超次元ゲイムネプテューヌ 夢のヒーローを目指して   作:ホタチ丸

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はい、皆さんこんばんわ!
実はこの作品、この話で通算150話を迎えることができました!!
何とも中途半端な話の時に迎えてしまいましたが、これからも応援よろしくお願いします!
それでは、 名前を勝ち取れ はじまります


名前を勝ち取れ

 ……俺、御波夢人は初めて勇者としてゲイムギョウ界に召喚されて以降、結構な時間を過ごしてきた。

 

 女神を救出するためにネプギア達と一緒に各国を回ったり、ギョウカイ墓場で1度死ぬ思いもした。

 

 戻って来てからも、アカリと言う娘ができたり、ブレイブとの決闘、トリックとマジック・ザ・ハードを助けたりもした。

 

 そして、これからマジェコンヌさんから今まで謎であった『再誕』の力をコントロールする方法を学び、本当にゲイムギョウ界を救う勇者になろうとしていたのに……

 

「……どうしてこうなった」

 

 ……俺、現在絶賛いない人扱いされてます。

 

 しかも、勇者であることと自分の名前すら否定され、変質者扱いですよ。

 

 認めたくない事実から目をそらすため、俺は四つん這いの体勢から床に体を投げ出して、横向きの姿勢で膝を抱えて丸まった。

 

 思いっきりぶつけた頭の痛みや腕や足に感じる床の冷たさよりも、アイエフが語った事実が胸に重くのしかかってくる。

 

「夢人さん!? しっかりしてください、夢人さん!?」

 

「気をしっかり持って、夢人!?」

 

「夢人お兄ちゃん、しっかりして(ぐすっ)!?」

 

 無気力につぶやいたのを心配してくれたのか、正面にいたネプギアとナナハ、ロムが弾かれたように俺に近づいてきて、体を揺すり始めた。

 

 3人とも泣きそうな顔をしていて本当に心配しているんだとわかったが、俺にはそれに反応する余裕がなかった。

 

 ……あ、あはは、夢人って誰のことですか?

 

 今の俺は名もない1人の変質者なんですよ?

 

 信じたくない現実から逃避していると、ユニ達の怒声が聞こえてきた。

 

「どう言うことなんですか!! どうしてそんな作品のせいで夢人の存在が否定されてるんですか!! 納得できません!!」

 

「そうよ!! それはあくまで物語なんでしょ!! 実際に夢人は勇者として、わたし達と一緒に頑張ってきたじゃない!!」

 

「落ち着いてください、2人とも。今からご説明いたします」

 

「それよりも、まずゆっくんを元に戻さないと!? おーい、ゆっくん、返事して!?」

 

 イストワ―ルさんの説明を制して、ネプテューヌは俺に呼びかけながら頭をバシバシと叩いてくる。

 

 痛くないと言えば嘘になるけど、それを止める気力すら湧いてこない。

 

 ……そうだ、これは滅茶苦茶リアルな夢なんだ。

 

 よく夢の中では痛みを感じないと言うけど、それはきっと迷信なんだ。

 

 そもそも夢と現実の区別なんて、眠っている状態じゃわからないもんな。

 

 よし、そうとわかれば、早く目を覚まさないと。

 

 きっと起きれば、いつものように俺は勇者として……御波夢人としてゲイムギョウ界に存在しているは……

 

「ああもう!! 皆離れてなさい!! ……いい加減にしろ、この馬鹿!!」

 

「ぐわっぷ!?」

 

 突然、背中に強烈な痛みを覚えた俺は、丸まっていた体が転がり、うつ伏せの態勢になってしまった。

 

 ……せ、背中が、すっごく痛い。

 

「あ、アイエフさん!?」

 

「いきなり何を!?」

 

「ちょっと黙ってなさい!! さっさと正気に戻りなさい!!」

 

「ぐえっ……アイ、エフ」

 

 ネプギア達の驚いた声が聞こえてきたが、俺がそれを確認する前に誰かに襟を引っ張り上げられて無理やり上体を起こされた。

 

 喉が圧迫されて苦しく思いながらも振り返った先には、俺を睨むように見つめているアイエフが襟の部分を捻り上げている姿が目に映った。

 

