超次元ゲイムネプテューヌ 夢のヒーローを目指して   作:ホタチ丸

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はーい、再びこんばんわ!
今日は寒いのにどうしてか腕が止まらない!
読者の皆さんは風邪を引かないように暖かくして作品を楽しんでくださいね!
そんなわけでもう1話完成したので投稿しちゃうよ!
それでは、 壁 はじまります




 1人の少女がいた。

 

 少女は膝を抱えて座りながら、うつろな目で地面を見続けていた。

 

 少女の髪はぼさぼさであり、顔にはいくつも殴られた痕があり、赤くはれ上がっていた。

 

 着ている物も服とは呼べない襤褸であった。

 

「……おい」

 

 そんな少女に声をかける人物がいた。

 

 少女は顔を上げてその人物を見上げた。

 

「……どうした?」

 

 声をかけた人物は少女を見下ろしながら尋ねる。

 

 少女はその問いに応えず、ただ見惚れていた。

 

 ……声をかけた人物の強い意志のこもった瞳ときれいな赤い髪に。

 

 

*     *     *

 

 

「ハア……ハア……ハア……」

 

 俺は走っていた。

 

 後ろから追ってくるあいつ等から逃げるために……

 

 

「ハア……ハア……こ、ここまでくりゃ……!?」

 

 俺が息を整えていると、近くの壁に1枚のカードが刺さった。

 

「わ、Y.R.カード!?」

 

 ……Y.R.カード

 

 最近、リーンボックス特命課に所属した奴らのイニシャルが描かれているカードだ。

 

 そして俺達、犯罪者にとって死刑判決に等しい意味を持つ恐怖の代名詞でもあった。

 

「……もう逃げられないぜ」

 

 俺が慌てて振り返ると、そこには緑色の髪をした女がいた。

 

「おとなしく捕まりな……そうすりゃ、少しは罪が軽くなるぜ?」

 

 女はそう言いながらも手に構えた警棒で肩を叩きながら近づいてくる。

 

 ……絶対に許す気がないだろ!?

 

 女の顔には歪んだ笑みが浮かんでいた。

 

 まるで、俺を追い詰めるのが楽しいとでもいうかのように……

 

「に、逃げ……!?」

 

 俺は動けなかった。

 

 ……何故なら俺の足が凍りついていたからだ。

 

「なっ!?」

 

 俺は凍りついた足を見てようやく足の感覚がないことに気付いた。

 

「逃がさないわよ」

 

 俺は正面を向いた。

 

 そこには、黒い髪を2つに縛っている女装した男がいた。

 

 その男の足は俺と同様に凍りつき、俺と男をつなぐように地面に氷の道ができていた。

 

「か、か、観念して、つ、捕まりなさい」

 

 男は震えながら俺を指さして言った。

 

 その顔色もだんだん青くなっていく。

 

 ……無理すんなよ。

 

 顔が青くなるくらい自分の足が冷たいのなら魔法を解けよ!

 

 その女装も痛々しくて見てられないんだよ!

 

 俺が目の前の男から視線を外すと、そこにはリーンボックス特命課のケイブがいた。

 

「あなたはもう終わりよ、おとなしくしなさい」

 

 ……俺はその言葉を聞いて観念して捕まることを決めた。

 

 そうしなきゃ、きっとあの女装男は魔法を解かないとわかったから……

 

 俺は最後に憐れみの視線を男に向けながら思った。

 

 ……無茶しやがって。

 

 

*     *     *

 

 

「お疲れっちゅー! 今日も見事な仕事ぶりだったちゅ!」

 

 夢人達が事務所に帰ると、ワレチューが夢人達を笑顔で迎えた。

 

「へへっ、アタイらにかかりゃ、あんな小悪党の1人や2人、楽勝さ」

 

 リンダは照れながら人さし指の中央で鼻先をこすり出す。

 

「本当、リン子達には感謝しているわ」

 

 ケイブは自分のデスクに座りながらほほ笑む。

 

