超次元ゲイムネプテューヌ 夢のヒーローを目指して   作:ホタチ丸

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はーい、皆さんこんばんわ!
本日も投稿していきますね!
今回はロムちゃんとラムちゃんのそれぞれの答えがメインの話です!
…もう、本編を楽しんでもらっちゃった方がいいよね?
それでは、 普通で当たり前のこと はじまります


普通で当たり前のこと

 復活した古代の悪魔、キラーマシンはそのカメラアイから光る赤い光を夢人達に向けながら圧倒的な存在感と共に現れた。

 

「何よ、あれ……」

 

 アイエフはキラーマシンを呆然と見上げた。

 

「で、でかい……」

 

 日本一もキラーマシンのあまりの大きさに驚いてしまう。

 

「ハハハハ! 最高だぜぇ! テメェらのマヌケずらはよぉ! やっちまいな!」

 

 リンダは夢人達が呆然としている様子を見て、笑いながらキラーマシンに攻撃するように命令を下した。

 

 しかし、キラーマシンは命令を受けても微動だにしない。

 

 カメラアイの赤い光が不気味に光っているだけであった。

 

「……へ? おいおいおい……」

 

 リンダはそんなキラーマシンの様子に冷や汗をかきながら近づいた。

 

「……おーい、もしもーし……朝ですよー、起きてくださーい」

 

 リンダはキラーマシンの足の部分を叩ながら呼びかける。

 

 その顔には先ほどまであった余裕などなく、頬はひきつっており冷汗は止まることはなく流れ続けていた。

 

「……動け、動け、動けよ!……今動かなきゃ、アタイがやばいんだよ!?」

 

リンダは涙目になりながらキラーマシンを蹴飛ばした。

 

しかし、キラーマシンは反応をしなかった。

 

「……もしかして電池切れとかですか?」

 

コンパはキラーマシンを見上げて言った。

 

「いやいやコン姉さん、それはないって絶対に」

 

コンパの言葉にフェルは手を顔の前で振りながら応える。

 

「そうだよね、こういうタイプは電池じゃなくてコンセントだと思うんだ」

 

「それも違うからね!」

 

日本一も続けてどこかずれたことを言ったので、フェルがつっこむ。

 

「……もしかして壊れちゃってたとか?」

 

ネプギアが首をかしげながら言った。

 

「ウソだろ!? そんなことなんて……」

 

「だって、ずっと封印されていたんですよね? 機械なら壊れていても仕方ないかと」

 

リンダが慌ててネプギアの言葉を否定しようとするが、ネプギアはさらに言葉を続けた。

 

そんなネプギアの言葉を聞いてリンダは両手を地面についてうなだれた。

 

「……クソっ! あの野郎! ウソつきやがったんだな!」

 

リンダは地面を何度も叩きながら言った。

 

「……なんだかな」

 

 夢人もその様子を見て脱力してしまった。

 

 夢人はリンダに近づいていく。

 

「夢人さん!? いくら動かないと言っても危ないですよ!?」

 

 ネプギアが夢人がキラーマシンに近づいていくのを見て言った。

 

「……いや、そっちじゃなくて今のうちにこいつを捕まえとこうと思ってさ」

 

「それには同意するわ」

 

 ネプギアに苦笑しながら応えた夢人に同意するアイエフ。

 

「くっ! どうすりゃいいんだ!?」

 

 リンダは近づいてくる夢人を見て焦りながら言った。

 

「さて、観念するんだな」

 

 夢人がリンダに木刀を向けて言った。

 

その時、甲高い機械音とともにキラーマシンのカメラアイの光が強まった

 

〔……ジ……ジ……ジ……〕

 

 キラーマシンが機械音を出しながら動き始めた。

 

「な!? 壊れてたんじゃ!?」

 

「夢人! 下がって!」

 

 夢人が近くでキラーマシンが動いたことに驚いていると、後ろから日本一が夢人に下がるように言った。

 

「わかった!」

 

 夢人は急いでネプギア達の近くに戻った。

 

 キラーマシンが動き出したのを見たリンダは笑いながら言う。

 

