超次元ゲイムネプテューヌ 夢のヒーローを目指して   作:ホタチ丸

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はい、皆さんこんばんわ!
誰か睡魔に勝つ方法を教えてくださいませんか……
寝ようとした時に眠れなくて、起きてなきゃいけないのに眠ってしまう私っていったい……
まあ、そんなことはどうでもいいですね。
それでは、 傷心 はじまります


傷心

 ……気が付けば1人の少女が真っ暗な空間にいた。

 

 少女の目の前には、目を閉じているのではないかと錯覚してしまうくらい光のない暗闇が広がっている。

 

 そのくせ、なぜか自分の体だけは鮮明に見ることができる不思議な空間。

 

 そんな空間に突如、スポットライトが照らされたみたいに光が差し込んできた。

 

 そして、その光に照らされたもう1人の少女の姿が見えてきた。

 

「ねえ、お願いがあるの…………………………夢人の前から消えてちょうだい」

 

 少女、ユニは普段はツインテールにしている髪の毛を全て下ろして俯きながら少しずつ少女に近づいていく。

 

 カツカツと無音だった空間に足音が響く中、少女は近づいてくるユニから逃げるように体を震わせながら後ずさりし始めた。

 

 その顔には恐怖のあまり涙すら浮かんでいた。

 

 しかし、そんな少女に構わずユニはゆっくりと足を進める。

 

「アンタは、夢人が好き?」

 

 ユニの口から紡がれた一言に、少女の肩が大きく揺れた。

 

 後ずさりしていた足も止まり、呆然と立ち尽くしてしまう。

 

「アタシは夢人のことが好きよ」

 

「っ!?」

 

 一瞬、少女も何かを言おうとしたのだが、開きかけた口は形を歪めながら再び閉じられてしまい、唇を噛むだけで終わってしまう。

 

 そんな少女の姿に怒りが湧いたのか、ユニは今まで俯いていた顔を上げると、眉を吊り上げて険しく少女を睨みだした。

 

「アンタは夢人を殺す」

 

 怨嗟にも似た声が耳に届くと、少女は両耳を押さえてその場でしゃがみ出した。

 

 すると、ユニだけに当てられていたスポットライトが数を増やしていった。

 

「わたしは、夢人お兄ちゃんのこと、大好きだよ」

 

「私は夢人が大好き」

 

 2つ増えたスポットライトの下には、それぞれロムとナナハの姿が見えてきた。

 

 2人もユニと同様に最初は俯いていたのだが、すぐに顔を上げると憎しみのこもった眼で少女を鋭く見つめだした。

 

「夢人お兄ちゃんを、殺さないで(きっ)」

 

「夢人は殺させない」

 

 耳を塞いでいても聞こえてくる声に、少女は体を縮めて震えることしかできない。

 

 歯をガタガタと震わせて、焦点がブレかけている瞳からはとめどなく地面に涙がこぼれ落ちていた。

 

「お願い、アタシから好きな人を奪わないでよ」

 

「夢人お兄ちゃんを、消さないで」

 

「私の恋を否定しないでよ」

 

『だから……』

 

 3人は少女を囲むように立つと、声をそろえて言い放った。

 

『お願い、夢人(お兄ちゃん)の前から消えて……お願い、お願いよ!!』

 

 少女は自分の前から3人の姿を消すように、きつく目を閉じて体を丸めた。

 

 放たれた言葉を否定すらしない。

 

 まるで声が失われてしまったかのように口を動かすだけで終わってしまう。

 

 そんな時、後ろからこの場にいない誰かの声が響いてきた。

 

「……ア」

 

「っ!?」

 

 少女はガバッと立ち上がると、声の主を探して後ろを振り向いた。

 

 そこには、もう1人スポットライトに照らされた人物が柔らかな笑顔を浮かべて立っていた。

 

「……プ……ア」

 

 掠れたように響く声が自分の名前を呼ぶ声だと気付いた少女は、先ほどまで恐怖に彩られていた顔を喜びに変え、その人物の元へと駆け出した。

 

 安心したように目を細めて笑みを浮かべる少女は、涙が流れていることなどお構いなくその人物に飛びつこうとした。

 

 ……しかし、少女が近づくにつれて、その人物の顔が恐怖に歪み始めた。

 

「……俺……怖いよ」

 

 安堵の表情を浮かべていた少女の顔が再び凍りついたように固まり、その人物に触れる一歩手前で足が止まってしまった。

 

「死ぬのが怖いよ」

 

 その人物が弱弱しくつぶやくと、手や足、顔が段々と消えていくように透明になっていく。

 

