超次元ゲイムネプテューヌ 夢のヒーローを目指して   作:ホタチ丸

39 / 184
はーい、皆さんこんにちわ!
実はこの話は昨日のうちにほとんど完成していたんで、この時間に投稿できちゃいました!
これなら、夜にはもう1話あげられるかも?!
今回、無実証明、夢人君のお薬タイムと長めになりましたが、楽しんでいってくださいね!
それでは、 熱い思い はじまります


熱い思い

夢人が岩を破壊する前、ワレチューとハードブレイカーはモンスターの群れと戦っていた。

 

「やるっちゅ! ハードブレイカー!」

 

〔承知! ハイクラッシュ!〕

 

 ハードブレイカーは右腕をフレイムフェンリルの腹に叩きこむ。

 

「キャウウウン!?」

 

 フレイムフェンリルはその衝撃で打ち上げられる。

 

 しかし、ハードブレイカーの後ろからもう一体のフレイムフェンリルが飛びかかってくる。

 

「ガオオオオン!!」

 

〔……くっ!?〕

 

 飛びついたフレイムフェンリルはハードブレイカーの左肩に噛みつくがどうにも様子がおかしい。

 

「ガウ……ガウ……!?」

 

 フレイムフェンリルの攻撃はハードブレイカーには効かず、自身の牙が欠けてしまった。

 

〔ふん!〕

 

 ハードブレイカーは体を回転することでフレイムフェンリルを振り落とす。

 

「キャウウン!?」

 

〔これでとどめだ!〕

 

 ハードブレイカーは無防備に地面に転がったフレイムフェンリルに向かって右腕を叩きこんだ。

 

〔ハイクラッシュ!〕

 

 ハードブレイカーの攻撃によって地面に罅が入る。

 

 フレイムフェンリルは断末魔の叫びも残せずに消え去る。

 

「……くっ!? まだまだいるっちゅよ!?」

 

 ワレチューも小型のモンスター、フレイムガール、フレイムボーイを相手に戦うが、一向にモンスターの数が減らない。

 

「どうしてこんなにモンスターが急に!?」

 

 ワレチューはモンスターがなぜ急に出現したかを考えていた。

 

「……それはオレ達がお前らの邪魔をするために用意したモンスターだからな」

 

 突然、ワレチューに声がかけられた。

 

「誰っちゅか!?」

 

 ワレチューは声のした方を見る。

 

 そこには、男が3人いた。

 

「……おいおい、そんなに睨むなよ」

 

 真ん中にいる茶髪の男がワレチューに苦笑しながら言う。

 

「まあ、状況的に仕方ありませんがね」

 

 右隣にいた金髪の男肩をすくめながら言う。

 

「僕達は味方だよ、ネズミさん」

 

 左隣にいた黄緑色の髪の少年はワレチューに対して有効を示すように大きく笑みを浮かべて言う。

 

「……味方?」

 

「そうだ……同じ犯罪神を崇拝する味方だ」

 

 茶髪の男がワレチューにほほ笑みながら言う。

 

「お前らは一体、何者っちゅか?」

 

「オレ達はユピテル……これからビックになる音楽グループさ」

 

 茶髪の男が右手の親指で自分の顔を指さして言う。

 

「オレの名前はシュンヤ」

 

 金髪の男が髪を掻き上げながら言う。

 

「俺の名前はエースケ、よろしく」

 

 最後に黄緑色の髪の少年が目を細めて笑いながら言う。

 

「僕はカケル、よろしくね、ネズミさん」

 

 全員が名乗り終わると3人はポーズを取り、シュンヤが言う。

 

「安心しろネズミ、オレ達ユピテルは犯罪神マジェコンヌを崇拝している仲間さ」

 

 ワレチューはそれを聞いて俯きながら尋ねる。

 

「……おいら達をはめたのはお前らっちゅか?」

 

 ワレチューの言葉を聞いて、エースケは肩をすくめながら言った。

 

「申し訳ない……本来ならあの男だけをはめられれば良かったのですが、あなた達まで巻き込んでしまいました」

 

 ワレチューはエースケの言葉に疑問を感じる。

 

「……狙いはアイツっちゅか?」

 

