超次元ゲイムネプテューヌ 夢のヒーローを目指して   作:ホタチ丸

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はい、皆さんこんばんわ!
なんとこの作品UA10000突破、お気に入り71人になりました!
これもこの作品を読んでくださる皆様のおかげです!
ありがとうございます!
そして、今回からついに四天王編に突入します!
今回は導入話なのでそんなに内容は進みませんが、お楽しみください!
それでは、 それゆけ!ゆうしゃくん はじまります


パパは勇者? 記憶をつなぐ双子の絆
それゆけ! ゆうしゃくん


 ギョウカイ墓場、中央にそびえ立つ塔の一室。そこには椅子に座ってモニターを見つめるマジックの姿があった。

 

「……勇者か」

 

 すべてのモニターには夢人の姿が写っていた。

 

 彼がゲイムギョウ界にやって来てからすべての情報が写されていた。

 

 マジックはモニターを見ながら自分の右手を左手で触る。

 

「アククククク、まだ右腕は治らないのか?」

 

「……いたのか、トリック」

 

 マジックは声をかけた人物、トリックの方を見ずに応える。

 

「その傷、確か勇者と女神候補生にやられたものだろう?」

 

 マジックの右腕は夢人とネプギアの攻撃を受けた傷が残っていた。

 

 マジックはただ右腕を自分の顔の前に持ってきて見つめる。

 

「そんなに勇者が気になるのか?」

 

 トリックはマジックに尋ねるが、マジックは応えない。

 

「やれやれ……では、吾輩に任せてもらおうか。吾輩が勇者の力とやらを試してこようではないか、お主はそこで待っておれよ……アクククククククク」

 

 トリックは笑いながら部屋を出ていった。

 

 しかし、マジックはそれに構わず右腕を見続ける。

 

「……あの時の言葉」

 

 マジックは夢人を洗脳しようとした時に聞こえた声を思い出した。

 

「……何だったのだろう」

 

 ……『もっとちょうだい』とは。

 

 

*     *     *

 

 

 バーチャフォレスト、そこでは1人の男が木刀を振るって恐ろしいモンスターと戦っていた。

 

「ちっ!? そこか!」

 

 男、夢人は木刀を振り下ろし、モンスターの頭部をに狙いを定めた。

 

 しかし、木刀はモンスターに当たらず、夢人はモンスターを見失ってしまった。

 

「どこに……っ!?」

 

 突然、背後から殺気を感じて振り向く。

 

 そこには先ほどまで自分と対峙していたモンスターが自分に向かって飛びかかってくる姿が見えた。

 

「もらった!」

 

 夢人はその動きをチャンスと捉え、木刀の切っ先をモンスターに向けて突き出した。

 

 直線で突っ込んでくるモンスターなら避けられるはずがないと思っていたのだ。

 

 しかし、モンスターは驚異的な動きで、木刀による突きを避けきってしまった。

 

「なっ!?」

 

 夢人はモンスターの行動に驚愕の表情を浮かべた。

 

 何とモンスターは木刀の周りを回転しながら夢人に飛びかかって来たのだ。

 

「そんなバカ……!?」

 

 夢人はそんな常識外れのモンスターの行動に驚愕している隙にモンスターの接近を許してしまった。

 

「ぐはっ!?」

 

 モンスターは夢人の懐に飛び込むと、勢いよく飛び上がって夢人のあごを強打した。

 

「ま、まだ……!?」

 

 夢人は何とか態勢を整えようとするが、目の前の光景に絶望した。

 

 モンスターが自分の顔の前に飛び上がっていたからだ。

 

「ちょっ!? タン……!?」

 

 モンスターは夢人の言葉に耳を貸さずに顔に強力な一撃をお見舞いした。

 

「ごふっ!」

 

 夢人は後頭部から地面に激突して気絶してしまった。

 

 モンスターは夢人の上で勝利の雄たけびをあげる。

 

「ヌラッ!」

 

 ……バーチャフォレストの魔王、スライヌとの58戦目の出来事であった。

 

 夢人はこれまで戦績は0勝58敗。

 

 ……スライヌの圧勝であった。

 

 

*     *     *

 

 

「連敗記録更新おめでとうございます」

 

「うるせえよ」

 

 夢人とフェルはプラネテューヌの街中を歩きながら話をしている。

 

「しかし、本当にお兄さんはスライヌに勝てませんよね」

 

