超次元ゲイムネプテューヌ 夢のヒーローを目指して   作:ホタチ丸

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はい、皆さんこんばんわ!
この作品もついにUA8500突破、お気に入り登録55人を記録しました!
これも読者の皆様のおかげです!ありがとうございます!
今回でリーンボックス編の本編は終わりです
ようやくナナハちゃんの活躍シーンを出すことができました!
それでは、彼女の活躍をお楽しみください!
それでは、 憧れ はじまります


憧れ

 フェルが構えているカメラに向かってポーズを取る夢人とハードブレイカー。

 

「この世に悪の栄えた試しなし!」

 

〔任務、完了!〕

 

 フェルはそれを苦笑いしながらカメラで撮り続ける。

 

〔……ぐっ!?〕

 

 しかし、突如、ハードブレイカーは膝をついてカメラアイを緩やかに点滅させる。

 

「ど、どうしたんだ!?」

 

〔……いささか、無理をし過ぎたようだ〕

 

 その証拠にハードブレイカーのカメラアイがだんだんと弱まっていく。

 

〔……しばらく……休ませてもらう……スリープモードに移行する……〕

 

 ハードブレイカーはそう言うと、カメラアイの光を完全に消して沈黙する。

 

「……ありがとうな、ハードブレイカー」

 

 夢人は自分達を守るために戦ってくれていたハードブレイカーを嬉しく思いながら頬を緩めて礼を言った。

 

「ば、バカな!? なんでお前らなんかに!?」

 

 シュンヤは黒いハードブレイカーがやられたことが信じられずに叫ぶ。

 

 そんなシュンヤにリンダは刀の峰で肩をたたきながら近づいていく。

 

「……これでテメェらもお終いだなぁ」

 

「く、来るな!?」

 

 シュンヤ達は冷や汗を流しながらリンダから逃げようとするが、足がもつれて尻もちをついてしまった。

 

「ひっ!?」

 

「た、助けて!?」

 

 シュンヤ達は恐怖のあまり涙を流しながらリンダに懇願する。

 

「……だったら」

 

 リンダは手に持っている刀を振りかぶって言った。

 

 ナナハは慌ててリンダを止めようとするが、ワレチューに止められた。

 

「……どうして!?」

 

「大丈夫っちゅ」

 

 ナナハはワレチューを睨みながら言うが、ワレチューはリンダから視線を外さずに言う。

 

 目の前には、リンダはシュンヤ達の目の前の地面に刀を突き刺した姿があった。

 

「二度とすんじゃねぇ! このクソ野郎どもが!」

 

『は、はい!?』

 

 リンダの言葉にシュンヤ達は怯えて応える。

 

「……よかった」

 

 ナナハはその様子を見て安心してつぶやいた。

 

「……けっ!」

 

 リンダは刀を引き抜くと、シュンヤ達に背を向けて夢人達の方へと歩いていく。

 

 夢人はリンダが近づいてくるのをにや付きながら待っていた。

 

「……んだよ?」

 

「いーや、俺の考えはやっぱり合ってたんだなって思ったんだよ」

 

 リンダはそれを聞いて、頬を赤く染めて夢人から視線を外す。

 

「……ったく、調子狂うぜ」

 

 リンダは左手で頭の後ろを掻きながら言う。

 

「さて、一段落着いたところで……真犯人さんに登場してもらおうかな?」

 

 夢人はその場にいる全員に聞こえるように、にやりと笑って言った。

 

 

*     *     *

 

 

「……あん? そいつらがアタイらをはめた犯人じゃなかったのかよ?」

 

「……うん、本人達だってそう言ってた」

 

 リンダとナナハはシュンヤ達の方を向いて首をかしげながら言う。

 

「……確かに計画を立ててたのは間違いないさ。シュンヤ達、ユピテルが船の爆破事件を計画してたのはメジャーデビューのため……そうだろ?」

 

「そ、そうだ! オレ達が、ミュージシャンとしてメジャーデビューを果たすための……」

 

「そう……だったら、この事件は成立しないんだよ」

 

 夢人はシュンヤ達を悲しそうに見ながら言う。

 

「何故なら船には大量の爆薬が詰まれていたんだから」

 

『なっ!?』

 

 夢人の言葉にシュンヤ達はおろか、リンダ達まで驚いてしまう。

 

「お、おい!? そりゃどういう意味だよ!? 爆薬ってどういう意味だよ!? アタイらが見たのはせいぜい船の一室が焦げた程度の爆発だろ!?」

 

「落ち着けって、ここはワレチューに説明してもらう」

 

「わかったちゅ……こほん」

 

 ワレチューはその場の全員が自分に注目しているのを感じてから話だす。

 

「おいら達が遭遇した爆発の規模は船の一室だけだったっちゅ……でも、エンジンルームの奥には大量の爆薬が残っていたっちゅ」

 

「どういう意味だよ!? オレ達は花火程度の火災だって聞いたぞ!?」

 

 シュンヤはワレチューの言葉に慌てて反論する。

 

 その顔には最初に浮かべていたような軽薄な笑みはなく、ただ顔を青くして恐怖しているように見えた。

 

「オレ達がテロリストを捕まえて有名になる。そしてメジャーデビューを目指すって計画だったはずだ!? なのに、どうして!?」

 

 エースケとカケルも信じられないと言った顔でワレチューを見つめる。

 

「……おいらにもようやくわかったちゅよ、真犯人が」

 

 ワレチューは顔を左右に振り、ユピテルを悲しそうに見つめ始める。

 

「お前達も被害者だったわけっちゅね」

 

「……そうだ。こいつらは自分達の夢を食い物にされた……俺達と同じ被害者なんだよ」

 

「じゃあ!? 犯人は一体誰なんだよ!?」

 