 少女はその人物の変化に気付くと、ようやく体を動かすことができた。

 

 その指が触れようとした時、その人物は完全に透明になって消えてしまった。

 

 後には何も残っておらず、スポットライトの光も消え去ってしまった。

 

 少女はスポットライトが当たっていた場所まで歩くと、膝をついてわなわなと震える両手を見つめた。

 

「……や」

 

 その震える唇からかすかに声が漏れだすと、少女は声を取り戻したかのように叫び出した。

 

「いやああああああああああああああああああ!!」

 

 

*     *     *

 

 

「……ア!! ……ギア!!」

 

「っ、ハア、ハア、ハア……ナナ、ハちゃん?」

 

「そうだよ。落ち着いて、ネプギア」

 

 誰かが自分を呼ぶ声と体を揺すられたことで、ネプギアは荒い息を繰り返しながら目を開けた。

 

 すると、目の前には心配そうに自分を見つめてくるナナハの姿があった。

 

 目を見開いて信じられないと言った感じで確認するネプギアに、ナナハは安心したように目元を緩めてネプギアの背中をさすり始めた。

 

 そこでネプギアは初めて自分の体が横になっていることに気付いた。

 

「……私、寝てたの?」

 

「うん、一緒にご飯を食べ終わった後、ネプギアはうとうとしちゃってそのままベットで寝たんだよ。覚えてない?」

 

「……そうか、夢だったんだ」

 

 ネプギアは先ほどまで自分が体験していたことが夢であったことがわかると、安心したように大きく息を吐いた。

 

 しかし、一向に鼓動は落ち着かず、ネプギアは頭を揺らされている気分を味わっていた。

 

「うなされていたけど、怖い夢でも見た?」

 

「……うん」

 

 傍目から見ても落ち着けていないネプギアの様子に、ナナハは優しく問いかけた。

 

 それでもネプギアはナナハから視線をそらしながら短く答えるだけである。

 

 そんなネプギアに、ナナハはとある覚悟を持って口を開いた。

 

「そろそろ話してもらえるかな」

 

「っ!?」

 

 目を見開いて体を大きく震わせたネプギアを見て、ナナハは顔を引き締め、できるだけ柔らかく言葉を続けた。

 

「どうして私達の前から勝手にいなくなったのか……ちゃんと教えて」

 

「……わかったよ」

 

 声色は柔らかかったが、その言葉に有無を言わせぬ物を感じ取ったネプギアは重い口を開いて話し始めた。

 

 ……自分がどうしてリーンボックスにいるのかを。

 

 

*     *     *

 

 

 ユニちゃんと戦い終えた私は、逃げるように林の中を走っていた。

 

 本当なら、すぐにでもミッドカンパニーで戦っている夢人さんの所に向かいたい。

 

 でも、私の足はミッドカンパニーからどんどん遠ざかって行ってしまう。

 

 ……理由はわかってる。

 

 ユニちゃんの言葉を……私が夢人さんを殺すと言う言葉を気にしているからだ。

 

 嘘や冗談を言っている様子はなかった。

 

 涙を流すほど真剣であったからこそ、私の心は大きくかき乱されてしまった。

 

 どうしてそんなことを言われたのかはわからない。

 

 私には心当たりなんてまったくない。

 

 でも、意味がわからな過ぎて混乱した頭では否定もできない。

 

 肯定も否定もできない私は、可能性の恐怖に怯えてしまった。

 

 ……私が夢人さんを殺してしまう可能性が頭によぎってしまったのだ。

 

 夢人さんを失いたくない私ができることは、夢人さんの前から消えることだけ。

 

 でも、私は夢人さんとずっと一緒にいたい!!

 

 会えば殺してしまう可能性があると言うのに、私は夢人さんから離れたくないと思ってしまう。

 

 可能性なんて否定して夢人さんに会いに行きたいと思うのに、恐怖が私の心に重くのしかかってくる。

 

 それはきっと、1度夢人さんがいなくなってしまったことを経験しているからだ。

 

 ギョウカイ墓場で消えてしまった夢人さんの姿を忘れることができない私は、完全に恐怖を振り払うことができない。

 

 ……だから、私は夢人さんに会えない。

 

 怯えてしまった私が出した結論は、夢人さんを殺したくないから会わないようにすることだった。

 

 何も考えずに、無我夢中でミッドカンパニーから遠ざかるために走り続けた。

 

 ただ夢人さんから離れるためだけに……

 

 

*     *     *

 

 

(……ユニ、結構きついこと言ったんだね)

 

 ナナハは、上半身を起こして話し始めたネプギアと同じベットに腰掛けて静かに聞いていた。

 

 ネプギアはナナハと目を合わせたくないようで、視線はずっと下に向いており、掛け布団を強く握りしめていた。

 

 そんな中で、ナナハはユニが言った言葉に疑問を抱いた。

 

(ネプギアが夢人を殺す、か……どうしてそんな結論に至ったんだろう?)