「……ってか、あれは本当にスライヌか? あんな避け方する奴がいるとか本当に笑えないぞ」

 

 夢人は先ほどの木刀を避けたスライヌの動きを思い出しながら肩を落として言った。

 

「……それは否定できないかも」

 

 フェルも言葉の意味を理解し苦笑してしまった。

 

 さすがにあんな軌道を描きながら空中で攻撃を避ける雑魚キャラなど考えたくもなかったのである。

 

「そう言えば、お兄さんは知っていますか?」

 

「何をだ?」

 

 フェルの言葉の意味がわからず、夢人はフェルを見ながら首をかしげて尋ねる。

 

「ユピテルが今度ドラマの主題歌を歌うことになったんですよ」

 

「そうなのか?!」

 

「お兄さんが主役で、何でもゲイムギョウ界全体のシェアの獲得を目指すドラマらしいんですよ」

 

「へえー、それは楽しみだなあ」

 

 夢人は空を見上げて言う。

 

「アイツらも頑張ってるんだな」

 

 夢人はリーンボックスであったユピテル達のことを思い出しながらわずかに頬を緩めた。

 

「で、そのドラマっていつからやるんだ?」

 

「……えっと、確か来週からスタートするらしいですよ」

 

「そっか、俺が主役の番組かあ……」

 

 夢人は目をつぶって考える。

 

 

*     *     *

 

 

 プラネテューヌの教会前

 

 入り口にはレッドカーペットが敷かれており、その周りには報道陣と多くのファンがとある人物の登場を今か今かと待ちわびていた。

 

「あっ! 来たぞ!」

 

 ファンの1人が教会に近づいてくる1台の黒い車を指さして言った。

 

 それと同時に報道陣がカメラのシャッターを切る音が聞こえ始める。

 

 やがて、車はレッドカーペットの入り口付近で停車した。

 

 運転手が下りてきて後部座席のドアを開ける。

 

 すると、中から黒いスーツ姿で髪をオールバックにしてサングラスをかけている男が降りてきた。

 

「チャオ」

 

『きゃあああああああああ!!』

 

 男が右手で軽くファンに挨拶をすると、ファンは黄色い悲鳴をあげた。

 

 男はその声を聞いて軽く笑みを浮かべながらレッドカーペットの上を歩いて行く。

 

『こっち向いてーっ!』

 

『サインくださーい!』

 

『ハグしてーっ!』

 

 ファンからそんな声が男に向かって投げかけられてくる。

 

 男はサングラスを取ると、ほほ笑みながらファンへと投げた。

 

『きゃあああああああああ!!』

 

 その行動はファンをさらに熱狂させ、教会前は大混乱に陥ってしまった。

 

「やれやれ……人気者は辛いぜ」

 

 男、御波夢人はそう言って教会の中に入って行った。

 

 言葉とは裏腹に、その顔には笑みが浮かんでいる。

 

 教会の一室では数多くの俳優陣や有名アーティストが椅子に座っていた。

 

 彼らの前にはステージが造られており、その中央にイストワ―ル、その横にはアイエフがいた。

 

 イストワ―ルは夢人が入って来たことに気づいてほほ笑みながら言う。

 

「ようこそいらっしゃいました、夢人さん……いえ、今では人気俳優YUMETOさんでしたか」

 

 夢人はイストワ―ルの言葉に苦笑しながら応える。

 

「よしてくれよ、今まで通り夢人でいいさ」

 

 夢人はそう言いながらイストワ―ルに近づく。

 

 イストワ―ルは自分の体よりも大きな賞状を持ち、読み上げる。

 

「御波夢人さん、あなたはゲイムギョウ界で最も有名な俳優として今年のベストアクターに選出されました。よってここにこれを贈呈します」

 

「謹んでお受け取りいたします」

 

 夢人は目元を柔らかく緩めながら賞状を受け取ると、椅子に座っていた俳優達に向かってお辞儀をする。

 

 すると、部屋中から割れんばかりの拍手が巻き起こった。

 

 夢人はイストワ―ルの横に控えていたアイエフからマイクを受け取ると言う。

 

「この度は私の様な若輩者がこんな名誉ある賞を受け取ることになり、大変感謝しております」

 

 夢人は部屋を見渡しながらとある人物を探す。

 

「そこで、私はこれを1つの機会と思い、俳優の引退を宣言させていただきます」

 