 夢人は慌てるリンダをなだめながら、崩れて少し欠けてしまっている天上の岩を見上げた。

 

「犯人はすでに俺達の知ってる人物だったんだよ」

 

「アタイらが知ってる奴?」

 

 夢人は視線をリンダ達に戻し、右手の人差指、中指、薬指を立てて言う。

 

「キーワードは3つ」

 

 夢人はまず薬指を折った。

 

「1つ目は、特命課だ」

 

「特命課? ……まさかケイブが?」

 

「いや、違う」

 

 夢人はナナハの言葉を否定してリンダに視線を向けた。

 

「リンダ、俺達が最初に情報を確認した時に話したことを覚えているか?」

 

「最初に確認したこと? アタイらがテロリストにされた時の話か?」

 

「そうだ……その時、お前が何を言ったか覚えているか?」

 

「あの時……アタイは……!?」

 

 リンダはあの時に自分が言ったことを思い出した。

 

【あの警棒持ってた方の男、感じからするとリーンボックス特命課ってところの奴がアタイらを犯人だと思っちまったわけだ】

 

「……そうだ、アタイはあの時の警棒の男を特命課だと思ったんだ」

 

 リンダが思い出したことを確認して、今度はナナハに尋ねる。

 

「特命課は3人しかいないはずだろ、ナナハ?」

 

「え、う、うん。営業担当の課長と、実際の現場に出るケイブ、あと人間かどうかわからない奴の3人だよ」

 

 夢人はそれを聞いて満足そうに頷いて言った。

 

「そうだ……だったら、あの時の警棒の男は誰だったんだ?」

 

「……そうか!? いや、でもそれだけじゃまだ断定できねェぞ!」

 

 リンダは納得しかけたが、すぐに頭を左右に振った。

 

「警備隊の奴だったかもしれない……むしろ、アタイは警備隊の奴が騒ぎを聞きつけてやって来たんじゃないのかと思うんだが?」

 

 リンダの問いに夢人は苦笑しながら応える。

 

「それはないさ…何故なら、俺達がすぐに捕まらなかったからな」

 

 リンダは夢人の言葉の意味がわからなかった。

 

 夢人はリンダの様子に構わず言葉を続ける。

 

「あの時、俺達は逃げる途中に聞いたろ? 警棒の男が叫ぶのを……」

 

【本部へ! 船を爆破したテロリストが逃亡しました! 至急、増援を!】

 

 リンダも不自然なことに気付いた。

 

「そうだ! 何でアタイらは船から逃げられたんだ!? 港には他の警備隊の奴がいたはずなのに!?」

 

「……結論から言っちまうと、アイツが俺達をはめた犯人だからだ」

 

 夢人は真剣な表情でリンダに言う。

 

 しかし、リンダは眉間にしわを寄せ、まだ理解できていない様子であった。

 

「それならあのセーラー服の男は何でアタイらを犯人だなんて言ったんだよ!」

 

 夢人は次に中指を折りながら応える。

 

「2つ目のキーワード、セーラー服だ」

 

「セーラー服、ですか? 別に船員なら普通なのでは?」

 

「ああ、俺達も最初はそう思ったよ……でも」

 

 夢人はエースケの質問に苦笑したが、すぐに顔を引き締めた。

 

「いつから俺達はあのセーラー服を着てた奴が船の関係者だと思ってたんだ?」

 

「……どういう意味?」

 

 ナナハは夢人の言葉の意味がわからずに尋ねる。

 

「確かに事件現場は船の中、セーラー服を着ていれば船の関係者だと思っちまう……でもな、そうじゃない場合もあるだろ? セーラー服は普通に女性が着る服でもあるんだよ」

 

 夢人の言葉にリンダは眉をひそめて呆れてしまった。

 

「……なんだ? まさかあの男が女装してたってのか?」

 

「違う違う……もっと根本的な話だよ……いつから俺達は俺達を犯人呼ばわりした奴が男だと錯覚してたんだ?」

 

 リンダは夢人の言葉を聞いて目を見開いて驚いてしまった。

 

「なん……だと……?」

 

 夢人はリンダの様子に構わず、最後に残った人差し指を折った。

 

「3つ目、最後のキーワードだ」

 

 夢人の言葉に、その場にいた全員が息をのむ程の緊張が走った。

 

「マジェコンヌ製のディスク……これですべてが繋がる」

 

「どういう意味だよ……あれはウイルスディスクだろ?」

 

 夢人は首を左右に振りながら応えた。

 

「いや、違う……あれはモンスターディスクだ」

 

「じゃあ、どうしてモンスターがいなかったんだよ?」

 

「いや、いたさ…あの場にモンスターはすでにいたんだ」

 

 夢人はそう言ってワレチューに視線を向ける。

 

「ワレチューが見つけてくれた証拠でモンスターがいたことがわかったんだ……見せてくれ」

 

「わかったっちゅ」

 

 夢人の言葉を聞いてワレチューは右手にあるアイテムを取りだす。

 

「……それは何?」

 

 ナナハはそのアイテムの正体がわからずにワレチューに尋ねる。

 

「これは『ときめき』って言う素材アイテムっちゅ」

 

「そいつがあるってことは……まさか!?」

 

「そうだ。俺達が見たセーラー服を着た奴がモンスター……ときめきシスターって言うモンスターだったんだよ」

 

 夢人の言葉にリンダが慌てて言う。

 

「でも!? あの時、確かに男の声が!?」

 

「……録音だよ。きっと犯人はあらかじめ録音しておいた音声を再生して俺達を犯人仕立て上げたんだ。俺達を犯人と行った時のことを覚えているか? アイツ、俺達のことを指は差したが、声が途切れ途切れだったんだよ」

 

