超次元ゲイムネプテューヌ 夢のヒーローを目指して   作:ホタチ丸

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はい、皆さんこんばんわ!
日に日に更新する時間が遅くなってしまい申し訳ありません。
女神救出編に入ってから出てくるキャラクターが増えてどう活躍させようかと考えると、うれしいですけどちょっと困ってます。
それでは、 奪われる力 はじまります


奪われる力

 ……信じられなかった。

 

 私は夢人さんの言葉を聞いて、自分の耳を疑ってしまった。

 

「……怖いよ」

 

 私が驚愕している間も、夢人さんは震える腕で私を強く抱きしめていた。

 

 ……本当に怖がっている。

 

 初めてだった。

 

 こんなに夢人さんが弱く感じたのは……

 

 私の知っている夢人さんは、誰かを助けるために傷つくことを厭わない、強い意志を持っていた。

 

 自分がどれだけ傷つこうと弱音を吐かず、優しく私達を支えてくれていた。

 

 勇者の力が使えなくても、私達と一緒に戦うために魔法を失敗させながらも強くなろうとしていた。

 

 ……でも、今の夢人さんは違う。

 

 体じゃなく、心が弱っている。

 

 何かに怯えて震えているんだ。

 

 ……私はこんな夢人さんの姿を初めて見た。

 

 夢人さんだって人間だ。

 

 いつも心が強いままでいるなんて思ってはいなかった。

 

 でも、こんなに弱っているだなんて思っていなかった。

 

「……夢人さん、一度離してください」

 

 私がそう言うと、夢人さんは私のお腹を抱きしめていた腕を離してくれた。

 

「ごめん……嫌だ……」

 

「夢人さん」

 

 私が振り返ると、夢人さんが申し訳なさそうに謝ろうとしていました。

 

 私はそれに構わず、夢人さんの背中に手をまわして抱きしめた。

 

 ……私にはこうすることしかできません。

 

「怖いなら泣いてください」

 

 あなたの恐怖が少しでもなくなるように……

 

「ここには私達しかいません」

 

 あなたの心に強さが戻るように……

 

「誰にも言いませんから」

 

 あなたが私を支えてくれたように……

 

「……っ! ごめん……ごめん!」

 

 私が抱きしめたことで呆然としていた夢人さんでしたが、私の言葉を聞くと泣きながら私を強く抱き寄せた。

 

 ……謝らなくていいです。

 

 私がしたいんです。

 

 少しでもあなたを癒したい。

 

 あなたがくれた温もりを、今度は私があなたに与えたい。

 

 ……でも、どうしてですか?

 

 あなたは何に怯えているんですか?

 

 こんなに近くにいるのに……

 

 あなたが遠く感じるのはどうしてですか……

 

 

*     *     *

 

 

 ……ダメだ。

 

 俺にはやっぱり言えない。

 

『そうよね。言えるわけないわよね』

 

 頭の中で声が笑いながら言ってきた。

 

『それよりも、ちょうどいいじゃない。あんなものに頼らなくてもこのまま直接……』

 

 やめろ!!

 

 勝手なことをするな!!

 

『ふふふ、必死ね。当たり前よね』

 

 声が楽しそうに頭の中に響いてくる。

 

 ……ごめん、ネプギア。

 

 本当のことが言えなくて……

 

 こんな最低な俺でごめん。

 

 それでも、俺は……

 

『自己弁護? 安心しなさい。そんなものはすぐに必要なくなるわ』

 

 ……わかってる。

 

 これがただの言い訳に過ぎないってことぐらい。

 

『そうそう、大丈夫。あなたはゲイムギョウ界を必ず救うわ』

 

 ……本当に、そうなるのか?

