超次元ゲイムネプテューヌ 夢のヒーローを目指して   作:ホタチ丸

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はい、皆さんこんばんわ!
今回からは新章ブレイブ編がはじまります!
今回は導入話なので短めですが、楽しんでもらえるとうれしいです!
それでは、 果たし状 はじまります


人の心と勇者の決意
果たし状


ギョウカイ墓場の中央にそびえる塔、 その一室でマジックとトリックは話をしていた。

 

「……そうか、女神の力が上がったか」

 

「そうだ……あの力はちょっと厄介だぞ」

 

 トリックはマジックにルウィーで起こったことを話していた。

 

「そして何より……あの可愛らしい幼女たちを成長させてしまうなんて!」

 

 トリックが悔しそうに言う姿をマジックは呆れた目で見ながら考える。

 

(女神の力の強化……あの時の攻撃もそうであったな)

 

 マジックは未だ傷を残している右腕を左腕で掴みながら考える。

 

(……だが、それならそれでむしろ好都合かもしれんな)

 

 マジックはにやりと笑うとトリックに尋ねる。

 

「勇者はその力を自由に使えるのか?」

 

「う~ん? いや、自由には使えんと思うぞ……何せ、幼女たちが成長した時は呆けた顔をしていたからな」

 

「……そうか」

 

 マジックはトリックの言葉を聞いて目をつぶって考える。

 

(ならば、試してみるのも一興か……ふふふ)

 

 マジックは薄く笑いながらつぶやく。

 

「すべては、犯罪神様のために」

 

 

*     *     *

 

 

「まったく、アンタは病み上がりなんだから寝ててもいいのよ?」

 

「いや、俺も買いたいものがあったからさ」

 

 ルウィーの商店街を夢人とアイエフは歩いていた。

 

「……確か双子にペンを買うんだっけ?」

 

「そう、あの時壊れちまったからな」

 

 夢人はラムが自分とロムを庇った時に壊れてしまったペンの代わりを買おうとしていた。

 

「2人の思い出のペンだったしな……代わりって言うのはおかしいけど、2人に新しい思い出を造っていってもらうためのきっかけになればと思ってさ」

 

「……本当、お人好しね」

 

 アイエフは夢人の言葉を聞いて苦笑しながら言う。

 

「アンタもあんまり無駄遣いするんじゃないわよ? また私のお金を使われるなんてことがあったら、またひどい目を見せるわよ」

 

「わかってるよ」

 

 2人は笑いながら商店街を歩いていく。

 

「……ねえ、聞いていい?」

 

「うん?」

 

 アイエフは俯きながら夢人に尋ねた。

 

「アンタはどうして頑張れるの?」

 

 

*     *     *

 

 

「……どういう意味だ」

 

「そのまんまの意味よ……アンタが頑張れる理由が知りたいの」

 

 私はコイツに聞かなくちゃいけない。

 

「夢人は確かに頑張ってるわ……昨日の夜もしてたでしょ?」

 

「うっ!? な、何のことかなあ?」

 

 夢人が気まずそうに私から視線を外しながら言った。

 

「アンタが夜中に抜け出して何をしてるかなんてとっくの昔に知ってたわ」

 

「……どうせ情けない姿を見て笑ってたんだろ?」

 

 ……そんなにすねなくてもいいのに。

 

「バカね、アンタの頑張りの証でしょ? 笑わないわ」

 

 アレは夢人の努力の証拠だ。

 

 誰かが笑うんなら私がぶっ飛ばしてやる。

 

「そんなアンタだから聞きたいのよ……どうして頑張るの?」

 

「それは……」

 

「勇者として? ゲイムギョウ界を救うため? それとも、ネプギアのため?」

 

 夢人が言い淀んでいる姿に苛立った私は言ってやった。

 

「確かに立派な理由ならいっぱいあるわ……でもね」

 

 私は夢人に言ってやらなければならない。

 

「アンタはどこまでいってもただの人間よ」

 

 ……夢人は人間なんだ。

 

 女神なんかじゃないし、ましてやおとぎ話の勇者でもない。

 

