超次元ゲイムネプテューヌ 夢のヒーローを目指して   作:ホタチ丸

41 / 184
はーい、皆さんこんばんわ!
今回は原作でいう2章のラスト、それに加えてライブをお送りします!
ある意味いい感じの節目なので、今回も大増量してお送りいたします!
それでは、 照星 はじまります


照星

 真犯人を見つけて、ようやく犯罪者の疑いが晴れた夢人。

 

 そんな彼は今、ナナハとフェルと共にリーンボックスの街へと帰っている。

 

「いやあ、でも本当良かったよ。俺の犯罪者の疑いも晴れて、これでもう女装しないで済むと思うと本当気持ちが軽くなるよ」

 

 夢人は頬を緩ませて、右肩に左手を置いて右肩を回す。

 

「そうですね……あれはひどかったです。あんな気持ちの悪い姿、二度と見たくないですよ」

 

 苦笑しながら言うフェルに続けて、ナナハも困ったように笑いながら言う。

 

「そうだね……正直、リーンボックスの人達皆、夢人が女装してたのを遠巻きに見てたから」

 

「そ、そんなにか!? あれ結構完璧な変装だと思ってたんだけど……」

 

 夢人の言葉を聞いて、フェルはため息をついて言う。

 

「……お兄さん、あれが完璧ならこの世界のすべてが完璧以上です」

 

「なんだと!?」

 

 フェルの言葉を聞いて夢人は体をのけぞらせて驚く。

 

「そもそも普段から疑われるような行動を取るからいけないんですよ。そんなことだからギアお姉さん達に疑われてたんじゃないですか」

 

 フェルの言葉を聞いて、夢人は涙目になりながら言う。

 

「ぐっ!? そんなにはっきり言わないでくれよ!?」

 

「……仕方ないな、よーし、よーし……夢人は頑張ったもんね」

 

 ナナハがほほ笑みながらうなだれてしまった夢人の頭をなでる。

 

「……ナナハ?」

 

 夢人はナナハがそんな行動をするなんて思っていなかったので驚いてナナハの顔を見上げた。

 

「……ありがとうね、夢人」

 

 ナナハは夢人が自分を見ているとわかると、はにかみながら言う。

 

「リンダが私の中に入って来て、夢人が私の壁を崩してくれた……だから、私はこれから生きていけるんだ」

 

 ナナハはそう言うと、夢人の頭をなでていた手を頭から離して夢人に背を向けて言う。

 

「私まだまだこれからだけど……頑張って生きていくよ」

 

 ナナハは顔だけを夢人に向けて笑顔で言う。

 

「……だから、本当にありがとう、夢人」

 

 ナナハはそう言うと1人で先に歩いて行ってしまう。

 

 夢人はナナハの背中を見て目を細めて頬を緩ませた。

 

 フェルはそんな夢人をジト目で見ながら言う。

 

「……ボク達と離れている間、何があったんですか?」

 

「なに……いつものお節介だよ」

 

 

*     *     *

 

 

「夢人さん!」

 

 街に着いた夢人達をネプギア達が出迎えた。

 

 ネプギアは夢人達の姿を確認すると、夢人に急いで駆け寄った。

 

「夢人さん……私、本当に……」

 

 ネプギアは夢人と視線を合わせずに俯きながら申し訳なさそうに言う。

 

 夢人はそんなネプギアに苦笑してしまう。

 

「だから、もういいって……俺にも色々と原因はあるんだしさ。それに、最後は信じてくれたんだろ? それで充分だよ」

 

「……夢人さん」

 

 夢人の言葉を聞いてようやくネプギアは夢人の顔を見た。

 

 そして、夢人の手を見て驚いた。

 

「夢人さん!? その手は!?」

 

 夢人の両手はハンカチが巻かれているが、ハンカチは赤黒く染まっており、ハンカチで隠れていない部分は火傷や傷がついていた。

 

「ああ、ちょっと無茶しちゃってさ」

 

 夢人は苦笑しながら右手をブラブラと振る。

 

 夢人の両手の怪我はナナハの治癒魔法では完全に治すことができなかったので、そのままの状態となっていた。

 

「まあ、これくらいいつもと同じだからさ、気にしなくて……」

 

「気にします!」

 

 夢人の言葉を遮ってネプギアが言う。

 

 ネプギアは瞳に涙を浮かばせて、夢人の両手を自分の両手で優しく包む。

 

「夢人さんは私達を信じてくれたのに、私達は信じきれませんでした……そして、こんなひどい怪我まで。本当にごめんなさい……そして」

 

 涙で瞳を潤ませながら夢人を見上げてネプギアは柔らかく笑みを浮かべた。

 

「そんな私達を信じてくれてありがとうございます」

 

 夢人は両手を包まれたことで驚いていたが、ネプギアの言葉を聞いてほほ笑みながら言う。

 

「……俺からも、ありがとう」

 

「はい」

 

 夢人の言葉を聞いて、ネプギアは笑顔で応える。

 

 そんな感じで夢人が幸せを感じていると、横からいきなり蹴飛ばされた。

 

