超次元ゲイムネプテューヌ 夢のヒーローを目指して   作:ホタチ丸

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はい、皆さんこんばんわ!
今日はついに激ノワが発売されましたね!
私も限定版を手に入れましたよ! ……でも、まだプレイできてないんですよね。
それでは、 強く、雄々しく、たくましく はじまります


強く、雄々しく、たくましく

「……おい、アレはいったいどう言うことなんだよ?」

 

「……いや、その、アレはだな……すまん、俺にもわからない」

 

 ギョウカイ墓場、黒い塔の最上階でリンダは空間に映し出されたモニターを呆れた目で見ていた。

 

 隣にいる夢人は気まずそうにモニターから視線をそらして、冷や汗をだらだらと流している。

 

 ……モニターには、ラステイションで起こっている戦いがリアルタイムで映し出されていたのだ。

 

 そして、夢人が体を“再現”して復活を遂げたはずのブレイブが活躍する所が流れるはずだったのだが……

 

「おいおい、知らねぇって嘘つくんじゃねぇよ!! テメェ以外に誰がブレイブ様をあんな姿にしたって言うんだよ!!」

 

「俺だってこんなことになるなんて思わなかったさ!? 俺はただエヴァが出してくれた情報をそのまま“再現”したはずだったんだよ!?」

 

「はあっ!? だったら、どうして……」

 

「その答えは簡単です」

 

 夢人の胸ぐらを掴み上げながら怒鳴り続けるリンダをエヴァは宥めて困ったように笑みを浮かべる。

 

「『再誕』の女神ではない勇者が扱えるシェアエナジーは、その鍵が接触している部分だけなのです。ですから、その分“再現”に使えるシェアエナジーが少なくなっているのです」

 

〔……つまり、ブレイブ・ザ・ハードの体を“再現”するために使われたシェアエナジーはその鍵穴程度のものだったと言うわけだな?〕

 

「はい、その通りです」

 

 断言するエヴァにワンダーは確認するように尋ねるが、彼女はただ困ったように眉根を下げるだけであった。

 

 夢人がブレイブの体を“再現”したプロセスは、ゲハバーンやグロリアスハーツと同じである。

 

 犯罪神と言う負のシェアエナジーの塊に鍵を接触させ、触れ合っている部分のみを“再現”に利用したのであった。

 

 これがもし、『再誕』の女神であるアカリやフィーナであった場合、鍵の周辺を丸ごと利用することも可能であったであろう。

 

 何故なら、彼女達は鍵に『再誕』の力を流すことで手足のように扱うことが可能である。

 

 しかし、夢人は『再誕』の力に慣れているだけの人間であったため、鍵はあくまで『再誕』の力を使うための道具にしかならない。

 

 これにより、必然的に夢人が扱えるシェアエナジーの量は明らかに彼女達よりも劣るものになる。

 

 その結果が、今の推定50センチほどの大きさしかなく力も弱くなってしまったブレイブである。

 

 なまじ、完璧な情報をエヴァが提示した影響で夢人の扱えるシェアエナジーの量で“再現”されてしまったのであった。

 

「だ、だったら、俺もフィーナのようにブレイブにシェアエナジーを送れば……」

 

「それはやめた方がいいです。今の彼はあの状態で完璧な状態になっていますので、これ以上力を注いでしまいますと自壊してしまう恐れがあります」

 

 慌てて提案された夢人の意見をエヴァは眉間にしわを寄せながら却下する。

 

 フィーナが偽物のブレイブにシェアエナジーを注ぎ込んでいても自壊しないのは、その体が完璧な状態でないからだ。

 

 欠陥があるからこそシェアエナジーを流し続けられるのであって、夢人が“再現”したブレイブに同じことをしてしまえば、すぐにシェアエナジーの過剰供給によって体が崩壊してしまうだろう。

 

「それよりも保護膜の施錠を優先しましょう。再度犯罪神の封印が施されれば、フィーナを止めるだけでなく、ゲイムギョウ界で暴れているブレイブ・ザ・ハード、ジャッジ・ザ・ハード、それにキラーマシン達を1度に止めることが可能です」

 

「そ、そうだな。なら、さっさと……っ!?」

 

 エヴァの言葉に納得し、夢人が未だパネルに差し込んだままの鍵を捻ると嫌な音が鳴りだした。

 

 ……ガキッ、と言うまるで金属が砕けたような音が。

 

 恐る恐る顔を強張らせた夢人がパネルから鍵を引き抜くと、そこには先端部分が欠けてしまい、鍵としての機能を果たしてくれそうにない姿が目に映り込んだ。

 

「か、欠けてる!?」

 

「何やってんだよ、テメェは!?」

 

 欠けてしまった鍵を見て、夢人は驚きを隠せずに大声で叫んでしまう。

 

 焦っていたとはいえ、夢人は鍵が壊れるほどの力を込めていたわけでもなかった。

 

 しかし、実際に鍵は夢人によって壊されてしまい、傍で見ていたリンダも思わず再び彼の胸ぐらを掴み、額がぶつかってしまう程顔を近づける。

 