 部屋にいた人達は夢人の突然の引退宣言に騒ぎ始める。

 

「なぜ私が俳優を引退するのか……それはある女性と結婚するためです」

 

 夢人はそう言って部屋にいたある人物を指さした。

 

「私、いや、俺と結婚してくれないか……ネプギア」

 

 夢人がそう言うと、部屋にいたネプギアにスポットライトが当たる。

 

 ネプギアは髪の色と同じ綺麗なドレスを着て座っていた。

 

 ネプギアは夢人にプロポーズされたとわかると、両目を大きく開いて両手で口を覆う。

 

 次第に目は潤んできて嬉しそうにはにかんでみせた。

 

「……私でいいんですか?」

 

 夢人は柔らかく目元と頬を緩め、まっすぐにネプギアに近づいていく。

 

「ネプギアじゃないとダメなんだ……俺と結婚してくれますか?」

 

 夢人はネプギアの前に立つと、片膝をついてネプギアの右手に軽くキスをする。

 

「不束者ですが、よろしくお願いします」

 

 ネプギアは夢人に笑顔で応えた。

 

 その頬には感極まった際に流れた一筋の涙が見えたが、ネプギアはそれを気にせずに指で拭った。

 

 夢人はその言葉を聞いて、ネプギアをお姫様だっこすると嬉しそうに満面の笑みを携えて、部屋を出て行った。

 

 部屋に残っていた人達は2人を祝福するようにいつまでも拍手し続けていた。

 

 

*     *     *

 

 

「ウェへ、ウェへへへへへ……」

 

「……まただよ、この人は」

 

 夢人が妄想している横で、フェルは呆れたようにため息をついた。

 

「……ん、んんっ! 人気者は辛いぜ、なあフェル」

 

 夢人は妄想から戻ると、わざとらしく咳をしてフェルを横目に見ながらニヤつく。

 

「……そうですね、お兄さんって今じゃかなり有名人ですものね」

 

 ……そう、今や夢人はゲイムギョウ界中で有名になっている。

 

 理由はリーンボックスの時に、全国指名手配で顔写真が流れたことと、その後のフェルが撮っていた映像が全国に流れたからである。

 

「楽しみだなあ、早く見てみたいぜ!」

 

 夢人は笑いながらまだ見ぬ自分が主役の番組に思いをはせていた。

 

「……そんなにいい番組とは思えないんだけどなあ」

 

 フェルは浮かれている夢人の姿に不安を感じながら肩を落とした。

 

 

*     *     *

 

 

 プラネテューヌの教会の一室

 

 窓のない石造りの壁に囲まれた部屋の中央に不気味な魔法陣が光り輝いていた。

 

「……これで後は」

 

 部屋の中にはローブを着た女性がいた。

 

 女性は魔法陣に近づきながら言う。

 

「古の女神達によって残された秘術によって、今ここに救世の英雄を呼び寄せる」

 

 女性はローブを脱ぐと宣言する。

 

「古の女神から続く盟約の名の下、私プラネテューヌの女神候補生……ネプギアが告げる!」

 

 女性、ネプギアは両手を組んで魔法陣を見ながら言う。

 

「ゲイムギョウ界を救うための剣をここに……私の言葉に応じ応えよ!」

 

 ネプギアは組んでいた手をほどくと、右手を魔法陣の上に向ける。

 

 ネプギアの右手からは1滴の血が魔法陣へと落ちる。

 

 滴り落ちた血が魔法陣に触れると、魔法陣は目も開けていられないほどの強烈な光を放ち始めた。

 

 ネプギアは光り出した魔法陣を確認すると、目を閉じて言葉を続ける。

 

「汝、女神を守る盾にして、弱き人を守る牙とならん!」

 

 ネプギアの言葉と同時に、光が収束し始めた。

 

 初めは部屋全体に広がっていた光が次第に魔法陣の上に円柱のように集まり出したのである。

 

 ネプギアは目を見開いて宣言する。

 

「今ここに現れよ! 『勇者』!」

 

 ネプギアが宣言すると、収束していた光が再び部屋中にはじけた。

 

 やがて、光が収まると、魔法陣の上に1人の男が立っていた。

 

 その男は端正な顔立ちをしており、体からは歴戦の戦士を思わせる力強さをにじみださせていた。

 

 男はにやりと笑ってネプギアに言う。

 

「問おう……汝が我を呼び寄せた女神か」

 