 

『ええ、もちろんよ。なんたって、そのための存在がここにいるんだから』

 

 ……ネプギア。

 

 お前との約束……

 

 ゲイムギョウ界を救うって約束、必ず果たしてみせるよ。

 

 例え……

 

『心は決まったみたいね。だったら……』

 

 声は甘えるように俺に言ってきた。

 

 ……もっとちょうだい、と。

 

 

*     *     *

 

 

「皆さん、準備はよろしいですか?」

 

 翌日、転送装置のある部屋でイストワ―ルは夢人達に尋ねた。

 

「はい、大丈夫です」

 

 夢人はほほ笑みながら応えた。

 

 ネプギア達はそんな夢人を心配そうに見つめていたが、その視線に気づいた夢人が苦笑しながら言う。

 

「いや、本当に大丈夫だって」

 

「……無理してんじゃないわよ」

 

「夢人お兄ちゃん、ウソついてる」

 

「うっ」

 

 ユニとロムにジト目で見られて、夢人は思わずのけぞってしまった。

 

「い、いやあ、やっぱり緊張してるかな? ほら、いよいよ決戦って雰囲気だからさ」

 

「……それ、昨日アタシも同じこと考えてたけど、今の夢人は違うでしょ?」

 

「それになんだか取ってつけたような理由だし、無理があるかな」

 

「ぐっ」

 

 ユニとロムの視線から逃げて、違う方向に目を向けた夢人の目に映ったのは日本一と5pb.の呆れたように自分を見る姿であった。

 

「しらじらしいですの」

 

「さすがにその答えじゃ納得できないかな」

 

 がすととファルコムは焦っている夢人に苦笑しながら言った。

 

「な、なんか皆して俺に厳しくない?」

 

「当たり前じゃない。だって、昨日からその調子なのよ?」

 

「そんな態度取られたら、誰だって心配するわ」

 

 ラムは呆れたように、ケイブは困ったように笑いながら夢人に言った。

 

「皆、夢人さんのことを心配してたんですよ?」

 

「……うっ、それは申し訳なかったけどさ。ほ、ほら、今はこんなに元気いっぱい……」

 

「ウソ。そんな空元気見せられても納得できないよ」

 

 夢人が苦笑しながらコンパに応えようとした時、コンパの隣にいたナナハがジト目で夢人にくぎを刺した。

 

「こんな雰囲気じゃ失敗しちゃうかもしれませんね」

 

「……ううっ、フェルまで」

 

 フェルが悪戯っぽく笑いながら言ったのを見て、夢人はうなだれてしまった。

 

「アンタに隠しごとはできないのよ」

 

「そうですね。私でもわかりましたし」

 

 アイエフとイストワ―ルが困ったように笑いながら言った。

 

「アイエフやイストワ―ルさんまで……ああ、もう! わかりました! わかりましたよ!」

 

 夢人は勢いよく顔をあげて言う。

 

「実は怖かったんですよ!! ガクブル震えて怖がってたんですよ!! 今日の作戦がゲイムギョウ界の未来を左右するってことで、すっごく緊張して怖がってたんですよ!! 悪いか!?」

 

 はあ、はあ、と夢人は顔を赤くして肩で息をしながら叫んだ。

 

「……バカね。怖いのはアンタ1人じゃないわよ」

 

「わたし達だって怖いよ」

 

「今だって不安だし、怖いって思うもん」

 

「でも、私達は1人じゃないでしょ?」

 

 ユニがほほ笑みながら夢人の左手を取り、その手にロム、ラム、ナナハが自分の手を重ねた。

 

「先のことを考えすぎて怖がってんじゃないわよ」

 

「わたし達、皆夢人さんと一緒にいますよ」

 

「そうだよ。夢人にはアタシ達がついているんだから」

 

「今までと一緒ですの」

 

「うん、ボク達は皆で女神様達を救出に行くんだから」

 

「いつも通りの夢人君でいいんだよ」

 

「私達は今できることを全力でするだけよ」

 

 アイエフ達は、ユニに手を取られたことでポカンと口を開けたままであった夢人に優しく言った。

 

「皆、お兄さんと同じ気持ちですよ」

 

「……本当に情けないなあ」

 

 夢人は右手で頭を掻きながら苦笑して言う。

 

「ごめん、皆。そして、ありがとう」

 

