超次元ゲイムネプテューヌ 夢のヒーローを目指して   作:ホタチ丸

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はい、皆さんこんばんわ!
今回と次回は説明回です。
この世界のこと、『転生者』や『シェアクリスタル』、勇者について説明していきます。
それでは、 真実 はじまります


真実

「おい、いつになったら戦えるんだ?」

 

 ギョウカイ墓場にそびえる塔の一室、ジャッジ・ザ・ハードはスクリーンを睨みながら言った。

 

 スクリーンには、レイヴィスと『変身』したネプギアが戦闘している姿が映されていた。

 

 ネプギア達が戦っている周りでは、地面に倒れ伏しているアイエフ達の姿があった。

 

〔……素直に逃げていればよかったものを〕

 

〔そんなこと……できません……あなたを倒して……お姉ちゃん達を……〕

 

 ネプギアは既に満身創痍の状態であり、M.P.B.L.で体を支えていなければ倒れてしまいそうである。

 

〔惜しかったな、貴様もこれの力を手に入れていれば、もっとマシに戦えたかもしれないのにな〕

 

 レイヴィスはその手に握っている『シェアクリスタル』に目を向け、薄く笑いながら言った。

 

〔それは……勇者の……夢人さんのものです!〕

 

 ネプギアは傷ついた体を押して、レイヴィスに向かってM.P.B.L.を横に大きく振りかぶりながら飛翔した。

 

〔グラビティ〕

 

〔……っ!? きゃあああ!?〕

 

 ……しかし、レイヴィスが重力を操作したことで、ネプギアはレイヴィスに辿り着く前に地面に叩きつけられてしまった。

 

 地面に叩きつけられた衝撃によって『変身』が解除され、ネプギアは立ち上がることができなくなってしまった。

 

〔……ごめ……ん……なさい……〕

 

 ネプギアは最後まで言葉を続けることができず、気絶してしまった。

 

 レイヴィスはその様子を見て、にやりと笑いながら倒れているネプギアに近づく。

 

〔安心しろ、殺しはしない。お前達女神は万が一の時の保険だからな〕

 

 レイヴィスはそう言って一度地面を強く踏み締めた。

 

 その瞬間、ネプギアが倒れている地面から黒い拘束具が現れ、ネプギアを拘束し始めた。

 

〔……俺がゲイムギョウ界を破壊するためのな。……ククク、ハハハハハハ、アーッハッハッハ!!〕

 

 レイヴィスは拘束されたネプギアを満足そうに見つめ、その場で顔を歪めて笑いだした。

 

「があああああああああっ!! 女神どもがやられちまったじゃねえか!!」

 

 ジャッジはスクリーンに向けて叫び、近くの壁を思いっきり殴った。

 

 殴った壁は陥没し、罅は壁一面に広がっていった。

 

「落ちつけ、この脳筋バトルジャンキーが。壁に当たっても仕方ないだろう」

 

「あああっ? じゃあ、オレはこの渇きを何で潤せばいいってんだよ! トリック!!」

 

 トリック・ザ・ハードは暴れるジャッジを宥めようとするが、ジャッジはそれを無視して何度も壁を殴りつける。

 

「うおおおおりゃああああっ!!」

 

 ジャッジに殴られ続けた壁は無残に粉砕され、隣の部屋に大量の噴煙と破片が舞い上がった。

 

「ああもう我慢できねえええ!!」

 

 それでもジャッジは気持ちは収まらず、部屋を出ていこうとする。

 

「……どこへ行こうとする」

 

「決まってんだろ! 今から逃げた勇者だけでもぶっ殺してくる!! それぐらいしないと、オレの疼きが収まらねえええ!!」

 

 今まで部屋の端で傍観していたマジック・ザ・ハードがジャッジに尋ねると、ジャッジは逃げた夢人を追うために飛びだそうとしていた。

 

「大体! お前が言ったんだろう!! 勇者や女神ともっと戦える舞台を用意すると!! なのになんだ? あんな野郎に好き勝手やらせて、オレ達はここで指咥えて待ってろってのか? ふざけてんじゃねえええ!!」

 

 ジャッジは部屋を出て行こうとドアに向かっていたが、マジックに止められたことでまた苛つき、今度は壁を思いっきり蹴り飛ばした。

 

 蹴り飛ばされた壁は、ジャッジが蹴り飛ばした形に削り取られていた。

 

「だから、落ちつけと言っとるのに……しかし、本当にいいのか? マジックよ」

 

 再び壁に当たりだしたジャッジに呆れてため息をついたトリックだが、すぐにマジックに眉をひそめながら尋ねた。

 

