超次元ゲイムネプテューヌ 夢のヒーローを目指して   作:ホタチ丸

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はい、皆さんこんばんわ!
実に一週間ぶりになりますが、リハビリがてらこちらに最後の投稿をさせていただきます。
後書き方を新しくしましたので、今回はその試験も兼ねています。
それでは、 始まりを告げるコール はじまります


選ばれた“カード”と”色”
始まりを告げるコール


 ……時はギョウカイ墓場にて、夢人とネプギアがビームソードを犯罪神に突き刺した頃である。

 ギャザリング城地下、ネプギア達がシンとウラヌスと邂逅した部屋に向かって、1人の少女が足を進めていた。

 

「ふにゃにゃにゃにゃーん」

 

 少女の足取りは軽く、満面の笑みを浮かべて鼻歌交じりにスキップをしながらリズミカルな足音を響かせていた。

 彼女は少し前までリーンボックスの上空でゲイムキャラ達に囲まれていた少女である。

 ゲイムキャラ達の前から姿を消した少女は、脇目もふらずにここまでやって来たのである。

 何故なら、これから少女が長い間待ちに待ったことが始まろうとしていたからだ。

 少女にとって今現在ゲイムギョウ界やギョウカイ墓場で起こっていることなど些細なことであった。

 全ては今から始まることの前座、少女にとって大事なのはこれから始まることだけである。

 

 やがて、薄暗い通路の先に目的地の空間を視認した少女は浮かべていた笑みを深め、一気に駆け出す。

 部屋に入る一歩手前で思いっきり床を蹴り上げ、両手を大きくバンザイするような体勢で跳躍して部屋に突入する。

 片足で着地した少女は、その場でくるりと1回転するとにかっと笑いながら片腕を伸ばしてブイサインを作った。

 

「おっ待たせー! ぶいっ! ……って、ありゃりゃ?」

 

 上機嫌であった少女は、部屋の現状を目の当たりにして不思議そうに首をかしげてしまう。

 つま先立ちになり、きょろきょろと部屋を見回しながら、これから始めることに必要不可欠な人物達がいないことに明らかに落胆の表情を見せ、2つに縛ってある髪の毛も力なく垂れてしまった。

 

「ちぇー、何だよなんだよー。何でまだ皆来てないんだよー。5分前行動とか当たり前だろー」

 

『……いやいや、5分前どころの騒ぎじゃないだろ?』

 

「おおっと、それもそっか……って、ふにゃあああああ!?」

 

 不満を垂れていた少女の後ろに、突如人型のシルエットが困ったように頬を掻くような仕草をしながら現れた。

 自分の独り言に返事を変えされた少女は自然と相槌を打ちながら振り返り、今までいなかった人型のシルエットに驚いてしまう。

 その様はまるで驚かされた猫のようであり、垂れていた髪の毛も逆立ってしまっていた。

 そのまま少女は力なくぺたんと尻もちをつき、人型のシルエットから距離を取るために忙しなく体を左右に揺すりながら後ろへと下がってしまう。

 

『そんなに驚くことないだろ? 俺がここにいるのはお前も知ってただろうが』

 

「きゅ、きゅきゅ急に後ろに立たれて驚かないわけないじゃん!? 出てくる時はちゃんと一言声をかけてから出てきてよ!?」

 

『……だからって、泣くことないだろうに』

 

「ななな泣いてないし!? これは目にゴミが入ったとか、お尻が痛いとかのせいだし!? 絶対に怖かったから泣いたんじゃないんだからね!?」

 

 人型のシルエット、シンは涙目で自分のことを見上げてくる少女の姿に呆れてしまう。

 少女は最初からこの部屋にシンがいることを知っていたはずである。

 それなのにも関わらず、自分の出現に驚き恐怖した少女にシンは少なからずショックを受けていた。

 

 顔を真っ赤にさせて唸っていた少女は、床から立ち上がると埃を払うように軽く尻を叩いた。

 そこから仕切り直しだと言わんばかりに、咳払いをしてシンを指さしながら口を開く。

 しかし、少女の頬はまだほんのりと朱色に染まっており、シンはどことなく恥ずかしそうだと感じて苦笑してしまう。

 