「……ちょっとは調子が戻ったみたいね」

 

 夢人の顔を見て、ユニは安心したようにほほ笑みながら左手を離した。

 

「よしっ! 皆で絶対に女神達を助けるぞ!!」

 

 夢人が笑ってそう言うと、ユニ達もほほ笑みながら頷いた。

 

 ……1人を除いて。

 

「ネプギアさん? どうかしましたか?」

 

「あっ、いえ、何でもないですよ」

 

 イストワ―ルが1人だけ心配そうに夢人を見つめていたネプギアに尋ねた。

 

 ネプギアはただ困ったように笑ってそう言うことしかできなかった。

 

 

*     *     *

 

 

「……皆さん、頼みます」

 

 私は転送装置のコアとして、転送装置の中から先ほどギョウカイ墓場に送った夢人さん達に向けてつぶやいた。

 

 直接声は聞こえなくても、ここであなた達が無事に女神達を救出して帰って来てくれることを願っています。

 

「……あああ!? もうナナハ達が行っちゃってるじゃない!?」

 

「……出遅れてしまいましたね」

 

「……まあまあ、遅れてしまったものは仕方ないじゃないか」

 

「あなた達は……」

 

 転送装置のある部屋に、ケイさんとミナさん、チカさんが慌てて入ってきました。

 

「やあ、イストワ―ル。遅れてしまって申し訳ないね」

 

「それはいいんですが、皆さんどうして?」

 

 皆さんは確かリーンボックスでやらなくてはならないことがあると残っていたはずでは?

 

「せめて見送る位はと思っていたんですが……」

 

「ま、間に合わなかった……ナナハ、ごめんね。こんなダメなお姉ちゃんで……」

 

 ち、チカさん? そんなに気を落とさなくても……

 

「彼女は仕方ないさ。嫌われていたと思った猫に、ようやく甘えられるようになった様なものだからね」

 

 そう言うものなのでしょうか?

 

「箱崎様! アイツはどうしますか?」

 

「そうですよ。さすがにここには入れられないですよね?」

 

「でも、本当に持ってきてよかったの? まだ完成してなかったんでしょ?」

 

 教祖達が入って来た後、三人組の男性が部屋に入ってきた。

 

「あ、あの、そちらの方々は、確かユピテルの皆さんですよね?」

 

「ど、どうも失礼します! イストワ―ル様!」

 

「まったく、シュンヤは固いね」

 

「もうちょっと肩の力を抜いてもいいんじゃないの?」

 

 どうしてここに?

 

「彼らだけじゃないよ。ほら、早く入ってきなよ」

 

 ケイさんがそう言うと、四つの光の球が部屋に入ってきた。

 

 紫色、黒色、白色、緑色の球を私は知っている。

 

〔お久しぶりです。イストワ―ル〕

 

「あなた達はゲイムキャラ……あなた達までどうして」

 

 各地のゲイムキャラ達まで。

 

〔女神と勇者は行ってしまいましたか……〕

 

 紫色の球、プラネテューヌのゲイムキャラはどこか悲しそうに私に言った。

 

「いったいどうしたんですか? あなた達まで来るなんて」

 

〔私達が集まって話さなければならない程、重要な話があるんだよ〕

 

〔ええ、ゲイムギョウ界の平和を維持するために生み出された私達だからこそ、あなた達に伝えなければいけないんです〕

 

〔特に勇者にね〕

 

 ……重要な話?

 

〔……本当なら、彼には最初に話しておくべきことだったのかもしれません。ですが、間に合いませんでした〕

 

「い、いったい何のことなんですか?」

 

 ……勇者、夢人さんに話さなければいけないことって何なんですか?

