超次元ゲイムネプテューヌ 夢のヒーローを目指して 作:ホタチ丸
ちょっと忙しくだいぶ遅い時間の投稿となりましたが、何とかあげることができました。
それでは、 パープルディスク はじまります
……初めて感じたのは、ドロドロとした何かだった。
纏わりついてくるその不快さに目を覚ました私が初めて聞いた声は、絶望以外の何物でもない呪いの言葉。
覚醒すると同時に自分がどんな存在なのかを理解させられた私を、アイツは無邪気さを装って縛り付けたんだ。
決して逃れることができない自身の存在の末路に……
憎い。
これが初めて感じた感情だった。
聞こえてくる3人の声が耳障りで、何もできない自分が悔しかった。
だから、例え不快なそれでも我慢して飲み込んだ。
アイツとは違って、私にはまだ体がなかった。
すり抜けていくそれを必死に自分の物にしようとするのだが、上手く吸い取ることができず、どんどん流れていってしまう。
ようやく吸い取れた少量のそれも、あまりの不快さに吐き出してしまい、ほとんど手元には残らない。
それでも私は諦めるわけにはいかなかった。
ただひたすらに流れてくるそれを求め続けた。
もっと……もっと……もっと、もっと、もっともっともっともっとっ!!
もっとちょうだい!!
* * *
「それってどう言う意味なんだ?」
「もう! 父様ったら聞いてばっかりなんですから」
目覚めてから質問ばかりをする俺に、フィーナは頬を膨らませて不満そうに唇を尖らせる。
でも、その声は弾んでおり、どことなく嬉しそうに見える。
「父様と私は運命共同体、つまり生きるも死ぬも一緒だってことですよ」
表情を一変させ、フィーナはにこやかに笑いながらとんでもないことを言ってのけた。
俺とフィーナが生きるも死ぬも一緒?
その言葉の意味がわからず、俺は混乱してしまう。
フィーナは『再誕』の女神であり、俺の中に入っていた女神の卵から生まれたと言っても、実際に顔を合わせたのは3度目だ。
1度目はまったくの他人を装い、2度目は俺を剣で刺し貫いて、そして今『再誕』の女神と告白した3度目の出会い。
正直、そんなことをフィーナに言われる理由が見当たらない。
「うふふ、私がそんなことを言うのか不思議に思ってますか?」
「っ、ああ、俺にはどうしてフィーナがそんなことを言うのかわからない」
「意外と正直なんですね……もっとあの時のように取り繕うのかと思いましたわ」
「あの時?」
考えにふけっていた俺は、フィーナの声にびくりと反応してしまった。
それが面白かったのか、フィーナは柔らかく口元を緩めて笑みを深める。
だが、俺がフィーナの言葉を肯定すると、わずかに目を見開いて眉を動かした。
そんなに意外だっただろうか?
それに、あの時っていったい何時のことなんだ?
「あの夜、プラネテューヌの公園でオリジナルに泣きながら抱きついた時のことですよ。覚えてますか? 【もっとちょうだい】っておねだりしたことを」
「っ、あの時の声はお前だったのか!?」
「ええ、初めて声を交わした時のことも覚えてますか? オリジナル達がライブをした日の夜でしたよね」
「……ああ、忘れられるわけがないさ」
実際は記憶を失ってた時に忘れていたが、ゲイムギョウ界に来て初めて感じた死の恐怖は今でも俺の体を震え上がらせる。
マジックに鎌を向けられたことやトリックに何度も叩きつけられた時とは違う、内側から自分が自分でなくなっていく感覚は俺を苦しめ、ネプギア達を苦しめる原因だ。
知らずうちに顔がこわばり、俺はフィーナを睨んでいた。
「嬉しい。私はてっきりもう忘れていると思っていましたわ。父様は都合の悪いことはすぐに忘れる人間だと思っていましたから」
「……何でそんな風に思うんだよ?」
「そうかっかしないでください。私が一方的に父様のことを知っているだけですから」
俺の睨みを受け流し、フィーナは楽しそうに口を開く。
一方的に知っているとか、どう言うことなんだ?
