超次元ゲイムネプテューヌ 夢のヒーローを目指して   作:ホタチ丸

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皆さん、こんばんわ!
今回は活動報告にも載せておりましたが…
ついに、夢人君が無双します!!!
登場してからここまで苦節25話、長かったです!
それでは、 切り札はB.H.C. はじまります


切り札はB.H.C.

 夢人はモンスターに駆けだした。

 

 ロムとラムが互いに涙を流しながら抱き合っている。

 

 やっと、2人の関係が元に戻ったのだ。

 

 それを邪魔するモンスターを倒すために、夢人は木刀をモンスターへと振り下ろす。

 

 しかし、振り下ろして木刀はモンスターの素早い動きによって避けられてしまった。

 

「くそっ!」

 

 夢人は何度もモンスターに木刀を振るうが、すべてが避けられてしまう。

 

 モンスターもただ避けるのではなく、夢人の隙を狙っていた。

 

「……ならこれでどうだ!」

 

 夢人は木刀をモンスターめがけて投げつけた。

 

 しかし、それもモンスターに簡単に避けられてしまった。

 

「今だ!」

 

 モンスターが避けた後に止まった隙をついて、夢人はモンスターに抱きつくようにしがみついた。

 

「捕まえた!」

 

 モンスターは何度も体を振って、夢人を落とそうとする。

 

 夢人はモンスターから落ちないようにしがみつきながら叫ぶ。

 

「喰らえ!」

 

 夢人は魔力を集中させて、地面から石柱を造り出した。

 

 土の魔法

 

 ラステイションのゲイムキャラの力によって、夢人が新しくつかえるようになった魔法である。

 

 しかし、火の魔法と同じく成功したことはない。

 

 本来であれば、造り出した岩を相手にぶつけることができるのだが、夢人は岩を動かすことができない、岩を宙に浮かせて造り出すと造り出したまま浮いている状態になる。

 

 また、地面から石柱を造り出すこともできるが、夢人は自身の半径1メートル以内の場所にしか造り出すことができないでいた。

 

 夢人はその土の魔法を使った。

 

 夢人はモンスターにしがみついているため、石柱はモンスターを打ち上げるように造り出した。

 

「くっ! もういっちょ!」

 

 夢人は石柱が当たる衝撃で振り落とされそうになりながらも、モンスターに何度も石柱を造り出し当てた。

 

 やがて、モンスターは光となって消えた。

 

「うお!?」

 

 モンスターが急に消えたことに驚いて、しがみついていた体制のまま落ちる夢人。

 

「痛っー!?」

 

 夢人は自分で造り上げた石柱に顔をぶつけてしまった。

 

「夢人!?」

 

「夢人お兄ちゃん!?」

 

 痛みのあまり転がっていた夢人にラムとロムが近づいてきた。

 

「大丈夫なの!?」

 

「……平気(うるうる)?」

 

 ラムとロムとも涙目になりながら夢人に尋ねた。

 

 夢人はそんな2人を安心させようと笑いかける。

 

「大丈夫だって! これくらいいつものことだしな」

 

 夢人は右手の親指を上げて無事なことをアピールする。

 

「もう、あんな魔法で無茶しないでよ!」

 

「……無茶ダメ(めっ)!」

 

 ロムとラムはそんな夢人を指さしながら注意する。

 

 そんな2人の様子に夢人が嬉しそうにほほ笑む。

 

「……2人とも、もう大丈夫なんだな」

 

 夢人の言葉を聞いて、ロムは恥ずかしそうに俯き、ラムは目線を上にそらした。

 

「……うん、わたしとラムちゃん、もう平気(てれてれ)」

 

「ま、まあ、アンタには感謝してるけどね」

 

 夢人はロムとラムの様子に笑みを深めて立ち上がろうとした時、手に何かが当たるのを感じた。

 

「これは……」

 

 夢人はそれを拾い上げた。

 

「……それ『データニウム』!」

 

「やっと見つけたじゃない!」

 

