超次元ゲイムネプテューヌ 夢のヒーローを目指して   作:ホタチ丸

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本日もこにゃにゃちわ!
今日は少し遅れての投稿となってゴメンネ!
実は細かいところが納得できず修正作業してたらこんな時間に…
さてさて、今回はマスコットキャラクターの登場とフェル君の話中心ですのでよろしく!
それでは 家族 はじまります


家族

 魔物使いと呼ばれる少年フェル。

 

 彼は家族を人間に殺された悲しい過去を持っていた。

 

 そのため、彼は人間を信じられず、女神を恨んでいた。

 

 そんな彼が夢人に投げかけた『転生者』と言う言葉。

 

 それは一体どういう意味なのか?

 

 

*     *     *

 

 

「『転生者』? なんだよ、そりゃ?」

 

 夢人はフェルが口にした『転生者』の意味がわからず尋ねる。

 

「……死んでもう一度人生を送っている者……ボクのような本来いるはずがない人物になっている者のことだ」

 

 フェルは呆然と表情から再び夢人を睨みつつ話し続ける。

 

「ゲイムギョウ界……いや、『超次元ゲイムネプテューヌmk2』の世界にお前とボクは存在しないんだ」

 

「『超次元ゲイムネプテューヌmk2』?」

 

 フェルが口にした言葉の意味がわからず疑問に思う夢人。

 

「……そう、本来ならラステイションの女神候補生のユニはもっと強気な性格だったし、ファルコムもこの時点では協力してくれないはずだったんだ」

 

 フェルはそう言いながら叫ぶ。

 

「お前が! お前が世界を壊したんだ!!」

 

 フェルは叫ぶと同時に夢人に背を向けて走り去った。

 

「な!? おい! 待てよ!」

 

 夢人もフェルを追おうとするが、目の前にフェンリルが立ちはだかった。

 

「ガウ」

 

「……どうしたんだ?」

 

 フェンリルの様子がおかしいことに気付いた夢人はフェンリルを見上げた。

 

 フェンリルの顔を見て夢人は苦笑した。

 

「……お前もケイさんと同じだな」

 

 そう言いながら夢人はフェンリルの頭をなでた。

 

 フェンリルは夢人になでられながら気持ちよさそうに目をつぶっていた。

 

 

*     *     *

 

 

 魔物使いフェル。

 

 前世では『東翔一(あずましょういち)』という名であった。

 

 彼は至って普通の生活を送っていた少年であった。

 

 兄弟こそいなかったが、家族から愛され、友達とも元気よく遊ぶ、そんなありふれた生活を送っていた。

 

 あの事件が起こるまでは……

 

 彼は両親とともに車で買い物に出かけていた。

 

 父親が車を運転し、母親がこれから買うものを楽しそうに話す。

 

 しかし、彼らが買いもの行うことはなかった。

 

 ……スリップ事故であった。

 

 その日は雨で路面が濡れており、ブレーキが効きにくい状態であった。

 

 父親の運転する車は不運にもスリップ事故を起こしガードレールにぶつかってしまい、その衝撃で父親と母親は帰らぬ人になってしまった。

 

 彼だけは後部座席に座っていたため、頭を少し打つ程度の怪我であった。

 

 そして、彼は一人ぼっちになった。

 

 彼の両親の葬式は粛々と行われた。

 

 当時、10歳にも満たなかった彼は親戚からの視線に恐怖した。

 

 自分が知らない人達が自分を引き取ると笑いかける。

 

 どうして?

 

 お父さんとお母さんが死んだのに……

 

 どうして、笑顔なの?

 

 彼には彼らの顔に張り付けられた笑顔が怖かった。

 

 自分がただのモノとして見られているのではないかと言う恐怖があった。

 

 ボクは……

 

 ボクは……だれなの?