【……アイツらが……エンジンルームを……爆破したんだ】

 

「あの時は怪我のせいで上手く発音できていなかったと思ったが、実際は録音した音声を再生した時にノイズが発生していたんだよ」

 

「じゃあ、アタイが調べた男は!? 入院した男は一体誰なんだよ!?」

 

「本当に無関係の人だぞ……だって、俺達はどうやってセーラー服の男を特定したんだ?」

 

「どうやってって……っ!?」

 

 リンダはどうやって特定したのかを思い出した。

 

「船の関係者で、あれから入院した奴だ」

 

「そう、俺達はあの事件の後に入院した男を調べた……でも、ただそれだけだ。入院した男があの時のセーラー服の奴って断定したわけじゃない。だから、あの人が何も覚えていないのは当然なんだ……なんたって本当に何も知らないんだからな」

 

 夢人の言葉を聞いてリンダは両手で頭を掻きむしながら言う。

 

「あーっ! くそっ! まんまと勘違いさせられたってのかよ!!」

 

 リンダは悔しそうに顔をゆがめながら頭をかきむしる。

 

「そうだ……俺達は最初から勘違いしていたんだよ」

 

 夢人が苦笑しながら言う。

 

「警備隊の男、セーラー服、モンスターディスク……俺達は重要なことを何にもわかっていなかったんだ」

 

「まず、警備隊の男が偽物だった……ってこと?」

 

「そうだ……これはもうアイエフ達に頼んで確かめてもらってる……だからさっき通信で言ったろ?」

 

【こっちは予定通り、ユピテルの事務所を抑えたわ……アンタの予想通りよ】

 

「俺の予想どおりってな……そして、俺の予想が正しければ必ず音楽関係者が偽警備員だと思ってたんだ」

 

「どうして?」

 

 カケルは首をかしげて夢人に尋ねた。

 

「5pb.さんがいるからだ。5pb.さんがいなくなれば、リーンボックスは大量にシェアを失うことになる……そうだろ?」

 

 夢人は視線をリンダに向けながら言う。

 

「そうだ! だからあの時!」

 

【彼女のファンが増えることは、それだけ女神を信仰する人が増えると言うことに繋がるのよ】

 

「ケイブの奴が言ってた! あの歌姫のファンが増えれば女神の信仰が回復する……だから、逆に彼女のファンが減ればシェアが低下する!」

 

「そうだ…マジェコンヌにとっては女神の妨害とシェアの獲得というおいしい状況だ。お前達にモンスターディスクやウイルスディスクを渡した奴は、本当なら彼女のコンサートを妨害させるためにディスクを渡した……違うか?」

 

 夢人の問いにシュンヤ達は俯いてしまう。

 

「……そうだ、コンサートが中止になれば、オレ達にもチャンスがあるって」

 

 夢人はそれを聞いてシュンヤ達から視線を外してリンダ達を見る。

 

「次にセーラー服の男だ……リンダはあの時のエンジンルームの様子を覚えているか?」

 

「わかってんだよ……黒い煙があちこちに漂ってて周りがよく確認できなかったもんな」

 

「おいらも煙い部屋としか思えなかったっちゅよ」

 

【こほっ、こほっ、けむいっちゅ】

 

 ワレチューはエンジンルームに入った時に自分で言った言葉を思い出してため息をついた。

 

「おいらもまだまだっちゅよね」

 

「だからこそ、俺達はモンスターを人だと思っちまったわけだ……本当、もっとよく確認しとけばよかったぜ」

 

 そう言ってため息をついた夢人を見て、ナナハが確認するようにキーワードを訪ねた。

 

「最後にモンスターディスク、でしょ?」

 

「そうだ……これはウイルスディスクに洗脳効果があるってわかった分、余計に勘違いを加速させちまったからな」

 

「うっ!」

 

 リンダは気まずそうに視線をさまよわせる。

 

「ホント、下っ端は使えないっちゅよね」

 

「うっせぇ! 後、下っ端って言うんじゃねぇ!」

 

 リンダは顔を赤くしてワレチューに言う。

 

 夢人はそんなリンダを見てほほ笑みながら言う。

 

「モンスターディスクについては今更言う必要もないだろ? それに、モンスターがいたという証拠もワレチューが持っているわけだしな」

 

 夢人がワレチューの持っている『ときめき』を見ながら言う。

 

「極めつけに、この『ときめき』って言うアイテムを持つときめきシスターってモンスターはルウィーにいるんだ。だから、リーンボックスに住んでいるナナハが知らなくても不思議がないんだよ」

 

「そうなんだ」

 

 ナナハはようやく『ときめき』を自分が知らなかった理由を理解した。

 

「仮に警備隊の連中にアイテムが発見されてもそれが何なのかがわからなければ意味がないからな。本当なら船を爆破する予定だったんだろうけど、犯人は予定外のことが起きてそれを止めざるを得なかったんだ」

 

「予定外のこと?」

 

 ナナハは意味が分からず首をかしげてしまった。

 

「そうだ……俺が、勇者が船に乗ったからだ」

 

 恥ずかしそうに頬をかきながら、夢人は船に乗った時を思い出す。

 

「あの時俺は足を凍らせて船に滑り乗ったんだよ。お前らも覚えてるだろ? 出入り口でいくら俺達が騒いでいても船員が注意しなかったことを」

 

「ああ」

 

「覚えてるっちゅよ」

 

 リンダとワレチューは夢人の言葉に頷いて応えた。

 

「おかしかったろ? あれだけ騒いでいたんだ、普通注意くらいしてくるさ。きっと警備員に変装する前は船員に化けてたんだろうな」

 

「そうだな、船員ならエンジンルームに出入りしても不思議じゃねぇしな」

 