 ロムとラムは『データニウム』を見つけたことで嬉しそうに笑う。

 

「よし! 一度教会に戻ってゲイムキャラを……」

 

「待ちやがれ!」

 

 夢人が教会に帰ろうと提案しようとした時に、夢人の声を遮ってリンダが現れた。

 

「……また毎度毎度似たようなタイミングで出てくるな」

 

 夢人はリンダを呆れながら見て言った。

 

「うっせえんだよ! んなことより、テメェらだけなのは好都合だぜ!」

 

 リンダはポケットからモンスターディスクを夢人達に投げつけた。

 

 光の中からキラーマシンに似た機械的なモンスターが現れた。

 

「な!? キラーマシン!? どうして!?」

 

 夢人はモンスターを見て驚いた。

 

 リンダはその様子を見て笑いながら言う。

 

「こいつはハードブレイカーさ! キラーマシンを参考にマジェコンヌで開発したモンスターなんだよ!」

 

 リンダは刀を夢人達へと向けて言う。

 

「命令を聞かないキラーマシンなんかより、ずっと扱いやすいぜ! やれ、ハードブレイカー!」

 

〔……了解〕

 

 ハードブレイカーはその声に反応して夢人達へと向かってくる。

 

「くっ……!?」

 

 夢人は立ち上がろうとしたが、キラーマシンからの攻撃と先ほどのモンスターとの戦闘でうまく立ち上がることができず、ふらついてしまう。

 

「……大丈夫」

 

「アンタはそこで見てなさいよ」

 

 ロムとラムはふらついた夢人の前に立って言った。

 

「ロム? ラム?」

 

 そんな2人を不思議そうに見る夢人。

 

「なんたって、わたし達2人がそろえば……」

 

「……最強(きりっ)!」

 

 2人は手に持っていたステッキを互いにぶつけた瞬間、2人を中心に光の柱が生まれた。

 

 

*     *     *

 

 

 力が湧いてくる。

 

 さっきまで辛くて泣きそうだったのがウソのようだ。

 

 ……ロムちゃんが隣にいる。

 

 それだけでわたしは戦える。

 

 ドクン、ドクン、ドクンと、またわたしの心臓が大きく動いている。

 

 でも、さっきまでとは違う。

 

 温かい……

 

 辛くて、痛くて、止まってしまえばいいと思っていたのに……

 

 今は止まらないでほしい。

 

 ずっとこのままでいてほしい。

 

 そう思えるくらい心が温かいよ。

 

 ……夢人の言った通りだ。

 

 ここが温かくて嬉しいよ。

 

 ロムちゃんも同じ気持ちかな?

 

 ……聞くまでもないわよね

 

 だって

 

 わたし達は……

 

 

*     *     *

 

 

 ……嬉しい。

 

 ラムちゃんとまた一緒に居られることが。

 

 あの時、わたしはラムちゃんを傷つけたのに……

 

 ラムちゃんはずっとわたしを守ってた。

 

 だって、お姉ちゃんが捕まっているのを聞いて、わたしはすごく悲しくなったから……

 

 わたしが傷ついてしまわないようにラムちゃんは守っていてくれたんだ。

 

 ……最初は気付かなかった。

 

 でも、1人でいて……

 

 夢人お兄ちゃんの言葉で……

 

 わたしは気付けたんだ。

 

 わたしはラムちゃんが好き。

 

 例え、喧嘩して傷つけあっても……

 

 わたしはラムちゃんと仲直りして一緒にいたい。

 

 ……ラムちゃんも同じ気持ちかな?