 リンダの目は血走っており、頬もヒクヒクと引きつっていた。

 

 そんな中、エヴァは困ったように頬に手を当てて壊れてしまった鍵を見つめる。

 

「金属が劣化していたのでしょうか? ずっと幹部達の体内にありましたし、もしかしたら体液で錆びていたのかもしれませんね」

 

〔……いや、問題はそこではないだろう〕

 

「そうでしたね……きっと鍵は寿命だったんですよ。何分古い時代からある物ですから」

 

〔だから、そうじゃないだろ!?〕

 

 的外れな感想を漏らし続けるエヴァにワンダーは勢いよくツッコミを入れる。

 

 真剣に悩んでいるように見えるエヴァが本気で言っているのか、冗談で言っているのかを判断することがワンダーにはできなかったからだ。

 

「ですが、困りましたね。これでは保護膜の施錠ができないではないですか」

 

〔それを最初に心配して欲しかった……はあ〕

 

 エヴァの言葉に、ワンダーは疲れたようにため息をつきながら夢人達の様子を見る。

 

 そこには夢人の上半身を激しく前後に揺するリンダの姿がワンダーの視界に映り込む。

 

 ……そんな2人を見て、ワンダーは静かにとある決意を固めるのであった。

 

 

*     *     *

 

 

 その頃、ゲイムギョウ界の各地では……

 

「粉砕!! テートラシュラーク!!」

 

〔!?!?!?〕

 

 『変身』したブランが手に持つ巨大な斧をキラーマシンを打ち上げるように振り上げる。

 

 懐に入られたことに気付くことが遅れたキラーマシンは斧の一撃を頭部に受け、上体を仰け反らせてしまう。

 

 振り上げると同時に上昇したブランは、今度はキラーマシンの後頭部に目掛けて斧を振り下ろす。

 

 そのままキラーマシンを押し潰すようにブランは力を込めて地面に激突させた。

 

 地面に激突したキラーマシンは頭部を斧で両断され、機能を停止した。

 

 いくらキラーマシンが女神の攻撃を防ぐ装甲を持っていようとも、物理的に押し潰してしまえば関係ない……それがブランが取ったキラーマシンの攻略法である。

 

 キラーマシンが動かなくなったことを確認したブランは、勢い余って地面に突き刺さってしまった斧を引き上げて肩に担ぐ。

 

 そして、ブランは自分とキラーマシンの戦いを後方で見ていた冒険者や防衛隊の職員へと手を伸ばして指示を飛ばす。

 

「よし、このエリアはもう大丈夫だ! 負傷者は後方に退避して街と市民の守護を、平気な奴はわたしと一緒に次のエリアに行くぞ!」

 

『了解です!!』

 

 飛ばされた指示通り、冒険者達は迅速に動き始める。

 

 それを見てブランはわずかに頬を緩め、浮かび上がりながら次に向かう方へと視線を向ける。

 

 まだまだ元気そうな声を出す彼らを目の当たりにして、自身が抱えている悩みが小さいものに思えたのだ。

 

 ……ブランはネプテューヌ達と違って自身がキラーマシンと欠片の影響で暴走しているモンスターの対処しかできないことを気にしていたのである。

 

 ネプテューヌはネプギアの救援のためにギョウカイ墓場に、ノワールはプラネテューヌの転送装置を守るために街の守護を、ベールはナナハを助けるためと言う名目はあるが1人リーンボックスに向かっていた。

 

 もちろん、ブランは自分の力を過信しているわけでも、今自分がしていることの重要性も理解している。

 

 しかし、同じ女神達が任されたことに比べて自分のしていることはどうしても見劣りしてしまうような気がしていた。

 

 ブランにとってネプテューヌ達は友人であると同時に女神としてライバルでもあり、プライドが刺激されていたのである。

 

 だが、ブランは今自分がしていることを誇らしく思える。

 

 自分が来る前はキラーマシン相手に絶望した顔を見せていた冒険者達が、今では活力にあふれている。

 

 女神として、ゲイムギョウ界を守るものとして間近で希望を与えられていると実感でき、胸が熱くなっているのである。

 

 それは決して自身に対するシェアが高まっている影響だけでないことをブランは感じ取っている。

 

 ……女神を信じ、ゲイムギョウ界を守ろうとしている人達がいることが嬉しいのだ。

 

 ブラン達が捕まってから3年間、最近になっていくらシェアを取り戻そうとしたりマジェコンを規制する法案を施行したとしても、犯罪神のシェアは未だ根深く残っている。

 

 これは同時に女神のことを信じていない人達が未だに多くいることを表していたはずだ。

 

 しかし、今ブランはそんな人達だけでないことを肌で感じ取っているのである。

 

(これもネプギアやロム、ラム達が頑張ってくれたおかげだよな……なら、わたしはそれを守る!!)

