超次元ゲイムネプテューヌ 夢のヒーローを目指して 作:ホタチ丸
実は私、ネプリバ2をプレイしたら、とてつもない悲しみに襲われてしまいました。
なんで……なんでなんですか!?
どうしていなくなってしまったんですか!? ……名人!?
それでは、 強襲 はじまります
(ど、どどどどうしよう!? 絶対に誤魔化しきれてないよ!?)
テーマパークで夢人に追い詰められたギアラス……ではなく、ネプギアは恐竜の被り物で顔は見えないが、焦りの影響で冷や汗をだらだらと流していた。
誤魔化しきれてないとわかっているのも当然である。
顔だけは被り物のおかげで見えないが、それ以外の体全体は普段着のままである。
しかも、薄紫色の髪を隠せておらず、頭を入れている穴から伸びている。
つまり、ギアラスとは恐竜の被り物を付けているだけのネプギアその人であった。
(こ、こんなはずじゃなかったのに!?)
ネプギアは今に至るまでのことを回想していった……
* * *
「それじゃ、行ってくるね。今日は夢人と楽しんでくるから、吉報を期待しておいてよ」
扉の向こうからナナハちゃんはそう言うと、すぐに足音が聞こえた。
どんどん小さくなる音から、本当に行ってしまったのだとわかると、私はベットの上で抱えていた膝に額をぶつけた。
額には鈍い痛みが走るが、それよりも胸の方が痛い。
……今日、ナナハちゃんは夢人さんにもう1度告白する。
そうしたら、ナナハちゃんは夢人さんの恋人に……
「……嫌だよ」
自然と口にした言葉に泣き出しそうになる。
今の私は何を信じたらいいのかわからない。
どうしてナナハちゃんが夢人さんの恋人になるのが嫌なのかもわからないんだ。
私が夢人さんのことを好きだからなの?
それとも、【今】が変わってしまうのが嫌だからなの?
もしかして、ナナハちゃんのことが嫌いだから?
……やめよう。
もうこんなことを考えたところで、何の意味もないんだから。
動けない私は、ただ時間が過ぎるのを待つしかないんだ。
そうだよ。今日が終われば、私はナナハちゃんと友達になれるんだ。
一緒に笑ったり、支え合える友達に……
「……でも、私も笑えないよ」
前にも同じことを考えたことがあったな。
温泉に行って、夢人さんとロムちゃんが付き合っていると勘違いした時だった。
あの時も、私は2人の幸せを素直に祝える気持ちになれなかった。
今と状況は同じ、ロムちゃんがナナハちゃんに代わっただけで、私は2人の幸せを願えそうにない。
でも、どうして?
どうして私はナナハちゃんの幸せを望めないの?
……自分で堂々巡りの自問自答になっていることには気付いている。
それでも、私は悩み続けてしまう。
答えを出せない苦しみに、全てを投げ出してしまいたい衝動に駆られてしまう。
いっそのこと、今までのことを全部なかったことにしてしまえば、私は笑えるのかな?
だったら、私は全てを忘れてしまいたい。
そうすれば、私も……っ!?
「そうだ……そうだったんだ」
私は顔を上げて涙を拭った。
きっと泣き腫らして酷い顔になっているだろうけど、今はそんなことを気にしている暇なんてない。
全てを諦めかけた私の心に、あの夢で見た気持ちがよみがえってきた。
だから、私には伝えなきゃいけないことがある。
ナナハちゃんにも、ユニちゃんにも……夢人さんにも。
悩みの答えは出ていないけど、今すぐにでも3人に聞いてもらいたい。
私の気持ちを……
* * *
私は最低限身だしなみを整えると、ナナハちゃんの後を追うために部屋を飛び出した。
運がいいことに教会から出て少し走ると、ナナハちゃんの後ろ姿を見つけることができた。
……でも、その後ろ姿を見て、私は思わず声をかけるのを躊躇ってしまったのだ。
「ふふふふーふん、ふふふふーふん、ふふふーふふふふふ」
鼻唄を歌いながら上機嫌で歩くナナハちゃん。
後ろからは服装の全体像は見えないけど、後ろ髪がふんわりと軽く巻かれていたり、いつもは穿いていないスカートを穿いていることから、かなり夢人さんとのデートに気合を入れているのがわかる。
……ど、どどどどうすればいいの!?