「夢人は確かに勇者として特別な力も持ってるし、魔法も使えるわ……でも、アンタは女神のように特別な存在じゃないの」

 

 人間は女神とは違う。

 

 簡単に怪我をするし『変身』もできない。

 

 それに何より……

 

「アンタがこれまで通りの無茶をするならいつか必ず死ぬわ」

 

 夢人は死ぬ。

 

 これは絶対に避けられない事実だろう。

 

「女神じゃないアンタが私達と一緒に戦ってこれたのは、アンタを守る誰かがいたからよ」

 

 夢人は1人では何もできない。

 

 勇者の力もがすとのB.H.C.を使わなければ引き出せない。

 

「アンタが1人で戦ったら、トリックと戦った時のように何もできずに終わるわ」

 

「……っ!」

 

 夢人が私を睨んでくるが、何も言わない。

 

 拳も強く握りしめて我慢しているようだ。

 

「あの時は運よく治療が間に合ったわ……でも、私達の戦いは激しくなっていく……その中で夢人は1人で何ができるの?」

 

 誰かが言ってやらなければならない。

 

 そうしなければ夢人は無茶を続けて死んでしまう。

 

 それを阻止するためなら私は夢人に恨まれても構わない。

 

「……アンタを見てるとさ、私はアイツを思い出すのよ」

 

 ……私の大切な友達。

 

 誰よりも正義感が強くて、ゲイムギョウ界を愛している自慢の友達だ。

 

 今はギョウカイ墓場で捕まっているアイツの姿が、夢人に重なる。

 

 夢人もネプギア達のために傷つくことを厭わずに戦っているし、ゲイムギョウ界を愛してくれている。

 

 ……でも、違う。

 

 アイツと夢人は違う。

 

 アイツは女神で、夢人は人間。

 

 そこには絶望的な差がある。

 

「私は夢人の強さも弱さも認めているわ……その上でお願いがあるの」

 

 夢人に止まってもらうためには言わなければいけない。

 

 ……例え、夢人が私達と旅をするのをやめてしまうとしても。

 

「もう戦わないでほしい……コンパや5pb.のように安全な後ろに下がっていてほしいの」

 

 これは夢人の頑張りを否定してしまう行為だ。

 

 夢人は私達と一緒に戦うために努力をしている。

 

 ……そんな夢人の気持ちを否定する最低の行為だとわかってる。

 

「戦えない奴が前に出てくるのは迷惑なのよ……だから、戦闘中はおとなしく後ろで震えてなさい」

 

 恨まれてもいい。

 

 憎まれてもいい。

 

 私は悪役になりきってみせる。

 

 ……夢人が死ぬよりはずっとましだ。

 

「……ごめん」

 

 夢人は申し訳なさそうにしながらも私から視線は外さずに言った。

 

 ……謝らないでよ。

 

 アンタに謝られると、私は悪役になりきれないじゃない。

 

 何もかも見透かしたような目でこっちを見るんじゃないわよ。

 

「……わかったわ、さっきの言葉は忘れてちょうだい」

 

 私は夢人に背を向けて歩き始めた。

 

 ……これだからバカはいやなのよ。

 

 普段はとぼけているくせに、こっちの本心をすぐに見抜くんだから。

 

 それをわかった上で、優しい言葉なんか言うんだから。

 

「バカ」

 

 私は涙を流しながらつぶやく。

 

 ……これ以上、夢人を止められないじゃない。

 

 夢人は例え死ぬことになっても私達と一緒に旅を続けるだろう。

 

 ……それが全部夢人の優しい気持ちからわかってしまった。

 

 ダメだな、私は。

 

 説得しようとしてどうして逆に説得されているのよ。

 

 しかも、一言で納得しちゃうだなんて。

 

 ……ならいいわ、夢人。

 

 アンタは止まらずに走り続けなさい。

 

 私達、ううん、私が守るから。

 

 アイツに似たアンタを失わないために……

 

 御波夢人という代わりのいない人間を失わないように……

 

 絶対に死なせないわ。

 

 

*     *     *

 

 

 俺って、情けないな。

 

 俺は前を歩くアイエフを見ながら思った。

 

 アイエフはきっと俺のことを心配して言ってくれたんだ。

 

 自分の心を隠して、今も涙を流している。

 

「……何が勇者だよ」

 

 俺は空を見上げてつぶやく。

 

 無力な自分がいやだった。

 

「俺が頑張る理由か……」

 

 勇者として?