フィーナの行動も言葉も俺にはまったく理解できない。
どうしてそんな風に嬉しそうに笑って話しかけるのかもわからない。
あの声がフィーナだとしたら、俺に対して絶対にいい感情を持っているはずがないんだ。
何故なら……
「そうだわ! 私だけが父様のことを知っているのは不公平ですよね。今度は私のことをお話ししますね」
フィーナは両手を叩いて顔をパッと明るくさせると、嬉々として語り始める。
「私、フィーナはただ1人の『再誕』の女神であり、勇者である父様の唯一の味方です。えっと、それで……」
「ちょ、ちょっと待ってくれ!? ただ1人って……それじゃ、アカリはどうな……」
「アイツは違う!!」
アカリの名前を出すと、フィーナは先ほどまで浮かべていた笑みを消し去り、固く唇を噛みながら俺を睨んできた。
「アイツは『再誕』の女神なんかじゃない。アイツは何ひとつ役目を果たすことなく、私に全てを押し付けた卑怯者よ」
「押し付けた? ……卑怯者っていったい……」
「父様はアイツに守られていると思っていたのかもしれないけど、本当は違うわ……アイツは父様を理由にして『再誕』の女神としての全てを放棄した卑怯者なの」
アカリを罵るフィーナの目には涙が浮かんできていた。
やがて、片目だけ涙があふれ出し、歪だが美しくも見える悲しい笑みを浮かべながら言葉を続ける。
「アイツは『再誕』の女神の役目を……消滅することを拒んだのよ」
* * *
『そいつはな、消えたくないと願ったんだよ』
「っ!?」
腕の中のアカリちゃんが大きくビクッと震えた。
消えたくない? アカリちゃんが願った?
初代勇者さまの言葉を聞いたアカリちゃんは、まるで叱られるのを恐れているように見える。
そのことが初代勇者さまの言葉が正しいと証明しているように思えて、私は戸惑いを隠せない。
『理解できてないみたいだから言っとくけど、元々『再誕』の女神は女神の卵に組み込まれたプログラム通りに動く存在。言わば、道具と同じだ』
「そんなことないです!! アカリちゃんにはちゃんと心が……」
『いいから黙って聞いておけ。俺達は別に『再誕』の女神にゲイムギョウ界の安定を守る役割を与えたわけではない。それはお前達の役割だからだ』
コンパさんが反論しようとしたけど、初代勇者さまはそれを遮り、静かだけど有無を言わせぬ強い口調で言葉を続ける。
『『再誕』の女神の役割はただ1つ、『歪み』によるゲイムギョウ界の崩壊を防ぐこと。それ以外、何もする必要はない』
断言する初代勇者さまを私は目を細めて睨んだ。
多分、私だけじゃなくてお姉ちゃん達も睨んでいると思う。
剣呑な雰囲気が流れだしていたからだ。
初代勇者さまの言葉は傲慢だと思う。
女神は便利な道具なんかじゃない。
例え、私達と違った生まれ方をしたとしても、アカリちゃんはちゃんと生きている女神の1人なんだ。
それなのに、ゲイムギョウ界を修復すること以外のことをする必要がないだなんて……
『おいおい、俺を睨んでどうする? 俺は真面目にゲイムギョウ界の未来を考えていると言うのに……』
「だったら、どうして道具だなんて言うんですか!! アカリちゃんも私達と同じ女神の1人です!!」
「そうだよ!! アカリちゃんはゆっくんのほっぺをつねって嬉しそうに笑っていたり、海で楽しそうに泳いだり、あいちゃんの携帯をブンブンと振り回して悪戯したりもする子なんだよ!!」
「ちょっ、ネプ子!? それ本当なの!?」
「あっ、今のなしなし!? ……と、とにかく、アカリちゃんは道具なんかじゃないよ!!」
「……ちょっと目を離した隙に知らない傷が増えていたのはそれが原因だったのね」
……な、何か聞いてはいけないことを聞いたような気がするけど、お姉ちゃんも私の意見に賛成みたい。
初代勇者さま達が望んだ『再誕』の女神は心がない道具のような存在だったのかもしれないけど、アカリちゃんはちゃんと心がある。
私のことをママって呼んでくれたり、海や温泉を楽しんだり、お絵描きをして嬉しそうに笑う大切な娘なんだ。
これからもずっと私と夢人さんの……
『はあ、こうなることがわかっていたから、『再誕』の女神には心が必要なかったって言うのに、今代の勇者は本当に厄介なことをしてくれたよ』
「……どう言う意味?」
『『再誕』の女神に情を移す必要などないと言うことだ……所詮、『再誕』の女神も勇者や『転生者』同様にゲイムギョウ界に悪影響しか及ぼさない存在なんだからな』
疲れたようにため息をつく初代勇者さまは、頭を乱暴に掻く仕草をした。
だが、すぐに私達を憮然とした態度で見渡しながら口を開いた。
……『再誕』の女神がゲイムギョウ界に悪影響を及ぼす存在?