「……アハハハ! 驚かせやがって! 何だ? 再起動中だったのか?」

 

 リンダはキラーマシンに近づいて脚部の尻尾に当たる部分を何度も叩く。

 

〔……ジ……サワ……ルナ……〕

 

「……へ?」

 

 キラーマシンが機械音を出して話している言葉の意味を理解してリンダは呆然となる。

 

〔……サワ……ルナ……!〕

 

 キラーマシンは腕を振るってリンダを吹き飛ばす。

 

「な!? わああああああ!?」

 

 リンダも突然のキラーマシンの行動に驚いてダンジョンの外へと吹き飛んで行ってしまう。

 

「な、何がどうなってるんでしょうか?」

 

 キラーマシンがリンダを攻撃したことに驚いてコンパが言った。

 

「……もしかして、味方……ってことはないよね」

 

 フェルがもしかすると、キラーマシンが味方なのかと思ったが、すぐに否定した。

 

「そりゃそうだろ? あんなまがまがしい雰囲気出して呪われてますって感じのロボット……味方だったらホラーだよ」

 

 フェルの言葉に夢人も同意して木刀を構えなおす。

 

〔……ユル……サナ……イ……!〕

 

「何か言ってます!」

 

 ネプギアがキラーマシンが言っている言葉を聞きとった。

 

「許さないって、何のことかしら?」

 

 アイエフはキラーマシンの言葉の意味がわからず疑問に思った。

 

〔……ユウ……シャ……ユル……サナ……イ……!〕

 

「そうか、勇者許さないかって……」

 

 夢人はキラーマシンから聞こえてきた言葉を言った瞬間固まった。

 

 ネプギア達も夢人を見つめた。

 

「……えっと……勇者って、どこのどいつだろうなあ……俺、わかんねえよ……」

 

 夢人の頬はひきつり、冷や汗をかき始めた。

 

「……お兄さんのことでしょ?」

 

 そんな夢人をジト目でフェルが見つめて言った。

 

「……いやいやいや! 俺こんなごつい知り合いいないからな! 人違いですよー!」

 

 夢人は慌ててキラーマシンに叫ぶ。

 

〔……ユウ……シャ……ユル……サナ……イ……!〕

 

「だから人違いですよー!?」

 

 キラーマシンは同じことを言っていて夢人の言葉を聞かずに、夢人達に突撃してきた。

 

「来るわよ!? 気をつけて!」

 

 アイエフが全員に注意を促す。

 

 キラーマシンは腕を横薙ぎに振り回す。

 

「危ない!?」

 

「きゃあああ!?」

 

 その攻撃範囲の広い攻撃によって、夢人達はすでに全員がバラバラにされてしまった。

 

〔……ユウ……シャ……ユル……サナ……イ……!〕

 

 キラーマシンは夢人に狙いをつけて攻撃してくる。

 

 キラーマシンは腕を夢人に振り下ろす。

 

「危な……!?」

 

 夢人は腕の攻撃は避けられたが、腕が地面に当たった際の振動でバランスを崩して倒れてしまった。

 

「くっ……!?」

 

 夢人は立ち上がろうとするが、キラーマシンの腕が真横から迫ってきた。

 

「夢人さん!?」

 

 ネプギアは夢人の危機に思わず叫んでしまう。

 

「当たってたまるか!?」

 

 夢人は木刀を盾にして衝撃を和らげようとした。

 

「かはっ!」

 

 しかし、十分に衝撃を和らげることができず、夢人は肺からすべての空気が出てしまうほどの衝撃を受けた。

 

「けほっ! げほっ!」

 

 夢人はダンジョンの外まで飛ばされて、呼吸も苦しそうにのどに手を持っていって空気を確保しようとした。

 

「逃げて!?」

 

 キラーマシンがさらに夢人に追撃をしようとしたのを見て、ネプギアは瞳に涙を浮かべながら叫ぶ。

 

 キラーマシンは止まらずに夢人に向かって腕を振り下ろそうとする。

 

(……死ぬ……のか……)

 

