超次元ゲイムネプテューヌ 夢のヒーローを目指して   作:ホタチ丸

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はい、皆さんお待たせしました!
え?待ってない?そんなこと言わないでください?!
今回はラステイション編最終話ということで今までで一番の長さとなっております
これも何度も言いますが、愛があふれてしまいました
余計なことはこれくらいにして本編をお楽しみに
それでは ライバル はじまります


ライバル

 ワレチューによってディスクに吸収されてしまったフェンリルを助けることに成功した夢人達。

 

 しかし、ディスクからフェンリルを解放する手段がわからない。

 

 彼らはマジェコンヌの一員なら知っているのではと、怪しい人物が出入りしていると噂のセプテントリゾートへと乗り込む。

 

 そこでリンダとマジェコンヌ製のウイルスに汚染されたテコンキャットと戦闘になる。

 

 さらに、ディスクを奪われてフェンリルまでも敵になってしまった。

 

 夢人の体を張った頑張りとフェルの家族を思う心でフェンリルはマジェコンヌの支配を抜け出し、無事にフェンリルを助けることができたと思った。

 

 しかし、フェンリルはリンダの攻撃によって致命傷を負い、フェルの右手に光を残して消えてしまった。

 

 

*     *     *

 

 

 ……雨が降ってきた。

 

 夢人達がセプテントリゾートから帰る途中からラステイションでは突如雨が降り出したのだった。

 

 まるで誰かが泣いているような薄暗い雲から雨はやむことはなく振り続ける。

 

 そんな雨に打たれながらフェルは先ほどの光景を信じることができなかった。

 

 フェンリルが目の前で光となって消えてしまったのだ。

 

 この世界でモンスターが光となって消えると言うことは死を意味していた。

 

 その事実を認めたくなかった。

 

 やっと、この世界で生きていくと決意したフェルにとってこの事実は重く心にのしかかった。

 

 

*     *     *

 

 

 ラステイションギルド

 

 そこで夢人達はアヤに事の顛末を説明した。

 

「……そう、それであの子は部屋にこもっちゃったのね」

 

 フェルはギルドに辿り着くや否や、ギルドで借りている一室に閉じこもったのである。

 

 アヤはフェルが閉じこもった部屋を悲しげに見ながら夢人達に尋ねる。

 

「……それで、酷なことを聞くけど、あなた達はこれからどうするの?」

 

 アヤの言葉に3人は俯いて応えない。

 

「……わかったわ、今日はギルドに泊まりなさい」

 

 アヤはそんな3人の様子を見て、今ギルドの外に出すのは危険だと判断してギルドに泊めることを決めた。

 

「……ありがとうな」

 

 夢人は顔を上げアヤに礼を言う。

 

「そう言うことはもっとましな顔になってから言いなさい……今のあなた達ひどい顔よ」

 

 そう言ってアヤは部屋の準備をするために奥へと歩いていった。

 

 その場に沈黙が訪れた。

 

 3人はただ俯いたまましゃべらない。

 

 やがて、アヤが部屋の準備を終えて3人を呼びに来るまで誰も言葉を発することはなかった。

 

 

*     *     *

 

 

 フェンリルが死んだ……

 

 ボクのせいだ……

 

 ボクがエンシェントドラゴンの攻撃で死んでもいいと思ったからだ。

 

 フェンリルはずっとボクのことを守ってくれていたのに。

 

 ボクはフェンリルを守れなかった。

 

 父さんや母さんもそうだ……

 

 ボクが『特典』の力を使えば、きっと今でも生きている。

 

 ボクのことを恐れるようになってもきっと……

 

 ボクのことを愛してくれていたはずなのに。

 

 ごめんなさい。

 

 ゴメンナサイ……

 

 

*     *     *

 

 

 次の日の朝

 

 昨日の雨が嘘のように雲ひとつない晴天であった。

 

 夢人はフェルの部屋の前に立っていた。

 

「フェル? 起きてるか?」

 

 部屋をノックして呼びかけても返事はない。

 

「……これは聞いてなくてもいい、ただのひとりごとだからな」

 

 夢人は返事を聞かず、ドア越しに語りかける。

 

「お前にとって今が一番辛い時だ……でもな、その辛さを忘れんじゃねえ、その辛さはお前を大切に思っていた奴らの気持ちだ……それにだ」

 

 夢人はドア越しにほほ笑む。

 

「お前は1人じゃない……それに俺達もお前を大切に思っている。お前が怖がっていることも受け入れてやる」

 

 夢人はそう言って、ドアに背を向けながら言う。

 

「……それでも、怖くなって逃げ出したとしても……俺は怒らないよ……それはお前の決断だからな」

 

 それだけ言って夢人はフェルの部屋の前からゆっくりと歩いてギルドの玄関へと向かった。

 

 夢人が立ち去った後、フェルの部屋のドアが少しだけ動いた。

 

 

*     *     *

 

 

 セプテントリゾート

 

「は、ハーックション! チッ、アイツら海に落としやがってよ……おかげでこっちはまだ寒気がとれないぜ」

 

 くしゃみをして鼻からは鼻水が流れているリンダが歩きながらつぶやく。

 

「ンにしても、ホントにこんなところにゲイムキャラが居んのかよ」

 