「いつまでも現実逃避してんじゃないわよ!! 自分のことでしょ!! ちゃんと話を聞いてなさい!!」

 

「わ、わかった!? わかったから、離して……」

 

「ふんっ」

 

「っと……ぶっ!? ……ったぁ」

 

 首を動かしたことである程度呼吸が楽になった俺は、アイエフに離してもらうように頼んだ。

 

 しかし、アイエフは優しくではなく、俺を床に叩きつけるように襟を離しやがった。

 

 当然、無理やり起き上がらされてた俺はそのまま床に顔から落下してしまった。

 

 ……た、確かに、俺が悪いけど、これはないんじゃないのか?

 

 俺は痛む鼻を押さえながら、アイエフを恨めしく見上げた。

 

 それを受けてもアイエフは気にした様子を見せず、イストワ―ルさんに説明してもらうように促した。

 

「説明の続きをお願いします、イストワ―ル様」

 

「は、はい……それでは、ご説明させていただきます」

 

「……後で覚えてろよ」

 

「……嫌よ」

 

 立ち上がった俺は小声でアイエフに恨み事を言ったのだが、それも涼しげに流されてしまった。

 

 ……くそっ、いつか絶対にぎゃふんと言わせてやる。

 

 っと、今はイストワ―ルさんの説明に集中しないと。

 

 とりあえずアイエフのことは置いておくことを決めた俺は、真剣な面持ちで語りだすイストワ―ルさんに注目した。

 

「先ほども言いましたように、今回の騒動はこの作品がフィクションであることが原因なのです」

 

「でもさ、いくらゆっくんを題材にしていても、結局の所はフィクションだってわかってるでしょ? それで、何で現実のゆっくんに飛び火してくるの?」

 

「そうですよ。それに、どうして夢人さんが変質者扱いをされなければいけないんですか?」

 

「納得のいく説明をお願いします」

 

 先ほどは気が動転していたけど、確かにおかしいよな。

 

 『それゆけ! ゆうしゃくん』は、初めてB.H.C.を使った時に発動した黒歴史をモチーフにした物語だ。

 

 今の俺とは全く違う御波夢人のはずだよな。

 

 だからこそ、フィクションなんて注意事項が載せられていたのだし……

 

 加えて、なぜそこから変質者呼ばわりもされなくちゃいけないんだ。

 

 俺は変態じゃないぞ!!

 

「では、順を追って説明させていただきます。事の発端は、この作品の夢人さんが実際の夢人さんと大きくかけ離れていることなのです」

 

「そうかな? どっちも夢人お兄ちゃんだと思うけど」

 

「うん! どっちもパパだよ!」

 

「……そんなこと言えるのは、アンタ達2人ぐらいよ」

 

 ロムとアカリの言葉に、ユニが呆れたように突っ込んでいた。

 

 ……俺って、ロムとアカリにはああいう風に見られてるのかな。

 

 なんか悲しくなってくる。

 

「続けますよ。普通なら、作品の登場人物を現実に混同させるなんてことは起こりません。しかし、ここであまりにも予想外の事態が発生してしまいました」

 

「予想外の事態? それって何なの?」

 

「はい、それは、その……」

 

 突然、イストワ―ルさんは言い辛そうに目を伏せながら、ちらちらと俺の方を見てきた。

 

 ……え、その反応はなんですか?

 

 俺がその視線の意味がわからず、困惑していると、ついにイストワ―ルさんは完全に視線を外して口を開いた。

 

「夢人さんのゲイムギョウ界での評価が最悪だったのです」

 

「……へ?」

 

 間抜けな声を出して固まってしまった俺をどうか許して欲しい。

 

 その言葉は、先ほどの存在しない発現と同様に俺の心に凄まじい衝撃を与えた。

 

「ど、どうしてですか? どうしてそんなことに……」

 

「……ああ、そう言うことね」

 

「あいちゃんは何か心当たりがあるの?」

 

 まさかの言葉に固まっていると、アイエフが1人納得したように頷いて俺を見てきた。

 

 その顔は呆れたように目が細くなっていた。

 

「つまりは、夢人の今までの行動の結果、と言うわけね。自業自得とも言えるかもしれないわ」

 

