超次元ゲイムネプテューヌ 夢のヒーローを目指して   作:ホタチ丸

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はーい、皆さんこんばんわ!
今日は予告通り、昨日より早く投稿できたぜ!
…早すぎる気もするがね
今回はナナハとリンダ視点が多めに用意されているのでお楽しみに!
それでは、 貫く信念 はじまります


貫く信念

 リンダを追って来た夢人とワレチュー

 

 ナナハを追ってきたネプギア達

 

 奇しくも夢人達は一同に会することができた。

 

「ナナハちゃん! 話しを聞いて下さい」

 

 教会からナナハを追ってきたネプギアは息を切らせながらナナハに言う。

 

 ナナハは夢人に向けていた視線をネプギアに移したが、その表情は無表情であった。

 

「アンタ! 話の途中で出てくんじゃないわよ!」

 

 ネプギアの後ろにいたユニもナナハに向かって言う。

 

「そうだよ! ちゃんとお話聞いてよね!」

 

「(めっ)」

 

 ユニの後ろからはラムとロムも走って来て言う。

 

「アンタら急に走り出すんじゃないわよ」

 

「お、追いついたですか?」

 

 アイエフ達も後ろからやって来た。

 

「……別に話すことないでしょ?」

 

 ナナハはそう言って、再び夢人へと視線を向けようとする。

 

「だから! 話しを聞けって言ってんでしょ!」

 

 ユニはナナハを睨みながらナナハに近づいていく。

 

「ま、待った!?」

 

 夢人は慌ててユニとナナハの間に立った。

 

「……へ?」

 

 ユニは夢人の姿を見て驚いて目を白黒させた。

 

 何故なら、夢人は女装したままであったからである。

 

「この子、今日は私達と大事な用事があるのよ! だから、今日のところはお引き取り願えないかしら!」

 

 夢人は冷や汗を流しながらユメ子ちゃんを演じる。

 

「……夢人さんですよね?」

 

 ネプギアが目を白黒させながら夢人を指さして言った。

 

「ち、ち、ち、違いますわ!? わ、私は夢人さんなんていう素敵な殿方ではございませんですことよ!?」

 

 夢人はネプギア達から視線を外して右手の甲を口に当てて言う。

 

「私はリーンボックス特命課のユメ子ですわ!」

 

 ユメ子がネプギア達に左手を向けて言う。

 

「……夢人さんですよね?」

 

「……夢人じゃない」

 

「……夢人お兄ちゃん(ぴしっ)」

 

「……夢人でしょうよ!」

 

 ネプギア達女神候補生達はそろって夢人に指をさした。

 

「……ば、バカな!? なぜこの完璧な変装がばれたんだ!?」

 

 夢人は体をのけぞらせて驚く。

 

「……アンタしかいないでしょ? そんなバカな格好しているのは、まったく」

 

 アイエフは左手で額を押さえてため息をつく。

 

「ど、ど、どういうことだよ、リンダ!?」

 

「ま、まさかアイツらがこんなに鋭いとは思っていなかったぜ」

 

 リンダも冷や汗を流しながら驚愕する。

 

「……わからない方がおかしい」

 

 ナナハは夢人とリンダを見ながら言う。

 

「そんなバレバレの変装で騙せるのはケイブくらいだよ」

 

 夢人とリンダはそれを聞いて、地面に両手をついてしまう。

 

「そ、そんな……」

 

「う、ウソだろ……」

 

 夢人とリンダが落ち込んでいると、ナナハが夢人の近くに屈んで言う。

 

「……ねえ」

 

「……なんだよ?」

 

「質問の続き、いい?」

 

 ナナハが首をかしげて夢人に尋ねる。

 

「あなたはどうして私を助けたの?」

 

 夢人はため息をついて応える。

 

「それはさっきも言ったろ?」

 

 夢人はナナハにほほ笑みながら言う。

 

「女の子を助けるのに理由はいらない、ってね」

 

「……私は普通の女の子じゃない」

 