 

 ううん、きっとそうだよね。

 

 だって

 

 わたし達は……

 

 

*     *     *

 

 

 変身を終えたロムとラムは目を閉じたままステッキをハードブレイカーに向けながら言う。

 

「……あんた達がこれ以上、ルウィーで悪さするのなら」

 

「……わたし達が許さない」

 

 言い終えると、ロムとラムは目を開いて言う。

 

「「だって、わたし達がルウィーの女神候補生だから!」」

 

 ロムとラムは声をそろえて言った。

 

「へっ! 生意気なガキが何言ってやがる! やれ、ハードブレイカー!」

 

 リンダは2人に構わず、ハードブレイカーに攻撃命令を出す。

 

〔……了解〕

 

 ハードブレイカーは右腕を振り上げて2人に振り下ろそうとする。

 

「遅いわよ」

 

 ハードブレイカーの攻撃はロムとラムのスピードをとらえることができず、地面に当たるだけであった。

 

「うおっと!?」

 

 ハードブレイカーの攻撃によって地面が揺れたことで驚く夢人。

 

「……無駄」

 

 ロムはハードブレイカーの右肩の位置に飛んで行き、ホワイトに魔力を集中させた。

 

「アイシクルトルネード!」

 

 ホワイトの先端から氷の渦が飛び出し、ハードブレイカーの右肩に直撃した。

 

〔!?!?!?!?!?〕

 

 攻撃の当たった右肩からハードブレイカ―の体が凍りだした。

 

「次は、わたしの番!」

 

 ラムはハードブレイカーの左肩の位置に飛んで、ナチュラルホワイトに魔力を集中させる。

 

「エクスプロージョン!」

 

 ナチュラルホワイトの先端に赤い魔力が集まった後、ラムがナチュラルホワイトを振ることでハードブレイカーの左肩が内部から爆発した。

 

〔!?!?!?!?〕

 

 爆発した左肩からハードブレイカーは煙を出始めた。

 

「ロムちゃん!」

 

「(こくっ)!」

 

 その隙を逃さず、2人はハードブレイカーの頭上で互いの位置を入れ替える。

 

「これで……」

 

「トドメ!」

 

 ロムが左肩を、ラムが右肩をそれぞれステッキで腕を切断するように攻撃した。

 

 それにより、激しい音と共にハードブレイカーの腕が胴体から切断された。

 

 ハードブレイカーの両腕は大きな音を立てて地面に落ちた。

 

〔……戦闘……継続……不能……〕

 

 胴体だけになったハードブレイカーは後退しながら、カメラアイを点滅させていた。

 

「ウソだろ!? ハードブレイカーが!?」

 

 リンダはハードブレイカーが壊れる寸前であることに驚きの声を上げる。

 

「さあ、次はアンタよ!」

 

「(きっ)!」

 

 ラムとロムはリンダを睨みながら言った。

 

「やっべぇ、どうすりゃ……!?」

 

 リンダがどう逃げるか考えていると、ブロックダンジョン全体が揺れた。

 

「ま、まさか!?」

 

 揺れに心当たりがあった夢人は驚愕の表情を浮かべる。

 

「こ、こんな時にアイツまで出てくんのかよ!?」

 

 リンダも顔を青ざめて叫ぶ。

 

 やがて、地面から複数のブロックが浮き上がり始める。

 

「……そんな!?」

 

 複数のブロックが浮き上がったことを信じられずに叫ぶ夢人。

 

 やがて、ブロックの中からキラーマシンが姿を現した。

 

〔……ユウ……シャ……ユル……サナ……イ……!〕

 

 キラーマシンはそう言いながら、夢人へと腕を振り下ろそうとする。

 

「逃げっ……!?」

 

 夢人は急いで避けようとしたが、ダメージが抜けきっていない体が言うことを聞かずに足をもつれさせて倒れてしまう。

 

「夢人!?」

 

「夢人お兄ちゃん!?」

 

 夢人の様子を見たラムとロムは急いで助けに行こうとするが、2人の目の前にもキラーマシンが立ちふさがった。

 

〔……ジャマ……サセ……ナイ……!〕

 

 キラーマシンはそう言ってロムとラムに攻撃をする。

 

「「きゃあああ!?」」

 

 夢人を助けようとしていた2人はキラーマシンの攻撃を避けることができず、攻撃を受けて吹き飛ばされてしまう。

 