「いつまで鼻の下伸ばしてんのよ!」

 

「うぎゃ!?」

 

 夢人は小さく悲鳴を上げて横から地面に倒れる。

 

 蹴り飛ばした張本人、ユニは眉をひそめ、不満を隠さずに夢人に言う。

 

「アタシ達もいるのに、いつまでネプギアといちゃいちゃしてるのよ! この変態奴隷!」

 

 ユニは腕を組んで夢人を見下ろしながら言う。

 

「ゆ、ユニ?」

 

「ふんだ! こっちはアンタを心配してわざわざリーンボックスまで来たのに、アンタは勝手にいなくなるわ、ネプギアといちゃつくわでむかつくのよ!」

 

 ユニはそっぽを向きながら夢人に言う。

 

「そうよ! あのニュース見てミナちゃん倒れちゃったんだからね!」

 

「わたし達も夢人お兄ちゃんが心配だった」

 

 ユニの後ろからロムとラムが姿を現し、ロムは怪我をした夢人を心配してそばに駆け寄った。

 

「でも、夢人お兄ちゃん無事でよかった(にこっ)。立てる?」

 

 心配そうに見つめていたロムだったが、夢人が大丈夫であることを知ると笑顔になり、軽く首をかしげながら右手を夢人に差し出す。

 

「あ、ありがとう、ロム」

 

 夢人は最初は驚いていたが、ロムの右手を見て笑顔で手を取って立ち上がった。

 

「ふーん……案外、モテモテなんだ」

 

 おもしろくなさそうにつぶやいたナナハの言葉を聞いて、ユニとラムは顔を赤くして叫んだ。

 

「だ、だ、誰が!? こんな奴隷なんて!? 好きでも何でもないわよ!?」

 

「そ、そ、そうよ!? これはお礼なのよ!? わたしとロムちゃんを助けてくれた!? お礼なの!?」

 

 そんな2人の様子にロムは不思議そうに首をかしげながら言う。

 

「……わたしは夢人お兄ちゃんのこと好きだよ?」

 

 ロムの言葉にユニとラムはそろってぎょっとして驚く。

 

「なっ!?」

 

「ロムちゃん!?」

 

 ロムはそんな2人に構わずにこにこと笑いながら夢人の腰に抱きついた。

 

「だって、夢人お兄ちゃん、お姉ちゃんと同じで温かいから」

 

 夢人はその言葉を聞いてほほ笑みながらロムの頭をなでる。

 

「ありがとうな、俺もロムのこと好きだよ」

 

「うん(にこっ)」

 

 ロムも気持ちよさそうにしながら応える。

 

 そんな様子の2人を見ながらユニとラムは低く唸ってしまった。

 

「むう……」

 

「ロムちゃんを……」

 

 ナナハはユニとラムを見て、何かを思いついたのか笑顔で夢人に言う。

 

「ねえ、私の頭もなでてみない?」

 

「は?」

 

 夢人は突然のナナハの提案に驚いて目を見開いた。

 

『なっ!?』

 

 ユニとラムはその言葉を聞いて驚く。

 

「さっきは私が夢人の頭をなでたんだから、今度は私の頭をなでてもおかしくないよね?」

 

「いやいや、それは……」

 

「なによそれ!!」

 

 夢人が困ったように笑いながら断ろうとしたが、ユニが叫んだことで最後まで言葉を続けられなかった。

 

 ユニはナナハを睨みながらナナハに近づいて言う。

 

「アンタ何様のつもりよ!」

 

「え? 別にあなたには関係ないでしょ? 夢人のことどうも思ってないんだし、ね?」

 

 笑顔で言うナナハの謎の威圧に押されて、ユニは怯んでしまった。

 

「そ、それは……」

 

「夢人は今日頑張ったんだし、これぐらいさせてあげても……」

 

「あーっ! もうっ!」

 

 ユニは勢いよく顔を上げてナナハの言葉を遮った。

 

 そして、顔を赤くして夢人を指さした。

 

「コイツはアタシの奴隷なの!! だから、アタシがご褒美をあげるわ!! だから……」

 

 ユニは一度大きく息を吸って叫ぶ。

 

「アタシの頭をなでなさい!!」

 

 ユニは両目を思いっきりつぶりながら夢人に頭を差し出す。

 

「は、はい!?」

 

 夢人はユニのいきなりの行動に驚いてユニから一歩後ろへと下がってしまう。

 

「何で逃げるのよ!?」

 

 ユニは顔を真っ赤にさせて涙目で夢人を睨みながら言う。

 

「アンタはアタシの奴隷なんだから、ご主人様の言うことを聞きなさいよ!?」

 

「メチャクチャだろ!? だいたい、まだ奴隷なの……」

 

「夢人お兄ちゃん(くいっ)」

 

 ロムがユニにどう対処していいのか分からず困っていた夢人の言葉を遮って袖を引っ張る。

 

「……どうした?」

 

 夢人は一旦、ユニのことは置いておいてロムの方を見ながら首をかしげて尋ねる。

 

 ロムはラムを引っ張って夢人の前に立たせてから、笑顔で言う。

 