 眉をひそめて答えるナナハに夢人は苦笑しながら応える。

 

「いーや、お前はどこにでもいる女の子だよ」

 

 夢人は立ち上がりながら言う。

 

「天才だとか女神候補生だとか関係なく、お前は普通の女の子だよ」

 

「違う!」

 

 ナナハは夢人を睨みながら否定する。

 

「私は普通の女の子じゃない!」

 

 夢人はそんなナナハにほほ笑む。

 

「……なんだ、そんな顔もできるんだな」

 

「……どういう意味?」

 

 ナナハは夢人を睨みながら尋ねる。

 

「なに、いっつも表情固めて我慢しているからさ」

 

 ナナハはその言葉を聞いて驚く。

 

「が……まん……? 私が……?」

 

 ナナハは自分の両手を呆然と見つめる。

 

「そうだ……そんな無理ばっかりしてたら壊れちまうぞ?」

 

 夢人はナナハにほほ笑みながら言う。

 

 ナナハは自然と一歩後ろに下がっていた。

 

「私は……私は……!」

 

 ナナハは夢人達に背を向けて駆けだす。

 

「ナナハちゃん!?」

 

「どこ行くのよ!?」

 

 ネプギアとユニはナナハに呼びかけるが、ナナハは振り向かずに走り去ってしまう。

 

「……しゃあねえな、行くぜ! リンダ!」

 

「な、何でアタイなんだよ!?」

 

 夢人はリンダに呼びかける。

 

 リンダはなぜ自分が声をかけられたのかわからず戸惑う。

 

「お前もナナハに言いたいことがあるんだろ? なら行くぞ!」

 

「お、おい!? 引っ張るんじゃねぇ!?」

 

 夢人はリンダの腕を引っ張りながら走り出そうとする。

 

「夢人さん、待ってください!!」

 

 ネプギアは夢人に呼びかける。

 

 夢人はそれを聞いて、立ち止ってネプギアの方を向く。

 

「どうした?」

 

 夢人は首をかしげながらネプギアに尋ねる。

 

「夢人さん……」

 

 ネプギアは左手を胸に当てて言う。

 

「自首してください!」

 

 ネプギアは悲しそうに夢人を見つめながら言う。

 

「……へ?」

 

 夢人はネプギアが言っている言葉の意味がわからず、呆然としてしまう。

 

「私達は夢人さんを信じています! だから、罪を償って自首してください!」

 

 ネプギアは瞳に涙を浮かばせて夢人に訴える。

 

「そうよ! 夢人! アンタはちゃんと自分の罪を認めて償いなさいよ!」

 

 ユニもネプギアの隣に立って夢人に言う。

 

「夢人お兄ちゃん、悪いことしちゃダメ(めっ)」

 

「そうよ! 悪いことしたらちゃんと謝らないとダメよ!」

 

 ロムとラムも夢人を指さしながら言う。

 

「お、お前らなあ……」

 

 夢人はネプギア達の言葉を聞いて泣きそうになりながら言う。

 

「まだ俺が犯人だと思ってんのかよ!?」

 

 夢人はネプギア達から信用されてないのかと思い、俯いてしまう。

 

「……なんというか、そのさ」

 

 リンダは俯いた夢人の肩に優しく手を置いた。

 

「元気出せよ」

 

「……リンダァ……」

 

 夢人は涙目でリンダを見る。

 

「……盛り上がってる所悪いんだけど」

 

 アイエフが困ったように前に出て言う。

 

「アンタには伝えなきゃいけないことが……」

 

「……わかったよ」

 

 夢人はアイエフの言葉を遮って言う。

 

「信用してないんだったら、それでいいよ!? 皆のバーカ!?」

 

 夢人はポケットからNギアを取り出して、アイエフに向かって投げる。

 

「ちょっ!? 危ないじゃない!?」

 

 アイエフはNギアをキャッチして言う。

 

「うわああああん!」

 

「離せってンだよぉぉぉぉ!?」

 

 夢人は泣きながらリンダを連れて走り去ってしまう。

 