「そうそう、あのさえないの、確か勇者なんて呼ばれてるんでしょ?」

 

 カケルは右手で口を覆いながらこみあげてくる笑いをこらえずに言う。

 

「今時勇者なんて流行らないよね……しかも、あんな何の力もないダサオ」

 

 シュンヤがカケルの様子を見て苦笑しながら言葉を続ける。

 

「オレ達はアイツを陥れろって上から命令されたんでね……アイツには悪いことしたが、仕方ねえよな」

 

 ワレチューは肩を震わせながら言う。

 

「……お前らはそれだけのために船のエンジンルームを爆破したっちゅか?」

 

 ワレチューの言葉にカケルが面白いものを発見したかのように笑いながら言う。

 

「なになに? もしかして怒っちゃってる?」

 

 ワレチューは俯いていた顔を勢いよく上げて、3人を睨みながら尋ね続ける。

 

「答えろっちゅ! 何でエンジンルームを爆破する必要があったんちゅか!」

 

 ワレチューの言葉にエースケは苦笑してしまう。

 

「パフォーマンスですよ、パフォーマンス」

 

「……パフォーマンス……ちゅか?」

 

 エースケの言葉に呆然としてしまったワレチューにシュンヤが真剣な顔で言う。

 

「そうだ……オレ達ユピテルがメジャーデビューするためのな」

 

 シュンヤの言葉を聞いてワレチューは再び俯いてしまう。

 

 シュンヤはそれに構わず言葉を続ける。

 

「オレ達がメジャーデビューするためにはでかいことをしなきゃなんねえ……そのための第一歩があれだ」

 

「いい宣伝になったでしょ? ゲイムギョウ界中の話題をさらうニュースになったんですから」

 

「そうそう! これで僕達も有名音楽アーティストの仲間入りってね!」

 

 3人が笑いながら自分の夢を語るのを聞いて、ワレチューは顔を上げて3人を睨みながら叫んだ。

 

「エンジンルームが爆破したら大勢の人が死んでたっちゅよ!? それでもメジャーデビューなんて言ってるんちゅか!?」

 

 ワレチューの言葉にカケルは首をかしげながら言う。

 

「……何言ってるの? あんな花火程度の火薬でそんなこと起きるわけないじゃん?」

 

「そうですよ、まったく大げさですね」

 

 ワレチューはそれを聞いて愕然としてしまう。

 

「……さて、無駄話はここまででいいよな?」

 

 シュンヤがワレチューを見ながら言う。

 

「とっとと後ろで生き埋めになってる勇者くんを始末しないといけないんだ……そこどけよ」

 

 シュンヤが左手を振り払うと、モンスター達が岩に向かって攻撃をしようとする。

 

「……ハードブレイカー!」

 

〔承知!〕

 

 ワレチューはハードブレイカーに命令した。

 

 その命令に通り、ハードブレイカーは岩を守るように立ち塞がる。

 

〔……ぐっ!〕

 

 さすがに多勢に無勢でハードブレイカーの装甲に傷ができる。

 

「……どう言うつもりだよ」

 

 シュンヤがワレチューを睨みながら尋ねる。

 

 ワレチューは3人を睨みながら言う。

 

「お前らは味方じゃないっちゅ!」

 

 ワレチューは右手を3人に向けながら叫ぶ。

 

「お前らは悪党じゃない……外道っちゅ!」

 

「どう違うの? 僕、わかんないんだけど?」

 

「まさか悪党の先輩にそんなことを言われるとは思いませんでしたよ」

 

「コイツは傑作だ! まさか勇者くんと一緒にいることで正義の心とやらに目覚めたのかよ?」

 

 ワレチューは3人の言葉を聞きながらも睨みながら叫ぶ。

 

「おいら達は確かに悪党っちゅ! 今までだっていろんな悪事を働いてきたっちゅ! それでも……」

 

 ワレチューは叫び続ける。

 

「お前ら外道には劣るっちゅ!!」

 

 ワレチューの言葉を聞いて、シュンヤはため息をついてポケットから1枚のディスクを取り出す。

 

「……ふう、邪魔するなら仕方ないか」

 

 シュンヤはディスクを投げると、ハードブレイカーを攻撃していたモンスター達が黒く変色し始めた。

 

