りてワレモノモンスター達と戦おうとした時、ワンダーが言ってきた。

 

 え、えっと、ハンドルの横……って、なんかいっぱいスイッチないか?

 

 紫、黒、白、緑と4つのスイッチがついていた。

 

 ……ん?

 

「おい、青いスイッチなんてないぞ?」

 

〔反対のハンドルを見てみろ〕

 

 なんだそっちかよ。

 

 俺は言われた通り、反対側のハンドルを見ると、1つだけ青いスイッチがついていた。

 

〔おい、急げ! そろそろ奴らが痺れを切らしてしまうぞ!〕

 

 ワンダーの言葉の通り、我慢できなくなったのか、一匹のフェンリルもどきが俺達に向かって勢いよく跳び出してきた。

 

 その右手の凶悪そうに光る爪を俺達に振り下ろそうとしてきている。

 

 ……なんだかわからないが、頼むぞ、ワンダー!

 

 俺は急いで青いスイッチを入れた。

 

〔CHANGE MODE ARMOR〕

 

 すると、ワンダーの車体が浮き上がり、跳び込んできたフェンリルもどきの顔を前輪で横殴りにして、俺の頭上で止まった。

 

 俺の頭上に止まったワンダーはそのまま俺の頭の上へと落ちてきた。

 

 って、ちょ、ちょっと待って!?

 

 俺は慌てて避けようとしたが、あまりのことに体を動かせずにいた。

 

 ……俺、味方にやられちまうのかよ。

 

 俺は襲ってくるであろう衝撃を覚悟して目をつぶったが、いつまで経っても衝撃は来ない。

 

 その代わり、硬い何かが俺の体を包んでいく。

 

「へ? ……って、ええええええ!?」

 

 俺が目を開くと、俺の体が青い機械の鎧に包まれていた。

 

〔驚いたか?〕

 

「当たり前だ! って言うか、これはいったい……」

 

 なんか自分が機械になったみたいだ。

 

 俺は試しに腕を動かしてみるが、予想に反して全然違和感を感じなかった。

 

 自分の腕と同じように動く。

 

〔それが僕達の切り札……マシンワンダーの変形パターンの1つ、アーマーモードだよ〕

 

 俺は自分の胸から聞こえてくるケイさんの声に違和感を感じながらも、機械で包まれている自分の手のひらを見た。

 

 よく見てみると、この両腕はワンダーのアンダーカウルから指が伸びているような形をしている。

 

 脚部はリアカウルの部分で覆われており、踵辺りにマフラーと車輪が付いている。

 

 胸にはライトがある部分、アッパーカウルが俺の胸を覆っている。

 

 背中にはウイングのようにフレームで繋がれている前輪と後輪が付けられていた。

 

〔いつも傷つきながら戦う夢人さんの体を守るために開発された、あなたの戦うための鎧です〕

 

〔その鎧にはジャッジ・ザ・ハードが残していったパワードスーツのデータも入っているわ。自分の思ったように動くはずよ〕

 

 俺の戦う鎧。

 

 俺が指を折り曲げようと思うと、機械の指は俺の思った通りに動いてくれる。

 

 ……よし、これなら!

 

「行くぞ、ワンダー! 武器を出してくれ!」

 

 俺が勢いよく地面を蹴りだすと、周りのワレモノモンスター達も一斉に俺に襲いかかってきた。

 

 そう、戦うための鎧ならきっと武器が内蔵されているはずだ。

 

 こんな偽物モンスター達なんて簡単に蹴散らせる武器が……

 

〔そんなものはない〕

 

「……へっ? って、うお!?」

 

 俺はワンダーからの予想もしていなかった言葉に思わず動きを止めてしまい、危うくその鋭い角で突撃してきたドルフィンもどきに串刺しにされそうになった。

 

〔私はまだ6割ほどしか完成していなくてな。武装関連は全て外されているのだ〕

 

 俺は右手でフェンリルもどきの爪を受け流したり、ドルフィンもどきの回転しながら尾で叩こうとしてくるのを屈んで避けたり、エンシェントドラゴンもどきの口から吐き出される炎のブレスを背中のブースターを噴射させて避けたりしながら、ワンダーの言葉の意味を考えた。

 

 え? 武器ないの?

 

 剣とか、弓とか、ビームとか、ミサイルとか、ヨーヨーとか、ベーゴマとかって言う武器がないの!?

 

〔それに付け加えて、そろそろだ〕

 

「は? これ以上何があ……って、アチイイイイイイイイ!?」

 

 な、なんか急に背中から熱くなってきた!?

 

 まるで燃えているように背中が熱い!?

 

〔冷却機能もまだ実戦に耐えられるほど急速な冷却ができないため、このモードで戦うのは10分が限界だ〕

 

「それを早く言えええ!!」

 

 こんな最悪な状況で、しかも武器もなく、タイムリミットまであるなんて!?

