超次元ゲイムネプテューヌ 夢のヒーローを目指して 作:ホタチ丸
この章も上手くいけば後3話程度で終わる予定です。
テンポが悪かったので、ちょっとペースアップしないといけませんね。
それでは、 突撃の黒歴史 はじまります
不気味な光源が照らす空間の中央にある台座に、突き刺さるような形で朽ちた姿をさらしていた剣が呼吸をするかのように断続的に光を放ち始めた。
強く、弱く、強く、弱くと光はまるで見ている者を誘うように、異様な雰囲気を醸し出していた。
それを見ている少女……いや、見せられているフィーナは瞬き1つできずに剣を凝視していた。
(なに、アレ……知らない。私はあんなもの知らないはずなのに……)
空間の入り口で立ち尽くしていたフィーナであったが、やがて一歩一歩台座に向かって足を進め始めた。
その足取りは酷く不安定なものであり、台座に引き寄せられているかのようにふらふらと体が揺れている。
しかし、フィーナの足は止まることなく、台座へと進んで行く。
(どうしてか目が離せない……もっと近くで……もっとよく見たいっ!)
熱に浮かされたようにまとまらない思考のまま、フィーナは無意識に頬を上げていた。
その目はカッと見開かれ、前のめりに倒れてしまうのではないかと思われるぐらいに前傾の姿勢のまま台座に向かって歩いていく。
ふらふらと顔の位置が上下左右に揺れ動く中、その視線だけは剣に固定されていた。
「ハア、ハア、ハア……っ」
やがて台座の目の前まで辿り着く頃には、フィーナはすでに息を切らしていた。
荒い呼吸を繰り返し、光る剣の柄を間近で見て息を飲んだ。
(これが、私の……『再誕』の女神の剣……私の、剣……)
乾いた唇を舌で潤し、フィーナはその剣の柄を掴もうと手を伸ばした。
しかし、その腕は触れるのを恐れているかのように小刻みに震えだす。
その動きはまるで躊躇っているように見えた。
『怖いか?』
「っ!? だ、誰が!?」
剣しか眼中になかったフィーナの横から、シンが声をかけてきた。
シンが聞こえると、フィーナは一瞬びくりと体を震わせるが、そのおかげで視界が広がりだした。
そして、今まで自分がシンの存在を忘れていたことを悔やみだす。
(くっ、私は今まで何を考えていたの? こんな怪しい奴がいるのに、どうして忘れて……)
『おいおい、ようやく俺のことを見てくれたと思ったら、今度はだんまりですかい? 俺泣いちゃいますよ? えーんえーん』
「……白々しい真似はよしなさい。あなたはいったい何者なの?」
『おろ? さっきも自己紹介したじゃん。もしかして聞いてなかったの?』
悔しそうに顔を歪めて黙ったまま自分を睨んでくるフィーナの姿を見たシンは、わざとらしく指で瞼をこするような動きをしだした。
シルエットだけの存在なので顔は見えないが、その声が明るいことから泣き真似であることは明らかである。
それを不快に思ったフィーナが眉間に寄せていた皺を深くしながら、再びシンにその正体を尋ね出した。
尋ねられたシンはすっぱりと嘘泣きをやめ、おどけたように肩をすくめるような動作をしながら口を開いた。
『俺の名前はシン。年齢は秘密。誕生日も秘密。血液型は生真面目なA型。好きな食べ物は好きな女の子の手料理。嫌いな食べ物は特にな……いや、触感がぬるぬるしているのは苦手かな? ちなみにスリーサイズは……』
「……あなたはふざけているのかしら」
『うんにゃ。俺はいつだって本気100パーセントだぜ……もしかして、禁則事項の欄が知りたかったのか? だとしたら、もっと俺との好感度を上げてくれないと……』
「もういいわ。そのふざけた口を今すぐ……っ!?」
嬉しそうに必要のない情報を並べていくシンに、フィーナの静かに怒りが湧きあがるのを感じた。
フィーナは眉をぴくぴくと動かして我慢しようとしたが、その堪忍袋の緒もシンの戯言によって切れてしまった。
怒りに身を任せたままフィーナは手のひらに力を集中しようとしたが、突然それが何かにかき消されるように霧散されてしまった。
『やれやれ、これが最近の切れやすい若者の現状って奴なのか』
