超次元ゲイムネプテューヌ 夢のヒーローを目指して   作:ホタチ丸

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はい、皆さんこんばんわ!
ちょっと納得のいかなかった部分を書きなおしていたら遅くなってしまいました。
それでは、 単純で明快な行動理由 はじまります


単純で明快な行動理由

「今回の件、本当にありがとうございました」

 

「うむ、礼を言われることではない」

 

 『勇者への道』が行われている会場内の通路を、ケイブとケン・オーは並んで歩いていた。

 

 2人が歩いている通路は参加者用の舞台につながる通路であり、観客席には通じていない。

 

 そのため2人の足音だけが響いていたのだが、ケイブは思い出したようにケン・オーにお礼を言い始めた。

 

「小僧との勝負は我が望んだことだ。イワやアヤの言葉が真実かどうかを確かめるいい機会になったわ」

 

「それで、実際に勝負してみてどう思われましたか?」

 

「あの場で我に臆せず立ち向かっただけでも評価に値するが、まさかこのような絵を描くとはな」

 

 ケン・オーはこっそりと舞台から持ってきていた夢人が描いたベールの胸の絵に視線を落とした。

 

「恥も外聞もなく勝利を掴もうとする姿、なかなか気骨のある小僧であったな」

 

「……リーンボックスのギルドマスターであるあなたにそう評価されたと聞けば、きっと夢人も喜ぶことでしょう」

 

「よせい。我はギルドマスターの座を蹴った男だ……今の我は心理を求めるの求道者1人よ」

 

「……そうですか」

 

 ケイブはケン・オーの夢人への評価に頭痛を覚えてしまう。

 

 あの戦いで評価されても仕方ないと思っていたのだ。

 

 しかし、それをケン・オー本人に言うことはできず、目を閉じてこめかみの部分を指で押さえて我慢した。

 

 ……何故ならば、ケン・オーはケイブも言っていた通り、リーンボックスのギルドマスターになるはずであった男だからである。

 

 現在プラネテューヌでギルドマスターをしているイワや、ラステイションでギルドマスターをしているアヤと同時期にギルドマスターに推薦されていたが、それを断わり現在でもSランク冒険者としてクエストをこなしている猛者である。

 

「それに日本一の件もお力添えをしてもらい、本当に感謝しています」

 

「それは我ではなく、アロエに言うのだな。直接ギルドの方に掛け合ったのはアイツだ」

 

「それでも、ルウィーのギルドを納得させるためには2人以上のSランク冒険者の推薦が必要でした。推薦人になっていただき、本当にありがとうございます」

 

「……ならば、その礼を受け取っておこう」

 

 何度も聞かされる感謝の言葉をケン・オーは表情を崩すことなく、いかつい顔のままで鷹揚に頷いて応えた。

 

 日本一がSランク冒険者でないにもかかわらず、『勇者への道』にルウィーの代表として立っているのは、元Sランク冒険者のアロエとケン・オーが推薦人となっているからである。

 

 2人ともギルドマスターに推薦されたこともある人物であり、今尚強い影響力を持っているために多少の無理を通すことができたのである。

 

「しかし、わからんな。どうしてあのぺたんこは参加したいと申したのだ?」

 

「それは私にもわかりません……でも、何となくわかる気がします」

 

「ほう、わからぬのにわかるか。何とも矛盾したものよな」

 

「重々承知しています。ですけど、上手く言葉にできない何かを感じているのは、私も同じですから」

 

 ケイブは1度立ち止まり、先ほどケン・オーと入れ違う形で舞台に向かって行った日本一を思い出して微笑する。

 

「このもやもやを解消してもらうためにも、彼女には頑張ってもらいたいです」

 

「うぬは小僧が負けてもよいと言うのか?」

 

「いいえ、そうではありません。ですけど、きっと2人の対決は勝敗に関係なく、よい終わり方を迎えてくれると信じてます」

 

「その根拠は?」

 

 短く疑問を投げかけてくるケン・オーに、ケイブは曇りのない笑顔を向けて答えた。

 

「何故なら、ゲイムギョウ界を救おうとする勇者とヒーローの対決ですから」

 

 

*     *     *

 

 

 ……これ、アタシも参加できないかな?