 

〔だが、安心しろ〕

 

「何を言って……!?」

 

 俺は驚きのあまり、エンシェントドラゴンもどきの尻尾の攻撃を避けることができなかった。

 

 何とか両腕でガードすることができたが、後ろに吹き飛んでしまった。

 

 ……しかし、不思議と痛みは全然なかった。

 

〔私のボディはキラーマシンに使われていた金属で出来ている。生半可な攻撃では傷はおろか、衝撃すら装着者であるお前に届くことはない〕

 

 あのキラーマシンと同じ頑丈さを持ってんのかよ。

 

〔夢人、右手にエネルギーを集中させるぞ!〕

 

 ワンダーがそう言った瞬間、右手が淡く光始めた。

 

 ……なるほどな。

 

「確かに武器はいらないな」

 

 俺は見知ったエネルギーが右手に集められていくのを感じながら、跳びかかってきているフェンリルもどきを迎え撃つため、右腕を引いた。

 

「アクセルインパクト!」

 

 跳びかかってきたフェンリルもどきの右爪を俺は上半身だけ右に避けることでかわし、引いていた右腕を思いっきりフェンリルもどきの顔に炸裂させた。

 

「……すごい威力だな」

 

 フェンリルもどきは一撃で光の粒子となって消えて行った。

 

 いくらワレモノモンスターと言っても、一撃で倒すことができたことに驚いてしまう。

 

〔これでも本来の威力の半分だ。本来ならお前の魔法からお前の体を守るために設計し直されていたのだからな〕

 

 ……この鎧は、俺に期待してくれていたケイさんやミナさん、チカさん達の信頼の証だ。

 

 ワンダーの言う通りなら、この鎧は本当に俺のために造られた鎧だ。

 

 なら、俺はそれを使って無様な姿をさらすのか?

 

 ……そんなわけにはいかない!!

 

「ワンダー、少し数を減らしたら一気に駆け抜けるぞ!!」

 

〔了解!!〕

 

 負けられない。

 

 この鎧を身にまとった俺が……

 

 ケイさん達からの信頼を背負った俺が……

 

「負けるわけには……行かないんだよ!!」

 

 俺は脚部に付けられていた車輪とマフラーで俺は地面を走りながら、ワレモノモンスター達へと向かった。

 

 横からフェンリルもどきが跳びかかってくるのを、減速してかわした後、一度その場で回転して無防備な胴体に拳を叩きこむ。

 

 後ろからドルフィンもどきがその鋭い角で俺を貫こうと一直線に向かってくる。

 

〔後ろは任せろ!〕

 

 背中にウイングのように付けられていた前輪と後輪のフレームが曲がり、一直線に俺に向かって来ていたドルフィンもどきの角を二つの車輪で受け止めた。

 

〔上に飛ばすぞ!〕

 

「わかった!」

 

 ワンダーは車輪で受け止めていたドルフィンもどきをフレームを折り曲げることで、夢人の前方へと投げ飛ばした。

 

 夢人は自分の頭上を通り過ぎるドルフィンもどきの影を確認した後、ジャンプして左足のかかとについている車輪でドルフィンもどきを切り裂いた。

 

「アクセルリッパー!」

 

 ドルフィンもどきを切り裂いて着地すると、すぐに脚部の車輪を回転させ、道を塞いでいたエンシェントドラゴンもどきに向かって走り出した。

 

〔もう10分です! 早くモードを解除して……〕

 

「まだだ!! まだやれる!!」

 

 背中に焼けるような熱を感じながらも、俺は目の前のエンシェントドラゴンもどきに向かって走り続ける。

 

 限界なんて超えてやる!

 

 ここで止まるわけにはいかないんだ!!

 

「ワンダー! 全エネルギーを右手に集中!! 目の前のデカブツをぶち抜くぞ!!」

 

〔エンジンフルドライブ! 全てのエネルギーを右手に!!〕

 

 右手が先ほどよりも強く光輝く。

 

 エンシェントドラゴンもどきが俺に向かって炎のブレスを放ってきた。

 

 ……関係ない。

 

「このまま突っ込む!!」

 

 俺はエンシェントドラゴンもどきが吐き出した炎のブレスの中に飛び込んだ。

 

 ワンダーの頑丈さのおかげで、俺の体に傷はつかない。

 

 ならば!!

 

「喰らえ!!」

 

 俺は炎のブレスを突き抜けて、エンシェントドラゴンもどきの懐に潜り込み、輝いている右手を手刀の形で胴体に突き刺した。

 

〔アクセル!〕

 

「バースト!!」

 

 俺はそのまま右手に集めていたエネルギーをエンシェントドラゴンもどきの体内で暴走させて、内側から爆発させた。

 

〔CHANGE MODE VEHICLE〕

 

 エンシェントドラゴンもどきが光の粒子となって消えていく中、俺は空中でバイクモードに戻ったワンダーにまたがり、ワレモノモンスター達の包囲を抜けだした。

 

〔無茶をする〕

 

「いつも通りだ。問題ないさ」

 

 いつだって無茶を通してきたんだ。

 

 これくらいの無茶、やってられないことはない。

 

 俺はワレモノモンスター達に追いつかれないように、ワンダーを最大まで加速させて走り続けた。

 

 ……待っててくれ、皆。

 

 もうすぐ助けに行く!!

 

 俺は目前に見えてきた目的地を睨むように見つめながら強くハンドルを握った。




という訳で、今回はここまで!
今年も残りわずか、皆さんはいかがお過ごしですか?
私はこの話を作るために、少し時間がかかったのは紅白を見ていたからなんですけどね。
今もテレビからガキつかが流れて来るのを見ながら書いています。
それでは、 次回 「望んで生まれた憎しみ」 をお楽しみに!
来年もよろしくお願いします!

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