超次元ゲイムネプテューヌ 夢のヒーローを目指して   作:ホタチ丸

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皆さんこんばんわ!
昨日はゴメンネ!
実は作成中に寝落ちしちゃった…
と、とにかく今回からリーンボックス編に入ります!
全編通してオリジナル展開になる予定なのでお楽しみに!
それでは、 呉越同舟?リーンボックス はじまります


指名手配、勇者は犯罪者!?
呉越同舟? リーンボックス


 夢人達がルウィーの危機を救った翌日。

 

 夢人達は次の目的地、リーンボックスを目指すためにラステイションへと向かう列車の中にいた。

 

「……そう言えば、どうしてラステイションへ戻るんですか?」

 

 フェルがアイエフに尋ねた。

 

 アイエフは携帯をいじりながら応える。

 

「リーンボックスへ行くためには船を使うからよ」

 

 アイエフは携帯の画面をフェルに見せながら言う。

 

 携帯の画面にはゲイムギョウ界の地図が映されていた。

 

 その中にはリーンボックスへ向かう矢印が複数描かれていたが、ほとんどにバツ印が付いている。

 

「現在、シェアの低下の影響でリーンボックスに向かう飛行機も列車もストップしちゃってるのよ」

 

「どうしてなの?」

 

 フェルと一緒に携帯の画面を見ていた日本一が疑問に思い尋ねる。

 

「モンスターのえいきょうですの」

 

 アイエフの隣に座っていたがすとが応える。

 

「今のリーンボックスはシェアをほとんどうしなっているですの……ですから、強力なモンスターがうようよしているんですの」

 

 がすとが眉をひそめて言った。

 

「そう、強力なモンスターの影響で空路も陸路も利用できないのよ」

 

 アイエフがため息をついて言った。

 

「……あれ? でも、何で船は大丈夫なんですか?」

 

 フェルが疑問に思って尋ねる。

 

「ラステイションの……いえ、ユニのおかげかもね」

 

 アイエフが苦笑しながら言葉を続ける。

 

「あの子がラステイションのシェアを高く維持していたおかげで、ラステイションからリーンボックスへの海路には強力なモンスターが出ることがなくなったのよ」

 

「そうですの、だからラステイションはリーンボックスへ向かう唯一の方法があるですの」

 

 アイエフとがすとの言葉でフェルと日本一は納得した。

 

「……なんか大変そうだね、リーンボックス」

 

 日本一がため息をつきながら言った。

 

「……まあまあいち姉さん、ルウィーでだって楽したわけじゃないんですから」

 

「そうよ、残るゲイムキャラはあと1つなんだからぼやかないの」

 

 フェルとアイエフは日本一の態度に苦笑して応える。

 

「……あ、あの、アイエフさん?」

 

 ネプギアがアイエフの隣のボックス席から恐る恐る話しかける。

 

「なに? どうかしたの?」

 

 アイエフはネプギアの前の座席を見ずにネプギアに笑顔で応える。

 

「え、えっと、その……」

 

 アイエフの笑顔を見て、ネプギアは言い淀みながらも言葉を続ける。

 

「そろそろ許してあげても……」

 

「ダメよ」

 

 アイエフは笑顔から急に無表情に変えて応える。

 

「で、でも……」

 

 ネプギアの隣に座っていたコンパも何かを言おうとする。

 

「絶対にダメよ」

 

 アイエフは取り付く島もなく断る。

 

「こいつには罰が必要なの……だから、絶対に許さないわ」

 

 アイエフはネプギア達の前の席を冷ややかに見る。

 

 そこには、正座をして魔法で造り出した岩を抱いている夢人の姿があった。

 

 顔には青あざを造り、首から「私は勘違い男です」というボードまでつるされていた。

 

「で、でも、夢人さんだって悪気は……」

 

「ダメよ!」

 

 ネプギアが夢人を弁護するが、アイエフはそれでも許そうとしない。

 