「あんな男にいつまでも好き勝手されていると、こちらにも迷惑だ……いったいどうすると言うのだ?」

 

「なに、簡単なことだ」

 

 マジックは未だスクリーンに映っているレイヴィスを見て薄く笑いながら言う。

 

「……奴の望みは叶わんさ、永遠にな」

 

 

*     *     *

 

 

「……それで、夢人さんの様子はどうですか?」

 

「腕の火傷はそんなに酷いものではなかったね。体の方もほとんど無傷と言ってもいい」

 

 しかし、とケイは顔を曇らせながらイストワ―ルに言う。

 

「問題は彼が『シェアクリスタル』を奪われたことだ。戦う力を奪われて心が折れているように思えるよ」

 

「そうですね。こちらに転送された時もずっと泣きながら、ごめん、と繰り返していましたね」

 

「今は部屋で寝てるけど、そっちの方はどうなのよ?」

 

 ミナは転送されてきた時の夢人の様子を思い出し心配そうな顔でケイに同意し、チカはイストワ―ルの後ろにある転送装置に目を向けながらイストワ―ルに尋ねた。

 

「……ダメでした。ギョウカイ墓場に突入した他の皆さんをこちらに強制的に転送しようとしたのですが、座標を特定できませんでした」

 

 イストワ―ルは俯きながら拳を強く握りしめて言った。

 

 イストワ―ルの報告を聞いて、チカは髪を乱暴に掻きながら言う。

 

「ああ、もう! どうしてアイツは『シェアクリスタル』を奪われたのよ! アレは勇者の証なんでしょ!」

 

「……うん、そうだね。そろそろ話してもらえないかい?」

 

 チカの言葉を聞いて、ケイは今まで黙っていたゲイムキャラ達に尋ねる。

 

「君達が話そうとしていた真実とは何か。特に、夢人君に話さなければいけなかったこと。そして……」

 

〔いいだろう。今頃、プラネテューヌのが彼にも同じことを話している頃だろうしな〕

 

 ラステイションのゲイムキャラは静かに語り始めた。

 

〔……この世界に生みだされた『歪み』のことを〕

 

 

*     *     *

 

 

 ……なにやってんだよ。

 

 俺はプラネテューヌの教会で借りている部屋のベットに横になり天井を見上げている。

 

 ……俺だけが逃げ出した。

 

 俺が『シェアクリスタル』を奪われたせいで、女神救出作戦は失敗した。

 

 全部俺のせいだ。

 

 俺があの時、パープルディスクにシェアエナジーを送り込めさえすれば……

 

 俺の決心があの時ブレなければ……

 

 ネプギアにあんなこと言わせなくて済んだはずなのに……

 

 あんな顔、もうさせたくなかったのに……

 

〔失礼しますね〕

 

 俺が天井を見上げていると、紫色の光の球が目に映った。

 

「あなたは……プラネテューヌのゲイムキャラ?」

 

〔お久しぶりです。……早速ですが、あなたに聞かなければいけないことがあります〕

 

 プラネテューヌのゲイムキャラは部屋に入るなり、すぐに俺にあることを聞いてきた。

 

〔……あなたは今、どこまで覚えていますか?〕

 

 

*     *     *

 

 

「その『歪み』とは、いったい何なんですか?」

 

 ゲイムキャラが語りだした『歪み』について、私達は何も知らない。

 

〔『歪み』の存在自体は、お前達はすでに知っているだろう? 特に、リーンボックスの教祖には心当たりがあるはずだ〕

 

「……どういう意味よ、それ」

 

 チカさんに心当たり?

 

 チカさんは眉間にしわを寄せてゲイムキャラを睨んでいる。

 

〔言わなければわからないか? リーンボックスの女神候補生……彼女は『歪み』の1人だ〕

 

「ふざけたこと言ってんじゃないわよ!!」

 

「ち、チカさん!? 落ちついてください!?」

 

 ミナさんが慌てて押さえてくれましたが、チカさんはそれでも尚、ゲイムキャラに近づこうと顔を怒りに歪ませていました。

 

「落ちつけるわけないでしょ!? ナナハを、アタクシ達の可愛い妹を『歪み』呼ばわりされて黙ってられないわ!!」

 

「き、気持ちはわかりますが、落ちついてください、箱崎様!?」

 

「そうですよ。まだ話は始まったばかりなんですから」

 

「こっちは何とか押さえときますから、話を続けて貰ってもいいですか?」

 

「……そうですね。続きを聞かせてはくれませんか?」

 

 ユピテルの皆さんには悪いが、このまま話を続けてもらおう。

 

 ……私だってゲイムキャラの言葉には納得いかない。

 

 ナナハさんが『歪み』と言うものであるとは到底思えない。

 

〔『歪み』は彼女だけではない。あの魔物使いの少年も『歪み』の1人だ〕

 

 フェルさんも?

