超次元ゲイムネプテューヌ 夢のヒーローを目指して 作:ホタチ丸
この作品もついにUA25000を突破しました!
これからもよろしくお願いします!
それでは、 守るべき人間 はじまります
「いっけえええぇぇぇ!」
私は私に一直線に向かってくるワレモノモンスター達に向かってビームソードを振り上げて衝撃波を放つ、スラッシュウェーブを放った。
衝撃波が当たったワレモノモンスター達は、危険種であるとは思えない程、呆気なく光となって消えていった。
……油断しちゃダメ。
確かにレイヴィスの言った通り、ワレモノモンスターはオリジナルのモンスターよりも弱い。
でも、ワレモノモンスター達は倒してもどんどん増えていっている。
このままじゃこっちが数に押されてやられてしまう。
「それでも、負けません!!」
この戦いは絶対に負けられない!!
お姉ちゃん達を……
今捕まっているユニちゃん達を助けるためにも!!
私は片方の翼がなくなっているエンシェントドラゴンに向かって駆け出し、思いっきりジャンプした。
「ラジカルセイバー!」
私はビームソードを思いっきり振り下ろして、エンシェントドラゴンのお腹を斬り裂いた。
「グギャアアアアアアアア!?」
エンシェントドラゴンは斬り裂かれたお腹を押さえて、悲鳴を上げながら後ずさった。
「逃がしません! これでとどめです!」
私は後ずさったエンシェントドラゴンを追撃するために、強く地面を蹴って駆け出した。
お腹の傷を押さえていた腕を払い上げ、先ほど斬り裂いたお腹の傷に重ねるように、私は回転してビームソードを横に大きく払った。
エンシェントドラゴンはお腹を十文字に斬り裂かれたことで断末魔の叫びも上げずに光となって消えていく。
他の皆さんは……!?
エンシェントドラゴンを倒したことで、少しだけ視野が広くなった私は他の皆がどうなっているのかを確かめるために周りを見渡した。
「……夢人……さん……?」
……そして見てしまった。
レイヴィスに体を貫かれている夢人さんの姿を……
その貫かれた体から『シェアクリスタル』が取り出されてしまったことを……
* * *
「伝説の『シェアクリスタル』、貰ったぞ!!」
レイヴィスは自分の手にある『シェアクリスタル』を見て、笑いながら叫んだ。
「……なん……で……」
夢人は目の前の光景が信じられなかった。
夢人は自分の腹を触るが、どこにも怪我はない。
先ほど、レイヴィスの腕に貫かれていたはずなのに……
「これは貴様には相応しくない……これは、俺のものだ!!」
レイヴィスはそう言うと、顔の赤い模様を光らせながら『シェアクリスタル』を強く握りしめた。
それにより、透明な輝きを放っていた『シェアクリスタル』に赤い色が混ざり始めた。
透明な水に色のついた水を混ぜるかのように、次第に『シェアクリスタル』全体が赤く染まっていく。
「俺はこれを使い、ゲイムギョウ界を破壊する!!」
「……させるかよ!!」
『シェアクリスタル』が奪われてしまったことで、呆然としていた夢人であったが、レイヴィスの言葉を聞いて弾かれたようにレイヴィスに殴りかかった。
「……ふっ、今更お前に何ができる?」
「ぐふっ!?」
レイヴィスは殴りかかってきた夢人の右腕の攻撃を左に避けて、がら空きになっていた右わき腹に蹴りを喰らわせた。
夢人は蹴られたことで左腕から地面に転がったが、すぐに左手を地面についてレイヴィスを睨んだ。
「諦めないか……なら、これの本当の使い方を教えてやる」
自分を睨む夢人に呆れながら、レイヴィスは『シェアクリスタル』を握っていない方の腕を夢人に向かって伸ばして言う。
「フレイム」
「なっ!?」
夢人はその光景を見て驚愕した。
……レイヴィスの手のひらから炎の球体が自分に向かってきていた。
* * *
……信じたくなかった。
目の前の光景がウソであって欲しいと願った。
だけど、俺に近づいてくる熱は、それを現実だと知らせてくれていた。
レイヴィスが『シェアクリスタル』の力を使って魔法を使えている。
失敗させることなく、俺に向かって炎の球が近づいてきている。
俺はとっさに右腕で炎の球から顔を庇った。
「っ!? あっつう」
炎の球を受けた右腕が焼けるように痛かった。
実際、火傷もしているだろう。
それに対してレイヴィスが俺に向けている腕は綺麗なままであった。
「なかなか便利じゃないか」
レイヴィスは口の端を吊り上げて笑いながら言った。
……何でだよ。
「貴様はこんな便利な力を使えていなかったのか」
……どうしてなんだよ。
「まさしく宝の持ち腐れだったと言うわけか」
……なんでなんだよ!?
何でレイヴィスが普通に魔法を使えて、俺はできなかったんだよ!?
