超次元ゲイムネプテューヌ 夢のヒーローを目指して   作:ホタチ丸

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はい、皆さんこんばんわ!
眠くて頭が働かなくなってきているので、さっさと行きましょう。
それでは、 中途半端な存在 はじまります


中途半端な存在

 パープルディスクの中に記録されている夢人さんの記憶を観るために目を閉じた私の視界が奥の方から段々と明るくなっていく。

 

 すると、急に奇妙な浮遊感を覚えた。

 

 ジャンプしたり飛ぶ時と違う、ぷかぷかと宙に浮かされている感覚に戸惑うのだけど、同時に何か温かいものが体全体を包んでいるような安心感も感じてしまう。

 

 ……多分、私を包んでいるのがアカリちゃんの『再誕』の力なんだと思う。

 

 私はこの力に似たものに包まれたことがある気がする。

 

 何時だったかな、あれは確か……

 

 そんなことを考えているうちに、まるで自分の体が勝手に動いているように視界に映る光が線のように見え始める。

 

 目を閉じる前はギャザリング城にいて周りにはお姉ちゃん達がいたことを確かに感じていたのに、今は自分1人がどこか別の場所に連れて行かれているように錯覚してしまう。

 

 やがて、遠くに光が集まっているせいなのか、真っ白になっている空間が広がっているのが見えた。

 

 おそらく、あそこに着けばパープルディスクに記録されている夢人さんの記憶が再生されるんだと思う。

 

 ウラヌスさんの言葉を信じるのなら、きっと夢人さんといーすんさんを助けるための何かが手に入るはず!

 

 いったい何が……

 

『……ん? やけに涼しいような……』

 

『きゃぁぁぁ!!』

 

『ぎゃふぅぅぅ!!』

 

 一瞬、顔を真っ赤にした私の顔が見えたと思ったら、すぐに暗くなってしまった。

 

 今のって夢人さんが初めてゲイムギョウ界に来た時のこと?

 

 あの時は夢人さんが裸だったから、恥ずかしくて思いっきりビンタしたんだっけ。

 

 ……え、ここから始まるの?

 

 

*     *     *

 

 

 私の予想は当たっていたみたいで、しばらくして明るくなった視界にはいーんすんさんやアイエフさん、コンパさんがゲイムギョウ界や勇者について説明する姿が映りだした。

 

 どうやらパープルディスクに入っていた夢人さんの記憶は、ゲイムギョウ界に来てからのものだったらしい。

 

 でも、それなら私も一緒に過ごしていたんだし、それこそ夢人さんが単独行動を取った時くらいしか知らないことはないはずだ。

 

 何でウラヌスさんは、私に夢人さんの記憶を観るように言ったんだろう?

 

 別に観る必要ないと思うんだけど……あ、もしかして単独行動をしていた時に夢人さんが何か重要なことでもしていたのかな?

 

 それを私に……って、それならユニちゃん達が何か知っているはずだよね。

 

 わざわざ私を指名するのもおかしいし、いったい何を伝えたいんだろう?

 

 ウラヌスさんの伝えたいことを考える一方で、私は夢人さんの記憶を観て懐かしく思うと同時に自分の醜さを感じてしまう。

 

 夢人さんの視点から観る私の姿は、とても情けなく思える。

 

 自分だけが助け出されたことに負い目を感じているのに、私は勝手な願いを夢人さんに押し付けている。

 

 ただ勇者と言うだけで、女神の卵に選ばれたと言うだけで、普通に過ごしていたはずの夢人さんの生活を壊してしまった。

 

 コンパさんが間に入ってくれなければ、私は夢人さんの意思を無視し続ける所だったと思う。

 

 ……それにしても、夢人さんってゲイムギョウ界に初めて来た日は、何度も気絶してたんですよね。

 

 何度も暗転を繰り返す夢人さんの記憶。

 

 最初に私がビンタした時、スライヌにやられてしまった時、ビッグスライヌの体に取り込まれた時……よく夢人さんは私達と一緒にいてくれたよね。

 

 極めつけに……

 

『なんで! なんで笑ってるんですか!? 私が!! 私が勇者としてあなたを呼んだばっかりに!! あの時! 一歩間違えれば、死んでいたんですよ!? なんで私に笑いかけるんですか!? なんで!! なんで……こんな私を助けようとしてくれるんですか!!』

 

 涙を流しながら夢人さんを責めるように叫ぶ私の姿は、どう見てもわがままで自分勝手な最低の行動だった。

 