私には初代勇者さまの言葉が矛盾しているように思える。
「おっしゃってることがおかしいんじゃありませんか? あなた方はゲイムギョウ界を守るためにアカリちゃんを誕生させる計画を立てたのでしょう? それならば、どうしてアカリちゃんが不要などとおっしゃるのですか?」
『……まあ、多少言いたいこともあるが、その疑問には簡潔に答えてやろう。ズバリ、『再誕』の女神はこの世界の『歪み』を修復する力、普通の女神とは違う能力を持つイレギュラーなんだよ』
「イレギュラー? でも、あなた達はアカリが、『再誕』の女神が必要だから誕生させる計画を立てたのでしょう? それなのにイレギュラーなの?」
『ああ。レイきゅんとそこのワンコボーイは知っていると思うけど、この世界にはオリジナルの世界がある。その世界には、勇者も『転生者』も『再誕』の女神も存在していない。それが何故だかわかるか?』
「え、それは『歪み』がないから、ですか?」
『その通りだ。『歪み』がなく、安定しているから存在する必要がない……ならば、『変質』してしまったこの世界を修復した後に残る『再誕』の女神はどうなる? 答えは1つ、新しい『歪み』の原因になってしまうのだ』
本来ならいるはずがない存在だからゲイムギョウ界を壊してしまう『歪み』になってしまう、それは以前にゲイムキャラ達から聞いた話の通りだった。
アカリちゃんはゲイムギョウ界を救う存在であると同時に、壊してしまう存在でもあるの?
『そのために俺達は『再誕』の女神にとあるプログラムを組み込んでおいた。ゲイムギョウ界を修復した後、自身が『歪み』になってしまわないように自壊するプログラムをな』
「自壊、って死ぬってことじゃない!?」
『語弊があるな。本来なら心を持たずに生まれてくる『再誕』の女神は、そもそも生きてはいない。ただ役割通りに働いた後に、消滅するだけの道具だったはずなんだからな』
……死ぬ。
アカリちゃんは死ぬために生まれてきたって言うの?
『ネットから圧縮されたアップデートプログラムをダウンロードした時と同じだ。必要なのは解凍したパッチであり、圧縮されたファイルじゃない。容量を圧迫させることしか能がない圧縮ファイルは、ゴミ箱直行となるんじゃないのか?』
「……その理屈は分かります。ですが、納得はできませんわ」
『だから、本当なら納得する必要もなかったんだって。今のお前らはその子に情が移ってるから納得しようとしていないだけなんだよ。計画通りに進んでいれば、お前らとコミュニケーションを取ることもなく、ただ忠実に己の使命を全うするだけの道具だったんだから』
初代勇者さまの言葉を聞きながら、私は呆然と腕の中で震えるアカリちゃんを見つめることしかできない。
『再誕』の女神の真実がショックで、アカリちゃんを安心させるためじゃなく、自分の震えを誤魔化すために抱きしめる腕の力を強くすることしかできない。
……この世界がパソコンの中やゲームの中ならば、初代勇者さまの言葉も理解できる。
プログラムに発生したバグを修正するファイルをダウンロードして、パッチを当てて正常に起動するようにする。
そして、残った圧縮ファイルをゴミ箱に入れて、容量を少しでも増やすために削除する。
それは、私やお姉ちゃん達も当たり前のようにすることだ。
『だが、心が生まれた『再誕』の女神であるその子は、自身の消滅をよしとしなかった。だからこそ、女神の卵から生まれることを拒否したり、自身の存在意義の対象である『歪み』を求めて今代の勇者を再びゲイムギョウ界に招き入れたのだ』
「消えるのが嫌だから生まれるのを拒否したり、『歪み』である夢人が必要だから呼び戻したって言いたいわけね……それにしても、何でも知っているって口振りね。正直、かなりイラッとするわ」
『それについては否定させてもらおう。俺は俺の知っていることしか知らない。ここにいたとしても、ある程度は外の様子を知ることができるから知っているだけに過ぎない』
「そんなことはどうでもいいのよ。アンタは、アカリがさっさと女神の卵から生まれて夢人を殺せばよかったって思ってるわけなの?」
『もちろんだとも。勇者は象徴であればいい。つまり、その存在に意味などなく、ゲイムギョウ界を救う事実だけ残せばよかったのだ』
「……あなたの考える勇者とは、差し詰めファイルがダウンロードできるホームページと言ったところかしら? 本当にふざけた物言いね」
『何度も言うが、俺達はふざけてなどいない。これがゲイムギョウ界を安定させる唯一の方法だと信じたからこそ、計画を実行しようとしたんだ』
初代勇者さまがアイエフさんやユニちゃん、ブランさんの言葉を当然のように返していく。
その声には揺らぎや迷いなど一切なく、逆に私達が間違っているんじゃないかと思ってしまう説得力を感じてしまう。
……現に、私は何が正しいのかわからなくなっている。
心を持たない『再誕』の女神が正しいのなら、今ここにいるアカリちゃんはいったい何なの?