「ラムちゃんも、なでて(にこっ)」

 

「はいい!?」

 

 夢人はロムの言葉に驚く。

 

 夢人の前に立たされたラムは顔を俯きながら頬を染めて言う。

 

「……こ、これは、その」

 

「ラムちゃん(うるうる)」

 

「あーっ! もうっ! わかったわよ!」

 

 ロムに涙目で見つめられてラムは諦めたように勢いよく顔をあげて夢人を指さして言う。

 

「これはお詫びなの! 夢人のことを疑っちゃったお詫び! だから、わたしの頭をなでなさいよ!」

 

「待ちなさいよ! アタシが先になでてもらうのよ!」

 

「なによ!わたしの方が先なの!」

 

 ユニとラムがお互いに頬を赤くしながら言い合っていると、ナナハが夢人に近づいて笑顔で言う。

 

「……なら、間を取って私からなでる?」

 

『ふざけるな!!』

 

 ナナハの言葉を聞いてユニとラムが声をそろえて叫ぶ。

 

 夢人は肩を落としてつぶやく。

 

「……どうしてこうなった」

 

 夢人はユニ達が言い合っている光景を見ながらハッとする。

 

(そうだ!? ネプギアは!?)

 

 夢人は急いでネプギアの方を向くと、ネプギアは嬉しそうにユニ達を見つめてほほ笑んでいた。

 

「皆仲良くできてよかったですね、夢人さん」

 

「……ハイ、ソウデスネ」

 

 いつもと変わらない様子でほほ笑んでいる姿を見て夢人は片言になりながら応える。

 

(……トホホ、俺まったく意識されてないのかな)

 

 夢人は大きくため息をついた。

 

 

*     *     *

 

 

「5pb.さんのライブ?」

 

 翌日、教会で教祖である箱崎チカに会いに来た夢人達はチカからライブのチケットを貰った。

 

「そうよ、昨日と連続になるけど彼女たってのお願いなの。彼女、5pb.があなた達と一緒に女神を助けるために旅をするって言うからお別れライブを開くのよ」

 

 チカが教会の柱の陰に隠れている5pb.に顔を向けながら言う。

 

「そ、そうなの。ボクも皆と一緒に女神様を助けに行きたい」

 

 5pb.の言葉を聞いて夢人はネプギアの方に向き直って尋ねる。

 

「……大丈夫なのか? 彼女」

 

「大丈夫ですよ、5pb.さんの歌には不思議な効果があるんです。私達の力を高めてくれる歌で昨日も助けてくれたんですよ」

 

「そうなのか」

 

 夢人は改めて5pb.の方を向くと、5pb.は体を一度大きく震わせて言った。

 

「あ、足手まといには決してなりません! だから、連れて行ってください!」

 

 5pb.は両目をつぶって勢いよく柱の陰から飛び出て頭を下げた。

 

「……わかった、これからよろしくな5pb.さん」

 

 夢人はほほ笑みながら5pb.に右手を差し出す。

 

 5pb.は夢人の右手を見ながら笑顔で右手を握って言う。

 

「うん! よろしく! ボクのことは5pb.でいいよ! 夢人くん!」

 

「わかった、改めてよろしく5pb.」

 

 夢人は笑顔で5pb.と握手をする。

 

「話がまとまったようでよかったわ。それでライブのことなんだけど、あなた達には特等席で楽しんでもらいたいのよ」

 

 チカが夢人達の様子に満足そうに笑いながら言った。

 

「嬉しいですけど、そんなことをしてもらってもいいんですか?」

 

 コンパは困った顔で笑いながら尋ねる。

 

 コンパの言葉を聞いて5pb.が笑顔で応える。

 

「もちろん、ボクの歌をリーンボックスを救ってくれた皆に聴いてもらいたいんだ」

 

「わかったわ、ここはお言葉に甘えさせてもらいましょう」

 

「アタシも一度しっかり聴いてみたかったんだよね!」

 

「がすともですの、あなたの歌はとってもよかったですの」

 

「ボクもライブなんて初めてなんで楽しみです」

 

 5pb.は皆の言葉を聞いて嬉しそう顔を綻ばせた。

 

「うん! 皆が楽しめるように素敵なライブにするからね! 期待しててよ!」

 

 夢人はそんな5pb.を見てほほ笑みながらつぶやく。

 

「……やっぱり、間違ってなかった」

 

「何がですか?」

 

 ネプギアが首をかしげて夢人に尋ねた。

 

「5pb.が歌を歌うことが好きだってこと……そして、アイツらと同じだってことだ」

 

 夢人はそう言ってチカに顔を向けて言う。

 

「1つ、頼みたいことがあるんだ」

 

 

*     *     *

 

 

「……僕達、これからどうなるんだろうね」

 

「さあ、とりあえずここにしばらく拘留ってことは間違いないですよ」

 

 シュンヤ達、ユピテルはリーンボックスの警備隊に自分達から出頭して牢屋に入っていた。

 

「ねえねえ、シュンヤ君はどうなると思う?」

 

