超次元ゲイムネプテューヌ 夢のヒーローを目指して   作:ホタチ丸

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はい、皆さんこんばんわ!
今回から新章リーンボックス編をお送りします!
前回までシリアス続きだったため、今回は少しほのぼのとしたものを目指しました
…まあ、また次回から少しずつシリアスに戻るんだけどね
それでは、 特訓開始 はじまります


世界の異物? 闇を払う勇者の流星
特訓開始


「……本当にするのか?」

 

「……もちろんですの」

 

 バーチャフォレスト

 

 夢人はがすとから手渡されたB.H.C.をいやそうに見つめながら尋ねた。

 

「俺としてはもうこれには頼らないって決めたんだけど……」

 

「それとこれとは話が別ですの! これはがすとの商品の信用問題になるですの!」

 

 がすとはミッドカンパニーの時に、夢人がB.H.C.を使っても黒歴史モードにならなかったことをB.H.C.の劣化だと考えた。

 

「それは先ほど造ったばかりのできたってほやほやですの! 試してみるですの!」

 

「……はいはい、わかりましたよっと」

 

 夢人はがすとの様子から使うまで絶対に自分を解放しないと悟って、諦めてB.H.C.を飲み込んだ。

 

「どうですの?」

 

「……やっぱり変わらないぞ」

 

 夢人の言葉にがすとはため息をついて落ち込み始める。

 

「何がいけないんですの? クスリの配合は変えていないはずですの……もしかして、抗体ができたんですの? ……でも、いくらなんでも早すぎる気がするし……」

 

「おーい、がすとさーん……ダメだこりゃ、聞いてねえや」

 

 がすとがブツブツと1人で考え込む姿を見て夢人はため息をついた。

 

「やっぱり、使えないのね」

 

「そうみたいなんだ……俺にも理由はさっぱりだよ」

 

 アイエフが自分もB.H.C.を手にとって眺める。

 

「前の奴と変わらないじゃない……本当、どうなってんのかしらね、アンタの体」

 

「俺の体のせいか!?」

 

「……まあ、理由としては勇者の力ですよね」

 

 フェルが真剣な表情で言う。

 

「お兄さんの勇者の力は確かにすごいものがありましたから……ギアお姉さんの攻撃で無傷だったキラーマシンを簡単に倒したり、あのブレイブ・ザ・ハードを投げ飛ばしたり……普段のお兄さんでは考えられない程強くなりましたからね」

 

「そうだよね……でも、残念だなぁ、もうあの夢人が見れないなんて」

 

「……それはどういう意味でしょうか、日本一さん」

 

 夢人が眉をひそめながら日本一に尋ねた。

 

 日本一は目を輝かせて応える。

 

「だって、あの時の夢人、すっごく輝いてたもの! そう、まるであれが本来の姿みたいだった!」

 

「じゃあ、何だよ!? 今の姿は輝いてないのか!? 俺はずっとあんな恥ずかしい思いをしなきゃ本当の自分じゃないってか!?」

 

「まあまあ、落ちついてよ」

 

 5pb.が苦笑しながら2人を落ちつかせる。

 

「……まあ、当面の問題はアンタの戦い方よね」

 

 アイエフはB.H.C.を手のひらで転がしながら夢人に言う。

 

「B.H.C.が使えない以上、アンタの戦い方は木刀か失敗魔法ってことになるけど……木刀は壊れちゃったのよね?」

 

「ああ、この間のブレイブ・ザ・ハードとの戦いでな」

 

 夢人が使っていた木刀はブレイブを石柱にぶつけた際に木っ端みじんに砕け散ってしまっていた。

 

「となると、アンタは失敗魔法で戦うしかないってことね……大丈夫なの?」

 

 アイエフが心配そうに夢人に尋ねる。

 

「……ちょっと試したいことがあるんだよ」

 

 夢人は空を見上げて言う。

 

「ブレイブ・ザ・ハードと戦った時に使った失敗魔法の連携技……あれを完成させたいんだ」

 

 夢人はブレイブの左肩を大破させたことを思い出しながら言う。

 

「今の俺にできる最大限の技だと思うんだ……俺はそれを完成させたい」

 

「なら、わたし達の出番ね」

 

「うん、魔法なら得意」

 

 ロムとラムは夢人の言葉を聞いてほほ笑みながら言う。

 

「夢人の魔法だってわたし達にかかれば、ちゃんと成功するようになるわよ」

 

「夢人お兄ちゃんなら、大丈夫」

 