 その間にも、1体のキラーマシンが夢人に腕を振り下ろそうと、その腕を頭上高くに振り上げた。

 

(……ここまでか)

 

 夢人は受けるであろう衝撃を考えながら目をつぶった。

 

「……無茶し過ぎですよ、お兄さん」

 

 キラーマシンの攻撃が当たる直前、横から来た誰かに夢人は救い出された。

 

「……フェル?」

 

 夢人が目を開くと、『人魔一体』をしたフェルが頭についている耳をぴくぴく動かしながら自分を抱いている姿が目に映った。

 

「ボクだけじゃありませんよ」

 

「え?」

 

 フェルは夢人の言葉に笑みを浮かべながら言った。

 

 夢人は言葉の意味がわからずにいると、キラーマシンに誰かが突撃している姿が見えた。

 

「暗黒剣Xの字斬り!」

 

 日本一が剣《プリニーガン》を手にキラーマシンを攻撃していた。

 

「これも行くですの! おとのはのしらべ!」

 

 日本一の後ろではがすとが手に持っている杖《がすとの杖》をキラーマシンに向けて魔法を放っていた。

 

 キラーマシンの体が光ったと思うと、キラーマシンは衝撃を受けたようにのけぞりながら後退する。

 

「ヒーロー参上!」

 

「まったく、やれやれですの」

 

 キラーマシンが離れたことを確認すると、夢人の近くで日本一はポーズをとりながら立つ。

 

 そんな日本一の隣にがすとがため息をつきながら立つ。

 

「……お前ら、何で」

 

 夢人はフェル達の登場に驚いて呆然としてしまう。

 

「アンタが無茶しているのを知ったからよ」

 

 アイエフがラムを連れて夢人の近くにやって来ながら言った。

 

「ロムちゃんとラムちゃんは平気ですよ」

 

 コンパはロムを連れて夢人の近くにやってきた。

 

「……無茶しないでください、夢人さん」

 

 最後に、『変身』したネプギアが夢人を心配そうに見ながら言った。

 

「ただでさえ怪我していたんですから、心配したんですよ」

 

 ネプギアが夢人の右手を取って言った。

 

「い、いや、これは、その……」

 

 夢人はネプギアの不安そうな視線から逃げるため、あさっての方向を見ながら言った。

 

「夢人お兄ちゃん悪くない」

 

 ロムがネプギアに近づきながら言った。

 

「ロムちゃん?」

 

 ネプギアはロムの言葉に驚いてしまう。

 

「そうよ、夢人はわたし達のために来てくれたの」

 

 ラムもネプギアに近づきながら言った。

 

「……そうですか」

 

 ネプギアはロムとラムの表情を見て、納得したようにほほ笑みながら夢人を見る。

 

「夢人さんはやっぱり、夢人さんですね」

 

 ネプギアが嬉しそうに言うのを聞いて、夢人は頬が赤く染まる。

 

「あ、あ、あったり前さ!」

 

 夢人は恥ずかしさをごまかすため大声で言った。

 

 そんな夢人を見て、ネプギアがおかしそうに笑いながら言う。

 

「そうですね」

 

 ネプギアが嬉しそうに笑うのを見て、夢人もだんだんと落ち着きを取り戻しながらネプギアにほほ笑む。

 

「はいはい、いいところ失礼するわよ」

 

 アイエフがそんな2人に対して言う。

 

「今はアイツらをどうにかするのが先決よ」

 

 アイエフの言葉で、夢人達はキラーマシンに向き直る。

 

 そこには、キラーマシンに叩かれたり蹴られたりしているハードブレイカーの姿があった。

 

「は、ハードブレイカー!?」

 

 リンダはハードブレイカーに叫ぶ。

 

 両腕のないハードブレイカーはキラーマシンに対抗できずに攻撃されるがままの状態であった。

 

「お前をスクラップにするわけにはいかないんだよ! 戻れ!」

 