「ど、どう言うことだよ!?」

 

「アンタが今までしたことをよく思い出してみなさい。本当に心当たりがないかしら?」

 

 慌てる俺にアイエフは興味を失くしたのか、携帯を取り出して何やら操作をし始めた。

 

 アイエフには悪いけど、俺には心当たりなんてこれっぽっちも……

 

「……あっ」

 

「うん? どうかしたの、ネプギア?」

 

「え、えっと、その、もしかしたらと思うんですけど……」

 

 アイエフに言われた通り、俺がゲイムギョウ界でしてきたことを思い出していると、ネプギアが何かに気付いたように声を漏らした。

 

 それをネプテューヌに指摘されたネプギアは、気まずそうに指を弄りながら視線を泳がせて言い淀んでしまう。

 

 ……そ、その反応はまさか、本当に何か心当たりがあるのか?

 

「夢人さんって、1度ゲイムギョウ界中に指名手配されましたよね? そのせいじゃないかなって……」

 

『……あっ』

 

「あった!?」

 

 この場にいるネプテューヌとアカリ、イストワ―ルさんにマジェコンヌさん以外の全員がなるほどと納得するように声を上げた。

 

 ……そう言えば、リーンボックスの時に指名手配されちゃいましたよね!?

 

 まさか、そのせいで……

 

「それも理由の1つね。今ちょっと調べてみたんだけど、他にもあるみたいよ」

 

「え、まだあるの?」

 

「えーっと、【教会を歩く裸の男がいた】、【白昼堂々の奴隷プレイ】、【女神候補生を誘拐しようとしていた】、【不気味な女装をして街を練り歩いていた】……挙げていったらきりがないわね」

 

 アイエフは俺についての評判を調べるために携帯を操作していたらしく、次々と情報を並べていった。

 

 それを聞き、ネプギア達は俺を憐れむように見つめてきた。

 

 ……うん、どれも心当たりがあるんだな、これが。

 

「……最初、裸でしたよね」

 

 ……はい、最初に召喚された時は服を着てませんでした。

 

 ネプギアの部屋で召喚された後、俺はタオルで全身を隠すように部屋を移動したんでしたね。

 

 それを教会の職員が見ていたのが、この情報の出所だろう。

 

「……思いっきり奴隷って呼んでたわね」

 

 ……そうですね、ユニには大声で奴隷って呼ばれてましたね。

 

 初めてユニに会った後、何を思ったのかいきなり奴隷にされてしまって、ごたごたが片付くまでずっと名前で呼んでもらえなかった。

 

 あの頃は毎日のようにギルド内で喧嘩してたから、きっとそれを聞いていた冒険家がこの情報を流したのだろう。

 

「……わたしが教会に来た夢人達から逃げた時の話よね?」

 

「……それとも、トリックちゃんから逃げた時のこと?」

 

 ……どちらもそれっぽいです。

 

 ロムと喧嘩したラムを放っておけなかった俺は、広場で強引に捕まえたんだよな。

 

 しかも、その後教会の方に通報されてしまい、ミナさんに誘拐犯扱いをされてしまった。

 

 ロムが記憶喪失だった時、B.H.C.を使ってトリックを激怒させてしまい、2人を抱えて逃げたこともあった。

 

 その時発動した黒歴史と相まって、傍目からすれば完全に変態な誘拐犯だったよな。

 

 どちらも街のど真ん中だったし、目撃情報はたくさんあっただろう。

 

「……リンダやワレチューと一緒に特命課に所属していた頃は女装してたよね」

 

 ……ええ、変装するために女装してましたよ。

 

 今だから反省できるけど、どうして俺はあの女装でばれないと思っていたのだろう。

 

 いくら指名手配されて変装しなくちゃいけないとわかっていても、何でわざわざ女装を選択したんだ。

 

 思い出せば、リーンボックスの街を歩いていた時の周りの視線が……やめておこう。

 

 これも特命課の仕事で街を回っていたので、目撃情報は多かったんだろうな。

 

「そんな感じで、アンタにはマイナスのイメージが定着しちゃってるのよ。しかも、イストワ―ル様の言う通り、アンタとその『それゆけ! ゆうしゃくん』に出てる夢人のイメージのギャップがこの騒動の原因ね」

