超次元ゲイムネプテューヌ 夢のヒーローを目指して   作:ホタチ丸

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さて、本日2度目の投稿ですね
今回はホントフェル君重視の話です
というか、フェル君が目立ちすぎたかな?
本当はもっとユニちゃんも活躍させたいし、ネプギアも書きたいんですけどね
展開の都合上、彼には成長してもらわなければいけませんので、女神の活躍を待っていた皆さまにはご勘弁を
それでは 証明 はじまります


証明

 『結晶』を探しにダンジョンを探索する4人。

 

 しかし、その前にマジェコンヌの自称マスコットキャラクターワレチューが立ちはだかる。

 

 強力なエンシェントドラゴンを引きつれて現れたワレチューにフェンリルはやられてしまい、ディスクに吸収されてしまった。

 

 フェルはフェンリルが自分を守るために行動したことで自分の本当の思い、フェンリルが大切な家族と思っていたことを知った。

 

 フェンリルを助けるために、フェルは夢人達と共にワレチューと戦う!

 

 

*     *     *

 

 

「助けて! ボクの大切な家族を!!」

 

 フェルの言葉を聞き、夢人達3人は顔を見合わせて言う。

 

「「「了解!!」」」

 

 まずはユニが遠距離からエンシェントドラゴンに弾丸を放つ。

 

「喰らいなさい!」

 

 ユニの放つ弾丸はすべてエンシェントドラゴンに当たり、エンシェントドラゴンは怯みを見せる。

 

「もらったよ!」

 

 ファルコムはその隙をついて近づき、剣で胴体を斬りつける。

 

「ギャオオオオン!!」

 

 その痛みにより、エンシェントドラゴンは叫び声をあげながら尻尾でファルコムを攻撃しようとする。

 

「見え見えだよ!」

 

 ファルコムはその攻撃を華麗に避け、先ほどと同じように胴体を斬りつける。

 

「ギャオオオオオオ!!」

 

 二度も斬りつけられたことでエンシェントドラゴンはファルコムから距離を取ろうと翼を使い宙に浮かぼうとする。

 

「させないわ!」

 

 ユニはエンシェントドラゴンの翼を狙い撃った。

 

 その攻撃により翼はボロボロになり、宙に浮かぼうとしていたエンシェントドラゴンは仰向けに倒れてしまった。

 

「これでトドメだ!!」

 

 ファルコムは頭が下がったことで眉間に剣を突き立てる。

 

「ギャオオオオン!?」

 

 その攻撃を受け、エンシェントドラゴンは断末魔の叫びをあげ光と共に消滅した。

 

 エンシェントドラゴンがやられたことで驚いたワレチューは慌てて逃げようとする。

 

「まずいっちゅ!? 早く逃げないと……」

 

「逃がすと思うなよ!」

 

 夢人は逃げ出そうとしたワレチューの頭を掴み言う。

 

「フェンリルを返しやがれ!!」

 

「わ、わかったちゅ!? だから離すっちゅ!」

 

 ワレチューはフェンリルが吸収されたディスクを夢人に渡した。

 

 それを確認した夢人はワレチューの頭を解放した。

 

「ちゅー……これで逃げ……」

 

「お前にはこれをお見舞いしてやるぜ!」

 

 夢人は右手に魔力を集中させ右手を燃やす。

 

「ちゅ!?」

 

「男の火の玉パンチ!!」

 

 夢人のパンチを喰らったワレチューはダンジョンの奥へと吹き飛んでいく。

 

「あんまりだちゅー!?」

 

 そんな声をあげながら飛び去るワレチューを見送った後、夢人はフェルにディスクを手渡す。

 

「ほらよ」

 

 フェルは受け取ったディスクを両手で抱き締める。

 

「よかった……よかったよ……」

 

 フェルは泣きながら言葉を続ける。

 

 そんな姿にユニとファルコムも近づきながら笑顔になる。

 

 そして、ユニは夢人に疑問に思ったことを聞いた。

 

「……アンタ、手大丈夫なの?」

 

 ユニは夢人の右手を指さしながら言う。

 

 夢人の右手はまだ燃え続けていた。

 

 そんな右手を見て次第に顔が赤く染まりながら夢人は叫ぶ。

 

「熱いいいいいい!!」

 

 叫びながらも地面を転がる夢人を見てユニとファルコムは笑う。

 

 フェルも涙を流しながらもそんな3人を見ながら笑う。

 

 

*     *     *

 

 

 ラステイションギルド

 

「……ダメねぇ、私ではわからないわ」

 