 夢人は自分に近づいてくるキラーマシンを焦点の合わない目で見つめながら思った。

 

 しかし、夢人を攻撃しようとしていたキラーマシンはダンジョンの中と外の境界の位置で動きを止めてしまった。

 

 振り上げていた腕は下ろされて、カメラアイの赤い光も消えてしまっていた。

 

「……たす……かった……のか……」

 

 夢人はそれだけ言って意識を手放した。

 

 自分を呼ぶネプギア達の声を聞きながら夢人は地面に倒れた。

 

 

*     *     *

 

 

 わたしは考えていた。

 

 夢人お兄ちゃんが言っていた答えを……

 

 わたしが持っている答え。

 

 当たり前で。

 

 普通の答え。

 

 ……わからない

 

 あれから時間だけが過ぎた。

 

 それでもわからない。

 

 ……初めてかもしれない。

 

 わたしがこんなに長い間1人でいたの。

 

 いつもなら隣に……

 

 ……

 

 何か声が聞こえる?

 

 部屋の外から声が聞こえるんだ。

 

 この声は……

 

 ネプギアお姉ちゃん?

 

 

*     *     *

 

 

 私達は夢人さんを連れて急いでルウィーの街まで戻った。

 

 夢人さんはキラーマシンの攻撃で気を失ってしまって居たので、フェル君がリンちゃんを召喚して運んでくれた。

 

 そして、私達は夢人さんを病院に連れていった。

 

 夢人さんの容態はそれほどひどいものではなかったが、急激に体の中の酸素が失われたことで気を失ってしまったそうだ。

 

 今日一日は絶対安静で病院に入院することになった。

 

「……夢人さんが無事でよかった」

 

 私はあの時恐怖した。

 

 また私が大切な人を守れないことに……

 

 皆と一緒に頑張って行くと決めたのに……

 

「こーら、いつまでも落ち込んでないの」

 

 アイエフさんが私を呆れたように見ていた。

 

「そうですよ、夢人さんは平気なんですから」

 

「そうそう! それに夢人は勇者なんだし、簡単にいなくならないよ! ほら、ヒーローは不滅だからさ!」

 

「……いち姉さん、それは違うような……」

 

 コンパさん、日本一さん、フェル君も私の周りに来て話しかけてくれた。

 

 ……うん、そうだよね。

 

 私がいつまでも落ち込んでいたら、また夢人さんにデコピンされちゃいますもんね。

 

「そうですね、ありがとうございます」

 

 私は嬉しくなりお礼を言った。

 

 温かいな……

 

「きゅ、急に何なのよ……まあ、元気になったのならよかったわ」

 

 アイエフさんが照れながら言った。

 

 その姿は女の子の私から見ても可愛いと思ってしまった。

 

「……まずはゲイムキャラについてね」

 

 アイエフさんが照れた表情から、真剣な表情に変えて言った。

 

 そうだ。

 

 ゲイムキャラさんが壊されてしまったんだ……

 

「……直すことってできないんですか?」

 

 フェル君がそう提案する。

 

 確かに、ゲイムキャラさんはディスクの体だけど、そんなことできるのかな?

 

「それにミナさんにも報告しなければいけないです」

 

「そうだよね、それにあのキラーマシンについても何か知っているかもしれないもんね」

 

 コンパさんと日本一さんの言っていることももっともだ。

 

 あの後、急に動きを止めたキラーマシンは地面の中に戻って行ってしまったのだ。

 

「……まずは教祖に報告に行きましょう、話はそれからだわ」

 

 アイエフさんが皆の意見をまとめて、まずは教会でミナさんに報告することに決まった。

 

 

*     *     *

 

 

 ネプギア達は病院を出て、急いで教会へと向かった。

 

 そして、教会に辿り着いたネプギア達はゲイムキャラのことやキラーマシンについてミナに報告した。

 

「……そうですか、まさかゲイムキャラが壊されるなんて」

 

「そんなにおかしいことなの?」

 

 ミナの言葉に日本一は疑問を持ち尋ねた。

 