 

 

*     *     *

 

 

 走り去ったフェルは誰も追ってこないのを確認して近くの岩に腰を掛けた。

 

 彼は夢人が自分と同じ『転生者』であると思っていた。

 

 夢人が自分の知っている世界を改変した張本人であると思っていた。

 

 本来、この世界に魔物使いなどと言う設定はない。

 

 それが生まれたきっかけはあの男がいたからなのだと思っていた。

 

 しかし、実際話してみると夢人は『転生者』の意味がわかっていなかった。

 

 とぼけているのかと思った。

 

 しかし、それならば一緒に行動していたこの1週間の行動の意味がわからなかった。

 

 彼が『転生者』であれば、必ず自分と同じように転生の際に『特典』、いわゆる能力を持っているはずだ。

 

 確かに彼は魔法を扱うにはあまりにも膨大な魔力を持っている。

 

 しかし、彼は魔法がうまく扱えない。

 

 彼が魔法を使うたびに彼の体は燃え上がる。

 

 疑っている自分が馬鹿らしくなるくらい彼はこの世界に馴染んでいないように見えた。

 

 ユニとの関係もそうだ。

 

 彼がこの世界のことを知っているのならば、絶対にユニとは喧嘩はしないであろう。

 

 確かに、そう言うフラグ建てもあるだろうが、彼からはユニに対して自分とは違う感情が見える。

 

 そう、まるでユニを1人の人間として見ている。

 

 彼女は女神だ。

 

 普通の人間じゃない。

 

 フェルはそのことに比べてこの世界のキャラクターと言う考えがあり、どうしても人間に思えなかった。

 

 そして、この世界に居る自分も人間に思えなかった。

 

 自分もこの世界同様、造られた存在としか思えなかった。

 

 この世界の両親だって……

 

 自分を守ってくれるフェンリルだってそうだ。

 

 彼は出会ったすべてのモノがどうしても造り物に見えてしまう。

 

 そんな中に居る自分は本当の自分なのかわからない。

 

 ボクハ……ダレナノ?

 

 

*     *     *

 

 

 その日の夜

 

 ラステイションに帰って来た夢人は教会で借りている自分の部屋に居た。

 

 パーティーを抜け出した夢人はあの後、ユニから出会いがしらに強烈なドロップキックを喰らった。

 

 その時、ユニはこう言った。

 

【あのジュースを飲んだアタシの気持ちがよくわかるかしら?】

 

 ……今度は「ミックスジュース ボストンクラブ味」をプレゼントしてやろうと考えた。

 

 ファルコムはそんな2人に苦笑しつつ、フェルについて聞いてきた。

 

 実は、ファルコムはフェルが夢人を連れだしたのを知っていたのだ。

 

 彼女は知っていながら夢人達と別行動をしていたのだ。

 

 夢人はフェルのことをフェンリルに任せたと言い、立ち上がった。

 

 ファルコムはただ一言、夢人にだけ聞こえる声で言った。

 

「……そっか、ありがとうね夢人君」

 

 夢人はファルコムのお礼に照れて頭をかいていると、ユニに思いっきり足を踏まれた。

 

 何でも鼻の下を伸ばしていたらしい。

 

 そんなこんなで、フェルもフェンリルと共に合流したことで探索を再開したのだが、結局『結晶』を発見することはできずに帰還することになった。

 

 そして、夢人は昼間話したフェルのことを思い出していた。

 

 彼の顔はよく知っている。

 

 彼の今抱いている感情はよくわかるつもりだ。

 

 それは自分も抱いたことのある感情だ。

 

 きっと、彼の周りにはそのことに気づける人間がいなかっただけで、まだ十分に彼は人間を信じられるようになると思っている。

 

 しかし、彼が言っていた『転生者』と言う言葉が頭に残っていた。

 

 彼はこの世界を知っているようなことを言っていた。

 

 自分はこの世界のことは召喚されてから初めて知った。

 

 こう見えても夢人はオタクであることを自負しており、アニメやゲーム、ドラマなどのサブカルチャーにも広く精通していると思っていた。

 

 しかし、彼が言った『超次元ゲイムネプテューヌmk2』と言うものを夢人は知らなかった。

 

 彼がただ知らなかっただけなのか?