「勇者を狙うっていうのも当たりっちゅよ。今までお前達は散々マジェコンヌの邪魔をしてきたっちゅからね」

 

「怪我の功名って言うか、俺のバカのおかげで助かったんだからいいだろ?」

 

「そうだがよ……つーことはだ、犯人はテメェの命と引き換えにのし上がろうと考えてたわけだ」

 

 夢人は首を振りながらリンダに応える。

 

「いや、それだけじゃないさ。あの船に積まれていた爆薬は、爆発したらどれくらいの規模になったんだ、ワレチュー?」

 

 夢人の言葉を聞いて、ワレチューは眉間にしわを寄せながら難しい顔で言った。

 

「……少なくともリーンボックスの港は爆発に飲み込めるほどの量はあったちゅよ」

 

 ワレチューの言葉にリンダやナナハ、シュンヤ達も驚く。

 

「お、オレ達はただ……夢を叶えようとしただけなのに……どうして……どうしてなんだよ!?」

 

 涙を流しながらシュンヤは地面を右手で叩きながら叫んだ。

 

 夢人はそんなシュンヤを悲しそうに見ながら言う。

 

「……そうだ、これはユピテルの夢を利用した事件でもあったんだ」

 

 夢人はシュンヤから視線を外してダンジョンの出口を睨みながら言う。

 

「聞いてんだろ……ユピテルのマネージャー、いや、俺達をはめてくれた警棒の男!」

 

 ダンジョンの出口から1人の男が手をたたきながら現れて言う。

 

「そうですよ……すべて私が仕組んだことです」

 

 男、マネージャーはにやりと笑って言った。

 

 

*     *     *

 

 

「……ずいぶんとあっさり認めるんだな」

 

 夢人は男を睨みながら言う。

 

 男はそれを受けても涼しげな表情でにや付く頬を隠さずにいた。

 

「ええ、今更何を言っても変わりませんしね。私の仕組んだことはほとんど言い当てられてしまいましたから、何も言うことがなくて困っているんですよ」

 

 シュンヤは勢いよく顔を上げ、マネージャーをにらみながら叫んだ。

 

「マネージャー!! アンタ! オレ達を利用したのかよ!?」

 

「まったく、何を言っているのやら……騙される方が悪いんですよ」

 

 シュンヤはその言葉を聞いて目を見開き呆然としてしまう。

 

「メジャーデビュー? ……無理に決まってるでしょ? あなた達みたいな三流アーティストが有名になるなんて。いつまで経っても売れない歌手活動をするより、私達マジェコンヌの役に立ったことを嬉しく思ってほしいものですね」

 

「そ、そんな……」

 

 口の端を吊りあげながら芝居がかったように手を広げるマネージャーが話す言葉を聞いて、シュンヤは涙を流しながら俯いた。

 

 そんな中、ナナハは俯きながらマネージャーに向かって歩いていく。

 

「オレ達は! アンタの言葉を信じて! やったのに! どうして……」

 

 マネージャーはシュンヤを見て呆れながらつまらないものを見るような目でシュンヤを見下した。

 

「何度も言わせないでくださいよ。世の中騙される方が悪いんですよ……っ!?」

 

 そんな時、突然マネージャーは頬が叩かれた。

 

 ナナハが俯きながらマネージャーの頬を叩いたのである。

 

 

*     *     *

 

 

 気がつけば私は動いていた。

 

 男に近づいて頬を叩いていたのだ。

 

「……何のつもりですか?」

 

 男が私を睨みながら尋ねてくる。

 

「あなたには関係のないことです……口をはさまないでもらいましょうか」

 

 ……関係ない。

 

 確かにその通りだ。

 

 私には何の関係もない男達の問題だ。

 

 ……でも、私は

 

「……許さない」

 

 この気持ちを止められない!

 

「私はあなたを許さない!」

 

 私は涙目になりながら男を睨んだ。

 

「……どういう意味ですか?」

 

 男は眉をひそめて私に尋ねてくる。

 

「この人達は確かに私には関係ないし、悪いこともした」

 

 ……そうだ。

 

 男達は岩で私を生き埋めにしようともした。

 

「だったら……」

 

「それでも!」

 

 ……男達は生きていた!

 

 私の中に入ってきた緑髪の女。

 

 岩を破壊した女装男。

 

 ボロボロになって戦ったロボット。

 

 皆、私と違って生きていた!

 

 キラキラしてた!

 

 私にはない光をいっぱい輝かせていた!

 

 だから男達は泣いてる。

 

 その涙を笑うなんて……絶対に許さない!

 

「この男達を利用したことを、私は許さない!」

 

 男は私の勢いに負けたのか、体をのけぞらせて顔をゆがめた。

 

「こ、この小娘が!」

 

 男はそう言うと、ポケットから何かのスイッチを取りだした。

 

「私に逆らうな!」

 

 男がそのスイッチを入れた途端、近くで悲鳴が聞こえてきた。

 

『があああああああ!?』

 

 私は慌てて悲鳴のした方を向いた。

 

 そこには苦しんでいる男たちの姿があった。

 

「ユピテルに何をした!?」

 

 女装男は男に叫びながら尋ねるが、男はただ愉快そうに笑うだけだった。

 

「保険ですよ。保険……彼らには最後にもう一度働いてもらいましょう」

 

 男がそう言うと、男達、ユピテルの体に私が見慣れた物が装着されていく。

 

「そいつは!?」

 

 緑髪の女がユピテルを見ながら叫ぶ。

 

 男達の体に機械的な翼や装甲が装着されていた。

 

「まさか、プロセッサユニット!?」

 

 そう、私が『変身』した時に身に纏っているプロセッサユニットをユピテルが装着していたのだ。

 

「そうです! それは擬似プロセッサユニット! 私が開発した最高傑作です!」

 