 男の言葉にネプギアはほほ笑みながら言う。

 

「そうです、私はプラネテューヌ女神候補生ネプギア……あなたの名前は?」

 

 男は左手で顔を覆って左目だけをネプギアに見せながら言う。

 

「我は正義の勇者……」

 

 男は顔を覆っていた左手をネプギアに伸ばして言う。

 

「御波夢人だ」

 

 

*     *     *

 

 

「ぐ、ぐおおおおおおおおおお!?」

 

「ゆ、夢人さん!? お、落ちついてください!?」

 

 夢人はプラネテューヌの教会の一室で転がりながら叫んでいた。

 

 ネプギアはそんな夢人を落ち着かせようとするが、夢人は転がり叫び続ける。

 

「こ、殺せええええええ!? もういっそ殺してくれええええええ!?」

 

 夢人は泣きながら叫び続ける。

 

「……まったく、たかがドラマの内容ぐらいで騒ぐんじゃないわよ」

 

 アイエフは呆れながら夢人を見る。

 

 ……そう、先ほどまで夢人達は夢人主役のドラマを観ていたのだ。

 

 タイトルは『それゆけ! ゆうしゃくん』。

 

 内容は、犯罪組織マジェコンヌによって女神達が倒されてしまったゲイムギョウ界が舞台。

 

 そんな中、プラネテューヌの女神候補生であるネプギアが古の女神達が残した救世の英雄『勇者』を召喚する。

 

 そして、召喚された『勇者』御波夢人がネプギア達と犯罪組織マジェコンヌに立ち向かっていく物語である。

 

 愛あり涙あり感動ありのドラマであり、4国すべてがスポンサーという超豪華番組でもある。

 

「な、何で俺の黒歴史が写ってんだよ!?」

 

 夢人は未だにテレビに映っている厨二病全開状態の自分の姿を指さしながら言う。

 

「どうしてスタッフがあれを知ってんだよ!? あれはルウィーの時の奴じゃねえか!?」

 

 そう、主人公である『勇者』のモデルはルウィーでの黒歴史、シュナイデル・ランぺリオンがモデルであった。

 

『我が魔導を見よ!』

 

 テレビでは『勇者』が強力な火の魔法を操ってモンスター達を倒しているシーンが流れていた。

 

「おかしくない!? あれ絶対俺がモデルじゃないよね!? なんか顔もかなり美化されてるし!?」

 

 このドラマ、最新の技術を用いて制作されており、俳優達の顔を夢人達に加工してある。

 

 しかし、夢人はかなり美化されており、瞳には星マークのようなものまで浮かんでいる。

 

「なんでだよ!? これ俺じゃないくてもいいじゃん!? むしろ俺じゃない!!」

 

 夢人は泣きながら叫び続けた。

 

 そんな夢人に構わず、アイエフは携帯をいじりながらとある情報を引き出した。

 

「……あのハードブレイカーと一緒に戦った時の映像が流れたでしょ?」

 

 アイエフが携帯の画面を夢人に見せながら言う。

 

 携帯の画面にはヒーロー状態の夢人とハードブレイカーが黒いハードブレイカーにとどめをさす場面が写っていた。

 

「あれを見て、アンタの今までの活躍の情報を集めたらしいわ……その中で、ルウィーの時の状態が一番人気が出るだろうって判断されたらしいわ。あの時のアンタの魔法が凄過ぎたのが決め手になってモデルになったそうよ」

 

 夢人は涙目でアイエフを見ながら言う。

 

「ど、どうやって情報を集めたんだよ?!あれはここにいる奴らしか……」

 

「アタシだよ」

 

 夢人の言葉を遮って日本一がテレビから目線を外して言う。

 

「だって、あの時の夢人、すっごいかっこよかったでしょ? だからアタシが番組のディレクターさんに話をしてきたんだ!」

 

「……それだけじゃありませんの」

 

 目を輝かせて説明していた日本一の隣にいたがすとも日本一に続いて言う。

 

「このドラマは全国放送で4国すべてがスポンサーの超豪華ドラマですの。だから、主役である『勇者』をかっこよくして、関連商品の売り上げアップを目指したんですの!」

 

 純な子供のように目を輝かせる日本一と金の亡者のようにお金のマークに目を輝かすがすとの言葉に夢人は膝を折ってしまった。

 

「……俺の敵は身内にいたのか」

 