 

 それとも……

 

 夢人が考えている途中、控えめに夢人が休んでいる部屋がノックされた。

 

「どうぞ?」

 

 夢人はノックした人物を部屋へと招き入れた。

 

「……失礼するわ」

 

 部屋に入ってきたのはユニであった。

 

 しかし、部屋に入ってからもユニは俯いていて何もしゃべらない。

 

「どうしたんだ?」

 

 そんなユニの様子に疑問を持って夢人は尋ねた。

 

「……聞きたいことがあるの」

 

 ユニは静かに尋ね始めた。

 

「アンタは……どうして笑えるの?」

 

 ユニは夢人に悲しそうに話しながら言う。

 

「アタシは……少しの間だけど一緒に居て、アンタの事情も少しは知ったわ」

 

 夢人はユニが言葉を続けるのを待った。

 

「アンタが異世界から来て、勇者として来たんだって……でも……」

 

 ユニは手を胸の前で組んで言う。

 

「……大切な人と離れて悲しくないの?」

 

 夢人はその言葉を聞いて目をつぶった。

 

「……アンタにも家族がいたんでしょ? 大切な人達と離れているのにどうして笑っていられるの? ……アタシにはわからないの……」

 

 夢人はユニが話し終えると、ゆっくりとユニに近づく。

 

 ユニはそんな夢人を不思議そうに見る。

 

 そして、夢人はユニの前に立つと……

 

「そんなこと気にしてたのかよ」

 

 ユニの頭をなで始めた

 

「な!? そんなことなわけないじゃない!? だって、アンタは!?」

 

「そんなことだよ」

 

 ユニが夢人に怒ったように叫ぶが、夢人はその視線を受けながらも笑いながらユニの頭をなで続ける。

 

「ホント、そっくりだよな、お前ら」

 

「……いい加減にしろ!」

 

 ユニは夢人がなでていた手を払いのけて夢人の足を思いっきり踏む。

 

「痛っ!? 今日だけで2度目だぞ!?」

 

「そんなことはいいの! 早く答えなさいよ!」

 

 夢人は片足立ちになりながら痛みを和らげようととび跳ねる。

 

 ユニはその姿を気にした様子もなく質問を続ける。

 

「大事な人が側にいないのにどうして平気そうに笑っていられるの!? アタシには、アンタの気持ちがわからないのよ!」

 

 ユニは再び夢人に対して叫ぶ。

 

 そんなユニに夢人は苦笑しながら応える。

 

「当たり前だろ? お前が俺の気持ちがわからないのは……俺は俺だからな」

 

 右手の親指を上げユニに向けるが、ユニは理解できないと首を振りながら叫ぶ。

 

「どうしてよ!? どうしてなのよ!?」

 

 瞳には涙を浮かべて言う。

 

「アンタはさびしくないの!? アンタ、一人ぼっちじゃない!?」

 

 夢人はそんな姿のユニを見て、視線を天上へと向けた。

 

「……さびしくないと言えば嘘だな」

 

 夢人は天井を見ながら言う。

 

「ゲイムギョウ界に来た日なんて、いろいろ考えたさ……今、家族がどうしているんだろうなあ、とかな……そんな風に考えて夜1人で泣いたよ」

 

 ユニはそれを意外に思い夢人を見た。

 

「泣いた? ……アンタが?」

 

「おいおい、俺だって人間だぜ。お前の見ての通り、泣いたり笑ったりするんだよ」

 

 夢人は苦笑しながら言う。

 

「でもさ……俺は生きてるんだ」

 

 夢人はまたユニに近づいて頭をなで始めた。

 

「この世界で俺ができることが何かはわからないし、また元の世界に戻れるかどうかもわからない」

 

 ユニは夢人の手を受け入れながら静かに聞く。

 

「俺が俺でいるために……まずは笑っていようって思ったのさ」

 

 夢人がユニの頭から手を離す。

 

 ユニはその手を名残惜しそうに見たが、すぐにそれに気付き頬を赤く染める。

 

「だって、俺はこのゲイムギョウ界が好きになったんだからな」

 

 夢人は自信満々にユニに言った。

 

 

*     *     *

 

 

 ゾーンオブエンドレス

 

 夢人達は今日も『結晶』を探してダンジョンを探索していた。

 

 しかし、今日のパーティーの様子はいつもと違っていた。

 

 ユニとフェルの2人が俯いたまま夢人とファルコムについて歩いているのである。

 

 そんな様子のおかしい2人を心配してファルコムが夢人へと小声で相談する。

 

「……ど、どうしたんだろう、2人とも?」

 

「……まあ、あれだ……人生で一度はぶつかる壁みたいなもんに今ぶつかってんのさ」

 

 そんなファルコムに苦笑しながら応える。

 

「壁?」

 

 ファルコムはわからず尋ねる。

 

「そう、その壁を今乗り越えなきゃいけないだろうよ」

 