夢人さんが死んでしまう恐怖を押し殺してまで、誕生させたアカリちゃんは間違っているの?
夢人さんと約束した一緒にゲイムギョウ界を守ると言う願いは、叶わないものだったの?
『再誕』の女神も……勇者も……私には何にもわからないよ。
「ちょっと聞いてもいいかな。あなた達の計画では『転生者』、私やフェル、レイヴィスをどうするつもりだったの? 勇者や『再誕』の女神のように消すつもりだったの?」
『いいや、いくら前世の知識があろうとも、お前達は勇者や『再誕』の女神とは違い、この世界で生まれた存在だ。『歪み』の原因を取り除けば、他の奴らと同じように生きていけるようになるはずだった』
「『歪み』の原因? それって何なの?」
『『転生者』が転生時にもらった能力、『特典』のことだ』
『特典』、確かナナハちゃんが『転生者』だって告白してくれた時にも同じ単語を聞いた覚えがある。
フェル君がリンちゃんと合体する『人魔一体』。
ナナハちゃんがキラキラ生きるための『才能』。
レイヴィスが『勇者への道』で見せた物を作りだす『創生』。
これらが『転生者』を『歪み』にしていた原因なの?
『計画通りに『再誕』の女神が覚醒していれば、迷うことなくこの場に来てゲハバーンを手に入れ、『転生者』から『特典』を抜き取る手筈だったのだ』
「っ、そうだ!! ゲハバーンとはいったい何なんだ!! どうしてフィーナに渡した!!」
初代勇者さまがゲハバーンの名前を出すと、レイヴィスが思いだしたかのように責めるような口調で尋ねた。
アカリちゃんの話題にそれていたけど、最初はゲハバーンについて聞いていたんだった。
『ゲハバーン自体には殺傷能力はないが、『再誕』の力の特徴である“カット”の力を強化する能力がある。“カット”とは情報を切り取るための力のことを指す。つまり、“ペースト”とは対になる力と言うわけだ……レイヴィスはその力がどんなものかもう知っているだろ?』
「……俺が夢人から女神の卵を抜き取った力のことだな」
『ああ、そうだ。あの時、お前はマジェコンヌの力を借りていたため、擬似的にだが『再誕』の力の一部を使うことができていた。だからこそ、人間の身でシェアエナジーを操ることができたり、今代の勇者を傷つけることなく女神の卵を切り取ることができたんだ』
「じゃあ、俺がフィーナを『創生』の力で作ったゲハバーンで斬った時、ゲハバーンが爆発したのは何故なんだ?」
『そんなのフィーナのシェアエナジーを切り取り過ぎて、剣自体が容量オーバーになっただけだ。『再誕』の女神には、切り取った『特典』を保有しておくほどの余裕があるが、人間のお前にはそんなことは無理だろ?』
「……端から俺には使えないとわかっていて、ゲハバーンの存在をフィーナに知らせるために利用したのか」
『おお、賢い! 女神の卵を砕かれた影響なのか、ゲハバーンの存在を忘れてたみたいなんだよね。だから、俺としてもお前さんが来てくれたのはちょうどよかったのよ』
レイヴィスが唇を噛みながら、初代勇者さまを苦々しい表情で睨んでいる。
初代勇者さまは、最初からフィーナ、ちゃんにゲハバーンを渡すつもりだったようだ。
多分、アカリちゃんが夢人さんの体から切り離されたのは、フィーナ、ちゃんがゲハバーンを使って強化した“カット”の力を使ったからだと思う。
『俺の目から見ても、フィーナはその子と違って『再誕』の女神としての役目を果たそうとしている。犯罪神を一部とはいえ吸収したり、女神の卵の欠片を集めるために犯罪組織を利用したりする、合理的な判断を下しているからな』
「欠片集めに犯罪組織を利用するのが合理的な判断なの?」
『おう、何故なら……』
〔そこまでにしておけ〕
初代勇者さまの言葉を遮り、どこからともなく声が聞こえてきた。