「はい、ゲイムキャラには特別な加護がほどかされており、消滅以外にゲイムキャラがいなくなるなんて思いもしませんでした」

 

 ミナが顔を俯かせて言った。

 

「……いくら新しく生み出されたばかりのルウィーのゲイムキャラと言っても、その力は以前までのゲイムキャラと同等であったはずなのですが…」

 

「……今はそれよりもどう対処するかを考えましょう」

 

 ミナが言葉を続けていたが、アイエフがそれを遮った。

 

 ミナもその言葉に俯かせていた顔を上げて言う。

 

「そうですね、現状ゲイムキャラをどうにかして元に戻さなければなりません」

 

「やっぱり、あのキラーマシンがいるからですか?」

 

 ミナの言葉にコンパは質問した。

 

「そうです……それにキラーマシンは1体ではありません、ルウィーには数十体、いえ数百のキラーマシンが眠っています」

 

「そ、そんなに!?」

 

 ミナんの言葉を聞いてフェルが驚きの声をあげた。

 

「……はい、元々ルウィーが犯罪神の発祥の地であったため、犯罪神が対女神用の決戦兵器として量産した兵器、それがキラーマシンなのです」

 

 ミナがさらに言葉を続ける。

 

「キラーマシンの装甲は特別な金属が使われていて、その強度は女神の攻撃をはじき返すと言われています」

 

「女神の攻撃をはじき返すなんて……でたらめもいいところね」

 

ミナの言葉を聞いて、アイエフは左手を額に当てて言った。

 

「……でも、どうやってそんな存在を封印できたんですか? 女神の攻撃が効かないのなら……」

 

「勇者ですよ」

 

 ネプギアの疑問の声を遮り、ミナは簡潔に応えた。

 

「古の時代に勇者の力によってキラーマシンは封印されたのです……実際にどのような方法で封印したのかはわかりませんが、記録では若い男性が光輝く魔法と共に現れてルウィーの危機を救ったというものがあります」

 

 ミナの言葉を聞いてネプギア達は顔を見合わせた。

 

「……だからあの時、キラーマシンは夢人さんを狙ったんですね」

 

「多分そうね……でも、それならおかしいわね」

 

 ネプギアの言葉にアイエフは疑問に思った。

 

「どうしてですか?」

 

「夢人が勇者としてふさわしい力を持っているのなら話はわかるわ……でも」

 

 コンパの疑問にアイエフが応える。

 

 それに続いてフェルも言葉を続ける。

 

「お兄さんは勇者の力が使えない……でしょ?」

 

 フェルの言葉にアイエフが頷きながら言う。

 

「そうよ……キラーマシンが何で夢人を勇者と思ったのかがわからないの」

 

アイエフがあごを指で触りながら言った。

 

「……今はそれよりもゲイムキャラをどうするかを考えましょう」

 

 そんなアイエフの様子を見てネプギアは言った。

 

「そうですね、ゲイムキャラを復活させるにはどうすればいいのか……」

 

 ネプギアの言葉を聞いてミナが顔を俯かせながら考える。

 

「う~ん……」

 

 そんな中、日本一が目をつぶって腕を組みながら唸っていた。

 

「……さっきから何考えてんのよ?」

 

 日本一の様子を見ながらアイエフが尋ねた。

 

 日本一は目を開いて言う。

 

「……錬金術ならできるかなって思ってさ」

 

 日本一はそう言うが、自信がなさそうだ。

 

「錬金術って、そんなことできる知り合いがいるの?」

 

「知り合いって言うより、今朝あったがすとって錬金術師ならできるかなって」

 

 アイエフの疑問の声に日本一は応える。

 

「……錬金術、一度聞いてみる価値はあると思います」

 

 ミナは日本一の考えを聞いて賛成した。

 

「そうね、何もしないよりはましだもの」

 

アイエフも同意しながら日本一に向き直る。

 

「日本一、その錬金術師に事情を話して来てもらえるかしら?」

 

「任せてよ! 超特急で行ってくるからね!」

 

 アイエフはそう言って日本一に頼む。

 

 日本一もそれに了承してがすとを探しに街へと走って行った。

 