「あなた達が特命課に所属して1週間……犯罪者の検挙率は先週の倍以上になったわ」

 

 ケイブは机の上に乗せられていた書類を見ながら言う。

 

「これも全部あなた達のおかげよ、ありがとう」

 

 ケイブがほほ笑みながらお礼を言う。

 

 リンダはさらに恥ずかしくなったのか、頬を赤く染めてそっぽを向く。

 

「な、何言ってやがんだよ……まったく」

 

 リンダはそう言いながらも頬が緩むのを止められない。

 

「……ねぇ?」

 

 事務所のソファーで寝ていたナナハはケイブ達に声をかける。

 

「どうしたの? ナナハ」

 

 ケイブは首をかしげながらナナハに尋ねる。

 

「……そっちの人はいいの?」

 

 ナナハはリンダの後ろを指さしながら尋ねる。

 

 そこには、毛布に包まって震えている夢人の姿があった。

 

 

*     *     *

 

 

 夢人達がリーンボックス特命課に所属して早1週間が経過した。

 

 夢人達はこの1週間、モンスター退治や犯罪者の逮捕、犯罪防止のためのチラシ配りなどの地味な仕事もこなしていった。

 

「ふん、ふーん、ふふーん」

 

 夢人は鼻歌を歌いながら笑顔で机を拭いていた。

 

 彼の心には喜びがあふれていた。

 

(勤労って素晴らしい!)

 

 勇者として召喚される前はニートであった彼は仕事をするという尊い行為に喜びを感じていた。

 

(今は違う世界にいる父さん、母さん……私、立派に働いているわ!)

 

 夢人はスカートのすそを翻しながら事務所の窓へと近づいていく。

 

「……本当、気持ちのいい天気だわ」

 

 夢人の顔は曇りのない笑顔であった。

 

「おっ、早いじゃねぇか」

 

 事務所のドアが開かれてリンダが入って来た。

 

「おはよう、今日も1日頑張りましょう」

 

「ああ、リーンボックスの平和を守るのはアタイらさ!」

 

 夢人とリンダは互いにほほ笑みながら決意する。

 

「……お前ら、目的を忘れてないかっちゅ?」

 

 リンダの後ろから呆れたようにワレチューがやって来て言った。

 

「「……あっ」」

 

 

*     *     *

 

 

「くそっ! 危うく目的を忘れるところだったぜ」

 

「ああ、これも完璧すぎる変装のせいだな」

 

 リンダと夢人は悔しそうに顔を歪めながら言う。

 

「……お前ら、ホントアホっちゅね」

 

「うっせぇンだよ!」

 

 リンダはワレチューを睨みながら言った。

 

「……まずはこの1週間で集めた情報を確認するか」

 

「……そうだな」

 

 リンダも真剣な表情になって言う。

 

「まず、アタイらのテロリスト容疑は晴れていない」

 

 リンダの言う通り、夢人達のテロリスト容疑は晴れていなかった。

 

「おいら達を犯人扱いしたセーラー服の男は病院に入院しているっちゅ」

 

 ワレチューもリンダに続けて言う。

 

「男は意識がはっきりしていなかったのか、おいら達を犯人だと言った記憶がないらしいっちゅ」

 

 夢人達を犯人だと言った男は、船での記憶を失っていた。

 

「……厄介だよな、こうなると男がウソをついていることも証明できないんだから」

 

 夢人はため息をついて言った。

 

 夢人達は何か打開策はないのか考える。

 

「……もう一度調べてみるっていうはどうかっちゅ?」

 

「調べるって、船をか? それとも、男を?」

 

「両方っちゅ……今の段階では何も決定的なことがわからないっちゅ」

 

 ワレチューの言葉を聞いて2人は頷いた。

 

「わかったぜ、アタイは男を調べる……ネズミ、テメェは……」

 

「おいらは船を調べに行くっちゅ、おいらの小柄な体型なら潜り込めるはずっちゅ」

 