 リンダはきょろきょろとあたりを見回しながら言う。

 

「文句を言っている暇があったら早く探すっちゅ……まったく、何で下っ端と一緒に行動しなきゃいけないっちゅか」

 

 リンダの近くをワレチューが歩きながらため息をついた。

 

「そいつはこっちのセリフだっつーの……あと、テメェまで下っ端って言うんじゃねぇ!」

 

 リンダが不機嫌そうにワレチューに言う。

 

「……はぁ、こんな色気のない下っ端と一緒じゃなくて、こんぱちゃんと一緒に歩きたかったちゅ」

 

 ワレチューはリンダの言葉を聞き流しながら、先日自分を治療してくれたコンパへと想いを馳せる。

 

「んだと!? こっちだってテメェのようなネズミと一緒でイライラしてんだよ!?」

 

 リンダがワレチューの態度が気に食わず、悪態をつく。

 

「こっちも同じだっちゅ! でも、これ以上、ラステイションのシェアを奪えないのはまずいっちゅ……ここはさっさとゲイムキャラを壊さないといけないっちゅ」

 

 ワレチューもリンダのことは気に食わないが、さっさと仕事を終わらせようと、ダンジョンの奥へと進んでいく。

 

「あ! テメェ、勝手に行くんじゃねぇよ!」

 

 リンダもゲイムキャラを探しながらワレチューを追っていった。

 

 

*     *     *

 

 

 同じくセプテントリゾートの入口

 

 夢人とユニ、ファルコムの3人はダンジョンに来ていた。

 

 フェンリルが死んだのは悲しいが、いつまでも悲しんでいられない3人はアヤからクエストを受けてモンスターを退治しに来ていたのだ。

 

「さて、今日もがんばりますか」

 

 夢人が2人に笑いかけながら先頭を歩くが、ユニとファルコムは俯いたまま黙っている。

 

 特に、ユニは自分がリンダを中途半端に攻撃したせいで、リンダがフェンリルに攻撃をしたのだと考えていた。

 

(……結局、アタシは何も……)

 

 目の前で消えていくフェンリルの姿が、もし自分の姉であったのなら……

 

(アタシは……もう……)

 

 そんなユニの様子を見て夢人は近づきながら声を掛けた。

 

「ユニ?」

 

 呼ばれたことに気付いたユニはゆっくりと顔をあげて夢人を見た。

 

「……辛いなら帰るか?」

 

 夢人はユニに真剣な顔で尋ねた。

 

「……大丈夫よ、アンタこそ足手まといにならないでよ」

 

 ユニは夢人から視線を外しながらそう言い、ダンジョンに先に歩いていった。

 

「……ったく、無理して」

 

 夢人はそんなユニの姿を見てため息をついてファルコムにも声を掛ける。

 

「お前の方は平気か? ファルコム」

 

 ファルコムは夢人の言葉に顔をあげて、少し困った顔で笑顔を造った。

 

「……正直フェルの気持ちを考えれば辛いけど、大丈夫だよ……それより、今はユニの方が心配かな」

 

 ファルコムは応えながら先を歩いているユニを心配そうに見る。

 

「まあ、そうそう緊急事態に陥るわけはないからな……何かあれば逃げればいいんだしな」

 

 夢人はそうおどけながらファルコムに応える。

 

 それを聞いてファルコムも苦笑しながら言う。

 

「そうだね……よし、行こうか!」

 

 ファルコムは気合いを入れて夢人と共に先を歩いているユニに追いつこうと歩き始めた。

 

 

*     *     *

 

 

 一方、リンダとワレチューはセプテントリゾートの奥に辿り着いてゲイムキャラを探していた。

 

「……ったく、ホントに『アイツ』の情報が当てにできんのかよ? メチャクチャ怪しい奴だったし、ここまで来て骨折り損のくたびれ儲けってのはなしだぜ」

 

 リンダはつかれた顔をしてつぶやいた。

 

 そんな姿を見てワレチューは呆れながら言う。

 

「……まったく、これだから下っ端は根性ないっちゅね、無ければ無いで『アイツ』をマジェコンヌから追い出す理由になるっちゅ」

 

 ワレチューもゲイムキャラの情報を伝えた人物が気に食わないのか、顔をしかめながら言う。

 

「まぁ、それならいっ……!」

 

 リンダは言葉を続けようとしたが、目の前の状況を見て言葉を止めた。

 

「居やがったぜ!」

 

 リンダはゲイムキャラを発見すると、獰猛な笑みを浮かべてワレチューと共にゲイムキャラに近づく。

 

「ようやく見つけたぜぇ、ゲイムキャラさんよ!」

 

 リンダはゲイムキャラに向かって刀を向ける。

 

〔……お前達、いったい誰だ? なぜここがわかった?〕

 

 ゲイムキャラは目の前のリンダ達がなぜ自分の居場所を見つけられたのか分からず疑問の声を上げる。

 

 ゲイムキャラは強力な力を持つために、その大陸の教会にしか居場所が伝えられていないはずであった。

 

 しかし、リンダ達はゲイムキャラがいるとわかってここにやってきた。

 

「んなことは、どうでもいいんだよ! こっちはさっさとテメェを破壊してこんなところからオサラバしなきゃいけねぇンだよ!」

 