 リンダがそう言うと、ハードブレイカーが光となり、リンダの手にモンスターディスクの形に戻っていた。

 

「ちくしょう!」

 

 リンダはそう言いながら、モンスターディスクをポケットにしまう。

 

 キラーマシンはリンダに攻撃しようと向かっていく。

 

「な、何でこっちくんだよ!? テメェらの狙いはあっちだろ!?」

 

 リンダは自分に向かって攻撃しようとしてくるキラーマシンに叫びながら逃げ続ける。

 

「……今のうちに攻撃した方がいいんじゃないかしら?」

 

「……ちょっと、卑怯ですけど」

 

 ネプギアはMPBLをキラーマシン達に構えて力を集中させた。

 

「MPBL、フルバースト!!」

 

 ネプギアが持つMPBLから強烈な光が放出され、キラーマシンが光に飲み込まれていく。

 

「……やったのか?」

 

 攻撃の衝撃によって、辺りにほこりが舞い上がり視界を封じていたため、状況がわからず夢人がつぶやく。

 

 やがて、ほこりがすべてなくなる。

 

 そこには、無傷のキラーマシンの姿があった。

 

「そんな!?」

 

 ネプギアは自分の最大の攻撃がまったく聞いていなかったことに驚きを隠せない。

 

〔……ユウ……シャ……ユル……サナ……イ……!〕

 

 キラーマシンは夢人の姿を確認すると、夢人に攻撃するために近づいてきた。

 

「くっ!? どうすればいいの!?」

 

 アイエフが顔をゆがませながら言った。

 

「そうだ! 夢人、あれの出番だよ!」

 

 日本一は夢人に大声で言う。

 

「あれ?」

 

 ロムは何のことかわからず首をかしげながら言った。

 

「B.H.C.だよ! それがあれば、夢人が勇者の力でアイツらを倒せるよ!」

 

「そうか!」

 

 日本一の言葉に、夢人はポケットからB.H.C.の入った瓶から一粒取り出して手のひらに乗せた。

 

「……本当に効果あるんですか?」

 

 コンパが疑問を口にする。

 

「大丈夫ですの! がすとの商品にまちがいなしですの!」

 

 コンパの疑問にがすとが自信を持って応える。

 

「……そうね、キラーマシンは勇者の力で封印されたんだから」

 

「夢人さんの勇者の力で!」

 

 アイエフとネプギアも夢人を見ながら言った。

 

 そんな視線を受けながら、夢人はキラーマシンへ一歩近づいて言った。

 

「……わかった、やってやるぜ!!」

 

 夢人は叫ぶと同時にB.H.C.を勢いよく口の中に入れて噛み砕いた。

 

 瞬間、夢人は自分の中にある鎖が弾けるような衝撃を受けた。

 

 

*     *     *

 

 

 夢人さんががすとさんが造ったクスリを飲んだ瞬間、顔を俯かせてしまった。

 

「ゆ、夢人さん?」

 

 もしかして、失敗?

 

 私はそう思い、夢人さんに近づこうとした。

 

「フ、フフフ、フフフフフ……」

 

 すると、夢人さんが急に笑い出した。

 

 でも、その笑い声はいつもと違っていた。

 

「フフフ、フハハハハハハハ!」

 

 夢人さんは笑いながら両手を広げた。

 

 夢人さん!?

 

 いつもの夢人さんならしない行動に私は驚いてしまう。

 

「ちょ、ちょっと本当に大丈夫なの?」

 

「な、何かおかしいですよ?」

 

 アイエフさんとコンパさんも夢人さんの様子に困惑していた。

 

 当然だ。

 

 変な行動をとる時もある夢人さんだが、これはおかしい。

 

「……がす姉さん、本当に大丈夫なんですか?」

 

「そうだよ!? 絶対あれおかしいよ!」

 

 フェル君も日本一さんも驚いてがすとさんに詰め寄りながら尋ねていた。

 

「もんだいなしですの……むしろ、てきせいありで驚いていますの」

 

 がすとさんは満足そうにうなずいていた。

 

 適正?

