超次元ゲイムネプテューヌ 夢のヒーローを目指して   作:ホタチ丸

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はい、皆さんこんばんわ!
本当ならライブにまで行くはずだったのですが……
行きませんでした!ごめんなさい!
その代わり、本編では活躍のあまりなかったナナハちゃんのことについて一話使いました!
それでは、 輝くステージ はじまります


輝くステージ

「……それで、アンタは連携技を完成させたのね」

 

「ああ、その通りだ」

 

「よかったわね……落ちがつかなきゃもっとよかったのに」

 

 リーンボックスの病院の一室でユニは呆れた目で夢人を見ていた。

 

 ジャッジ・ザ・ハードを退けた夢人達はシェアエナジー増幅装置を使い、リーンボックス市民の洗脳を解除することに成功した。

 

 夢人達もアンダーインヴァースから急いでリーンボックスに戻ろうとした。

 

 しかし、目を覚ました夢人は顔を青ざめて立ち上がれないでいた。

 

【足、痛い】

 

 夢人が涙目でそう言うと、ネプギア達が慌てて夢人の足を見た。

 

 ジャッジに風林火山をくらわせた所まではよかった。

 

 しかし、空中でジャッジから跳び下りたことが悲劇を生んだ。

 

 夢人は着地をした時によろけたが、実際は足をくじいていたのだ。

 

 結果、夢人は足首を負傷してしまい、自分で立ち上がることができなかった。

 

 夢人は泣く泣くネプギアとナナハに肩を貸してもらってリーンボックスの街に帰って来たのであった。

 

「まったく……変にかっこつけようとするからよ。このバカ」

 

 ユニはベットで横になっている夢人を呆れた目で見ながら言った。

 

「……いやさ、ノリって結構大事だと思わない? あそこは絶対に跳び下りなきゃいけない場面だって」

 

「ハイハイ、わかってるわかってる……要はアンタがバカな真似したからよね? 大丈夫よ。アタシは全部わかってるから」

 

 夢人が気まずそうにユニから視線をそらしながら言い訳をしていると、ユニは笑顔で夢人の頭をなでた。

 

 夢人はユニに笑顔で頭をなでられ、泣きそうになった。

 

「ほーら、アタシがほめてあげるから。がんばりましたねぇ、夢人君?」

 

「……やめてください、ユニ様……これ以上は、本当に泣いちゃいます」

 

 夢人の言葉を聞いて、ユニはため息をついてなでるのをやめた。

 

「これに懲りたら変なことして怪我するんじゃないわよ? 心配するんだから」

 

 ユニは苦笑しながら夢人に言った。

 

「……悪い。そして、ありがとう」

 

「よし! 許してあげるわ」

 

 その言葉をきっかけに2人は笑いだした。

 

「でも、おかしいんだよな……風の魔法を使った時や練習の時はあのぐらいの高さから落ちても平気だったはずなのにさ」

 

「足に負担がかかり過ぎたんじゃないの?」

 

「そうなのかな?」

 

 夢人は首をかしげながら腕を組んで考えた。

 

 その時、控えめに夢人達がいる病室のドアがノックされた。

 

「どうぞ?」

 

「……えっと、今大丈夫?」

 

 病室に来たのはナナハであった。

 

 夢人はナナハが病室に来たことを不思議そうに思いながら尋ねた。

 

「どうしたんだ?」

 

「……その前に、ユニ。ちょっと夢人と2人きりにさせてくれないかな?」

 

 ユニはナナハの言葉を聞いて、今まで座っていた椅子から立ち上がり、ナナハの前に立った。

 

「秘密の話ってやつ?」

 

「……ううん、後で皆にも同じ話はするよ。でも……」

 

 ナナハは夢人をチラリと見ながら言った。

 

 ユニは苦笑しながらナナハの肩を叩いた。

 

「ならいいわ。でも、1つだけ言っとくわ……何の話か知らないけど、悩みって人に話すと意外と何でもないってことがわかるのよ」

 