 リンダがゲイムキャラの疑問に答えず刀を振り下ろそうとする。

 

「待つっちゅ」

 

 ワレチューはリンダを止める。

 

「んだよ! テメェ、邪魔すんじゃねぇよ!」

 

 リンダは止められて不機嫌そうにワレチューに向かって言う。

 

「今の状況は好都合っちゅ、この機会にゲイムキャラを調べておけば、あと後役に立つっちゅ……そうすれば、昇進間違いなしっちゅよ」

 

 ワレチューの言葉にリンダは少し考えてから頬の口角をあげて応える。

 

「……おもしれぇじゃねぇか、上手く行けばあのくそ女神どもの度肝を抜けるっつうわけか」

 

 リンダが自分の考えに賛成したことを見届けてから、ワレチューはマジェコンヌ製のウイルスディスクを取り出しゲイムキャラに近づける。

 

「おいら達マジェコンヌのためにゲイムキャラを利用させてもらうっちゅ」

 

〔や、やめろ!?〕

 

 ゲイムキャラは自身に近づいてくるワレチューに叫ぶが、その声を無視してワレチューはゲイムキャラにウイルスディスクを使う。

 

〔くっ!?〕

 

 ウイルスディスクを使われたことで、ゲイムキャラは苦しそうな声をあげる。

 

「……成功っちゅね、これであとはお前を調べあげればゲイムギョウ界はマジェコンヌのものになるっちゅ」

 

 ワレチューもウイルスディスクがゲイムキャラに効果があることを見てほくそ笑みながら言う。

 

 

*     *     *

 

 

「……何かおかしくないか?」

 

 夢人はダンジョンに入ってから不思議に思っていた。

 

「そうだね、モンスターに一匹も会わないなんて異常だよ」

 

 ファルコムの言うとおり、夢人達はセプテントリゾートに入ってから一度もモンスターに会っていなかった。

 

「昨日までは普通にモンスターがいたのにどうなっているんだ?」

 

 夢人が疑問の声を上げる。

 

 その時、夢人のポケットから電子音が響いた。

 

「ん? 通信か、いったい誰……ケイさんから?」

 

 夢人はNギアを取り出して着信を確認すると、意外な人物の名前があった。

 

「ケイさんから連絡が来るなんてどうしたんだろ……はい、もしもし?」

 

 夢人はケイから連絡が来たことを疑問に思いながら通信を受け取る。

 

〔夢人君かい!? 実は大変なことが起こったんだ!〕

 

 ケイはいつもの冷静な態度からは想像がつかない程慌てていた。

 

「ど、どうしたんですか!? そんなに慌てて!?」

 

 夢人は驚いて慌ててケイに落ち着くように言う。

 

〔ラステイションのシェアが急激に低下し始めたんだ!〕

 

「な!? どうして!?」

 

 その言葉を聞いて驚愕する。

 

〔おそらくゲイムキャラに何かがあったのだろう……僕はラステイションのシェアを保つためにゲイムキャラに協力をお願いしていたからね〕

 

 ケイは次第に落ち着きだし夢人達に伝えた。

 

〔……もしゲイムキャラが破壊されてしまったら、ラステイションのシェアはマジェコンヌに奪われてしまう……どうにか阻止してくれないか〕

 

 ケイは申し訳なさそうに夢人達に言う。

 

〔君に頼むのは筋違いかもしれない……今までゲイムキャラの存在を隠していたのに……それに、君にとって恩があるプラネテューヌを敵と言ったんだから……〕

 

 ケイが言葉を続けようとしたが、夢人はそれを遮りながら言う。

 

「ゲイムキャラの居場所は一体どこなんだ?」

 

 そんな夢人の言葉に驚き、ケイは尋ねる。

 

〔助けてくれるのかい?〕

 

「当たり前だろ? 俺たちだってゲイムキャラに協力をお願いしなきゃいけないだ、早く教えてくれ!」

 

 夢人はそんなケイに笑いながら言う。

 

〔セプテントリゾートの奥に居る……どうか彼女を助けてくれ〕

 

ケイはそれを聞いても申し訳なさそうな顔を崩さずに夢人に頼む。

 

「任せとけ!」

 

 夢人はそれだけ言うと通信を切り、ユニとファルコムに視線を送る。

 

「状況は最悪だがどうする?」

 

 ファルコムはそれを聞いて笑みを浮かべながら言う。

 

「もちろん手伝うよ」

 

「ラステイションはアタシの国なのよ、当り前じゃない!」

 

 ユニも力強く答えたことで、夢人は笑みを浮かべながら言う。

 

「よし! 行くぞ!」

 

 3人は走ってセプテントリゾートの奥へと進んだ。

 

 

*     *     *

 

 

 夢人達がケイから連絡を受ける少し前

 

 ラステイションのギルド

 

 そこではフェルが自分の借りている部屋で膝を抱えて座っていた。

 

 その顔はいまだフェンリルを喪った悲しみを乗り越えておらず、俯いていた。

 

「……ボクの……恐れていること……」

 

 フェルは朝の夢人の言葉を聞いていた。

 

 直接顔を合わせることはできなかったが、ドア越しに彼の言葉を聞いてからその意味を考えていた。

 

「……それでもボクは怖い……」

 

