超次元ゲイムネプテューヌ 夢のヒーローを目指して   作:ホタチ丸

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はい、皆さんまだ起きていらっしゃいますでしょうか?
予告通り、何とかもう一話あげることができました!
そして、本当に説明だけで一話が終わってしまった……
それでは、 女神の卵 はじまります


女神の卵

「……それはどういう意味だい?」

 

〔言葉どおりの意味だ。『シェアクリスタル』とは、この破滅に向かうゲイムギョウ界を救うために造り出された、新たな女神を生みだすための卵だ〕

 

 ……私達の生きているゲイムギョウ界を救うための女神を生みだすための卵。

 

 それが『シェアクリスタル』の本来の役目。

 

〔そもそもあなた達はあの『シェアクリスタル』をただのシェアクリスタルと同じだと思っていたのですか?〕

 

「そうは思っていませんでした。夢人さんがあなた達から力を受け取ったり、シェアエナジーを扱えるようになっていることを知っていましたから。でも、それは勇者の力だと思っていたんです」

 

 ……私も同じだ。

 

 夢人さんがゲイムキャラから力を授かり魔法が使えるようになったことや、先日私達の前でフェルさんにシェアエナジーを送ったことは勇者の力なんだと思っていました。

 

〔……そうね。その前提から間違っているわ〕

 

 ……間違っている?

 

「夢人さんが使っていた力は、勇者の力ではないのですか?」

 

〔ああ、違う。彼が使っていた力は、新たな女神が司る力だ。決して勇者の力などではない〕

 

 ……新しく生まれる女神の力を夢人さんが使っていた?

 

 それが勇者の力ってことではないのですか?

 

〔……どうやら理解できていないようだな〕

 

 当然です。

 

 私達は皆、夢人さんが使う力を勇者の力だと。

 

 『シェアクリスタル』に選ばれた夢人さんだけの力だと思っていた。

 

 確かに夢人さんの力は『シェアクリスタル』によってもたらされているものです。

 

 でも、それを扱うのは『シェアクリスタル』を内包した勇者、夢人さん本人です。

 

 それを勇者の力と言うのではないのですか?

 

〔そうだな、まずはどうやってゲイムギョウ界を救うのかを説明しよう〕

 

「そうね。まずはそこから聞かせてちょうだい。『シェアクリスタル』から新しく生まれる女神はどうやってこの世界を救うの?」

 

 ……そうですね。

 

 その話が本当なら、フェルさんやナナハさんを殺さなくても済むようになるかもしれません。

 

 特にチカさんにとって最も聞きたいことだったのでしょう。

 

〔それはあの『シェアクリスタル』が持つ特徴、私達ゲイムキャラの力を受け止めることができると言うことです〕

 

 ゲイムキャラの力を受け止める?

 

「それは夢人君が魔法を使えるようになったのとどういう違いがあるんだい?」

 

〔魔法の方はおまけだ。重要なのは、各大陸にいるゲイムキャラの情報を受け取ると言うことだ〕

 

「……なるほど。そういう方法でゲイムギョウ界を救うってわけか」

 

 ケイさんは理解したみたいです。

 

 ……でも、私達はまだ理解できていません。

 

 どうしてゲイムキャラの情報がゲイムギョウ界を救う鍵になるのですか?

 

「1人で納得してないで説明しなさいよ!」

 

「さっきのゲームの話と同じだよ。欠けてしまったデータを修復する、それが新しい女神の力なんだね」

 

「でも、修復するためには元のデータが……あっ!」

 

 ……そう言うことですか。

 

 先ほどのゲームの話であったように、バグによって歪んで元の形がわからなくなってしまったデータを知っている存在がいたんですね。

 

〔理解したようね。そうよ、私達は『変質』する前のこの世界のことを知っている。それはつまり……〕

 

「この世界のオリジナルに近いデータを持っている、と言うことだね」

 

 ゲイムキャラは古の女神の時代から存在している。

 

 それはつまり、フェルさんやナナハさんと言う『転生者』が生まれる前のこの世界の情報を知っているということ。

 

 『変質』してしまった私達の世界ではなく、オリジナルに近いパラレルワールドの世界を知っているということですね。

 

〔ラステイションの教祖の言う通りだ。新しい女神は『変質』前のゲイムギョウ界の情報を集め、その情報からバグを修正するプログラムを造り出すことができる力を持っている〕

 

〔私達はそのことから新しい女神の力を『再誕』と呼んでいます〕

 

 ……『再誕』。

 

 それが新しく生まれる女神が持つ力。

 

 でも、それは……

 

「それってナナハとフェルを切り捨てろってことよね? あなた達の持っているデータにはあの子達がいないんだから」

 

 ……そう、それはナナハさんとフェルさんを犠牲にする方法だ。

 

 新しい女神の方法は、ナナハさんとフェルさん、レイヴィスをこの世界から完全に取り除いて、本来あるべき姿に戻すと言うものだ。

 

 ゲイムキャラ達の言うバグ、『転生者』を取り除き、歪んでしまったデータの場所に新しく造り出した正常なデータを当てはめること。

 

 確かに、この方法で私達の世界は救われます。

 

 ……でも、それはゲームの話です。

 

 新しい女神の方法は、この世界で生きている彼らを否定してしまうことです。

 

 そんな方法、認められません!