 伝説の勇者と言う存在に勝手に期待して、勝手に失望した。

 

 私は何もしていないのに、全部夢人さんのせいにして逃げ出したんだ。

 

 むしろ、私は守ってもらったのに……

 

 ……夢人さん、今はあなたの言葉が信じられません。

 

 ギョウカイ墓場で助けてもらった時、あなたはこの言葉で救われたと言っていましたけど、そんなの無理です。

 

 こんな言葉で私を守ろうだなんて思えるはずがありません。

 

 出会えて幸せだなんて思えるはずがないんです。

 

 こんな最悪な出会いをした私なんて、好かれるはずがありませんよね。

 

 

*     *     *

 

 

 私がいくら後悔してもこれは夢人さんの記憶、過去の出来事だ。

 

 今更変えることができないのはわかっているけど、私はこれ以上観たくないと、思いだしたくないと思ってしまう。

 

 泣いてばかりで、あまりにも同情を誘っているような行動ばかりが目につく過去の私の姿に、惨めな気持ちを味わってしまった。

 

 誰にも見られていないと思っていたバーチャフォレストで1人泣いていた時や、夢人さんの治療をしながら謝っている時など、過去の私の行動は見るに堪えないものだった。

 

 しかも、その姿を夢人さん本人に知られていたなんて……

 

『だから……見ててくださいね……『夢人さん』!』

 

 今目の前でしていることだって同じだ。

 

 バーチャフォレストの奥で、私は手のひらを返したように夢人さんに笑いかけてる。

 

 その顔は、まるでもう勇者なんて必要ないと言っているように感じてしまった。

 

 そんなこと考えていたわけじゃないってことは、私が1番よく知っている。

 

 ……でも、それは私の一方的な思い込みだったのかもしれない。

 

 こうして観て、私は初めて自分の行動がどれだけ夢人さんを傷つけたのかを理解することができた。

 

 現に、私は浮かべられている笑みが薄情な……勝手に巻き込んだ夢人さんを突き放す氷の笑みに見えてしまう。

 

 ……私、こんなことばかりしてたんですね。

 

 本当に最低です。

 

 やっぱり、夢人さんの言葉は嘘だったんですね。

 

 身勝手な約束で縛りつけていただけなんですね。

 

『男の子を助けるのもいつだって女の子なんですよ』

 

 ほら、今だってもっともらしいことを白々しく笑って言う私なんて……

 

 これ以上自分の醜い姿を観ていることが辛くなった私は、目を閉じてしまいたくなった。

 

 でも、私はスクリーンで記憶を観ているのではない。

 

 上手く言えないけど、記憶を夢人さんになって体験しているようなものだ。

 

 だから、当然私の願いは叶うことなく、視線はずっと私に向けられていて……うん? 私を見ている?

 

 アイエフさんやコンパさん、プラネテューヌのゲイムキャラが少し霞んで観えて、私だけがくっきりと観える。

 

 確かに、この時夢人さんはボーっとしていたけど、私を見ていたからなの?

 

 その理由がわからず考えこんでいるうちに、パープルディスクと女神の卵に力を入れてもらった私達は教会に帰ろうとしていた。

 

『な!? いきなり手をつなぐなんて!? まだ順序と言ったものが!?』

 

(ネプギアの手、柔らかくてすべすべしてて……凄いドキドキする!?)

 

『え? 手をつなぐのはいやですか?』

 

『大丈夫です! オールオッケーさ! アハハ!』

 

(か、可愛い!? さっきの笑顔も可愛かったけど、ちょっと首をかしげて上目遣いで見つめてくるなんて反則だ!?)

 

 ……あ、あれ? 何か変な声が聞こえてくる?

 

 声は反響していてちょっと聞きとり辛いところもあるけど、はっきりと夢人さんのものだとわかる。

 

 でも、私はこの時こんなことを聞いた覚えがない。

 

(やっぱり、そうだ……俺、この子のこと、好きになってる)

 

 予想外の出来事に戸惑っていると、再び夢人さんの声が響いてきた。

 

 ……好きになってる? 誰を? この子?

 

 視界には私の後ろ姿しか映っていないので、多分この子って言うのは……私?

 

 つまり、夢人さんは私のことが好き……って、ええええええ!?

 

 何で!? どうして!? 嘘でしょ!?

 

 今までのことがあって、どうしてそんな結論に至るんですか!?