 夢人はそう言って2人に視線を向けた。

 

 2人はその視線に気づかず、歩き続ける。

 

 そんな2人の姿を見て夢人は苦笑しながら言う。

 

「……これが若さかねえ」

 

 

*     *     *

 

 

 4人がゾーンオブエンドレスのさらに奥へと進んでいく。

 

「……ないなあ、本当にここにあるのかな『結晶』」

 

 夢人はうんざりした表情でファルコムに言う。

 

 ファルコムはそれを見て苦笑して言う。

 

「まだわからないよ……そうだね、ラステイション周辺のダンジョンは後は……」

 

 そう言いながら、ファルコムはまだ言っていないダンジョンを思い出す。

 

「……リビートリゾートとセプテントリゾート、かな?」

 

「あと2箇所ってことか」

 

 夢人は意外とゴールが近いことを確認して笑う。

 

「ならとっとと、ここの探索を終えて探しに行こうぜ」

 

 その言葉にファルコムは苦笑しながら言う。

 

「そんなにネプギア達と会いたいの?」

 

 そんなファルコムの質問に夢人は笑顔で応える。

 

「あったり前さ!」

 

 

*     *    *

 

 

 そんなことを話している2人の後ろでフェルは悩んでいた。

 

 これからどうするか……

 

 彼はこれから起こるであろう未来を少しだけ知っている。

 

 今までは放っておけばよかった。

 

 でも、今は夢人と自分と言うイレギュラーが関わってしまった。

 

 これから先、どうなるかわからず恐怖していた。

 

 もしかすれば女神がマジェコンヌにやられてしまうかもしれない。

 

 そしたら、今自分がいるゲイムギョウ界は……

 

 そこまで考えてフェルは体を震わせた。

 

 それがどうしたと言うのだ?

 

 自分が本当に自分なのかもわからないのに……

 

 消えてしまってもいいとさえ思っていたのに……

 

 今更何を……

 

 自分は女神やこの世界を自分の知っている世界に変えた存在を恨んでいる。

 

 それは忘れてはいない。

 

 自分が本来いない人物だとわかっている。

 

 それでもどうしてこんなに……

 

 

*     *     *

 

 

 同じようにユニも悩んでいた。

 

 昨夜ユニは夢人が言ったことを信じることができなかった。

 

 大切な人と離れて笑っていられるはずがない。

 

 自分がそうだ。

 

 大切な姉がいなくなってから自分は笑えなくなった。

 

 当たり前だ。

 

 共に喜んだり悲しんだりする大切な存在がいないのだ。

 

 そんな時、自分だけが笑っていられるわけがない。

 

 夢人を見ていると自分が本当に自分なのかがわからなくなる。

 

 そんな時、昨夜夢人が言っていた自分と似た人物とは誰なんだろうと考えた。

 

 そして、ユニの頭の中には自分にそう言った人物の姿が思い浮かんだ。

 

 ネプギアだ……

 

 自分とネプギアが似ている?

 

 自分とネプギアは全然違う。

 

 それでも……

 

 

*     *     *

 

 

 そんなことを悩んでいる2人に気づかず、夢人達はダンジョンを進んでいくと、何かがいることに気付いた。

 

「なんだありゃ?」

 

 夢人が疑問の声をあげた。

 

 そこには全身が黒く羽の生えたネズミがいた。

 

 そのネズミは夢人達を見て指をさしながら言った。

 

「待っていたっちゅ……お前らっちゅね、散々おいら達マジェコンヌの作戦を邪魔してくれたのは」

 

「しゃべった!?」

 

「ってか、マジェコンヌって、まさか!?」

 

 夢人はネズミがしゃべったことに驚き、ファルコムとユニはマジェコンヌと言う言葉を聞いて武器を構えた。

 

「そうっちゅ……おいらこそはネズミ界に限らずゲイムギョウ界でもトップマスコットを目指すネズミ、ワレチューだちゅ」

 

 ワレチューはリンダが持っていたディスクを手にして言った。

 

「そのディスクは!?」

 

 夢人とユニはワレチューの手に持っているディスクに気付いた。

 

「おいらは下っ端と違って仕事ができるネズミっちゅ……だから、ラステイションのシェアを獲得するためにまず、お前らをここで倒すっちゅ!」

 