 フェルが俯いて涙をこぼし、床に染みをつくる。

 

 フェルは恐れていることが何かはわかっている。

 

 それでも決心がつかず、一歩踏み出すことができない。

 

「……ボクには……!」

 

 1人言葉をこぼしていたフェルだが、急に彼の右手が光だす。

 

「え?」

 

 光はやがて彼の右手の甲に集まり、狼の顔に似た紋章に変わった。

 

 フェルは両親に魔物使いのことを学んでいたが、こんな現象は知らない。

 

 もちろん、彼が持っていた知識にも無かった。

 

 しかし、彼は無意識に左手で紋章に触れる。

 

「……温かい」

 

 その温かさをフェルは知っていた。

 

「……生きていた……生きていたんだ!」

 

 フェルは涙を止めることができなかった。

 

「フェンリルは……ボクの中で生きていたんだ!」

 

 フェンリルの温かさを感じていた。

 

 そして、フェンリルがフェルに何でこのタイミングで彼の前に現れたのかもわかった。

 

「……そうだね、今度はボクの番だ!」

 

 フェルは勢いよく立ちあがると、一目散に部屋を飛び出した。

 

 そして、ギルドのカウンターに居たアヤに尋ねる。

 

「アヤさん! ファルコム達は!」

 

 アヤはそんな様子のフェルに驚きを隠せない。

 

「フェル君!? もう大丈夫なの?」

 

 アヤは驚きつつもフェルを思いやって優しく尋ねる。

 

「はい! それより、ファルコム達は!」

 

 フェルはそんなアヤの様子に構わず尋ねる。

 

「今日はセプテントリゾートにモンスター退治に向かってもらったわよ」

 

 アヤはとりあえずフェルが持ち直した様子に安堵してから、フェルの疑問に答える。

 

「……セプテントリゾート」

 

 フェルはそれを聞くと、ギルドを走って出ていこうとする。

 

「うわ!?」

 

「きゃ!?」

 

 しかし、ギルドに入ろうとした人とぶつかってしまい、尻もちをついてしまった。

 

「痛たたた……君、大丈夫?」

 

 フェルとぶつかった人は倒れていなかったようで、フェルに手を差し伸べた。

 

「……は、はい……!?」

 

 フェルはその手の主を見て驚いた。

 

「どうしたの? 私の顔に何かついてる?」

 

 その人物はフェルの態度を疑問に思い首をかしげた。

 

 

*     *     *

 

 

 時と場所は戻り、セプテントリゾート

 

 リンダはワレチューの作業が終わらずいらついていた。

 

「いつまでかかってんだよ! さっさと終わらせろよ!」

 

「……もう6割は解析が終わったちゅ、あともう少しっちゅよ」

 

 ワレチューはそんなリンダの様子を気にせず、作業を続ける。

 

〔くっ! や、やめろ!〕

 

 ウイルスディスクの浸食によってゲイムキャラは苦しみながら言う。

 

 ゲイムキャラ自身も次第に今まで自分が放っていた光が無くなっていくことに気付いた。

 

(このままでは!?)

 

 光の力が弱まることはそれだけラステイションのシェアが低下していっていることを理解しているため焦りだす。

 

「いた! お前ら! それ以上はやめろ!」

 

 夢人達がついにゲイムキャラの場所までたどり着いた。

 

「んげ!? またお前らかよ、ホントしつけぇ連中だな!」

 

 夢人達の姿を確認したリンダは刀を構えだす。

 

「あともう少しだけで終わるっちゅから時間を稼げっちゅ」

 

「言われなくても分かっているよ!」

 

 リンダはワレチューの言葉を聞いて夢人達に斬りかかる。

 

「くっ! ここはあたしに任せてゲイムキャラを!」

 

 リンダの攻撃をファルコムは剣で受け止めながら夢人達に言う。

 

「わかったわ!」

 

「頼む!」

 

 ユニと夢人はそれを確認するとワレチューに向かって駆け出す。

 

「あ! コラ、待ちやが……!?」

 

 リンダが慌てて夢人達を妨害しようとした時、ファルコムが割って入りそれを阻止する。

 

「君の相手はあたしだよ!」

 

「この、退きやがれ!」

 

 2は互いの武器を激しくぶつけあいながら戦い始めた。

 

「……ホント下っ端は役立たずっちゅね」

 

 ワレチューは近づいてくる夢人とユニを見ながらため息をついた。

 

「これ以上、ゲイムキャラに危害は加えさせないわ!」

 

 ユニは銃を構えてワレチューに照準を合わせた。

 

 ワレチューはその姿を見てモンスターの吸収されているディスク、モンスターディスクを2枚取り出した。

 

「お前らの相手はこいつらっちゅ!」

 

 ワレチューはモンスターディスクを夢人達に投げつけて、辺りに強烈な光が発生する。

 

 光が収まると同時にモンスターディスクに吸収されていたモンスターが現れた。

 

「な!?」

 

「嘘!?」

 

 夢人達はそのモンスターを見て驚いた。

 

 モンスターディスクから現れたのは2匹のフェンリルであった。

 

「お前らの仲間だった奴と同じ種類のモンスターっちゅ! 攻撃できるのならしてみるっちゅね!」

 

 ワレチューは得意げに言いながら夢人達へ攻撃するように命令を出した。

 