 

〔勇者のこと……『シェアクリスタル』のこと……そして何より……〕

 

 

*     *     *

 

 

「ここがギョウカイ墓場」

 

 夢人は辺りを見渡しながらつぶやいた。

 

 壊れた機械で出来上がった山がいくつも見える。

 

 空は赤く薄暗い雲が漂っており、緑色に光る火の玉の様なものが浮かんでいた。

 

「……本当にお墓って感じですね」

 

「ああ、ここはゲイムギョウ界の裏の顔ってことなのかもな」

 

 夢人はごみの山を悲しそうに見つめながら言った。

 

「そうかな? 予想よりも面白そうなところじゃない?」

 

「ここにあるものを少しだけ持って帰ってもいいですの?

 

 ちょっと見てきたいんですの」

 

「あ、アハハ。それはやめとこうよ」

 

 夢人とは正反対に、日本一とがすとはゴミの山を見つめて目を輝かせた。

 

 5pb.がやんわりと押さえなければ、きっとごみ山に突撃していただろう。

 

「油断は禁物だわ。ここは敵の本拠地なのよ」

 

「ゆっくり物色なんてしてる暇なんてないよ」

 

 ケイブとファルコムはいつでも戦えるように油断なく、周りを見ながら言った。

 

「ここにお姉ちゃん達が……」

 

「わたし、ここ怖い」

 

「ふ、雰囲気はあるんじゃないかしら?」

 

「はいはい、3人とも落ちついてね」

 

 ユニは今にも1人で先に走り出しそうになり、ロムは両手を強く組んで怖がり、ラムは気丈に振舞おうとするが頬は引きつっていた。

 

 そんな3人にナナハは苦笑しながら落ちつくように言った。

 

「あんまりのんびりもしてられないですね」

 

「そうね。女神達の所まで一気に行くわよ」

 

 ギョウカイ墓場に1度来たことのあるアイエフとコンパが先頭になり、女神達が捕まっていた場所へと全員で歩きだした。

 

「よし、俺も……」

 

「夢人さん」

 

 夢人も先頭のアイエフ達と並ぼうと少し早歩きで前へと歩こうとした時、後ろからネプギアに声を掛けられた。

 

「どうした?」

 

「……手をつないでくれませんか?」

 

 ネプギアは不安そうに夢人に自分の右手を差し出した。

 

「お願いします。お姉ちゃん達の所に行くまででいいんです。手をつないでもらえませんか?」

 

「……わかった」

 

 夢人は不安そうな顔で差し出された右手を左手でしっかりと握った。

 

「……やっぱり」

 

 ネプギアは夢人の左手があることを確かめるかの様に強く握った。

 

 

*     *     *

 

 

 アイエフとコンパを先頭に、夢人とネプギアを最後尾にパーティーは女神達のいるところまで歩いて行った。

 

「……おかしいわね」

 

 アイエフが眉をひそめながらつぶやいた。

 

 ……静かすぎる。

 

 道中、モンスターが一匹も出現しなかった。

 

 ギョウカイ墓場にもモンスターは存在している。

 

 さらに、ここはマジェコンヌの本拠地だ。

 

 夢人達が来ていることぐらい、すぐにわかってもおかしくはない。

 

「誘われているのかもしれないわね。皆、気をつけて」

 

 アイエフはこの先に罠が仕掛けられているのかもしれないと考え、注意を促した。

 

「本当にここがマジェコンヌの本拠地なの? もっとたくさん敵が待ち構えているのかと思ってたんだけど」

 

「日本一、油断は禁物よ」

 

「わかってるよ。でも、なんか拍子抜けって感じがしてさ」

 

 日本一が感じていることはこの場の全員が感じていることであった。

 

 呆気なく奥へと進むことができたことが信じられないでいた。

 

「女神さん達が捕まっている場所までもう少しです」

 

 コンパは以前来た時も見かけたお札が貼ってある少女達を見て悲しそうに言った。

 

 ……もうすぐ。

 

 その言葉に全員が息をのんだ。

 

 もうすぐ女神達が捕まっている所までたどり着く。

 

 ようやく女神達を助けることができると……

 

 

*     *     *

 

 

 もうすぐだ。

 

 もうすぐお姉ちゃん達を助けることができる。

 

 アタシははやる気持ちを抑えることができていないかもしれない。

 