「私はこいつに受けた辱めを許さない!」

 

 アイエフが顔を赤く染めて涙目になりながら叫んだ。

 

 

*     *     *

 

 

 時は遡り、ルウィー教会でゲイムキャラを直し終えた後のことであった。

 

〔……そうですか、あなた達のおかげで私は復活することができたのですね、ありがとうございます〕

 

「気にしないでください、当たり前のことをしただけなんですから」

 

 ネプギアはイスに座りながら言う。

 

 マジックとの戦闘ですべての力を使い果たしてしまったネプギアは起きてからも疲労のために椅子に座った状態であった。

 

〔それでもありがとうございます……しかし、私を直すことができるだなんて思いもしませんでした〕

 

「このぐらい錬金術ならかんたんですの、それに……」

 

 がすとはゲイムキャラの隣にいるもう1人のゲイムキャラに話しかける。

 

「力をはんぶんに分けてしまってもうしわけないですの、本来なら元のように1つになるはずなんですのに」

 

 がすとが申し訳なさそうに言った。

 

〔いえ、これで私の力をゲイムギョウ界のために使うことができます〕

 

〔そうです、私の力はいずれ回復するでしょうから、むしろ好都合です〕

 

 そう言って、片方のゲイムキャラが光出した。

 

 やがて、光が収まるとゲイムキャラであった存在が『ホワイトディスク』へと変化した。

 

〔……これで大丈夫なはずです、ネプテューヌの妹と勇者に力を分けることができます〕

 

 ゲイムキャラは満足そうに言った。

 

「……直ったところ申し訳ないのですが」

 

 ミナがゲイムキャラの前に出て言った。

 

「あなたには再度、キラーマシンの封印のためにブロックダンジョンに向かって欲しいのです……あなたを物のように扱って心ぐるしいのですが……」

 

 ミナが申し訳なさそうにゲイムキャラに言った。

 

〔構いませんよ、むしろ早くブロックダンジョンに戻してもらわなければなりません〕

 

 ミナの言葉をゲイムキャラが肯定しながら言った。

 

「なら、私達が……」

 

「大丈夫ですよ」

 

 ネプギアが立ち上がって言おうとしたが、ミナがそれを止めた。

 

「ルウィーの問題でこれ以上、あなた達に迷惑をかけるわけにはいきません」

 

 ミナがそう言うと、教会に備え付けてある内線の電話を使い始める。

 

「……はい、よろしくお願いします」

 

 ミナが電話をし終えてしばらくすると、教会の入り口からルウィーの警備隊がやってきた。

 

「ただ今参りました」

 

「ご苦労様です、では早速」

 

「はい」

 

 ミナが警備隊の人と言葉を交わすと、警備隊はゲイムキャラを連れて教会を後にした。

 

「彼ら、ルウィーの警備隊にゲイムキャラを運んでもらいます……ですから、あなた達は今はゆっくりと休んでください」

 

 ミナが優しく微笑みながら言った。

 

「助かるわ、実際にもう動くのもやっとだしね」

 

 アイエフが苦笑しながら応える。

 

「さすがのヒーローも今回は疲れたよ」

 

 日本一も椅子の背もたれに体重をかけながら応える。

 

「ありがとうです」

 

 パーティーの中であまり疲労していないコンパはミナの気遣いに笑顔でお礼を言った。

 

「いえ、あなた達には感謝してもしきれません」

 

 ミナもお礼を受け取りながらほほ笑む。

 

「……そう言えば、ロムとラムはどこにいるんでしょう? それに夢人さんの姿も見えませんが……」

 

 ミナが3人がいないことに気づいて首をかしげながら尋ねる。

 

「あれ? さっきまでそこで一緒に見てたのに?」

 

 ネプギアも首をかしげながら応える。

 

 その時、教会のドアが勢いよく開かれた

 

「たっだいまー!」

 

「ただいま」

 

「ただいま戻りました!」

 