「こほん……それで、準備はできてるんでしょうね?」

 

『ああ、後はアイツが来たらいつでも……』

 

「やっぱり、もう来てやがったのかよ」

 

 シンの言葉を遮る声が響くと同時に、この場に3人目の人物が姿を現した。

 その人物は紫色の本の上に胡坐をかいて浮かんでおり、呆れたように少女を見下ろしていた。

 その人物は夢人が見ていた夢の中のネプギアと最後に会話していた妖精であった。

 

「待ち切れねーだろーなーとは思ってたけど、まさかもー集まってるとは思わなかったぜ」

 

「そっちこそ充分早いじゃん。ワタシと同じで待ち切れなかったんでしょ?」

 

「……まあ、そーなんだけどよ」

 

 にこにこと笑う少女の問いに、妖精は大きく口の端を吊り上げてにやりと笑みを返す。

 妖精も少女と同じくらいにこれから始まることを楽しみにしていたのだ。

 そんな2人をシンは複雑そうに見つめながらため息をつく。

 

『……はあ、はやる気持ちはわかるけど、すぐに始まるわけじゃないんだぞ? 今から決めることは……』

 

「わかってるよもー」

 

「ちゃっちゃと決めちまおーぜ」

 

『……仕方ないか』

 

 自分の言葉を遮って笑いながら急かす2人に、シンはこれ以上何を言っても無駄だと悟った。

 疲れたようにつぶやくと、シンはその場で指を鳴らす仕草をする。

 当然実体のないシンがそんなことをしたところで音は鳴らない。

 ……しかし、代わりにある物が3人の間に出現する。

 

 それは6枚のカードが並べられている台座であった。

 6枚の内、4枚のカードは表になっており、それぞれアルファベットで“D”“P”“L”“V”と黒字で記されていた。

 

「あれれー? どうして4枚だけなの?」

 

『後の2枚はまだ準備中だ。予定していた段階まで進んでなくてな、今回はこの4枚の中から選んでくれ』

 

「まあ、どーせプレイヤーは俺も含めて4人なんだし、問題はねーよな」

 

 少女の疑問に答えるシンを横目に、妖精は台座から2枚のカードを選び取った。

 

「とりあえず、お姫様は“P”で“黒”を選ぶってよ」

 

「わー、お姫ちゃんも手堅くいったねー」

 

「そりゃ、当然だろーな。お姫様にとっちゃ、どっちか片方でも勝てりゃ、それで充分なんだろーし……ってなわけで、俺は“L”の“赤”でいくぜ」

 

 妖精はここにいない誰かのことを思い出しながら、右手に持った“P”のカードを2人に見せた。

 そして、自分の選んだ左手の“L”のカードもにやつきながら見せびらかす。

 すると、今まで黒字で記されていた“L”のアルファベットが赤く染まる。

 

「次はワタシね……うん、やっぱりこれしかないっしょ! ブイ、ブイ、ヴィクトリーの“V”で“赤”、これできっまりー!」

 

 残った2枚のカードを見ていた少女であったが、少しも迷う素振りを見せることなく“V”のカードを手に取った。

 すると、妖精の時と同様にアルファベットが赤字へと変化する。

 

『それじゃ、俺は残ったこの“D”ってわけだ』

 

「ずりーとか言わせねーからな。今回はお前がホストのゲーム、残り2枚を用意できなかったお前の落ち度なんだからよ」

 

『当然だ。それに、俺は最初からコイツ以外を選ぶ気はなかったさ』

 

 最後に残った“D”のカードを指さしながら、シンはほほ笑んでいるような雰囲気を出して口調を和らげる。

 その態度が諦めて開き直っているように感じた妖精は、眉間にしわを寄せてシンに言い放つ。

 しかし、それを聞いて尚、シンは穏やかな雰囲気を崩さない。

 余裕を感じさせる態度のまま、シンは宣言する。

 

『もう1つの選択は“黒”にさせてもらう』

 

「……へぇー、“D”の“黒”ねぇー」

 