 

 自分達が捕まっている間に、人々の間に女神の存在と言う希望の種をまいたのはネプギア達であるとブランは考えている。

 

 女神候補生であるネプギア達がゲイムギョウ界を守るために活動をしていてくれたおかげで、人々は女神と言う存在を忘れなかった。

 

 そして今、ゲイムギョウ界の危機に希望の種は大きくその芽を伸ばそうとしている。

 

 ブランはその芽を枯れさせることなく守ることが女神である自分の役目であると感じ取っていた。

 

 その芽がやがて大きな花を……平和なゲイムギョウ界を実現できると信じて。

 

 

*     *     *

 

 

「みんな元気元気!」

 

 わたしは怪我をしてしまった冒険者さん達や防衛隊の職員さん達に治療魔法をかけていく。

 

 ホワイトの先端を怪我をしている人達に向けて丸い魔法陣を展開する。

 

 魔法陣の上にいる人達の怪我が少しずつ治していく。

 

 1度に大勢の人を治療するのはわたしも疲れるけど、このくらいで弱音は吐かない。

 

 だって、わたしの他にもみんな頑張っているんだもん。

 

「アブソリュートゼロ!! 今よ、みんな!!」

 

『うおおおおおおおお!!』

 

 わたしが怪我をしている人達の治療に専念できているのは、ラムちゃんが元気な人達と一緒にキラーマシンを倒していく。

 

 ラムちゃんの魔法で氷漬けになって動けなくなったキラーマシンをみんなで集中攻撃……ちょっと卑怯かな?

 

 でも、悪いことをしているんだから止めなきゃ駄目だよね。

 

「うおおおおおおおお!! ロムとラムには指1本触れさせんぞ!!」

 

 ラムちゃん達以外にも、トリックちゃんが1人でキラーマシンを倒している。

 

 前にアタリー湿原でしていたみたいに、トリックちゃんは舌でキラーマシンを巻きとって地面に何度も叩きつけていた。

 

 ……あの時に夢人お兄ちゃんにしたことを思い出して、ちょっと嫌な気持ちになってしまう。

 

 同時に、夢人お兄ちゃんやネプギアちゃん達のことが心配になってきた。

 

 みんな、大丈夫だよね……

 

「ロムちゃん」

 

「……ラムちゃん?」

 

 わたしが不安になっていると、ラムちゃんがすぐ傍にまで来て両手を包んでくれた。

 

 ラムちゃんのわたしを安心させるように柔らかく笑いながら口を開く。

 

「心配しなくても、夢人やネプギア達はきっと大丈夫よ」

 

「……どうしてわかったの?」

 

 不安に思っていたことを言い当てられ、わたしは目を見開いて驚いてしまう。

 

 不思議に思ったわたしは首をかしげながら尋ねるんだけど、ラムちゃんはニッと笑って見せる。

 

「だって、ロムちゃんのことだもん。わたしがわからないわけないよ」

 

「ラムちゃん……」

 

「心配なのはわたしも同じだよ。でも、絶対にみんなは大丈夫だよ。それに、わたし達がもーっと頑張ればすぐにみんなを助けに行けるはずだから」

 

 そう言って、両手から手を離したラムちゃんは口元を緩めてナチュラルホワイトをわたしに向けてきた。

 

 わたしもその意味を理解して、ナチュラルホワイトにホワイトをくっつけて頬を緩めた。

 

「うん! やろう、ラムちゃん!」

 

「うん! いくよ、ロムちゃん!」

 

 頷きあって目を閉じると、わたし達の体が温かいものに包まれる。

 

 ラムちゃんをすぐ傍に感じる。

 

 わたし達の体が1つになっていく。

 

 ……目を開けると、視線は高くなり、腕や足はすらりと伸びた大人の女性の体にわたし達はなっていた。

 

 ラムちゃんと合体した姿、スーパー女神ホワイトシスターになったんだ。

 

 ホワイトシスターになると、周りの冒険者さん達が驚いたようでボーっとわたし達を見つめてくる。

 

 ……ちょっと恥ずかしいな。

 

 注目されるのはちょっと照れくさくて、頬が少しだけ熱を持つけど、まずはモンスター達をどうにかしないと。

 

 わたし達は両手にそれぞれ握っているホワイトとナチュラルホワイトを強く握ると、暴れているモンスター達に向かって飛んで行く。

 

 そして、戦っている冒険者さん達を巻き込まないように注意して、先端で十字を描くようにホワイトとナチュラルホワイトを振るい、魔法を展開する。

 

「ノーザンクロス!!」

 

 上空に緑色の魔法の球体を4つ作り、暴れているモンスター達を囲むように落下させる。

 

 向かい合う球体同士で引き合うことで、モンスター達を十字架の形をした檻に閉じ込め、動きを封じること成功する。

 

 さらに、わたし達はホワイトとナチュラルホワイトを大きく振り上げると、今度は赤い球体を作り上げる。

 

 赤い球体も向かい合う球体同士が引きあうことで十字架の形にできたら、最後に2つを重ねるために2本の杖を下ろすのと同時に球体を落下させる。

 

 十字架が重なることで球体が持っていた魔力が爆発を起こして、捕まえていたモンスター達を爆煙が襲う。

 

 ……これがわたしのとっておきの魔法。

 

 お姉ちゃんが持っていた本に載っていたお星さまをモチーフにしたわたしが使える1番強い魔法。

 

「皆さん、わたし達に続いてください! 一気に行きますよ!」

 

『っ、おおう!!』

 

 わたし達が声を張り上げてお願いすると、呆けていた冒険者さん達も声をそろえて返事をしてくれた。

 

 そのまだまだ元気のある声を聞くと、わたし達も元気が湧いてきて自然と頬が緩んでしまう。

 

 ……うん、わたし達ももっと頑張ろう。

 

 夢人お兄ちゃんやネプギアちゃん達はきっと大丈夫。

 

 もしも危なくなっているのなら、わたし達がもっと頑張ってみんなを助けに行こう。

 

 今は不思議なくらい胸の中が温かくて力が湧いてくる。

 

 この力でみんなを守ってみせる!