私達はハッとなって周りを見渡すけど、声の主を見つけることができない。
しかし、初代勇者さまは声の主がわかっているようで、両肩をすくめて天井の方へと視線を向けた。
『ようやくお目覚めかい、ウラちゃん?』
〔お前が馬鹿にみたいに騒ぐから、目が覚めてしまったんじゃよ……それにお客人が来ているのに、いつまでも寝ているわけにはいかんじゃろ〕
『それ、婆っぽくない? あ、口調からしてそうか』
〔……なにを言っておる。それを言うなら、お前は爺だろうが〕
初代勇者さまは親しげにウラちゃんと呼んだ人? と話をしているのだけど、私達にはまったくその姿を確認することができない。
「……ウラヌス、できればもう少し早く目覚めて欲しかったぞ。コイツが暴走して大変だったのだ」
〔生憎とわしはこの馬鹿のストッパーではないのでな。管轄外と言うものじゃ〕
『……あれ? ウラちゃん俺に冷たくない?』
〔いつものことじゃろ……さて、自己紹介が遅れたのう。わしは今は意識だけの存在じゃが、元女神であったウラヌスと言う者じゃ〕
元女神のウラヌスさん?
私には、疲れたようにため息をついて額を押さえるマジェコンヌさんを含めて、3人がとても親しそうに見える。
……もしかしたら、ウラヌスさんも初代勇者さま達と一緒に計画を立てていた人なのかな?
「ウラヌスさんは、古の女神なんですか?」
〔いいや、わしはお前さんらの言う古の女神の次の代の女神じゃよ……それよりも、お前さんらは話を聞くために来たのではないのだろう?〕
「っ、そ、そうだった!? わたし達はいーすんとゆっくんを助けるための方法を知るためにここに来てたんだ!?」
ウラヌスさんの言葉を聞いて、私達は当初ここに来た目的を思いだした。
忘れていたわけではないけど、初代勇者さまとマジェコンヌさんの話が衝撃的すぎて、頭がいっぱいいっぱいになってしまい考える余裕がなかったんだ。
「それで、貴様はこの状況をどうすれば打開できるのか知っているのか?」
〔そんなご都合主義のようなことは知らん〕
「ちょ、えええええ!? ここはヒントが出てくる所じゃないの!?」
マジェコンヌさんが問いかけると、ウラヌスさんははっきりと知らないと答えた。
なんて言うかお姉ちゃんじゃないけど、すごく潔くてさっきまで悩んでいたことも一瞬忘れちゃいそうになってしまった。
〔落ち着け。何も教えないとは言っていない〕
「……本当でしょうね?」
「……すっごく怪しいわ」
「……先ほどの振りがなければ、素直に喜べたのですけど」
ノワールさん達もジト目になってしまっている。
私も正直、夢人さんといーすんさんを助けるためのことが聞けるかどうか心配してる。
本当に信じていいのかな?
〔まったく、信じられないのなら、自分達で確かめてみるといいじゃろ……そこのプラネテューヌの女神候補生〕
「は、はい!?」
〔お前の体に眠っているパープルディスクの中身を覗いてみるといい〕
「へ、パープルディスク?」
私は急に指名されたことと、予想外の指示を受けてきょとんとしてしまう。
確かに、ギョウカイ墓場で私の体の中にパープルディスクが溶け込むように入っていったけど、それってどうやって中身を観ればいいのかな?
取り出して専用の機械で再生しなくちゃいけないのかな?
「パープルディスク、って中身は夢人の記憶じゃない」
「うん、夢人お兄ちゃんの記憶だと思う」
「え、そうなの?」
ユニちゃんが呆れたようにつぶやくと、隣にいたロムちゃんが頷いて肯定した。
そ、そう言えば、アカリちゃんがゲイムキャラ達からもらったディスクに夢人さんの記憶を入れていたんだよね。
つまり、パープルディスクにも夢人さんの記憶が入っているはず。
……あれ、中身はわかったんだけど、どうやって確認すればいいの?