 カケルはシュンヤに尋ねるが、シュンヤは天井を見たまま応える。

 

「どうなるもこうなるも……わかってることは1つしかないだろ……オレ達の夢はもう叶わないってことだ」

 

 シュンヤの言葉にエースケとカケルは俯いてしまう。

 

 シュンヤは天井を見つめたまま言葉を続ける。

 

「オレ達がやったことは許されることじゃない……本当だったらもっとひどい罰があってもいいぐらいだ」

 

「……そうですね、俺達は騙されたとはいえ、リーンボックスの人達を大量に殺す可能性があったんですから」

 

「……そうだよね、僕達もう犯罪者なんだもんね」

 

 シュンヤは目をつぶったまま騙された時のことを思い出す。

 

(……本当に、バカやっちまったぜ)

 

 シュンヤは後悔した。

 

 自分だけが犯罪者になるならいい。

 

(……こいつらを巻き込んじまった)

 

 シュンヤは自分がマネージャーに騙されたから、エースケとカケルまで犯罪者となってしまったことを後悔していた。

 

(……せめて、こいつらだけでも)

 

 シュンヤがそう考えていると、牢屋の前に警備隊の1人が来て言った。

 

「お前達に面会だ」

 

 

*     *     *

 

 

 ライブ開始10分前、ネプギア達は特等席でライブが始まるのを今か今かと楽しみに待っていた。

 

「楽しみですねライブ!」

 

 興奮しているネプギアにアイエフとコンパは苦笑した。

 

「あんまりテンション上げ過ぎて周りに迷惑かけるんじゃないわよ」

 

「そうですよ、こういう場所は熱気がすごくなりますからね、気をつけるんですよ」

 

 アイエフ達の言葉を聞いて、ネプギアは恥ずかしそうに眉根を下げて頬を掻いた。

 

「そうですね、周りに迷惑をかけないようにしないといけませんものね」

 

「そうよ、まったく」

 

 ネプギアの隣にいたユニがため息をついてネプギアに言う。

 

「ただでさえアンタはボケボケっとしてるんだから気をつけなさいよ」

 

「ユニちゃんまで、ひどいよ……」

 

「自覚ないの? まったく」

 

 ユニはネプギアに苦笑しながら言う。

 

「ユニちゃん、あまりネプギアちゃん、いじめちゃダメ」

 

 ユニの前の席に座っていたロムが後ろに振り返って言う。

 

「べ、別にいじめてるわけじゃないわよ!?」

 

 まさかロムに注意されるとは思っていなかったユニは驚いて目を見開いて言う。

 

「だ、だいたい、何でアタシがネプギアをいじめなくちゃいけないのよ」

 

「……もしかして照れてる?」

 

 そっぽを向いているユニの隣にいたナナハがにやりと笑ってユニの顔を覗き込んだ。

 

「なっ!? だ、誰が照れてるってのよ!?」

 

「それじゃ、もしかしてすねてるの?」

 

 ナナハは笑顔で首をかしげながら、顔を真っ赤にさせたユニに言う。

 

「夢人の隣になれなかったこと……残念?」

 

「だ、だ、誰があんな奴と隣になりたいだなんて言ったのよ!?」

 

 ユニは立ち上がってナナハを指さして叫ぶ。

 

「あんな急にどこかに行っちゃった奴なんて、これっぽっちも心配なんかしていないんだから!?」

 

「ユニちゃん、うるさーい! もうすぐ始まるんだから、騒いじゃダメなんだから!」

 

 ユニの前に座っていたラム眉間にしわを寄せながら、ユニを指さしながら注意する。

 

「うっ! ……ごめんなさい」

 

 ユニはラムに注意されたことに恥ずかしく思い、先ほどとは違う理由でほんのりと頬を赤く染めて俯きながら椅子に座りなおした。

 

 ナナハはそれを面白そうに見ながら言う。

 

「……そうそう、騒がしくしたらダメだよ? ユニちゃん」

 

 ユニはナナハの言葉を聞いて無言でナナハを睨む。

 

「で、でも、本当にどこに行っちゃったんでしょうね、夢人さん」

 

 ネプギアはそんな2人を見て苦笑しながら言う。

 

「……いやな予感がするわ」

 

「……ボクも同じくです」

 

 アイエフとアイエフの席の前に座っていたフェルが同時にため息をつきながらつぶやいた。

 

 

*     *     *

 

 

「……よし、お前ら!準備はいいか!」

 

『はい!! 隊長!!』

 

 一般席では鉢巻をしてピンクの法被を着た男達が話をしていた。

 

 法被の背中にはハートマークと『LOVE』と描かれていた。

 

 その中で1人だけ男達の集団の前に立っている人物、夢人が男達に言う。

 

「これから俺達は5pb.ちゃんのライブに臨む……どうだ! 楽しいか!」

 

『楽しいです!!』

 

 男達は夢人の言葉に反応して声をそろえて応える。

 

 夢人は男達を見て満足そうに頷きながら言う。

 

「今回は彼女のお別れライブだ……さびしいが、彼女を笑顔で送り出すぞ! わかったか!」

 