 ワレチューは決意を込めた眼差しで言う。

 

「……あれ? 俺は?」

 

 夢人は1人だけ何もすることが思いつかず、自分の顔を指さしながら尋ねる。

 

「テメェはケイブの目をくぎ付けにしとけ……そうすりゃ、アタイらは動きやすくなるしな」

 

 リンダの言葉を聞いて夢人は頷いた。

 

「わかった……必ず、無実を証明するぞ!」

 

「「おう!」」

 

 

*     *     *

 

 

「戦闘訓練?」

 

 私は目の前にいるユメ子の言葉を繰り返した。

 

「はい! 私、今の足手まといのままの私じゃいたくないんです!」

 

 ユメ子は両手を握りしめて私に言った。

 

 ……確かに、彼女は強いとは言えない。

 

 彼女は火、土、氷の魔法は使えるが、どれも失敗して自分も被害を受けている。

 

 木刀での接近戦でもいまいちパッとしない。

 

 彼女は才能があるとは言えない。

 

 むしろ、ないだろう。

 

 私はナナハという天才を知っているからこそ断言できる。

 

 彼女は凡人だ。

 

 ……もしかすると、戦闘センスはそれ以下かも知れない。

 

 しかし、彼女の瞳に諦めの色はない。

 

 ナナハにはない物を彼女は持っている。

 

 ……ナナハにも同じものを持ってほしい。

 

 私は素直にそう感じた。

 

 もし、できることならと……

 

「お願いできないでしょうか?」

 

 目の前のユメ子が不安そうに聞いてくる。

 

 いけない。

 

 私が今考えなければいけないのはユメ子のことだ。

 

「ええ、いいわ」

 

 私はほほ笑みながら応える。

 

 私は彼女の向上心を嬉しく思うと同時に、ナナハのことを考えてしまう自分がいることを自覚してユメ子に申し訳なく感じた。

 

 

*     *     *

 

 

「脇が甘いわ!」

 

「くっ!?」

 

 リーンボックスの街からそんなに離れていない開けた場所。

 

 そこでは、夢人とケイブは互いに木刀で訓練をしていた。

 

 しかし、夢人はケイブを攻められずにいた。

 

「どうしたの! 守ってばかりじゃ、勝てないわ!」

 

 ケイブはそう言いながら、木刀を振るうスピードを上げる。

 

「ちっ! くっ!?」

 

 夢人は休むことなく続けられるケイブの攻撃を防御できなくなってきた。

 

 やがて、夢人の木刀はケイブによって空中に吹き飛ばされてしまった。

 

「終わりよ」

 

 ケイブは夢人の首に木刀を当てながら言う。

 

「……参りました」

 

 夢人は悔しそうに俯いて言った。

 

 その言葉を聞いて、ケイブは夢人の首から木刀を離す。

 

「ふうーっ」

 

 夢人は木刀が離れたことを確認した後、地面に仰向けに倒れてしまった。

 

「……はあ、はあ、はあ」

 

 夢人は体中に汗をかき、呼吸も荒くなっていた。

 

 ケイブはそんな夢人を見てほほ笑みながら言う。

 

「休憩にしましょう……今、タオルと飲み物を持ってくるわ」

 

 ケイブはそう言って、涼しい顔で夢人から離れて荷物を置いた場所に歩いて行く。

 

「……くそっ!」

 

 夢人は右腕で額の汗を拭う。

 

 その手は強く握りしめられていた。

 

(……俺、本当に成長しないな)

 

 夢人は今の自分の実力に苛立ちを感じていた。

 

 彼は目をつぶって思いだす。

 

 マジック・ザ・ハード

 

 マジェコンヌの幹部であり、ネプギア達の姉である女神達を倒した張本人。

 

 そんな相手にルウィーで勝てたのは奇跡だ。

 

 ……いや、勝てていない。

 

 マジックが勝手に帰って行っただけだ。

 

 夢人は左手も強く握りしめる。

 

(……俺は、何もできなかった)

 