「……これで何とかなればいいんだけど」

 

 ネプギアは走って行く日本一の背中を見てそう言った。

 

 

*     *     *

 

 

 それからしばらくして、日本一はがすとを教会に連れてきた。

 

 ネプギア達ががすとにゲイムキャラを直せるかどうかを尋ねる。

 

「……結論だけ言いますの、できますの」

 

 がすとはゲイムキャラの残骸を見ながら言った。

 

 そのがすとの言葉に全員が嬉しそうな顔になる。

 

 しかし、がすとは顔を曇らせて言った。

 

「ただ直すために必要な素材がありますの」

 

 がすとがそう言いながら右手の指を2本あげる。

 

「まずは『レアメタル』といってルウィー国際展示場東館にいるモンスターが持っていますですの」

 

 がすとが上げていた指を一本下げながら言う。

 

「もうひとつが問題ですの……『データニウム』といってブロックダンジョンのモンスターが持っているですの」

 

「ブロックダンジョンって!?」

 

 がすとの言葉にネプギアが驚きの声を上げる。

 

 ネプギア以外も声を出さないだけで驚いている。

 

「……そうですの、そのキラーマシンにそうぐうする確率はきわめてたかいですの」

 

 がすとも表情を曇らせて言った。

 

「……ですが、やるしかありません」

 

 ネプギアが皆を見ながら言う。

 

「ゲイムキャラを直さなきゃ、ルウィーだけでなくゲイムギョウ界も危険なままなんです」

 

 その言葉を聞いたアイエフ達はそれそれ言う。

 

「そうね、やるしかないわよね」

 

「わたしもがんばりますですよ」

 

「ゲイムギョウ界の危機を救うのはヒーローの役目! もちろん、アタシも戦うよ」

 

「この世界で生きていくことを決めたんです、やってやります」

 

「がすとも行くですの、ルウィーの危機にだまっていられませんの」

 

 アイエフ達はネプギアを見ながら言った。

 

 アイエフ達の様子を見たネプギアは一度頷いて言う。

 

「ありがとうございます……行きましょう!」

 

 ネプギアを先頭にアイエフ達は教会を出て行った。

 

 そんな後姿を見たミナは胸の前で両手を組んで祈るように言う。

 

「……よろしくお願いします、皆さん」

 

 ……しかし、誰一人気付かなかった。

 

 教会の入り口のドアで話を聞いていた少女。

 

 教会の裏口から出て行った少女が居たことを……

 

 

*     *     *

 

 

 わたしは走っている。

 

 目的地は知っている。

 

 ミナちゃんからのお願いで何度も行ったことがある場所だ。

 

 ブロックダンジョン

 

 いつもなら……

 

 お仕事なんていやだと言って行きたくない場所だ。

 

 でも、今は違う!

 

 わたしは行かなくちゃいけない!

 

 だって、ルウィーの危機だもん!

 

 お姉ちゃんが守ってきた国を守るんだ!

 

 ……でも、それ以上に

 

 わたしはまだ言えていないんだ!

 

 まだしたいことがあるんだ!

 

 だから、絶対に……

 

 ルウィーを守るんだ!

 

 

*     *     *

 

 

 わたしは走っている。

 

 目的地にはあの人がいる。

 

 わかったんだ……

 

 わたしがしたいことが……

 

 わたしの答えがわかったんだ!

 

 だから、わたしはあの人に会いに行く。

 

 だって、この答えに気づかせてくれた人だもん。

 

 ……ちょっと怖いけど

 

 あの人と一緒なら言える気がする。

 

 だって、あの人は……

 

 わたしの大切なことに気づかせてくれた……

 

 大切な人だ。

 

 わたしは急いであの人が眠っている部屋に入った。

 

 あの人はベットに眠っていた。

 

 ……それでもわたしは一緒にいてほしい。

 

 一緒に答えを聞いてほしいんだ。

 

 だから……

 

「起きて……夢人お兄ちゃん!」

 

 わたしは夢人お兄ちゃんの手を握って言った。

 

 

*     *     *

 