 

(この笑顔を守りたい……勇者の力で……いいや、ネプギアのように強くなって、俺の手で守っていこう)

 

 ……う、うわああああああああああああ!?

 

 聞いているこっちが恥ずかしくなるような声が響いてきて、私の頭はパンクしそうになってしまう。

 

 さっきとは違う意味で、私はこれ以上夢人さんの記憶を観たくなくなってしまった。

 

(まだ何もできない俺だけど……ネプギアのように優しく強くなって……いつの日か隣に立てるように……)

 

 頭の中が真っ白になってしまった私には、もう夢人さんが何を言っているのかもよくわからない。

 

 それでも、甘い言葉でささやかれるように響く声が耳に残って消えてくれない。

 

 どうしてそんな声が聞こえてくるのかも、夢人さんがどうしてそんな結論に至ったのかも上手く考えられない。

 

 ただ1つ、夢人さんが私を好きって言ってることだけが頭から離れてくれない。

 

 嬉しいのか、喜んでいいのか、悲しいのか、驚いているのか、自分の気持ちすらよくわからない私の視界が段々と暗くなっていく。

 

 夢人さんが気絶して暗転するのとは違い、視界の端から段々と黒く染まっていき、自分の意識も遠のいていくのがわかる。

 

 普通なら恐怖を感じるような事態だが、私にはあまり関係ない事態だった。

 

 心に恐怖を感じるほどの余裕がなかったからだ。

 

 頭の中にあるのは、響いてきた夢人さんの声だけ。

 

 ……もう何が何だかわからないよ!?

 

 

*     *     *

 

 

 ……この子は、いったい何を言っているのだろう?

 

 私がパープルディスクの中に記録されている夢人の記憶を観たネプギアに対して、最初に抱いた感想がこれだ。

 

 もうなんて言うか、ツッコミどころ満載のような気がするわね。

 

 夢人とイストワ―ル様の2人をを助けるための方法を探すために記憶を観たはずなのに、わかった事実が好きな人って……え、ここ笑う所?

 

 すごく微妙で笑えないんですけど……

 

「あ、あの……そ、それで……」

 

「落ち着きなさい、ネプギア……事情が上手く飲み込めないわたし達に1から説明してくれないかしら?」

 

「あ、は、はい……そ、その、実は……」

 

 ネプギアは呆然としていた私達に痺れを切らしたようで恐る恐る質問の答えを催促してきたけど、ブラン様が顔を引き締めて説明してもらうように……あ、ブラン様もちょっとだけ頬が引きつってる。

 

 そして、ネプギアが観た内容を話だすんだけど……

 

「そ、その時、急に声が聞こえてきて、可愛いとか好きとか守りたいとか……うううぅぅぅ」

 

「と言うことらしいんだけど、どう言うことかしら?」

 

『プラネテューヌのゲイムキャラから情報を貰った後だろ? 多分、女神の卵が起動準備に入った影響で今代の勇者の思考をログとして記録してたんじゃないのか?』

 

「心が必要なかったのなら、ログとして残っているのはおかしいのではないですか?」

 

『いやいや、威嚇用とはいえ、魔法を使う時には今代の勇者のイメージが女神の卵に流れ込んでくるようになってたんだぜ。そのせいで思考を魔法のイメージだと勘違いして記録したんじゃないのかってのが、俺の見解だな』

 

 つまり、夢人が心の中で考えていたことまで記録されていたから、ネプギアはこんなことを言いだしたのね。

 

 ……まったく、アイツもこんな形で気持ちが知られるなんて思いもしなかったでしょうね。

 

 むしろ、ネプギアが今までまったく気づいてなかったことも充分呆れてしまうんだけど……これは仕方ないのかもしれないわね。

 

 私の勝手な考えだけど、ネプギアが初めて夢人のことを夢人だと認識したのは、初めて名前を呼んだ時だと思っている。

 

 それまでは勇者と言う存在でしか夢人のことを見れていなかったから、その向けられていた視線の変化に気付かなかったんだろう。

 

 ……つまり、ネプギアにとって夢人から送られる熱のこもった眼差しはデフォルトだったと言うわけ。

 

 夢人としてはラブって意味を込めていたのだけど、ネプギアはそれがデフォルトだと勘違いしていたため、ライクの意味で受け取っていたんじゃないかって思うわ。

 

 精神状態が不安定で、勇者と言う存在に依存しかけていたネプギアがまともに夢人を見ることができなかった弊害じゃないかしら。

 