 

 きっかけは、『勇者への道』が開催されると聞かされた時につぶやいた一言だった。

 

 そう口に出したことで、アタシはこの舞台に立つことができた。

 

「そ、それでは、第2競技の種目を決めさせていただきます!」

 

 アタシの登場に驚いていた5pb.だけど、気を取り戻して進行を続けるためにフェルが持ってきた箱に手を入れた。

 

 ……アタシが『勇者への道』に出場するのを知っていた人物は5人だけ。

 

 まずは、推薦人になってくれたアロエとケン・オー。

 

 その2人を紹介してくれたミナとケイブ。

 

 最後に、アタシのわがままを形にしてくれたがすと。

 

 アタシがここに立っていられるのも、全部がすとがミナとケイブにお願いしてくれたからだ。

 

 ミナからアロエへ、ケイブからケン・オーへと連絡が届いたことで、アタシはルウィーの代表になることができた。

 

「第2競技は……“一騎打ち”です!!」

 

『うおおおおおおおおおおおおおおおおお!!』

 

 箱から1枚の紙を取り出した5pb.がそれを読み上げると、観客達は大歓声を上げた。

 

 多分、さっきの“お絵描き”のような見ていて面白くない種目じゃなかったことが嬉しいんじゃないかな?

 

 せっかく来たのに、そんな地味な種目ばっかりじゃ飽きちゃうもんね。

 

 アタシは競技内容が決まると、にやりと笑って目の前の夢人を見つめた。

 

 夢人は未だアタシが出てきたことによる衝撃が抜けきっていないのか、戸惑った様子で立ち尽くしている。

 

「で、では、中継のファルコムさん! よろしくお願いします!」

 

〔あ、は、はい! それでは、“一騎打ち”を提案したラステイションの女神ノワール様にお話を伺いたいと思います。ノワール様、よろしくお願いします〕

 

〔え、ええ。勇者は私達と一緒にゲイムギョウ界を守る存在だと思うから、直接力を見せることができる“一騎打ち”を提案したのだけど……〕

 

 モニターに映っているファルコムとノワールも、どこか慌てた風に視線を泳がせていた。

 

 “一騎打ち”、今までアタシ達と一緒に旅してきた夢人なら、相手がSランク冒険者であろうとも魔法や黒歴史を使えば勝てる可能性があっただろう。

 

 2人……いいや、多分出場することを知らなかった皆は、相手がアタシだから困惑しているんだ。

 

「では、ルールを説明させていただきます。勝負は時間制限なしの1本勝負。ギブアップをするかこの舞台から外に落ちた時点で試合終了です。お互い、武器や魔法の制限はありません……両者、質問はありませんか?」

 

「ないよ」

 

「っ、ああ、大丈夫だ」

 

 ルールを確認するように5pb.がアタシと夢人を心配そうに見つめながら尋ねてきた。

 

 アタシはすぐ答えたけど、夢人は一瞬驚いた表情をした。

 

 多分、どうしてアタシがここにいるのかを考えていたんだと思う。

 

 ……でも、そんな余裕な態度を取っていていいの?

 

「それでは、試合開始!!」

 

 5pb.が顔を引き締めてアタシ達から距離を取り、開始の合図を叫ぶと同時に腕を振り下ろした。

 

 それを視界の端に捉えていたアタシは、5pb.の腕が落ちきるフライングギリギリのタイミングで床を蹴った。

 

 目の前で驚いた表情をして立ち尽くす夢人を蹴り飛ばすために!!