 

 ブロックダンジョンでは、ラムが1人でモンスター相手に戦っていた。

 

「これで、どうよ!」

 

 ラムのステッキから魔法が放たれた。

 

 魔法はモンスターに命中して、モンスターは光となって消えた。

 

「はあ、はあ、はあ」

 

 ラムの息は切れかけていた。

 

 街から走ってダンジョン中に入ると、出会うモンスターすべてを相手に戦ってきたのだ。

 

 すでに体力も魔力もそこを尽きそうになっていた。

 

「……また、違う」

 

 ラムは『データニウム』をどのモンスターが持っているのかを知らない。

 

 だからこそ、モンスターすべてを相手に戦っているのだ。

 

「……早く、しな、いと……」

 

 ラムはステッキを支えにダンジョンの奥へと進んでいく。

 

 奥に進むと、広い空間に出た。

 

 その中央に人の顔に似たモンスターがいた。

 

 「ふう、次はアイツね」

 

 ラムは一度息を吐くと、ステッキをモンスターに向けた。

 

 モンスターもラムに気付いたのか、ラムに向かって飛んでくる。

 

「喰らいなさい!」

 

 ラムは得意の魔法を使おうとする。

 

「え!?」

 

 しかし、ステッキからは魔法がでない。

 

「まさか、魔力が!?」

 

 ラムが魔力切れで呆然と立ち尽くしている隙に、モンスターは素早くラムに近づいた。

 

「こ、この!?」

 

 ラムはモンスターが近づいてきたのを見て、ステッキを振り回す。

 

 しかし、ステッキはモンスターには当たらなかった。

 

「は、速い!?」

 

 モンスターの速さに驚いていると、モンスターはラムに体当たりした。

 

「きゃああああ!?」

 

 ラムはモンスターの攻撃によって吹き飛ばされ、地面に転がってしまった。

 

「……うぅ……まだ……」

 

 ラムはステッキを支えにして立ち上がろうとする。

 

 しかし、モンスターはラムに再び攻撃しようとする。

 

 ラムはそれを涙を浮かべながら見て叫ぶ。

 

「……助けて! ……ロムちゃん!!」

 

 ラムがモンスターが近づいてきたことで目をつぶった。

 

「ブラスト!」

 

 目を閉じていたラムの耳にロムの声が聞こえてきた。

 

 その後、ラムの近くで風が吹く音共にモンスターが吹き飛んだ。

 

「……ロム……ちゃん……?」

 

 ラムが目を開くと、目の前にはステッキを構えたロムがいた。

 

「……ラムちゃん! 平気?」

 

 ロムはそう言って、ラムに手を差し伸べた。

 

 

*     *     *

 

 

 わたしは目の前の光景が信じられなかった。

 

 ロムちゃんが……

 

 ロムちゃんがわたしを助けてくれた。

 

 ……わたしはロムちゃんを傷つけたのに

 

 ロムちゃんがわたしのピンチに駆けつけてくれた!

 

 …嬉しい。

 

 久しぶり会えたんだ。

 

 でも……

 

「……ロムちゃん」

 

 わたしは言わなくちゃいけない。

 

 わたしの答えを……

 

「……なに?」

 

 ……怖い

 

 逃げ出してしまいたい。

 

 ドクン、ドクン、ドクン

 

 胸が苦しい。

 

 痛くてまともに声を出せない。

 

 体が震えている。

 

 ロムちゃんの顔が……

 

 見れないよぉ……

 

「……あ、あの……」

 

 ……ダメだ。

 

 言葉にできない。

 

 苦しくてつらいよ。

 

 ……もう泣き出してしまいたい。

 

 わたしは……

 

 そんな時、わたしは手を強く握られた。

 

「……え?」

 

 どうしてここにいるの?