 

「ろ、ロムとラムが……ぐはっ!?」

 

 ……後ろの方でトリックちゃんが急に膝をついて苦しみだしたけど、どうしたんだろう?

 

 

*     *     *

 

 

〔ジ……ジジ……コウゲキ、カイシ……!〕

 

「ふっ、はぁっ!!」

 

 キラーマシンが振り下ろした大剣をファルコムは自身の剣、ドラゴンスレイヤーで受け流して懐に潜り込む。

 

 そのまま軽く跳び上がり、脆そうに見える腕の関節部分を切断しようとドラゴンスレイヤーを振り上げた。

 

「っ、くっ!?」

 

 しかし、ドラゴンスレイヤーの刃は腕の関節部分を切断することができず傷をつけるだけで精一杯だった事実に、ファルコムは体勢を崩し悔しそうに唇をかんだ。

 

 それでも無事に着地することができたファルコムは、すぐに体勢を低くしてキラーマシンの横を通り抜けるようにしてその場を離脱する。

 

「魔界粧・轟炎!!」

 

 ファルコムが離脱すると、すぐにキラーマシンの足元から炎の柱が立ち上る。

 

 炎の柱がキラーマシンの全身を飲み込むと、散発的に爆発が発生してその場に黒煙が立ち込める。

 

 魔法を使った人物、アイエフは黒煙で姿が見えなくなってしまったキラーマシンがいる場所を険しく睨みながら警戒を解かない。

 

 それは離脱したファルコムも同様であり、アイエフと2人で挟むようにキラーマシンがいる場所を見つめながらドラゴンスレイヤーを両手で構えていた。

 

〔ジ、ジジジジジ……ジジッ!!〕

 

 音が高すぎて不快に聞こえる電子音と共にキラーマシンが黒煙を腕で払いのけて姿を現す。

 

 その体には焦げ付いた後は残っているが、まだ戦闘は続行可能なようでカメラアイが不気味な光を強くしていた。

 

(まずいわね。どうしたものかしら)

 

 アイエフは今の状況の悪さを思い、額に冷や汗を流れているのを感じながら、打開策を模索する。

 

 キラーマシン相手に放った魔界粧・轟炎は手を抜いたわけではなく、アイエフができる最大限の魔力を練って放ったものであった。

 

 それこそファルコムがキラーマシンの注意を引いていてくれたからこそできたものであり、今すぐにそれを上回る威力の魔法を使えと言われれば、アイエフは考えるまでもなく首を横に振る。

 

 ただでさえキラーマシン相手に武器での攻撃が利き辛いと言うのに、魔法まで防がれてしまった現状にアイエフとファルコムは手詰まりになってしまっていた。

 

(どうにかしないと……んっ?)

 

 考えを巡らせ、何か打倒するためのヒントを得られないかと観察していたアイエフは、ふいにキラーマシンの体の一部が目に留まる。

 

 何かを思いついたアイエフは口角をわずかに吊り上げ、キラーマシンの体の隙間から見えるファルコムに向かって意味あり気に視線を送りながら口を大きく動かす。

 

(あ・わ・せ・て……かな? 何か思いついたみたいだね。よし、いつでもいいよ!)

 

 アイエフのアイコンタクトと口パクを理解したファルコムは、了承の合図を送るために口元をわずかに緩ませると、ドラゴンスレイヤーを握り直す。

 

 それを了承だと受け取ったアイエフは、ファルコムが握り直すことで動いていたドラゴンスレイヤーの刃が止まると同時に一気にキラーマシンへと駆け出す。

 

〔ジジ、ジジジジ……ジジジッ!!〕

 

 アイエフの動きに反応して、キラーマシンは大剣を大きく振り上げた。

 

 そのままキラーマシンはアイエフ目掛けて勢いよく大剣を振り下ろすのだが、瞬時に後ろに跳んだ彼女に避けられてしまい、地面に深く突き刺さってしまう。

 

「はああっ!!」

 

〔ジジッ!?〕

 

 跳び上がったアイエフは魔力を針のように鋭くさせて物をキラーマシンの腕の関節部分、ドラゴンスレイヤーの傷が残っている箇所に向かって投げる。

 

 傷が付いている箇所にピンポイントで針が突き刺さり、キラーマシンは腕を上手く動かすことができずにノイズのような機械音を発してしまう。

 

「せいやぁっ!!」

 

〔!?!?!?〕

 