「ウイルスディスク!?」

 

 ワレチューはモンスターが汚染したことを目にしてディスクの正体に気付いた。

 

「もう1枚、行きますよ」

 

 エースケがもう1枚ディスクを投げた。

 

 やがて、光が収まると装甲の色が黒いハードブレイカーが現れた。

 

「ハードブレイカーまで!?」

 

 ワレチューは自分達の状況が今まで以上に不利になった現状を見て悔しそうに叫ぶ。

 

「どうすれば……どうすればいいっちゅか!?」

 

 ワレチューは冷や汗を流しながら考える。

 

〔……命令しろ〕

 

「えっ!?」

 

 ワレチューはハードブレイカーが言った言葉を聞いて驚いた。

 

〔命令しろと言ったんだ〕

 

 ハードブレイカーはモンスター達の攻撃を受けとめながらもワレチューに言う。

 

「な、何を言ってるっちゅか!?」

 

 ワレチューは信じられなかった。

 

 理由は、ハードブレイカーが何を命令されるのを望んでいるのかがわかっているからである。

 

〔現状、それ以上の策がない以上せざるをえまい〕

 

 ハードブレイカーは頭部のカメラをワレチューに向けながら叫ぶ。

 

〔早く命令を出すんだ!〕

 

 ワレチューは俯きながら命令を言う。

 

「……命令っちゅ、モンスター達の攻撃に耐え続けろっちゅ!」

 

 ワレチューの言葉を聞いて、ハードブレイカーは満足そうにしながら言う。

 

〔承知した! ……しかし〕

 

 ハードブレイカーは余裕を感じさせるように言葉を続けた。

 

〔別に倒してしまってもよいのだろう?〕

 

 

*     *     *

 

 

「……よく持つね、あのオンボロ」

 

 カケルはあくびをしながら目の前の光景を見た。

 

〔ぐっ、ぐわあああ!?〕

 

 ハードブレイカーの左腕が黒いハードブレイカーによってもぎ取られた。

 

「ハードブレイカー!?」

 

〔……まだ戦闘行動は続行できる!〕

 

 ハードブレイカーは諦めずに黒いハードブレイカーへと突撃する。

 

〔……選択……回避行動〕

 

 黒いハードブレイカーは機械的な音声で言葉を発すると、ハードブレイカーの攻撃を避けた。

 

〔……選択……捕獲〕

 

 黒いハードブレイカーはハードブレイカーのウイングを両手で掴む。

 

〔なっ!? ぐっ!?〕

 

 ハードブレイカーは逃げようとするが、黒いハードブレイカーはウイングを離さない。

 

「もういいッちゅ!? やめるっちゅ!?」

 

 ワレチューはハードブレイカーに向かって叫ぶ。

 

〔ぐっ、ぐおおおおお!〕

 

 ハードブレイカーは背中のブースターを全開にする。

 

〔?!?!?!?!〕

 

 黒いハードブレイカーはハードブレイカーの行動が理解できなかった。

 

 ハードブレイカーはブースターを全開にすることで、自身のウイングを破壊した。

 

 そんな様子を見てエースケは苦笑しながら言う。

 

「まったく、AIが誤作動でも起こしましたか? 自分のウイングを自分で破壊するなんて」

 

 ハードブレイカーはウイングがあった部分からオイルを噴出させながら言う。

 

〔……貴様らには理解できまい〕

 

 ハードブレイカーは黒いハードブレイカーを睨みながら言う。

 

〔私は一度、受けた命令を完遂できなかった〕

 

 ハードブレイカーはルウィーでロムとラムにやられたことを思い出しながら言う。

 

〔スペックでは劣らないはずの女神候補生に手も足も出ずにやられてしまった〕

 

「それはお前がスペック以下だったってことだろ? ダサすぎるぜ」

 

〔……確かにそうだろう〕

 

 ハードブレイカーはシュンヤの言葉を肯定した。

 

 しかし、そこに諦めの色はなかった。

 

〔だが! そんな私だからこそ!〕

 

 ハードブレイカーは残っている右腕を黒いハードブレイカーに叩きこむ。

 

〔?!?!?!?!〕

 