 

 

*     *     *

 

 

「ていやああああ!!」

 

「ぐっ!?」

 

 5pb.の開始の合図と同時に体勢を低くしたまま駆けだした日本一は、夢人の腹をつま先で蹴り抜くために突撃しながら足を繰り出した。

 

 夢人は奇襲染みた攻撃に目を見開き驚くが、自分の腕を重ねて日本一の脛を受け止めることで防御することに成功した。

 

 ……しかし、完全に日本一の勢いを殺せたわけではない。

 

「う、うおおおお!!」

 

「っ!?」

 

「はあっ!!」

 

「がっ!?」

 

 日本一は片足を軸にして回転するように、脛を受け止めていた夢人を蹴り飛ばした。

 

 気合いと共に繰り出された予想外の衝撃に夢人は反応することができず、床を転がりながら舞台の端まで飛ばされてしまう。

 

 追撃を行うため、日本一は再び強く床を蹴り跳躍すると、今度は踵を夢人に落とすために体を捻りながら足を伸ばす。

 

「ちっ!?」

 

「せいっ!!」

 

 自分の腹に向かって落とされるであろう日本一の足を見た夢人は、舌打ちをすると床を転がる痛みを堪えて風の魔法を使い無理やり自分の体を真横に吹き飛ばした。

 

 転がる方向を急に変化させたことで、日本一の追撃を回避することができた夢人であったが、そのすぐ横で舞台の石が割れる音が聞こえてきた。

 

 夢人が風の魔法を使わなければいたであろう位置に、日本一の踵が落とされていたのだ。

 

 舞台に敷き詰められていた正方形の石は罅割れており、日本一の夢人への躊躇いのなさを表しているように見える。

 

 横に転がることで距離を取った夢人は膝立ちの姿勢のまま、ゆっくりと自分の方を振り向く日本一を睨む。

 

 その顔は焦りの影響で冷や汗が浮かんでいた。

 

(日本一は本気だっ! でも、どうしてこんなことを……)

 

「はああああああ!!」

 

「くっ!」

 

 再び自分に向かって突撃してくる日本一を目撃し、夢人は思考を中断させ、アイス・ローラーを使って避けるために動き出す。

 

 今の躊躇いなく自分を攻撃してくる日本一の蹴りをくらってしまえば、呆気なく場外まで吹き飛ばされてしまうことを悟ったからだ。

 

 だからこそ、夢人はアイス・ローラーを使い、日本一の突撃を大きく避けて、一定の距離を取ろうとした。

 

 ……だが、それを許す日本一でもない。

 

「ううぅっ、りゃああああ!!」

 

「っ、アイス・エッジ・ソード!?」

 

「せいっ!!」

 

「なっ!?」

 

 アイス・ローラーで避けようとする夢人に向かい、日本一は無理やり上体を捻りながら片足で再び跳躍した。

 

 つま先だけの力とは思えないほどに日本一の体は、夢人が避けた先へと跳んで行く。

 

 アイス・ローラーを使っても避けられないと判断した夢人は、日本一の蹴りを受け止めるために通常よりも腹が広いアイス・エッジ・ソードを作りだし盾代わりに使用した。

 

 盾にすることには成功したが、日本一の蹴りが直撃したアイス・エッジ・ソードは粉々に砕け散り、夢人は壊された衝撃を受け仰け反ってしまう。

 

 一方、日本一もアイス・エッジ・ソードが砕けた反動を受けたが、バク転をしながら余裕そうに夢人から距離を取った。

 

 日本一は呼吸を整えるように1度顔の前で両手を払うような仕草をすると、間髪をいれずに再び床を蹴り、夢人へと向かって行く。

 

 連続して攻撃してくる日本一に対して、夢人は慌てて盾として利用するためにアイス・エッジ・ソードを作り上げ、いつでも後ろに下がれるように腰を低くした。

 

(クソッ、このままじゃ何もできないっ! どうにかして日本一の動きを止めないと……)

 

「ほらほら!! 考え事をしている暇があるの!!」

 

「チッ……せいっ!!」

 

「甘い!!」

 

「ぐっ!」

 

 頭、胴体、腕、足と日本一は次々と狙いを変えて夢人を攻撃していく。

 

 その都度アイス・エッジ・ソードの腹でガードすることは不可能に近いため、夢人はさらに刃の腹を広げて広範囲をカバーするように構えた。

 

 しかし、その影響でアイス・エッジ・ソードの硬度は低くなり、日本一の蹴りが炸裂する度に氷の粒が宙に舞う。

 