 

〔元々彼らはありえない存在だったんだ。消えてしまっても問題はあるまい〕

 

「ふざけたこと言ってんじゃないわよ!! 消えてもいい存在なわけないじゃない!! ナナハは、あの子はこの世界でいっぱい傷ついていたのよ。そんな子に向かって世界のために消えてくれって? そんなのアタクシが許さないわ!!」

 

 チカさんの言葉に同意するように、私達はゲイムキャラ達を睨みます。

 

〔……まったく、あなたはどうしてそんなことを言うんですか〕

 

〔そうよ。もうそんなことにならないって教えてあげればいいのに〕

 

 ……えっ?

 

 どういうことですか?

 

 私達はルウィーとリーンボックスのゲイムキャラの言っている言葉の意味がわかりませんでした。

 

 だって、今までの説明では、どう考えてもフェルさんとナナハさんはこのゲイムギョウ界で生きていられない。

 

 彼らが存在することでゲイムギョウ界が歪み、崩壊してしまうと言っていたんですから。

 

〔……現状を正しく認識させるためだ。他意はない〕

 

〔まったまたー、相変わらずなんだから〕

 

〔そう言ってしまうと、理由がありますよって言っているようなものですよ〕

 

〔う、うるさい!〕

 

 ……えっと、お取り込み中失礼しますが、続きをお聞かせできないでしょうか?

 

〔と、とにかく! 全ては勇者、御波夢人のせいだ!〕

 

「夢人の? それってどういう意味なの?」

 

 ……いったい何をしたんですか、夢人さん。

 

〔本来の『シェアクリスタル』なら、私達全員の情報を集めるだけで覚醒するはずでした〕

 

〔そうそう。私が最後に情報を入れた時、あれ? って思ったもん〕

 

 どういうことでしょう?

 

 夢人さんは確かに全てのゲイムキャラから力を授かりました。

 

 でも、それから随分と時間が経っています。

 

 彼女達の話が本当なら、すでに新しい女神が生まれていてもおかしくありません。

 

〔ラステイションで彼を見た時は、まだ『シェアクリスタル』に異常は見られなかった。考えられるのはその後となる〕

 

 ……ラステイション以降で、夢人さんに起こった変化。

 

「それって……B.H.C.って言うクスリの影響じゃないんでしょうか?」

 

 それって確かがすとさんが開発したアイテムでしたよね?

 

 本当の効果は魔法を使うためのイメージ力のアップ。

 

 ……それによって、使用者の恥ずかしい黒歴史が出てしまうと言うものでしたね。

 

「夢人さんはB.H.C.を使って勇者の力を引き出していたと言っていました。実際に、彼はそのクスリを使って女神でも倒せなかったキラーマシンを倒しています」

 

「黒いハードブレイカーの時もそうだよな」

 

 その通りです。

 

 彼はそのクスリを使うことでピンチを切り抜けていたはずです。

 

〔……頭は痛いが、そのクスリの影響だろうな。彼はクスリの影響で覚醒していなかった女神の力を無理やりに引き出していたのだろう〕

 

 ……なんでしょう、今ものすごくラステイションのゲイムキャラの気持ちがわかる気がします。

 

〔そのせいでまだ目覚めるはずのない彼女が目を覚まし、『変質』してしまったのだろう〕

 

「その『変質』とはなんですか?」

 

〔うーん、この場合は学習したって感じかな〕

 

 ……学習、ですか?

 

〔本来新しく生まれてくる女神は、このゲイムギョウ界を修復すると言う目的を忠実に実行するように生まれるはずでした〕

 

「……なによ、それ。まるで機械じゃない」

 

〔その通りだ。彼女はゲイムギョウ界を救うためだけに生み出されるはずであった存在だ〕

 

 何を言っているんですか……

 

 女神だって生きているんですよ。

 

 心があるんです。

 

「あなた達は最初から『シェアクリスタル』から生まれる新しい女神を道具だと思っていたんですか!!」

 

 私はいつになく声を張り上げて叫んだ。

 

 私の一番よく知ってる女神、ネプテューヌさんは確かに女神の仕事には不誠実かもしれません。

 

 いつもゲームをしたり、漫画を読んだりして、女神の仕事を疎かにしていました。

 

 ……でも、そんな彼女には誰にも負けないゲイムギョウ界への愛があります!!