 そこには笑顔で紙の箱を持っている夢人とロムとラムがいた。

 

「ろ、ロム? ラム?」

 

 いつの間にかいなくなっていた3人の急な登場に驚いてしまうミナ。

 

「もーっ! ダメじゃない! ちゃんとあいさつしなきゃ!」

 

「あいさつ大事(ぴしっ)」

 

 ロムとラムはミナの様子を不服そうに見て言った。

 

「そ、そうですね、お帰りなさい」

 

 ミナは2人の勢いに押されて慌てて言った。

 

「どこ行ってたんですか?」

 

 ネプギアは夢人に尋ねた。

 

「ああ、ゲイムキャラを直し終わった直後にケーキを買いに行ってたんだ」

 

 夢人は机の上に紙の袋を置くと、中からケーキを取り出した。

 

「ほら、約束しただろ? パーティーするって」

 

 夢人は笑顔で右手の親指をあげながら言った。

 

「わたしイチゴのショートケーキ!」

 

「モンブラン」

 

 夢人がケーキを取り出すと、ロムとラムは夢人に近づいてケーキのリクエストを始めた。

 

「慌てんなって人数分あるんだからよ」

 

 夢人は2人に笑顔でそう言った。

 

「……夢人、ちょっといいかしら?」

 

 夢人の後ろからアイエフが声をかけた。

 

「……ん? どうしたんだ?」

 

 夢人はアイエフに振り返りながら応える。

 

「そのケーキを買ったお金、どうしたの?」

 

 アイエフは俯きながら尋ねる。

 

 夢人はアイエフの質問を聞くと、冷や汗を流し始めた。

 

 そのまま夢人は無言のままアイエフから視線をそらした。

 

「……確かお兄さんって、お金全部使っちゃったよね?」

 

「そうですの、夢人のお金はぜんぶB.H.C.を買うためにつかったはずですの」

 

 がすとがフェルの質問に応える。

 

「あれ? でも、それならどうしてケーキが買えたの?」

 

 日本一が首をかしげながら尋ねる。

 

「……ぴぃー……」

 

 夢人は顔を青くしながら口笛を吹いて誤魔化そうとするが、上手く吹けずにいた。

 

「……お財布これ」

 

 そんな中、ロムがネプギアに持っていた財布を手渡す。

 

「これって……アイエフさんのお財布じゃなかったですか?」

 

 ネプギアが受け取った財布を見ながら言う。

 

「……そうよ」

 

 アイエフは俯きながら夢人に近づいていく。

 

「ま、待て!? 待ってくれ!? 話し合えばきっと……!?」

 

「このバカ!」

 

「げふっ!」

 

 夢人が言葉を続けようとするが、アイエフが夢人を睨みながら殴る。

 

 夢人はその衝撃によって仰向けに倒れてしまった。

 

「アンタ! 何やってんのよ! これは私の財布じゃない! それを勝手に使うなんて!」

 

 アイエフは倒れている夢人に馬乗りになり、胸ぐらをつかんで何度も揺らしながら言った。

 

「や、やめて、俺が、悪、かった、から……うぷっ」

 

 何度も揺すられて気持ち悪くなった夢人が言う。

 

「いいえ! 許さないわ! アンタには罰を受けてもらうわ!」

 

 アイエフは夢人のポケットの中に入っていたB.H.C.の瓶を取り出した。

 

「げっ!? それは!?」

 

 夢人がそれを見て顔を引きつらせる。

 

 その顔を見てアイエフが笑顔で言う。

 

「そうよ、アンタの恥ずかしい思い出の姿をネプギアに余すことなく見せてあげましょう?」

 

 アイエフはB.H.C.を1粒取り出して夢人の口の中に入れようとする。

 

「や、やめてくれ!? もう、それは……!?」

 

「うっさい!」

 

 夢人が騒いでいる隙に、アイエフが夢人の口の中にB.H.C.を放り込む。

 