 夢人達はディスクからフェンリルを解放する方法を知るためにアヤに相談をしていた。

 

「アヤでもダメなのか?」

 

 夢人はアヤが無理だと言ったことに驚きながら聞く。

 

「私だってかよわい漢乙よ……できることとできないことがあるわ」

 

 アヤは苦笑を浮かべながら続ける。

 

「これがマジェコンヌ製ならこれを使えるのもマジェコンヌの人だけって可能性はあるわね」

 

 アヤが真剣な表情でディスクを調べながら言う。

 

 それを聞いてフェルは落ち込みながら言う。

 

「じゃあ……もう、フェンリルは……」

 

 フェルが俯こうとした時、夢人がフェルの頭を叩いた。

 

「まだ方法はあるだろ? 諦めんなよ」

 

 そのままぐりぐりとフェルの頭をなでる。

 

「や、やめてって!」

 

 フェルは照れながらその手をどかそうとする。

 

 夢人はフェルの表情を見て面白そうにさらに力を入れてなでる。

 

「なんだ? 照れてんのか? 可愛いとこあるじゃねえかよ」

 

 夢人は笑いながらなで続ける。

 

 フェルはその手を退かそうとするが、上手くできずいた。

 

 その光景はじゃれつく兄弟のように見えた。

 

「ふふふ……本当、よかった」

 

 ファルコムはフェルの照れている表情や夢人に対する行動を見て嬉しくなった。

 

 人間不信であったフェルが夢人と触れ合っていることが嬉しいのである。

 

「わ、笑ってないで助けてよ! ファルコム!」

 

 フェルは笑っているファルコムに気付いて助けを求める。

 

 その言葉もフェルが誰かを頼っている証拠であることに気づき、さらに笑みを深める。

 

「そこまでにしておきなよ夢人君も」

 

「はいはい、わかったよ」

 

 夢人もファルコムの表情やフェルの態度を見てやはり笑顔になる。

 

 そんな中、ユニは3人を少し離れた位置からただ見つめていた。

 

 ユニは目の前の光景がまぶしかった。

 

 あんなに夢人に対して敵意のあるまなざしを向けていたフェルを夢人は変えたのだ。

 

 フェルが彼や自分を恨んでいることを知っていたのに近づいて行った。

 

 フェルの恨みのこもった視線を受けても夢人はフェルを守ろうとした。

 

 自分にはできないことをした夢人がまぶしかった。

 

 いつもは自分をからかったりバカにしたり、戦闘では弱いモンスターにやられて自分に迷惑を掛けている。

 

 それでも彼がフェルを変えたと言う事実を目の当たりにしてユニは納得していた。

 

「何、1人で突っ立ってんだよ? こっち来いよ、ユニ」

 

 夢人は少し離れた位置に居たユニに気付き、いつもの笑顔でユニを呼ぶ。

 

 ユニは気付かないうちに頬をゆるめながら3人に近づいていく。

 

 

*     *     *

 

 

 次の日、セプテントリゾートにやってきた夢人達4人。

 

 しかし、彼らの姿は先日までとは違っていた。

 

「だから、なんで俺ごと吹き飛ばすんだよ!?」

 

「アンタがあんなモンスターにやられているからでしょ!? まったく本当に役立たずな奴隷ね!」

 

「そうですよ、もっと頑張ってくださいよ」

 

「そうだね、夢人君はもっと頑張った方がいいかもね」

 

「まさかの四面楚歌!?」

 

 彼らは笑顔で話していたのである。

 

 今まではフェルが夢人とユニに対して敵意のある視線をぶつけていたのだが、今日の彼は夢人達と会話を楽しんでいた。

 

 そんなフェルの変化が嬉しくてファルコムもほほ笑む。

 

 フェルと出会ってから笑顔なんて見たことがなかった。

 

 しかし、今のフェルは笑っている。

 

 それが本当にうれしい。

 

 家族を殺されて人間不信になった彼が再び笑うことができた。

 

 いつもそばに居たフェンリルもいない今のフェルが……

 

 大切な家族が側に居ないフェルが笑えていることの意味を知っているファルコムは本当にうれしかった。

 

 あとは、ディスクに吸収されたフェンリルを解放すれば、きっとフェルは本当の意味で変わると確信していた。

 

 そのためにも、ここでマジェコンヌの一員を見つけなくてはいけないと改めて誓った。

 

 そう、彼らがセプテントリゾートに来た目的はフェンリルを解放するためである。

 

 アヤから再びセプテントリゾートに怪しい人物が出入りしていると聞いた夢人達はその怪しい人物を探すためにやって来たのである。

 