「……今、何をした」
『何、お前が“再現”しようとした情報を先に操らせてもらっただけだ』
「っ、そんなのできるわけが……」
『できる。俺を誰だと思っているんだ?』
自分の力に自信を持っていたフィーナは、シンの口から出た言葉に驚き、思わず唾を飲み込んでしまった。
認めたくない話を否定しようとするフィーナだったが、それはシンの自信満々の言葉によって遮られてしまう。
『俺は初代勇者だぞ。お前達『再誕』の女神の元となった女神の卵の製作者……まあ、気軽にダディと呼んでくれてもいいんだからね!』
* * *
「さて、両者共に描き終わったようなので審査に移らせていただきます!」
5pb.ちゃんのアナウンスによって場内が湧きだつ。
今までは、まさか競技内容が“お絵描き”になるなんて思わなかったでしょうし、どんな反応をすればいいのかわからなかったのも無理はないですわね。
お2人が絵を描いている間は、観客の皆さんも本当に静かに見守っていましたわ。
斯く言うわたくしも、ずっと体を動かすことができずにいたので、少しだけ体が痛いですわね。
「それではまず、ケン・オーさんから絵を見せてもらいます!」
「うむっ」
「こ、これはっ!?」
ケン・オーさんが描いた絵を見て、わたくしは思わず目を疑ってしまいましたわ。
おそらく、カメラを通してモニターに映っている絵を見た観客の皆さんも同じ心境だと思います。
何故なら……
「こ、これは、随分と可愛らしい絵柄ですよね」
そう、可愛らしい絵柄なのですわ。
少女漫画に出てくる女の子のようなわたくしが描かれているのです。
筆を使っていたため、濃い線や薄い線の特徴を生かしてまるでトーンを使っているかのような立体感の絵が完成されているのです。
特に瞳の部分に力を入れているのか、幾重にも線が重なり合っているように瞳孔や光が反射している部分が丁寧に……って、そんなことは重要ではありませんわ!?
これを描いたのがケン・オーさんと言うのが問題なのですわ!?
わたくしから見ても筋肉の塊のようなケン・オーさんがこんな柔らかなタッチの少女趣味全開の絵を描いてくるなんて予想していませんでしたわよ!?
はっきり言って、見た目からかなり劇画チックな自分が描かれるのではないかと戦々恐々としていたのですが、予想外過ぎてどう反応していいのかわからなくなってしまいましたわ!?
ある意味精神的な拷問を受けたような気分に陥り頬が引きつってしまいましたが、わたくしはなんとか正気を保つために5pb.ちゃんに視線で続きを促しました。
「そ、それでは、次に御波夢人(仮)さんの絵を見せてもらいましょう!」
「ああ」
「ぶっ!?」
わたくしと同じようにどうコメントしていいのかわからず、微妙に引きつった笑みを浮かべていた5pb.ちゃんであったが、気を取り直したように明るく夢人さんへと声をかけた。
夢人さんは今まで集中していたのか、ずっと自分の描いた絵を覗き込んでいたが、自分の名前を呼ばれるとにやりと笑ってわたくしに絵を見せてきた。
……その絵を見て、わたくしはケン・オーさんの描いた絵以上の衝撃を受けてしまい、観客の皆さんが見ている前だと言うのに吹き出してしまいましたわ。
「こ、これのどこがわたくしなのですか!?」
「俺は見たままを描いただけだ」
「そ、そんなことあるわけないですわ!?」
顔が熱くなるのを感じながら、わたくしは夢人さんに抗議しましたわ。
しかし、夢人さんはしれっと口元に笑みを浮かべながら堂々とした態度で、わたくしの抗議を受け流してしまいました。
でも、わたくしは夢人さんが描いた絵を認めたくありませんわ!?
だって、その紙には……
「うぬっ、おっぱいか」
……わたくしの胸部しか描かれておりませんもの。
これはあまりにも酷くありませんか!?
確かにわたくしは自分の胸の大きさを誇っておりますし、殿方から嫌らしい目で見られることも多々ありますわよ!?
でも、それでも、こんな衆人環視の中自分の胸を描かれると言う恥辱を味わったわたくしの気持ちはどこに向かえばいいのですか!?