 黒いハードブレイカーはハードブレイカーが行った行動が理解できずにAIがショートしていた。

 

 そのため、ハードブレイカーの攻撃を避けられなかった。

 

 ハードブレイカーの攻撃は黒いハードブレイカーの頭部に直撃してカメラアイの破片が散らばる。

 

「なっ!?」

 

 シュンヤはハードブレイカーの思わぬ奮闘に驚いた。

 

〔命令の遂行は必ず果たして見せる!〕

 

「……は、ハードブレイカー」

 

 ワレチューは瞳に涙を浮かべながらハードブレイカーを見つめる。

 

〔……貴様らが私を破壊したいのなら覚悟しろ〕

 

 ハードブレイカーは右手を強く握りしめて宣言する。

 

〔貴様らが挑むのは絶対に折れぬ存在だ〕

 

 シュンヤ達はそれを見て息をのむ。

 

〔私をスクラップにしたければ……恐れずしてかかってこい!!〕

 

「ちっ!? さっさとそのオンボロを破壊しろ!」

 

 シュンヤがハードブレイカーの気迫に押され、慌ててモンスター達に命令を下す。

 

〔……命令……了解〕

 

 黒いハードブレイカーはブースターとウイングを利用して素早くハードブレイカーに接近する。

 

〔……選択……攻撃……頭部〕

 

 黒いハードブレイカーはハードブレイカーの頭部を左側から攻撃する。

 

〔ぐっ!? ぐううっ!?〕

 

 右腕しかないハードブレイカーは攻撃を防げずに吹き飛ばされてしまう。

 

 吹き飛ばされたハードブレイカーの後ろからフレイムガールやフレイムボーイ達の小型モンスターが攻撃する。

 

〔ぐおおおおおっ!?〕

 

 小型モンスターの攻撃がウイングから漏れ出していたオイルに引火して爆発を起こしてしまった。

 

 ハードブレイカーはその衝撃でうつぶせに倒れてしまう。

 

〔……選択……攻撃続行〕

 

 黒いハードブレイカーは倒れたハードブレイカーの頭部を何度も攻撃する。

 

〔ぐっ!? ぐうううっ!?〕

 

 ハードブレイカーは頭部のカメラアイの光を点滅させながら苦しそうに声を漏らす。

 

「……どうやら、彼の頑張りもここまでですね」

 

 エースケが笑いながら倒れているハードブレイカーに目を向ける。

 

「……そうだな、おい! もうそのオンボロは放っておいて岩の方を攻撃しろ!」

 

 シュンヤがそう命令すると、小型モンスター達は我先にと岩にくっつき、攻撃を開始する。

 

 黒いハードブレイカーもそれに続いて岩に向かって移動しようとするが……

 

〔……?〕

 

 黒いハードブレイカーの足をハードブレイカーが掴んでいた。

 

〔……行かせぬと言ったはずだ〕

 

 ハードブレイカーの体はすでにボロボロであったが、カメラアイは強い光を灯していた。

 

「うわぁ……なんでそこまで頑張るの?」

 

 カケルは目を見開いてハードブレイカーの行動が理解できずにいた。

 

〔……言ったはずだ……私は命令を遂行する〕

 

 ハードブレイカーは黒いハードブレイカーの足を握りつぶした。

 

〔?!?!?!?!〕

 

 黒いハードブレイカーは足を壊された影響で倒れてしまう。

 

「ウソ!?」

 

〔……例え、刀折れ、矢尽きるとも〕

 

 ハードブレイカーは右腕だけで体を起き上がらせながら言う。

 

〔最後まで戦い抜く!〕

 

 ハードブレイカーは体を起き上がらせることには成功するが、立つことができない。

 

「はっ、そんなボロボロの状態でどうやって戦うってんだよ?」

 

 シュンヤはハードブレイカーを見て笑いながら言う。

 

「それに勇者くん達の方もお終いだぜ?」

 

 シュンヤが岩の方に目を向けると、ワレチューが小型モンスターに押しつぶされて身動きが取れない状態であった。

 

「……ちゅー、悔しいっちゅ」

 

 ワレチューは体を動かしてモンスターの拘束から逃れようとするが、モンスターはワレチューを抑えたまま動かない。

 