 腕に不具合が生じた影響で動きを止めたキラーマシンに、ファルコムは背後から斬りかかる。

 

 ドラゴンスレイヤーを上段に構えて跳び上がり、アイエフが放った魔法の針を目印に振り下ろす。

 

 魔法の針はドラゴンスレイヤーの刃が接触することで爆発を起こし、腕の関節部分に罅を入れる。

 

 傷がつき罅が入った腕の関節部分は容易くドラゴンスレイヤーによって両断され、キラーマシンは片腕を切断されてしまった。

 

「これで、終わりよっ!!」

 

 関節部分から火花を放ちながら後退しようとするキラーマシン目掛けて、アイエフは魔力を込めた球体をアンダースローで投擲する。

 

 球体は螺旋を描きながら吸い込まれるように火花を放ち続けるキラーマシンの関節部分に激突する。

 

 すると、球体から魔力が溢れだし、キラーマシンの内側へと爆発が広がっていく。

 

〔ジジ、ジギャッ……〕

 

 最後に潰れたような機械音を響かせてキラーマシンは内側からの爆発によって木っ端みじんに吹き飛んでしまった。

 

 空中に黒煙が舞い、キラーマシンだった機械の部品が辺りへと飛散する。

 

「ケホッ、ケホッ……ちょっとタイミングずれちゃったかな?」

 

「あー、いや、それは私の方のミスだわ。ごめん、私もだいぶ焦ってたみたいで……」

 

「あ、あはは、まあそれはお互い様、かな」

 

 離脱するタイミングを逃してしまったファルコムはせき込みながら手をパタパタと振って黒煙を払いながらアイエフに近づく。

 

 そんなファルコムに対してアイエフは申し訳なさそうに頬を掻きながら眉根を下げていた。

 

 事実、アイエフが最後の魔法を放ったタイミングは少しだけ早かったのである。

 

 そのためファルコムは離脱が間に合わず、その場で体勢を低くしてキラーマシンの爆発から身を守っていた。

 

 ファルコムは素直に謝ってくるアイエフに苦笑してしまう。

 

「まあ、何とか倒せてよかったよ。でも、アイエフもよくあんな真似できたよね? あたしは魔法についてそんなに詳しくないけど、あんな風に細くすることもできたんだ」

 

「ああ、アレね。アンタも知ってると思うけど、まあ伊達に夢人の魔法の練習に何度も付き合ってるわけじゃないってことよ」

 

 ファルコムの質問にアイエフは困ったような雰囲気を出しながらも、どことなく嬉しそうに口元を緩める。

 

 アイエフは夢人の特訓に付き合うと同時に、自分も手本として魔法を何度も使い修行していたのである。

 

 そんなアイエフを見て、ファルコムはにやにやと笑いだす。

 

「ふーん」

 

「な、何よ? 何かおかしいこと言った?」

 

「いや、やっぱりアイエフも夢人くんのことを思ってるんだなって」

 

 アイエフはファルコムの言葉を聞くと、頭が痛いと言わんばかりに額に手を当ててため息をついた。

 

「……誤解しないで欲しいんだけど、私はあの子達のようにアイツのことを好きってわけじゃないからね」

 

「別にあたしはアイエフが夢人くんのことを好きとは一言も言ってないんだけど?」

 

「毎回毎回同じこと言われて困ってんのよ……さて、無駄なこと話してないで、さっさと次に行きましょ」

 

「それもそうだね」

 

 話を切り上げて歩き始めるアイエフに、ファルコムは苦笑しながらついていくのであった。

 

 

*     *     *

 

 

 ……正直苦しい、それが今のアタシの素直な気持ちだ。

 

「うおおおおおおお!!」

 

「っ、そこっ!!」

 

 迫ってくる偽物のブレイブ・ザ・ハードの腕を避けながら、X.M.B.から銃弾を発射する。

 

 ただでさえ腕が通り過ぎて発生する衝撃で体勢が不安定になってしまう上に、風の影響で目も開けていられない。

 

 そんな状態で狙いが定まるわけはなく、アタシは闇雲に散弾を発射することしかできない。

 

 少なくても散弾にしていれば、偽物ブレイブ・ザ・ハードの巨体から外れることはない。

 

 ……でも、アタシの弾丸は外れないだけだった。

 

「ふんっ!!」

 

「っ、きゃあっ!?」

 

 偽物のブレイブ・ザ・ハードは被弾しても怯まずに攻撃を続けてくる。

 

 今だってアッパーのように偽物のブレイブ・ザ・ハードが打ち上げてきた拳から発生した風に煽られてアタシは吹き飛ばされてしまった。

 

 それは何とかプロセッサユニットのウイングを全力にすることで体勢を整えることができたのだけど、すぐに攻撃態勢に移れるほどアタシには余裕がない。

 

 でも、散弾では威力が低すぎて、顔以外の場所に当たっても怯ませて時間を稼ぐことができない。

 

 だからと言って、威力のある弾丸やビームに代えても、狙いを定められない以上、当たる確率は低いだろう。

 

「このっ、逃げるなっ!!」

 

「くっ!?」

 

 体勢を立て直すと、偽物のブレイブ・ザ・ハードはアタシがX.M.B.を構えるだけの時間もくれずに距離を詰めてくる。

 

 腕を避けて、散弾を当てながら、動けないフェルから遠ざかる……これがアタシのできる精一杯だった。

 

 できることなら、もう少し腕が届かない安全圏で飛びながら攻撃をしたい。

 

 でも、偽物のブレイブ・ザ・ハードはアタシを離すつもりがないようで、ピッタリとくっつかれてしまっている。

 

 そのせいで飛ぶことが辛いと思う程の風圧が常にアタシを襲ってくる。

 

 このままじゃ、いずれ拳を避け切れなくなってしまう!?