『イエッサー!!』

 

 男達が敬礼をして夢人に応える。

 

「よし! 野郎ども! 今夜は楽しむぞ!」

 

『うおおおおおおおおおおおお!!』

 

 夢人の言葉に男達は雄たけびをあげてライブが始まるのを待つ。

 

 

*     *     *

 

 

「……い、今、夢人さんの声が……」

 

「空耳よ」

 

 ネプギアが困った顔でつぶやくと、アイエフが笑顔で否定する。

 

「あんな奴、私達は知らないわ……絶対に振り向くんじゃないわよ」

 

 アイエフは笑顔で威嚇しながらネプギアに言った。

 

「は、はい! わかりました!」

 

 ネプギアは慌てて返事をする。

 

「……何やってるのよ、アイツは」

 

 ユニは額に左手を当ててため息をつきながら、夢人の行動に呆れてしまった。

 

「面白いことしてるね」

 

 ナナハは夢人の方を見ながらほほ笑んで言う。

 

「夢人お兄ちゃんも、ライブ楽しんでる?」

 

 ロムは首をかしげてラムに尋ねる。

 

「……あれは夢人じゃないわ、他人よ、他人」

 

 しかし、ラムは首を左右に振りながらロムに言う。

 

「……バカなんだから、お兄さんは」

 

 フェルはネプギア達を見ながらため息をついて言った。

 

 

*     *     *

 

 

「みんなー! 今日は、ボクのお別れライブだけど、楽しんでいってねー!」

 

 ライブが始まり、5pb.がステージの上に現れて言った。

 

『うおおおおおおおおおおおお!!』

 

 夢人と一緒にいた法被を着た男達は5pb.の登場に興奮して声をあげた。

 

「じゃあ! 早速、1曲目、歌っちゃうよー!」

 

『わああああああああああああああ!!』

 

 5pb.が歌い始めると、ライブ会場はすさまじい熱気に包まれた。

 

「すごい! すごいよ! 5pb.!」

 

「本当ですの!」

 

 興奮してはしゃぐ日本一の隣で、がすとが珍しく身を乗り出す勢いでライブに熱中している。

 

「ライブって本当にすごいんだ! 帰ったらミナちゃんに自慢しよ! ロムちゃん!」

 

「うん(にこっ)」

 

 ロムとラムもお互いに顔を見合わせて笑顔で言う。

 

「へぇー、やるじゃない、あの子」

 

「キラキラしてて、素敵だね」

 

 ユニとナナハもステージの上で歌っている5pb.の姿に釘付けになり、優しく目を緩めた。

 

「5pb.さん、嬉しそう……私も嬉しくなってきちゃいそうです!」

 

 ネプギアは嬉しそうに歌う5pb.の姿を見て笑顔で言う。

 

「本当すごいわね」

 

「そうですね!」

 

 アイエフとコンパも5pb.から目を離さず、ライブを楽しんでいた。

 

「これがライブなんだ」

 

 フェルは初めて体験するライブに、目を輝かせてつぶやいた。

 

 やがて、5pb.が1曲目を歌い終えると、観客に向かって言う。

 

「みんなー! どうだったー!」

 

『最高だああああああああああああああ!!』

 

「ありがとうー!」

 

 5pb.は興奮した観客の様子に満足そうに笑みを浮かべて、手を振りながら応える。

 

「今日はスペシャルゲストが来ているんだ!」

 

 5pb.はそう言うと、ステージの袖に視線を向けて言う。

 

「登場してもらうよー! 来てー!」

 

 5pb.がそう言うと、ステージの袖から3人の男達が出てきた。

 

『……えっ?』

 

『……アイツらって』

 

 観客はざわつきながら登場した3人組みを見た。

 

 ……登場した3人はユピテルであった。

 

 

*     *     *

 

 

 オレ達は今、ステージの上に立っている。

 

 ……嘘みたいだな。

 

 オレは静まり返った観客を見回して思った。

 

 オレ達がステージに立てるだなんて……

 

「あ、あれ? みんな? どうしたの?」

 

 先ほどまで歌っていた5pb.が観客の様子に困惑している。

 

 ……無理もねぇな。

 

 オレ達みたいな犯罪者がステージに上がったんだから。

 

 オレは俯こうとした。

 

 観客の視線から逃げようとした。

 

 ……でも、見てしまった。

 

 オレ達を真っ直ぐ見つめるピンクの法被を着た男。

 

 オレ達をステージにあげた張本人。

 

 ……御波夢人の姿を。

 

 

*     *     *

 

 

「お前達に面会だ」

 

 オレ達に面会?

 

 誰だ?