 一撃で砕けないのは、日本一が威力よりもスピードを重視してラッシュをかけているからである。

 

 もし威力を重視した場合、再度反動で距離が離れてしまうことを恐れた日本一の判断である。

 

 一撃一撃の威力は低いが、何度も繰り出される日本一の蹴りを止めるために、夢人は盾にしているアイス・エッジ・ソードを形成している腕とは逆の腕でもう1本アイス・エッジ・ソードを作りだして下から払い上げた。

 

 新しく作りだされたアイス・エッジ・ソードは、刀身がやや丸みを帯びており、相手を斬り裂くことを目的としていないようであった。

 

 夢人の目的は、脇腹を狙って日本一を横に吹き飛ばそうとしていたのだ。

 

 だが、その腰を回転させながら繰り出したアイス・エッジ・ソードの一撃は、日本一が逆手で持つプリニーガンの刃によって防がれてしまう。

 

「とうっ!」

 

「っと」

 

 日本一は仕切り直すつもりで後ろへとジャンプし、プリニーガンを持つ手を前にして夢人へと構えだした。

 

 日本一が跳び退いたことで体勢が崩れた夢人であったが、足を前に出すことで踏ん張ることに成功してやや前傾の姿勢のまま両手で攻撃用と防御用に使うアイス・エッジ・ソードを再形成した。

 

 再形成したアイス・エッジ・ソードはどちらも小型化され、明らかに日本一のプリニーガンによる攻撃を警戒していた。

 

 蹴りの連続攻撃よりも、プリニーガンによる攻撃の方が断然速いからである。

 

 いくら日本一が蹴り技に自信があったとしても、足が2本しかない以上どうしても片足で立つと言う不安定な状態で放つことになる。

 

 そのため、一撃一撃の間でアイス・エッジ・ソードを修復するための時間を手に入れることができた。

 

 しかし、プリニーガンの場合はそうはいかない。

 

 腕を振るだけで攻撃できるプリニーガンによる連続攻撃を、薄くなっているアイス・エッジ・ソードで受け止めれば、すぐに砕け散ってしまうだろう。

 

 実際に特訓をしていた時、夢人は日本一に何度もプリニーガンでアイス・エッジ・ソードを破壊されていた。

 

 今はあの時よりも精度が上がり、硬度が増しているとはいえ、攻撃を受け止め続ければいずれは壊されてしまう。

 

 だからこそ、夢人は日本一の攻撃を受け止めることから受け流すことに変えるために、アイス・エッジ・ソードを小型化したのである。

 

 プリニーガン程度のサイズであれば、ブレイブと戦った時のように大きくする必要もなく、氷の密度を上げて壊れないようにすることを優先しようとしたのである。

 

「アタシが教えたこと、覚えてたんだね」

 

「当然だろう。お前の速さはよく知ってるし、いつまでもやられっぱなしでいられるかよ」

 

 日本一は戦闘態勢を維持したまま、夢人にはにかむように笑いかけた。

 

 それに対して、夢人は日本一から目を離さずに睨むような目つきで構えを解かない。

 

「アタシもアイス・エッジ・ソードの硬さはよく知ってるよ。見たところ、今あるその2つもさっきまでのよりも硬そうだね……でもさっ!」

 

(来るっ! ……っ!?)

 

 日本一は崩していた表情を戻すと、凛とした眼差しでわずかに頬を緩ませながらプリニーガンを振り上げて駆け出した。

 

 振り上げられていたプリニーガンに対応するために夢人は身を低くし、やや上の方に視線を向けた。

 

 ……そのせいで、夢人は日本一を視界から完全に消してしまった。

 

「ぐがっ!?」

 

「アタシ、蹴らないなんて一言も言ってないんだけど」

 

 プリニーガンに注意がいっていた夢人は、突如として這うように身を屈めた日本一を見失ってしまったのだ。

 

 日本一はそのまま夢人の懐まで潜りこむと、両手を床について腕の力だけで宙に浮かび上がると同時に、両足をそろえて顎を蹴りあげた。

 