「ありがとうな」

 

 夢人は笑顔で2人にお礼を言う。

 

「……なら、アンタはそれをちゃんと完成させなさいよ……さて、後残る問題は……」

 

「そうですの!」

 

「って、何よ急に!?」

 

 アイエフは急に叫び出したがすとの驚いた。

 

 がすとは目を輝かせながらアイエフに言う。

 

「被検体に問題があるのなら、別の被検体を使えばいいんですの!」

 

「……被検体ってね、アンタ」

 

 会話に参加せず、遠巻きに見ていたユニがこめかみを押さえながら言った。

 

「さあ、アイエフ! それをグイッと飲み込むんですの!」

 

「や、やめなさいって……ウグッ!?」

 

 アイエフはがすとの勢いに押されて、手に持っていたB.H.C.が口に入ってしまい飲み込んでしまった。

 

「どうですの! ちゃんと変わってるんですの!」

 

「がすとちゃん落ちついてくださいです!」

 

 コンパはB.H.C.を飲み込んで俯いていたアイエフに詰め寄るがすとを引っ張りながら言った。

 

「……どうなるんだ」

 

「……ボクにもわかりませんよ」

 

 夢人とフェルは冷や汗をかきながらアイエフから距離を取ろうと後ずさる。

 

「……う、うぅぅ」

 

 アイエフは右手で顔を押さえながら苦しそうな声をあげ始めた。

 

「アイエフ!?」

 

「あいちゃん!?」

 

「ちょっと、どうしたの!?」

 

「大丈夫!?」

 

 夢人達が慌ててアイエフに近づこうとした時、アイエフは左手を夢人達に向けて言った。

 

「来るんじゃないわよ! ……今の私に近づくな!」

 

「……あ、あいちゃん?」

 

 コンパが目を白黒させながら声をかける。

 

 アイエフは顔をあげて、右手で右目を押さえながら言う。

 

「疼く……私の右目が疼いている! ……くっ、このままじゃ皆を傷つけてしまうわ」

 

 アイエフが苦しそうに体を震わせていた。

 

「なんだっけ……邪気眼?」

 

 夢人はそんなアイエフの姿を見て呆れながら言った。

 

「成功ですの! やっぱり、がすとの商品に不良品なんてないんですの!」

 

 がすとはアイエフが黒歴史モードになったことを見て、目を輝かせて喜んだ。

 

「私の魔力が暴れてる!? ……くっ、こうなったら!」

 

 アイエフが両手に魔力を集中させ始める。

 

「……なんかやばくね?」

 

 夢人が冷や汗を流しながら言った。

 

 他の皆もアイエフから離れようと、距離を取り始めた。

 

 しかし、アイエフはそれに構わず魔力を炎に変えて両手に集中させる。

 

 そして、両目を見開いて夢人に向かって炎を解き放った。

 

「魔界粧・轟炎!!」

 

「って、何で俺に!? うわあああああああああ!?」

 

 アイエフの放った炎は夢人だけを巻き込んで燃え続けた。

 

「冥府の炎、しっかりと味わいなさい! アーッハッハッハ!」

 

 アイエフは笑いながら燃え続ける夢人を見ていた。

 

「……お兄さん、南無」

 

 フェルは燃え続ける夢人に両手を合わせて拝むことしかできなかった。

 

 

*     *     *

 

 

「……本当にひどい目に会った」

 

 夢人はプラネテューヌの商店街を歩きながらため息をついた。

 

「夢人お兄ちゃん、本当に痛いところない?」

 

「無理だけはするんじゃないわよ?」

 

 両隣を歩いていたロムとラムが心配そうに夢人に尋ねた。

 

「大丈夫、大丈夫……あんな感じでいつも自分を焼いてるから」

 

 夢人は苦笑しながら応えた。

 

「……それもどうかと思うけどね」

 

「もう、無理ダメ(めっ)」

 

 ラムは呆れた目で夢人を見つめた。

 

 ロムは頬を膨らませて夢人に右手の人差し指を突き出しながら注意する。

 

「あははは……で、買う物ってノートだっけ? そんな物が魔法に必要なのか?」

 

 夢人は笑ってごまかして、買う物を確認する。

 

「そう、魔法はイメージが大事だから」

 

「実際にどういう物かを書いた方がイメージしやすいでしょ?」

 

「なるほどな」

 

 夢人は2人の言葉に感心するように頷いた。

 

「大丈夫、夢人お兄ちゃんの魔法もきっと成功する」

 