 怪しい人物がマジェコンヌの一員ではないかもしれないが、彼らはフェルのためにフェンリルを解放する方法を知るマジェコンヌを探していた。

 

 アヤの推測が正しければ、ディスクに封印されているフェンリルを解放する方法を知っているのはマジェコンヌの一員だけだ。

 

 彼らはその方法を知るためにダンジョンを探索しながらマジェコンヌの一員を探し続けた。

 

 

*     *     *

 

 

「いねえな……」

 

 ダンジョンのほとんどを探索しても怪しい人物を発見できなかった夢人達。

 

「でも、まさか『結晶』が手に入るとは思わなかったよ」

 

 ファルコムは苦笑しながら先ほど手に入れた『結晶』のことを考えた。

 

 実は、夢人達が散々探し回っていた『結晶』であるが、このダンジョンに居るテコンキャットが持っていたのである。

 

 夢人達はテコンキットを倒し、無事に『結晶』を手に入れることに成功したのである。

 

「まあな、これであとはネプギア達が持ってくるはずの『宝玉』があれば、ゲイムキャラの情報をケイさんからもらえるからな」

 

 夢人はそう言いながらもダンジョンをきょろきょろと見まわし、怪しい人物を探していた。

 

「君は本当にお人よしだね」

 

 そんな夢人の姿を見てファルコムはほほ笑む。

 

「頼まれたことだしな……男として当たり前だろ?」

 

 ファルコムに向かって右手の親指をあげて夢人もほほ笑む。

 

「……まったく、そんなこと言ってないで探しなさいよ」

 

 ユニも夢人と同じようにきょろきょろと怪しい人物を探していた。

 

「ハイハイっと、ご主人様も素直じゃないねえ」

 

「誰が素直じゃないって!」

 

 夢人とユニは軽口を言いあいながらも怪しい人物を探す。

 

 そんな光景を見てフェルは胸の中が温かくなっていった。

 

 フェルとして生きてから感じることができなくなっていた温かさであった。

 

「……みんな」

 

 フェルは3人に呼びかけた。

 

 3人はフェルに向き直ってフェルの言葉を待った。

 

「……みんなに言っておきたいことがあるんだ」

 

 フェルは頬を赤らめて言葉を続けようとした。

 

「あ、ありが……」

 

「げっ!? なんでテメェらが!?」

 

 しかし、フェルが言葉を続けようとした時に物陰からリンダが現れた。

 

「あーっ!? お前はリンダ!」

 

 夢人はリンダの姿を指さしながら言う。

 

「まったく、今回はまともなモンスターを手に入れてねぇのによ!」

 

 リンダはポケットからディスクを取り出して夢人達に投げつけた。

 

 ディスクから先ほど倒したテコンキャットが4匹現れた。

 

「しゃぁねぇか……こいつは奥の手だったんだけどな!」

 

 リンダはさらにもう一枚ディスクを取り出すと、テコンキャット達に向かって投げた。

 

「ギャ!?」

 

 ディスクから紫色の光が放たれ、テコンキャット達が苦しみ出す。

 

「な!? 何!?」

 

 初めてみる現象にファルコムが疑問の声を上げる。

 

「こいつはマジェコンヌ特性のウイルスさ……そいつに感染したモンスターは通常の3倍は強くなるってわけよ」

 

 リンダがドヤ顔で説明し、しばらくすると、紫色の光を放っていたディスクは消え去り、光を浴びていたテコンキャット達は黒く染まっていた。

 

「まるで汚染だな……」

 

 その様子を見て夢人はつぶやく。

 

「いいねぇ! そいつはいいネーミングだ! 行け! 汚染モンスターども! あいつら叩きのめしてやれ!」

 

 リンダの掛け声とともに汚染されたテコンキャット達が夢人達に襲いかかる。

 

「フェル! 下がってて!」

 

 パーティー中で戦闘能力のないフェルに下がるように言いながらファルコムはテコンキャットを相手する。

 

 夢人とユニもそれぞれテコンキャットを相手する。

 

「さっきより強いな!」

 

 テコンキャットの一撃を木刀で防ぎながら夢人は言う。

 

「だから言ったろ? ただのモンスターとはちげぇんだよ! ただモンスターとはな!」

 

 リンダは形勢が有利なのを見て笑いながら命令し続ける。

 

「オラ! 後ろのチビガキを狙え!」

 

 リンダの命令によってテコンキャットがフェルへと襲いかかる。

 

「逃げろ! フェル!」

 

 夢人はフェルに向かって叫ぶが、テコンキャットは素早くフェルを殴り飛ばした。

 