 

 アンタは確か病院にいるはずなのに……

 

「……ラム」

 

 何でここにいるの……夢人。

 

「……ラムちゃん」

 

 気がつけば、わたしの震えは止まっていた。

 

 目の前のロムちゃんがわたしの言葉を待っている。

 

 ……そうだ。

 

 わたしは勇気を出さなきゃだめだ。

 

 だって……

 

「……ロムちゃん」

 

 ドクン、ドクン、ドクン

 

 このままじゃ……

 

「……なに?」

 

 ドクン、ドクン、ドクン

 

「ごめんなさい!」

 

嫌なんだ!

 

 

*     *     *

 

 

 わたしは夢人お兄ちゃんと一緒にブロックダンジョンに来た。

 

 そこで、わたしはモンスターにやられそうになっていたラムちゃんを見つけた。

 

「……助けて! ……ロムちゃん!!」

 

 ラムちゃん!! 助けなきゃ!

 

 わたしはステッキをモンスターに向けて魔法を放った。

 

「ブラスト!」

 

わたしが放った風の魔法によってモンスターが吹き飛んだ。

 

わたしは急いでラムちゃんに近寄った。

 

「……ロム……ちゃん……?」

 

 ラムちゃんはわたしを見上げてつぶやいた。

 

「……ラムちゃん! 平気?」

 

 わたしは転んだままのラムちゃんに手を差し伸べた。

 

 ラムちゃんはその手を握って立ち上がった。

 

 ……温かかった。

 

 久しぶりにラムちゃんに触れた。

 

「……ロムちゃん」

 

 ラムちゃんがわたしに話しかけてきた。

 

 ……でも、その顔はとても辛そうだ

 

「……なに?」

 

 わたしがそう言うと、ラムちゃんはさらに辛そうに泣き出しそうになっていた。

 

「ラムちゃん……」

 

 わたしはラムちゃんにわたしの答えを言おうとした。

 

 ……でも、それは止められた

 

 夢人お兄さんだ。

 

 夢人お兄さんがわたしの側に来てわたしの顔を見た。

 

 その顔は横に振られていた。

 

 ……本当は辛い。

 

 今すぐラムちゃんにわたしの答えを聞いてほしい。

 

 ラムちゃんと……

 

「……ロムちゃん」

 

 いつの間にか夢人お兄さんと手をつないだラムちゃんが目に涙を浮かべながら話しかけてきた。

 

「……なに?」

 

 わたしがそう言うと、ラムちゃんは大きな声で言った。

 

「ごめんなさい!」

 

 ……わたしは驚いた。

 

「わたし……ずっと……一緒に……ぐすっ……居たのに……」

 

 ラムちゃんが泣きながら言葉を続けていく。

 

「……ぐすっ……ロムちゃん……ぐすっ……ウソつい……ぐすっ……」

 

 ……でもそれ以上に。

 

「……そんな……ぐすっ……わたし……ぐすっ……だけど! ……」

 

 ……わたしは!

 

「……また一緒にいたいよ!!」

 

「ラムちゃん!!」

 

 わたしはその言葉を聞いてもう自分を止められなかった。

 

 ……嬉しい。

 

 だって、ラムちゃんは……

 

「……わたし……も……ぐすっ……ずっと……」

 

 わたしと……

 

「……ぐすっ……一緒にいたい!!」

 

 同じ気持ちだったんだ!!

 

 

*     *     *

 

 

 ロムとラムが互いに涙を流しながら抱き合っていると、先ほど吹き飛ばしたモンスターがまた近づいてきた。

 

 ロムとラムはそれに気づいていない。

 

「……待てよ」

 

 モンスターと2人の間に夢人が立つ。

 

「……やっと、2人が大切なことに気づいたんだ」

 

 夢人はモンスターを睨みながら木刀を構えて言う。

 

「……こいつらの邪魔だけは絶対にさせない!!」

 

 夢人はモンスターに向かって走り出す。

 

 ロムとラムの邪魔をさせないために……




はい、今回はここまで!
やっと、すれ違ったロムちゃんとラムちゃんが元の関係に戻れたよ!
次の話の最初でももうちょっとだけ2人の話が入るけど、次のメインは違うんだな
…なんと、次の話は夢人君メイン!
夢人君の活躍に期待あれ!
それでは、 次回 「切り札はB.H.C.」 をお楽しみに!

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