 夢人はマジックに洗脳されそうになった時のことを覚えていなかった。

 

 彼女に魔力を流された所までは覚えているが、どうやって彼女の力から抜け出したのかがわからない。

 

(確か……あの時)

 

 夢人はマジックに洗脳されそうになった時のことを思い出す。

 

(……ウェへ、ウェへへへへ)

 

 夢人はあの時の妄想を思い出して、頬を緩める。

 

(……先輩後輩の関係っていいよなぁ……それに、娘がいるって言う設定もなかなか……)

 

 夢人はいつの間にか手の力を抜いていた。

 

(……って、そうじゃない!)

 

 夢人は勢いよく上半身を起こして両手で頬を強く叩く。

 

(強くなる! 俺がネプギアを守れるくらいに!)

 

 夢人の頭の中でネプギアが傷つきながらもマジックに向かって行く姿を思い出した。

 

(……もう、あんな顔をさせないために!)

 

 自分がマジックに捕まった時のようにネプギアに悲しい涙を流させないために……

 

「……少しは落ち着いたかしら?」

 

 ケイブがほほ笑みながら夢人に近づいてきた。

 

「あ、いや、はい!」

 

 夢人はケイブの方を慌てて見て応える。

 

 そんな夢人を見ながらケイブはほほ笑む。

 

「ふふふ、やる気は十分ね」

 

「もちろんです! 必ず、強くなります!」

 

 夢人はケイブに笑顔で応える。

 

 

*     *     *

 

 

 その頃……

 

「ここっちゅね」

 

 ワレチューは船に無事潜入できていた。

 

 ワレチューは小柄な体型を利用して、船の警備をしていた警備隊の目を掻い潜り、エンジンルームの前までやって来た。

 

「……あの時のままっちゅね」

 

 ワレチューは爆発のせいで焦げ付いてしまっているエンジンルームを見ながらつぶやいた。

 

「でも、おかしいっちゅね……どうして船をそのままにしているんちゅか?」

 

 ワレチューはいつまでも修理が開始されず、放置されている船に疑問を覚える。

 

 そして、ワレチューがエンジンに近づきながら辺りを探す。

 

「何かないっちゅかね……」

 

 ワレチューは壊れたエンジンを見上げて、自分達が突入した時の状況を思い出す。

 

「確か……あの男はあっちにいたっちゅよね?」

 

 ワレチューはセーラー服の男がいた場所に歩いて行く。

 

「……ん?」

 

 ワレチューは歩いている途中で『何か』を踏みつける。

 

「これは……!?」

 

 ワレチューは『何か』を拾い上げると、驚愕した。

 

 それはワレチュー達にとって見覚えのあるものであった。

 

 今まで何度も使ったことがあるもの。

 

 ……マジェコンヌ製のディスクの破片であった。

 

 

*     *     *

 

 

「……まずは今日の総評ね」

 

「……はい」

 

 ケイブは戦闘訓練を終わらせて地面に座って夢人に訓練の評価を言う。

 

 夢人はケイブと向き合う形で地面に座りながら緊張した面持ちで評価を待つ。

 

「一言で言ってしまうと、まだまだね」

 

 ケイブの言葉に夢人は悔しそうに顔をゆがめて俯いてしまう。

 

 ケイブはそんな夢人を見て苦笑しながら言う。

 

「別に悲観する必要はないわ」

 

 ケイブは優しく夢人の頬をなでながら言う。

 

「確かに、あなたの戦闘技術はまだまだよ……でもね」

 

 ケイブは夢人にほほ笑みながら言う。

 

「あなたが諦めない限り、あなたは強くなるわ」

 

 ケイブは夢人の顔を自分の胸に抱き寄せた。

 

「あなたは強くなるために必要なものを持っているわ……自信を持ちなさい」

 

 ケイブは目をつぶって夢人の髪を優しくなでる。

 

 一方、夢人はというと……

 

(お、お、おっぱいが!? や、やわらかい!?)