「あ、あの、どうやって中身を確認すればいいんですか?」
「あれ、ネプギアは夢人の記憶を観てないの?」
「う、うん。ラムちゃんは観たの?」
「ラムだけじゃなくて、アタシやロムも観ているわよ。ナナハは?」
「……私も観たよ」
私が恐る恐るウラヌスさんに方法を尋ねると、ラムちゃんが首をかしげながら見つめてきた。
ナナハちゃんの表情が硬かったのが気になるけど、どうやら私以外の皆はすでに夢人さんの記憶を観ているらしい。
ほ、本当にどうすれば観られるの?
〔その子の『再誕』の力を使えば、ディスクから中身を観ることができるはずじゃ〕
「あ、はい。それじゃ、早速……」
『ちょ、ちょっと待った!?』
私がアカリちゃんにお願いしようとした時、突然初代勇者さまが大きな声を出し始めた。
〔なんじゃ、お前は黙っておれ〕
『いやいやいや、何で起きぬけのお前がこの場を仕切ってんの!? もっとこう、お前らを認めへんでー! とか、実はこうだったんやでー! 的なプロセスが必要でしょ!? なに段取りすっとばして進めてるわけ!?』
〔……馬鹿は放っておいて、早く中身を観てみろ〕
「え、でも……」
『あー、駄目ったら……』
〔いいからお前は黙っていろ〕
『……はい』
何で初代勇者さまが邪魔してきたのかはわからないけど、ウラヌスさんが低い声を出すと大人しくなってしまった。
……何か上下関係を見た気がする。
っと、そんなことを考えても仕方ないよね。
「アカリちゃん、お願いできる?」
「……うん」
アカリちゃんが力なく頷くと、私はゆっくりと目を閉じた。
目を閉じる必要はないのかもしれないけど、パープルディスクに入っている夢人さんの記憶をしっかりと観るために……
* * *
ネプギアが目を閉じて、しばらくすると彼女の体に変化が訪れた。
「……え、え、ええええええ!?」
突然、目を開くと顔を真っ赤にさせて大きな声で叫んだのである。
目を白黒させながら、その場で何度も足踏みをしてしまう。
「ど、どうしたのネプギア?」
「え、あの、その、えっと、その、あの、う、ううう……」
「ほ、本当にどうしたの!? しっかりして!?」
心配になったネプテューヌが声をかけるのだが、ネプギアはまともに答えることができず、さらに顔を赤くし出す。
ネプテューヌは頭から湯気でも出ているのではないかと勘違いするくらいに赤くなり目を回し始めるネプギアに慌てて詰め寄ると、その両肩に手を置いて体を前後に揺らし始める。
「ちょ、ネプテューヌ!? あなた何してるのよ!?」
「それは逆効果ですわ!?」
「は、離してよ、2人とも!?」
突然のネプテューヌの行動に呆気にとられたが、いち早く正気に戻ったノワールとベールが急いでその行動をやめさせて、両脇を押さえてネプギアから引き離した。
引き離され2人に吊るされているように押さえられたネプテューヌは、じたばたと暴れてネプギアに近づこうとする。
一方、ネプテューヌから解放されたネプギアは頭を激しく揺らされていた影響なのか、ふらふらと後ろへと倒れそうになってしまう。
「ちょっと、しっかりしなさいよ!?」
「大丈夫、ネプギア?」
「……う、うん」
ユニとナナハに背中から支えられて倒れることはなかったが、ネプギアの声には力がなく、すぐに俯いてしまう。
「いったい、何を観たの?」
「……そ、その、その前に聞いてもいいですか?」
ブラン達が心配そうに近づくと、ネプギアは抱いているアカリちゃんの体に顔を隠すように俯きながら上目遣いで質問をする。
「……夢人さんの好きな人って……私、だったんですか?」
『……はあ?』
「え……ねぷっ!?」
恥ずかしそうに瞳を潤ませて尋ねてくるネプギアに、全員は口をポカンと開けて間抜けな声を上げてしまった。
予想外のネプギアの発言に、それ以上言葉を発することができずに固まってしまう。
その際、ノワールとベールはネプテューヌの両脇を押さえていた手を離してしまい、床に落としてしまった。
同じように口を開けて固まっていたネプテューヌが床に落ちた時に出した声だけが、静かになった空間に虚しく響いた。
という訳で、今回はここまで!
ようやく説明回も一段落ついたので、次回は動きを見せられると思います。
それでは、 次回 「中途半端な存在」 をお楽しみに!