 ワレチューはディスクを夢人達へ投げつける。

 

 すると、ディスクは消え中から危険種であるエンシェントドラゴンが現れた。

 

「ド、ド、ド、ドラゴン!?」

 

 夢人は初めて見るそのモンスターに驚く。

 

「エンシェントドラゴン、フェンリルやドルフィンと同じ危険種だよ! 気をつけて!」

 

 ファルコムはそう言いながら夢人達に注意を促す。

 

「了解!」

 

「わ、わかった!」

 

 ユニと夢人はその言葉に応える

 

 しかし、フェルはファルコムの言葉を聞いてもただ立ち尽くすだけだった。

 

「フェル!?」

 

「アイツを狙うっちゅ!」

 

 そんなフェルの様子を見て、ワレチューはエンシェントドラゴンにフェルを攻撃させるよう命令した。

 

 フェルは目の前の状況が理解できなかった。

 

 自分が知っている世界ならワレチューはここにおらず、エンシェントドラゴンもいない。

 

 それなのに、目の前にはワレチューと使役されているエンシェントドラゴンがいる。

 

 自分の知っている情報が完全でないことはわかっていた。

 

 しかし、フェルは他人事のように考えていた。

 

 自分はこの世界の登場人物でないから……

 

 気がつけばフェルの目の前にはエンシェントドラゴンがその巨大な爪を振り下ろそうとしていた。

 

 周りを見ると、そんな自分を助けようと夢人達が駆け寄ってくる。

 

 しかし、間に合わない。

 

(……これで終われる)

 

 フェルは目をつぶってそれを受け入れようとした。

 

 ……

 

 しかし、その攻撃はいつまでたっても来ない。

 

 フェルが目を開けると、エンシェントドラゴンの攻撃をフェンリルが自分を守るように受け止めていた。

 

「フェンリル!?」

 

 フェルはその光景を見て驚いた声をあげた。

 

 自分はまだフェンリルに命令していない。

 

 いくら魔物使いと言っても命令をしなければ、魔物は使役できない。

 

 しかし、フェンリルはその命令を待たず、フェルを庇った。

 

「ん? なんちゅか、そのフェンリル?」

 

 ワレチューもフェルを庇ったフェンリルを見て疑問の声をあげた。

 

「ガオオオオン!!」

 

 フェンリルは傷を負っている状態でもエンシェントドラゴンへと飛びかかり、噛みつく。

 

「ギャオオオオン!!」

 

 しかし、エンシェントドラゴンはフェンリルに噛みつかれながらもフェンリルに爪を立てる。

 

 フェンリルから大量の血が流れる。

 

 それでもフェンリルはエンシェントドラゴンから牙を離そうとはしない。

 

「やめろ!? もうやめろ、フェンリル!?」

 

 そんなフェンリルの様子を見てフェルは叫ぶ。

 

 フェンリルはその声を聞きながらも、フェルの命令には従わない。

 

「どうして!? どうして命令に逆らうんだよ!?」

 

 自身の魔物使いの能力に自身があったフェルは膝をついて信じられないと言った顔をした。

 

「フェル!?」

 

 そんなフェルに夢人達は近づき話しかける。

 

「……どうして……」

 

 フェルはそのことを気にせず、俯いたままつぶやきだす。

 

 そんなフェルを心配してファルコムは近づこうとするが、それよりも先に夢人がフェルに近づいた。

 

「フェル!」

 

 夢人はフェルの胸ぐらをつかみ立たせると言った。

 

「歯あ、くいしばれ!!」

 

 そう言って、夢人はフェルを思いっきり殴った。

 

「な!?」

 

「何してるの!?」

 

 ユニとファルコムはそれを目撃し、信じられないと言った顔で夢人を見る。

 

 フェルは自分が殴られたことに気づいて、自分を殴った夢人を呆然と見つめた。

 

「……目、覚めたか?」

 

 そんなフェルに夢人は笑いかけた。

 

 フェルは意味がわからず、呆然と夢人を見つめることしかできない。

 

 夢人は真剣な顔になって言う。

 

「お前の周りはきっと優しい奴ばっかりだったんだろよ……お前が何もしなくても周りの奴らがお前の代わりをするぐらいによ……でもよ」

 

 フェルは夢人の次の言葉に衝撃を受けた。

 