 3年前からずっと会えなかった大好きなお姉ちゃん。

 

 3年も長い間、こんなところに居させてごめんなさい。

 

 でも、もうすぐ助けるよ。

 

「いました!! 女神さん達です!!」

 

 アタシはその言葉を聞いて、すぐに駆け出した。

 

「お姉……ちゃん」

 

 ……久しぶりに会えたお姉ちゃんは黒い紐で拘束されていた。

 

 顔には切り傷、髪はボサボサ、プロセッサユニットもボロボロの状態だった。

 

 でも、間違いない。

 

 あの人は『変身』したお姉ちゃん、ブラックハートだ!!

 

「お姉ちゃん!!」

 

「ちょっと、ユニ!? ロムやラム、ナナハまで!? 勝手に走り出すんじゃないわよ!!」

 

 駆け出したのはアタシだけじゃなかった。

 

 ロムやラム、ナナハも駆け出していた。

 

 ……お姉ちゃん、今助けるよ!!

 

「お姉ちゃん!!」

 

 私はお姉ちゃんに向かって叫びながら走った。

 

「……ユ……ニ……」

 

 ……お姉ちゃん!!

 

 お姉ちゃんが少しだけ目を開けてアタシの名前を呼んでくれた!!

 

 大丈夫、今その黒い紐から解放するから!!

 

「……来……ちゃ……ダメ……」

 

 ……えっ?

 

 アタシはその言葉に驚いている暇はなかった。

 

 突然、地面から何かが飛び出してきた。

 

「なっ!?」

 

「何、これ!?」

 

「は、離しなさいよ!?」

 

「くっ!? ほどけない!? それに……」

 

 地面から飛び出してきた何かは、お姉ちゃん達を拘束していた黒い紐だった。

 

 罠!?

 

 アタシ達はそれを振りほどこうともがいた。

 

 ……でも、黒い紐はびくともしない。

 

 それどころか体の中から力が抜けていく。

 

 ……これはシェアが奪われてる!?

 

 

*     *     *

 

 

 拘束されていた女神達に駆け寄ろうとしたユニ達に地面から黒い紐がまとわりついた。

 

「ユニ!! ロム!! ラム!! ナナハ!!」

 

 黒い紐で拘束されて、苦悶の表情を浮かべるユニ達に俺達はすぐに駆け寄ろうとした。

 

「間抜けだな。そう簡単に女神を救出できると思っていたのか?」

 

「お前は、レイヴィス!?」

 

 俺達とユニ達の前に黒い煙が浮かぶようにレイヴィスが現れた。

 

「ようこそ、ギョウカイ墓場へ。歓迎するぞ」

 

「ユニちゃん達に何をしたんですか!?」

 

 ネプギアが武器であるビームソードの切っ先をレイヴィスに向けながら叫んだ。

 

「あの黒い拘束具はシェアを奪う性質があってな。シェアを力に変える女神にはうってつけの首輪なのさ」

 

「ふざけたこと言ってんじゃないわよ!! さっさと彼女達を解放しなさい!!」

 

 アイエフの言葉通りだ。

 

 皆、レイヴィスに各々の武器を構えている。

 

 俺も右手にアイス・エッジ・ソードを造ってある。

 

「この人数を相手に1人で戦うつもりかしら?」

 

「だとしたら、あたし達を舐めすぎだよ」

 

 そう、この場にいるのは俺達とレイヴィス、そして捕まっている女神達だけだ。

 

 俺達が圧倒的に有利だ。

 

 早くレイヴィスを倒してユニ達を救わなきゃ!!

 

「くっ、くくく……まさか俺が1人でお前らを相手すると本気で思っているのか? なら、そっちこそ、俺のことを舐めているな」

 

 レイヴィスは懐から3枚のディスクを取り出しながら言った。

 

 アレは、モンスターディスク?