「わあああ!!」

 

 フェルはその衝撃によってフェンリルのディスクを落としてしまった。

 

「ん? そいつは……」

 

 リンダはそのディスクに近づき、拾い上げる。

 

「返せ!?」

 

 フェルはディスクがリンダに奪われたことを知り、リンダに突撃するが、テコンキャットに再び吹き飛ばされる。

 

「あう!」

 

「フェル!? この退きやがれ!」

 

 夢人はテコンキャットを蹴り飛ばして、フェルに近づく。

 

「フェル! おい!」

 

「うう……」

 

 夢人はうめき声を上げるフェルを抱き上げる。

 

「アハハハ! こいつはいい! なんでお前らがこれを持っているのかしらねぇけど、使わせてもらうぜ!」

 

 リンダは拾い上げたディスクを夢人達に投げつける。

 

 ディスクが光り出すと、光の中からフェンリルが姿を現す。

 

「ガルルルルル!」

 

 フェンリルは唸りながら夢人とフェルを睨む。

 

「フェンリル!?」

 

 フェルはその姿に驚き叫ぶ。

 

「しかも、フェンリルかよ! こいつはついてるぜ! そいつらをやっちまいな!」

 

 リンダはディスクから出てきたフェンリルに驚いたが、すぐに笑いながら夢人達を攻撃するように命令した。

 

 その命令を受けてフェンリルは夢人達へと攻撃をする。

 

「危ない!?」

 

 夢人はフェルを抱きしめて横に転がりながら避ける。

 

「やめてフェンリル!? ボクがわからないの!?」

 

 フェルは涙を浮かべながらフェンリルに叫ぶが、フェンリルは夢人達へと攻撃を続ける。

 

「……そんな」

 

 そんなフェンリルの様子を見てフェルは夢人に抱きしめられながら泣く。

 

 もう、フェンリルと家族のように触れ合うことができないのかと絶望する。

 

「諦めんな!」

 

 フェルはその声を聞いて顔を上げる。

 

 夢人は真剣な表情でフェルに向かって叫ぶ。

 

「大切な家族なんだろ!? だったら諦めんな!」

 

 夢人はフェンリルの攻撃を避けながら、フェルをフェンリルとは逆方向へと投げる。

 

「っ! 何を!?」

 

 フェルは投げられた衝撃で目をつぶったが、目を開けた瞬間驚いた。

 

「奴隷!?」

 

「夢人君!?」

 

 夢人が体を張ってフェンリルの攻撃を受け止めていたのだ。

 

 ユニとファルコムもその姿を見て悲鳴を上げた。

 

「っ! 俺がいくらでも押さえてやる! お前は呼びかけ続けろ!!」

 

 夢人は血を流しながらフェルに叫ぶ。

 

「やめて! そんなことやめてよ!」

 

 夢人の無謀としか思えない行動にフェルは悲鳴をあげながら叫ぶ。

 

「これはお前にしかできないことなんだよ!! 男見せろ!!」

 

 フェルに叫び続けながら夢人はフェンリルにしがみつく。

 

 フェンリルはそれを鬱陶しそうに払いのけようとするが、夢人はフェンリルに噛みつきながら離れない。

 

「アガッ! ンガッ!」

 

 フェンリルに振り回されても夢人は諦めずフェンリルにかみつき続けた。

 

 

*     *     *

 

 

 ボクは夢人の行動を見てフェンリルがエンシェントドラゴンにやられた瞬間を思い出した。

 

 あの時と同じだ。

 

 怖い。

 

 こんな本当の自分であるかどうかわからないボクのために傷ついてる人がいる。

 

 しかも、その相手はボクの大切な家族だ。

 

 ボクのために行動している夢人を見た。

 

 その姿は血を流してとても痛々しいものであった。

 

 それでも決して弱くは見えなかった。

 

 ボクを守るために体を張っている。

 

 その光景をボクは見たことがあった。

 

 そう、フェルとしての人間の家族だ。

 

 彼らはボクを殺そうとした人達からボクを守ろうと体を張った。

 

 何が造り物だ…

 

 何が物語だ…

 

 何が知っている世界なんだ!

 

 ここはボクの知っている世界じゃない!

 

 決して作りものなんかじゃない!

 

 ボクはちゃんとここに居るじゃないか!

 

 ちゃんと愛されていたじゃないか!

 

 それがわかったからこそ!

 

 あの時、フェンリルだってエンシェントドラゴンに向かっていったんじゃないか!

 

 ボクはもう迷わない!

 

 ボクはここに生きているんだ!!