 

「誰なんだろうね?」

 

 カケルは首をかしげながら尋ねてくるが、オレは応えることができずに首をひねるしかなかった。

 

 やがて、面会室に着く。

 

 そこには、オレ達が濡れ衣を着せた勇者くん……御波夢人の姿があった。

 

「よう」

 

 勇者くんはオレ達に軽く片手をあげて笑顔で挨拶をした。

 

「……何の用だよ」

 

 オレは勇者くんを睨みながら尋ねた。

 

 ……きっとこいつはオレ達を恨んでいる。

 

 オレ達がやったバカのせいで迷惑をかけた張本人だ。

 

 恨んでないはずがない。

 

「とりあえず、座れって」

 

 勇者くんはオレの視線を気にせず、笑ってオレ達に座るように言う。

 

 ……一体何なんだ。

 

「……で、俺達に何の用ですか?」

 

「……もしかして、恨みごと?」

 

 エースケとカケルも眉をひそめながら勇者くんに尋ねる。

 

 勇者くんは右手を振りながら苦笑して言う。

 

「違う違う……俺が来たのはお前達にしてもらいたいことがあるからなんだ」

 

 ……オレ達にしてもらいたいこと?

 

「……悪いが断るぜ」

 

 オレは立ち上がって言った。

 

 ……もうマネージャーの時のように騙されるのはごめんだ。

 

 こいつがオレ達のことを騙そうとするとは思えないが、オレはもう他人を信じられない。

 

「……お前達にライブに出演してもらいたいんだ」

 

 ……こいつは今なんて言った?

 

 オレ達がライブ?

 

「ふざけんな!!」

 

 オレは面会室の仕切りを思いっきり殴った。

 

 そして、勇者くんを睨みながら言う。

 

「オレ達はもうお終いなんだよ!! 人としても!! 音楽アーティストとしても!!」

 

 それを今更、ライブに出てほしい?

 

 ふざけるな!!

 

「オレ達の前で二度と歌のことを言うんじゃねえ!!」

 

 オレは仕切りに額をぶつけながら叫んだ。

 

 ……くそっ。

 

 どうして、どうして今更。

 

「……間違えない人間なんていないさ。人は誰だって目の前の欲望に目がくらんで間違いを起こすかもしれない」

 

 ……そうだ、オレ達はメジャーデビューをさせてくれるというマネージャーの甘い言葉に騙されてバカをした。

 

 メジャーデビューって言うオレ達の欲望を叶えるために。

 

「……でもな」

 

 勇者くんは軽く笑みを浮かべながら、右手を胸に当てて言う。

 

「人は何度だってやり直せる」

 

 ……やり直せる?

 

 オレ達が?

 

「……無理だ」

 

 オレはそう言った。

 

 無理なんだよ。

 

 オレ達はもうゲイムギョウ界中で犯罪者扱いだ。

 

 そんなオレ達がメジャーデビューなんて……

 

「諦めるのか?」

 

 勇者くんはオレにそう言った。

 

 ……諦める。

 

 オレ達の夢を……

 

「……諦め切れるわけないだろ!!」

 

 オレは流れる涙を止められなかった。

 

「夢だったんだ! オレ達の! 3人でメジャーデビューしようって!!」

 

 オレは立っていられなくなった。

 

 オレは仕切りに額をぶつけたまま膝を地面につけた。

 

「でも、もう諦めるしかないだろ!! オレ達なんて……もう……」

 

「……シュンヤ」

 

「……シュンヤくん」

 

 エースケとカケルがオレに声をかけるが、オレは応えることができない。

 

 ……こいつらの夢を壊したのもオレがマネージャーの言葉に従ったせいなんだ。

 

 オレは悔しさで拳を握りしめることしかできなかった。

 

「……よかった」

 

 勇者くんはオレを見て満足そうに眼を細めてそう言った。

 

 ……よかった?

 

 何がよかったんだ!!

 

 オレ達がみじめでよかったとでも思ってんのか!!

 

「泣くくらい本気なら諦めてんじゃねえ!!」

 

 勇者くんは右手で強く机を叩いた。

 

 オレ達はそれに驚いてしまう。

 

「諦めたくなくて泣くくらいなら何度だってやれ! 何度でも失敗しろ! ……それでも」

 

 勇者くんは先ほどまで笑みを浮かべていたとは思えないほど、オレ達を睨みながら言う。

 

「気持ちだけは折るんじゃねえよ!!」

 

 ……オレは気付いてしまった。

 

 オレ達はマネージャーの誘いに乗る前から……

 

 ……気持ちを、夢を諦めていたんだ。

 

「……なら! どうすればいいんだよ!? オレ達は何をすればいいんだ!? 諦めたくねえよ……オレ達は……歌が好きなんだよ……」

 

 オレが涙を流しながら勇者くんに言うと、勇者くんは柔らかくほほ笑みながら言う。

 

「簡単だ……忘れるんじゃねえぞ?」

 

 

*     *     *

 

 

 ……そうだ。

 

 オレ達はただここに歌うために来たんじゃない!

 

「……マイクを貸してくれないか?」

 

「えっ? う、うん」

 

 5pb.はためらいながらもオレにマイクを渡してくれた。

 

 ……重いな。

 

 オレはマイクを持った時、素直にそう思った。

 

 これが今まで歌ってきたアーティストが持っているマイク。

 

 ……この重さを受けとめながら歌っていたんだな。

 

 オレは少しだけ恐怖するとともに……

 

 彼女を尊敬した。

 

 ……だけど、今、オレ達がすることは歌うことじゃねえ。

 

「……みんなに聞いてほしいことがある」

 

 オレは観客を真っ直ぐに見ながら言う。

 

 観客はオレ達を黙って真っ直ぐに見つめる。

 

 ……怖い。

 

 今すぐにでも逃げ出したい。

 

 もう夢なんか諦めてしまいたいとすら思ってしまう。

 

 ……それでも

 

 オレは……

 

 オレ達は!