 男は興奮しながら言う。

 

「捕まえている女神やゲイムキャラ、マジック様のプロセッサユニットを参考に誰でも装着可能なプロセッサユニットですよ! これの性能が証明されれば、私はマジェコンヌで認められる! そうすれば、今回の失敗など帳消しにできるのです!」

 

 男は女装男を指さしながらユピテルに命令する。

 

「機動実験に利用させてもらいますよ……勇者くん!」

 

 男がそう言うと、ユピテル達が女装男に突撃していく。

 

「なっ!? やめろ!?」

 

 女装男はユピテル達の攻撃を避けながら叫ぶ。

 

 しかし、ユピテル達は無表情のまま攻撃の手を止めない。

 

「無駄ですよ! その男達はすでに自分の意思で動くことなどできません!」

 

 男が愉快だと言わんばかりに顔をゆがめながら笑う。

 

 ……でも、違う。

 

 私には見える。

 

 ユピテルが涙を流している姿が……

 

 自分の意思で動けないでいても、心までは操れていない!

 

「こうなったら、もう一度……っ!?」

 

 女装男はポケットから先ほど飲んだ黒い粒の入った瓶を取りだそうとしたが、ユピテルの攻撃で弾き飛ばされてしまった。

 

「げっ!? まずい!?」

 

 女装男は瓶を拾いに行けずにユピテルの攻撃に晒されている。

 

「テメェら! やめろ!」

 

 緑髪の女がユピテルに向かって刀を振り下ろすが、腕で掴まれて投げ飛ばされてしまった。

 

「う、うわああああ!?」

 

 投げ飛ばされた衝撃で緑髪の女が地面に転がる。

 

 私は急いで緑髪の女に近づいた。

 

「大丈夫!?」

 

 私が緑髪の女に尋ねると、緑髪の女が苦笑しながら応える。

 

「へっ、これくらい屁でもねぇぜ」

 

 私はその言葉に安心するとともに決意する。

 

「……ねえ、名前を教えて」

 

「あん? 今はそれどころじゃ……」

 

 緑髪の女は眉をひそめながら言うが、私の顔を見て言葉を止めて言う。

 

「……リンダだ」

 

 ……リンダ、うん、覚えた。

 

「……リンダ」

 

「……なんだ?」

 

 私はリンダに柔らかくほほ笑んで見せた。

 

「私の生きてる所……ちゃんと見ててね」

 

 私はそれだけ言うと、リンダに背を向けて駆けだした。

 

「ぐっ!? は、離せ……」

 

 女装男がユピテルの茶髪に首を絞められていた。

 

 今までカメラを構えていた少年は犬耳をはやして金髪と戦っていた。

 

「お兄さん!? くっ!?」

 

 ネズミも黄緑色の少年に捕まっていた。

 

「は、離せっちゅ!?」

 

 ユピテルは全員無表情だったけど、私には苦しんでいるように見えた。

 

 ……もう、そんな顔をさせたくない!

 

 私は撫子を構えて茶髪に向かって駆け出す。

 

「はああああ!」

 

 私が撫子を振るって、女装男を掴んでいた手を弾き飛ばした。

 

「……がっ!? けほっ、げほっ」

 

 女装男は地面に尻もちをついて苦しそうに呼吸を整えた。

 

「大丈夫?」

 

 私は女装男を心配して声をかけた。

 

「あ、あはは……やられることには慣れてるからな」

 

 女装男は苦しそうにしていたが、私に笑みを見せてくれた。

 

 ……我慢しているようだが、大丈夫そうだ。

 

「教えて……名前」

 

 私は女装男にも名前を聞いた。

 

「御波夢人だ」

 

 女装男、夢人は私にほほ笑みながら応えた。

 

「夢人……うん」

 

 私は一度頷いて、夢人にほほ笑みながら言った。

 

「見ててね……今度は私が運命を切り開くから」

 

 私はそう言って『変身』した。

 

「い、いくら女神候補生といえども、3対1の状況なら!」

 

「……無理だよ」

 

 私はいつもの無表情ではなく、少しだけ口元を緩めてまっすぐに男を見つめて宣言する。

 

「私はかなり強いよ!」

 

 私はそう言って飛び出した。

 

 まずは、黄緑色の少年!

 

 私はネズミを捕まえていた腕を夢人との時と同じように弾き飛ばす。

 

「ちゅっ!?」

 

 ネズミが衝撃で空中に投げだされるが、今は気にしない。

 

 黄緑色の少年はただ無表情に私を見つめていた。

 

「せいっ!」

 

 私は撫子を振るった勢いのまま、その場で回転をして撫子の柄の部分で黄緑色の少年の腹を強打した。

 

 さすがに、黄緑色の少年は苦しそうに顔を歪めて体をクの字に曲げる。

 

「はっ!」

 

 私は前に倒れてきた頭を撫子で強打する。

 

 黄緑色の少年はその衝撃で気を失ったのか、プロセッサユニットが解除された。

 

 黄緑色の少年は気絶したが、その顔はどこか満足そうであった。

 

 ……よかった。

 

 私はその様子に満足して笑みを浮かべ、次の目標を視界に収める。

 

 金髪の男が犬耳の少年と戦っている。

 

 私は犬耳の少年と目を合わせる。

 

 ……お願い!

 

 犬耳の少年は私の言いたいことがわかったのか、ほほ笑みながら頷いた。

 

「があああああ!」

 

 犬耳の少年は両手から伸びている大きな爪で金髪の男を弾き飛ばした。

 

 ……今だ!

 

 私は撫子の先端に魔力を集中させて解き放つ。

 

「エアブラスト!」

 

 撫子の先端から風の渦が発生して金髪の男を飲み込む。

 

 金髪の男は風の渦の中で気絶したようで、プロセッサユニットが解除されて地面に転がった。

 

 ……最後は!