「おいらも行くっちゅ!」

 

 ワレチューも夢人を追って駆け出す。

 

「夢人さん!? 待って!?」

 

 ネプギアが慌てて夢人を追おうとする。

 

「……ん? 待ちなさい、ネプギア!」

 

 アイエフはネプギアを呼び止める。

 

「どうしてですか!?」

 

 ネプギアは瞳に涙を浮かべてアイエフを睨みながら尋ねる。

 

「これを見なさい!」

 

 アイエフはNギアに写されている画面をネプギア達に見せながら言う。

 

 Nギアの画面には……

 

 

*     *     *

 

 

 なんだ……

 

 なんなんだ!?

 

 あの女装男は!?

 

 いきなり私のことを普通の女の子だと?

 

「ふざけるな!」

 

 私は街を走りながら女装男の顔を思い出す。

 

 私がどこにでもいる普通の女の子?

 

 ありえない!

 

 だったら!

 

 だったらなんで……

 

 ……私は捨てられたの?

 

 どうして皆私を特別扱いするの?

 

 どうして……

 

 どうして私は……

 

 ……生き返ったの?

 

 

*     *     *

 

 

 夢人達は変装を解いてナナハを探していた。

 

「どこ行ったんだよ、まったく」

 

 夢人は辺りを見回しながら言う。

 

「……おい」

 

 夢人の後ろからリンダが夢人を睨みながら言う。

 

「アタイも聞きたいことがある」

 

「なんだ?」

 

「なんだ? じゃねぇ!」

 

 リンダは夢人を睨みながら言う。

 

「なんでアタイを連れてきたんだよ!」

 

 夢人はそれを聞いてため息をつきながら応える。

 

「……もうわかってんだろ?」

 

 リンダが夢人を睨むが、夢人は構わず言葉を続ける。

 

「お前がナナハを意識しているからだよ」

 

「アタイが……アイツを……?」

 

 リンダは眉をひそめながら言う。

 

「そうだ……だって、お前ナナハの姿を見るたびに眉間にしわ寄せてるんだぜ?」

 

 夢人は自分の眉間を指で軽く押さえながら言う。

 

「そんなにナナハが気になるんだったら、スッキリさせないとな」

 

 夢人はリンダに笑いながら言う。

 

「ふざけんな!」

 

 リンダは胸ぐらを一気に掴んで叫ぶ。

 

「アタイがアイツを気にしてるわけないだろ! アタイはアイツのことが大っ嫌いなんだよ!」

 

 リンダは夢人を睨みながら言葉を続ける。

 

「そうさ! あんな奴どうなったって知ったこっちゃない! テメェらだってそうだ!」

 

 リンダは掴んでいる手にさらに力を込めながら叫ぶ。

 

「アタイらは敵同士なんだよ! 今は仲良しこよししてるかも知れねぇが、んなの幻想なんだよ!」

 

 リンダは俯きながら夢人を突き飛ばして言う。

 

「アタイらはテメェらをぶっ倒してゲイムギョウ界を支配すんだよ! それなのに……」

 

 リンダは顔を上げて叫ぶ。

 

「敵味方関係ないみたいに綺麗事言ってんじゃねぇよ!」

 

 リンダは瞳に涙を浮かばせて叫び続ける。

 

「綺麗事だけじゃ生きてけねぇンだよ! いい加減現実見やがれ!」

 

 リンダは叫び終えると、俯いて黙ってしまう。

 

 夢人はそんなリンダにほほ笑みながら言う。

 

「……何度でも言うさ」

 

 リンダは顔を上げて夢人を睨む。

 

 しかし、夢人はリンダにほほ笑みながら言う。

 

「綺麗事が一番いいんだ……だったら、俺はそれを目指すために何度でも言ってやる」

 

 リンダは夢人を睨んでいたが、やがてまた俯いてしまう。

 

「……大馬鹿野郎が」

 

 リンダは小さくつぶやいた。

 

 夢人はリンダを見ながらほほ笑み続ける。

 