 夢人が両手を床について落ち込んでいるのを見てフェルが苦笑しながら言う。

 

「……人気が出ると大変ですね、お兄さん」

 

「……もう、死にたい」

 

 夢人はフェルの言葉を聞いて、もぞもぞと部屋の隅に移動して丸くなってしまった。

 

「ゆ、夢人さん!? 元気出してくださいよ!?」

 

「そ、そうですよ!? 主役、ってだけでもすごいです!?」

 

「げ、元気出して!?」

 

 夢人を励まそうとネプギア、コンパ、5pb.が声を掛けるが、慰めにはならなかった。

 

「……まったくしょうがないわね」

 

 アイエフはそんな夢人達の様子を見てため息をつく。

 

『次週、《女神との誓い》をお楽しみに!』

 

 テレビ画面にはドラマが終わり、次回予告が流れていた。

 

「えーっ! もう終わりなの!」

 

「まあまあ、来週もやりますから」

 

 フェルは残念そうに肩を落とす日本一をなだめながら苦笑した。

 

「でもさ……あれ?」

 

 日本一はそれでも唇を尖らせて言うが、テレビ画面から流れてくる映像を見て目を見開く。

 

『鋼鉄巨人ハードブレイカー、この後すぐ!』

 

 夢人はテレビから聞こえた音声を聞いて俯いたまま立ち上がってテレビに近づく。

 

「ゆ、夢人さん?」

 

 ネプギアは夢人の行動に目を白黒させる。

 

 夢人はやがてテレビの前に立つと、両手でテレビを掴んで叫ぶ。

 

「なんじゃそりゃああああああああ!?」

 

 

*     *     *

 

 

 『鋼鉄巨人ハードブレイカー』

 

 犯罪組織マジェコンヌが対女神用に開発した新型ロボットハードブレイカーが主役の番組である。

 

 ハードブレイカーは対女神用として開発されるが、開発者の1人、グリーンリバー博士の命がけの行動によって犯罪組織マジェコンヌの支配から脱した。

 

 ハードブレイカーは犯罪組織マジェコンヌと戦いながらも自分の兄弟同然のロボットたちを傷つけるたびに悩み苦悩していく。

 

 そんな中、女神達と出会い人の心を学んで行き、正義の戦士として犯罪組織マジェコンヌと戦うことを決意する。

 

 そんなハードブレイカーの自分の存在意義に悩みながらも人々を守るために戦う男の物語である。

 

 

*     *     *

 

 

「おかしくない!? 明らかにこっちの方がかっこよくない!?」

 

 夢人はテレビを揺らしながら叫ぶ。

 

「何で俺の主役のドラマはあれなのに、こっちはこんなにかっこよく見えるの!?」

 

 そんな落ち着きなく叫ぶ夢人の頭をアイエフが背後から殴った。

 

「落ちつきなさい!」

 

「痛っ!?」

 

 夢人は叩かれた箇所を押さえながら屈むと、涙目になりながらアイエフを見上げた。

 

「何するんだよ!?」

 

「……だから言ったでしょ? アンタとハードブレイカーが一緒に戦ったところが番組を造るきっかけになったって」

 

 ため息交じりのアイエフの言葉に、夢人は顔を青く変化させた。

 

「ま、まさか……」

 

「そうよ。アンタの番組の裏番組としてハードブレイカーが主役の番組が企画されたの」

 

 アイエフの言葉を聞いて夢人は床に両手をついて叫ぶ。

 

「ウゾダゾンナゴドーッ!?」

 

「……付け加えて言うと、スタッフはアンタよりもハードブレイカーの方に力を入れているらしいわ」

 

「どうしてだよ!? アイツ、一応マジェコンヌの一員だったんだぞ!?」

 

 夢人がテレビ画面に映るハードブレイカーを指さしながら言う。

 

 アイエフは頭痛を抑えるように眉間に指をぐりぐりと押し付けた。

 

「……普通に考えたら、さえない勇者よりも男前なロボット、どちらに力を入れるかわかるでしょ?」

 

 夢人はアイエフの言葉を聞いてめまいを起こして倒れそうになってしまった。

 

「ちょっと!? お兄さん!?」

 

 倒れそうになった夢人をフェルが受け止めるが、彼はうつろな目のままで天井を見つめてぶつぶつと呟くことしかできない。

 

「……さえない勇者……さえない勇者……」

 

 そんな夢人の様子にアイエフとフェルが同時にため息をついてしまった。

 

「……まったく、いつまでも落ち込んでんじゃないの」

 

「……そうですよ、たかがテレビ番組ぐらいで」

 

 夢人は2人の言葉を聞いて、何とか立ち直り、足に力を入れて立とうとする。

 

「そうだよな、たかがテレビ番組ぐらいで……」

 

「でも」

 

 夢人が最後まで言葉を言う前にネプギアがテレビの画面を見て目を輝かせて言う。

 

「かっこいいですよね! ハードブレイカー!