 

 話を聞く限り、ネプギアが勝手に姿を消した原因はユニの言葉であることはわかった。

 

 しかし、肝心のユニがどうしてそんなことを言ったのかの理由がわからない。

 

 同じく行方不明になったユニから唯一連絡を受けたナナハは、あの時の通信の内容を思い出して考えるようにわずかに視線を上に向けた。

 

(ユニは私が夢人の傍にいることを望んでいた。それは何故? そして、ネプギアと同じように夢人に会えないって……本当に何考えてたんだろう)

 

 ユニもネプギアと同じように夢人に会えないって言っていた。

 

 だが、2人の理由は違うはずだ。

 

 そこにユニがネプギアに言った言葉の理由があるに違いない。

 

 話している内にネプギアも少しだけ気分が回復して来たのか、若干顔色がよくなってきた。

 

 口に出して吐き出すことで、精神的に楽になって来たようだ。

 

 ナナハはその様子を見て安堵し、少しだけ口元を緩めた。

 

(これなら、もっと早く話を聞いてあげた方がよかったな)

 

 ナナハは自分が話を聞くことしかできないけど、それでネプギアが快方に向かっているのだとわかると、後悔よりも嬉しさが上回った。

 

 ナナハにとって、ネプギアも大事な人の1人なのだ。

 

 心からネプギアの助けになりたいと願っている。

 

 だからこそ、ネプギアの状態がよくなっていることが嬉しいのである。

 

「そして、気が付いたらラステイションの街に着いていた。でも、そのまま街に居たら、すぐに見つかっちゃうと思ったから、皆が追いかけてこれないように船に乗って移動しようと考えたんだ」

 

「まあ、ラステイションからはリーンボックス行きの定期船が走ってるくらいだし、そこは問題ないね」

 

「そうでしょ? それに、船に乗っちゃえば空を飛べない夢人さんは絶対に追いかけて来れないから、これで大丈夫だって思ったんだよ」

 

「……その結果、私達が帰って来た時には、すでに教会で拘束されていたと、何か弁解はある?」

 

「言わないで!?」

 

 ナナハが呆れた目で見つめると、ネプギアは恥ずかしそうに両手で顔を隠してしまった。

 

 そう、実はナナハ達がリーンボックスに帰って来た時には、すでにネプギアは教会で保護されていたのである。

 

 それはリーンボックスの港でのことであった……

 

 

*     *     *

 

 

 私はラステイションから船に乗って、リーンボックスへと渡った。

 

 夢人さんに会わないようにするためには、列車での移動よりも船での移動の方がいい。

 

 列車、陸路での移動ではワンダーさんを使って追いつかれてしまう可能性がある。

 

 その点、海路での移動なら空を移動することができない夢人さんは絶対に追いついて来れない。

 

「……そう言えば、お姉ちゃん達に連絡してなかったな」

 

 船に乗ることでちょっとだけ心に余裕ができた私は、自分が誰にも連絡をせずに、ここまで来たことにようやく気付いた。

 

 こんなことをしたことは、今まで1度もなかった。

 

 ……お姉ちゃん達は心配するだろうな。

 

 その中には、きっと夢人さんも含まれる。

 

 優しいあの人のことだ。

 

 自惚れでなければ、私が勝手にいなくなってしまったことを知れば、温泉の時と同じように追いかけてきてしまうだろう。

 

 だから、私は誰にも連絡ができない。

 

 お姉ちゃん達に連絡をすれば、絶対に夢人さんの耳に入ってしまう。

 

 そうすれば、夢人さんは私を追いかけてきてしまう。

 

 夢人さんと離れなければならない私は、それを望まない。

 

 だから、私はこのまま連絡をせずに夢人さんから離れよう。

 

 いなくなってしまえば、その内夢人さんも私のことを忘れてくれる。

 

 だって、夢人さんには私以外にも傍にいてくれる人がちゃんといる。

 

 ナナハちゃんにロムちゃん、そしてユニちゃんがいる。

 

 3人とも夢人さんのことが好きだと言っていた。

 

 アカリちゃんも、きっと3人の中から新しいママを見つけてくれる。

 

 夢人さんと一緒に入れない私には、もうアカリちゃんのママの資格なんてないんだから。

 

 だから、私は安心して夢人さんの前から消えれば……

 

「……やだよぉ」

 