 

「……つまり、ゲイムギョウ界でゆっくんって言えば、その作品のゆっくんのことを指すってことだよね?」

 

「そうなります」

 

 俺が心当たりの多さに愕然としていると、ネプテューヌがここまでのことをまとめてくれた。

 

 俺のイメージをマイナスとすると、『それゆけ! ゆうしゃくん』の俺はプラスのイメージなんだ。

 

 ゲイムギョウ界ではプラスのイメージが広まり過ぎていて、そちらが本当の俺のように扱われている。

 

 確かに、勇者と言えばマイナスのイメージなんて湧かないよな。

 

 俺だって、勇者の真実を知るまではそうだった。

 

 つまり、本物と偽物の立場が逆転していることが根本の問題なんだ。

 

 世間ではプラスのイメージを真似しているマイナスの俺ってことになっているんだろう。

 

 しかも、そのマイナスの評判が酷いから、今回のような騒動に……

 

「でも、待ってください。その作品が作られたのって、ユピテルの事件があったからですよね? それなら、あの時の映像を使えば疑いが晴れるんじゃないですか?」

 

 俺はナナハの言葉を聞いて、沈んでいた気持ちに光が差したように感じた。

 

 そうだ、その作品が作られるきっかけになったあの映像を使えば、俺が本当に勇者だってことを証明……

 

「その映像なのですが、実はやらせではないかと言う意見が出ているんです」

 

 んん? 何やらまた暗雲が立ち込めてきたような気がするぞ。

 

 俺の心情を映しているかのようにイストワ―ルさんが顔を曇らせながら口を開いた。

 

「現在のユピテルの活動を見て、以前テロを行おうとしていたなどと考える人がほとんどいないのです。ですから、あれはユピテルの皆さんがメジャーデビューをするために用意したPV、もしくは演出の一種ではないかとファンの間ではささやかれています」

 

「そ、そんな……」

 

「加えて、あの映像の夢人さんの奇行が悪い意味で目立ってしまい、さらに評判が……」

 

 ユピテルが白くなりすぎてて、俺が黒くなってるのか!?

 

 いや、悪いことじゃないんだよ!?

 

 ユピテルの連中が真面目に活動していることは喜ばしいことなんだよ!?

 

 でもさ、それで何で俺の奇行が……って、黒歴史のせいか!?

 

 発動したヒーローもののせいで、思いっきり恥ずかしいことを叫んでましたもんね!?

 

 そりゃ、あれだけ性格が豹変すれば、奇行の一種だと思われても仕方ないですよね!?

 

 あの時はノリノリでカメラに向かって決めポーズとか取ってたけど、今思えばかなり痛い!?

 

 イストワ―ルさんもそんなに言い淀まないでください!?

 

 余計に悲しくなります!?

 

「ちなみに、今回の騒動が発火した原因は、ここ最近のアンタと女神様達との関係のせいね……【ネプテューヌ様とツーリングしてた】、【ネプギア様似の赤ちゃんからパパと呼ばれている】、【駅構内で親子のように写真撮影】、【ユニ様と2人っきり夜の公園で密会】、【病室に響くラム様の悲痛な叫び、痴情のもつれか】、【ナナハ様とデート、恋人のようなアイスの食べさせ合い】、【デートを見守る女神様達】とか、極めつけは【女神様達に囲まれて鼻の下を伸ばしていたさえない男を激写】とか言う記事にアンタの顔写真が思いっきり載っているのよね」

 

「うわあああああああああああ!?」

 

 アイエフの言葉にはすべて心当たりがある。

 

 俺はアイエフが携帯を見ながら読み上げられていく事実を誤魔化すように、無駄だとわかっていながらも叫び出した。

 

 ネプギア達を信仰する人達からすれば、俺って思いっきり憎い存在じゃん!?

 

 世間では変態であり、嫉妬の対象って何でこんなに俺のイメージは悪いの!?

 

 俺、頑張ってるよね!?

 

 ギョウカイ墓場からネプテューヌ達を助けるために全力を尽くしたし、今だって犯罪組織からゲイムギョウ界を守るために戦ってるんだよ!?