 

 私は私に向かって攻撃しようとしてくる茶髪の攻撃を避けて、撫子の先端を向けた。

 

 ……これは私の得意技!

 

 私は撫子の先端に風のドリルを造り上げる。

 

「スピニング」

 

 私は風のドリルで茶髪の男の腕を弾き飛ばして棒立ちにさせる。

 

「ブラスト」

 

 私は茶髪の男の腹に風のドリルをぶつけた。

 

「ブレイク!」

 

 そして、風のドリルを爆発させる。

 

 茶髪の男はドリルと同じ回転をしながら後ろへと吹き飛んで行く。

 

 やがて、プロセッサユニットが解除されて地面に転がった。

 

「ば、バカな!? 私の最高傑作が!?」

 

 男は信じられない様子で私を見ながら言う。

 

「次はあなたの番!」

 

 私は撫子の先端を男に向けて睨みつける。

 

「絶対に許さない!」

 

 

*     *     *

 

 

 撫子を向けられているマネージャーは一度俯くと急に笑い出す。

 

「……くっ、クククク」

 

「……何を笑っているの」

 

 ナナハは眉をひそめてマネージャーに尋ねる。

 

 その手の撫子はマネージャーに向けたまま降ろさない。

 

「いいのですか? そんなことをしても? 港に泊まっている船にはまだ大量の爆薬が残っているのですよ?私がこのスイッチを押せば、港の近くにあるコンサート会場もろとも大爆発を起こしますよ?」

 

 マネージャーはナナハにポケットから取り出した別のスイッチを見せながら言う。

 

「なっ!?」

 

 ナナハは目を見開いて驚く。

 

「このスイッチ一つで大量の人が死にますよ? それでもいいんですか?」

 

 マネージャーは狂ったように笑いながら言う。

 

「爆発を止めたいのなら、その物騒なものを私からどけてもらえませんか?」

 

 マネージャーの言葉を聞いて、ナナハは悔しそうに唇をかむ。

 

「……卑怯者!」

 

 ナナハの言葉を聞いて、マネージャーは嬉しそうに笑いながら言う。

 

「ええ! そうですよ! 私は悪党ですもの!」

 

 ナナハはマネージャーの勝ち誇った顔を見て悔しそうに撫子を構えていた手を降ろす。

 

「そうですよ! ありがとうございます!」

 

 マネージャーは嬉しそうに笑いながらスイッチを持っている手をナナハに見せつける。

 

「お利口な女神候補生にはご褒美をあげませんとね!」

 

「や、やめて!?」

 

 マネージャーがスイッチに持っている手を動かそうとしているのを見て、ナナハは慌てて止めようとするが、間に合わない。

 

「もう遅いですよ! 皆まとめて吹き飛ばして上げます!」

 

 そう言ってマネージャーはスイッチを押した。

 

 ……しかし、何も起こらない。

 

 いくらリーンボックスの港から離れているアンダーインヴァースといえども、コンサート会場ごと爆発すれば衝撃音が聞こえてくるはずであった。

 

「……な、なぜだ!? なぜ何も起こらない!?」

 

 マネージャーは慌てて何度もスイッチを押す。

 

「無駄だよ」

 

 夢人はマネージャーに笑いながら言う。

 

「船の爆弾はすでに処理させてもらったぜ」

 

 夢人はNギアの画面をマネージャーに見せながら言う。

 

〔そうよ! わたし達が爆薬をぜーんぶ凍らせちゃったもんね!〕

 

〔ぶい(にこっ)〕

 

 画面には『変身』したロムとラムが笑顔で写っていた。

 

 彼女達の後ろには氷漬けになった爆薬が写っていた。

 

「な、なぜだ!? どうしてルウィーの女神候補生が爆薬のことを!? そいつらはお前を信用していなかったはずだ!? 接触した時にお前を犯人扱いしていたではないか!?」

 

 マネージャーは夢人を監視していた時に、女神候補生達が夢人のことを犯人扱いしていたことを思い出しながら言う。

 

「バーカ、信用されていないだけで俺がアイツらを信じられないとでも思ったか?」

 

 夢人は笑いながらマネージャーに言う。

 

「俺達のことを監視してたんならわかるだろ?俺がアイエフにNギアを投げたことを」

 

 マネージャーは夢人がアイエフにNギアを投げたことを思い出した。

 

「し、しかし、いったいどうやって!?」

 

 マネージャーは首をゆっくり左右に振りながら夢人に尋ねる。

 

「このNギアはただの通信機じゃなくて、いろいろな機能があるんだよ。コイツは小さな高性能コンピューターのようなもんでな……コイツにメッセージを残したのさ」

 

 夢人はにやりと笑って言う。

 

「【真犯人は俺達を犯人扱いした目撃者】と【船には爆薬が積み込まれている】……ってな」

 

 夢人の笑いながら言葉を続ける。

 

「警備隊でもないお前が目撃証言を言ったことはわかってたんだ……なら、その目撃証言を言った奴を探してくれって言うメッセージなんだよ」

 

 マネージャーは慌てて夢人に言う。

 

「お前を犯人扱いしていた奴らをどうして信じられた?!」

 

「……なんだ、そんなことか」

 

 夢人は迷いなくまっすぐにマネージャーを見つめながら笑って言う。

 

「信じ抜いただけさ……ただそれだけさ」

 

 夢人が右手の親指で自分の胸を指さしながら言う。

 

「簡単に信じられなくなるような浅い付き合いじゃないだ……疑われたって平気さ」

 

 夢人がそう言うと、Nギアの画面に映っていたロムとラムは申し訳なさそうに言った。

 