 心を決めたはずなのに、私は考えていたこととは違うことを口に出していた。

 

 目の前がぼやけて、頬に熱いものを感じる。

 

 私はこれ以上泣かないようにするために強く瞼をこするのだが、涙は止まらない。

 

 ……だって、本当は離れたくなんてないんだから。

 

 ずっと夢人さんと一緒にいたい。

 

 アカリちゃんのママでいたい。

 

 でも、夢人さんを殺してしまう恐怖が頭の中から消えない。

 

 ……こんなこと、どうしようもないじゃないか。

 

 私が必死に諦めろと自分の心に言い聞かせていると、船はリーンボックスに着いたようだ。

 

 ここからはどうやって身を隠そうか。

 

 衝動のままここまで来た私はこれからのことを考えながら船から降りようとした時、急に腕を強く掴まれた。

 

「っ、け、ケイブさん!?」

 

「見つけたわよ、ネプギア」

 

 私の腕を掴んだのは、ケイブさんであった。

 

 その口から出た言葉から、もしかして私のことを捕まえるためにここにいたのかもしれない。

 

 リーンボックス特命課に所属している彼女がリーンボックスにいることは別におかしいことではない。

 

 でも、どうしてケイブさんが港にいるの!?

 

 私は誰にも連絡していなかったのに!?

 

「ど、どうしてここに!?」

 

「ベール様から連絡を貰って、あなたとユニの捜索をしていたのよ」

 

 ユニちゃんもいなくなってるの!?

 

 私はユニちゃんが自分と同じように捜索対象にされていることに驚きを隠せない。

 

「あなた達の移動する候補として、特に可能性が高いのがリーンボックスとルウィーだったわ。だから、私は一応入国者の一覧を確認するために港に来たのだけど……別の意味で驚かされたわ」

 

「え、え、え?」

 

「まさか、連絡もなしにいなくなったあなたの名前が船の利用客に登録されているんだもの。思わず、肩の力が抜けてしまったわよ」

 

 って、ああああああ!?

 

 そう言えば、私船に乗る時に自分の名前を思いっきり登録してた!?

 

「前に起きた事件を教訓に、船での移動には乗客を登録する制度を取っていたけど、まさかそれが役に立つなんて思わなかったわ」

 

 前に起きた事件、ユピテルの皆さんが起こした船の爆破未遂事件みたいなことを防ぐために、船での移動は積み荷の確認を重視するようになっていた。

 

 その際に、積み荷と合わせて乗客の情報を簡単にだが登録する制度を取っていた。

 

 だから、チケットを買う時に名前を登録したんだった……って、どうして今まで忘れてたの!?

 

「それに、あなたが変装もしてなかったから、すぐに本人だとわかったわ」

 

「へ、変装?」

 

「もしかして気付いてなかったかしら? あなたの情報を集めようとしたら、すぐに集まったわよ」

 

 そう言ってケイブさんは私に小型の端末を見せてくる。

 

 そこには、私が船に乗っている写真が表示されていた。

 

「誰かがアップしたのね。プラネテューヌの女神候補生が1人で船に乗っているって情報が回っていたわよ」

 

「そ、そんな、どうして……」

 

「それだけ女神と言う存在がゲイムギョウ界にとって特別だってことよ。その行動を逐一知りたいと言う信者……この場合はファンとも言えるかもしれないわね。そんな人達がいるのよ」

 

 た、確かに、アイエフさん達がお姉ちゃん達が健在だと示すために、いろいろな情報を流していたのは知っていたけど、まさか自分の情報がすぐに流れるなんて思わなかった。

 

 というより、焦ってたのは仕方ないけど、少しでも変装をしなかった過去の私を罵倒したい。

 

 これじゃ、探してくれって言ってるみたいじゃないですか!?

 

 何で私はそこまで頭が回らなかったんだろうって、後悔をしているうちに、ケイブさんは私の腕を握る力を強めて引きずり始めた。

 

「さあ、とりあえず教会に行くわよ。皆にあなたが無事だと言うことを報告しないといけないわ」

 

「い、嫌で……って、いつの間に!?」

 

「逃がさないわよ」

 

 私がケイブさんの腕を振りほどいて逃げようとした時、手首の辺りから金属のすれるような音が聞こえてきた。

 

 見てみると、いつの間にか私の手とケイブさんの手を繋ぐ手錠がかけられていた。

 

「皆あなたのことを心配しているわ。さあ、早く行くわよ」

 

「ま、待って!? 待ってください!? お願いですから!?」

 

 願いもむなしく、私はケイブさんに教会まで引きずられて行きました。

 