 

 ゲイムギョウ界を愛する心があるネプテューヌさんだからこそ、私は今まで一緒にいたんです。

 

「落ちつきなよ、イストワ―ル」

 

「ですが!」

 

「ここにいる皆は女神のことをよく知っている。君の気持ちは痛いほどよくわかるよ」

 

 ……ごめんなさい。

 

 少し熱くなりすぎましたね。

 

 ケイさんだって拳を握りしめて怒りを堪えているのに……

 

〔……失言だったわね、ごめんなさい。でも、私達だってそんなことはしたくなかったわ〕

 

〔ゲイムギョウ界を救うためには、できる限りリスクを減らしたかったからな〕

 

 ……そうですね。

 

 よく考えてみれば、ゲイムキャラ達だって女神のことをよく知っているはずです。

 

「……すみません、話を中断させてしまって」

 

〔構いません。あなたの懸念は尤もです〕

 

〔それに、もうそんな心配する必要ないもんね〕

 

 それが先ほど言った学習、ってことでしょうか?

 

〔彼女は勇者の中で中途半端に覚醒し、彼の心に触れたのだろう〕

 

〔本来生まれるはずのなかった自我が発生した、と言えばいいのでしょうか。自分がどんな世界を修復するのかを勇者の体の中から観察していたのでしょうね〕

 

「いいことじゃない。それの何が問題だって言うのよ?」

 

 チカさんの言う通りだ。

 

 新しい女神に心が生まれたことは素直に嬉しい。

 

〔ぶっちゃけ、生まれることを拒否しちゃってたわけよ〕

 

「……はい?」

 

 ……えっと、それってどういう意味でしょう?

 

 新しい女神が生まれることを嫌がったってことですか?

 

〔つまり、彼女はこの世界を修復したくなくなってしまっていたんだ〕

 

「どうしてですか?」

 

〔……多分、彼女は勇者のことを大切に思っていたのでしょうね〕

 

 ……夢人さんのことを大切に思っていた?

 

「……すまないが、話が見えない。どうしてそこで夢人君のことが出てくるんだい?」

 

〔最初にも言ったように、『シェアクリスタル』とは女神の卵だ……お前達はその卵を守る勇者をなんだと思う?〕

 

「それは……っ!?」

 

 ……気付いてしまった。

 

 ゲイムキャラ達は言っていたではないか……

 

 重要なのは『シェアクリスタル』、女神の卵だと……

 

 つまり、勇者とは……

 

〔……そう、勇者とは『シェアクリスタル』を守るためだけに存在する卵の殻だ〕

 

「何を……言っているんですか……」

 

〔事実よ。勇者はね、彼女が覚醒するまで外敵から身を守るために存在なのよ〕

 

〔そのために『シェアクリスタル』を内包した人物の体は丈夫になり、少しの傷ならすぐに回復してしまいます〕

 

 ……信じたくない。

 

 私はゲイムキャラの言葉を信じたくなかった。

 

 だって、それじゃ、夢人さんが努力していたことは全て無駄じゃないですか!

 

〔彼は魔法を失敗させていたが、当たり前だ。魔法を使っていた存在は彼ではなく、彼の中に眠っていた女神なんだから〕

 

〔卵の殻の中でいくら魔法を使おうと、外に出るのはほんの一部。彼の周りにしか魔法が発生しなかったのはそのためです〕

 

〔だって、卵の殻が戦う必要なんてないでしょ? アレは昆虫と同じよ。外敵から自分は危険だぞ、ってアピールするためだけに必要だったの〕

 

 ……そんな。

 

〔ただそんな存在のことを彼女は大切に思ってしまったんだろう。だから、彼女は覚醒をすることを拒否した〕

 

「……それって何? アタクシには夢人が死ぬって言う意味に聞こえたんだけど?」

 

 ……チカさんだけじゃない。

 

 私も同じことを考えていた。

 

 卵の殻は中から雛が出れば、壊れてしまう。

 

 それじゃ、新しい女神が生まれたら……

 

〔そうです。彼女が覚醒すれば、勇者はその役目を終え、その命を散らします〕

 

〔割れちゃった卵の殻に価値がないのと同じようにね〕

 

 やっぱり!!

 

 それじゃ、夢人さんは……

 

「夢人さんは犠牲になるためにこの世界に呼ばれたって訳ですか!?」

 

 この世界とは無関係だった彼がこちらの勝手な都合で犠牲になるって言うんですか!?

 

〔まさしくその通りだ。元々『シェアクリスタル』はこの世界とは関係ない人物を呼びだすようになっている〕

 

〔この世界に生きている人間はすでにバグによる影響を受けていましたから〕

 

〔そうよね、仕方がなかったことなのよ〕

 

 ……仕方がない?