 

 ネプギアの言葉を聞いた瞬間、夢人はまるで壊れた機械のように動きを止めてしまった。

 

 アイエフとフェルはやってしまったと言わんばかりに、額に手を当ててため息をつく。

 

 そんな夢人達の様子に構わず、ネプギアが言葉を続ける。

 

「このメカメカしい感じがかっこよくて素敵ですよね!」

 

 ネプギアの言葉を聞いて夢人はゆらゆらと動きながら部屋から出ていこうとする。

 

「ちょっと!? どこ行くんですか!?」

 

 フェルは夢人の腕を掴んで呼び止める。

 

 夢人は再びうつろな目に戻ってしまった顔でフェルを見つめて言う。

 

「……ラステイションに行く」

 

 フェルはそんな夢人に引きながらも腕を離さない。

 

 夢人はフェルの様子に構わず言葉を続ける。

 

「ラステイションに行って機械の体を手に入れる……そうすればネプギアに……」

 

 夢人の言葉を聞いてコンパと5pb.は慌てて夢人を押さえるためにフェルとは反対側の腕をつかみ上げた。

 

「お、落ちつくです!?」

 

「そうだよ!? 冷静になって!?」

 

 夢人は3人に押さえられながらも部屋の出口へと進もうともがく。

 

「離してくれ……俺は……俺は……」

 

 夢人は勢いよく天井を見上げて叫ぶ。

 

「ロボットになってやる!!」

 

 そんな夢人を見てアイエフは指でこめかみを押さえながらため息をつく。

 

「……バカ……ん?」

 

 アイエフは自分の携帯に着信があることに気づいて受け取る。

 

「はい、もしもし? ……オトメちゃん?」

 

 アイエフは電話の相手の様子がおかしいことに気づいて眉をひそめる。

 

「どうしたのよ、そんなに慌てて……何ですって!?」

 

 アイエフは電話の内容に驚いて大きな声をあげる。

 

 その声に、今までバカ騒ぎをしていた夢人達も黙ってアイエフを見つめ始めた。

 

「……わかったわ、すぐに向かうわね」

 

 アイエフはそう言って電話を切る。

 

「……どうしたんですか?」

 

 ネプギアが首をかしげながらアイエフに尋ねる。

 

 アイエフは顔を引き締めて電話の内容をみんなに伝えた。

 

「……ルウィーで犯罪活動が活発化したらしいわ」

 

 アイエフの言葉に夢人達は目を見開き驚く。

 

「何でも急にシェアが低下したらしいわ……しかも、ロムとラムの様子もおかしいらしいのよ」

 

「そ、そんな!?」

 

 ネプギアはロム達のことを聞き、両手で口を覆って驚く。

 

「ロムちゃんとラムちゃんが……」

 

 ネプギアは目を閉じて心配そうに左手を胸に当てて俯く。

 

 そんなネプギアの様子を見て夢人は先ほどまでバカ騒ぎの中心にいた人物とは思えないほど、顔を引き締めた。

 

「行くぞ」

 

「……夢人さん」

 

 ネプギア達は夢人を見る。

 

 夢人は真剣な表情のまま言う。

 

「ルウィーに行くぞ……そして、ロムとラムを助けるぞ!」

 

 夢人の言葉を聞いてネプギア達は真剣な表情で頷く。

 

 夢人達はすぐにルウィーに向かった。

 

 ……双子の女神候補生を助けるために。

 

 そこにはかつて対峙したマジックと同格の相手がいることも知らずに……




という訳で、今回は終わり!
いやあ、気がつけば本当に遠いところまで来たよ
明日でちょうど投稿が一カ月となるこの作品
それを前にすると、本当に感慨深いですよ
まだまだこの作品は続いていきますが、皆様に楽しんでもらえるように頑張りますね!
それでは、 次回 「パパは勇者?」 をお楽しみに!

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