 

 今でさえ、もう上手く飛ぶことができなくて腕をすれすれで避けていると言うのに!?

 

「はああああああっ!!」

 

「っ、きゃあああああああああ!?」

 

 拳を避けたはずのアタシの視界がグルグルと回り始めた。

 

 遅れて自分が回転しながら落ちようとしていることに気付く。

 

 ……何で!? アタシは避け切ったはずなのに!?

 

 疑問が頭を埋め尽くし、焦りながらも地面に墜落しないようにすることを最優先に体勢を整えようとした。

 

 まずは体の回転を止めるために、強く瞼を閉じて歯を食いしばりながら意識をプロセッサユニットのウイングへと向ける。

 

 ピシッと言う何か嫌な音が聞こえてきたが、アタシは何とか体の回転を止めることに成功した。

 

 そして、すぐに体の落下も止めようと薄目を開けたアタシに黒い影が差し込んできた。

 

 ……それは視界一面を埋め尽くす黒い影だった。

 

「これで、終わりだっ!!」

 

 偽物のブレイブ・ザ・ハードの叫びに、その影がアタシに向かって振り下ろされそうになっている拳であることにようやく気付くことができた。

 

 ……早く避けなきゃ!?

 

 すぐに拳から逃げるために飛翔しようとしたのだが、プロセッサユニットのウイングはアタシの命令を受け付けてくれない。

 

 ……こんな時に!? このままじゃ、アタシぺちゃんこにされちゃう!?

 

 嫌な予想が頭によぎったアタシは恐怖のあまりその場で体を丸めてしまった。

 

「ぢゅぢゅう!!」

 

「ぐおっ!?」

 

 しかし、体を丸めたアタシにいつまで経っても拳は振ってこなかった。

 

 代わりに、誰かの叫びと偽物のブレイブ・ザ・ハードの驚いたような声が耳に聞こえてくる。

 

「ぐっ!? ……あ、アレは……」

 

 結局地面に墜落してしまったアタシが目を開けると、そこには偽物のブレイブ・ザ・ハードを羽交い絞めするワレチューの姿が映り込んできた。

 

「くっ、離せ!? 離せ、貴様!?」

 

「離さないっちゅ!! おいらはお前を絶対に離さないっちゅ!!」

 

「貴様っ!!」

 

 ワレチューは偽物のブレイブ・ザ・ハードに凄まれても硬く目を閉じたまま拘束する手を緩めない。

 

 ……アイツ、さっきまで気絶していたはずなのに。

 

「あっ……ぐっ……」

 

 ワレチューが偽物のブレイブ・ザ・ハードを押さえているうちに動こうとしたのだが、アタシの体はあちこちから悲鳴を上げてくる。

 

 その痛みに思わず顔をしかめてしまい、アタシは立ち上がることなく再び地面に背中を打ちつけてしまった。

 

 そのせいで余計に痛みが体中に響いてくる。

 

「ユニお姉さん!? 大丈夫ですか!?」

 

「フェ……ル……アンタ……まで……どうし……」

 

「いいですから、ほら!」

 

「うぐっ!?」

 

 いつの間にか傍に来ていたフェルに驚きながらも、アタシは彼の助けを借りて何とか上半身を起こすことができた。

 

 しかし、それだけでも体に激痛が走ってしまう。

 

 そんなアタシを見て、フェルは表情を強張らせて睨むように偽物のブレイブ・ザ・ハードの方へと顔を向ける。

 

 ……アタシにはそれが無理にフェルが自分の顔を見せないようにするために思えて仕方ない。

 

「ユニお姉さんはここでじっとしていてください。後はボク達で何とかします」

 

「なんとかって……そんな……アンタだって、もう……」

 

「大丈夫ですよ。ユニお姉さんのおかげで少し休めましたから、まだまだ走れます……それじゃ、いってきます!」

 

「フェル!?」

 

 アタシの制止の声も振り切って、フェルは偽物ブレイブ・ザ・ハードへと駆けだす。

 

 でも、そのスピードは最初の時よりも明らかに遅くなっていた。

 

 ……そんな状態で、大丈夫なわけないじゃない!?

 

 アタシは立ち上がろうと足に力を入れるのだが、思うように動いてくれない。

 

 ならばと思い、プロセッサユニットのウイングに意識と視線を向けるが……ウイングはひび割れて無残な姿を晒していた。

 

 ……さっきの音ってもしかしてウイングが壊れた音だったの!?