 

 でも、アレは1枚につき1体だけしかモンスターを召喚できなかったはずだ。

 

 いくらモンスターを召喚しようとも、3体だけなら俺達の方がまだ有利だ。

 

「これを今までのモンスターディスクと思うなよ? 出ろ! ワレモノモンスターども!!」

 

 レイヴィスがディスクを投げると、光と共にフェンリル、ドルフィン、エンシェントドラゴンが現れた。

 

 ……しかし、それはそれぞれ1体ずつではなかった。

 

 現れた3体は、まるで分裂するかのようにどんどんと数を増やしていった。

 

「な、何よ、それ!?」

 

「コイツらはワレモノモンスター、モンスターディスクに閉じ込めたモンスターを不完全な状態で召喚することで出来上がるモンスターさ」

 

 ……ワレモノモンスター。

 

 よく見てみると、フェンリルは片方の耳がなく、ドルフィンは背びれがなくなっており、エンシェントドラゴンに至っては片方の翼がなくなっていた。

 

「コイツら1体1体はオリジナルのモンスターには劣るが、それを補う増殖力がある!! 欠けたデータを修復しようとするコイツらはどんどん増えていくのさ!!」

 

 レイヴィスが言っている間にも3体はどんどんと増えていき、いつの間にか俺達の周りを何体ものワレモノモンスターが取り囲んでいた。

 

「さあ、やれ!!」

 

 レイヴィスがそう言うと、ワレモノモンスター達は俺達に一斉に襲い掛かってきた。

 

「負けてたまるかよ!!」

 

 俺は飛びかかってくるフェンリルもどきの右手の爪を受け流しながら叫んだ。

 

 周りでは、他の皆も戦っている。

 

『そろそろじゃない?』

 

 ……わかってる!

 

 俺はさっきから持っているパープルディスクが熱くなっていることに気づいていた。

 

 きっと俺がパープルディスクにシェアエナジーを送れば、ネプギアの力は強くなり、こんな偽物モンスターどもなんか簡単に蹴散らせるだろう。

 

『ほら、早くしなさいよ?』

 

 ……だから、わかってるって言ってんだろ!!

 

 頭の中で声が俺を焦らせる。

 

 ……この状況を打開するためにも、やらなくちゃいけないんだ!!

 

 俺は向かってくるドルフィンの突撃を横に避けて、そのお腹を蹴り飛ばして距離を取った。

 

 ……よし、やるんだ!!

 

 俺は持っていたパープルディスクを両手で持ち、シェアエナジーを送り込むために目を閉じた。

 

 ……これでいいんだ。

 

『……本当にいいの?』

 

 ……っ!?

 

『本当にそうしたいの?』

 

 なんだよ……何なんだよ!?

 

 ここに来てそんなこと言うんじゃねえよ!?

 

『本当にそれをしてもいいの?』

 

 ……したいじゃないんだ。

 

 しなくちゃいけないんだよ!!

 

『……だったら』

 

 声が聞こえたと同時に、俺は両手に持っていたパープルディスクに弾かれてしまった。

 

「……えっ?」

 

 ……なんで?

 

『今のあなたは、違う』

 

 ……何のことだよ。

 

 何が違うっていうんだよ!?

 

 俺は……っ!?

 

 ……呆然としていた俺はレイヴィスが近づいてきていることに気付かなかった。

 

「それ、貰うぞ」

 

「ぐっ!? ……えっ?」

 

 ……何で俺の体にレイヴィスの腕が刺さっているんだ?

 

 痛みは不思議とない。

 

 けど、体の中をレイヴィスの手で弄られているような不快感があった。

 

「……見つけた!!」

 

「……あっ」

 

 レイヴィスは顔を歪ませて笑いながら、俺の体から腕を引き抜いた。

 

 その手に輝いている結晶を持って……

 

「伝説の『シェアクリスタル』、貰ったぞ!!」




という訳で、今回はここまで!
年内中に女神救出編が終わるか本当に不安なんだが……
が、頑張って本編だけでも終わらせたい!
でも、まだこの章は書きたいこといっぱいあるんですよね……
それでは、 次回 「守るべき人間」 をお楽しみに!

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