 

 この2人に共通していることと言えば……

 

「……なるほど、『歪み』と言うのは彼らが告白してくれた前世の記憶があること。彼ら曰く『転生者』と言う存在のことなんだね」

 

 お2人がリーンボックスにいた時に告白してくれたこと。

 

 彼らは一度死んでから、このゲイムギョウ界で再び生を受けたと言っていた。

 

〔その通りだ。彼ら、『転生者』はこの世界にとって『歪み』であり、許容できない存在だ〕

 

「だから、それは何でなのよ!! ナナハはちゃんと生きてるじゃない!!」

 

「だ、だから、落ちついて……ふごっ!?」

 

「しゅ、シュンヤ!?」

 

 暴れるチカさんはシュンヤさんの顎を思いっきり殴り上げた。

 

 押さえる人数が少なくなったことで、チカさんはミナさん達の拘束を振りほどいてゲイムキャラに詰め寄った。

 

「ナナハはちゃんとこの世界で生きてるじゃない!! あのフェルって子だってそうよ!! アンタ達まであの銀髪の奴みたいなこと言ってんじゃないわよ!!」

 

 ……銀髪、あのレイヴィスと名乗った人ですね。

 

 あの人も自分を『転生者』と呼んでいました。

 

 ゲイムギョウ界を破壊する、ありえない存在だと言っていました。

 

〔その銀髪の人物は知らないが、そいつは理解しているようだな。『転生者』がこの世界に受け入れられていないことを〕

 

 受け入れられていない?

 

〔元々この世界は1つの完成された世界だった〕

 

〔決められた出来事、決められた運命によって世界は続いて行くはずでした〕

 

〔でも、その運命は『歪み』によって変質してしまったのよ〕

 

 ……なにを言っているんですか。

 

 決められた出来事?

 

 決められた運命?

 

 それじゃ、この世界は……

 

「……まるで造り物だね」

 

〔その通りだ。ラステイションの教祖〕

 

 ……造り物。

 

 私達が生きているこの世界が……

 

〔しかし、誤解しないでほしい。全てが決められているわけではない〕

 

〔元となる運命が1つ、と言うことです〕

 

「……どういう意味ですか?」

 

 ……本当は、私を含む教祖の皆さんは理解している。

 

 でも、それを理解したくはなかった。

 

 理解してしまうと、私達の今の気持ちですら信じられなくなりそうになってしまう。

 

〔この世界のオリジナルが存在しているのよ。つまり、この世界はそのオリジナルを元にした並行世界、パラレルワールドって訳〕

 

 ……パラレルワールド。

 

 行動の先に分岐する未来への可能性。

 

 行動の結果によって無限に広がっていく世界。

 

 しかし、それは聞こえはいいが……

 

「……なによ、それ。この世界がオリジナルのレプリカだとでも言う気なの!?」

 

 オリジナルの世界があるのなら、私達はオリジナルの複製品になってしまう。

 

 ……レプリカ。

 

 チカさんの言う通りだ。

 

 この気持ちですら、私のものだと胸を張って言えなくなってしまう。

 

〔そうは言っていない。パラレルワールドとはその存在が確立した段階で、オリジナルとは完全に別の世界になる。お前達はレプリカではなく、本物の存在だ〕

 

「……そう言われてもすぐには納得できません。あまりにも荒唐無稽なこと過ぎて……そもそもなぜあなた達はそのことを知っているんですか?」

 

 ……確かに、どうしてゲイムキャラはこの世界のオリジナルがあると知っているんでしょうか?

 

 ゲイムキャラもこの世界で生まれたのなら、オリジナルの世界のことなど知っているはずがありません。

 

〔今の勇者の前、初代から聞いたからだ〕

 

 ……初代勇者。

 

 伝説に残されていた人物のことですね。

 

 確かに伝説にも先のことを知ると書かれていました。

 

〔初代はこの世界の運命を知っていた。そして生まれるであろう『歪み』の存在も予見していたんだ〕

 

 そんなことが可能なのでしょうか?

 

 ……もしかして、初代も『転生者』だったのでしょうか?