 完全に日本一を見失っていた夢人は反応することができず、その顎を打ち上げるように足の裏が直撃した影響で、軽く宙に浮き上がり意識が遠のくのを感じた。

 

「がはっ!?」

 

「たあああああああ!!」

 

「っ!? ぐっ!?」

 

 脳を揺すられた影響で意識が飛びそうであった夢人だったが、背中から舞台に落ちた衝撃で多少は意識を保つことができた。

 

 しかし、すでにアイス・エッジ・ソードとアイス・ローラーは解除されており、思考が正常に働いていないことは明らかである。

 

 そんな無防備になった夢人の腹に向けて、すぐ傍で着地した日本一は踵を落とそうとする。

 

 混濁する意識の中で日本一の叫びを聞いた夢人は、避けるために慌てて横に転がり出した。

 

 ゴロゴロと転がりながら、夢人は頭を押さえて上体を起こすために膝に力を入れて立ち上がった。

 

(頭が……これじゃ、黒歴史を“再現”することができないっ!)

 

 夢人は挽回するための策として、『再誕』の力で黒歴史を“再現”しようとするが、集中することができずに歯噛みした。

 

 夢人がB.H.C.やアカリの力なしで、黒歴史を“再現”するためには集中して意識する必要がある。

 

 しかし、先ほど日本一によって顎を蹴り上げられた影響で、頭の中で自分の黒歴史を発動している姿をイメージすることができないのである。

 

(どうしたら……)

 

「まーた何か余計なことを考えてるんじゃないの?」

 

「……何?」

 

 頭の痛みと悔しさで顔を歪めていた夢人を、日本一は呆れたように見つめた。

 

 この状況を打開するための手段を模索している自分の考えを馬鹿にされたと思い、夢人は目つきを険しくさせるが、そんなことなどお構いなしの様子で日本一は肩をすくめた。

 

「夢人って、アタシと同じで考えるよりも行動する派だと思うんだよね。だから、そんな風に余計なこと考えてないでアタシを倒すために向かってくればいいじゃん」

 

「……お前、簡単に言ってくれるな」

 

 夢人は日本一を睨みながら立ち上がり、再びアイス・エッジ・ソードとアイス・ローラーを発動させた。

 

「だったら、こっちからも行くぞ!!」

 

「来いっ!!」

 

 アイス・ローラーを滑らせ、夢人は日本一へと突撃してく。

 

 それを見て嬉しそうに口元を吊り上げた日本一は、アイス・エッジ・ソードに対抗するためにプリニーガンの横に構えた。

 

「うおりゃ!!」

 

「何の!!」

 

「くっ、せいやっ!!」

 

「甘い甘い!!」

 

「っ、まだまだ!!」

 

 大振りで振り下ろされるアイス・エッジ・ソードを日本一は難なく受け流す。

 

 夢人はそれを憎々しげに思いながら、今度は振り上げるのだが、日本一は余裕そうに笑いながら上体をそらすことで避けてしまった。

 

 自分を馬鹿にするような態度を取る日本一に、夢人は怒りを覚えながら何度もアイス・エッジ・ソードを振っていく。

 

 日本一は時にプリニーガンで受け流し、時に体をわずかに動かすことで避け、夢人の攻撃全てを完璧に捌き続ける。

 

(こっちの攻撃が当たらないっ!? だけど、諦めるわけには……)

 

「ほら、また変なこと考えてる、よっと!!」

 

「ぐっ!?」

 

 焦りながらアイス・エッジ・ソードを振り続ける夢人の隙を狙い、日本一は回し蹴りを繰り出してきた。

 

 咄嗟にアイス・エッジ・ソードで防御することができたが、夢人は悔しさに目を細めてしまう。

 

 そんな夢人を見て、日本一はまた呆れたような視線を向けながらプリニーガンで反撃を開始した。

 

「だいたい、最近の、皆は、どこか、おかしいと、思うんだっと!!」

 

「くっ、いったい、何が、おかしい、んだよ!!」

 

「全部、だよ!!」

 

「ぐっ!?」

 

 プリニーガンとアイス・エッジ・ソードがぶつかり合う中、日本一は愚痴をこぼすようにつぶやき続ける。

 