私はナナハちゃんのデートを邪魔するために追って来たわけじゃない。
あくまで、私の気持ちを聞いてもらいたいから来たのだ。
悩みの答えが出ていない以上、私はこの後どうすればいいのかを失念していた。
気持ちばかりが先走った結果、どうやって私の気持ちを聞いてもらえばいいのかわからないよ。
……ちゃ、チャンスを待つしかないのかな?
本当なら今すぐにでも私の話を聞いて欲しい。
でも、あのナナハちゃんを私が止められるの? ……無理だよ。
呼び止めたところで、多分ナナハちゃんは止まらない。
デートの邪魔をする私を、昨日のように冷たい声で責めてくると思う。
しかし、このままではナナハちゃんは夢人さんと合流してしまい、余計に話す機会を失ってしまう。
……こっそり後をつけてタイミングを見計らおう。
夢人さんにも私の気持ちを聞いてもらいたいが、最初はナナハちゃんにだけ聞いてもらいたい。
次はユニちゃんで、最後に夢人さんだ。
今の私の気持ちに気付かせてくれた2人に先に聞いて欲しい。
いくらデートと言っても、1人になる時は必ずあるはずだ。
その時が来たら、ナナハちゃんに話を聞いてもらう。
結果的に邪魔しちゃうのかもしれないけど、今日が終わる前に話さなければ意味がなくなってしまう。
だ、大丈夫。必ずチャンスは来るから、見失わないようにしないと……
弱気になりそうな心を鼓舞しながら、ナナハちゃんの後ろ姿をこっそりと隠れて見ていると、私はとあることに気付いた。
……このままついていったとしても、すぐにナナハちゃんに見つかってしまうのではないか?
私の逃亡がわずか数時間で終わってしまったのと同じように、すぐに見つかってしまう可能性がある。
ケイブさんも女神候補生である私は目立つ存在だと言っていたし、ここは変装しないといけないね。
同じ失敗を繰り返さないように、私だとわからないように変装するための道具を買うことを決めた。
幸い私達が歩いている通りは、いろいろな店が立ち並んでいる。
ナナハちゃんを見失ってしまわないように、手早く買わなくちゃ……うん、あそこで買おう!
私は目に止まった雑貨屋に入って、変装用のグッズで何が必要なのかを考えた。
……まずは、帽子とかコートとかかな。
髪や服で私だとわからないように、頭を隠す帽子とコート、安いニット帽と折りたためるウインドブレーカーで代用できるよね。
……次は、顔を隠す物を用意しないと。
定番と言えば、サングラスとマスクだね。
確かレジの近くに置いてあったし、他に何か用意するものは……多分、大丈夫かな。
「……あ、レジ袋はいりませんから、大丈夫ですよ」
私は店員さんに笑顔でそう言うと、買ったものを受け取り身につけて尾行を再開した。
これで誰も私がネプギアだってわからないよね。
変装に確かな手ごたえを感じながら、私は少しだけ遠くなってしまったナナハちゃんを追いかけるために早足で駆けだした。
* * *
「駄目だよ。今日はデートなんだから、私だけを見ててね」
……見ているだけで胸が痛む光景を前にしても、私はただ手で胸を強く押さえることしかできない。
ナナハちゃんが夢人さんと合流した。
腕を組みながら2人で歩くその姿は、私には恋人同士に見えてしまう。
だって、2人が幸せそうに見えるから。
満面の笑顔ではしゃいでいるように見えるナナハちゃんと、困ったように慌てていても、どこか嬉しそうにも見える夢人さん。
……私、これから2人の邪魔をしなくちゃいけないんだよね。
話を聞いてもらうってことは、私はナナハちゃんの幸せを壊してしまうことになる。
それは、私がユニちゃんにしたことと同じ……ナナハちゃんの思いを踏みにじる行為だ。
私にはその覚悟がない。
ここまで来ておいて考えることじゃないとわかっているけど、私は自分の気持ちに自信が持てない。
正しいかどうかわからないこの気持ちをぶつけても、本当にいいのだろうか。
今更ながら不安が胸を支配してしまう。
先ほどよりも苦しくなる胸を押さえながら、私はそれでも2人の後を追うことをやめなかった。
……ううん、勝手に足が動きだしていた。
私は心とは裏腹に、2人からつかず離れずの距離を維持していたのだ。
……どうしてなんだろう。
不思議に思いながらも、私は自分が逃げ出さずにすんだことを嬉しく思う。
……後は、チャンスを見つけなきゃね。
後を追ううちに話をする機会も巡ってくるはずと、自分に言い聞かせながら私は覚悟を決めておこう。
今日じゃなきゃ駄目なんだから。
そんな風に考えながら歩いていると、どうやら2人は目的地に着いたようだ。
遊園地かな? 遠くにジェットコースターと観覧車が見えるから、多分テーマパークのような場所なんだと思う。
2人は腕を組んだまま受付を通って入っていく。
「っ!?」
一瞬、ナナハちゃんがこちらを見て笑った気がした。
まるで見せつけるように夢人さんの腕により抱きついたように見えたし……
……っ、まただ。また胸が締め付けられるように苦しいよ。
苦しみの理由は見つけられないけど、私も急いで中に入らないと……
「お客様、少々よろしいでしょうか?」
「は、はい?」
私がチケットを買って入ろうとした時、受付にいた係員さんに呼び止められてしまった。
「大変申し訳ございませんが、その格好でのご入場はご遠慮していただけますでしょうか?」
「え……えええ!?」
ど、どうしてこれで入っちゃ駄目なんですか!?