 

 これじゃ、もう飛ぶこともできないじゃない!?

 

 だったら、せめて動けなくても援護ぐらいはしようとX.M.B.に目を落とすが、こっちも酷い有様をしていた。

 

 ネプギアとの決闘以降、新しくなったX.M.B.の銃身に大きな亀裂が入っていたのだ。

 

 もしかしなくても、アタシが落下した原因はX.M.B.が偽物のブレイブ・ザ・ハードの拳に当たってしまったからだろう。

 

 こんな状態じゃ、いつ壊れてしまってもおかしくない。

 

「だからって……諦めるわけには……いかないのよっ!!」

 

 痛みを堪えながら、アタシは地面についた手で体を支えに立ちあがろうとした。

 

 しかし、腕にも力が入らず、足も膝を曲げようとしているのに上手く動かせない。

 

 痛みと体を動かせない悔しさに目の前がぼやけてくる。

 

 ……でも、絶対に涙はこぼしたくない!!

 

 アタシは諦めない!!

 

「何故貴様はそこまでして立ち上がろうとするのだ?」

 

 自分を鼓舞しながら立ち上がろうとするアタシの目の前に小さい方のブレイブ・ザ・ハードがやってきた。

 

 その顔は言葉と同じで困惑しているようにアタシには見える。

 

「今の貴様が立ち上がったところで、いったい何ができると言うのだ? 貴様の攻撃では絶対に俺の偽物を倒すことなどできやしない」

 

「そんなの……やってみなくちゃ……」

 

「奴はその身に供給されるシェアエナジーですぐに万全の状態に戻ってしまう。言わば、奴は不死身も同然だ。そんな奴を相手に貴様はどうだ?」

 

 小さい方のブレイブ・ザ・ハードはアタシを指さす。

 

 その指は頭から足へ、最後にX.M.B.へと向けて止まる。

 

「体はすでにボロボロ、立ち上がる力もなく、頼みの武器もすでに半壊も同然でないか。そんな貴様が立ち上がったところで、いったい何を……」

 

「何よ、アンタまだ迷ってたのね」

 

「何?」

 

 アタシは自然に笑みがこぼれてきた。

 

 だって、小さい方のブレイブ・ザ・ハードの言葉はまるでアタシのことを心配しているように聞こえてきたんだから。

 

 それに、コイツは夢人と戦っても自分の答えを見つけられなかったみたいね。

 

「アタシは、アンタみたいに諦めがよくないのよ。だから、まだ必死に足掻くのよ」

 

「……足掻いてどうするつもりだ? 勝てなければ、足掻いたところで何の意味もないではないか?」

 

「アンタも馬鹿ね。足掻かなきゃ、勝ちもしないじゃないっ!!」

 

 話しているうちに体に力が入るようになってきた。

 

 きっと笑ったおかげで余計な力が抜けたからだと思う。

 

 アタシは気合を入れると同時に、一気に立ち上がった。

 

 痛みにふらついてしまうけど、アタシは足の裏をしっかりと地面につけて立った状態を維持する。

 

「アタシは絶対に勝つことを諦めない!! だから、何度だって立ち上がってやるわよ!!」

 

「……諦めない、か。貴様は強いのだな」

 

「違うわ。アタシは弱いわよ」

 

 自嘲気味につぶやく小さい方のブレイブ・ザ・ハードにアタシは苦笑しながら答える。

 

 ……そう、アタシは弱い。

 

 今だって立っているだけでも、プロセッサユニットを維持するだけでも辛くて意識が飛びそうだ。

 

 多分、アタシが『変身』していられる時間はもう限界に近い。

 

 他の候補生、ネプギアやナナハ、ロムやラムにもアタシは実力で劣っているだろう。

 

 彼女達が完璧な『変身』ができるのに対して、アタシはいつまで経っても制限時間つきの『変身』しかできないできそこないなんだから。

 

 でも、アタシはもうそれを理由に諦めたりなんかしない。

 

「アンタがアタシを強いって思ってるのなら、それは勘違いよ。アタシは弱くて、自分に自信が持てない、できそこないの女神なの……でも、そんなアタシのことを信じてくれる皆がいる。だから、アタシも皆のことを信じて、絶対に諦めない」

 

「……いや、やはり貴様は強い。勇者と同じで心が強いではないか」

 

「ううん、それも間違いよ。アタシも夢人も心が弱いから信じることしかできないの。本当はいつだって不安でいっぱいで、信じていいのかさえもわからなくなる時があるの……でも、信じるだけで不思議と胸の中の不安が消えていくのよ」

 

 アタシは初めて夢人に自分を信じてもらえた時のことを思いだして、口元に笑みが浮かぶ。

 

 ……今のコイツはあの時のアタシと同じだ。

 

 だから、今度はアタシの番だよね。

 

「自信がなくて、強がることしかできなくても、お互いに信じることで胸が温かくなって不思議な力が……勇気が湧いてくるのよ」

 

「勇気……」

 

「ねえ、アンタは今そんな姿になったから、自分に自信が持てないのよね?」

 