 

〔……話を戻そう。『転生者』をどうして『歪み』と呼ぶのか〕

 

「ぜひ聞かせてほしいね。彼女もそろそろ限界だし」

 

 ……確かにケイさんの言う通りかもしれませんね。

 

 チカさんが先ほどのように暴れてしまわないように早く話を聞かせてもらいたいです。

 

〔それは『転生者』がこの世界を破壊する存在だからだ〕

 

「だから、その理由を説明しなさいよ!! ナナハがどうしてこの世界を破壊するのよ!!」

 

〔落ちつきなさいよ、リーンボックスの教祖。ちゃんと話すからさ〕

 

 チカさんの周りをリーンボックスのゲイムキャラが回りながら言う。

 

〔そもそもね。パラレルワールドって言っても限度があるのよ〕

 

〔そうです。オリジナルから大きく離れた世界を並行世界とは言いません〕

 

「……つまり、この世界は『転生者』と言う存在が生まれたことでオリジナルから大きく離れてしまっているのですか?」

 

〔そうだ。それによってこの世界は破滅に向かっている〕

 

 ……『転生者』が生まれたから私達の世界はオリジナルから『変質』した世界になっている。

 

 それがどうして世界の破滅につながるのですか?

 

〔うーん、簡単な例を挙げると、ゲームと一緒よ〕

 

 ゲーム?

 

〔例えば、この世界のオリジナルを1つのゲームだとするでしょ? それはプレイする人によって違う物語を展開するけど、結末は同じよね? でも、そこにありえない存在や選択肢が発生したらどうなると思う?〕

 

 ……ありえない存在や選択肢。

 

 それってつまり……

 

「バグ、だね。本来予定していなかった不具合によって生じて、正常に起動することを阻害する原因だ」

 

〔リーンボックスのの例は不適切かもしれないが、その通りだ。『転生者』はこの世界にとっての異物、バグなのだ。正常に起動しないゲームに決して未来はない。それはゲーム全体が壊れてしまうからだ〕

 

 ……言いたいことはわかります。

 

 この世界をゲームに例えると、今の世界の現状はバグが発生したことによって、イベントが進まない状態であったり、画面が動かなくなってしまっているのと同じような状況なのでしょう。

 

 ゲームであるならば、デバック作業をしてバグを取り除けば解決できる問題なのでしょう。

 

 ……しかし、これは私達の生きている世界の問題です。

 

 バグを取り除くと言うことは、フェルさんやナナハさん、レイヴィスを殺すと言うことになってしまいます。

 

 しかも、問題はそれだけではありません。

 

「バグを取り除いたところで、なくなったプログラムは元に戻らない。欠けたデータによって世界は崩壊すると言うことか」

 

 ……そう、私達の世界は『転生者』と言う存在が生まれた時点で破滅することが決まっていたということになる。

 

「そんなの……そんなのナナハのせいじゃないじゃない!! ナナハやフェルを転生させた奴が悪いんじゃないのよ!!」

 

「チカさんの言う通りです。彼らを『歪み』やバグ呼ばわりするのは、いくらあなた達と言っても許せません」

 

 チカさんとミナさんの言葉はこの場にいる全員の気持ちだ。

 

 私達と同じように生きている彼らを『歪み』やバグなんて言葉で片づけないでください。

 

「……ちょっといいかな?」

 

 ……ケイさん?

 

 私達がゲイムキャラ達を睨んでいると、ケイさんは1人冷静にゲイムキャラ達に尋ねた。

 

「君達はゲイムギョウ界の平和を維持するために生みだされたと言っていたね? ならば、いったいどんな方法で破滅に向かっているこの世界を救うつもりでいたんだい?」

 

 ……そうだ。

 

 ゲイムキャラ達はこのゲイムギョウ界の平和を維持するために生み出されたと言っていた。

 

 つまり、彼女達の言う『歪み』が発生したこの世界を救う方法があるはずだ。

 

〔それこそが勇者……いや、『シェアクリスタル』の本来の役目だ〕

 

 『シェアクリスタル』の?

 

 勇者の役目じゃないんですか?

 

〔勇者自体は重要な存在ではない……重要なのは『シェアクリスタル』だけだ。なぜなら……〕

 

 ……私達はラステイションのゲイムキャラのその言葉に息をのんだ。

 

〔『シェアクリスタル』とは、新たな女神を生みだすための卵なのだから〕




という訳で、今回はここまで!
いやあ、説明だけで次話までかかっちゃうことが書いてて気づいた。
本当ならこの話だけでまとめられるかな? って思ってたのに、長くなっちゃいました。
次回は勇者と『シェアクリスタル』関連の説明になるのでお楽しみに!
それでは、 次回 「女神の卵」 をお楽しみに!

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