「泣くぐらい大切な奴が命張ってお前を助けようとしてんだ……お前はそれを見なきゃいけない」

 

 フェルは気付かないうちに涙を流していた。

 

「……どうして?」

 

 フェルは頬に流れる涙を指で確認しながら言う。

 

「アイツにとってお前が大切な存在だからだろ」

 

 夢人の言葉を聞いてフェルはハッとなりフェンリルを見た。

 

 そこではフェンリルがエンシェントドラゴンの攻撃を受けながらも決して突き立てた牙を離すことはなく攻撃を続けていた。

 

「アイツはお前のことをしっかりと家族だと思っていたんだ……お前はどうだ?」

 

 夢人にそこまで言われてフェルは今までずっと側で自分を守ってくれていたフェンリルの姿を思い出した。

 

(……そうだ……フェンリルはずっと……ボクの側に……)

 

 フェンリルがずっと自分を守ってくれていたことに気付いた。

 

 魔物使いのフェルとしてではなく、家族のフェルとして守られていたことに気付いた。

 

「ギュオオオン!!」

 

 エンシェントドラゴンの攻撃でついにフェンリルが牙を離し、地面に転がってしまった。

 

「フェンリル!?」

 

 フェルはその姿を見てフェンリルに向かって叫ぶ。

 

「こいつはなかなか使えるっちゅね……特別にマジェコンヌの一員にするっちゅ!」

 

 ワレチューディスクを取り出し、フェンリルに向ける。

 

 すると、フェンリルは光となってディスクに吸い込まれた。

 

「フェンリル!?」

 

 フェンリルがディスクに吸い込まれたことにフェルが驚く。

 

「これでこのフェンリルはマジェコンヌの一員だっちゅ!」

 

 ワレチューは満足そうにディスクをしまう。

 

 その姿を見てフェルはワレチューに向かって駆け出す。

 

「フェンリルを返せ!!」

 

 拳を振り上げながらワレチューに駆けるフェルの前にエンシェントドラゴンが現れ、翼の羽ばたきによる風で吹き飛ばされてしまう。

 

「うわ!?」

 

 フェルは吹き飛ばされ地面に転がるが、すぐに立ち上がり再び駆け出す。

 

「ボクの家族を返せ!!」

 

 エンシェントドラゴンは再び駆けよってくるフェルに爪で攻撃を仕掛けようとする。

 

「オラ!」

 

 しかし、その攻撃は夢人がエンシェントドラゴンの顔に木刀を投げつけたたことで中断された。

 

「ギャオオオオン!!」

 

 そのことに怒るエンシェントドラゴン。

 

 夢人がエンシェントドラゴンに攻撃をしたことに驚いて、フェルも足を止めて夢人を見る。

 

 夢人は攻撃をした後、フェルの近くに立つ。

 

「どうして?」

 

 フェルはわからなかった。

 

 どうして自分を助けてくれたのか。

 

「大切な家族助けるんだろ?」

 

 夢人はフェルに言う。

 

「なら助けるぞ、俺達で!」

 

 気がつけば、自分の横にはユニとファルコムも武器を構えて立っていた。

 

「私達は仲間だよ、ピンチの時は助け合うのは当然だよ」

 

 ファルコムはフェルに笑いかける。

 

「大切な家族が奪われる辛さはわかる……だから、必ず取り返すわよ!!」

 

 ユニも武器を構えてエンシェントドラゴンとワレチューを睨む。

 

「……で、どうしたい?フェル」

 

 夢人がフェルに尋ねる。

 

 フェルは涙を流しながら叫ぶ。

 

「助けて! ボクの大切な家族を!!」

 

 その言葉を聞いて3人は顔を見合わせ言う。

 

「「「了解!!」」」




という訳で、いいところで今回は終わりです
といっても今日はもう一話作るからこの続きはすぐにわかっちゃうと思うんだけどね…
さて、本当にラステイション編はプラネテューヌ編と比べてキャラクターが増えたり、頭の中で勝手に動き出すので作るのが時間がかかるなあ
まあ、本編が2話でおまけにユニ視点とネプギア視点のラステイション編の話を作ろうかなっと思っとりますのでお楽しみに
それでは、次回 「証明」 お楽しみに!
次はたぶん0時過ぎちゃうと思うんでよろしく

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