「……ユニ」

 

「だから、頑張んなさいよ? 怖いかもしれないけど、アンタが前に進むことを決めたのなら、皆受け止めてくれるから」

 

 ユニはそう言うと、病室を出て行った。

 

 ナナハはしばらくユニが出て行った病室のドアを見ていたが、やがてユニが座っていた椅子に座った。

 

「……夢人に聞いて欲しいことがあるんだ」

 

「……なんだ?」

 

「私の前世……私がナナハになる前のことを」

 

 ナナハは両手を組んで指が震えないようにしながら、泣きそうな顔でほほ笑んで言った。

 

 

*     *     *

 

 

 私の前世での名前は北条沙織(ほうじょうさおり)。

 

 至って普通の女子高生だった。

 

 友達と何気ない会話をしたり、部活で汗を流したり、バイトでお小遣いを稼ぐような充実した日々を過ごしていた。

 

 ……ウソ。

 

 本当は、友達なんていない。帰宅部で、お小遣いも親から貰う分だけで過ごしていた。

 

 私は何をやっても人より劣っていた。

 

 周りの皆が話題のドラマや本の話をしていても、私にはなんのことかわからず、会話の輪に入れずにいた。

 

 勉強では、いくら努力しても後ろから数えた方が早い順番になっていた。

 

 運動では、体力がなくて、バレーボールやバスケットボールとか集団競技でいつも周りに迷惑をかけていた。

 

 ……そんな私は自然と周りから孤立していった。

 

 目立つところが何もない私なんて周りからすぐに置いてけぼりにされてしまった。

 

 最初は親しそうに話していた人も、すぐに他の人の所に行ってしまった。

 

 ……何が違うんだろう。

 

 私と彼女達の何が違うのかが私にはわからなかった。

 

 努力なら私だってしていた。

 

 むしろ、私は努力だけなら他の人に負けないと思っていた。

 

 それでも……

 

 私は一人ぼっちだった。

 

 だから、憧れた。

 

 皆から頼りにされたり、愛されている人。

 

 ……キラキラと輝いて見える人に。

 

 でも、私にはその才能がなかった。

 

 私は何をしても失敗ばかりで、憧れの人のように輝けない。

 

 正直、諦めかけていた。

 

 ……そんな時だった。

 

 私は理由はわからないけど、死んだらしい。

 

 どうして死んだのかの記憶はあいまいでよく思い出せないけど、自分が死んだと言う記憶だけはしっかりと残っていた。

 

 そんな私の前に綺麗な女性が現れて言ったんだ。

 

【あなたにもう一度生きるチャンスをあげましょう】

 

 ……断ろうと思った。

 

 どうせもう一度生きていても、私は輝くことができないんだからと。

 

 でも、女性の次の言葉で私の考えは変わった。

 

【あなたが望むことを1つだけ叶えてあげるわ】

 

 ……私の望むこと。

 

 私が憧れの人達みたいに輝けるの?

 

【ええ、もちろんよ】

 

 私の答えは決まった。

 

 私は輝いて生きたい!

 

 憧れたキラキラした生き方をしてみたい!

 

 私は女性に願った。

 

 私に『才能』をくださいと……

 

 憧れていた人達のように輝ける才能を……

 

【いいわよ……もう一度の人生、楽しみなさい】

 

 私はその言葉を聞いて意識を失った。

 

 目を覚ました時、私は今の私になっていた。

 

 ……でも、貰った『才能』は私をまた孤独にさせた。

 

 周りの子ども達と一緒にいてもつまらなかった。

 

 どうしてそんな簡単なこともできないの?

 

 私は自然と他人を見下すようになっていた。

 

 相手に自分以上を求めていたんだと思う。

 

 勉強でも、運動でも、私は周りから飛び抜けて優秀だった。

 

 ……だからだろう。私は自然と避けられるようになった。

 

 大人げないことはわかっていた。

 

 でも、ようやく輝いて生きられると喜んでいた私は気付かなかった。

 

 ねえ、どうして私から離れるの?