〔……夢人お兄ちゃん、ごめんなさい(うる)〕

 

〔……わたし達、本当に疑ってたのに〕

 

 2人の言葉を聞いて、夢人は頬を引きつらせながら言う。

 

「……だ、大丈夫……信用ないのは知ってたから」

 

 そう言った夢人の目には涙が浮かんでいた。

 

「だったら会場の近くに設置しておいた……」

 

「モンスター達も対処済みだぜ」

 

 マネージャーの言葉を遮って夢人が言う。

 

 そして、夢人はNギアをいじって違う画面を写した。

 

 『変身』したネプギアとユニがコンサート会場の入り口でモンスター達を倒している光景が写っていた。

 

〔ミラージュダンス!〕

 

 ネプギアが高速でモンスター達の間をすり抜けながらモンスターを倒していく。

 

〔デスペラード!〕

 

 ユニがモンスターを次々に撃ち抜いていく。

 

「な、何だと!?」

 

 マネージャーはその光景が信じられなかった。

 

「どうしてモンスターディスクのことまで!?」

 

 夢人はにやりと笑って言う。

 

「悪党って奴は笑って悪いことする奴ばっからしいからな。そんな奴がユピテルを完全に信用しているとは思えなかったからな」

 

「……ちっ!」

 

 リンダは頬を染めて舌打ちをする。

 

〔こちらにいるモンスターはほぼ倒しました〕

 

〔他の場所も日本一やがすとがいるから大丈夫よ〕

 

「……だそうだが、どうする?」

 

 夢人はマネージャーを睨みながら言う。

 

「お前には理解できなかったかもしれないが、これが俺達の絆だ!」

 

「ぐっ!?」

 

 マネージャーが冷や汗を流しながら後ずさる。

 

〔……そ、その、夢人さん〕

 

 Nギアの画面ではネプギアが申し訳なさそうな表情をして言う。

 

〔ごめんなさい……私達、夢人さんのことを信じきれなくて……〕

 

〔本当にごめんなさい〕

 

 ネプギアだけでなく、ユニも申し訳なさそうに夢人に謝っていた。

 

「……お願いですから!? もうやめて!? 俺気にしていないから!?」

 

 夢人は涙を流しながらNギアに向かって叫ぶ。

 

「……えっと、ドンマイ?」

 

 ナナハが首をかしげて苦笑しながら夢人に言った。

 

「……ありがとう」

 

 夢人はうなだれながら応えた。

 

 マネージャーは顔を俯かせて肩を震わせた。

 

「さあ、観念しろ」

 

 夢人はそんなマネージャーの様子に構わずに言う。

 

「お前はもう……」

 

「……ふ、フフフフ」

 

 夢人の言葉をマネージャーが笑いながら遮る。

 

 夢人は眉をひそめてマネージャーを見る。

 

「もう……もういい!」

 

 マネージャーは勢いよく顔を上げて、倒れている黒いハードブレイカーに向かって叫ぶ。

 

「ハードブレイカー! マグマに飛び込んで自爆しろ!」

 

〔……了解〕

 

 黒いハードブレイカーはマネージャーの言葉に反応して、カメラアイの光が灯る。

 

 しかし、その光は先ほどまでとは違い、赤い光を灯していた。

 

「ま、まだ動けたのか!?」

 

 夢人は黒いハードブレイカーが動き出したことに驚いてしまう。

 

「ハードブレイカーにもマグマを噴出させるぐらいの爆薬が積み込まれている! マグマを噴出させれば、リーンボックスはお終いだ!」

 

 マネージャーは両手を広げて狂ったように笑って言う。

 

「お前まで死ぬんだぞ!?」

 

「別にいいさ! 私の思い通りにいかないならすべて壊してやる!」

 

 マネージャーは夢人を見ずに、頭上を見ながら言う。

 

「リーンボックスの奴らが死ねば、リーンボックスのシェアはすべてマジェコンヌのものだ! マジェコンヌ万歳!!」

 

 マネージャーに何を言っても無駄だと判断した夢人は黒いハードブレイカーに向かって駆け出そうとする。

 

「ちっ……!?」

 

 しかし、足をもつれさせて倒れてしまう。

 

「私が……!?」

 

 ナナハが撫子を構えて黒いハードブレイカーに向かって飛ぼうとするが、その前に黒いハードブレイカーを止める存在がいた。

 

〔……それ以上は進ません!〕

 

 ハードブレイカーがスリープモードから戻って右肩から黒いハードブレイカーにぶつかった。

 

〔……ふん!〕

 

 ハードブレイカーは黒いハードブレイカーを右肩に担ぎながら夢人達に向かって言う。

 

〔コイツは私が海まで運んで爆破させる〕

 

 夢人達はその言葉を聞いて驚く。

 

「な、何をバカなこと言ってんだ!?」

 

〔私の任務はお前達の無事を確保することだ〕

 

 ハードブレイカーはカメラアイを強く光らせて言う。

 

〔だから、コイツは私が対処する!〕

 

 それを聞いてリンダはハードブレイカーに向かって叫ぶ。

 

「テメェがそんなことする必要ねぇだろ!?」

 

 リンダの言葉にハードブレイカーは視線をリンダに向けながら応える。

 

〔……すまないな、リンダ……しかし、私は私であるためにこの任務を完遂させる!〕

 

 ハードブレイカーはそう言うと、足を屈ませてブースターをふかし始める。

 

〔……次に君が手にするハードブレイカーは私なんかよりも高性能にしておくんだ〕

 

 リンダは涙を流しながらほほ笑んで言う。

 

「バカ野郎……アタイはお前でいいんだよ、命令を必ず遂行しようとする、お前で」

 