「くそ!?」

 

 夢人はフェンリルの攻撃を何とか避けることに成功する。

 

「きゃああああ!!」

 

 ユニはフェンリルの姿を見て動揺してしまい、動くことができないでいたところをフェンリルの攻撃を受けて吹き飛ばされてしまった。

 

「ユニ!? ってあぶねえ!?」

 

 夢人はその姿を見ながらユニに向かって駆け寄ろうとするが、ユニを襲っていたフェンリルも夢人に向かって攻撃を加えようとして来た。

 

「ちょ!? なんで俺だけ!?」

 

 2匹のフェンリルに攻撃をされながらも四苦八苦しながら避けることに専念する夢人。

 

「そっちの女は放っといておいらを火傷させた男をやるっちゅ! もっと徹底的に攻撃するッちゅ!」

 

 ワレチューは夢人に対して恨みのこもった目でにらみながらフェンリルに命令する。

 

「私怨かよ!? って、本当にヤバ!?」

 

 夢人は次第に激しさを増すフェンリルの攻撃を避けられず、小さい傷を造りながら避ける。

 

 ユニはそんな夢人の姿を見ても動くことができずにいた。

 

 

*     *     *

 

 

 アタシは、戦えない……

 

 あの時、フェルのフェンリルが消えた時……

 

 アタシはフェンリルが自分の姉に見えた。

 

 アタシを残していなくなった姉に姿が重なった……

 

 別のフェンリルだってわかっている。

 

 倒さなきゃラステイションを救えないってわかっている。

 

 それでも……

 

 体が動かない。

 

 手や足に力が入らない。

 

 立ち上がれない……

 

 アタシはフェンリルを、姉を攻撃できない。

 

 フェンリルを攻撃すれば、フェルにまたあの視線を受けてしまうと思ってしまう。

 

 アタシに対して恨みを持つ視線。

 

 いやだ! そんな目で見ないで!

 

 そうだ……

 

 フェルはアタシだ。

 

 アタシがネプギアに向ける感情と同じなんだ。

 

 姉が助からずネプギアだけ助かったことをアタシは恨んでいたんだ。

 

 奴隷の言った通りだ……

 

 アタシとフェルは同じだ。

 

 似たようなことで悩んでいる。

 

 アタシはネプギアを、フェルは女神を。

 

 まるで鏡を見た自分の姿にアタシはおびえているのと同じだ。

 

 だから、アタシは攻撃できない。

 

 アタシはもう恨まれたくない。

 

 アタシは傷つきたくない。

 

 こんなアタシは消してしまいたい。

 

 姉なら、お姉ちゃんなら……

 

 アタシは何で何もできないの……

 

 ……もう、どうでもいいかな。

 

 もう、ラステイションのことも……

 

 お姉ちゃんのことも……

 

 そんなアタシの前には1人の男の姿があった。

 

 アンタは……どうして……

 

 フェル……

 

 

*     *     *

 

 

 夢人が必死になってフェンリルの攻撃を避けていると、1人の少年がこの場に走ってきた。

 

「待て!」

 

 その少年、フェルはワレチューに叫ぶ。

 

「フェル!?」

 

 夢人はフェルが走ってきたことに驚きの声を上げる。

 

「ん? お前はあのフェンリルを連れていた奴っちゅね」

 

 ワレチューはフェルの姿に見覚えがあった。

 

 ワレチューはフェルがフェンリルを従えていたことを思い出し、笑いながらフェルに言う。

 

「ちょうどいいっちゅ、おいら達と同じマジェコンヌに入らないっちゅか?」

 

 ワレチューは右手をフェルに差し出しながらマジェコンヌに勧誘する。

 

「お前のモンスターを使役する能力は貴重ちゅ、お前さえよければマジェコンヌで好待遇間違いなしっちゅ!」

 

 フェルはそんなワレチューを睨む。

 

「……なんちゅか? ああ! もしかしてあのフェンリルの代わりがほしいちゅか?」

 

 ワレチューはフェルがなぜ自分にそんな視線を向けるのかがわからず考え、フェンリルがいないことを確認した。

 

「あんな弱いフェンリルよりももっと強いフェンリルを用意するッちゅ! それならいいっちゅよね?」

 

 ワレチューは絶対の自信を持ってフェルに誘い続ける。

 

 フェルはその言葉を聞いて俯く。

 

 フェルの様子を見ていたユニは不安そうにフェルを見る。

 

 フェルは自分だとさっき気付いたユニは、もし自分が姉に会わせるからマジェコンヌに入れと言われれば断る自信がない。

 

 フェルも断れないと思っていた。

 

「断る!」

 

 しかし、そんなユニの考えはフェルの叫びで消えた。

 

 フェルはワレチューの勧誘を強く拒否した。

 

 その視線はワレチューに対して怒りがこもっていた、

 

「……どうしてっちゅか? まさか、あんな弱いフェンリルに未練があるなんてことはないっちゅよね?」

 

 ワレチューはフェルを信じられないと言った表情で見ながら尋ねる。

 

「弱い強いは関係ない! あのフェンリルはボクにとって大切な家族なんだ! その代わりなんていないんだ!」

 

 フェルはワレチューに叫びながら応える。

 