「そうよ、なんたってわたし達が教えるんだから! これで成功させられないってことはないわよ」

 

 2人が夢人に笑いかけながら大丈夫だと安心させるように手を握った。

 

「ありがとう、ロム、ラム」

 

 夢人は2人の気づかいに柔らかく笑みを浮かべてお礼を言った。

 

 2人はそれを聞いて頬を赤く染める。

 

「うん(にこっ)」

 

「ま、任せておきなさい!」

 

「頼りにさせてもらうさ」

 

 

*     *     *

 

 

「じゃあ、いくわよ!」

 

「来い!」

 

 わたしは『変身』して夢人にナチュラルホワイトを構えた。

 

「ブラスト!」

 

 ナチュラルホワイトの先端から風の魔法が渦を巻いて夢人を包み込んだ。

 

「ぐっ! ううううっ! うわああああああ!?」

 

 夢人は風の渦に巻き込まれ、渦の動きと同じように吹き飛ばされながら上空へと舞い上がっていった。

 

 しかし、夢人は渦の途中でバランスが崩れてしまい、渦から外に飛び出してしまった。

 

 夢人はそのまま何もできずに地面に激突してしまった。

 

「夢人!?」

 

 わたしは慌てて夢人に近寄ろうとしたが、夢人はそれを左手で止めながら言った。

 

「もう一度頼む!」

 

 夢人の顔に諦めの色はなかった。

 

 痛みをこらえているようには見えるが、まだまだ大丈夫そうだ。

 

 わたしは夢人の様子に口元を緩ませ、再び魔法を使おうと集中し始めた。

 

「わかったわ……渦に逆らわず、もっと渦の動きに集中しなさい!」

 

 わたしはそう言って再び夢人にブラストを放った。

 

 ……わたしのブラストは初級の魔法だ。

 

 実際に見てはいないが、きっとブレイブ・ザ・ハードと戦った時の夢人が使った風の魔法の方がもっと強い渦だったはずだ。

 

 ならば、こんな渦ぐらい軽く乗りこなしてみなさいよ。

 

 夢人は何があったのかは知らないが、わたし達を変態から守った時よりも頼もしくなった。

 

 ……何ていえばいいんだろう。

 

 今のように覚悟を決めた顔を見ると、すっごく胸がドキッとする。

 

 普段はいつも通りの夢人なんだけど、ふとした瞬間そういう顔を見せるようになった。

 

 わたしは今までの優しい顔だけじゃなくて、そんな男らしい顔を見せる夢人のことがどんどん好きになっていると感じる。

 

 ……でも、夢人は多分我慢している。

 

 きっと心の中では泣いていると思う。

 

 理由はネプギアだ。

 

 プラネテューヌに来て以来、ネプギアはずっと部屋にこもっている。

 

 夢人はそんなネプギアを心配して会いに行こうとするんだけど、アイエフに止められていた。

 

 ……うん、今のネプギアは自分から動かなきゃダメだと思う。

 

 わたしとロムちゃんが喧嘩した時のように、夢人に謝らなきゃネプギアは今よりも前に進めない。

 

 これはネプギアが勇気を出さなきゃダメなことだ。

 

 あの時、夢人が言っていたほんのちょっとの勇気を……

 

 

*     *     *

 

 

「……治療魔法は、相手のことを思うことが大切」

 

「相手のことを思う?」

 

「そう、相手が元気になれって思ってあげるの」

 

 わたしは今、夢人お兄ちゃんの部屋で魔法の座学をしている。

 

 夢人お兄ちゃんは攻撃用の魔法は使えるが、サポート用の魔法が使えないので覚えたいらしい。

 

 わたしはまず治療魔法から教えることにした。

 

「いたいいたいのとんでいけーって感じで、相手のことを治してあげるの」

 

 そう、相手の痛みがなくなるように優しい気持ちが大切なんだ。

 

 夢人お兄ちゃんならきっとすぐにできる。

 

 ……でも、何でそんな微妙な顔をしているんだろう。

 

 わたしの説明おかしかったかな?