「ほら、次行くぞ?」
レイヴィスが笑いながら俺に向けている腕を軽く振った。
「がはっ!?」
……何が起こったのかはわからない。
突然、俺は地面に叩きつけられた。
起き上がろうとしても、体が重くて動かない。
「グラビティ……土の魔法の応用だな」
土の魔法だと?
「貴様は石柱を造り出すしか能がなかったが、本来の土の魔法の本質は大地の力。つまりは星の力だ」
レイヴィスが俺に向かってゆっくりと歩きながら言っている。
「人は常に星の力、重力を受けている。俺はそれを操作しただけさ」
……そんなことができたのか。
レイヴィスは俺の近くまでくると、俺の頭を足で踏みつけてきた。
「悔しいか? 貴様が使えなかった力を俺が簡単に使えていることが。屈辱か? 地面に転がされ、なすすべもなく俺に踏みつけられていることが」
レイヴィスが笑いながら俺の頭に乗せた足をぐりぐりと、俺の頭を地面に押し付けるように動かしてくる。
……悔しいさ。
俺にできなかったことを簡単にしているレイヴィスが。
……情けない。
皆が必死に戦っているのに、俺は地面に転がったまま、レイヴィスの足さえ退かすことができない。
俺には歯を食いしばって、この悔しさに耐えることしかできないのかよ。
「わかっただろ? 貴様はこの『シェアクリスタル』に相応しくなかったんだ」
……そうなんだろうな。
最初から、俺は『シェアクリスタル』に……
勇者に相応しくなんてなかったんだ……
* * *
「これは俺がこれから有効に活用させてもらう。本来の使い方でな!」
「がっ!?」
レイヴィスが言葉とともに夢人の頭を思いっきり踏みつけた。
「さよならだな」
レイヴィスは『シェアクリスタル』の力を使い、氷の槍を造り出し、その刃を夢人の背中に突き付けた。
「これで、死……!?」
「させません!!」
突き付けた氷の槍を引き、勢いよく夢人に突き刺そうとしたレイヴィスだが、氷の槍は夢人の体に刺さる前に横からやってきた人物に止められた。
「一閃! リンドバーグ!」
受け止めた人物、ネプギアはビームソードで氷の槍を受け止めたまま、ビームソードに魔力を込めて全力で横に払った。
「ッチ!? 邪魔が入ったか」
レイヴィスはネプギアの放ったリンドバーグの勢いに押されて後ろに吹き飛んだが、倒れることはなかった。
しかし、氷の槍は砕け散り、槍を握っていた腕には血が滴っていた。
「……ネプ……ギア……?」
「夢人さん!? しっかりしてください!? 夢人さん!?」
夢人はレイヴィスのグラビティの影響がなくなっても立てずにいた。
目は今にも閉じそうになり、顔を上げることさえできないでいた。
ネプギアは慌てて夢人に呼びかけるが、夢人はネプギアの声を聞いても動けなかった。
「……ごめん……ごめん!」
……ただ泣いて謝っていた。
「夢人さん!?」
ネプギアはレイヴィスから視線を外し、夢人の近くで膝をついて夢人の上半身を起こし上げた。
「余所見とは、余裕だな!」
レイヴィスは夢人を抱えて無防備になっているネプギアに向かって腕を伸ばし、フレイムを放った。
「させないわよ!!」
ネプギアに向かっていた炎の球体を横から来たアイエフがカタールで斬り裂き、炎の球体をかき消した。
「チッ、また……」
「こっちにもいるよ!!」
「ぐわっ!?」
アイエフの妨害によって炎の球体を消されたことで、レイヴィスは舌打ちをし、もう一度フレイムを唱えようとしたが、後ろから近づいてきた日本一に真横に蹴られ、地面を転がった。
「さすがに『シェアクリスタル』は落としてくれなかったわね」
アイエフはレイヴィスが地面に転がりながらも、『シェアクリスタル』をしっかりと握りしめていることを見て、眉をひそめた。
「ネプギア、アンタは夢人を連れて逃げなさい」
「えっ?」
ネプギアはアイエフの言葉を聞いて目を見開いて驚いてしまった。
「今の状態じゃジリ貧だわ。だから、アンタと夢人は逃げなさい」
「ま、待ってください!? そんなことできません!!」
アイエフの言葉にネプギアは涙目になりながら反論した。
夢人を連れて自分達だけ逃げることなんてできないと。
「ネプギア!!」
「っ!?」
アイエフはネプギア達の方を振り向き、ネプギアの両肩に手を置いて真剣な表情で言う。
「私達の中で夢人を連れて逃げられるのは、『変身』できるアンタだけよ」
「……アイエフさん」
「だから、アンタと夢人で逃げなさい。そして、次は必ず女神達を救出しなさい」
「そんな!? アイエフさん達はどうするって言うんですか!?」