「……お前ら何やってるっちゅか?」

 

 ワレチューは2人に呆れた顔で言った。

 

「なっ!? テメェいつから居やがった」

 

 リンダは顔を赤くして驚く。

 

「……今来たところっちゅよ、まったく」

 

 ワレチューは肩をすくめて言う。

 

「そんなことよりもリーンボックスの女神候補生の情報を持ってきたっちゅよ」

 

 ワレチューの言葉に夢人とリンダは真剣な顔になる。

 

「街の奴らの話では、街を出てアンダーインヴァースに向かったらしいっちゅ」

 

 夢人とリンダはそれを聞いて互いに顔を見合わせて頷いた後、ワレチューと共にアンダーインヴァースへと走って向かった。

 

 ……裏路地の陰で話を聞いていた男に気付かないまま。

 

 

*     *     *

 

 

 アンダーインヴァース

 

 元々はリーンボックス中に電力を供給するための地熱発電所として開発された場所である。

 

 地下からはマグマが噴出し、それを電力に変えることで莫大な電力を得ようと計画された。

 

 しかし、フレイムフェンリルなどの灼熱地帯に適応した強力なモンスター達が出現するようになり、施設は破壊されてしまい、今では危険なダンジョンとして立ち入りが禁止されていた。

 

「はあああああ!」

 

 そんな危険なダンジョンの中でナナハは撫子を振るってモンスターを退治していた。

 

 しかし、その顔には余裕がなく、険しい表情のまま暴れていた。

 

(私は……私は……!)

 

 ナナハは夢人の顔を思い出しながら、湧いて出てくるモンスターに怒りをぶつけていた。

 

(私は普通じゃない!)

 

 時には撫子を振るい、時には風の魔法で次々とモンスター達を倒していくナナハ。

 

(だって……)

 

 ナナハが自分を中心に撫子を振り払うと、ナナハを中心に衝撃波が発生して周りのモンスターを一瞬で倒した。

 

(……普通の女の子はこんなことできない)

 

 ナナハは周りにモンスターがいないことを確認すると、撫子をしまって上を見上げる。

 

(……私は……)

 

 ナナハは天井を悲しそうに見つめ続ける。

 

「ナナハ!」

 

 ナナハしかいなかったダンジョンにナナハのことを呼ぶ声が聞こえた。

 

 ナナハは慌てて声がした方を振り向くと、そこには夢人達がいた。

 

「……なに?」

 

 ナナハは夢人を無表情になって見ようとする。

 

 しかし、ナナハは無表情になりきれずにいた。

 

 ナナハは右目から涙を流していた。

 

「ナナハ、お前……」

 

 夢人はナナハが泣いていることに驚く。

 

 リンダは驚いている夢人の横を通り過ぎてナナハに黙って近づく。

 

「……?」

 

 ナナハはリンダが黙ったまま近づいてくる理由がわからず首をかしげる。

 

 やがて、リンダはナナハの目の前で立ち止り、その手をナナハに向かって振った。

 

「……え?」

 

 リンダがナナハの頬を叩いたのだ。

 

 ナナハは自分が叩かれた理由がわからず、呆然としてしまう。

 

 ナナハがリンダの方を向くと、リンダはナナハの胸ぐらを掴んで叫ぶ。

 

「甘えてんじゃねぇ!!」

 

 リンダはナナハを睨みながら叫び続ける。

 

「テメェが特別だろうが、そうじゃないかなんて関係ねぇ!」

 

 リンダはナナハの額に自分の額を押し付け叫ぶ。

 

「死んだように生きてんじゃねぇよ!!」

 

 ナナハはリンダの言葉を聞いて呆然としてしまう。

 

「……どうして」

 

「あん?」

 

 ナナハは俯いてつぶやく。

 

「……どうして……今更……そんな……」

 

 ナナハは肩を震わせてつぶやき続ける。

 

「……私を……置き去りに……1人にしたくせに……!」

 

 ナナハは顔を上げて泣きながら言う。

 