 

 私達が夢人さんの様子に困惑している間にも、キラーマシンは夢人さんに近づいてその巨大な腕を振り下ろそうとしていた。

 

 危ない!?

 

 私がそう思った瞬間、夢人さんの上に岩の壁が出現してキラーマシンの攻撃を防いでいた。

 

 え? 本当に魔法が使えている?

 

 私は驚いてしまった。

 

 多分、アイエフさん達も同じだと思う。

 

 いつもの夢人さんの魔法ならあんなことできない。

 

「フン」

 

 夢人さんがその場で右腕を振ると、キラーマシンの腕を受け止めていた岩の壁が弾けてキラーマシンを吹き飛ばした。

 

 す、すごい!

 

 これが、本当の勇者の、夢人さんの力!?

 

 私が夢人さんの力に感動していると、夢人さんは左手を顔に持っていき、左目以外を手で覆った。

 

「我が魔導はそのような小鳥のさえずりの如き攻撃では揺るぎもせぬわ」

 

 夢人さんはそう言った。

 

 ……あれ?

 

 いつもの夢人さんと違いすぎるような……

 

「所詮は人の手により造られし操り人形よ、我の本気には及ばぬのであろうな」

 

 そう言って、夢人さんは笑っていた。

 

 絶対におかしい!?

 

「ゆ、夢人さん!?」

 

 私は慌てて夢人さんに呼びかけた。

 

「何だい我が麗しの姫君よ」

 

 夢人さんが私の方を振り返りながら言った。

 

 ひ、姫なんて……

 

 少し照れるけど、今はそれどころじゃない!

 

「一体どうしたんですか!?」

 

 そうだ!

 

 夢人さんは一体どうしてしまったんですか!?

 

「夢人か……懐かしい名だな」

 

 夢人さんはそんなことを言いながら目をつぶった。

 

 え?

 

「我の真なる名は、シュナイデル・ランぺリオンだ!」

 

 夢人さんはそう言ってまた両手を広げた。

 

 え、えっと……

 

「……どうなってるのよ」

 

 わ、私もわからないのでがすとさんへと向き直った。

 

 がすとさんは夢人さんの様子を満足そうに見ていた。

 

「うんうん、B.H.C.はしっかりと効果をはっきしているですの」

 

 絶対に違いますよね!?

 

 これ絶対におかしくなってますよね!?

 

「……どういうことなんですか?」

 

 フェル君が夢人さんを見ながらがすとさんに尋ねてた。

 

 ……あ、フェル君も頬を引きつらせている。

 

「あのクスリがイメージ力を上げるためのものというのは知ってるですのね?」

 

 それは知ってます。

 

 夢人さんが言っていましたから。

 

 確か……魔法のイメージ力を上げるためのクスリって。

 

「魔法のイメージ力をあげるためには、まず自分のなかでいちばんつよいイメージをぐげんかしなければなりませんの」

 

 自分の中の強いイメージを具現化?

 

「どういうことですか?」

 

 コンパさんも意味がわからなかったらしく、がすとさんに尋ねた。

 

「自分の中のつよいイメージがそれだけ魔法のちからにかわるんですの」

 

 えっと……つまり、夢人さんの中にある強いイメージが今具現化してるってことだよね?

 

「それにしたって、性格まで変貌する物なの?」

 

 確かに、いつもの夢人さんと違いすぎます。

 

「あたりまえですの、むしろ本人がかくしているイメージがもっとも強いんですの」

 

 隠しているイメージ?

 

「……まさかB.H.C.って」

 

 フェル君が冷や汗を流している。

 

「わかったですのね」

 

 がすとさんがにやりと笑って言った。

 

「B.H.C.とは、BlackHistoryCandyの略ですの!」

 

 Blackは黒で

 

 Historyは歴史で

 

 Candyが飴だから……

 

 続けて読むと、黒歴史飴?