 

 

*     *     *

 

 

「やめろ!! フェンリル!!」

 

 フェルは魔物使いとしての能力を使わず、フェンリルに向かって叫ぶ。

 

 フェンリルに魔物使いの能力は必要ない。

 

 彼は大切な家族なのだ。

 

 そんなモノに頼る存在は家族なんかじゃない。

 

 ただ思いを乗せればいい。

 

 家族を思う心を……

 

「……ガウ!」

 

 フェンリルはフェルの言葉を聞いて暴れるのをやめた。

 

「おわ!?」

 

 フェンリルが突然止まったことによって夢人はしがみついていたフェンリルから落ちて尻もちをついた。

 

 フェルはゆっくりとフェンリルへと近づいていく。

 

 フェンリルもそんなフェルを伏せの体勢で待つ。

 

「……フェンリル」

 

「ガウ」

 

 フェルがフェンリルの鼻の先をなでながら呼ぶと、フェンリルも返事をする。

 

「よかった! よかったよ!」

 

 フェルはそのことに喜び、フェンリルに抱きつく。

 

「な!? バカな!? どうして……」

 

「アンタには理解できないわよ」

 

 リンダが驚いていると、テコンキャットを倒したユニがリンダに銃を向けて言う。

 

「アンタにあの子とフェンリルの絆がわかるはずないわ!」

 

 ユニは力の限り銃の砲身でリンダを殴り吹き飛ばす。

 

「ち、ちくしょー!?」

 

 リンダは吹き飛ばされ海に落ちた。

 

 そんな姿を見てファルコムもゆっくりとユニに近づく。

 

「お疲れ様」

 

「そっちこそね」

 

 ユニとファルコムは互いにほほ笑みながら健闘をたたえ合う。

 

 そして、フェルとフェンリルに向き直る。

 

 そこには今だフェンリルに抱きつくフェルの姿があった。

 

「よかった」

 

 ファルコムはその光景を見て心からその言葉を発した。

 

 夢人もフェルとフェンリルのその様子を見てほほ笑む。

 

 そんな夢人にユニは近づきながら言う。

 

「……ちょっとは見直したわよ」

 

「ありがとよ」

 

 ユニはそっぽを向きながら夢人の手を取り治療を始める。

 

 そんなユニの姿に夢人も笑みを深める。

 

 ……しかし突如として、フェンリルの体に刀が突き刺さった。

 

「……えっ?」

 

 フェルは目の前の光景が理解できずに呆然としてしまう。

 

「ガ……ガウ……」

 

 フェンリルは刀を刺されたことによってゆっくりと横に倒れていく。

 

「フェンリル!?」

 

 フェルは慌ててフェンリルを抱きしめ叫ぶ。

 

「いったい何が!?」

 

 ファルコムが周りを見ると、ずぶ濡れのリンダが肩で息をしながらこちらを見ていた。

 

「はァはァはァ……役に立たないモンスターは始末しないとな」

 

 それだけ言うと、リンダは走って逃げだした。

 

「待て!」

 

 ファルコムはそんなリンダを追おうとする。

 

「フェンリル!? フェンリル!? しっかりしてよ!」

 

 フェルの悲鳴を聞いて悔しそうにフェルに近づく。

 

「……ひどい」

 

 リンダの投げた刀は明らかにフェンリルの急所をついており、止血をしようとしてもどんどん血が流れてくる。

 

「止まれ! 止まれ! 止まれよ!」

 

 フェルはそんなフェンリルの傷口を両手で押さえながら必死に叫ぶ。

 

 しかし、フェンリルの傷口からは止めどなく血液が流れおちていき、次第に体が冷たくなっていった。

 

「やだよ!? もういなくならないでよ!? ボクを1人にしないでよ!!」

 

 フェルは流れる涙をそのままに顔を左右に振りながら叫ぶ。

 

 そんなフェルの顔をフェンリルはなめる。

 

「フェン……リル……」

 

「ガウ……」

 

 フェルの顔をなめ終えると、フェンリルは力なく横に倒れ光となった。

 

 その光はやがてフェルの右手集まり、そして消えて行った。

 

「フェンリルーーーーーーーーーー!!」

 

 その場にフェルの悲痛な叫びがこだました。




はい、という訳で今回はここまで!
フェンリルは死んでしまいました…
大切な家族を失ってしまったフェル君は立ち直ることができるのでしょうか?
ラステイション編もついに次で最終話です!
明日投稿予定の最終話は内容がこれまでにないくらい盛りだくさんでお送りする予定なのでお楽しみしてくださいね
それでは、次回 「ライバル」 をお楽しみに!

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