「さて、俺達の仕事もこれでお終いですね」

 

「そうだね! 僕熱くて汗かいちゃったよ」

 

〔ぐっ!〕

 

 ハードブレイカーはどうにかして動こうとするが、体を動かせない。

 

「……さて、オンボロにはスクラップになってもらうか」

 

 シュンヤが右腕を振り上げて、黒いハードブレイカーに命令を出そうとした時、岩から大きな衝撃音が響いてきた。

 

 やがて、岩に小さな罅が入る。

 

 罅は次第に岩全体に広がりだした。

 

 大きな衝撃音とともに岩が木っ端みじんに砕け散った。

 

「なっ!?」

 

「うそっ!?」

 

「マジっ!?」

 

 シュンヤ達はそれを驚いて見ていた。

 

 やがて、発生していた砂煙が晴れると、そこには夢人が拳を突き出している姿で立っていた。

 

「いつだって、自分の手で切り開けるんだよ」

 

 そう言って、夢人は後ろにいるナナハに優しくほほ笑みかけた。

 

 

*     *     *

 

 

「お前!? どうやってあの岩を!?」

 

「……簡単なこった」

 

 夢人はにやりと笑って言う。

 

「岩を内側から凍らせたんだよ……熱せられていた岩が急激に冷えれば壊すのは簡単だろ?」

 

 夢人は自分の両手をブラブラと振りながら苦笑いをする。

 

「でも、岩が熱いのなんのって」

 

「無事だったっちゅか!?」

 

 ワレチューは岩が破壊された衝撃で小型モンスターの拘束が解け、夢人達に近づく。

 

「おう! お前の方は大丈夫じゃなさそうだがな」

 

 夢人はワレチューを見てからハードブレイカーに視線を移す。

 

「……確か、ハードブレイカーだったよな?」

 

〔そうだ〕

 

 夢人の言葉にハードブレイカーは短く応える。

 

「ありがとうな」

 

〔……礼など必要ない、私は私に下された命令を遂行するために戦うだけだ〕

 

 夢人の言葉にハードブレイカーは憮然と応える。

 

「……んで、テメェらは一体誰なんだ?」

 

「お前ら味方だよ」

 

 シュンヤはワレチューに向けたように友好的にリンダにほほ笑んだ。

 

「……味方だぁ?」

 

「本当はレディを巻き込むつもりはなかったんですよ」

 

 エースケの言葉を聞いて、リンダと隣にいたナナハが眉をひそめる。

 

「……誰?」

 

 ナナハの言葉を聞いてカケルが笑いながら応える。

 

「ごめんね、女神候補生のお姉ちゃん、僕達は女神の敵なんだよね」

 

 カケルの言葉に続いてシュンヤが言う。

 

「オレ達はユピテル……犯罪神マジェコンヌを崇拝する音楽グループだ」

 

 シュンヤの言葉を聞いて、ナナハもシュンヤ達を睨みだす。

 

「……んじゃ、テメェらがアタイらをはめたのか?」

 

「そうだ、オレ達が船の爆破騒ぎを起こした張本人さ」

 

 シュンヤが右手を胸に当てて言う。

 

「すべてはオレ達がメジャーデビューするために仕掛けた計画なのさ」

 

「本当はレディの味方なんですよ。だから、一緒にそこにいる勇者くんとそこにいる女神候補生を倒してくれませんか?」

 

 ナナハは驚いた表情でリンダを見た。

 

 リンダは俯き黙ったままで立ちつくす。

 

「お姉ちゃんだって、マジェコンヌの一員なんでしょ? だったら迷う必要なんてないよね?」

 

「……確かにそうだ」

 

 リンダは俯いたまま言う。

 

「アタイは犯罪組織マジェコンヌに所属している悪党さ」

 

 リンダの言葉を聞いてシュンヤ達はうれしそうに笑いながらリンダを見る。

 

 しかし反対に、隣のナナハは悲しそうな視線をリンダに向けていた。

 

 夢人とワレチュー、ハードブレイカーは静かにリンダの言葉を待っていた。

 

「卑怯なことして、汚いことして、相手騙して生きてきた悪党さ……だがな!」

 

 リンダは顔を勢いよく上げてシュンヤ達を睨みながら言う。

 