 

 私はこんなことができるんだよ?

 

 どうして私を見てくれないの?

 

 輝いていたはずの二度目の生は、いつの間にか灰色になっていた。

 

 そんな時に、女神の力が発動した。

 

 多分、貰った『才能』の中に女神の力があったんだと思う。

 

 ……それがトドメだった。

 

 私は不完全に女神の力を発動させ、瞳だけが変化した。

 

 その瞳を見た私の生みの親は、私を怖がった。

 

 気が付けば、頬を叩かれて床に転がっていた。

 

【来ないで!】

 

 頬が熱くなるよりも先に、胸の中が冷たくなった。

 

 私が近づいて声をかけようとした時、恐怖で顔を強張らせた母親の顔を見て……

 

 ……気が付けば、私は家を飛び出していた。

 

 これ以上、自分に怯える母親の姿を見たくなかった。

 

 これ以上、輝くはずだった二度目の生を壊したくなかった。

 

 こんなはずじゃなかったのに……

 

 私は生き返ったことを後悔した。

 

 ……どうして私は輝けないの?

 

 どうやって辿り着いたのか覚えていない裏路地の壁に背を預けて泣き続けた。

 

 ……どうして?

 

 体の中の水分が全部なくなってしまうんじゃないかと思うくらい泣き続けた。

 

 やがて、涙も出なくなり、私は何もする気がなくなってしまった。

 

 輝くはずだった二度目の生への希望はなくなってしまった。

 

 ……このまま死のうかな?

 

 そんな風に考えていた時だった。

 

「……もし」

 

 私に声をかける人物がいた。

 

 その人物こそ、ベールだった。

 

 ……この出会いから、私のナナハとしての人生が始まった。

 

 

*     *     *

 

 

「……結局、私は自分が望んだ『才能』のせいで『特別』になったと思い込んでただけなんだ」

 

 ナナハは瞳の端に涙を浮かべながらほほ笑んで言った。

 

「本当の私は1人じゃ何もできないんだよ……だから、私は『特別』にすがっていたんだ」

 

「……ナナハ」

 

 ナナハは夢人の視線に耐えられず、俯いてしまった。

 

「軽蔑、したよね? 夢人に凡人以下だの言った私は、本当はそれ以下なんだよ? ずっと卑怯な手段で天才のふりをしていただけなんだ……こんな私なんて……」

 

「ナナハ!」

 

「いたっ!?」

 

 夢人は俯いてしまったナナハの額を思いっきり指で弾いた。

 

「何でも1人でできる完璧な人間なんていないさ」

 

 夢人は両手で額を押さえるナナハにほほ笑みながら言った。

 

「ナナハが卑怯? それなら俺だって卑怯者だ。俺は体の中にある『シェアクリスタル』のおかげで魔法を使えてるんだ。この魔力だって貰いものだ」

 

 夢人は自分の胸を強く叩きながら言った。

 

「そんな立派な貰いものがあるのに、俺はそれを完璧に使いこなせない。でも、俺はそれでもいいと思っている」

 

「どうして?」

 

「俺には俺を支えてくれる、大切に思ってくれる仲間がいるから。絆があるから」

 

 夢人は額を押さえていたナナハの手を握った。

 

「もちろん、ナナハだって俺を支えてくれている1人だ」

 

「……ウソ」

 

「ウソなんかじゃないさ。ナナハも俺にとって大切な仲間なんだから」

 

 ナナハは握られている夢人の手を強く握った。

 

「……でも、今の私は本当の私じゃない。貰いもので固めたウソの様な存在がナナハなんだよ? そんな私が夢人の支えになんてなれているはずないよ」

 

「……本当に全部がウソなのか? ナナハって存在は本当に全部ウソだと思っているのか?」

 

「それは……」

 

 ナナハは俯いて言葉を続けられなかった。

 

 夢人はそんなナナハにほほ笑みながら言う。

 