 

 ……俺をこの世界に呼んだネプギア達の期待に応えたい。

 

 ゲイムギョウ界を救うため?

 

 ……この世界を愛しているし、守りたい。

 

 ネプギアのため?

 

 ……好きな子が泣きながら戦っている姿をこれ以上見たくない。

 

 アイエフの言うとおりだな。

 

 俺には確かに立派な理由がいっぱいある。

 

 でも、俺には欠けている物がある。

 

 ……理想が現実に追いついていない。

 

 弱い自分のままじゃ叶えられない願いばかりだ。

 

 このままじゃ、俺の無茶のせいで皆を危険に巻き込んでしまう。

 

 ラムが助かったのだって奇跡だったんだ。

 

 もうあんな思いはしたくない。

 

「強くなりたいな」

 

 ……強さが欲しい。

 

 俺が自分の意思を貫けるように。

 

 もう二度と目の前で誰かが傷ついてしまわないように。

 

 

*     *     *

 

 

〔……それは本当か? マジック〕

 

「ああ、本当だ」

 

 ギョウカイ墓場ではマジックが誰かと通信を行っていた。

 

「勇者は女神の力を強くする……放っておけば、いずれ再び女神がこのゲイムギョウ界を支配するだろう」

 

 誰かは言葉を発しないが、怒りをこらえるように拳を強く握りしめる。

 

 マジックはその様子を見て満足そうに口元に笑みを浮かべて言葉を続ける。

 

「お前が嫌う女神の支配……それを阻止するために働いてもらいたいのだ」

 

〔……無益な殺生は好まないが、仕方あるまい〕

 

 誰かは一度拳を開いてから、もう一度拳を強く握りしめて宣言する。

 

〔勇者は、俺が必ず殺そう……ブレイブ・ザ・ハードの名にかけて〕

 

 誰か、ブレイブはそう言うと通信を切った。

 

 マジックは通信が切れた画面を見ながら笑って言う。

 

「……ふふふ、勇者は期待通りの働きをしてくれるだろうか」

 

 マジックは右腕の傷に愛おしそうに口づけをして言う。

 

「さあ、また私に見せてくれ……勇者の力とやらをな」

 

 

*     *     *

 

 

 買い物の終えて、ロムとラムにペンを渡し終えた夢人のNギアに通信が入った。

 

「ん? 誰だろう?」

 

 夢人はNギアの画面を操作して通信を開いた。

 

〔やあ、夢人君……久しぶりだね〕

 

「ケイさん? どうしたんですか?」

 

 Nギアの画面にはラステイションの教祖神宮司ケイの姿があった。

 

〔実は君にとてもユニークな贈り物が来たんだよ〕

 

「俺に贈り物?」

 

〔そう、今更こんなものを見ることになるとは思わなかったけど、どうにも無視できなくてね〕

 

 夢人は眉をひそめて尋ねる。

 

「一体何が来たって言うんですか?」

 

〔果たし状だよ……マジェコンヌの幹部、ブレイブ・ザ・ハードって人から君宛のね〕

 

「マジェコンヌの幹部!?」

 

 夢人はケイの言葉に驚く。

 

 ケイは夢人の様子に構わずに言葉を続ける。

 

〔詳しくは直接話したい……至急、ラステイションに来てもらいたい〕

 

「わかりました、すぐに行きます」

 

 夢人はそう言って通信を切った。

 

「……マジックやトリックと同じ、マジェコンヌの幹部」

 

 夢人は拳を強く握りしめてつぶやいた。




という訳で、今回はここまで!
本当に短くてすいません!
次回からブレイブ編は本格的に始まりますが、いろいろとしたい要素があるので文量が増えるんですよ
ですから、今回は区切りのいいここまでとさせていただきます
次回はブレイブとの対決を予定しております!
どのような戦いが展開されるかを楽しみに待っていてください!
それでは、 次回 「正義」 をお楽しみに!

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