「うぐっ!?」

 

 夢人は口の中に入ったB.H.C.を飲みこんでしまった。

 

 夢人は顔を俯かせたまま動かなくなってしまった。

 

 アイエフはその姿を見て、夢人の上から下りた。

 

「さあ、恥ずかしい姿をさらしなさい!」

 

 アイエフが笑顔でそう言うと、夢人は立ち上がって言った。

 

「……ふっ、まったく乱暴な子猫ちゃんだな」

 

 夢人がアイエフにほほ笑みながらそう言った。

 

「……は?」

 

 アイエフは夢人の変化を見て呆然としてしまった。

 

 だが、夢人はそんなアイエフの様子に構わず、アイエフに近づいて左手を握る。

 

「そんなに俺に構って欲しかったのかい?」

 

 左手を握られたアイエフは全身に鳥肌が立つ衝撃を受けた。

 

「ゆ、夢人さん?」

 

 椅子に座って様子を見ていたネプギアも夢人の変化に呆然としてしまっていた。

 

「さっきの黒歴史とは違いますけど、どういうことなんですか?」

 

 フェルが頬を引きつらせながらがすとに尋ねる。

 

「……おそらく、ちがう黒歴史をかいほうしたんですの」

 

 がすとが夢人を困ったように見つめながら言った。

 

「人に歴史ありですの、きっと夢人には複数の黒歴史があるですの」

 

 がすとが諦めたように肩をすくめて言った。

 

「ちょ、ちょっと!? 離しなさいよ!」

 

 アイエフが慌てて握られている左手を振りほどいて夢人から距離を取る。

 

「まったく、素直じゃない子猫ちゃんだな」

 

 夢人はアイエフにほほ笑みながら近づく。

 

「く、来るな!? あっち行け!?」

 

 アイエフは涙目になりながら夢人を睨んで言う。

 

 夢人はアイエフの様子に構わず、アイエフに近づいて腰を抱き寄せた。

 

「きゃ!?」

 

 アイエフは短く悲鳴を上げて夢人に抱き寄せられてしまう。

 

「こ、この離せ!?」

 

 アイエフは暴れて夢人から逃げようとする。

 

 しかし、夢人はアイエフを軽々と横抱きにしてささやく。

 

「いやよいやよも好きのうち……本当、素直じゃない子猫ちゃんだ」

 

 アイエフは夢人のほほ笑みを見て、体をビクッと震わせる。

 

「き、気持ち悪いわ!?」

 

 アイエフが夢人を殴ろうとするが、夢人はそれをほほ笑みながら避け続ける。

 

「この!? この!? なんで当たらないのよ!?」

 

 いつもなら当たるはずの攻撃が当たらず、アイエフは涙目になりながら叫ぶ。

 

「そんな照れ隠しも可愛いよ」

 

 夢人はアイエフの攻撃を避けながらささやく。

 

 アイエフは全身に鳥肌を立たせながら言う。

 

「やめて!? もう、やめてよ!?」

 

 アイエフは涙目になりながら顔を大きく振る。

 

「素直じゃない子猫ちゃんにはお仕置きが必要だな」

 

 夢人は目をつぶりながらアイエフの顔に自分の顔を近づける。

 

「やめ!? やめて!?」

 

 アイエフはその意味がわかり、顔を赤く染めて嫌がる。

 

 夢人の顔がアイエフに近づこうとした時……

 

「ストップです!」

 

「あぶっ!?」

 

 夢人はコンパに横から注射器で殴られて吹き飛ばされた。

 

「きゃ!?」

 

 アイエフは夢人が吹き飛んだ衝撃で床に落ちた。

 

「もう! ダメですよ! 夢人さん!」

 

 コンパは怒ってますって顔で夢人に指さしながら言う。

 

「嫌がってる女の子に無理やりなんてダメです!」

 

 コンパは夢人にそう言うが、夢人は倒れたまま反応しない。

 