 

 ケイブの胸の柔らかさに顔を赤くしていた。

 

「け、ケイブさん……」

 

「何かしら?」

 

 顔を赤くした夢人にケイブはほほ笑みながら応える。

 

「お、私は本当に強くなれるんでしょうか?」

 

 夢人は不安そうにケイブに尋ねる。

 

 そんな夢人を見てケイブは優しく微笑みながら言う。

 

「ええ……今は弱いのかもしれないけど、必ず強くなれるわ」

 

 夢人はケイブの言葉を聞いて涙を流し始める。

 

「け、ケイブさん……」

 

 ケイブは泣き始めた夢人に困ったような笑みを浮かべて言う。

 

「明日からも毎日続けて行くわよ……できるかしら?」

 

 夢人はそれを聞いて、慌てて腕で目をこすると笑顔でケイブに応えた。

 

「はい! よろしくお願いします!」

 

 ケイブは夢人の言葉に満足そうに頷いて立ち上がる。

 

「私は先に戻るわ……お休みなさい」

 

 ケイブはそう言って街の方へと歩いて行く。

 

「……ケイブさん」

 

 夢人は立ち上がり、ケイブの後姿を見て拳を強く握りしめる。

 

「……絶対に強くなる」

 

 静かに自分の決意を言葉にする。

 

「バッカじゃないの?」

 

 夢人の後ろから声をかけられる。

 

 夢人は慌てて後ろを振り向くと、そこにはナナハがいた。

 

「……ナナハ?」

 

 夢人はまさか後ろからナナハが現れるとは思っていなかったので驚いてしまう。

 

「いくら努力したって無駄だよ」

 

 ナナハは夢人の様子に構わず、言葉を続ける。

 

「アンタがどれだけ努力しても才能がないんじゃ無理だよ」

 

 ナナハはただ無表情に淡々と夢人に言う。

 

 夢人はそんなナナハを見つめることしかできない。

 

「……ねえ、知ってる? 人にはね、絶対に乗り越えられない壁があるんだよ……どんなに頑張ったって、絶対に……ね」

 

 ナナハはそれだけ言うと、夢人の横を通り過ぎて街へ行こうとする。

 

「……わかんないだろ、そんなこと」

 

 夢人は横を通り過ぎるナナハを見ずに言う。

 

 ナナハはその言葉を聞いて立ち止る。

 

「俺がこれからどうなるかなんてまだわかんねえんだ……これから絶対に……」

 

「何言ってんの?」

 

 夢人が言葉を続けようとした時に、ナナハが振り返って言葉を遮った。

 

 ナナハは無表情のまま夢人を見ながら言う。

 

「現実見なよ、アンタは何やっても凡人以下を抜けられないんだよ……それがアンタの運命で、絶対に超えられない壁」

 

 ナナハはそれだけ言うと、振り返らず街へと歩いて行った。

 

 夢人は振り返り、ナナハの後姿を見ながら拳を再び握り締めた。

 

 

*     *     *

 

 

「……んで、ディスクがあったって本当かよ?」

 

 アタイは特命課のパソコンをいじりながら電話の相手、ネズミに尋ねる。

 

〔そうっちゅ……現場にマジェコンヌ製のディスクの破片が落ちていたっちゅ〕

 

 マジェコンヌ製のディスク

 

 普通の女神達が使うディスクとは違うディスクのため、アタイらマジェコンヌの連中ならすぐにわかる。

 

「……じゃあ、何か?アタイらは味方にはめられたってか?」

 

 アタイは怒りを抑えられなかった。

 

 アタイらは味方の罠に嵌ったのか!