 その間、周りの人達が変なものを見るような目で見ていたことが私の心を傷つけて涙が出てきてしまった。

 

 ……う、ううぅ、こんなはずじゃなかったのに。

 

 

*     *     *

 

 

「それで帰って来た私達も呆れたんだよね。本当、探すために気合を入れてたのに、その本人はのんきに教会にいるんだもの」

 

「そ、そんなこと言わないでよ!? 私だって、あんなすぐに捕まっちゃうなんて思わなかったんだよ!?」

 

 ナナハ達がリーンボックスに帰って来た時、ネプギアは教会で逃げられないようにケイブと手錠で繋がれていた。

 

 必死に逃げようとしていたネプギアだったが、手錠が外れないことにはどうしようもできないと諦めたように俯いていて椅子に座っていたのだ。

 

 その現場を見て、ネプギアとユニの捜索に気合を入れていたナナハ達のテンションが下がり、むしろ何をしているのだと呆れてしまったことは仕方ないのかもしれない。

 

(でも、皆に連絡をしようとしたら、ネプギアが急に暴れ出したんだよね)

 

 呆れながらも、皆に連絡をしようとした時、急にネプギアが泣きながら暴れ出したのだ。

 

 だからこそ、今までネプギアのことは誰にも連絡ができずにいた。

 

(あの時はわからなかったけど、ネプギアは夢人に連絡が行くことが怖かったんだね)

 

 泣きながら連絡しないでと暴れたネプギアに、ナナハ達は驚きながらも了承した。

 

 それは一重に、ネプギアが普段の様子からだいぶかけ離れていたからである。

 

 まずは理由を聞いて、精神的に落ち着いてから連絡を取ろうと判断したのだ。

 

(……でも、そろそろ聞いても大丈夫かな)

 

 ナナハは叫ぶほど回復したネプギアなら、ユニと何があったか聞いても大丈夫だと思った。

 

 ネプギアがこんなことをした理由、ユニが何を考えていたのかを知るために、深く踏み込むことを決めたのだ。

 

「ねえ、ネプギアは本当にユニがどうしてそんなことを言ったのか心当たりはないの?」

 

「っ……うん、わからないよ」

 

「うーん、それじゃ、少しずつでいいからユニと何があったか話してくれるかな?」

 

 再び辛そうに顔を歪めて俯いてしまったネプギアを見て、ナナハはゆっくり聞いていこうと決めた。

 

 精神的に持ち直したと言っても、まだ問題が解決したわけではないのだ。

 

 少しずつ話を聞いて、解決策を模索しようとした。

 

「私が負けた後、急にユニちゃんの様子がおかしくなったんだ」

 

「負けた後?」

 

「うん、いきなり夢人さんのことが好きかどうかって聞かれたと思ったら、ユニちゃんが夢人さんのことを好きだって言いだして、そうしたら私に夢人さんの前からいなくなってって……」

 

「ちょ、ちょっと待って!? お、落ち着いてよ!?」

 

 思い出して泣き崩れそうになったネプギアを、ナナハは慌てて落ち着かせようとした。

 

 このままでは、また塞ぎこんでしまうと思ったからである。

 

「わかった。ユニの様子が急におかしくなったことはわかったけど、どうしてそうなったのかはわかる?」

 

「……わからないよ。私はただ、次は負けないって言っただけなのに……」

 

「それ、本気で言ってるの?」

 

「……え」

 

 ネプギアは急に声色を変えたナナハに驚いて顔を上げた。

 

 今までは柔らかかった声が、急に固いものになったからである。

 

 視線の先にあったナナハの顔は、自分を鋭く睨むように見ていた。

 

「ねえ、ネプギア」

 

「な、何?」

 

 ネプギアは様子が変わったナナハの姿に、恐怖を覚えた。

 

 あの時と同じで、自分の言葉で急に態度が変わってしまった2人が重なって見えたのだ。

 

「もしそれを本気で言っているのなら、私もユニの意見に賛成するよ。このままじゃ、ネプギアは夢人を殺しちゃう」

 

「な、何で!?」

 

 ユニと同じことを口にするナナハに、ネプギアは声を荒げて理由を尋ねた。

 

 どうしてユニだけでなく、ナナハにまで同じことを言われてしまうのか、ネプギアにはわからないからだ。

 

「教えてあげるよ。だって、ネプギアは……」

 

 ……夢人を好きじゃないんでしょ。




という訳で、今回はここまで!
今週はついにネプリバ2が発売しますね!
今から楽しみですよ!
だから、早くこの負の連鎖を終わらせないと……
それでは、 次回 「怨恨」 をお楽しみに!

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