 

「つまり、かんたんにいうならせいしゅんじだいのはずかしいおもいでをぐげんかするクスリですの」

 

 青春時代の恥ずかしい思い出……

 

「……それって、まさか」

 

 アイエフさんが心当たりがあるのか驚いている。

 

「ちゅうにびょうになるですの!」

 

 厨二病!?

 

 ……厨二病ってなんですか?

 

「……つまり、あれはお兄さんの黒歴史ってことなんだね」

 

 フェル君はわかるの!?

 

 すごい!

 

「は、話が難しくてよくわからないですぅ」

 

 コンパさんもわからないようだ

 

「……つまり、今の夢人は過去に夢人が想像した恥ずかしい思い出の自分を今の自分だと思っているのよ」

 

 アイエフさんがため息をついて言った。

 

 え? やっぱり、よくわからないよぉ……

 

 

*     *    *

 

 

 俺の名前は、御波夢人。

 

 だがそれは仮初の名前でしかない。

 

 我の真なる名は、シュナイデル・ランぺリオン。

 

 ランぺリオン王国の皇子であった。

 

 しかし、ある時異世界の巫女から世界を救ってほしいと願われ召喚に応じた勇者でもあった。

 

 ……フッ、あの時の死闘は今でも思い出せる。

 

 ユイフォリア城での魔王ガルモデウスとの戦いを……

 

 我の聖剣グロリアスハーツの一撃に耐えられるとは思わなかった。

 

 城にいた37魔獣軍団との戦闘では傷一つ負わなかった我であったが、さすがに手傷を負った。

 

 だがしかし、そんな魔王も我が聖なる一撃には耐えられず消滅したのだ。

 

 まさか魔王が我が愛しき弟だったとは思わなかった。

 

 最後に人間の心を取り戻した弟を殺したことは今でも我の心に重くのしかかっている。

 

 だが、弟の命は我と共にあるのだ。

 

 だからこそ……

 

「我が鉄屑風情に負けるなどあり得ぬのだ」

 

 我は万物を司る魔導を操ることができるのだ。

 

 そんな我が負けるなどないのだ。

 

 鉄屑が汚らしい腕で我に攻撃をしようとしている。

 

 その程度、蚊ほども効かぬわ!

 

「我が意は大地の掟なるぞ」

 

 我が言霊を唱えると、鉄屑の汚らしい腕は我が地面から造り出した岩蛇により止められた。

 

〔!?!?!?!?〕

 

 ほう、驚きもするのか。

 

 ただの鉄屑とは違うと見える。

 

 しかし……

 

「破砕せよ!」

 

 無意味だ!

 

 我は鉄屑に纏わりつかせた岩蛇を爆発させた。

 

〔……キノ……ウ……テイ……シ……〕

 

 どうやら鉄屑は爆発に耐えられなかったようだ。

 

 もろいものだな。

 

 我は残りの鉄屑に向き直り宣言する。

 

「どうした臆したか鉄屑共よ、我は一人だぞ」

 

 軽く腕を振って挑発する。

 

 その挑発を受けて鉄屑どもが我に群がってくる。

 

「我が焔は全てを無に帰する」

 

 我は再び言霊を唱え、焔の剣を造り上げる。

 

 我の持っていたグロリアスハーツ程ではないが充分だ。

 

「断罪の時を待て」

 

 我は鉄屑どもの間をすり抜けるように駆け抜ける。

 

 すれ違いざまに鉄屑どもの胴体を焔の剣で斬り裂いていく。

 

 鉄屑どもは焔の剣に斬られたことすら感知しておらぬようだな。

 

「神々の楽園(エデンオブゴッズ)」

 

 我が静かに宣言した後焔の剣を消すと、鉄屑どもは斬られた箇所から崩れ去っていった。

 

 当然の結末だな。

 

 

*     *     *

 

 

 出現したすべてのキラーマシンを破壊した夢人はその場で腕を組んで再び笑いだした。

 

「フハハハハ! 我の勝利だ!」

 