しかも、無駄に質感がリアルに見えるのがすごく憎らしく、夢人さんも余裕の笑みを浮かべているのが妙に頭にきますわ!?
わたくしがもう競技のことも全て忘れて、こんな恥辱を与えてきた夢人さんに制裁を加えようと動こうとするよりも先に、ケン・オーさんがその絵を見て口を開きました。
「よいおっぱいだな」
「当然だ」
真面目な顔をして人の胸の絵を見ている2人の殿方を粛清しても、わたくしは許されるはずですわよね?
5pb.がわたくしを怖がるように見つめていることなど気付かないまま、槍を取り出して目の前のふと届き者どもを貫こうとした時、ケン・オーさんが夢人さんを威圧するように尋ね出した。
「だが、この絵はあまりにもベール様に失礼ではないか? うぬはベール様がおっぱいに見えるとでも言うつもりか?」
「違うさ。俺も最初は普通に全体像を描こうとした」
「ならば、何故おっぱいを?」
「そこに胸があるからだ!!」
夢人さんはケン・オーさんの鋭い眼差しに負けずに睨み返しながら、声高らかに叫びを上げた。
「女性の美しさを描くポイントはたくさんある!! 髪や顔立ち、瞳に口元、ほくろなんかもあればそれがチャームポイントになって女性の美しさを際立たせるポイントになるだろう!! だが、それよりももっと女性の美しさを直接的に表現する箇所があるだろう!!」
「……それがおっぱいか」
「そうだ!! 変態だと笑いたければ、笑えばいいさ!! でもな、お前も男ならわかるはずだ!! 胸に詰められた無限の可能性って奴を!!」
「うぬはこの絵は描いて恥ずかしいとは思わんのか?」
「恥ずかしい? 馬鹿を言うな!! 男が女性の胸に目を奪われずして、どこを見ればいいって言うんだよ!!」
「……フッ、どうやら噂は誤解であったようだな」
夢人さんの熱弁に感化されたようで、ケン・オーさんは今までの厳つい表情を崩して柔らかく笑みを浮かべました。
「うぬは紛うことなく我が同士だ。【幼女を誘拐しようとした】などと言うデマは、このケン・オーが偽りだと証明しよう」
「ケン・オー様っ!」
「様は要らん。うぬと我は同士、共におっぱいを愛する紳士なのだ」
夢人さんもケン・オーさんの言葉に感動したのか、瞳を潤ませてその巨体を見上げていました。
それを照れくさそうに受けながら、ケン・オーさんは優しく目を細めて夢人さんに手を伸ばしました。
その手を見て、夢人さんも笑顔でケン・オーさんの手を握って固い握手を交わしていましたわ。
「え、えっと、その……そろそろ審査に移りたいと思うのですけど……」
「必要ない。この勝負、我の負けだ」
「え? あ、ちょっと!? 勝手にどこに行こうとしているのですか!?」
お2人のやり取りを間近で見ていた5pb.ちゃんが、困ったように恐る恐る会話に割り込もうとすると、突然ケン・オーさんはマントを翻して舞台から降りてしまいました。
「おい小僧」
「なんだ?」
「うぬのことは、この『覇王』ケン・オーが本物の勇者だと認めてやろう」
「ケン・オー、お前……っ!」
「残りも勝ち続けい……絶対じゃぞ」
「っ、ありがとうございました!!」
『うっ、うおおおおおおおおおおおおおおお!!』
ケン・オーさんが顔だけを振り返りにやりと笑うと、感極まった夢人さんは満面の笑みを浮かべて頭を下げました。
会場もお2人のやり取りに呆然としていたはずなのに、いつの間にか席を立ちながら拍手をしたり大きな声で叫んでいる人達もいますわ。
観客の皆さんはこれで満足なのでしょうね。
それを満足そうに見たケン・オーさんは今度こそ振りかえらずに入口の方へと歩いていき……って、いつの間にかその脇にはわたくしの胸の絵が描かれた紙が挟んでありますわね。
だって、この場にケン・オーさんが描かれた少女漫画風のわたくしは舞台の上に寂しく残されているのですもの。
……正直、お2人の会話の意味はまったくわかりませんでしたわ。
どうしてケン・オーさんが夢人さんを認めたのかなんて、絶対に理解したくありませんもの。
でも、ただ1つだけ確実にわかることがありますわね。
……わたくし、ただの晒し者じゃありませんか!?