 

「オレ達ユピテルはみんなが知っての通り、リーンボックスのみんなを危険な目に合わせてしまった」

 

 ……そうだ。

 

 オレ達がやったことは消えない。

 

 ずっと人の心の中に残ってしまう。

 

 ……でも、アイツは、勇者くんは言っていた。

 

「オレ達がやったことは、みんなにとって許すことができないことだとわかっている……それでも!」

 

 オレは声を張り上げて言う。

 

「オレ達は歌いたい!! みんなのために!! ゲイムギョウ界のために!!」

 

 何度だって言ってやる!

 

 オレ達は夢を諦めたくないんだ!

 

「オレ達を許してくれとは言わない!! それでも!! オレ達はみんなのために歌いたいんだ!!」

 

 ……オレは勇者くんの言葉を思い出した。

 

【自分の罪を数える】

 

 オレ達は最初意味がわからなかった。

 

 勇者くんはそれでも笑って言った。

 

【犯した罪は絶対に降ろせない荷物だ……一生自分に付きまとってくる】

 

 ……今のオレ達がその状態だ。

 

【その罪を背負ったまま、お前達ができることをする……それがお前達にとっての罪の数え方だ】

 

 ……簡単に言うなよ。

 

 そんな重たい荷物、ずっと持っていくしかないのかよ。

 

【お前達の涙は本物だ……だから、俺はお前達を信じる】

 

 ……お前達を騙した相手なんだぞ?

 

 簡単に信じるんじゃねぇよ。

 

 そんなこと言われちまうと……

 

 涙が止まらなくなるだろうよ……

 

【それが男のけじめのつけ方だ……後は、お前達の決断次第さ】

 

 勇者くんはそう言って1枚の紙を机の上に置いて立ち上がった。

 

【……決めたんなら、そこに連絡をしろよ……待ってるぞ】

 

 勇者くんはそう言って面会室を出て行った。

 

 ……そして、オレ達は決断したんだ!

 

 何度だって歌ってやるって!

 

 オレ達を犯罪者として見る奴がいても……

 

 そいつらのために歌いたいと!

 

「だから!! オレ達の歌を聴いてくれ!!」

 

 オレは頭を下げた。

 

 ……しかし、観客は何の反応も返さない。

 

 ……当然だよな。

 

 こんな犯罪者のオレ達なんかに……

 

「ユーピテル!」

 

 オレはその言葉を聞いて勢いよく顔をあげた。

 

 そこには勇者くんが両手を口の近くに当てて叫んでいた。

 

「ユーピテル! ユーピテル!」

 

「ユーピテル! ユーピテル!」

 

「ユーピテル! ユーピテル!」

 

 そんな勇者くんの姿を見て、周りの連中もオレ達を呼び始めた。

 

「み、みんな……」

 

 オレは目の前がどんどん霞むのがわかった。

 

 涙が止められなかった。

 

『ユーピテル! ユーピテル! ユーピテル!』

 

 いつの間にか会場に居た観客全員がオレ達を呼んでいた。

 

「……シュンヤ」

 

「……シュンヤくん」

 

 エースケとカケルがオレの肩に手を置いた。

 

 彼らの目にも涙が浮かんでいた。

 

 ……くそっ、さっきまであんなに苦しかったのに。

 

 今は嬉しさがあふれてきやがる!

 

「みんなー! ありがとうー!」

 

 オレは泣きながら笑って言った。

 

『うおおおおおおおおおおおお!!』

 

 観客のみんなもオレ達に向かって声援をあげてくれる!

 

「聴いてくれ! オレ達の歌を!」

 

 ……ありがとう、勇者くん。

 

 オレ達はこれからスタートする。

 

 きっと辛い道のりだろうけど。

 

 ……オレ達が背負った荷物と共に。

 

 

*     *     *

 

 

「ライブ! すごかったよね!」

 

 日本一はライブの興奮が収まらず目を輝かせながら夢人達に言う。

 

「特にユピテル達が出てきた時に、アタシ泣いちゃったもん!」

 

 夢人達はそんな日本一の言葉を聞きながら苦笑した。

 

「でも、本当にアンタってお人好しよね……まさかアンタをはめた相手を励ましに行くだなんてね」

 

「アイツらだって被害者さ……だったら、俺達と同じさ。俺はただアイツらの涙を信じた……それだけだよ」

 

 夢人は後ろにあるライブ会場に目線を向けながら言う。

 

「それに、アイツらはこれからさ」

 

 夢人の言葉にネプギアはほほ笑みながら言う。

 

「……やっぱり、夢人さんは夢人さんですね」

 

「当たり前だろ? 俺は俺、御波夢人だよ」

 