 その意味がわからずに尋ねる夢人であったが、日本一が渾身の力を込めて横に一閃させたプリニーガンの一撃によりアイス・エッジ・ソードが破壊された影響で、うめき声を漏らしてしまった。

 

 それでも日本一は攻撃の手を緩めることなく、口も閉じる気配がなかった。

 

「アタシは、難しいことは、わからない、けどっ!! 今が、おかしい、ことは、わかる、つもり、だよ!!」

 

「だから、何が、おかしい、って、言ってんだよ!!」

 

「おっと」

 

 連続してくる攻撃と意味不明な言葉によってストレスがたまった夢人は、再度形成したアイス・エッジ・ソードを大きく薙ぎ払った。

 

 バク転でそれを避けた日本一は、今度は顔を引き締めて口を開いた。

 

「上手く言葉にはできないんだけどさ、夢人やネプギア、ユニやナナハもどこかおかしいと思うんだよ」

 

「……俺達が?」

 

「うん。なんかギスギスしちゃっててさ、雰囲気悪いよね」

 

 夢人がいぶかしむように尋ねると、日本一は悲しそうに少し眉を下げて言葉を続けた。

 

「アタシなんかは、正直ユニがどうして勝手にラステイションからルウィーに来たのかすら未だによくわかってないよ。直接話を聞いても理解できなかったし……それでも、1つだけわかることがあるんだ。それは、今の夢人が気持ち悪いってこと!」

 

「なっ、急に何言ってるんだ、おい!?」

 

 真面目な話から一転して罵倒された夢人は急に肩から力が抜けずっこけそうになるが、すぐに気を取り戻して歯をむき出しにして怒りをあらわにした。

 

「ふざけたことは言ってないよ。ネプギアとユニが勝手にいなくなったり、ネプギアとナナハの間の空気が悪いのは、夢人が関係しているんでしょ?」

 

「うぐっ」

 

 夢人は日本一の言葉が当たっているだけに何も返すことができず、うめくことしかできない。

 

 事実、ネプギアとユニが行方不明になった件とネプギアとナナハの仲が不調である件に、夢人は大きく関係している。

 

「それに、夢人だっておかしいよね? なんかこう変に難しいことばっかり考えているような気がするんだ」

 

「……そんな風に見えるのか?」

 

「見えるよ。アタシの知ってる夢人は考え事をする時は、いつも気持ち悪いくらいに顔をとろけさせて不気味な声を上げるはずなのに、最近は眉間に皺ばかり寄せてる気がするよ」

 

「……っ、何だろうな。この言い返したいけど、言い返せないこの気持ちはっ!」

 

「あ、でも、そうなると夢人は気持ち悪いがデフォなのかも……」

 

「それはない!!」

 

 静かに怒りを堪えるように震える腕を押さえていた夢人であったが、続けられた日本一の言葉に怒りを爆発させてしまった。

 

 いくら自分が妄想をしていた時に気持ち悪い笑みを浮かべていたのが事実だとしても、常に気持ち悪いなどと言われるなんて耐えられないのである。

 

「アハハハ、ごめんごめん! でも、今の夢人が気持ち悪く見えるのは事実だよ……あの時、ギョウカイ墓場に行く前みたいになってるような気がするんだ」

 

「日本一、お前……」

 

「だからさ、夢人が何を考えて気持ち悪くなってるのかはわからないけど、吐き出せるもの吐き出して気持ちよくなってよ! アタシはヒーローで、夢人は勇者。どっちも同じ、ゲイムギョウ界を救うために戦う仲間なんだから」

 

 日本一はにかっと快活に笑いながら、夢人を指さして宣言した。

 

「もっと頼りなよ……ヒーローは助け合い、でしょ?」




という訳で、今回は以上!
最近は薄くなりつつある人達をどんどん活躍させたいと思ってしまいます。
ネプテューヌ達の登場以降、目立った活躍をしていない人達が沢山いますからね。
自分の力量不足が本当に痛い。
それでは、 次回 「偶像を超えて」 をお楽しみに!

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