 

 夢人さんが、関係ない人が犠牲になることが関係ないことなのか!?

 

〔私達はゲイムギョウ界の平和を維持する存在だ。他の世界のことなど関係ない。大事の前の小事、彼は必要な犠牲なんだ。この世界を存続させるために〕

 

「ふざけないでください! 私達はそんなことをしてまでこの世界を存続させたいとは思いません!」

 

「そうよ! アタクシ達の世界の事情に無関係な人間を巻き込んでんじゃないわよ!」

 

 ……ミナさんとチカさんがゲイムキャラ達に詰め寄って叫んでいる。

 

 その顔は怒りに染まっていた。

 

「正直、君達の救済案は勝手な押し付けだ。関係のない人間を生贄にして自分達が世界を救っていると勘違いしているように思える」

 

〔いいえ、違いますよ。世界を救うために1人の犠牲で済む、これほどいい案がありますか?〕

 

「論点がずれている。問題は結果ではなく過程だ」

 

 ケイさんも私が今まで見たことがない程怒っている。

 

 いつになく眉間にしわを寄せてゲイムキャラ達を睨んでいる。

 

〔……本当に慕われているのね〕

 

「当たり前じゃねえか!! アイツはこの世界のために傷つきながら戦ってきたんだぞ!!」

 

「そうですよ。彼がいたからこそ、俺達は今こうして音楽アーティストとして大勢の人達のために歌っているんです」

 

「難しい話はよくわからなかったけど、君達が言ってることは間違ってるってことくらいはわかるつもりだよ」

 

 ユピテルの皆さんも……

 

〔だが、事実は変わらない。彼は自分でその運命に足を踏み入れたんだ〕

 

「……どういう意味ですか?」

 

 夢人さんが自分から死のうとしている?

 

 そんなことあるわけない。

 

〔彼の中で目覚めることを拒否した彼女はずっとそのままでいるつもりだったのかもしれないが、ここで彼は重大な問題を起こした〕

 

「なんですか、それは?」

 

〔それは私達が渡したゲイムディスクにシェアエナジーを送り込んだことだ〕

 

「……どうしてそれがダメなんですか。彼がホワイトディスクにシェアエナジーを送ってくれたことで、ラムは助かったんですよ」

 

 確かにラムさんは致命傷を受け、死んでしまうかもしれない時に夢人さんがホワイトディスクにシェアエナジーを送り込んだことで、ホワイトディスクを吸収し、ロムさんと一体化して助かったんだと聞いています。

 

〔確かにその行為は尊いものよ。でもね、彼はそのせいで自分の殻に穴を開けちゃったのよ〕

 

 ……自分の殻に穴。

 

 つまり、夢人さんの行動は……

 

〔自分で卵の殻を壊していたんです。シェアエナジーを外に出すと言うことは、卵の中から黄身を取り出すようなもの。黄身を多く取り出そうとすればするほど、穴は広がり、卵の殻は壊れていきます〕

 

〔致命的だったのは、『転生者』にシェアエナジーを送ったことだ〕

 

〔彼はシェアエナジーを送るとともに、あるものを送っていたのよね〕

 

 あるもの?

 

 それってまさか……

 

〔『転生者』に『再誕』の力を使ったんだ。バグを通常のプログラムに戻すように修正パッチを当てたとでも言おうか〕

 

〔彼が無理やり彼女の力を使った影響なのでしょうね。すでに、この世界を破滅へと導いていた『歪み』の内、2つの反応が消えています〕

 

 確かにフェルさんとナナハさんがこの世界で生きていけるのは嬉しい。

 

 でも、そのせいで夢人さんが犠牲になっている。

 

「……夢人さんを救う方法はないんですか?」

 

〔ない。そして、もうまもなく卵の殻は壊れる。これは確実だ〕

 

 ……ラステイションのゲイムキャラの言葉は、私達をさらに絶望に落とした。

 

 彼はもう助からない。

 

 体の中に『シェアクリスタル』があるかないかなど関係ない。

 

 すでに卵の殻にできている穴は致命的なんだ。

 

〔その影響はすでに出ている。それをプラネテューヌのが確認しに行っている〕

 

 ……これ以上、何が夢人さんを苦しめているんですか。

 

〔彼はすでに自分の中身もこぼれ落としている……自分を構成する記憶と言う白身を〕




という訳で、今回は以上!
見ての通り、説明だけで一話終わっちゃいました。
でも、次回も少しだけ説明の補足が入るんですよね。
いつまで説明続くんだってお思いの方もいるでしょうが、ご勘弁を。
本当に年内中に区切りのいいところまで終わるか不安になってきた。
それでは、 次回 「こぼれ落ちる自分」 をお楽しみに!

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