 お互いにほほ笑み合っていると、夢人は思い出したように言う。

 

「っと、そうだ! ネプギア、ちょっと付き合ってくれないか?」

 

「はい?」

 

 ネプギアは首をかしげて夢人を見る。

 

「……今度は何をしようってのよ」

 

 ユニは夢人をジト目で見ながら尋ねる。

 

「わたし達も一緒じゃダメ?」

 

 ロムは首をかしげて夢人に尋ねる。

 

「2人っきりじゃないとダメなの?」

 

 ラムは眉をひそめて夢人を見ながら尋ねる。

 

 ナナハはきょとんとして夢人を見つめて首をかしげた。

 

「え、えっとだな……」

 

 夢人は4人から視線を外しながら考える。

 

「……えーと、ネプギア! ごめん!」

 

「きゃ!?」

 

 夢人はネプギアの腕を掴むと走り出した。

 

 ネプギアは小さく悲鳴をあげて夢人についていく。

 

「あーっ! どこ行くのよ!?」

 

 夢人は後ろで聞こえる声を無視して、ネプギアを連れて走り出した。

 

 

*     *     *

 

 

「こ、ここならいいか」

 

 私は急に夢人さんに引っ張られて連れてこられた。

 

「で、でも、急にどうしたんですか?」

 

 私は首をかしげて夢人さんに尋ねた。

 

 夢人さんは頬を赤くして気まずそうに言った。

 

「い、いや、何というか……改めて言っておこうと思ってな」

 

 夢人さんはそう言うと顔を引き締めた。

 

「全部のゲイムキャラの協力を得ても、俺は勇者の力が使えないままだ」

 

 ……そうだ。

 

 私達は教会で最後のゲイムキャラさんから力を受け取った。

 

 『グリーンディスク』と風の魔法。

 

 それでも夢人さんは魔法を上手く使えなかった。

 

 もちろん勇者の力もだ。

 

「そんな弱いままの俺だけど……」

 

 夢人さんは一度言葉を区切って言う。

 

「ネプギアを……ゲイムギョウ界を守るために戦う」

 

 ……嬉しかった。

 

 私達が夢人さんを呼び出したのに……

 

 夢人さんとは無関係な世界なのに……

 

 夢人さんはゲイムギョウ界のために戦ってくれると言ってくれた。

 

 言葉にされると、本当に嬉しかった。

 

 夢人さんのことを疑っていたわけではない。

 

 それでも……

 

「……ありがとうございます」

 

 気持ちがあふれてくる。

 

 私は夢人さんにほほ笑みながら言う。

 

「私も、もう一度聞いてもいいですか?」

 

 私は上目遣いで夢人さんに尋ねた。

 

 ……答えはわかっていても聞きたかった。

 

「私達と一緒にゲイムギョウ界を救ってくれますか?」

 

 私が言うと、夢人さんはほほ笑みながら応える。

 

「もちろんだ……俺はネプギア達と一緒にゲイムギョウ界を救うために戦うよ……俺、御波夢人としてさ」

 

 ……あの時と同じだ。

 

 私は涙が流れてしまわないように必死に我慢した。

 

「はいっ!」

 

 私は綺麗に笑えたかな?

 

 綺麗に笑えていたら嬉しいな……

 

 ……そうだ!

 

「……もう1ついいですか?」

 

 これをお願いするのは少し恥ずかしい。

 

「子どもっぽいかと思うんですけど……」

 

 私は頬が熱くなるのを感じるが、夢人さんにほほ笑みながら言う。

 

「指きり、しませんか?」

 

 指きり。

 

 言葉だけでなく、しっかりと今日のことを覚えておきたかった。

 

 だから、私は子どもっぽいかもしれないけど夢人さんにお願いした。

 

「ああ」

 

 夢人さんは私にほほ笑みながら右手の小指を差し出した。

 

「はい、約束ですよ?」

 

「大丈夫さ、俺は約束を破らないよ」

 

 夢人さんは笑って応えてくれた。

 

 私の笑って右手の小指を差し出した。

 

 そして、どちらからともなく小指を絡ませた。

 

 ……これで今日のことは忘れない。

 

 綺麗な月の下での約束……

 

 私と夢人さんの約束。

 

 ……これからもよろしくお願いしますね。

 

 夢人さん。




という訳で、今回は終了!
…皆さん予想できていましたでしょうか?
私は女神候補生のライブと一言も言っておりません!
皆さんの期待を裏切れたのならば、ある意味この話を作った意味はあったというもの…
ごめんなさい!
本当は、私がユピテルをまだ使いたいだけなの!
彼らにはまだ活躍してもらいたいからなんです!
…実は、四天王編でナナハちゃんがいる影響で、リーンボックス編があるんですよ
その時に、女神候補生のライブはやります!
これは絶対です!
だから、今回は許してください!
次回は、恒例の女神通信のナナハちゃん視点です!
彼女がベールに拾われてからどのように過ごしたのかを書こうと思っておりますから楽しみにしておいてくださいね!
それでは、 次回 「女神通信(ナナハ編)」 をお楽しみに!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。