私が理由を尋ねようとするよりも早く、係員さんが苦笑しながら説明してくれた。
「そのようなあやしい格好では……」
「はうっ!?」
私は今更ながら反省した。
帽子にサングラス、マスクにウインドブレーカー……いくら変装用とは言っても怪しいですよね。
「……ごめんなさい」
私は変装を解いて、いつもの恰好で入場した。
……先ほど買った変装用品は後で捨てておこう。
* * *
私は今、夢人さんから逃げるために走っている。
普段の服装に戻った私はすぐに見つかってしまった。
夢人さんが明らかにこちらを見たと思ったら、いきなりすごい速さでこっちに向かって走ってきた。
……ま、マズイ!?
今は夢人さんと会うわけにはいかない。
悩みの答えと覚悟が決まっていない今、夢人さんに会ってしまえば私は甘えてしまうかもしれない。
甘えた私はきっと考えるのをやめてしまう。
それだけは絶対にしちゃ駄目なんだ。
私はどうすれば夢人さんから逃げられるのかを考えながら曲がり角を曲がった。
そこに置いてあるとあるものを見て、咄嗟にこれだと思った。
……これを使えば!!
私は恐竜をデフォルメした着ぐるみの頭を見つけた。
頭しかないことから、多分着ていた人は休憩していたのではないかと思う。
私は少しの間だけこれを使ってやり過ごそうと思う。
「ネプギ……ア……?」
「ひ、人違いですよ!? わ、私はこのテーマパークのマスコットキャラクターの……え、えっと、その……そう! ギアラスです!! が、がおー! た、食べちゃいますよ!」
適当に言っちゃったけど、本当にこれからどうしよう!?
* * *
(……って、駄目駄目!? 何現実逃避をしているの!?)
ネプギアは命名ギアラスヘッドを被りながら、遠くに飛ばしていた思考を戻した。
目の前には微妙な顔で自分を見つめる夢人がいるのだ。
お互いにどうしていいのかわからず固まっていたが、夢人が遠慮がちにネプギアに尋ね出した。
「え、えっとさ、ネプギア、だよな?」
「ち、違いますよ!? 私はギアラスです!? ネプギアなんて人じゃありません!?」
「いやいや、どう考えても……」
「あ、あああ!? 私おやつの時間だから早く帰らないと!? それじゃ、失礼します!?」
「って、ちょっ!? 待って……ぐえっ!?」
夢人はいろいろとツッコミどころ満載の言葉を残して走り去ろうとするネプギアを追おうとするが、後ろから襟を掴まれてしまう。
「な、ナナハ!?」
「急に走り出すと思ったら、何をしているの?」
夢人が後ろを振り向くと、自分を呆れた目で見つめるナナハの姿があった。
ナナハは夢人が自分の方を向くと、苦笑しながら襟から手を離し、再び腕を組み始めた。
「さあ、時間は有限なんだからデートを楽しもうよ」
「ま、待ってくれ!? 今ネプギアが……」
「何言ってるの? ネプギアなんていないよ」
夢人はネプギアを追おうとするが、ナナハはにこりと笑って腕を引っ張りだした。
ネプギアが逃げた方向とは逆の方向に歩きだすナナハに、夢人の焦りは加速した。
「な、何言ってんだよ!? 今さっきネプギアがいた……」
「居たのはギアラスでしょ? ネプギアがあんな真似するはずないよ」
ナナハは夢人の言葉を遮り、笑うだけで歩みを止めなかった。
……その笑顔は目がまったく笑っていなかった。
「最初に言ったでしょ? 今日は私だけを見てて、ね」
「ナナハ……それは……」
「お願い……今日だけでいいから……私をずっと見てて」
夢人は瞳を潤ませながら自分を見上げるナナハに何も言えなくなってしまった。
そして、1度ネプギアが走り去った方へと視線を向けるが、すでに後ろ姿すら見ることができなかった。
「……わかった。どこから行こうか?」
「うん! じゃあ、最初はあっちに行こうよ」