 コンパはわからなかったかもしれないけど、多分イストワ―ル様も察しがついていたと思う。

 

 【勇者としてではなく、俺、夢人としてな】って、くっさいセリフを吐いてたものね。

 

 ……まあ、ネプギアはその後も勘違いしていたんだけどね。

 

「そ、それじゃ、やっぱり夢人さんは……」

 

「そうね。少なくとも、わたしは夢人があなたのことを好きだって言うことは気付いていたわ」

 

「っ、そうだったんですか!? み、皆さんも知ってたんですか!?」

 

 緊張しながら尋ねてくるネプギアの言葉を、ブラン様ははっきりと肯定した。

 

 ブラン様、いつの間に知ったのかしら?

 

 目を見開いたネプギアは私達を見回してくる。

 

 どうやら、私達にも知っていたかどうか聞きたいらしいんだけど……まあ、だいたいの答えは決まってるわよね。

 

「……ネプギア、アンタ本当に気付いてなかったのね」

 

「……ネプギアちゃんには、前に教えてあげたのに」

 

「……と言うより、何で気付かなかったのよ」

 

 ユニ、ロム、ラムがジト目で驚くネプギアに言葉を返していく。

 

 まあ、そんな反応になるわよね。

 

 特に、この3人は夢人のことが好き……うん? 1人足りないわね。

 

 私が黙っているもう1人……ナナハの方を見ると、彼女は唇を噛んでネプギアを睨んでいた。

 

 

*     *     *

 

 

 ……何だろう。

 

「そうだったの? アタシは気付かなかったよ」

 

「がすとはもちろん知ってたですの。夢人のことを何度へたれと思ったことかですの」

 

「あ、あはは、わかりやすくは、あったよね」

 

「ネプギアの話題を出すと、変な顔で笑いだしてたもんね」

 

「……全然気付かなかったわ」

 

「そ、そんなに落ち込む必要はないですって。いち姉さんも気付いてなかったんですし」

 

 日本一やがすと、5pb.、ファルコム、ケイブ、フェルが次々にネプギアの質問に答えていく。

 

「……アタイも何となくテメェだけちょっと違う扱いかなって思ってたわ」

 

「なぬっ、そうであったのか!? てっきり勇者は吾輩と同じで幼女にしか興味がないのかと……」

 

「それはお前だけだ……俺もギョウカイ墓場で戦った時に夢人はお前のことを好きだって気付いたぞ」

 

 リンダとトリック、レイヴィスまでもが答えていく。

 

 ……何でなの。

 

「あー、やっぱりゆっくんの好きな人ってネプギアだったのか。ノワールとベールも気づいてたの?」

 

「残念ながら、わたくしは気付いていませんでしたわ。夢人さんとは個人的にお話しする機会がありませんでしたし」

 

「っ、と、当然じゃない!? き、気付かない方がおかしいわよ!?」

 

「……あれ? ノワール、もしかして気付いてなかったの?」

 

「うっ……そうよ。私もわからなかったわよ」

 

「もう、変なところで見栄を張らずともよろしいのではないですか?」

 

「わ、私はあなたと違って夢人の特訓にも協力したりしたから、その……」

 

「大丈夫だよ。そう言うのは経験で雰囲気を読めるようになるからさ。ノワールもこれからもっとスキルアップしていけばいいんだよ」

 

「人をボッチみたいに言うな!?」

 

 ネプテューヌさんにノワールさん、ベール姉さんまでもが答えていくのに、私は口を開けずにいる。

 

 今口を開けてしまえば、きっと私は……

 

「それで、いったいどう言うつもりだウラヌス? まさか恋心を自覚させるためだけに言ったのではあるまいな?」

 

〔……当然じゃ。わしが教えたかったことは別にある……むしろ、こんな風になったことに呆れてしまったわ〕

 

「え、それっていったい……」

 

「ふざけないでっ!!」

 

 マジェコンヌさんとウラヌスさんの言葉に、私は我慢の限界を迎えた。

 

 ……もうこんな茶番なんて見たくない!!

 

「さっきから何なの!! 何で夢人とイストワ―ルさんを助け出すための方法を見つけるためにネプギアはパープルディスクの中身を観たはずなのに、どうしてそんなことを言いだすの!!」

 

「ナナハ!? 落ち着いてくだ……」

 

「うるさいっ!!」

 

「っ!?」

 

 ネプギアに詰め寄ろうとする私を宥めようとベール姉さんが手を伸ばしてきた。

 

 でも、私はその手を払ってベール姉さんをきつく睨みつける。

 

 ベール姉さんは払われた手の甲を押さえながら、傷ついた表情で見つめてくるけど、私はもう自分をコントロールすることができない!!