 ハードブレイカーはリンダの言葉を聞いて満足そうに頷いて言う。

 

〔……ありがとう、リンダ……君が私を使ってくれたことを誇りに思う〕

 

 そう言って、ハードブレイカーはブースターを全開にして飛び出した。

 

「ハードブレイカー!?」

 

 夢人はハードブレイカーに向かって叫ぶ。

 

〔……さらばだ! 勇者! 女神候補生!〕

 

 ハードブレイカーはそれだけ言うと、ダンジョンの出口を飛び出して一直線に海へと飛んで行く。

 

 やがて、ハードブレイカーが海に出ると光が発生し、衝撃音が当たりに響き渡る。

 

「ハードブレイカー!!」

 

 リンダは涙を流してハードブレイカーが飛んで行った方へと視線を向ける。

 

「……ハードブレイカー」

 

 夢人も涙を浮かべてハードブレイカーが飛んで行った方を見て言う。

 

「……短い間だったけど、あばよ、相棒」

 

 夢人は悲しそうにつぶやいた。

 

「……ば、バカな……そんな、はずは……」

 

 マネージャーはふらふらと後ろに歩きながらつぶやく。

 

「わ、私は……私は、まだ……!?」

 

「待てよ」

 

 マネージャーがダンジョンの出口に向かって歩き出そうとした時に、リンダが制止するように低い声で言った。

 

「……テメェ言ったよな、リーンボックスの奴らが皆死ねばいいって」

 

 リンダは顔を俯かせながらマネージャーに近づく。

 

「ひ、ひぃっ!?」

 

 マネージャーはそれを見て後ずさる。

 

「アタイらマジェコンヌは確かにゲイムギョウ界を支配するためにシェアを奪ってる……けどな!」

 

 リンダはマネージャーの胸ぐらを掴んで勢いよく顔を上げた。

 

「誰もいない世界を支配しようなんざ思ってねぇんだよ!!」

 

 リンダはマネージャーを睨みながら叫び続ける。

 

「皆死んじまえばいいなんて言う奴はマジェコンヌにいらねぇンだよ!!」

 

「ひぃっ!?」

 

 マネージャーが顔を青くしながらリンダに怯えていると、リンダは男を突き飛ばして刀を地面に突き刺す。

 

「失せろ!! 二度とマジェコンヌ名乗んじゃねぇ!!」

 

「ひぃっ!? ごめんなさいっ!?」

 

 マネージャーは慌ててダンジョンの外へと一目散に駆け出していく。

 

「……ふんっ!」

 

 リンダはそれを睨みながら見ていたが、マネージャーが見えなくなると刀を地面から抜いた。

 

「……あれでいいのか?」

 

 夢人はリンダの後ろから尋ねる。

 

「……ああ、あれでいいんだよ」

 

 リンダは夢人に振り返りながら応える。

 

「あんな小悪党、勝手に野たれ死ぬさ」

 

「さすが、根っからの悪党は言うことが違いますな」

 

 リンダは顔を赤くして叫ぶ。

 

「うっせぇよ!」

 

 リンダは顔を赤くしたまま夢人から視線を外す。

 

「……リンダ」

 

 ナナハはリンダにゆっくりと近づいて呼びかけた。

 

「……んだよ?」

 

 リンダは頬を赤く染めたままナナハの方を向く。

 

「ありがとう、リンダ」

 

「だ、だから、何でそんなこと言うんだよ?!」

 

 リンダは慌ててナナハに言う。

 

 しかし、ナナハはほほ笑みながらリンダに言う。

 

「何度も言うよ……ありがとう、リンダ」

 

「い、言うんじゃねぇよ!?」

 

 リンダは何度もお礼を言われてまた顔を赤くしてそっぽを向く。

 

「あ、アタイは悪党で、テメェらの敵なんだぞ!?」

 

「でも、私はリンダのこと好きだよ」

 

 ナナハは右手を胸に当てながら自分の気持ちをまっすぐに伝える。

 

「なっ!? ば、バカなこと言ってんじゃねぇ!?」

 

 リンダはそう言うと、ワレチューに駆け寄って頭を掴み上げる。

 

「……あ、アタイらは敵なんだ!? 嬉しくなんてねぇぞ!? く、首を洗って待ってろよ!?」

 

「あ、頭を掴むなっちゅ!?」

 

 リンダは顔を真っ赤にして叫びながらワレチューを連れてダンジョンの外へと駆け出して行った。

 

「……行っちゃった」

 

「大丈夫さ」

 

 夢人は悲しそうにつぶやいたナナハの後ろから話しかける。

 

 ナナハは夢人を振り返りながら見る。

 

「あれは照れ隠しだからな……それにまた会えるさ」

 

「……そっか」

 

 ナナハははにかんで言う。

 

「それで、どうだった?」

 

 夢人はナナハの言葉の意味がわからずにきょとんとしてしまう。

 

「どうだったって?」

 

「決まってるじゃん」

 

 ナナハは丸で花が咲いたような笑顔で言う。

 

「私の運命を切り開く姿……キラキラしてたでしょ?」




という訳で、今回はここまで!
…いつの間にかこの作品の中でいちばん長い話になったよ
そして、真犯人ですが…見ての通り、ご都合主義です!
そんなのわかるわけないですよね
変に謎解き的な要素を入れようとした結果がこれだよ!
そのせいで無駄に文字数つかちゃってるし…
次回はライブイベントを予定しております!
リーンボックスに帰ってきた夢人君とネプギア達の会話
そして、ライブのシーンを楽しみにしておいてくださいね!
…てか、それって本編の続きじゃね?
とにかく、リーンボックス編の後日談的な話になる予定なのでよろしくお願いします!
それでは、 次回 「照星」 をお楽しみに!
…ん?サブタイの様子が…

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