「私に……指図しないでよ!」

 

「……テメェ」

 

 リンダはナナハを離してつぶやく。

 

 ナナハは地面に座り込みながら泣き叫ぶ。

 

「皆私から離れて行ったくせに! 今更近づいてきて!」

 

 ナナハはリンダに向かって叫び続ける。

 

「私の中に入らないでよ!!」

 

 リンダはそれを聞いて黙ってナナハを抱きしめた。

 

「……え?」

 

 ナナハは抱きしめられたことに驚いてしまう。

 

「……テメェは1人じゃないだろ」

 

 リンダは優しくナナハの髪をなでながら言う。

 

「少なくともテメェに優しくした奴がいるから、生きてんだろ?」

 

 リンダはナナハにほほ笑みながら言う。

 

「だったら……だったら、ちゃんと生きろよ」

 

「生きる……?」

 

 ナナハはただ呆然とリンダを見続ける。

 

「そうだ……貰ったもん返せるくらい生き抜いてみろよ」

 

 リンダはほほ笑みながら言葉を続ける。

 

「悪党のアタイが言うのもおかしいが……恩返ししてやれよ」

 

 

*     *     *

 

 

 ……認めたくなかったんだ。

 

 コイツはアタイと同じだ。

 

 あの日、マジック様に拾われたアタイに……

 

 アタイはマジック様のためにマジェコンヌにいる。

 

 ……コイツも同じだ。

 

 コイツも女神に拾われたから女神候補生をしている。

 

 ……生みの親に捨てられた理由なんて絶対に違う。

 

 でも

 

 それでも……

 

 コイツはアタイだ。

 

 アタイがマジック様に会えなかった時のアタイだ。

 

 生きることを諦めていた頃のアタイだ。

 

 だからこそ、コイツを見ていると苛立つ。

 

 ……死んだ目をしているアタイを思い出す。

 

 アタイはそれを見たくない。

 

 それが理由だ。

 

 それ以外に……

 

 敵に……

 

 女神に味方する理由なんてないんだ。

 

 だから……

 

 今はコイツを救いたい。

 

 あの時の……

 

 アタイを救ってくれたマジック様のように。

 

 

*     *     *

 

 

 皆いなくなる。

 

 皆私から離れて行く。

 

 皆が私を1人にする。

 

 ……だったら、私は1人でいいと思っていた。

 

 ……でも、目の前の緑髪の女は私の中に入って来た。

 

 ……無理やりだった。

 

 私の言葉を無視して勝手に入り込んできた。

 

 正直、いやだった。

 

 苦痛だった。

 

 ……でも

 

 それでも、抱きしめられた体が温かい。

 

 ……どうして

 

 どうして優しくするの……

 

 こんなの知らないよ……

 

 どうして

 

 どうして……

 

 涙が止まらないの……

 

 胸が苦しいのに。

 

 離したくないの……

 

 

*     *     *

 

 

「……う、う、うわああああああああん!!」

 

 ナナハは顔を歪ませてリンダの胸に泣きついた。

 

「うわああああん!!」

 

 リンダはそんなナナハを優しく抱きしめてほほ笑む。

 

 夢人とワレチューもリンダ達を見ながら互いにほほ笑む。

 

「……これでもう大丈夫だな」

 

 夢人がそう言って2人から目を離した時だった。

 

 急に頭上から爆発音が聞こえてきた。

 

「なっ!?」

 

 ワレチューは爆発音に驚いて倒れてしまう。

 

「ちっ!?いったい何が……!」

 

 夢人は片手を地面について倒れないようにして、頭上を見上げる。

 

 そこには、リンダとナナハに向かって岩が降り注ごうとしていた。

 

「危ない!!」

 

 夢人は2人に駆けだした。

 

 2人は頭上から落ちてくる岩を呆然と見つめるだけで、動けないでいた。

 

「間に合え!!」

 

 夢人はリンダとナナハの上に覆いかぶさる。

 

「きゃあっ!?」

 

「なっ!?」

 