 そんなフェルの様子を見てワレチューはやれやれと肩をすくめながら言う。

 

「賢い選択じゃないっちゅ、世の中そんな甘くないっちゅよ? お前だってモンスターを使役することがわかれば、女神を信仰する者にとって敵なんちゅよ? それでもいいんちゅか?」

 

 ワレチューはフェルがただのわがままを言っていると思い勧誘を諦めない。

 

「お前はモンスターを使役できる時点でマジェコンヌ側っちゅ、素直に本当の自分を思い出すっちゅよ……それとも誰も味方のいない人生を選ぶっちゅか?」

 

 ワレチューは最終通告だと言わんばかりにフェルを睨みながら言う。

 

 フェルはその言葉を聞いてもワレチューを睨むことをやめない。

 

「そんなことない! ボクには仲間が! 大切な人がいる!」

 

 フェルの叫びにワレチューが反論する。

 

「そんなの口から出ただけのただの言葉っちゅ、信じられるものじゃないっちゅよ!」

 

 ワレチューはフェルがいつまで経っても自分達の仲間にならないことに苛立ち叫ぶ。

 

「お前は普通の人間じゃないっちゅ! お前はずっと一人ぼっちのままでいいんちゅか!」

 

 そんなワレチューの叫びを聞いてもフェルは強く言い放つ。

 

「こんなボクを大切だと言った人がいた! こんなボクを愛した人がいた! 彼らが大切に思うのならボクも彼らが大切だ! 愛している!」

 

 フェルは叫びながら右手に狼の紋章を浮かび上がらせる。

 

「ボクは戦う! ボクを愛した人のために! ボクの大切な人と生きるために! このゲイムギョウ界を守ってみせる!」

 

 フェルの右手の狼の紋章から強い光があふれだす。

 

「な、なんちゅか!? フェンリル! そいつからやるっちゅ!」

 

 ワレチューは慌ててフェンリルにフェルを攻撃するよう命令を出す。

 

「フェル!?」

 

 夢人はフェルが攻撃の対象になったことに焦り叫ぶが、フェンリルの攻撃を受け続けたためフェルの所まで走れない。

 

「行くよ! これがボクの本当の力だ!!」

 

 そう言ったフェルを中心に光の柱が生まれる。

 

 まるで女神の『変身』のような現象が目の前で起こり、夢人達は驚いた。

 

「な!? 男が『変身』するっちゅか!?」

 

 ワレチューもまさか女神の『変身』と同じような現象が起こるとは思っていなかったために驚く。

 

 やがて、光が収まると同時にフェルが姿を現す。

 

 しかし、その姿は今までの姿ではなかった。

 

 頭には耳、手には鋭い爪、お尻には尻尾が生えていた。

 

「これがボクの本当の力、『人魔一体』!」

 

 フェルは叫びながら近づいてくるフェンリルに爪を向ける。

 

 『人魔一体』

 

 それはフェルが自身の使役するモンスターと一体化する能力であった。

 

 彼はこの能力を『特典』としてもらっていたのである。

 

 理由は、彼がこの世界の男性が強い力を持つことができないため他から持ってこようと考えたのである。

 

 それに加えて彼が前世での出来事から絶対の味方を望んだ結果である。

 

 彼を裏切らないモンスターと一体化することで彼はそのモンスターの能力を扱えるようになるのだ。

 

「な!? そんなのこけおどしっちゅ!?」

 

 ワレチューはそのフェルの姿を見ても攻撃をするよう命令する。

 

 しかし、フェルは体勢を四つん這いにして素早く二匹のフェンリルの攻撃を避ける。

 

「遅い!」

 

 すれ違いざまにフェルはフェンリルを切りつける。

 

 今のフェルはフェンリルと同等以上の戦闘能力を持っている。

 

「もうこれ以上、ボクの大切な人を傷つけさせない!」

 

 フェルは叫びながら二匹のフェンリルと戦い続ける。

 

 

*     *     *

 

 

 アタシは信じられなかった。

 

 目の前でフェルが戦っている……

 

 恨んでいたはずの女神、アタシのことを守りながら。

 

 アタシのことを大切だと叫びながら……

 

 嬉しい。

 

 こんなアタシを……

 

 できそこないで、消えてしまいたいと思っていたアタシを……

 

 大切だと言っている。

 

 ああ、今ならわかる。

 

 あの夜、奴隷がアタシに言った言葉の意味が……

 

 

*     *     *

 

 

「知ってるか……生きていくために必要なこと」

 

 アタシは意味がわからないかった。

 

 そんなの答えのない問題と一緒じゃない。

 

「そんなのわかんないわよ」

 

 アタシは正直に答えた。

 

 そんなアタシを見て奴隷は笑いながら言った。

 

「自分を信じることさ」

 

 奴隷はそう言って空を見上げた。

 

「……人ってさ、どうしても孤独に感じる生きものだと俺は思うんだ。自分の考えは他人に分かんないし、他人の考えも自分には分かんない」

 

 奴隷が言葉を続けるが意味がわからない。

 

 そんなことは当たり前だ。

 

「でもよ、そんな中で絶対の自分の味方がいるんだよ」

 

 そう言って奴隷は私の方を見て笑いながら右手の親指を胸に指さして言った。

 

「自分だよ。自分だけが自分を信じてくれる絶対の味方なんだ」

 

 アタシはそれでも意味がわからなかった。

 

 そんな当たり前だ。

 

「それでも人って1人になると自分を信じられないんだよ……だから、感情を殺して機械のようになっちまう、ちょうど最初に出会ったお前のようにな」

 

 失礼な!?