 

〔……その可能性は高いっちゅ〕

 

 ネズミもアタイの言葉に同意したが、声は固い。

 

 ……ネズミも怒りを感じてるってことか。

 

「とりあえず、そのディスクはなんだったんだ?」

 

 アタイはディスクの種類が気になった。

 

 マジェコンヌ製のディスクは複数存在する。

 

 モンスターを使役するためのモンスターディスク。

 

 モンスターを汚染するウイルスディスク。

 

 ゲイムキャラの力を基に造る予定のディスクなんてものもある。

 

〔こんな小さい破片じゃわからないっちゅよ〕

 

 っち、使えねぇネズミだな。

 

「そうかよ……他には何かあんのかよ?」

 

〔……聞きたいことがあるっちゅ〕

 

「あん?」

 

 ネズミは声を固くしてアタイに尋ねた。

 

〔……もし、もしおいら達と同じマジェコンヌの奴が犯人だったら……〕

 

「……関係ねぇ」

 

 アタイはネズミ言葉を途中で遮った。

 

「相手が誰であろうと関係ねぇンだよ」

 

 アタイは電話の向こうにいるネズミを睨むように言った。

 

「この犯人はアタイ、いや、アタイらにとってやっちゃなんねぇことをした」

 

 ……そう、アタイらにとって最もやってはいけないことをしたんだ。

 

「だから、んなの関係ねぇンだよ! さっさと見つけてきっちり落とし前つけさせんだよ!」

 

〔ぷ、わかったっちゅ〕

 

 ネズミはアタイの言葉を聞いて吹き出しながら応えた。

 

 なに笑ってんだよ!

 

〔……結局、船でアイツが言っていたことを否定できないっちゅね〕

 

 な!? 聞いてやがったのか!?

 

 ずっと俯いてブツブツ言ってやがったくせに!?

 

「お、おい!?」

 

 アタイはネズミに文句を言おうとするが、電話は切られてしまった。

 

「ちっ!」

 

 アタイは舌打ちをして、パソコンの画面に視線を戻した。

 

 パソコンの画面にはセーラー服の男の簡単な情報が写っていた。

 

 いくら特命課といっても詳細な情報は得られないようだ。

 

 この情報もよくて履歴書レベルのものであった。

 

 ……当然、住所などは消されていたが。

 

「……何かあるはずなんだ、何か」

 

 アタイは注意深く情報を見続ける。

 

 そこで、アタイは先ほどのネズミの言葉を思い出した。

 

 マジェコンヌ製のディスク。

 

 一体、何のディスクだ?

 

 モンスターディスク?

 

 ……モンスターが出てないから違う。

 

 ウイルスディスク?

 

 ……汚染するモンスターもいないのに使う意味もない。

 

「くそっ! 何か……!?」

 

 アタイはパソコンの画面を睨んでいたが、ある項目が目にとまった。

 

「……音楽鑑賞?」

 

 男の趣味が音楽鑑賞であった。

 

 ……アタイは今まで何で忘れていたんだ!

 

 そうだ!

 

 もうひとつだけあったんだ!

 

「マジェコンヌ製ディスクの使い道!」

 

 マジェコンヌ製ディスクのもう1つの使い道。

 

 ……それは単純に音楽CDと同じように聴くというものだ。

 

 男がもし、ウイルスディスクを聴いたのなら……!

 

「男を洗脳できる!」

 

 そう、男を洗脳することが可能である。

 

 となれば、調べることは絞られる。

 

「リーンボックスの音楽アーティストは……!?」

 

 ビンゴだ!

 

 アタイはパソコンの画面を見てにやりと笑った。

 

「こいつが、黒幕!」

 

 ……パソコンの画面には長い水色の髪をした女性が写っていた。

 

『5pb.』

 

 こいつが犯人なのか!?




という訳で、今回はこれで打ち止め!
いやぁ、リーンボックス編にまでなると、夢人君もいろいろと経験してきたよね
…というより、よくここまで続けられたな
リーンボックス編はまだ続くんだけど、私どうしても活躍させたいキャラがいるんだよね!
皆さんはだれかわかるでしょうか?
私の作品ではかなり重要になってくるキャラクターの1人にする予定なので、早く彼を出したいんですよ!
…もう、答えはわかりますかね?
それでは、 次回 「容疑者は歌姫?」 をお楽しみに!

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