 ナナハは小さな悲鳴を上げ、リンダは自分達を庇うようにかぶさって来た夢人に驚く。

 

 岩は次々に三人に向かって降り注いでいった。

 

「……! アイツらは……!?」

 

 ワレチューは岩が落ちてきた影響で吹き飛ばされながらも岩が落ちた場所を睨む。

 

 やがて、砂煙が晴れるとそこにはいくつもの岩が重なっている光景が広がっていた。

 

「待ってるっちゅ! 今助け……!?」

 

 ワレチューが岩を退かそうと近づこうとしたが、近づけなかった。

 

「ガルルルルル!」

 

 岩の周りにフレイムフェンリルを中心とした灼熱地帯に生息しているモンスター達が溢れていたからだ。

 

「どうして急に!?」

 

 ワレチューは急に現れたモンスター達に驚く。

 

 しかし、ワレチューはすぐに冷静になり1枚のモンスターディスクを手にとって投げる。

 

 モンスターディスクからルウィーでロムとラムに両手を破壊されたハードブレイカーが現れた。

 

 ハードブレイカーの両手は新しくつけ直されており、以前よりもAIも進化されていた。

 

「行くっちゅ! ハードブレイカー!」

 

〔承知した〕

 

 機械音でありながらもどこか理知的な響きでハードブレイカーは応えてモンスター達に突撃していく。

 

 

*     *     *

 

 

 ……私、死んじゃったのかな。

 

 私は岩が落ちてくるのを避けられなかった。

 

 ……途中で誰かに押し倒された気がしたけど。

 

 私が目を開けると、そこには暗い空間が広がっていた。

 

 ……ここは死後の世界?

 

 違う。

 

 ここは私の知ってる死後の世界じゃない。

 

 かすかに光が見えている。

 

 それに……

 

 私の体を温かいものが包んでいる。

 

「平気か!? おい!?」

 

 私の隣から声が掛けられる。

 

 この声は……

 

「……うん、平気」

 

 さっきの緑髪の女だ。

 

 ……無事だったんだ。

 

「あとはコイツか……おい、平気なのか!?」

 

 緑髪の女は私の上に声をかけた。

 

 私の上?

 

 私は視線をそちらに向けた。

 

 そこには、女装男がいた。

 

 ……なんで

 

「……なんでまた助けたの?」

 

 私は信じられなかった。

 

 どうして

 

 どうしてこんなにも私に近づいてくるのか。

 

 私は女装男に何もしていない。

 

 むしろバカにしていたのに……

 

「……言ったろ」

 

 女装男は顔を上げて応える。

 

 額からは血が流れていた。

 

「女の子を守るのに理由なんていらないって」

 

 女装男はそう言って私達の上から退いた。

 

 どうやら、岩が重なり合って空洞が出来上がったようだった。

 

「……テメェ、額に傷が!?」

 

 緑髪の女は女装男の傷を見て慌てて近づいた。

 

「……これくらい平気さ」

 

 女装男は苦笑しながらそう言う。

 

 ……でも、違う。

 

 あれは我慢している顔だ。

 

「……動かないで」

 

 私は女装男に近づいた。

 

 額に手をかざして魔力を集中させる。

 

「ヒール」

 

 手をかざした場所から女装男の傷が治って行く。

 

 私だって簡単な治療魔法は使える。

 

「ありがとう、ナナハ」

 

 女装男は笑顔で私にお礼を言う。

 

 ……どうして

 

 どうしてこんなに……

 

「……テメェ」

 

 嬉しいんだろう。

 

 涙が止まらないんだろう。

 

「……ぐすっ……ぐすっ……」

 

 私は目を何度も手で擦る。

 

 しかし、涙は止まってはくれない。

 

「……ナナハ、ありがとう」

 

 女装男が私にまた笑顔でお礼を言う。

 

 ……言わないでほしい。

 

 何度も言われると止められなくなる。

 

「……さて、じゃあさっさとここから出ないとな!」

 