「……おいおい、本当にそれでいいのかよ?」

 

 シンの発言に2人は対照的な反応を示す。

 少女は楽しそうに浮かべていた笑みを消し去り、目を細めてシンを見つめていた。

 その表情は無表情に近く、わざとらしく間延びされた口調からも、少女がシンの選択に対してどんな思いを抱いているのかを推察することができない。

 対して、妖精は額から冷や汗を流しながら頬を引きつらせている。

 まるでシンがその選択を取ることが信じられず、妖精は知らずうちに確認を取るために聞き返していた。

 2人に共通しているのは、シンの選択にいい思いを抱いていないことだろう。

 そうでなければ、2人は先ほどまでと同様に楽しそうに笑っていたはずである。

 ……しかし、そんな2人からの視線を受けても、シンは誇らしげに胸を張って答える。

 

『ああ、俺は“D”の“黒”で勝負する。変更はなしだ』

 

「……ふーん、そーなんだー。まあ、別にいいんだけどね」

 

 シンの言葉を聞いた少女は、つまらなそうにつぶやきながら目を閉じる。

 そして、次に目を開けた時には、すでにシンの選択を聞く前の雰囲気を取り戻して、少女はにっこりと笑いながら両手を広げる。

 

「よーし! 決めなきゃいけないことも決まったし、これで後は始まるのを待つだけだね! たっのしみだなー!」

 

「切り替え早っ!? ま、まあ、お前がそれでいいならいいんだけどよ……そんじゃ、始めるタイミングはどーすんだよ?」

 

『そいつはお前に任せるよ』

 

「できるだけ早くしてくれれば、いつでもオーケーだよ」

 

 隣でいきなりテンションを上げた少女に驚きつつ、妖精は諦めたようにシンを見つめながら言葉を紡ぐ。

 その瞳は揺れており、未だシンの選択が信じられずに困惑しているのが見てとれた。

 それをわかっていながら、シンと少女は指摘することなく、妖精が口にした疑問に軽い調子で答える。

 そんな2人の姿に、悩んでいることが馬鹿らしくなった妖精は頭を掻きむしりながら口を開く。

 

「ったく、わーったよ。俺が思う最高のタイミングで始めてやるよ。それでいいんだろ?」

 

「うん! 楽しみにしてるね!」

 

 少女は満面の笑みを浮かべて、衝動のままくるりとその場で1回転した。

 そして、再び2人を視界に収めると、この場にいないもう1人の人物の姿を頭の中で思い描きながら、小首をかしげてほほ笑んで手のひらを台座の上へと伸ばした。

 それはまるで握手を求めているかのように見える。

 もしくは、何かを歓迎するように自分の体を敢えて無防備にさらけ出しているようにも見える。

 

「楽しい楽しいワタシ達のゲームが始まるのを」

 

 少女は無邪気な笑顔を浮かべて、ただ純粋に自分の気持ちをそのまま吐きだしていた。

 何のためらいもなく口にされた言葉には、これから始まるゲームに対する期待しか感じられない。

 妖精は少女の考えに同意するように、にやりと笑いながらその手に自分の手を重ねた。

 ……そんな2人の姿を見て、シンは何か思うところがあるのだろうか、わずかに逡巡して重ねようとした手をさまよわせた。

 だが、シンも意を決したように2人の手に自分の手を重ね合わせる。

 

 ……この時より、3人とこの場にいないもう1人によるゲームが成立した。

 各自がそれぞれゲームに対しての思いを馳せながら、その時を待つ。

 始まりを告げる妖精の鐘が鳴り響くのを……




と言う訳で、今回はここまで!
さて、この話を投稿し終わり次第、この作品には完結マークをつけさせていただきます。
そして、本編の続きは別作品枠でやった方が良いと言う意見をもらっておりましたので、もう1つ作品を作ってそちらの方に載せたいと思います。
……まあ、番外編のノワルンとコラボが終わった後なんですけどね。
書き方や作品の投稿方法について、詳しくは活動報告の方に載せてありますのでそちらの方を覗いてもらえればと思います。
それでは、番外編楽しみにしておいてくださいね!

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