 

「アタシは機械なんかじゃない!」

 

 アタシは思わずそう叫んだ。

 

 当り前だ!

 

 アタシはアタシ、ユニなのだ!

 

「それだけ言えりゃ十分だ……さて、帰るぞ」

 

 アタシの返答を聞いて、奴隷は満足そうに教会への帰り道に戻る。

 

 待ちなさいよ!

 

 アタシを侮辱した罪は重いわよ!

 

 アタシはその後ろ姿に持っていた缶を奴隷の頭めがけて投げつけた。

 

 狙い撃つ!

 

 缶は見事に奴隷の頭に当たり、奴隷はその衝撃で転んだ。

 

 ざまぁ見ろ!

 

 

*     *     *

 

 

 そうだ……

 

 アタシはアタシだ。

 

 あの時はわからなかった。

 

 アタシはいつもお姉ちゃんに頼っていた。

 

 ケイの言葉にもいつもお姉ちゃんを理由に反論していた。

 

 それじゃダメだった。

 

 アタシの答えを出さないとだめだったんだ!

 

 なんだ。

 

 アタシってダメダメだったんじゃない。

 

 アタシは自然と笑いたくなってきた。

 

 アタシが一番アタシを信じられなかったんだ。

 

 ネプギアの言うとおりだ。

 

 アタシの中のアタシはいつも泣いていた。

 

 アタシはアタシの中のアタシを否定していたんだ。

 

 理想の姿、お姉ちゃんになろうとしていた。

 

 ダメだ!

 

 アタシはアタシで、お姉ちゃんはお姉ちゃんだ!

 

 アタシはアタシのやり方で皆に、奴隷に証明しなくてはいけなかったんだ。

 

 お姉ちゃんじゃない……

 

 アタシ自身を証明しなくちゃいけない!

 

 なら、することは1つだ。

 

 今立ち上がらなくてどうする。

 

 アタシが絶対に一番だって……

 

 ネプギアに負けてないってところを見せつけてやる!

 

 誰でもない、アタシが!

 

 アタシの方が上だってことを!

 

 今なら言える!

 

 アイツと同じ言葉が!

 

 本当の意味で!

 

 だって、アタシがアタシを信じているんだから!

 

 

*     *     *

 

 

 フェルとフェンリルは戦闘を続けているが、どちらも決め手に欠けていた。

 

 フェルは『人魔一体』を使用していても、基本的に彼はフェンリルのスペック以上の力を発揮できない。

 

 相手もフェンリルであるので、彼は実質2対1の状況なのである。

 

 その事実がわかっているフェルは次第に焦りだす。

 

 それに彼は今まで『人魔一体』を使ったことが無いことに加えて戦闘の経験がない。

 

 いくら強大な力を持っていても戦闘経験の差でやられてしまう。

 

 今はまだ相手のフェンリル達も自分の動きについてこれないでいるが、いずれは同じスピードであることに気づかれてしまう。

 

 夢人はそんなフェルを見て助太刀に入ろうと思っているのだが、あまりのスピードの違いに割って入ることができないでいた。

 

 そんな時、光の柱が生まれた。

 

 その光に驚き、全員が動きを止めて光の柱を見る。

 

 やがて、光が収まると『変身』したユニが黒いプロセッサを纏い浮いていた。

 

「ユニ?」

 

 ユニは目をつぶっていた。

 

 そんなユニめがけてフェンリルは素早く攻撃を仕掛けた。

 

「ユニ!?」

 

 フェンリルが近づいているというのにユニは目をつぶったままでいたのを見て夢人は叫んだ。

 

 しかし、フェンリルの攻撃はユニに当たることはなかった。

 

 ユニは目をつぶったままフェンリルの攻撃を避け、その体にXMBの銃口を接触させた。

 

「吹き飛びなさい!!」

 

 ゼロ距離からユニは何度もフェンリルに攻撃をする。

 

 フェンリルもその衝撃によって吹き飛ばされ、やがて光となって消えた。

 

「な!? そんなあっさりフェンリルがやられるなんて!?」

 

 フェンリルがあっさりやられたことを見てワレチューは驚く。

 

「お、お前は何者っちゅか!? お前みたいな女神知らないっちゅ!?」

 

 ワレチューは叫びながらユニを指さす。

 

「知らないなら覚えておきなさい」

 

 ユニはゆっくりと目を開けながらワレチューにXMBを向けた。

 

「アタシはブラックシスター、ラステイションの女神候補生のユニよ!!」

 

 ユニはそう言うと飛翔しながらフェンリルへと攻撃をビームに変えて撃ち続ける。

 

「ガウ!?」

 

 ユニの的確に急所を狙う攻撃にたまらずフェンリルは暴れ出しながらユニを攻撃する。

 

 しかし、ユニはそれを華麗に避け続ける。

 

「何で当たらないっちゅか!? もっとよく狙うっちゅ!」

 