 

「ベール姉さんは黙ってて!! 私はネプギアに……」

 

『はあ、こうなることが予想できていたからギアラスちゃんには観せたくなかったんだよ』

 

 私が再びネプギアに向かって足を進めようとした時、シンって名乗った初代勇者らしいシルエットが疲れたように愚痴をこぼしだした。

 

 ……わかってた? それってどういう意味なの?

 

 私は言葉にせずに、非難の眼差しをシンに向ける。

 

『そう睨むなっての……ウラちゃんが伝えたいことは察しがついてたし、ログとして記録されていなくても中身を観ているうちに気付くんじゃないかって思ってたんだよ』

 

「……じゃあ、なに? 2人を助けるために、ネプギアが両思いだと気付くのは必然だったって言いたいわけ?」

 

『そうは言ってないけど……』

 

〔そうだとしたら、どうするつもりだ?〕

 

 口ごもるシンに代わって、ウラヌスさんが挑発するように言葉を投げかけてきた。

 

『おい、ウラちゃん、何を……』

 

〔お前は黙っていろ。それで、どうするんじゃ? 遅かれ早かれ惹かれあっていた者同士、気持ちに気付くのが少し早まっただけじゃろ?〕

 

「っ!?」

 

 私はウラヌスさんに返す言葉が見つけられず、悔しさに唇を噛むことしかできない。

 

 ……わかってたよ。

 

 いつか、ネプギアが夢人の気持ちに気付く日が来るって。

 

 告白したあの日から、ずっとこの日が来るのを恐怖していたよ。

 

 だって、その日が私の恋の終わりを告げる日なんだから。

 

 ……でも、私はこんな形の決着は認めたくない!!

 

 こんな……こんな……っ!!

 

 私は身をひるがえすと、この部屋を出ていくためにユニ達を押し退けて出口に向かって走り出す。

 

「っ、ナナハ!? どこに行くんですの!?」

 

 後一歩で部屋を出られると思った時、後ろからベール姉さんの声が聞こえてきた。

 

 その声に、私は足を止めて顔だけ振り返って確認を取ることにした。

 

「ねえ、最後に聞いてもいい? 『特典』を抜き取られた『転生者』は、どうなるの?」

 

『……特別なことのない普通の人間として過ごせるようになったはずだ』

 

「……そっか」

 

 シン達の計画だったら、私は人間に戻れていたんだね。

 

 私が望んだ『才能』が……女神の力がない普通の女の子。

 

 ……でも、その時には夢人はいなくなってたんだ。

 

 結局、私の恋は実らない幻想だったんだ。

 

「それじゃ、私が今ここからいなくなっても問題ないよね?」

 

「ナナハ、何を……」

 

「さようなら……………………ベール」

 

「っ、ナナハ!?」

 

 私はもう振り返らずに部屋を飛び出した。

 

 後ろからは、ベールが悲痛な声で私の名前を呼んでいるけど、もう関係ない。

 

 ……私は本来ならいないはずの女神だったんだ。

 

 『特典』って言うズルで、女神の力が使えていた偽者。

 

 ネプギア達のように生まれながらの女神じゃなかった私は、いずれ女神じゃなくなるはずだった。

 

 そのことは別にどうでもいい。

 

 女神の力に未練なんてものは一切ない。

 

 むしろ、夢人と一緒に生きていけるのなら、それでもいいと思った。

 

 ……でも、そんな私に都合のよい未来は訪れることはなかった。

 

 仮にシン達の計画通りに進んでいれば、私は女神の力を失い、夢人もいなくなってしまっていた。

 

 家族と愛する人、どちらも失う未来しか残されていなかったんだ。

 

 だからと言って、今を認めてしまっても、結局私は夢人の1番にも、ましてや本物の女神にもなれやしない。

 

 ……なにをしても、私はキラキラと輝くことができなかったんだ。

 

 いつの間にか流していた涙のせいで、視界がぼやけてくるけど、私は立ち止まることなく走り続ける。

 

 ただ、もう皆と一緒に居たくない。

 

 夢人にも……もう会いたくないよ……




という訳で、今回は以上!
この章も、この話から本格的に動き出しますよ。
それでは、 次回 「塗りつぶされる大地」 をお楽しみに!

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