 

「……参考にならない(うるうる)?」

 

 わたしは夢人お兄ちゃんにちゃんと伝わっていないのかもと思って涙目になって尋ねた。

 

「い、いやいや!? そんなことはないぞ!? いたいいたいのとんでいけーっだな!? ばっちりさ!?」

 

 ……よかった。

 

 ちゃんと伝わってるみたい。

 

 昼はラムちゃんが一緒に連携技の特訓をしていたみたいだから少し疲れているのかもしれない。

 

 だから、あんな顔をしたんだろう。

 

 わたしは夢人お兄ちゃんの服を引っ張って言う。

 

「疲れているなら、今日は休む」

 

「いや、でも……」

 

「ダメ(きっ)」

 

「……はい」

 

 夢人お兄ちゃんはきっとまた夜中に魔法の練習をしようとする。

 

 そんなにやったら体が壊れちゃうよ。

 

 だから、今日はゆっくりとお休みしてもらう。

 

「……あの、ロム?」

 

「なに?」

 

 ……どうしたんだろう。

 

 夢人お兄ちゃんは冷や汗を流しながら言う。

 

「どうして横に寝ているんでしょうか?」

 

 ……そう、わたしは今、ベットの上で夢人お兄ちゃんの横で一緒に寝ている。

 

「……これは監視」

 

「監視?」

 

「そう、夢人お兄ちゃんが無理をしないように監視しているの」

 

 これは監視なんだ。

 

 夢人お兄ちゃんが夜中に抜け出さないように、わたしが一緒に寝て夢人お兄ちゃんを捕まえておくんだ。

 

「そんなことしなくても……」

 

「ダメ(うるうる)?」

 

 夢人お兄ちゃんが気まずそうにしている姿を見て、わたしはまた涙目で言った。

 

「わかったよ……でも、今日だけだからな」

 

「うん(にこっ)!」

 

 夢人お兄ちゃんは苦笑しながら一緒に寝ることを許してくれた。

 

 夢人お兄ちゃんは自分の腕をわたしの頭の下にして枕のようにしてくれた。

 

「腕枕……って、寝にくいよな」

 

「そんなことないよ……温かくて気持ちいい」

 

 わたしは夢人お兄ちゃんの腕が温かくて気持ちよく感じた。

 

 わたしの腕とは違って、太くてたくましい腕は硬かった。

 

 ……でも、それ以上に温かく感じた。

 

「……えへへっ(てれ)」

 

 わたしは頬が緩むのを止められない。

 

 ちょっとだらしなく思っても頬が緩んでしまう。

 

「お休み、ロム」

 

「お休みなさい、夢人お兄ちゃん」

 

 夢人お兄ちゃんはほほ笑みながらわたしにお休みの挨拶をした。

 

 ……しばらくして、夢人お兄ちゃんから規則正しい寝息が聞こえてきた。

 

 やっぱり、疲れていたんだ。

 

 わたしは安心した。

 

 わたしでもちゃんと夢人お兄ちゃんを休ませることができた。

 

 ……ネプギアちゃん

 

 夢人お兄ちゃんはこんなに一生懸命頑張ってるよ?

 

 だから、早く気付いてあげてね。

 

 夢人お兄ちゃんの本当の優しさに……

 

 本当の強さに……

 

 わたしがラムちゃんと喧嘩した時にわたしに送ってくれた言葉。

 

 今のネプギアちゃんがすることはそこにあると思うよ。

 

 今はちょっとだけわたしが夢人お兄ちゃんを独り占めしているけど……

 

 また皆で笑い合いたいよ。

 

 早く気づいてね、ネプギアちゃん。

 

 普通で当たり前の答えに……

 

 ネプギアちゃんの本当の思いに……

 

 

*     *     *

 

 

「……そろそろ始めるか」

 

 男は足を組んで椅子に座りながらリーンボックスの街を眺めていた。

 

 男のいる場所はリーンボックスの教会の一室。

 

 男はかつてルウィーでキラーマシンの封印を解いた男だった。

 

 男は顔を歪めて笑いながら後ろに控えていた人物に言う。

 

「お前にも働いてもらうぞ……たっぷりとな」

 

「……はい、ご主人様」

 

 後ろに控えていた人物、リーンボックスの女神候補生ナナハはうつろな目のまま応えた。

 

 顔には赤い模様が浮かび上がっており、正気でないことは明らかであった。

 

「ようやくだ……ようやく、ここまで来た……後は勇者とかいうイレギュラーを殺せばすべてが終わる」

 

 男は組んでいる足を組みかえて言う。

 

「俺の望み……ゲイムギョウ界を破壊する!」




という訳で、今回はここまで!
さて、ネプギア登場を期待された皆様、ごめんなさい!
この話ではネプギアを登場させることができませんでした
ネプギアは次回以降、この章でどんどん活躍させていくので待っていてくださいね!
それでは、 次回 「犯罪神信仰規制解除」 をお楽しみに!

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