夢人さんに胸の絵を描かれて、それを真面目に目の前で討論され、観客の皆さんにも見られたなんて……恥ずかしすぎて死んでしまいそうですわ!?
わたくしは真っ赤になっているであろう顔を隠すため、両手で覆いながら膝を折って縮こまりました。
指の隙間から観客の皆さんに称賛されながら誇らしげにしていた夢人さんを見つめて、わたくしは口には出さずに決意しましたわ。
……夢人さん、後でお話ししましょうね。
* * *
「ゆ、ユニちゃん!? 落ち着いてよ!?」
「離して!! アタシは今すぐ夢人の所に行かなくちゃいけないのよ!!」
第1競技終了の様子を観ていた女神専用の観覧室で、部屋を飛び出そうとするユニをネプギアが懸命に羽交い絞めして押さえていた。
ユニの額には青筋が立っており、誰の目から見ても怒っていることは明らかである。
「そんなに胸がいいのか!! アタシは見る価値もない女だって言いたいのか、あの馬鹿は!!」
「お願いだから、落ち着いてよ!?」
夢人の胸に対する発言を聞き、ユニは自分のコンプレックスを激しく刺激されてしまったのだ。
今にも部屋を飛び出して夢人を殺しに行くんじゃないかと思うくらいに怖い雰囲気を出すユニを押さえながら、ネプギア自身も頭の片隅では先ほどの言葉を考えていた。
(私の胸はどうなんだろう?)
「アンタ今、アタシのこと馬鹿にしなかった?」
「えっ!? そ、そんなことないよ!?」
「嘘言いなさいよ!! アタシより胸あるくせに悩むんじゃないわよ!!」
「ひ、ひええええん!?」
考え事をしている最中に突然振り返ったユニに驚き、ネプギアは慌てて返事を返した。
しかし、その態度が逆に癇に障ったようで、ユニは拘束をほどき反転するとネプギアに掴みかかろうとした。
ネプギアは突然自分に向かって襲いかかってきたユニから逃げるために、椅子の周りをぐるぐると2人で追いかけまわすように回り始めた。
「……あれってトリックの時の黒歴史よね」
「うん。夢人お兄ちゃん、やっぱり大きい方がいいのかな?」
「ふふ、どうだろうね。でも、大は小を兼ねるって言うし、大きい方がいいんじゃないのかな?」
嫌そうな顔をしてモニターを眺めていたラムが、隣に座っていたロムに確認するように尋ねた。
先ほどの夢人が発動した黒歴史はミッドカンパニーで発動したものではなく、ルウィーの街中で発動したものである。
それを目撃していたラムは、あの時の変態的な言動をしていた姿を想起させた夢人を観て、自分の胸元をぺたぺたと触りながら不満そうに口をへの字に曲げた、
そんなラムとは対照的に、ナナハは嬉しそうに余裕の笑みを浮かべていた。
夢人を好きな女の子の中で、自分が1番胸が大きいという自覚がある分、その武器を誇らしく思っているのだ。
「そうなんだ……うん、わたしも大きくなりたいな」
「そ、そうよ! ナナハちゃんよりもっともーっと大きくなってやるわよ!」
「楽しみにしておくよ、2人とも」
「むっかーっ! 何よ、その余裕の態度! 全然信じてないでしょ!」
「そんなことないよ。ロムもラムもちゃんと大きくなるよ」
「ありがとう、ナナハちゃん(にこっ)」
「全然嬉しくなーい!」
ロムがにこにこと笑いながらナナハの胸へと視線を向ける。
それを横目で見ていたラムもナナハの胸を中止するが、すぐにそっぽを向いて意地を張りだした。
そんな2人の仕草が可愛らしく見えたナナハが、からかうように腕を組みながら胸を強調させ始めた。
ロムはそれを励ましと受け取り嬉しそうに笑うが、ラムはそれを嫌みと受け取りナナハを威嚇するように大きく両手を振り上げた。
「あれ、ブランは何とも思わないの?」
「そう言えばそうよね。あなた、いつも胸がどうとかって言ってたじゃない」
「ふっ、そんなこともあったわね」
ネプギアとユニ、ロムとラムとナナハの2組が騒いでいるのを視界に収めながら、遠目に見ていたネプテューヌとノワールが傍にいたブランに声をかけた。