「アタイはテメェらみたいな外道と違うんだよ!」

 

 リンダは刀を取り出して、シュンヤ達に向けながら宣言する。

 

「テメェらは悪党として許しちゃおけない外道だ! アタイらの敵だ!」

 

 リンダの言葉を聞いて、シュンヤ達はため息をついて言う。

 

「……まったく、ネズミと一緒の答えかよ」

 

「何を勘違いしているのやら」

 

「本当、大げさなんだからさ」

 

 シュンヤ達の様子を見て、リンダはさらに強くシュンヤ達を睨みだす。

 

「ふざけてんじゃねぇぞ!」

 

 リンダの様子にシュンヤはため息をつきながら言う。

 

「だいたい、お前らがいくら吠えようと状況は変わらねえんだよ……例え、オレ達をここで倒してもお前らはゲイムギョウ界中で犯罪者として指名手配されてるんだ」

 

 シュンヤの言葉に悔しそうに顔をゆがめるリンダ。

 

「だから、おとなしくそこの勇者くんを……」

 

「……ちょっといいか?」

 

 シュンヤの言葉を遮って夢人が言葉を発した。

 

「なんだよ、今はお前のことなんて……」

 

「お前らは言ったよな? 俺達が犯人ではないと」

 

 夢人は俯きながら尋ねる。

 

 エースケはため息をつきながら応える。

 

「話を聞いていなかったんですか? 言いましたよ」

 

 カケルが夢人を笑って指さしながら言う。

 

「なに? 痴呆症でも患ってるの? ぷっ!」

 

 シュンヤは夢人を見下しながら言う。

 

「ああ、オレ達が犯人だって言ったのさ……それがどうしたんだ? 記憶力のない勇者くん?」

 

 夢人はシュンヤの言葉を聞いて肩を震わせる

 

「なんだ? 怒ったのか?」

 

 シュンヤがそう言うと、夢人は笑い始めた。

 

「プッ、クスクス、アハハハハハ!」

 

 夢人が笑いだしたのを見てシュンヤ達は夢人を睨みだす。

 

「……なに笑ってんだよ」

 

「プッ、フフフ……なに、俺達の無実の証明をしてもらってありがとうって思ったのさ」

 

 夢人はそう言って、とある岩の陰に向かって言う。

 

「カメラマンのフェル君! ちゃんと撮れてる?」

 

 夢人がそう言うと、岩の陰からカメラを担いだフェルが現れる。

 

「もちろん、ばっちりですよ、お兄さん」

 

 フェルはカメラを担いでいない方の手の親指を上げながら笑顔で応える。

 

「なっ!?」

 

 シュンヤ達は突然のフェルの登場に驚いてしまう。

 

「ちなみに、これ、全国放送ですから」

 

 フェルがシュンヤ達を撮りながら言う。

 

「それと、お兄さん!」

 

 フェルが夢人にNギアを投げる。

 

 夢人はNギアを受け取りながら、ある人物へと連絡を取る。

 

「もしもーし、現場のアイエフさん? そちらの様子はどうですか?」

 

〔はーい、現場のアイエフです、こちらもばっちりですよ〕

 

 アイエフは笑顔で夢人に応える。

 

〔こっちは予定通り、ユピテルの事務所を抑えたわ……アンタの予想通りよ〕

 

 アイエフの言葉に夢人は苦笑しながら言う。

 

「そっか……サンキューな」

 

 そう言って、夢人はシュンヤ達に視線を向ける。

 

「っで、どうする? メジャーデビューどころか、犯罪者デビューをしたユピテルの皆さん?」

 

 シュンヤ達は夢人の言葉に驚いて一歩後ろに下がりながら言う

 

「な、何で、こんなことに!?」

 

「どうして俺達が犯人だとわかったんだ!?」

 

 エースケの言葉に夢人はにやりと笑って応える。

 

「別にそんなことは今は関係ないさ」

 

 夢人はシュンヤ達を指さしながら言う。

 

「これで俺達は無罪放免、ってわけだ!」

 

 夢人の言葉にカケルが慌ててシュンヤを見ながら言う。

 

「どうしよう!? 僕達かなりやばいよ!?」

 