夢人は後ろ髪を引かれる思いをしながらも、ナナハにほほ笑みながらどこを回るかを尋ねるのであった。
2人のデートは始まったばかりである。
* * *
その頃、ルウィーの教会で異変が起こっていた。
突如、正面の入り口から爆発するような音が聞こえてきたのだ。
ブラン達が慌てて駆けつけると、そこには2つの影があった。
「ここにいるはずだな」
「テメェは!?」
ブラン達はどちらにも見覚えがあった。
片方はリンダとワレチューに救ってくれと頼まれた相手、もう片方はリゾートアイラン島で襲ってきた相手なのだから。
「単刀直入に言う。勇者を差し出せ!! さもなければ、我が戦斧のさびにしてくれる!!」
教会の入り口に穴をあけた張本人、黒い鎧を纏ったジャッジ・ザ・ハードはブラン達にポールアックスの先端を向けながら宣言した。
その隣には黙って鎌を構えるマジック・ザ・ハードの姿があった。
「……何で夢人を狙うのかしら?」
「答える舌など持たん。貴様らは素直に勇者を差し出せばいいのだ」
ブランは少しでも情報を得ようとするために、目を細めながらジャッジに尋ねるのだが、取りつく島もない。
ここで戦えないこともないのだが、できれば教会を破壊したくないブランはジャッジの答えに眉間にしわを寄せて表情を険しくさせた。
(まずいわね。ワレチュー達から聞いた話が本当なら、今のジャッジ・ザ・ハードはマジック・ザ・ハード以上の力を持っている……それにあの鎧、前とは明らかに違う)
ジャッジの鎧が変化していることに気付いたブランは、警戒を強めた。
以前は黒い体に緑色の線が入っていたのだが、今は赤い線が入っている。
さらに、刺々しい突起の部分がより鋭利になっているように思えた。
(今はノワールがいるとは言え、かなりやばい状況ね)
ブランは横目で隣にいるノワールへと視線を向けた。
ノワールはラステイションに帰っていなかったので、こちらの戦力としては女神が2人と女神候補生が2人、さらに日本一とがすとがいる。
しかし、このメンバーであっても目の前に2人に対処できるかどうかわからい。
ブランと同じことを考えていたのか、ノワールも眉間に力を込めて体を2人から注意をそらすことなく、こちらをうかがい見ていた。
ブラン達が動けずにいると、ジャッジは痺れを切らしたのか、向けていたポールアックスの刃を回転させると腕を引いた。
「沈黙は拒否と受け取る。ならば、力づくで……」
「させんぞ!!」
「ぬぐっ!?」
ジャッジが突きを放とうとした時、そのポールアックスの柄に何かが纏わりついて動きを止めた。
巻き付いたものとは、舌であった。
「何やら騒がしいと思えば、貴様らが来ていたのか」
「……これはどうつもりだ?」
「見ての通りだ。吾輩は貴様らの邪魔をさせてもらおう」
「それはフィーナ様への裏切りだぞ……トリック・ザ・ハード!!」
ジャッジは怒りの形相で舌が伸びてきた方へと視線を向けた。
振り向いたジャッジの前には、トリックの姿があった。
その頭には黄色いヘルメットをかぶり、脇には木材を抱え、手にはトンカチを握りしめていた。
「ふん、フィーナの操り人形になった貴様に言われる筋合いはないわ。生まれ変わった吾輩の力、とくと思い知るがいい!!」
激しい怒りがぶつけられているにもかかわらず、トリックは涼しげに笑みを浮かべながら自信満々の態度であった。
という訳で、今回はここまで!
実際に私、最初に名人が来ると思って期待してたんですよね。
今でも思い出せますよ、いきなり出てきた男の人に驚愕した初プレイを……
なんかちょっぴりさびしくなりました。
まあ、内容には大満足なんですけどね。
早くコンテンツ増えないかな?
それでは、 次回 「告白」 をお楽しみに!