 ネプギア達は高笑いをしている夢人を見てがすとに尋ねた。

 

「もしかして、これからずっとあのままなんじゃ……」

 

「それは大丈夫ですの」

 

 がすとはポケットから懐中時計を取り出しながら言った。

 

「……そろそろこうか時間がきれるですの」

 

 がすとがそう言って、懐中時計に目を落とした。

 

「……5、4、3、2、1、0ですの」

 

 がすとのカウントダウンが終わると同時に夢人に変化が起きた。

 

「フハハハハ! フハハハ、ハハハ……は?」

 

 夢人は高笑いの途中で正気に戻ったようで、笑い声が途中で疑問声になっていた。

 

「……死にたい……」

 

 夢人はそれだけ言うと、その場で丸くなって転がり出す。

 

「ゆ、夢人さん!?」

 

 夢人の急な発言に慌ててネプギアが駆け寄りながら言った。

 

「ど、どうしたんですか!?急に死にたいだなんて」

 

 ネプギアが夢人を見ると、夢人は恥ずかしそうに両手で顔を隠して転がり出した。

 

「うおおおおお! もういっそ殺せ! 殺してくれ!」

 

 夢人は恥ずかしさのために激しく転がりながら叫ぶ。

 

「夢人さん!? 落ち着いてください! 夢人さん!」

 

 ネプギアがいくら落ち着かせようとしても叫び続ける夢人。

 

「……まあ、自分の好きな相手が見ている前での黒歴史再発はきついわよね」

 

「……それは死にたくなるよね」

 

 アイエフとフェルは夢人の様子に納得するように頷いていた。

 

「何バカなこと言ってるのよ!?」

 

「夢人お兄ちゃん、死んじゃいや(うるうる)」

 

 ラムとロムも夢人に駆け寄りながら言った。

 

「すごかったですよ! こう、岩がバーンとか」

 

 コンパが夢人の魔法がすごかったことをアピールするため両手を広げて表現する。

 

「そうだよね! なんだっけ、確か……【断罪の時を待て】とか【神々の楽園】とか、かっこよかったよ!」

 

 日本一は目を輝かせながら夢人に言う。

 

「やめてくれええええ! これ以上、俺を辱めないでくれええええ!!」

 

 夢人はその言葉で心のダメージが加速する。

 

「……それより、早くここからでるですの。またキラーマシンが出てくる前にルウィーの教会にかえるですの」

 

 がすとの言葉に夢人以外が同意してルウィーの教会へ向かおうとする。

 

 夢人は未だ恥ずかしいのか、両手で顔を隠して転がっていたがネプギアにゆすられながら声を掛けられる。

 

「ほら、帰りましょう、夢人さん」

 

「……ハイ」

 

 夢人は涙目になりながら返事をして立ち上がった。

 

 そして、全員が帰ろうとした瞬間……

 

「……ほう、あれが勇者の力か」

 

 そんな声が聞こえてきた。

 

 全員が後ろを振り返ると1人の女性がいた。

 

「あ、あ、あなたは……!?」

 

 ネプギアは女性の顔を見た瞬間、顔は青ざめ体が震えだした。

 

「な、何でアイツが……!?」

 

 フェルも冷や汗を流しながら体を震わせる。

 

 そんな中、隠れていたリンダが女性に向かって嬉しそうに走り出した。

 

「ま、マジック様!!」

 

 マジックと呼ばれた女性は冷たい眼差しで夢人達を見ながら言った。

 

「今度は私にその力を見せてもらおうか、勇者」




という訳で、今回はおしまい!
ほらね、宣言通り無双(笑)をしたでしょう?
B.H.C.は簡単に言ってしまうとちゅーに病になーれってことですよ!
そして、導入話から出てくるのを予感させていたマジック様!
次はついにルウィー編のクライマックス!
夢人君たちは無事でいられるのか?!
…あ、でも夢人君は精神的に死にそうだわ
それでは、 次回 「愛と勇気を」 をお楽しみに!

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