 

 それなのに、どうしてマイナスのイメージしか湧いてこないんだ!?

 

 ……全部俺のせいだってわかってるよ!?

 

 B.H.C.による黒歴史、『それゆけ! ゆうしゃくん』とのギャップ、ネプギア達との関係からくる嫉妬……全部俺が悪いんですよね!?

 

「わ、私達が夢人さんの良い評判を流せば解決するんじゃないでしょうか?」

 

「やめておいた方がいいわね。夢人を庇ったら、むしろ女神様はなんて心が広くて優しいんだ、それに比べて庇われている変質者は……なんて、余計に夢人のイメージが悪くなるわよ」

 

「じゃ、じゃあ、どうすればいいの!? アタシ達じゃどうすることもできないじゃない!?」

 

「ですが、このままでは……」

 

「方法ならあるじゃないか」

 

 この騒動を沈める方法が見つからず途方に暮れていた俺達に、今まで黙って静観していたマジェコンヌさんがとある提案をしてきた。

 

「要は、勇者が勇者であることを証明すればいいのだろう? ならば、力を示してやればいい」

 

「力を、ですか?」

 

「そうだ。勇者とは女神と並び立つ存在。つまり女神と共に戦える力を持っていると証明できれば、国民も納得するのではないか?」

 

「……確かに、現状ではそれ以外に打てる手はありませんね。こんな事態を招いてしまった原因の一端を担っている私が言える立場ではありませんが、やってくれませんか?」

 

 マジェコンヌさんの提案を受け、イストワ―ルさんは顔を引き締めて俺に確認を取ってきた。

 

 このまま何もしなければ、俺はネプギア達と離されてしまう。

 

 かと言って、ネプギア達に頼っても状況は変わらない。

 

 ……だったら、俺の答えは決まってる!!

 

「やります!! いえ、やらせてください!!」

 

 俺は深く頭を下げてイストワ―ルさんに頼み込んだ。

 

 元々は、アイエフの言う通り、俺の今までの行動のせいだ。

 

 だから、俺は自分で下げた評価は自分で上げてやる。

 

 必ず、俺はゲイムギョウ界で胸を張って勇者と……御波夢人と名乗ってやる!!

 

「……わかりました。では、私の方で各国に連絡を行い、すぐに夢人さんが力を証明する舞台を整えてみせます」

 

「よろしくお願いします!!」

 

「ふふふ、本当に面白いことになったな」

 

 打開策を見つけて気合いを入れる俺の後ろから面白そうに笑うマジェコンヌさんは、この状況を楽しんでいるように思える。

 

 俺は顔をしかめて、一言文句をいてやろうと思い振りかえるが、続けられた言葉に目を丸くしてしまった。

 

「ちょうどいいじゃないか。貴様が『再誕』の力を使いこなせるかどうかを確かめられる実戦ができるぞ」

 

「実戦? まだ何にも教わってないのに、そんなにすぐにできるようなものなのか?」

 

 事実、俺はまだマジェコンヌさんから『再誕』の力についてほとんど何も教わってない。

 

 それなのに、そんな簡単にできるようなものなのか?

 

 俺の疑問に答えるように、マジェコンヌさんは笑みを深めた。

 

「すべては貴様次第だ。貴様には舞台が整えられるまでに、自分の意思で『再誕』の力を引き出せるようになってもらう」

 

 自分の意思でってことは、アカリに頼らないでってことだよな?

 

 俺は確認するようにアカリに視線を向けるが、話の内容がわからないのか、ただ首を傾げるだけであった。

 

「そのためにはまず、ブレイブソードの使用を禁止する」

 

 マジェコンヌさんの口から出た指示に、俺は目を大きく見開いて驚いてしまった。

 

 驚いた俺の顔を見て、マジェコンヌさんの口角がさらにつり上がったように見えたのは気のせいだと信じたい。

 

 ……いったい、何をさせるつもりなんだ!?




という訳で、今回はここまで!
ようやくこの章の序盤部分が終わったと言ったところでしょうか。
次回からもう少し動きを見せられるはずです。
それでは、 次回 「剣を求めて」 をお楽しみに!

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