ネプギアの悲痛な叫びを聞いて、アイエフは困ったように笑いながら言う。
「私達でアンタ達を逃がす時間を造るわ。大丈夫よ、ただでやられはしないわ」
アイエフの言葉を聞いて、ネプギアは目の端から涙を流して俯いてしまった。
アイエフはそんなネプギアの頭に手を置いて優しく言う。
「アンタ達なら絶対にできるわ。だから、ちゃんと夢人を立ち上がらせなさいよ?」
「……ごめんなさい!!」
アイエフの言葉を聞いて、ネプギアは俯きながら『変身』をした。
ネプギアは抱えていた夢人を強く胸に抱きながら、元来た道へと飛んで行った。
「逃がすわけな……っ!?」
「逃がすわ、全力でね!」
ネプギアが夢人を抱えて飛び去っていく姿を見たレイヴィスは立ち上がり、腕をネプギアに向けようとするが、素早く駆け寄ったアイエフによって伸ばした腕を蹴りあげられてしまう。
「クソッ!? 邪魔ばかりしやがって!」
レイヴィスはアイエフに蹴られた腕を震わせながらアイエフを睨んだ。
「あの子達は、絶対に守ってみせる!!」
アイエフはカタールをレイヴィスに向けて構えながら、ネプギア達が逃げる時間を稼ぐためにレイヴィスに向かって駆け出した。
「馬鹿め、正面から来る奴など……」
「だから言ってるでしょ。アタシもいるって!!」
「っ!? また貴様か!?」
レイヴィスは自分に正面から向かってくるアイエフに対してグラビティを仕掛けようと腕を伸ばそうとした時、再び後ろから襲ってきた日本一のプリニーガンを避けるために後ろに振り向きながらジャンプした。
「いい加減に……っ!?」
「ソウルズコンビネーション!!」
着地したレイヴィスは日本一を睨み、魔法を使おうとしたが、今度は近づいてきたアイエフのカタールの一撃で中断させられてしまった。
アイエフは右手に持つカタールでレイヴィスに斬りかかった後、左足をレイヴィスのわき腹めがけて蹴りあげた。
「ぐっ!?」
レイヴィスはわき腹を蹴りあげられ、体が曲がりながら浮き上がった。
アイエフはトドメと言わんばかりに、蹴りあげたことで前に出ていた左足を軸に右足で思いっきりレイヴィスを蹴り飛ばした。
「私達を舐めてもらっちゃ困るわ」
「そして、『シェアクリスタル』も返してもらうからね」
アイエフと日本一は横に並び、地面に転がったレイヴィスを睨みながら言った。
「貴様ら!!」
レイヴィスは怒りに顔を歪ませながら立ち上がり、『シェアクリスタル』を握る手にさらに力を入れた。
「遊びは、終わりだ!!」
* * *
「……はい、お願いします」
私はいーすんさんに連絡して、ギョウカイ墓場を脱出するために転送してもらう準備をお願いした。
「……夢人さん」
「ごめん……ごめん……」
夢人さんは私の腕の中で泣きながら謝り続けている。
その右手は強く握りしめられており、血が流れていた。
〔ネプギアさん、今転送準備が整いました! その場を動かないでください!〕
いーすんさんが慌てて私に報告してくれた。
私と夢人さんを中心に光の輪が発生し、私達を包む。
……ごめんなさい。
こんな決断をしてしまう私を許してください。
私は光の輪の中心に夢人さんを置いて、外に出た。
「……ネプギア、何を……」
夢人さんは驚いたように私を見た。
「私は戻ります。夢人さんは逃げてください」
……そう、私は逃げない。
アイエフさん達を残して逃げられない。
戻ってアイエフさん達と一緒に戦う。
「ごめんなさい、夢人さん」
……私は結局、あなたを一緒に戦う仲間として、最後まで見ることができませんでした。
「今まで、ありがとうございました」
あなたの決意も、優しさも、努力も……
否定してしまう私を許してください。
私はあなたを死なせたくないんです。
だって、あなたは……
私が……
女神が守るべき弱い人間なんですから……
「……ネプギア、ネプギア! ネプギアーッ!!」
夢人さんは泣きながら私の名前を叫んで消えていってしまった。
……夢人さん、もう会うことはできないかもしれませんが、元気でいてくださいね。
そして……
「……さようなら」
私は夢人さんのいた場所に向かってそうつぶやいて、アイエフさん達の所に急いで戻ろうと飛び出した。
……頬に流れる熱い涙を感じながら。
という訳で、今回は以上!
ちょっとプロットを見直して考えてみたんですけど、年内中に本編が終わらないかもしれません。
真面目にまだここまででこの章の3割ぐらいしか消化していない状況なんですよ。
だから、ちょっと明日と明後日は2話ずつ投稿できるように頑張りますね。
それでは、 次回 「真実」 をお楽しみに!