「……夢人さん?」

 

 コンパは夢人の反応がないことを疑問に思い首をかしげる。

 

「……気絶してるよ」

 

 日本一が夢人を指でツンツンとつつきながら言う。

 

「……本当にゲイムギョウ界は大丈夫なんでしょうか?」

 

「……あ、あははは」

 

 ミナが不安そうに夢人を見ながら言い、フェルが笑ってごまかそうとする。

 

 

*     *     *

 

 

「だから、絶対に私は夢人を許さないわ!」

 

 アイエフは座席に座りながら夢人を睨んで言う。

 

「……アイお姉さんの自業自得のような気がするけど」

 

「何か言ったフェル?」

 

「……イイエ、ナニモ」

 

 フェルのつぶやきを聞いてアイエフはフェルを睨む。

 

「……と、とりあえず、リーンボックスってどんなところなの? アタシは行ったことないからよくわからないんだ!」

 

 日本一が大きな声を出して話題をそらそうとする。

 

「……そうね、リーンボックスは雄大なる緑の大地と呼ばれているわ」

 

 アイエフはため息をつきながら応える。

 

「だから、他の大陸に比べて豊かな自然とクリーンなエネルギー開発が進められているわ」

 

 アイエフは携帯に目を落としながら応える。

 

「何でも昔は地熱発電をしていたみたいだけど、今では風力発電や太陽光発電とかで他の大陸に比べてエネルギーがある大陸ってところね」

 

 アイエフはそう言って携帯を閉じる。

 

「そう言えば、リーンボックスに女神候補生はいるんですか?」

 

 ネプギアがアイエフに尋ねる。

 

「……一応いるらしいわ」

 

 アイエフが眉をひそめながら言う。

 

「え?」

 

 フェルはアイエフの言葉に驚いてしまう。

 

「どうかしたの?」

 

「い、いえ、何でもありません」

 

 隣にいた日本一がフェルに尋ねるが、フェルは慌てて応える。

 

(おかしい、確か女神グリーンハートには本来、妹がいないはずなのに……)

 

 自分の知っている情報と違うことにフェルは驚きつつも俯きながら考える。

 

(って、ダメだダメだ! もう、ボクはこの世界で生きていくと決めたんだ!)

 

 フェルはそう考えて首を左右に振る。

 

「でも、その女神候補生もやっかいな奴なのよ」

 

「そうなんですか?」

 

 アイエフの言葉にコンパが疑問に思い尋ねる。

 

「そう、その女神候補生を一言で言っちゃうとグータラなのよ」

 

「ぐ、グータラなんですか?」

 

 ネプギアは自分と同じ女神候補生がグータラって言われるとは思わなかったので目を白黒させて驚いてしまう。

 

「そう、実力はあるらしいんだけど、やる気がないらしいのよ」

 

 アイエフがため息をついて言う。

 

「女神の自覚がないのか、女神の仕事をほとんどせずにいるみたいなの」

 

「女神が女神の仕事をしてないの!?」

 

 日本一もその言葉に驚いてしまう。

 

「そうよ、ロムやラムのように小さいわけじゃないのに仕事も最低限のことしかしてないらしいのよ」

 

「……ど、どんな人なんだろう」

 

 ネプギアはまだ見ぬリーンボックスの女神候補生を想像して不安そうにつぶやいた。

 

 

*     *     *

 

 

「ったく、何でまたテメェと一緒の仕事なんだよ」

 

 リンダは愚痴をこぼしながら船の外の景色を見ていた。

 

「しょうがないっちゅ、残るゲイムキャラはリーンボックスだけなんちゅから」

 

 リンダの隣にいたワレチューもいやそうな顔をして応える。

 

「あの女神候補生達よりも先においら達でゲイムキャラを確保しなきゃいけないっちゅ」

 

「わかってんだよ、アタイだってマジック様のために頑張らなきゃいけねぇンだからよ」

 