 女装男はそう言って立ち上がった。

 

「どうやって出るんだよ?」

 

「決まってんだろ? この岩、ぶちぬくぞ」

 

 女装男はそう言って岩に近づいて行った。

 

「んなことできるわけねぇだろ!?」

 

 緑髪の女の言うとおりだ。

 

 ましてや、女装男には絶対に無理だ。

 

 私は『変身』して岩を破壊しようと考えた。

 

 私は立ち上がって『変身』しようとするが、うまく立ち上がれなかった。

 

 ……腰が抜けていたのだ。

 

「お、おい!? テメェも無理すんじゃねぇ!」

 

 緑髪の女が私を支えて言った。

 

「……ありがとう」

 

 ……どうしてだろう。

 

 さっきまでとは違う。

 

 言われるのとは違う温かさを感じた。

 

「お、おう」

 

 緑髪の女は顔を赤く染めて私から視線を外した。

 

 ……ちょっと可愛いと思った。

 

「……お前らは下がってろよ」

 

 女装男はそう言って岩の前で拳を構えた。

 

「おりゃ!」

 

 女装男の拳が岩に当たると、肉が焼けるような音が聞こえてくる。

 

「くっ!? 熱い!?」

 

 女装男は岩の熱さに驚いていた。

 

 当然だ。

 

 ここは灼熱地帯で岩も常に熱せられている。

 

 ……やっぱり、私がやらなきゃ!

 

 私は自分の足で立とうとするが、どうしても立てない。

 

 ……なんでこんな時に!?

 

「……そこで待ってろって言ったろ?」

 

 女装男はそう言って私達にほほ笑む。

 

「岩が熱いってことは普通よりは壊しやすいはずだ……だったら!」

 

 女装男は何度も岩を殴った。

 

 私の耳には、何度も女装男の手の皮が焼ける音が聞こえてくる。

 

 両手がどんどん傷ついていくのがわかる。

 

「やめて!? もう、やめて!?」

 

 私は女装男に向かって叫んだ。

 

 ……もう、無理なんだ。

 

 私達はここで死んじゃうんだ。

 

「それ以上、やっても無駄だよ!? どうしてそんな無意味なことをするの!?」

 

 私は女装男が無意味に岩を殴り続けているとしか思えない。

 

 女装男は私にほほ笑みながら言った。

 

「……ナナハが前に言ったろ?」

 

 ……私が言ったこと?

 

「人の壁、運命って奴があるって」

 

 ……あの夜の話だ。

 

「絶対に乗り越えられない……そう言ったな?」

 

 女装男はそう言って笑いながら言う。

 

「だったらお前に見せてやるよ」

 

 女装男は両手に魔力を集中させて、自分の両手を凍らせた。

 

「運命なんてもんは……!」

 

 男が今まで殴っていた岩のくぼみに向けて右腕を大きく振りかぶり、全力で岩を殴った。

 

 今まではそんなことをしても岩はびくともしなかった。

 

 しかし、今までとは違う。

 

 殴った場所から罅が入って行く。

 

 やがて、罅が岩全体に広がり、目の前の岩が崩れた。

 

 ……信じられなかった。

 

 女装男が岩を破壊できたことが……

 

「いつだって、自分の手で切り開けるんだよ」

 

 そう言って、女装男は私にほほ笑んでいた。




という訳で、今回はここまで!
…ってか、書いてて思ったわけよ
何だこのリンダ回!
リーンボックス編に入ってからリンダばっかり書いてる気がするよ?!
…まあ、それには理由があるんですけどね
ナナハの転生の理由もあんまり書けないし、ちょっと消化不良?
そこは、ナナハ視点の時にいろいろと心情を書いていきたいと思います
とりあえず、ナナハは転生者って覚えておいてくださいね?
…さて、リーンボックス編も残すところ2話
やっぱり、分割した結果2話になりそうです
夢人たちに罪をかぶせた犯人がだれかを考えながら待っていてくださいね!
それでは、 次回 「熱い思い」 をお楽しみに!

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