 シュンヤは舌打ちをして、顔を歪ませながら言う。

 

「こうなったらお前だけでも始末してやる!」

 

 シュンヤはそう言って、黒いハードブレイカーに命令を下す。

 

「おい! そこの勇者くんを始末しろ!」

 

〔……命令……了解〕

 

 黒いハードブレイカーはシュンヤの命令を聞いて夢人に向かって突撃する。

 

「おっと!?」

 

 夢人は慌てて地面を転がりながら突撃を避ける。

 

「……コイツはあんまり使いたくなかったんだが」

 

 夢人はポケットからB.H.C.の瓶から1粒取り出す。

 

「こんな時に役に立たない黒歴史が出るんじゃねえぞ!」

 

 夢人は目をつぶって一気にB.H.C.を飲み込んだ。

 

 

*     *     *

 

 

 夢人は俯いたまま立ち上がった。

 

「……なにをするのか知らないが、お前はここで……」

 

「天が呼ぶ!」

 

 シュンヤの言葉を遮って夢人が叫ぶ。

 

「地が呼ぶ! 人が呼ぶ!」

 

 夢人は右手を頭上に振り上げて叫び続ける。

 

「悪を倒せと俺を呼ぶ!」

 

 夢人が上げていた右腕を右斜め下に勢いよく振り下ろすと同時に、左手を胸の前に持ってきて握りこぶしを造る。

 

「聞け! 悪人ども!」

 

 夢人は顔を上げて目を開いて叫ぶ。

 

「俺は正義の味方! 御波夢人だ!!」

 

 夢人はそう言うと、自身の後ろに火の魔法を使って爆発を起こす。

 

 シュンヤ達だけでなく、リンダ達も急な夢人の変化に驚いてしまう。

 

「……今度はヒーローものですか」

 

 フェルはため息をつきながらもカメラを止めずに夢人を撮り続ける。

 

「この俺がいる限り、お前らの好きにはさせないぞ!」

 

 夢人は左手をシュンヤ達に向けて構えながら叫ぶ。

 

「ぐっ!? なんだそれは!?」

 

 シュンヤは夢人の異様な雰囲気に押されて体をのけぞらせながら言う。

 

「悪党に応える言葉はない!」

 

 夢人は問答無用に黒いハードブレイカーに向かって駆け出す。

 

〔……攻撃対象……接近〕

 

 黒いハードブレイカーは夢人が接近してきたことを確認して、右腕を振り上げる。

 

「トウ!」

 

 夢人は黒いハードブレイカーの行動を見ても構わずに、黒いハードブレイカーに向かってジャンプする。

 

「回転!」

 

 夢人は空中で1回転すると、両足をそろえて黒いハードブレイカーに向ける。

 

「ファイヤー!」

 

 夢人の言葉とともに両足に炎が纏わる。

 

「キィック!!」

 

〔?!?!?!?!?!〕

 

 黒いハードブレイカーは夢人の蹴り技を喰らって右腕を破壊されてしまう。

 

「スタッ」

 

 夢人は自分の口で効果音を口ずさむと、ハードブレイカーに近づいて言う。

 

「ハードブレイカー……」

 

〔……なんだ〕

 

 ハードブレイカーは夢人に視線を向けながら応える。

 

「まだ戦えるか?」

 

 夢人は左手をハードブレイカーに向けて差し出しながら言う。

 

〔……どういう意味だ〕

 

 ハードブレイカーは差し出された左手を見ながら戸惑ってしまう。

 

「俺と一緒に戦ってくれないか?」

 

 夢人は真剣な表情でハードブレイカーに言う。

 

「敵は強大だ……だが、俺とお前なら勝てる!」

 

 ハードブレイカーは夢人の言葉を聞いてためらいながら尋ねる。

 

〔だ、だが、私は、貴様の……〕

 

 夢人はハードブレイカーにほほ笑みながら言う。

 

「例え生まれは違えど、心にある思いは同じだ」

 

〔……心、だと?〕

 

 ハードブレイカーは夢人の言葉が信じられなかった。

 

 自分は機械だ。

 

 この思考もプログラムのルーティンワークにすぎないと。

 

「お前にも必ずあるはずだ……お前だけの誇りが」

 