 リンダがそう言ってため息をついた。

 

「またマジック様っちゅか?」

 

 ワレチューが呆れながらリンダを見上げる。

 

「当たり前だろ? 今のアタイがいるのはあの人のおかげなんだからよ」

 

 リンダは船の外の景色を眺めながら言う。

 

「ん?」

 

 リンダが船の外の景色を眺めていると、見知った人物達を見つけた。

 

「急ぎなさいよ! あれに乗り遅れたら、次の便は明日よ!」

 

「まってほしいですの! がすとはそんなに早く……」

 

「い、急がないと!」

 

「ま、待ってくださいです!」

 

 夢人達が慌てて船に乗り込もうとしているのが見えた。

 

「お兄さんも早くしてください!」

 

「夢人さん! 急いでください!」

 

「ま、待ってくれ、足のしびれが……」

 

 夢人は足のしびれを訴えて上手く走れていなかった。

 

「……何やってんだあいつら」

 

 リンダは呆れながらそれを見ていた。

 

「この声は!? こんぱちゃん!? 愛しの天使こんぱちゃんっちゅ!」

 

 ワレチューは急いで船の窓によじ登り窓の外を見た。

 

「急ぐっちゅ! こんぱちゃん! そして、愛のクルージングを楽しむっちゅ!」

 

 ワレチューは目をハートの形に変えて叫ぶ。

 

「うっせんだよ! 耳元で叫ぶな!」

 

 リンダはワレチューを鬱陶しそうに窓からどけようとする。

 

「こ、こうなったら!?」

 

 夢人は足に氷の魔法を使って船まで滑ろうとする。

 

 氷の魔法

 

 本来であるなら鋭い氷の刃などを造りだしたり、ロムの魔法のように氷の渦を造り出せる。

 

 しかし、夢人はそんなことできない。

 

 夢人は自分の両足を凍らせることで勢いよく床を滑って船に乗ろうとする。

 

「いやっふ―!」

 

 夢人は足の冷たさをごまかすように大声で叫びながら船へと滑り乗る。

 

「夢人!?」

 

「夢人さん!?」

 

 アイエフとコンパは自分の横を滑り去る夢人に驚いてしまう。

 

「お先に!」

 

 夢人は足の感覚がなくなりながらも応える。

 

「そろそろ、出向いたし……」

 

「待った、待った!」

 

 船の乗務員が船の扉を閉めようとした時、夢人が船の中に滑り込むことに成功したが……

 

「ぎゃふ!?」

 

 夢人はその勢いのまま船の壁にぶつかる。

 

「あたたた……何とか乗れたな」

 

 夢人は氷の魔法を解きながら立ち上がる。

 

「何とか間に合ってよかったな、ネプギア……?」

 

 夢人は自分の後ろにいるであろうネプギア達に話しかけようとしたが、後ろには乗務員が船の扉を閉めている姿しか見えなかった。

 

「……へ?」

 

 夢人は慌てて扉についている窓に近づいて外を見る。

 

 そこには夢人に向かって叫んでいるネプギア達の姿があった。

 

「夢人さん!?」

 

「何やってんのよ!?」

 

 夢人は現状を理解して叫んでしまう。

 

「俺1人だけ!?」

 

 こうして、夢人は1人だけ先にリーンボックス行きの船に乗ってしまった。

 

 ……リンダやワレチューと共に。




という感じで終わり!
またもや夢人君が単独行動となりました
まあ、こうしないといろいろなキャラと絡ませられないからね(おい!)
リーンボックスの女神候補生は転生者です
彼女の設定は一番考えるのを苦労しました
だって、女神たちっていろいろな属性があるでしょ?
ツンデレとか優等生とか…
その中で個性をつぶさせないようにするのは難しいんですよ
…まあ、彼女のことは登場してからにしましょう
それでは、 次回 「勇者、全国指名手配」 をお楽しみに!
…え?

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