「確かに、俺の魔法も、ナナハの女神の力も貰いものでウソの様なものなのかもしれない。でも、ちゃんと本物だってある……それは心だよ」

 

「……心」

 

 ナナハは握っている手とは反対の手を自分の胸に当てた。

 

「ナナハも、北条沙織も、どっちのお前もキラキラと輝く生き方に憧れているんだろう? なら、今いるナナハだってウソの様な存在なんかじゃない。ここに生きている本物なんだ」

 

「……私……ナナハになっていいの?」

 

 ナナハは顔を俯かせて体を震わせながら夢人に尋ねた。

 

「許可なんて必要ないさ。お前はもうナナハなんだ」

 

「……こんな貰いもので……ウソの様な存在でも……輝けるかな?」

 

「輝けるさ。お前には本物の心があるんだから」

 

「……私の輝きは……夢人をちゃんと照らせるかな?」

 

「もう照らされてるよ。お前の輝きがあるから俺は前に進めるんだ」

 

 夢人の言葉を聞いたナナハは夢人の胸へと飛び込んだ。

 

「……胸、貸して」

 

「俺のでよければいくらでも貸すよ」

 

 ナナハは強く夢人の胸へと自分の顔を押し付けた。

 

 夢人はそんなナナハを優しく抱きしめて背中をなでた。

 

「……ありがとう、夢人」

 

 ナナハは夢人の胸の中で静かにつぶやいた。

 

 夢人はそのつぶやきを聞いていたが、何も応えずにただ優しく背中をなで続けた。

 

 

*     *     *

 

 

 しばらくすると、ナナハは夢人の胸から離れて立ち上がった。

 

 目の周りは涙を流して真っ赤になっていたが、その顔は晴れやかに笑っていた。

 

「ありがとう……夢人には助けてもらってばっかりだね」

 

「そんなことないさ。俺だってナナハに助けられてばっかりだよ」

 

 夢人もほほ笑みながらナナハに応えた。

 

「そんなことないよ……夢人がいたから、私は本当の私を見つけられたんだ」

 

 ナナハは目をつぶって自分の胸に手を当てた。

 

「前世の記憶なんて言ったら、普通頭がおかしい子って思われても仕方ないよ? そんな私を信じてくれる夢人がいたから、私は本当にここに生きているって思えるんだ」

 

 ナナハは優しく夢人にほほ笑んで言う

 

「最初に夢人に話してよかった。本当は不安だったんだ。夢人も私を怖がって離れていくんじゃないかって」

 

「そんなことないさ。俺にとってナナハは大切な女の子なんだから」

 

「……うん、決めた」

 

 ナナハは一度頷いた。

 

 夢人はそんなナナハを不思議そうに首をかしげて見て尋ねた。

 

「決めたって何を……」

 

「好きです」

 

「……えっ?」

 

 ナナハは夢人の言葉を遮って言った。

 

 夢人はナナハの言葉の意味がわからず、呆然としてしまう。

 

「私はあなたのことが、御波夢人という男性が好きです」

 

 ナナハは頬を赤く染めてほほ笑みながら言葉を続けた。

 

「この気持ちはまぎれもない本物の私の気持ちです」

 

 ナナハはそう言うと、夢人に背を向けて病室のドアへと向かって歩きだした。

 

「返事は今じゃなくていいです。でも、覚悟しておいてね」

 

 ナナハは唇に指を当ててほほ笑みながら振り向いて言う。

 

「私の輝きに夢中にさせてあげるからね」

 

 ナナハはそれだけ言うと、病室を出て行った。

 

「……どうしよう」

 

 病室には顔を真っ赤にさせた夢人だけが残された。




という訳で、今回はここまで!
さて、今回はナナハちゃんの前世での話と告白でした!
実際にどうしてナナハがここで告白をしようと考えたのかは女神通信R(ナナハ編)の方で書かせていただきますので、楽しみにしておいてくださいね!
そして、ついに次回はライブです!
それでは、 次回 「女神の歌声」 をお楽しみに!

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