〔……誇り〕

 

 夢人の言葉でハードブレイカーは思い出す。

 

 自分が誓った思いを……

 

〔……そうだ、私は絶対に命令を遂行する!〕

 

 ハードブレイカーは夢人の左手を握りながら宣言する。

 

〔私はお前達を守りぬき、モンスターを倒す! それが私に下された命令だ!〕

 

 ハードブレイカーのカメラアイの光が強くなる。

 

 夢人はそれを見て、左手を強く握り返して言う。

 

「今日は、俺とお前でダブルヒーローだ!」

 

 夢人の言葉とともにハードブレイカーは立ち上がる。

 

「茶番はここまでだ!! さっさと勇者くんとオンボロを片付けろ!!」

 

 シュンヤが慌てて黒いハードブレイカーに命令する。

 

〔……任務……了解〕

 

 黒いハードブレイカーが夢人達に突撃してくる。

 

「お兄さん! 後、1分です!」

 

 フェルが夢人にB.H.C.の残りの効果時間を叫ぶ。

 

「充分だ!」

 

 夢人はそう言って、黒いハードブレイカーに向かって駆け出す。

 

「俺が上から行く! お前は!」

 

〔ならば! 私は下からだ!〕

 

 夢人はハードブレイカーと短く会話すると、両腕を大きく振り回す。

 

「アイス、ストオオオオオム!!」

 

 夢人の回した腕から氷の渦が発生して黒いハードブレイカーを飲み込む。

 

〔?!?!?!?!?!〕

 

 黒いハードブレイカーは氷の渦から逃げることができずに、空中に飛ばされてしまう。

 

「トウ!」

 

 夢人は自分で発生した氷の渦に乗り、黒いハードブレイカーの頭上に躍り出る。

 

「ファイヤーキィィィック!!」

 

 夢人は黒いハードブレイカーの頭部に炎を纏った両足の蹴りをぶつける。

 

〔?!?!?!?!?!〕

 

 黒いハードブレイカーは抵抗できずに夢人の攻撃を喰らい、地面に向かって真っすぐ落下する。

 

〔これで、とどめだ!〕

 

 黒いハードブレイカーの真下から、ハードブレイカーはブースターを噴射させて飛び上がりながら右腕を振り上げる。

 

「ハードクラッシュ!!」

 

 ハードブレイカーの右腕が黒いハードブレイカーの胴体に炸裂する。

 

〔?!?!?!?!?!?!〕

 

 黒いハードブレイカーはダメージを受け過ぎてカメラアイを激しく点滅させる。

 

「〔ダブルヒーロークラッシュ!!〕」

 

 夢人とハードブレイカーが声をそろえて叫ぶ。

 

〔……ジ……ジ、ジ……ジ〕

 

 黒いハードブレイカーはカメラアイの点滅が緩やかになり、やがて光が消えてしまう。

 

 夢人達はそれを確認して黒いハードブレイカーから離れる。

 

 黒いハードブレイカーは受け身も取れずに地面にぶつかると、ウイングが粉々になって辺りに散らばった。

 

 夢人とハードブレイカーはそれを確認すると、フェルのカメラに向かってポーズを取りながら叫ぶ。

 

「〔成敗!!〕」




という訳で、今回はここまで!
やっと出せた!
ハードブレイカー!私は君を待っていた!
本当だったらもっと出番がある予定だったんだけど、こんな少なくなってゴメンネ
私ゲームやってるときに、その姿と死亡フラグを見てこれは使わねば!と思っちゃったわけですよ
それと、ユピテルはほとんどオリジナルになってしまいました
だって、こいつらwiki見ても情報が載ってないんだもん!
こいつらを出そうと決めた段階で情報を集め出したのに、一向に集まらないのでほかの作品のキャラクターをモデルに作りました
…ちなみに、事件はまだ解決していないんですよ?
夢人君たちの無罪は証明されましたが、犯人は捕まっていません!
ユピテルでもありませんよ、彼らもまた被害者です
ヒントは、特命課の人数とセーラー服、マジェコンヌ製のディスクです!
…まあ、できれば今日中に答えを出せたらいいんですけどね
それでは、 次回 「憧れ」 をお楽しみに!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。