 無言のまま何も答えない小さい方のブレイブ・ザ・ハードにアタシはコイツが何故こんな弱気なことを言っているのかを理解することができた。

 

 コイツが悩んでいることは、アタシも夢人もずっと悩んでいることだから、その気持ちは察することができる。

 

「だったら、アタシがアンタを信じるわ。アンタは……ブレイブ・ザ・ハードは例え小さくなっても偽物なんかに負けない強い力を、熱い正義を持っているって」

 

「貴様は……」

 

「だから、アンタも信じなさい。アンタを信じるアタシを……アンタと同じでゲイムギョウ界の平和を願っている、アタシ達のことを」

 

 そう言って、アタシは小さい方のブレイブ・ザ・ハードに手を差し伸べる。

 

 彼がアタシ達女神のことを快く思っていないことは知っている。

 

 でも、今は信じて欲しい。

 

 同じゲイムギョウ界を愛し、守りたいと願っている女神であるアタシ達のことを。

 

「……そう言えば、まだ貴様の名前を聞いていなかったな。教えてくれないか?」

 

「ユニよ。ラステイションの女神候補生のユニよ」

 

「ユニ……そうか。では、ユニ。俺も信じていいのか? 貴様達女神を……このゲイムギョウ界を救う正義を持つ友であると信じていいのだろうか?」

 

「当たり前じゃない。アタシ達は絶対にゲイムギョウ界を平和にする。アタシ達の思いは、アンタの正義と同じよ」

 

「……フッ、俺は貴様と勇者の絆の正義に救われたようだな。感謝するぞ、ユニ」

 

 嬉しそうにしながら、小さい方のブレイブ・ザ・ハードはアタシの手を握ってきた。

 

「では、いくぞ、ユニ!! 共にゲイムギョウ界を守るために!!」

 

「ええ、ブレイブ!!」

 

 小さい方の……ううん、ブレイブがアタシのことを信じてくれて本当に嬉しい。

 

 ようやくアタシの知っている強いブレイブが戻ってきたような気がした。

 

 よし、まだアタシ達は……

 

『……繋がる絆……伝わった思い……』

 

 ……え? 誰の声、なの?

 

 突然、知らない声が頭の中に響いてきた。

 

 同時に胸の中で何かが熱くなってくる。

 

『……力は……今、1つになる……』

 

「っ、何だ!?」

 

「これは……っ!?」

 

 瞬間、目の前が真っ白に染まるほどの光がアタシとブレイブを包み込んだ。

 

 でも、これは……

 

 

*     *     *

 

 

「ふんっ!!」

 

「ぢゅぢゅっ!?」

 

 拘束を強引に振りほどいた偽物ブレイブは、すぐさま体を反転させてワレチューに向かって拳を突き出した。

 

 偽物ブレイブが逃げたせいで前のめりになっていたワレチューは、その拳を顔面に受けてしまい大きく仰け反ってしまう。

 

 そして、後頭部から勢いよく地面に倒れ、意識を手放してしまった。

 

 すると、マジェコンヌの力によって巨大化していたワレチューの体は元のサイズに戻ってしまう。

 

「くっ、なら……っ!?」

 

 ワレチューがやられてしまった姿を見て、フェルは悲痛な面持ちで偽物ブレイブに跳びつこうとした。

 

 しかし、その決意は背後から発生した強烈な光によって止められてしまった。

 

「ユニ……お姉さん……?」

 

 慌てて振り向いたフェルの目に、光の中から1人の女性の姿が映り込む。

 

 その女性は確かにユニであったが、身に纏っているプロセッサユニットが違っている。

 

 ベースとなる肌に纏っている物は、ジェネレーション型の物と同じであったが、他の部分が異なっているのだ。

 

 丸みを帯びていた両肩のプロテクターはまるで流線型の列車を思わせるデザインに、妖精の羽根のように2対になっていたウイングは2本の砲身とドリルが目立つ1枚の翼に、クルクルと巻かれた髪を束ねていた黒いリボンのようなプロセッサはまるで兜のような物へと変化していた。

 

「フェル、後はアタシ達に任せておきなさい」

 

「で、でも……」

 

「大丈夫よ。アタシ達のことを信じなさい。アタシと……」

 

 ユニは目を見開いて自分を見つめてくるフェルを安心させるように柔らかく笑みを浮かべると、すぐに顔を引き締めてX.M.B.の銃口を偽物ブレイブへと向けた。

 

「ブレイブの力は、あんな偽物なんかに絶対に負けないわ!!」

 

 力強く宣言するユニの瞳に迷いはなく、真っ直ぐに偽物ブレイブを見つめていた。

 

 その身に纏う変化したプロセッサユニットもそれに応えるように光を放ちながら……




と言う訳で、今回はここまで!
激ノワ、私も早くプレイしたいのですけど、これ以上mk2編の最終章を停滞させてはいられないので何とか終わらせてからプレイしたいと思っているんですよ。
ほら、目の前に餌がある方が人は頑張れると思いませんか? ……餌の方に食いついちゃいそうで怖いですけど。
それでは、 次回 「スターライト」 をお楽しみに!

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