 ワレチューは明らかに接近戦が苦手なユニがフェンリルの爪や尻尾による攻撃を避けていることが信じられず叫ぶ。

 

「アタシをそん所そこらの女神候補生と一緒にしないでほしいわね」

 

 ユニは余裕の笑みを浮かべながら言う。

 

「アタシは……アタシこそが!」

 

 ユニはフェンリルの爪の攻撃を避けてから後ろ足を攻撃し宙に浮かす。

 

 そして、重力によって落ちてくるフェンリルをXMBで支えながら叫ぶ。

 

「女神候補生の一番よ!!」

 

 そう言うと、先ほどと同じようにXMBに内蔵されている弾丸をフルバーストさせた。

 

 その攻撃によってフェンリルは光となり消える。

 

 フェンリルが2匹ともやられたことに驚いてワレチューは慌てる。

 

「やばいっちゅ!? 下っ端! ここは……!?」

 

 下っ端に撤退するように言おうとしたが、すでに下っ端はファルコムに倒されていた。

 

「こっちはもう終わったよ……後は、君だけだ」

 

 ファルコムも剣の切っ先をワレチューに向けながら言う。

 

 ワレチューはすでに詰んでいる状態にどうすることもできずにいた。

 

(ど、どうすれば!? そうっちゅ!?)

 

 ワレチューは一目散にゲイムキャラに向かって走り出す。

 

 ワレチューはゲイムキャラを人質にしようとした。

 

 しかし、それはできなかった。

 

「ゲイムキャラさんはこれ以上、傷つけさせません!」

 

 『変身』したネプギアがワレチューの進路を妨害する。

 

 ネプギアはギルドで慌てていたフェルが自分の顔を見て驚いた表情で見たことが気になり、後を追っていたのである。

 

「あなたの負けです、降参してください」

 

 ワレチューにMPBLを向けながら言う。

 

 ワレチューはその状況を見て観念したようにへたり込む。

 

「もうダメっちゅ~、最後にこんぱちゃんに会いたかったちゅ……」

 

 ワレチューがそう言うとネプギアの後ろからコンパが顔を出した。

 

「わたしに用事ですか? ネズミさん?」

 

 コンパの姿を確認したワレチューは驚きながら目をハートの形に変えて立ち上がった。

 

「こんぱちゃん!? 愛しの天使こんぱちゃんがどうしてここに!?」

 

 コンパの登場に動揺するワレチューだが、コンパは怒ってますと言った表情でワレチューに言う。

 

「ゲイムキャラさんに悪いことするネズミさんは嫌いです! ネズミさんはわたしの敵です!」

 

 コンパが指をさしながらワレチューに言う。

 

 その言葉を聞いたワレチューはショックで黒いからだが白くなってしまった。

 

「そ、そんな……」

 

 そのまま俯いて動かなくなってしまう。

 

「……あのネズミ、マジェコンヌの一員だったなんてね」

 

「コンパもあんな奴治療しなければよかったのに」

 

 アイエフと青い髪のライダースーツの女性が現れた。

 

「……いいや、まだ諦めないっちゅ! 絶対こんぱちゃんを振り向かせて見せるっちゅ!」

 

 アイエフ達の言葉を聞いてワレチューは黒いビー玉を取り出して地面に叩きつけた。

 

 すると、辺り一面に強烈な光がさく裂した。

 

 その場に居た全員が一時的に視力が奪われてしまった。

 

 その隙にワレチューはリンダを海に落として自分も海に向かって逃げ出した。

 

 夢人達が視力を回復させた頃にはすでにワレチュー達の姿は見当たらなかった。

 

「逃がしたか」

 

 夢人は悔しそうに言う。

 

 そんな中、ユニは『変身』を解き、ネプギアに近づいた。

 

「ユニちゃん?」

 

 ネプギアも『変身』を解き、そんなユニの姿を疑問に思いながら首をかしげる。

 

「ネプギア、アンタに言いたいことがあるの」

 

 ユニはそんなネプギアの姿を気にせず言う。

 

「アンタがお姉ちゃんたちを助けてゲイムギョウ界を救いたいって言うことは知っているわ」

 

 ユニはほほ笑みながら言う。

 

「でもね、アンタより先にアタシが救って見せるわ」

 

 ユニは自信満々に左手を胸に持ってきながら言う。

 

「アタシの方がアンタよりもずっと、ずーっとゲイムギョウ界のことが好きなんだからね!」

 

 ユニの顔は花が咲いたように綺麗な笑顔であった。




ということで、今回は終了!
ラステイション編、ついに完結であります
いやぁ、思ったよりシリアスになってしまってどう軌道修正しようと考えに考えてこのまま突っ走ることにしました
それに見事主役級の活躍を見せたユニちゃんとフェル君はまさにヒロインとヒーローですね!
あれ?途中から夢人君が空気?ああ、いつも通りか…
むしろ、フェル君主人公にしたほうが…
というところで、次の話はラステイション編のおまけでユニ視点の話です
今回は本編後のケイとの会話やネプギアとの会話などの本編に入れなかった内容も入れていく予定なのでお楽しみに!
それに加えて、次の次はネプギア側のラステイション編で矛盾点を補完していく予定なのでよろしく!
それでは、次回 「女神通信(ユニ編)」 をお楽しみに!
今日はもう投稿できないな…

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