2人とも、ブランが自分の体形にコンプレックスを抱いていたのを知っているから、ユニやラムのように騒ぎだすのではないかと思っていたのだ。
しかし、実際には余裕そうに鼻で笑ってモニターを観ていた。
「いつもウザいくらいに自慢してくる無駄乳のせいでベールが困っているのを観ていると、胸が少しだけスーッとしてくるわ」
「あなたね……」
「あ、あははは……」
「これに懲りたら、少しはあの脂肪の塊をアピールするのをやめてくれるかしらね」
暗い笑みを浮かべてベールに対する恨み事を並べるブランの姿に、ネプテューヌは苦笑し、ノワールは呆れたように目を閉じて額に手を当てた。
実際に2人ともベールがブランに自分の胸を自慢しているようにアピールしているのを知っているからこそ、何も言えないのである。
「……まったく、アイツはいったい何を考えているのかしら」
「ま、まあまあ、勝ったんだし、結果オーライに……ならないよね」
「当然よ。別の意味で変態の噂が流れちゃうわよ」
女神専用の観覧室の片隅で、主催者側として『勇者への道』に協力しているアイエフとファルコムが同じように夢人についての不満をこぼしていた。
「それに、あの馬鹿も今頃になって後悔しても遅いのよ」
目を細めてモニターを睨んでいたアイエフが、映し出されていた夢人の姿を観て不快そうに言葉を吐き捨てた。
モニターに映る夢人は顔を青くして、両手で頭を抱えていたのである。
黒歴史モードが解かれ、自分が今まで何をしていたのかを理解したからこそ、夢人は後悔しているように頭を抱えているのだ。
〔さ、さて、気を取り直して第2競技に移りたいと思います! それでは、2人目の……〕
〔ちょーっと待ったー!!〕
〔え、え、えええ?〕
5pb.が異様に盛り上がっている観客達に戸惑いながらも進行を続けようとするのだが、それは突如会場中に響き渡る声に遮られてしまった。
それを聞いたネプギア達も騒ぐのをやめ、一斉にモニターを注視し始めた。
〔ルウィーの代表はこのアタシ!! とう!!〕
叫ぶ声が聞こえると同時に、入口に再び白いスモークがたかれ始めた。
その煙を切り裂くように膝を抱えてクルクルと舞台へと飛んでくる誰かの姿が会場にいる全員の目に映り始めた。
入口から舞台まで大分距離があるはずなのにもかかわらず、その人物は見事な弧を描きながら舞台に着地した。
その人物とは、青い髪に大きめのゴーグルをつけ、赤いマフラーを巻いている黒いライダースーツの女性であった。
〔ゲイムギョウ界にヒーローあり……アタシが噂の日本一だ!!〕
〔日本一!?〕
〔ど、どうして!? 予定では違う人なのに!?〕
片腕を大きく伸ばす変身ポーズような体勢を取りながら、日本一は真っ直ぐに夢人を見つめ始めた。
夢人も5pb.も予想外の人物が出てきたことに驚きを隠せない。
本来なら、ルウィーのギルドから推薦されたSランク冒険者は他にいるはずなのだ。
〔ちょっとお願いして代わってもらったんだ……それじゃ、夢人〕
〔な、何だ?〕
5pb.の戸惑いに答えるように、日本一は安心させるようににかっと笑った。
だが、すぐに顔を引き締めて夢人を見つめると、5pb.と話していた時よりも声を低くして宣言した。
〔アタシは一切手加減しないよ。全力で夢人を倒す!!〕
〔っ!?〕
力強い宣言と共に、日本一はいつでも戦闘を行えるように片足を下げて体勢を低くした。
日本一の瞳に躊躇いはなく、その宣言が本気であることがわかった夢人は無意識のうちに息を飲んでしまっていた。
という訳で、今回はここまで!
最近は説明が多くなり、私自身も書いててテンポが悪いなと思うところが悩みどころですね。
まあ、次回からそれを払拭させるように動きを見せていきたいます。
その分、文量が増えてしまいそうで怖いんですけどね。
それでは、 次回 「単純で明快な行動理由」 をお楽しみに!